JPH05309841A - インクジェットプリンタヘッドの製作方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 圧力室内に保持されたインクをモノモルフ素
子で加圧してオリフィスから吐出させるインクジェット
プリンタヘッドにおいて、微少な多数のモノモルフ素子
を良好な位置精度で連設できる製作方法を実現する。 【構成】 多数の駆動部７が基部１１上に連設された基
材１２を圧電性セラミックの型成形で形成し、振動板３
の表面に駆動部７の一面で接合した基材１２の基部１１
を切除し、振動板３上に駆動部７を残存させてモノモル
フ素子２を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、カイザー方式などと呼
称されるインクジェットプリンタヘッドの製作方法に関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】現在、静粛で高密度印刷が可能なプリン
タとして、オリフィスからインク滴を吐出させて印刷用
紙に定着させるインクジェットプリンタなどが実用化さ
れている。

【０００３】例えば、カイザー方式などと呼称されるイ
ンクジェットプリンタヘッドは、伸縮困難で湾曲自在な
振動板の表面上に面方向に伸縮自在な圧電性セラミック
からなる多数のモノモルフ素子を設け、これらのモノモ
ルフ素子の振動板と対向する圧力室にオリフィスとイン
ク供給路とを連通させた構造などとなっている。そし
て、このようなインクジェットプリンタヘッドでは、モ
ノモルフ素子に駆動電力を通電すると圧電性セラミック
が伸縮して振動板が表面と直交する方向に変動するの
で、インク供給路から供給させて圧力室内に保持したイ
ンクをモノモルフ素子の変動で加圧してオリフィスから
吐出させるようになっている。

【０００４】そして、このようなインクジェットプリン
タヘッドの製作方法としては各種方式が提案されてお
り、例えば、特公平2-24223 号公報には、振動板上に一
体に接合した平板状の圧電性セラミックをダイシング加
工等で所定形状に成形することで多数のモノモルフ素子
を連設することが開示されている。同様に、特開昭60-1
51062 号公報には、平板状の圧電性セラミックの表面に
電着で振動板を形成した後、エッチング、レーザスクラ
イビング、ドライホーニング、ダイシング、超音波加工
等の方法で圧電性セラミックを所定形状に成形して多数
のモノモルフ素子を連設することが開示されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上述のようにすること
で、振動板上に所定形状の圧電性セラミックを設けてモ
ノモルフ素子のアレイを形成することができる。

【０００６】しかし、上記公報に開示された製作方法で
は、例えば、振動板上に位置する平板状の圧電性セラミ
ックを連続する多数の円盤などの形状に成形することに
なるので、これは加工作業が極めて煩雑で生産性が低下
することになる。

【０００７】このような課題を解決する手段としては、
予め量産した多数の円盤状の圧電性セラミックを振動板
の所定位置に装着することが考えられるが、現在はイン
クジェットプリンタヘッドの高密度化や小型化が要望さ
れているので、微少な多数の円盤を極めて高い位置精度
で振動板上に装着することになり、やはり製作作業が煩
雑で生産性が低下することになる。

【０００８】さらに、上記公報に開示された製作方法で
は、実際には振動板上に電極層を介して位置する平板状
の圧電性セラミックを部分的に切除してモノモルフ素子
を製作することになるので、圧電性セラミックと共に電
極層まで切除して断線を生じる懸念がある。

【０００９】本発明は、生産性が良好なインクジェット
プリンタヘッドの製作方法を得るものである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】伸縮困難で湾曲自在な振
動板の表面上に面方向に伸縮自在な圧電性セラミックか
らなる多数のモノモルフ素子を設け、これらのモノモル
フ素子の振動板と対向する圧力室にオリフィスとインク
供給路とを連通させ、前記インク供給路から供給させて
前記圧力室内に保持したインクを前記モノモルフ素子の
変動で加圧して前記オリフィスから吐出させるインクジ
ェットプリンタヘッドにおいて、多数の駆動部を基部上
に連設した基材を圧電性セラミックの型成形で形成し、
この基材を前記駆動部の一面で前記振動板の表面に接合
し、この振動板上に位置する前記基材の基部を切除して
残存する前記駆動部で前記モノモルフ素子を形成する。

