JPH05274659A - 磁気記録媒体及びその製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体及びその製造方法

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JPH05274659A
JPH05274659A JP4309104A JP30910492A JPH05274659A JP H05274659 A JPH05274659 A JP H05274659A JP 4309104 A JP4309104 A JP 4309104A JP 30910492 A JP30910492 A JP 30910492A JP H05274659 A JPH05274659 A JP H05274659A
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JP
Japan
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magnetic
thin film
film
layer
recording medium
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JP4309104A
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English (en)
Inventor
Kazunobu Chiba
一信 千葉
Kenichi Sato
研一 佐藤
Yuichi Arizaka
裕一 蟻坂
Hirofumi Kondo
洋文 近藤
Yukari Yamada
ゆかり 山田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 耐久性、信頼性に優れ、熱負けによる電磁変
換特性の低下のない磁気記録媒体、及びその製造方法を
提供する。 【構成】 金属磁性薄膜102の表面には、酸化物層1
03が形成されるが、この酸化物層103上にさらに保
護層104を形成する。金属磁性薄膜表面の酸化物層1
03の厚さは20〜230Å、保護層104の厚さは2
0〜230Å、酸化物層103と保護層104を合わせ
た厚さは40〜250Åである。保護層の表面にカルボ
ン酸パーフルオロアルキルエステル等の潤滑剤を塗布す
ることも可能である。基板である非磁性支持体の裏面
は、中心線平均粗さRa 及び突起の最大高さRmax で、
それぞれ0.0015μm≦Ra ≦0.0070μm、
0.015≦Rmax ≦0.070μmとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気記録媒体、特に例
えば金属薄膜が蒸着された蒸着テープ等に関するもので
あり、さらにはその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】金属あるいはCo−Ni等の合金からな
る磁性材料をメッキや真空薄膜形成技術(真空蒸着法、
スパッタリング法、イオンプレーティング法等)により
ポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等のベース
フィルム上に直接被着した、所謂強磁性金属薄膜型の磁
気記録媒体は、保磁力、角形比等に優れ、短波長域にお
ける電磁変換特性に優れるばかりでなく、磁性層の薄膜
化が可能であるために記録減磁や再生時の厚み損失が著
しく小さいこと、或いは磁性層中に非磁性材料である結
合剤等を混入する必要がないために磁性材料の充填密度
を高くできること等、数々の利点を有している。
【0003】この強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体にお
いて、一般に磁性層は真空蒸着法により形成されてお
り、例えば真空チャンバ内においてベースフィルムを巻
き出し側から巻取り側に亘って順次走行させながら、そ
の中途部に設けられた冷却キャンの外周面に沿って移動
走行されるベースフィルム上に蒸発せしめられた磁性材
料を被着させる、所謂連続巻取り式の斜方蒸着法が採用
されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体を特にデジタルビデオ
テープレコーダ等に用いる場合には、データの転送レー
トが非常に高いために、記録・再生時における磁気記録
媒体と磁気ヘッドの相対速度は、例えば従来のアナログ
記録を行う場合記録の2倍以上とすることが必要であ
る。このために、磁気ヘッドの摺動による磁気記録媒体
の損傷が大きく、耐久性の向上が重要な課題とされてい
る。
【0005】このため、蒸着時に酸素を導入する等して
磁性層の表面にCo酸化物等の保護膜を設けるのみでは
充分な耐久性が得られず、更に耐摩耗性を有する材料を
もって保護膜を設ける必要がある。またこれら保護膜の
厚さを大とするのみでは、スペーシングロスによる電磁
変換特性の劣化をもたらす虞れがある。そこで本発明
は、上述の従来の実情に鑑みて提案されたものであり、
電磁変換特性の劣化を招来することなく、耐摩耗性の向
上を図って、耐久性、信頼性に優れた磁気記録媒体及び
その製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の発明によ
る磁気記録媒体は、その一例の略線的拡大断面図を図1
に示すように、基板(ベースフィルム)101上に金属
磁性薄膜102、この金属磁性薄膜102の酸化物層1
03及び保護層104が順次形成されて成り、酸化物層
103の厚さt1 を20〜230Åとし、保護層104
の厚さt2 を20〜230Åとし、酸化物層103と保
護層104との全厚さTを40〜250Åとして構成す
る。
【0007】また本発明の他の一においては、上述の磁
気記録媒体において、保護層4を無機材料により構成す
る。上述の保護層形成の際には、予め酸化物層表面をボ
ンバード処理し、保護膜の密着性を高めるようにしても
よい。即ち、例えば真空チャンバ内でベースフィルム上
に真空蒸着法により強磁性金属薄膜を形成した後、この
強磁性金属薄膜を1.6kW/m2 以上の投入電力密度
でボンバード処理し、更に同一真空チャンバ内で連続的
に上記強磁性金属薄膜上に保護膜を形成するようにして
もよい。これが本発明の第2の発明である。
【0008】磁性層とされる強磁性金属薄膜は、真空蒸
着法により形成される。この真空蒸着法としては、通常
の真空蒸着法の他、電界、磁界、電子ビーム照射等によ
り蒸気流のイオン化、加速化等を行って蒸発化学種の平
均自由工程の大きい雰囲気にてベースフィルム上に磁性
薄膜を成膜させる方法等でも良い。このような真空蒸着
法により上記強磁性金属薄膜を成膜する際には、例えば
所定の方向に回転するようになされた冷却キャンの外周
面に沿って移動走行される非磁性支持体の表面に蒸発源
から蒸発せしめられた磁性材料を所定の入射角をなす方
向から入射させて被着せしめる、所謂斜方蒸着法が採用
される。この場合、得られる強磁性金属薄膜の磁気特性
及び耐久性の向上を図るために、上記非磁性支持体の表
面に酸素ガスが導入される。
【0009】そこで、この真空蒸着法による強磁性金属
薄膜の成膜後に上述のボンバード処理を行う。これによ
り、この強磁性金属薄膜上に保護膜を形成しても、強磁
性金属薄膜と保護膜の付着力を十分に確保することがで
き、耐久性、信頼性の向上を図ることができる。また、
スペーシングロスが少なくなり、電磁変換特性が向上す
る。
【0010】上記ボンバード処理に使用されるガスとし
ては、上記強磁性金属薄膜の表面が酸化されるのを回避
するために、不活性ガスを使用することが望ましく、具
体的にはArガス等が好適である。また、このボンバー
ド処理を行うに際し、ボンバード処理装置内に配設され
る一対の電極における投入電力密度は、1.6kW/m
2 以上とする。投入電力密度が1.6kW/m2 よりも
低いと、上記表面に対する十分なエッチング効果が期待
できず、上記保護膜の付着力を改善できない。この投入
電力密度は、単位面積当たりの処理能力を表すものであ
り、上記投入電力密度を上記範囲とするために、上記電
極に印加する電圧及び電流を上記ベースフィルムのテー
プ速度やテープ幅に応じて適宜設定することが望まし
い。
【0011】上述のボンバード処理を施した後、ボンバ
ード処理がなされた面上に同一真空チャンバ内で連続し
て保護膜を成膜する。これにより、保護膜の付着力を十
分に確保することができる。従って、磁気ヘッドの摺接
時における上記保護膜の剥離が防止され、耐久性、信頼
性が向上する。上記保護膜の成膜方法としては、特に限
定されるものではなく、例えばスパッタリング法、CV
D法、蒸着法等何れも使用可能であるが、強磁性金属薄
膜の成膜工程とインライン化が可能な方法であれば好適
である。
【0012】この保護膜としては、一般にカーボン膜が
好適であるが、この他にも例えばスパッタリング法によ
るSiO2 膜,Si3 4 膜,SiNx 膜,BN膜,Z
nO 2 膜,Al2 3 膜,MoS2 膜,SiC膜等が何
れも使用可能である。また、上記強磁性金属薄膜を構成
する磁性材料としては、一般的に使用されているもので
あれば何れでも良いが、好ましくは金属磁性材料が使用
されるのが良い。この場合、金属磁性材料としては、通
常この種の磁気記録媒体で使用されるものが何れも使用
可能である。具体的に例示すれば、Fe、Co、Ni等
の磁性金属や、Fe−Co、Co−Ni、Fe−Co−
Ni、Fe−Co−Cr、Co−Ni−Cr、Fe−C
o−Ni−Cr等が挙げられる。
【0013】上記強磁性金属薄膜は真空薄膜形成技術に
より成膜される。真空薄膜形成技術としては、真空蒸着
法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等挙げ
られるが、特に真空蒸着法が有効とされる。この真空蒸
着法としては、通常の真空蒸着法の他、電界、磁界、電
子ビーム照射等により蒸気流のイオン化、加速化等を行
って蒸発化学種の平均自由行程の大きい雰囲気にて非磁
性支持体上に薄膜を成膜させる方法等でも良い。このよ
うな真空薄膜形成技術を導入して典型的には斜め蒸着を
行う。上記斜め蒸着とは、磁性金属材料の蒸気流を非磁
性支持体の法線方向に対して所定の入射角をなす方向か
ら入射させ、上記非磁性支持体上に磁性薄膜を析出させ
る方法である。
【0014】また、上記強磁性金属薄膜は、単層であっ
てもよいし、多層であってもよい。後者の場合、2層以
上積層された強磁性金属薄膜と各強磁性金属薄膜間に介
在された非磁性中間層より構成されてもよい。非磁性中
間層は、上記強磁性金属薄膜が2層である場合は1層の
み設けられ、上記強磁性金属薄膜がn層(nは3以上の
整数)である場合には(n−1)層設けられることにな
る。このような非磁性中間層により、各強磁性金属薄膜
間での磁気的な相互作用が防止され、低ノイズ化が図ら
れる。
【0015】上記非磁性中間層は、酸化物から構成され
るものであり、例えばCr、Si、Al、Mn、Bi、
Ti、Sn、Pb、In、Zn、Cu等の酸化物もしく
はこれらの複酸化物が挙げられる。この非磁性中間層の
各層厚の合計は、上記記録層の全厚に対して20%以下
とされる。この非磁性中間層の合計層厚が20%を越え
る場合には、特に短波長域における電磁変換特性の向上
を図ることが困難となる。また、各層の層厚は、約30
0Å以下であることが好ましい。非磁性中間層の層厚が
300Åを上回ると、該非磁性中間層の下層側の強磁性
金属薄膜から記録信号を検出しにくくなる虞れがある。
【0016】上述のよう強磁性金属薄膜間に中間酸化層
が介在していると、各磁性薄膜間の磁気的な結合を弱め
ることができるが、この酸化層の膜厚が厚すぎると、逆
にエネルギー積が減少し、電磁変換特性が劣化する虞れ
が生じる。また、これら複数の強磁性金属薄膜から構成
されてなる磁性層の表面、即ち前記磁性薄膜のうち最も
上層に存在する磁性薄膜の表面に形成された酸化層は、
耐久性の向上を図る上では有効に機能するものの、その
膜厚が厚くなると、スペーシングロスを発生する原因と
なってしまう。従って、このような多層構造を有する磁
気記録媒体においては、耐久性と電磁変換特性のバラン
スを保つことが重要な課題とされる。
【0017】そこで、強磁性金属薄膜を積層する際に、
下層の強磁性金属薄膜の表面を還元性ガスを含む不活性
ガスでボンバード処理してもよい。蒸着時に上記磁性薄
膜の表面を還元性ガスを含む不活性ガスでボンバード処
理すると、上記中間酸化層の膜厚を薄くするか、或いは
除去することができる。実際に、上記中間酸化層の膜厚
は、数10Å程度の極僅かで良く、例えば蒸着時に10
0Å程度の膜厚に形成された酸化層をボンバード処理に
よりその膜厚が20Å程度となるように薄膜化させれ
ば、磁性層の残留磁束密度Br を向上させることができ
るとともに、積層された磁性薄膜の下層の磁性薄膜から
出てくる磁束の低下等が防止できるので、電磁変換特性
を著しく改善することができる。
【0018】このボンバード処理に使用される不活性ガ
スとしては、特に限定されないが、例えばArガス等が
一般的に使用される。また、この不活性ガスに導入され
る還元性ガスとしては、例えばH2 ガス、アセチレン等
が挙げられる。このようなボンバード処理の条件は、下
記の(1)式から与えられる定数Kを用いて表すことが
できる。
【0019】
【数1】
【0020】上記(1)式中、Eは処理装置内の電極に
加えられる電圧を表し、Iは前記電極の電流値を表す。
また、vは上記処理装置中を通過する際のテープスピー
ドを表し、wはボンバード処理がなされる磁気テープの
処理幅を表す。従って、上記Kは単位面積当たりの処理
能力を表すものと考えられ、本発明では、その値が10
程度以上となるように上記電極の電圧Eや電流値I等を
適宜選定することが望ましい。このKの値を前記範囲に
制御することにより、耐久性を確保しつつ、電磁変換特
性の改善を図ることができる。
【0021】なお、本発明の磁気記録媒体において、磁
性層は2層構造でも良く、3層以上の多層構造でも良
い。また、いずれの場合にも、磁性層を構成している各
磁性薄膜は、その成長方向が互いに同じ方向(順方向)
となるように形成しても良く、反対方向(逆方向)とな
るように形成しても良い。一方、ベースフィルムとして
は、通常この種の磁気記録媒体において使用されるもの
が何れも使用可能である。具体的に例示するならば、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナ
フタレート等のポリエステル樹脂や芳香族ポリアミドフ
ィルム、ポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。
【0022】ところで、上述のように、多層構造の磁性
層の形成を行う場合、冷却キャン外周面を走行する可撓
性支持基板(ベースフィルム)の走行速度を早めること
によって膜厚の薄い金属磁性薄膜を形成するため、可撓
性支持基板走行面と冷却キャンの外周面の接触時間が減
少し、冷却キャン上の可撓性支持基板の冷却が充分に行
われず、熱負け等の問題が発生する。本発明者等は鋭意
検討した結果、可撓性支持基板の非被蒸着面(所謂、走
行面)の粗さを制御し、可撓性支持基板走行面と冷却キ
ャンの外周面の接触面積を制御することによって、上述
の問題を解決できることを見出した。
【0023】そこで、本発明の第3の発明においては、
可撓性支持基板の一方の面上に複数の金属磁性薄膜が形
成されてなる磁気記録媒体において、上記可撓性支持基
板の他方の面(走行面)の粗さを中心線平均粗さRa
び突起の最大高さRmax が、それぞれ、0.0015≦