【００１１】

【作用】射出成形で形成した基材は基部上に駆動部を高
精度に形成することができるので、このような基材を振
動板に接合して基部を切除することで微少な多数のモノ
モルフ素子を良好な位置精度で連設することができ、さ
らに、振動板上に接合した基材の基部は駆動部によって
振動板から遊離しているので、この基部を切除する際に
振動板の表面の電極を切除するようなことを防止でき、
インクジェットプリンタヘッドの生産性の向上に寄与す
ることができる。

【００１２】

【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
まず、ここで例示するインクジェットプリンタヘッド１
は、図２及び図３に例示するように、表面に多数のモノ
モルフ素子２を連設した一個の振動板３を、上面に所定
形状の凹凸を形成した本体プレート４上に一体に接合
し、この本体プレート４の凹部を前記振動板３で密閉す
ることでオリフィス５と矩形の圧力室６及びインク供給
路６ａを形成した構造となっている。

【００１３】そして、この矩形の圧力室６上に位置する
前記モノモルフ素子２は、伸縮困難で湾曲自在な前記振
動板３の表面上に、面方向に伸縮自在な直方体状の圧電
性セラミックからなる駆動部７を装着した構造となって
おり、この駆動部７が伸縮すると前記振動板３が表面と
直交する方向に変動するようになっている。より詳細に
は図４（ａ）に例示するように、前記振動板３の表面全
域に金属膜を薄膜形成することで共通電極８を形成させ
ており、この共通電極８上に前記駆動部７を固着させて
いる。そして、この駆動部７の外周部と前記共通電極８
とを共に遮蔽する形状に絶縁層９を積層形成させてお
り、この絶縁層９から露出した前記駆動部７の上面に所
定パターンの金属膜を形成させることで個別電極１０を
形成させている。

【００１４】このような構成において、このインクジェ
ットプリンタヘッド１では、駆動電力を電極８，１０間
に選択的に通電すると所定のモノモルフ素子２の駆動部
７が面方向に伸縮して振動板３の所定位置が上下方向に
変位するので、この振動板３下に位置する所定の圧力室
６内のインク（図示せず）が加圧されてオリフィス５か
ら吐出される。

【００１５】ここで、上述のようなインクジェットプリ
ンタヘッド１の各部の製作方法の一例を以下に詳述す
る。まず、モノモルフ素子２の圧電性セラミックをＰＺ
Ｔ(Lead Zirco Titanate）で形成する場合、ＴｉＯ₂ と
ＰｂＯとＺｒＯ₂ 及び特性改善剤からなるセラミック原
料を混合して乾燥させ、これを仮焼してから有機バイン
ダと混練する。そして、これを粉砕して形成した成形材
料である粉体を、射出成形機で所定形状の金型内に注入
して櫛歯状の成形品（グリーン成形体）を形成する。そ
こで、この成形品内の有機成分を脱脂炉で揮発させてか
ら焼成（本焼結）することで、図１（ａ）に例示するよ
うに、平板状の基部１１の表面に直方体状の駆動部７を
連設させた基材１２が型成形の一つである射出成形で形
成できる。そこで、同図（ｂ）に例示するように、この
圧電性セラミック製の基材１２を駆動部７の端面で振動
板３の共通電極８上に接合し、同図（ｃ）に例示するよ
うに、この振動板３上に駆動部７のみが残存するように
基材１２の基部１１を研磨加工やダイシング加工等で切
除することで、一個の振動板３上に多数の駆動部７を連
設させてモノモルフ素子２を形成できる。