a ≦0.0070μm,0.015≦Rmax ≦0.0
70μmの範囲となるように規定し、このことによっ
て、熱負けの発生を防止し、電磁変換特性が向上し、製
造歩留りの低下の起こりにくい磁気記録媒体を得る。な
お、中心線平均粗さRa 及び突起の最大高さRmax は、
JIS B0601にて規定されるものである。
【0024】可撓性支持基板は上述のように、一方の面
上には磁性層が形成されるため、該面は良好な磁気特性
が得ることができ、かつスペーシングロスを抑えること
ができる範囲の表面粗さを有し、他面(走行面)は走行
性を確保することができ、かつ可撓性支持基板の冷却が
充分行える冷却キャンとの接触面積を有する範囲の表面
粗さを有する。
【0025】本発明においては、走行面の粗さを、中心
線平均粗さRa 及び突起の最大高さRmax で、それぞれ
0.0015≦Ra ≦0.0070μm(好ましくはR
a ≦0.004μmである。),0.015≦Rmax
0.070μmの範囲となるように規定している。中心
線平均粗さRa が、規定された範囲よりも小さな値であ
ると、可撓性支持基板が冷却キャンの外周面を走行する
場合、可撓性基板の走行面と冷却キャン外周面との密着
が起き、走行速度をあまり早めることができない。ま
た、可撓性支持基板へのシワの発生が起きやすく、製品
の製造が困難となる。さらに、中心線平均粗さRa が、
規定された範囲よりも大きな値であると、可撓性支持基
板走行面と冷却キャンの外周面の接触面積が少なすぎる
ために、冷却キャン上の可撓性支持体の冷却が充分に行
われない。よって、可撓性支持体に熱による幅方向に縮
みや長手方向の伸び等の変形が生じ(所謂、熱負け)、
電磁変換特性の低下を招き、これがひどくなると長手方
向にスジが発生し、製品として使用できなくなり、製造
歩留りの低下に繋がる。
【0026】また、突起の最大高さRmax の範囲を規定
することによって、走行面の突起の大きさを平均化する
こができる。例えば、中心線平均粗さRa が規定された
範囲にあり、突起の最大高さRmax が、規定された範囲
よりも小さな値であると、可撓性支持基板の走行面に適
度な粗さをもたせることができず、走行速度をあまり早
めることができない。さらに、中心線平均粗さRa が規
定された範囲にあり、突起の最大高さRmax が規定され
た範囲よりも大きな値であると、可撓性支持基板走行面
には突起が点在することとなり、冷却キャン上の可撓性
支持体の冷却が充分に行われないばかりでなく、走行性
にも支障をきたす。
【0027】上記のような可撓性支持基板の走行面の粗
さの制御は、フィラーの内添によって、達成される。該
フィラーは、非常に細かい粒子であるので、可撓性支持
基板への内添時に凝集することが考えられ、凝集時に上
記のような範囲の突起を可撓性支持基板の走行面に形成
することのできる所定の粒子径を有するフィラーを内添
すれば良く、フィラーの種類は、通常この種の磁気記録
媒体の製造方法に適用されるものであれば、特に限定さ
れるものではない。
【0028】更に、本発明においては、必要に応じて、
上記ベースフィルム上に下塗り膜を形成する工程やバッ
クコート層、トップコート層等を形成する工程等を加え
ても良い。この場合、下塗り膜、バックコート層、トッ
プコート層等の成膜条件は、通常この種の磁気記録媒体
の製造方法に適用される方法であれば良く、特に限定さ
れない。なお、これら下塗り膜やバックコート層、トッ
プコート層等の成膜工程は、上記磁性層及び保護膜の成
膜工程とインラインで行われることが望ましく、これに
より著しい生産性の向上を図ることが可能となる。
【0029】例えば、上記トップコート層は、各種潤滑
剤を塗布することによって形成されるが、ここで潤滑剤
としては公知のものが何れも使用可能である。特に好ま
しいのは、カルボン酸パーフルオロアルキルエステル
や、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエ
ーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物、末端にカ
ルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルのアミ
ン塩化合物等が好適である。
【0030】上記カルボン酸パーフルオロアルキルエス
テルは、一般式 RCOO(CH)j k 2k+1 (但し、式中、Rは炭化水素基であり、j≧0,k≧4
である。)で示される化合物である。ここで、カルボン
酸の炭化水素基Rは直鎖状,分枝状のいずれでもよく、
また飽和,不飽和の何れでもよい。さらに、上記炭化水
素基Rは、アリール基やパーフルオロ炭化水素基であっ
てもよい。
【0031】一方、パーフルオロアルキル基(−Ck
2k+1)の炭素数kは4以上であるのが良いが、6以上と
するのがより好ましい。カルボン酸パーフルオロアルキ
ルエステルは、例えば相当する酸塩化物と含フッ素アル
コールとの反応によって容易に合成される。上記酸塩化
物は、市販の脂肪族カルボン酸を五塩化リン PCl5 ある
いは塩化チオニル SOCl2で塩素化することによって容易
に合成できる。特に、脂肪族カルボン酸の炭素数が小さ
いものについては、塩化チオニル SOCl2で塩素化するこ
とによって合成できる。
【0032】フッ素含有アルコール Ck F2k+1(CH2)j OH
については、例えばシモンズ法等によって得られたパー
フルオロカルボン酸をジメチルホルムアミド(DMF)
存在下で塩素化した後、還元剤によって還元することに
より容易に合成することができる。あるいは、一般式C
k F2k+1CH2CH2OH で示されるパーフルオロアルコール等
も提供されている。
【0033】これらカルボン酸パーフルオロアルキルエ
ステルを含有する潤滑剤層を強磁性金属薄膜上に付着さ
せる方法としては、上記潤滑剤を溶媒に溶解して得られ
た溶液を強磁性金属薄膜の表面に塗布もしくは噴霧する
か、あるいは逆にこの溶液中に強磁性金属薄膜を浸漬し
乾燥すればよい。ここで、その塗布量は、0.5mg/
2〜100mg/m2であるのが好ましく、1mg/m
2〜20mg/m2であるのがより好ましい。この塗布量
があまり少なすぎると、摩擦係数の低下、耐摩耗性・耐
久性の向上という効果が顕れず、一方あまり多すぎる
と、摺動部材と強磁性金属薄膜との間ではりつき現象が
起こり、却って走行性が悪くなる。
【0034】また、末端にカルボキシル基を有するパー
フルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化
合物は下記の一般式で表されるものである。 (一般式) Rf COOR ROOCRf COOR (但し、Rf はパーフルオロポリエーテル基を、Rは長
鎖炭化水素を示す。) なお、前記エステル化合物に加えて下記一般式で示され
る燐酸エステルあるいは亜燐酸エステルを含有せしめて
もよい。
【0035】(一般式) (R1O)n P(OH)3-n、(R1O) n PO(OH)3-n 、(R1S) n P(OH)
3-n、(R1S)n PO(OH)3-n (但し、R1は炭化水素を示す。) あるいは、前記エステル化合物に加えて下記一般式で示
される長鎖アルキルアミンを含有してもよい。
【0036】(一般式) R2-NH2 (但し、R2は長鎖炭化水素を示す。) ただし、前記長鎖アルキルアミンの添加量は、前記エス
テル化合物に対してモル比で0.01〜100である。
【0037】上述のエステル化合物を薄膜磁気記録媒体
表面に塗布することにより高温高湿あるいは低温低湿等
の、過酷な条件下で使用した場合にでも良好な耐久性が
得られる。しかもその特性が劣化しない。また、長鎖炭
化水素とパーフルオロポリエーテルのエステル化合物と
することによりフロン系溶媒の使用量をなくすことが可
能となる。
【0038】これらのエステル化合物については、例え
ば末端にカルボキシル基を持つパーフルオロポリエーテ
ルと長鎖アルコールとを無水トルエン中で例えば少量の
p−トルエンスルホン酸や濃硫酸を触媒として加熱還流
させながら生成する水分を除去することによって用意に
合成することができる。反応終了後、トルエンを除去し
た後カラムクロマトグラフィーで精製する。
【0039】末端にカルボキシル基を持つパーフルオロ
ポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物とし
ての長鎖アルキル基は、分子量、分岐構造、不飽和結
合、異性体構造、脂環構造によらず選択することができ
る。好ましくはその炭素数が6以上の方が溶解性を考え
た場合に都合がよい。具体的には、表1にその構造を示
す。末端にカルボキシル基を持つパーフルオロポリエー
テルの構造を例えば下記に示すが何等これに限ったもの
ではない。
【0040】また、添加する燐酸あるいは亜燐酸エステ
ルとしての置換基も同様にその炭化水素の、分子量、炭
素数、分岐構造、不飽和、及び芳香環の有無、異性体あ
るいは脂環構造によらず選択することができる。エステ
ルの置換基数については、1から3までが考えられ、い
ずれでも良い。また、燐酸及び亜燐酸エステルの添加量
についてであるが、エステル化合物に対して、重量比で
30%から70%程度が好ましいが特に制限はない。
【0041】また、添加する長鎖アルキルアミンとして
のアルキル基も同様に、分子量、炭素数、分岐構造、不
飽和、及び芳香環の有無、異性体あるいは脂環構造によ
らず選択することができる。好ましくは炭素数が10以
上の直鎖状炭化水素が摩擦係数の点から好ましい。また
長鎖アルキルアミンの添加量については、エステル化合
物に対して、モル比で0.01から100程度が好まし
い。
【0042】単官能のパーフルオロポリエテルとして
は、 F(CF2CF2CF2O) n CF2CF2COOH CF3[OCF(CF3)CF2]m (OCF2) l COOH があり、多官能のパーフルオロポリエーテルとしては、 HOOCCF2(OC2F4)p (OCF2)O OCF2COOH 等がある。
【0043】ここで、上記パーフルオロポリエーテルの
化学構造式中のl、m、n、は1以上の整数を示す。ま
た、その分子量としては特に限定はしないが600から
5000程度が好ましい。分子量が大きくなりすぎると
末端基の効果が小さくなり、またパーフルオロポリエー
テル部分は多くなるので、フロンの使用量が増える。小
さいとパーフルオロポリエーテル基の効果が薄れる。ア
ルコールの場合は、少なくともその1個のアルキル基の
炭素数が6以上が好ましい。
【0044】かかる、金属薄膜型の磁気記録媒体に前記
末端にカルボキシル基を持つパーフルオロポリエーテル
と長鎖アルコールとのエステル化合物等を保有せしめる
方法としては、先のカルボン酸パーフルオロアルキルエ
ステルの場合と同様、金属磁性薄膜表面や前記保護膜表
面に潤滑剤層をトップコートする方法が挙げられる。こ
の場合、末端にカルボキシル基を持つパーフルオロポリ
エーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物等の塗布
量としては、0.5〜100mg/m2 であることが望
ましく、1〜20mg/m2 であることがより好まし
い。
【0045】また、上記磁性層の表面に単にカーボン膜
のみを形成した場合、カーボン膜の膜厚が非常に薄くて
も耐久性を大幅に向上させることができるものの、繰り
返し走行後の出力特性の劣化を抑えることはできない。
これに対して、本発明では、このカーボン膜の形成とと
もに、潤滑剤として上記パーフルオロポリエーテル誘導
体を使用することを特徴としており、カーボン膜と上記
パーフルオロポリエーテル誘導体の相互作用によって各
種使用条件下でも優れた耐久性を確保しつつ、走行性を
著しく向上させることができる。
【0046】上記パーフルオロポリエーテル誘導体は、
新規化合物であって、これまで潤滑剤として用いられて
きた化合物に比べて著しく良好な潤滑性を発揮し、また
潤滑性が長時間に亘り維持されるという特徴を有する。
更に、このパーフルオロポリエーテル誘導体は、低温低
湿下、或いは高温高湿下のように過酷な条件下で使用し
た場合にも良好な潤滑性を発現し、潤滑剤として極めて
有用な化合物となる。従って、このパーフルオロポリエ
ーテル誘導体を磁気記録媒体の潤滑剤として用いれば、
優れた潤滑効果により摩擦係数が低減され、走行性、耐
摩耗性、耐久性等を大幅に改善することができる。ま
た、パーフルオロポリエーテル誘導体は、フロン以外の
溶媒(例えばエタノール等)に溶解するので、製造上非
常に有利である。
【0047】このパーフルオロポリエーテル誘導体は、
末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテ
ルとアミンとの化合物である。上記末端にカルボキシル
基を有するパーフルオロポリエーテルとしては、カルボ
キシル基(COOH)を両方の末端に有するものでも良
く、少なくとも一方の末端(片末端)に有するものでも
良く、またその置換位置によらずに使用することができ
る。
【0048】このパーフルオロポリエーテル誘導体のう
ち、両方の末端にカルボキシル基を有するパーフルオロ
ポリエーテル(以下、多官能パーフルオロポリエーテル
と称する。)とアミンとの化合物は、下記の化3なる一
般式で表される。また、片末端にのみカルボキシル基を
有するパーフルオロポリエーテル(以下、単官能パーフ
ルオロポリエーテルと称する。)とアミンとの化合物
は、下記の化4なる一般式で表される。
【0049】
【化3】
【0050】
【化4】
【0051】ここで、上記末端にカルボキシル基を有す
るパーフルオロポリエーテルとしては、市販のものがい
ずれも使用可能である。例えば、上記単官能パーフルオ
ロポリエーテルとしては、 (イ)F(CF2CF2CF2O) m CF2CF2COOH (ロ)CF3 〔OCF(CF3)CF2j (OCF2) k COOH 等が挙げられる。
【0052】また、上記多官能パーフルオロポリエーテ
ルとしては、 (ハ)HOOCCF2(OCF2CF2)p (OCF2)q OCF2COOH 等が挙げられるが、勿論これらに限定されるわけではな
い。なお、前記パーフルオロポリエーテルの化学構造式
中のm,j,k,p,qは、いずれも1以上の整数を表
す。
【0053】これら末端にカルボキシル基を有するパー
フルオロポリエーテルの分子量は、特に制約されるもの
ではないが、実用的には600〜5000程度のものが
好ましく、1000〜4000のものがより好ましい。
パーフルオロポリエーテルの分子量が大きくなりすぎる
と、末端基の効果が小さくなり、吸着基としての効果が
薄れる。また、フロン以外の溶媒、例えばエタノール等
の汎用溶媒に溶解し難くなる。逆に、パーフルオロポリ
エーテルの分子量が小さすぎると、パーフルオロポリエ
ーテル鎖による潤滑効果が失われる。
【0054】一方、上記アミンとしては、第一アミン、
第二アミン、第三アミンがいずれも使用可能であり、第
四アンモニウム化合物も使用可能である。使用するアミ
ンの構造等も任意であり、分岐構造、異性体構造、脂環
構造、分子量、不飽和結合の有無等によらず任意に選択
することができる。ただし、前記アミンはアルキル基を
有することが好ましく、特に炭素数6以上、より好まし
くは10以上のアルキル基を有する場合にその効果が大
きい。
【0055】なお、上記パーフルオロポリエーテル誘導
体においては、いずれの場合にもパーフルオロポリエー
テル鎖が部分水素化されていてもよい。すなわち、パー
フルオロポリエーテル鎖のフッ素原子の一部(50%以
下)を水素原子で置き換えてもよい。この場合には、パ
ーフルオロポリエーテルとして部分水素化したパーフル
オロポリエーテルを使用すればよく、これによってフロ