【００１６】なお、上述のようにして形成したモノモル
フ素子２の駆動部７に、所望により研磨等の仕上加工を
施し、この上に絶縁層９や個別電極１０を既存の薄膜技
術で形成する。そして、このモノモルフ素子２を80〜12
0(℃）のシリコンオイル内に配置して各電極８，１０間
に２〜５(kＶ／mm）の電界を印加することで、このモノ
モルフ素子２の駆動部７は電極８，１０の対向方向に分
極できる。なお、上述のようなモノモルフ素子２の駆動
部７は、ＰＺＴの二成分系に複合ペロブスカイト酸化物
を加えた三成分系でも実施可能である。

【００１７】また、このインクジェットプリンタヘッド
１では、モノモルフ素子２の駆動部７の基材１２は型成
形の一つである射出成形で形成できるので生産性が極め
て良好である。そして、このインクジェットプリンタヘ
ッド１では、射出成形で形成した基材１２は、多数の駆
動部７が一個の基部１１上の所定位置に高精度に設けら
れた構造となっているので、上述のように振動板３上に
接合した基材１２の基部１１を切除することで、微少な
多数のモノモルフ素子２を高い位置精度で連設すること
ができる。さらに、このインクジェットプリンタヘッド
１では、振動板３上に接合した基材１２の基部１１は駆
動部７によって振動板３から遊離しているので、この基
部１１を切除する際に振動板３の表面の共通電極８まで
切除することが簡易に防止されて生産性が向上してい
る。

【００１８】ここで、このインクジェットプリンタヘッ
ド１では、モノモルフ素子２の駆動部７の基材１２は断
面形状が均一なので、これは射出成形の他に押出成形で
も製作可能である。また、このようなインクジェットプ
リンタヘッド１において、圧力室６やオリフィス５を形
成する本体プレート４等もセラミックの射出成形で形成
することで、その生産性や形状精度及び耐久性を向上さ
せることも実施可能である。なお、本発明で云う型成形
とは、射出成形と押出成形との何れか一方を意味してお
り、プレス加工などを内包するものではない。

【００１９】さらに、本実施例のインクジェットプリン
タヘッド１では、振動板３上に共通電極８を介して固着
させた駆動部７上に絶縁層９と個別電極１０とを順次成
膜することでモノモルフ素子２の配線を形成することを
例示したが、図４（ｂ）に例示するように、振動板１３
上に共通電極１４と絶縁層１５とを順次成膜し、この絶
縁層１５のスルーホールを介して共通電極１４上に駆動
部１６を固着させ、この駆動部１６上に個別電極１７を
成膜してモノモルフ素子１８の配線を形成することなど
も実施可能である。

【００２０】また、本実施例のインクジェットプリンタ
ヘッド１では、矩形の長溝状の圧力室６上に直方体状の
モノモルフ素子２を設けることを例示したが、本発明は
上記構造に限定するものではなく、図５に例示するよう
に、本体プレート１９の円筒形の圧力室２０上に振動板
２１と共通電極２２とを介して円盤状の駆動部２３と個
別電極２４とを設けることでモノモルフ素子２５を形成
したインクジェットプリンタヘッド２６なども実施可能
である。なお、このインクジェットプリンタヘッド２６
では、図６に例示するように、モノモルフ素子２５を形
成する基材２７は矩形の平板状の一つの基部２８上に多
数の円盤状の駆動部２３を連設した形状に形成できるこ
とになり、このような基材２７は断面形状が均一でない
ので押出成形では製作不能で射出成形で製作することに
なる。

【００２１】このようにすることで、このインクジェッ
トプリンタヘッド２６では、円形に形成した駆動部２３
は伸縮方向に対して対称形なので、モノモルフ素子２５
の動作特性が極めて良好で消費電力の低減や耐久性の向
上などを実現することができる。

【００２２】さらに、上述したインクジェットプリンタ
ヘッド１，２６では、基材１２，２７の平板状の基部１
１，２８の表面上に連続的に突設した駆動部７，２３を
端面で振動板３，２１等に接合することを例示したが、
本発明は上記形式に限定するものではなく、基部に連設
した駆動部を一面で振動板に接続すれば良い。