ン系溶媒の使用量を減らすことが可能となる。部分水素
化したパーフルオロポリエーテルの構造の一例を下記に
示すが、勿論これに限られるものではない。 (ニ)F(CF2CF2CF2O) a (CFHCF2CF2) b (CH2CF2CF2O)c CF2CF2COOH (ただし、a,b,cは1以上の整数である。) このパーフルオロポリエーテル誘導体としては、分子量
が1400〜4500のものが好ましい。パーフルオロ
ポリエーテル誘導体の分子量が上記範囲よりも小さい場
合や、逆に大きい場合では、摩擦係数を十分に低減させ
ることができず、良好な走行性、耐久性が得られないば
かりか、磁気記録媒体を繰り返し走行させた後の出力特
性の劣化が顕著となる。
【0056】また、このパーフルオロポリエーテル誘導
体においては、下記の化5に示される極性基部分の分子
量が120以下であることが望ましい。上記極性基部分
の分子量が120よりも大きいと、該極性基部分に含ま
れる炭化水素基の立体障害によりカーボン膜との相互作
用が弱まり、吸着基としての効果が低下する。
【0057】
【化5】
【0058】このようなパーフルオロポリエーテル誘導
体は、上記末端にカルボキシル基を有するパーフルオロ
ポリエーテルとアミンとから以下の方法で簡単に合成す
ることが可能である。即ち、上記単官能パーフルオロポ
リエーテル(又は、多官能パーフルオロポリエーテル)
とアミンとを混合し、用いたアミンの融点以上の温度
(例えば、アミンとしてステアリルアミンを用いた場合
には60℃)で加熱することによって合成することがで
きる。
【0059】或いは、有機溶媒(例えばフレオン等)中
に上記単官能パーフルオロポリエーテル(又は、多官能
パーフルオロポリエーテル)とアミンの両者を溶解した
後、溶媒を除去することによっても得ることができる。
アミンが第四アンモニウム化合物の場合には、パーフル
オロポリエーテルの金属塩(ナトリウム塩等)と第四ア
ンモニウム塩(塩化物、沃化物、硫酸塩等)を混合し、
有機溶媒で抽出することにより得ることができる。
【0060】前記アミン塩化合物の塗布量は0.5〜1
00mg/m2 とするのが好ましく、1〜20mg/m
2 とするのがより好ましい。パーフルオロポリエーテル
誘導体を潤滑剤として使用する場合、予め前述の手法に
よって合成したものを用いるのではなく、パーフルオロ
ポリエーテルにアミンを添加混合したものを潤滑剤とし
て使用することもできる。このようにパーフルオロポリ
エーテルにアミンを添加混合して使用すると、前述のパ
ーフルオロポリエーテル誘導体が生成し、潤滑効果が発
揮される。
【0061】ここで、パーフルオロポリエーテルとアミ
ンの混合比率は、上記パーフルオロポリエーテル誘導体
の極性基部分を構成するカルボキシル基とアミン(アミ
ノ基)が等モルとなるように設定してもよいが、特に磁
気記録媒体の潤滑剤として用いる場合には、若干アミン
が過剰量となるような比率に設定した方が優れた潤滑効
果が発現される。これは、前記潤滑剤を磁性層上に塗布
したときに、塩基性である強磁性金属薄膜(磁性層)表
面にカルボキシル基により酸性を示すパーフルオロポリ
エーテルが優先的に吸着し、アミンの量が不足すること
によるものと考えられる。
【0062】従って、上記パーフルオロポリエーテル誘
導体を磁気記録媒体の潤滑剤として用いるときには、前
記カルボキシル基とアミン(アミノ基)の比率(アミン
/カルボキシル基)をモル比で3/7〜40/1とする
のが良い。なお、上記各化合物誘導体は、単独で潤滑剤
として用いても良いし、従来知られる潤滑剤等と組合せ
て使用することも可能である。
【0063】さらに、より厳しい条件に対処し潤滑効果
を持続させるために重量比30:70〜70:30程度
の配合比で極圧剤を併用してもよい。上記極圧剤は、境
界潤滑領域において部分的に金属接触を生じたときにこ
れに伴う摩擦熱によって金属面と反応し、反応生成物皮
膜を形成することにより摩擦、摩耗防止作用を行うもの
であって、リン系極圧剤、硫黄系極圧剤、ハロゲン系極
圧剤、有機金属系極圧剤、複合系極圧剤等のいずれも使
用できる。
【0064】また、上記潤滑剤、極圧剤の他、必要に応
じて、防錆剤を併用してもよい。防錆剤としては、通常
この種の磁気記録媒体の防錆剤として使用されるもので
あればいずれも使用でき、例えばフェノール類、ナフト
ール類、キノン類、窒素原子を含む複素環化合物、酸素
原子を含む複素環化合物、硫黄原子を含む複素環化合物
等である。
【0065】
【作用】上述したように、本発明の第1の発明の磁気記
録媒体は、強磁性金属薄膜102上にその酸化物層10
3と、保護層104とを設ける構成とするものであり、
本発明者等の鋭意考察の結果、これら酸化物層103及
び保護層104の膜厚をそれぞれ20〜230Åとし、
且つ両酸化物層103及び保護層104とを合わせた全
膜厚を40〜250Åとすることによって、電磁変換特
性の劣化を招くことなく耐久性を格段に向上し得る。
【0066】即ち酸化物層103上に保護層104を設
ける構成とし、且つその膜厚を上述した膜厚範囲内に選
定することによって、従来と同程度の耐久性を保持しつ
つ酸化物層3の膜厚を従来に比し小とすることができる
ため、電磁変換特性の向上をはかることができる。ま
た、両末端、或いは片末端にカルボキシル基を有するパ
ーフルオロポリエーテルのアミン塩化合物(パーフルオ
ロポリエーテル誘導体)は、良好な潤滑作用を発揮して
摩擦係数を低減する。そして、このパーフルオロポリエ
ーテル誘導体の潤滑作用は、低温低湿下等の厳しい条件
下においても損なわれることはない。従って、磁性層の
表面にカーボン膜を形成するとともに、かかるパーフル
オロポリエーテル誘導体を潤滑剤として用いることによ
り、良好な耐久性が確保されつつ、優れた潤滑効果によ
り走行性が向上する。
【0067】一方、非磁性支持体の磁性層形成面とは反
対側の面の中心線平均粗さRa 及び突起の最大高さR
max を0.0015≦Ra ≦0.0070μm,0.0
15≦Rmax ≦0.070μmの範囲に規定することに
よって、斜め蒸着法を用い、可撓性支持基板を冷却キャ
ン上に沿わせて磁性層の蒸着を行う際、可撓性支持基板
の冷却キャン外周面上への良好な走行性を得ることがで
き、しかも可撓性支持基板が冷却キャン上にて充分冷却
されるため、熱負けによる表面性劣化や製造時の歩留り
の低下が解消される。
【0068】また、真空チャンバ内でベースフィルム上
に強磁性金属薄膜を形成した後、この強磁性金属薄膜を
所定の投入電力密度でボンバード処理することにより、
該強磁性金属薄膜上に良好な付着力を有して保護膜が積
層形成される。
【0069】
【実施例】以下、本発明を適用した具体的な実施例につ
いて図面や実験結果を参照しながら詳細に説明する。酸化物層の膜厚の検討 先ず、図1に示すように、PET(ポリエチレンテレフ
タレート)等より成る基板101上に、Co20Ni
80(wt%)等よりなる金属磁性薄膜102を酸素中に
おいて斜方蒸着した。この斜方蒸着装置の一例を図2を
参照して説明する。
【0070】図2において110は真空槽で、中央部に
例えば円筒状のクーリングキャン114が設けられ、こ
のクーリングキャン114の周面に沿って仕切り板11
1が設けられて真空槽110内が二分され、排気口11
2及び113に接続される排気手段(図示せず)によっ
てそれぞれ所定の真空度に排気されて成る。そして磁気
記録媒体105例えば磁気テープは上述のクーリングキ
ャン114及びガイドロール117及び118によって
矢印aで示すように、供給ロール115から巻取りロー
ル116へ摺動案内されるようになされている。
【0071】そしてクーリングキャン114の図2にお
いて斜め右下に蒸着源即ちるつぼ121が設けられ、電
子銃123からの電子ビームbによってるつぼ121内
の蒸着材料が衝撃加熱されて矢印cで示すように磁気記
録媒体105上に蒸着される。122はるつぼ121の
予備ヒーターである。またクーリングキャン114の下
部にシャッター124を設け、磁気記録媒体105上に
所定の角度範囲をもって蒸着するようになす。即ちこの
場合、磁気記録媒体105の膜面に垂直な方向からの最
小角度θmin が破線dで示すようにこのシャッター12
4により規制され、例えばこの場合θmin が45°とな
るようにシャッター124を配置する。
【0072】そして、この蒸着範囲に酸素等の導入ガス
が行き渡るようにガス導入管125が配置され、例えば
酸素ガスを導入し、導入量を制御して金属磁性薄膜10
2の表面の酸化物3の厚さt1 を調整した。そして図1
に示すように、この酸化物層103の上にカーボン等よ
り成る保護層104を例えばDCマグネトロンスパッタ
リングにより、Arガス圧を10mTorr、パワー密
度を6.8W/cm2 として被着した。この保護層10
4の厚さt2 の制御は、磁気記録媒体105この場合蒸
着テープの送り速度を制御して調整した。
【0073】図3及び図4に、この保護層104を被着
しない従来例と保護層104を被着した本実施例の各磁
気記録媒体105のAES(オージェ電子分光法)によ
る断面深さ方向の相対濃度プロファイルを示す。図3及
び図4において実線eは炭素濃度、実線fはコバルト、
実線gは酸素、実線hはニッケルの濃度をそれぞれ示
す。図3からわかるように、保護層104を設けない場
合は表面近傍に非磁性のコバルト酸化物が比較的厚く形
成されており、一方図4に示す本実施例においては、表
面にカーボンより成る保護層104が形成され、その下
の酸化物層103とを合わせた全厚さTが40Å以上2
50Å以下のこの場合250Å程度となっていることが
わかる。
【0074】そしてこれら酸化物層103と保護層10
4との膜厚t1 及びt2 、全厚さTを変化させて磁気記
録媒体105を形成し、それぞれの電磁変換特性、エラ
ーレート及びスティル耐久性即ち静止モードにおける耐
久性を測定した。以下の実施例1〜6、比較例1〜3に
おいては、全厚さTを250Å一定として、各層3及び
4の厚さt1 及びt2 を変えて測定を行った。各例にお
ける厚さt1 及びt2、全厚さTを以下に示す。 実施例1 酸化物層103の厚さt1 を230Å、保護層104の
厚さt2 を20Åとして構成した。 実施例2 酸化物層103の厚さt1 を200Å、保護層104の
厚さt2 を50Åとして構成した。 実施例3 酸化物層103の厚さt1 を150Å、保護層104の
厚さt2 を100Åとして構成した。 実施例4 酸化物層103の厚さt1 を100Å、保護層104の
厚さt2 を150Åとして構成した。 実施例5 酸化物層103の厚さt1 を50Å、保護層104の厚
さt2 を200Åとして構成した。 実施例6 酸化物層103の厚さt1 を20Å、保護層104の厚
さt2 を230Åとして構成した。 比較例1 酸化物層103の厚さt1 を250Å、保護層104の
厚さt2 を0Åとして構成した。 比較例2 酸化物層103の厚さt1 を240Å、保護層104の
厚さt2 を10Åとして構成した。 比較例3 酸化物層103の厚さt1 を10Å、保護層104の厚
さt2 を240Åとして構成した。
【0075】そしてこのようにして形成した磁気記録媒
体に対し、ギャップ長が0.2μm、トラック幅が20
μmとされ、磁気ギャップが金属磁性薄膜によって構成
されてこの金属薄膜の膜面が磁気ギャップのトラック幅
方向に対し非平行をなすいわゆるTSS(Tiled Sendust
Sputter) 型の磁気ヘッドを用いて、波長0.5μmと
して電磁変換特性を測定した。
【0076】また、ギャップ長が0.2μm、トラック
幅が4μmとされたTSSヘッドを用いてディジタル記
録を行い、ビットエラーレートを測定した。更にスティ
ル耐久性は、8ミリVTRのEV−S1(ソニー製、商
品名)によって初期出力を0dBとし、再生出力が3d
B低下するまでの時間として測定した。これら各特性の
測定結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】この結果からわかるように、比較例1に示
す保護層104を設けない場合はスティル耐久性は3時
間と短いが、保護層104を設けて、その厚さt2 を2
0Å以上とするときに、必要とされる5時間程度以上の
スティル耐久性を得ることができる。また、酸化物層1
03の厚さt1 もまた10Å以下では所要のスティル耐
久性を得ることができず、20Å以上とするときにこの
場合実施例6に示すように20時間程度のスティル耐久
性を得ることができることがわかる。尚、このように全
厚さTを一定とした場合は電磁変換特性及びエラーレー
トはほぼ一定であることがわかる。
【0079】次に、以下の実施例7〜10、比較例4及
び5においては、酸化物層103及び保護層104の全
厚さTと、各厚さt1 及びt2 とを変えて各磁気記録媒
体を構成した。 実施例7 酸化物層103の厚さt1 を50Å、保護層104の厚
さt2 を150Å、全厚さTを200Åとして構成し
た。 実施例8 酸化物層103の厚さt1 を50Å、保護層104の厚
さt2 を100Å、全厚さTを150Åとして構成し
た。 実施例9 酸化物層103の厚さt1 を50Å、保護層104の厚
さt2 を50Å、全厚さTを100Åとして構成した。 実施例10 酸化物層103の厚さt1 を20Å、保護層104の厚
さt2 を20Å、全厚さTを40Åとして構成した。 比較例4 酸化物層103の厚さt1 を50Å、保護層104の厚
さt2 を250Å、全厚さTを300Åとして構成し
た。 比較例5 酸化物層103の厚さt1 を20Å、保護層104の厚
さt2 を10Å、全厚さTを30Åとして構成した。
【0080】これら各磁気記録媒体において、上述の表
1における測定方法と同様の方法をもって電磁変換特
性、エラーレート及び耐久性を測定した結果を表2に示
す。
【0081】
【表2】
【0082】この結果からわかるように、全厚さTを2
50Åを越える例えば300Åとするときは、比較例1
で示すように、良好な耐久性は得られるものの、その電
磁変換特性が劣化してビットエラーレートも大となる
が、全厚さTを250Å以下に徐々に小とすると、電磁
変換特性が向上し、ビットエラーレートが格段に低下す
ることがわかる。しかしながら、この全厚さTが40μ
m未満の例えば30μmとされる場合には、電磁変換特
性及びビットエラーレートは向上するものの、スティル
耐久性が3時間となり、望ましい耐久性が得られないこ
とがわかる。
【0083】従って、本発明においては、酸化物層10
3及び保護層104の全厚さTを40μm以上250μ
m以下に選定するものである。また、上述した表1から
わかるように、各層103及び104の厚さとしては、
それぞれ20Å以上必要であり、全厚さTの限定範囲か
らこれら各層の上限も230Å以下に選定するものであ
る。
【0084】特に酸化物層103及び保護層104の全
厚さTを100Å程度以下とする場合、即ち各層の厚さ
を比較的小とする場合においても、実施例9及び10か
らわかるように、良好な耐久性を保持することができ
て、電磁変換特性の向上及びビットエラーレートの格段
な低減をはかることができた。尚、上述の例において
は、保護層104としてカーボンを用いた場合を示した
が、その他例えばSiO2 、Si3 4 、SiNX 、B
N、ZnO2 等の種々の無機材料を用いた場合に、上述
したようにその膜厚を適切に選定することによって、電
磁変換特性の劣化を伴うことなく耐久性の向上を図るこ
とができた。
【0085】また、本発明は上述の実施例における材料
構成に限ることなく、その他例えば有機材料の例えばエ
チレンよりなる保護層104とする場合や、或いはこの