【００２３】つまり、図７（ａ）に例示するように、横
方向に細長い基部２９の前面に前後方向に細長い駆動部
３０を連設した基材３１を型成形の一つである射出成形
で形成し、同図（ｂ）に例示するように、この圧電性セ
ラミック製の基材３１を駆動部３０の下面で振動板３の
共通電極８上に接合し、同図（ｃ）に例示するように、
この振動板３上に駆動部３０のみが残存するように基材
３１の基部２９を研磨加工やダイシング加工等で切除す
ることでも、一個の振動板３上に多数の駆動部３０を連
設してモノモルフ素子２を形成することができる。

【００２４】さらに、図８（ａ）に例示するように、前
後方向に細長い複数の凹部３２を上面に形成した平板状
の基材３３を型成形の一つである射出成形で形成するこ
とで、この基材３３の凹部３２の側方に位置する部分を
駆動部３４とすると共に他の部分を基部３５とすること
も実施可能である。この場合、同図（ｂ）に例示するよ
うに、この圧電性セラミック製の基材３３を反転させて
駆動部３４を凹部３２間に位置する表面で振動板３の共
通電極８上に接合し、同図（ｃ）に例示するように、こ
の振動板３上に駆動部３４のみが残存するように基材３
３の基部３５を研磨加工やダイシング加工等で切除する
ことでも、一個の振動板３上に多数の駆動部３４を連設
してモノモルフ素子２を形成することができる。

【００２５】

【発明の効果】本発明は上述のように、多数の駆動部を
基部上に連設した基材を圧電性セラミックの型成形で形
成し、この基材を駆動部の一面で振動板の表面に接合
し、この振動板上に位置する基材の基部を切除して残存
する駆動部でモノモルフ素子を形成することにより、射
出成形で形成させた基材は基部上に駆動部を高精度に形
成することができるので、このような基材を振動板に接
合して基部を切除することで微少な多数のモノモルフ素
子を良好な位置精度で連設することができ、さらに、振
動板上に接合した基材の基部は駆動部によって振動板か
ら遊離しているので、この基部を切除する際に振動板の
表面の電極を切除するようなことを防止でき、インクジ
ェットプリンタヘッドの生産性の向上に寄与することが
できる等の効果を有するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例を示す製作工程図である。

【図２】インクジェットプリンタヘッドを示す分解斜視
図である。

【図３】縦断正面図である。

【図４】モノモルフ素子を示す縦断正面図である。

【図５】変形例のインクジェットプリンタヘッドを示す
縦断正面図である。

【図６】基材を示す斜視図である。

【図７】基材の変形例を示す製作工程図である。

【図８】基材の他の変形例を示す製作工程図である。

【符号の説明】

１，２６ インクジェットプ
リンタヘッド ２，１８，２５ モノモルフ素子 ３，１３，２１ 振動板 ５ オリフィス ６，２０ 圧力室 ６ａ インク供給路 ７，１６，２３，３０，３４ 駆動部 １１，２８，２９，３５ 基部 １２，２７，３１，３３ 基材

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 伸縮困難で湾曲自在な振動板の表面上に
   面方向に伸縮自在な圧電性セラミックからなる多数のモ
   ノモルフ素子を設け、これらのモノモルフ素子の振動板
   と対向する圧力室にオリフィスとインク供給路とを連通
   させ、前記インク供給路から供給させて前記圧力室内に
   保持したインクを前記モノモルフ素子の変動で加圧して
   前記オリフィスから吐出させるインクジェットプリンタ
   ヘッドにおいて、多数の駆動部を基部上に連設した基材
   を圧電性セラミックの型成形で形成し、この基材を前記
   駆動部の一面で前記振動板の表面に接合し、この振動板
   上に位置する前記基材の基部を切除して残存する前記駆
   動部で前記モノモルフ素子を形成することを特徴とする
   インクジェットプリンタヘッドの製作方法。