保護層104の成膜方法をイオンプレーティングやプラ
ズマCVD法等を用いる等、種々の変形変更をなし得る
ことはもちろんである。酸化物層表面のプラズマ処理の検討 先ず、本実施例において使用される製造装置の構成につ
いて説明する。
【0086】この製造装置においては、図5に示すよう
に、真空チャンバ201内の略中央部に隔壁Xが配設さ
れる。この隔壁Xにより上記真空チャンバ201内は、
2つの領域に分断されており、図中右側の領域が強磁性
金属薄膜を成膜するための蒸着室とされ、図中左側の領
域が保護膜を成膜するためのスパッタ室とされている。
【0087】上記真空チャンバ201内の上方には、巻
き出しロール202と巻き取りロール203がそれぞれ
対向する側面201a,201bの近傍に配設される。
これら巻き出しロール202と巻き取りロール203
は、ともに図中反時計回り方向に回転するようになされ
ており、上記巻き出しロール202から送り出されたベ
ースフィルム204が順次移動走行されて上記巻き取り
ロール203に巻き取られるようになされている。
【0088】この巻き出しロール202が配設される蒸
着室内の略中央部には、図中時計回り方向に回転するよ
うになされた冷却キャン205が配設され、該冷却キャ
ン205の外周面に沿って上記巻き出しロール202か
ら送り出されたベースフィルム204が定速走行され
る。この冷却キャン205の下方には、ルツボ206が
配設され、このルツボ206内に強磁性金属材料207
が充填される。
【0089】一方、上記真空チャンバ201の側面20
1aには、上記強磁性金属材料207を加熱溶融するた
めの加熱手段208が配設される。これにより、この加
熱手段208から発せられた電子ビームが上記強磁性金
属材料207に照射され、この強磁性金属材料207が
蒸発せしめられて上記ベースフィルム204上に蒸着
し、強磁性金属薄膜が成膜される。
【0090】この時、上記冷却キャン205の周面に沿
って湾曲状のシャッタ209が配設される。このシャッ
タ209により上記ベースフィルム204の表面の一部
が覆われ、上記蒸発せしめられた強磁性金属材料207
の上記ベースフィルム204の表面に対する入射角が規
制される。また、上記隔壁Xの図中上方には、ボンバー
ド処理装置210が配設され、上記冷却キャン205の
周面を通過したベースフィルム204が上記ボンバード
処理装置210に送られる。
【0091】このボンバード処理装置210は、該ボン
バード処理装置210内を通過する上記ベースフィルム
204を介して対向配置される一対の棒状の電極211
a,211bから構成されており、これら電極211
a,211b間に電圧を印加することによって上記ベー
スフィルム204上に形成された強磁性金属薄膜の表面
がボンバード処理される。なお、上記電極211a,2
11bとしては、直流型でも、交流型でも何れも使用可
能である。
【0092】また、上記蒸着室に隣接して設けられるス
パッタ室内には、略中央部に図中時計回り方向に回転す
るようになされた大径のキャン212が配設され、この
キャン212の外周面に沿って上記ボンバード処理装置
210を通過したベースフィルム204が走行される。
このキャン212の下方には、カソード電極213が配
設され、このカソード電極213上にターゲット214
が固定される。このターゲット214は、上記キャン2
12の周面と対向配置され、該キャン212の周面に沿
って走行するベースフィルム204に対してスパッタが
なされるようにされている。
【0093】このスパッタ室内においては、仕切り板2
18が上記隔壁Xに対して垂直に取りつけられており、
この仕切り板218を境界として図中下方側のみでスパ
ッタがなされるようにされている。これにより、スパッ
タガスが仕切り板218より上方側に拡散されることが
防止されるので、スパッタ効率が向上する。なお、上記
巻き出しロール202と冷却キャン205の間、該冷却
キャン205と上記ボンバード処理装置210の間、該
ボンバード処理装置210と上記キャン212の間、及
び該キャン212と上記巻き取りロール203の間に
は、それぞれガイドロール215a〜215dが配設さ
れており、上記巻き出しロール202から上記巻き取り
ロール203に亘って移動走行されるベースフィルム2
04に対して所定のテンションをかけつつ、円滑な走行
が行えるようになされている。
【0094】そこで、以上のような構成を有する製造装
置を用いて、次の手順に従って磁気テープを作製した。
先ず、10μm厚のポリエステルフィルムからなるベー
スフィルムを用い、所定の真空度に保たれた真空チャン
バ内における蒸着室内で上記ベースフィルムに対する斜
方蒸着を行った。
【0095】即ち、上記蒸着室内において、巻き出し側
から送り出された上記ベースフィルムを上記冷却キャン
の外周面に沿って定速走行させながら、ルツボ内に充填
された強磁性金属材料(Co80Ni20合金:数値は重量
%を表す。)を所定の加熱手段により加熱溶融し、この
蒸発せしめられた磁性材料を上記ベースフィルム上に被
着させて強磁性金属薄膜を成膜した。
【0096】なお、この斜め蒸着に際して、上記ベース
フィルムの表面に酸素ガスを所定の割合で導入し、この
ベースフィルムの表面に対する上記磁性材料の最低入射
角が45°となるように設定した。また、上記ベースフ
ィルムの送り速度は、得られる強磁性金属薄膜の膜厚が
200nmとなるように設定した。これにより表面に酸
化物層を有する強磁性金属薄膜が成膜されたが、続い
て、上記ボンバード処理装置により上記強磁性金属薄膜
表面の酸化物層をボンバード処理した。なお、ボンバー
ド処理に際して、上記ボンバード処理装置内にArガス
を導入した。
【0097】その後、上記ボンバード処理装置内を通過
した上記ベースフィルムを該ボンバード処理装置の下方
に配設された上記キャンの外周面に沿って移動走行させ
ながら、連続巻取り式による直流マグネトロンスパッタ
リングを行って、上記強磁性金属薄膜上に膜厚100Å
のカーボン膜を成膜し、これを保護膜とした。このスパ
ッタリングに際し、上記スパッタ室内の真空度は2Pa
とし、上記キャンの周面からの距離が8cmとなるよう
にカソード電極上に固定されたターゲット(カーボン)
を配設して、上記ベースフィルムを2m/分の送り速度
で走行させながらスパッタリングを行った。この時、カ
ソード電極の投入電力は6.8W/cm2 に設定した。
【0098】ここで、上記ボンバード処理の効果を調べ
るために、上記ボンバード処理時の投入電力密度を1
8.9kW/m2 とした時に得られる磁気テープを用
い、この磁気テープの表面から深さ方向に関するオージ
ェ電子分光分析を行った。この結果、図6に示すよう
に、この磁気テープにおいては、表面近傍の主にカーボ
ンから構成される領域A(保護膜に相当する領域)と、
Co及び酸素から構成される領域B(強磁性金属薄膜に
相当する領域)との間に、酸素を含む領域Cが存在して
いることから、保護膜と強磁性金属薄膜の間に表面酸化
層が介在していることが確認された。また、この表面酸
化層の膜厚は、約130Åであり、保護膜との合計膜厚
が230Åであった。
【0099】これに対して、強磁性金属薄膜の成膜後に
ボンバード処理を行わずに保護膜の成膜を行った場合に
ついて、同様にして表面から深さ方向に関するオージェ
電子分光分析を行ったところ、図7に示すように、ボン
バード処理を行った場合と同様に、保護膜と強磁性金属
薄膜の間に表面酸化層が介在していることが確認された
が、この表面酸化層の膜厚は、約200Åにも及んでお
り、保護膜との合計膜厚は300Åであった。
【0100】従って、これらの結果から、上述のような
ボンバード処理を行うことにより、上記表面酸化層が薄
くされることが明らかとなった。次に、上述のようにし
て得られる磁気テープの耐久性と電磁変換特性を調べ
た。即ち、上記ボンバード処理時の投入電力密度を1.
6kW/m2 、11.8kW/m2 及び18.9kW/
2 とした場合(実施例11〜13とする。)、及び比
較用として強磁性金属薄膜の成膜後にボンバード処理を
行わず保護膜の成膜を行った場合(比較例6)、上記ボ
ンバード処理を酸素ガス雰囲気中で行った場合(比較例
7)及び上記ボンバード処理時の投入電力密度を1.1
1kW/m2とした場合(比較例8)に得られる各種磁
気テープについて、スチル耐久性と波長0.5μmにお
ける再生出力をそれぞれ調べた。この結果を表3に表
す。
【0101】なお、スチル耐久性は、磁気ヘッドと媒体
の相対速度を7.5m/秒としてソニー社製のEV−S
1改造機(商品名)によりスチル走行を行い、再生出力
が初期値から3dB劣化した時点までに要した時間によ
り評価した。
【0102】
【表3】
【0103】表3より、本実施例のように蒸着形成され
た強磁性金属薄膜の表面をArガスでボンバード処理す
ると、投入電力密度を増加するに従って、上記強磁性金
属薄膜に対する保護膜の付着力が向上し、良好なスチル
耐久性が得られることが判った。またこの場合、上記強
磁性金属薄膜上に形成された表面酸化層が薄くされるの
で、スペーシングロスが減少し、再生出力が著しく増大
した。
【0104】これに対して、上述のようなボンバード処
理を行わない場合や、ボンバード処理時の投入電力密度
が低い場合では、保護膜の付着力を強化することができ
ず、スチル耐久性の改善が望めないことが判った。ま
た、酸素ガス雰囲気でボンバード処理を行った場合に
は、耐久性は改善されるものの、上記強磁性金属薄膜表
面の酸化が進み、スペーシングロスによる出力特性の劣
化が顕著となった。
【0105】なお、真空室内で斜め蒸着による強磁性金
属薄膜の成膜直後にボンバード処理を行って、得られた
磁気テープを一旦巻き取った後、インラインではなく別
の真空室内で保護膜の成膜を行った場合(比較例4)で
は、保護膜と強磁性金属薄膜の付着力を十分に確保する
ことができず、スチル耐久性が極めて悪くなった。多層構造における中間酸化層の検討 実施例14 本実施例は、非磁性支持体上に傾斜柱状構造の成長方向
が上記非磁性支持体の法線方向に対して互いに順方向で
ある2層の強磁性金属薄膜を斜め蒸着により形成し、こ
れら強磁性金属薄膜間に酸化物からなる中間層を介在さ
せて順2層型の磁気テープを作成した例である。
【0106】本実施例における磁気テープは、図8に示
すように、ポリエチレンテレフタレートフィルムよりな
る非磁性支持体301上に900Å厚の第1層目の強磁
性金属薄膜302が形成される。この第1層目の強磁性
金属薄膜302は、上記非磁性支持体301表面に近い
程該非磁性支持体301の法線方向に対する傾斜が大き
く、上記非磁性支持体301表面から離れる程上記傾斜
が小さくなるような傾斜柱状構造を有する。
【0107】この第1層目の強磁性金属薄膜302上に
は、酸化コバルト膜からなる第1の中間層3が設けられ
る。この第1の中間層303の膜厚は、約200Åとさ
れる。また、上記第1の中間層303上には、膜厚90
0Åの第2層目の強磁性金属薄膜304が形成される。
この第2層目の強磁性金属薄膜304の傾斜柱状構造の
成長方向は、上記第1層目の強磁性金属薄膜302のそ
れと同じである。
【0108】このような磁気テープにおいて記録層は、
第1層目の強磁性金属薄膜302と第2層目の強磁性金
属薄膜304とが第1の中間層303を介して積層され
てなり、強磁性金属薄膜にのみ着目すると2層構造を有
している。この記録層の全厚は2000Åであり、この
全厚に対する上記第1の中間層303は層厚は10%で
ある。
【0109】ここで、上記磁気テープの製造方法につい
て説明する。図9に示すように、ドラム311の外周面
に非磁性支持体312を巻回させ、上記ドラム311の
回転に応じて上記非磁性支持体312を図中a方向に移
動させながら、ルツボ313内に充填された蒸発源31
4からの蒸気流を上記非磁性支持体312の法線方向に
対してある入射角を持たせて入射させ、上記非磁性支持
体312上に強磁性材料を蒸着させる。この時、最大入
射角θ1 から最小入射角θ2 の領域で開口したシャッタ
ー316,316を配設し、上記最大入射角θ 1 にて斜
め蒸着を開始し、上記非磁性支持体312の移動ととも
に上記入射角を連続的に変化させて上記シャッター31
6,316から露出する上記非磁性支持体312に対し
て蒸着を行い、上記最小入射角θ2 までの間で上記非磁
性支持体312上に強磁性金属薄膜315を成膜する。
【0110】そこで、先ず、非磁性支持体301を一方
向に移動させながら、蒸発源(純Co)からの蒸気流を
上記非磁性支持体301に対して所定の入射角を持たせ
て入射させ、前記入射角を連続的に変化させて斜め蒸着
を行って上記非磁性支持体301上に第1層目の強磁性
金属薄膜302を成膜した。そして、純Coをターゲッ
トとして用いて、マグネトロンスパッタリングにより上
記第1層目の強磁性金属薄膜302上に第1の中間層3
03を形成した。なお、スパッタリングの条件は、Ar
ガス流量を200SCCM、O2 ガス流量を70SCCMとし、
上記非磁性支持体の走行速度を10m/分とした。
【0111】更に、上記第1層目の強磁性金属薄膜30
2と同様に斜め蒸着を行って上記第1の中間層303上
に第2層目の強磁性金属薄膜304を成膜して磁気テー
プを作製した。次に、このような記録層の組成を確認す
るために、日本電子社製のオージュ電子分光装置Jam
p30を用いてデプス・プロファイルを検討した。その
結果、第10図に示すように、磁気テープの表面からの
深さが1000Åである付近に酸素原子のピークが現れ
てCoの相対的に減少していることから、第1層目の強
磁性金属薄膜302と第2層目の強磁性金属薄膜304
の間に酸化コバルト膜からなる第1の中間層303が形
成されていることが確認された。また、この第1の中間
層303の膜厚は、1000Å付近における酸素原子の
ピークの半値幅l(高さh/2におけるピークの幅)で
みると、確かに約200Åだった。なお、第2層の強磁
性金属薄膜の表面には膜厚50Åの酸化物層が形成され
ていた。
【0112】その後、上記非磁性支持体の他方の面側に
通常の手法によりバックコート層を形成し、カーボン保
護層(150Å)及び潤滑剤よりなるトップコート層を
形成した後、所定の条件にて防錆処理を行って磁気テー
プを作製した。 実施例15 第1層目の強磁性金属薄膜及び第2層目の強磁性金属薄
膜の膜厚をそれぞれ950Åとし、中間層の層厚を10
0Åとし、その他は実施例14と同様にして順2層型の
磁気テープを作製した。なお、記録層の全厚(2000
Å厚)に対する中間層の層厚は5%とした。 実施例16 第2層目の強磁性金属薄膜上に200Å厚の第2の中間
層を介して傾斜柱状構造の成長方向が上記第1層目の強
磁性金属薄膜及び上記第2層目の強磁性金属薄膜と順方
向となるように第3層目の強磁性金属薄膜を形成し、そ
の他は実施例1と同様にして順3層型の磁気テープを作
製した。
【0113】なお、上記第2の中間層及び第3層目の強
磁性金属薄膜の成膜方法は、それぞれ上記実施例14に
おける第1の中間層及び第1層目の強磁性金属薄膜と同
様の手法とした。また、各強磁性金属薄膜の膜厚は53
0Åとし、記録層の全厚(2000Å厚)に対する2層
の中間層の合計層厚を20%とした。 実施例17 第2層目の強磁性金属薄膜の傾斜柱状構造の成長方向を
第1層目の強磁性金属薄膜に対して逆方向となるように
形成し、他は実施例1と同様にして逆2層型の磁気テー
プを作製した。
【0114】即ち、上記第2層目の強磁性金属薄膜は、
その成膜時において第1層目の強磁性金属薄膜の成膜時
と逆方向に非磁性支持体を走行させながら成膜した。ま
た、第1の中間層の層厚は200Åとし、記録層の全厚
(2000Å厚)に対して10%とした。 比較例9 記録層を第1層目の強磁性金属薄膜のみとし、実施例1
4と同様の手法により非磁性支持体上に2000Å厚の
第1層目の強磁性金属薄膜を形成して単層型の磁気テー
プとした。 比較例10 ここでは、比較のために中間層の層厚を500Åとし、
記録層の全厚(2000Å厚)に対する中間層の層厚を
25%として、その他は実施例14と同様にして順2層
型の磁気テープを作製した。
【0115】上述のようにして作製した各磁気テープに
ついて、出力特性及びC/N比を調べた。この結果を表
4に示す。なお、上記出力特性は、入力信号の波長を
0.5μmとして各磁気テープの再生出力をそれぞれ8
mmビデオテープレコーダ(商品名 EVS-900,ソニー社
製)により測定した。上記C/N比は、入力信号の波長
を0.5μmとして上記8mmビデオテープレコーダ
(商品名 EVS-900,ソニー社製)により測定した。な
お、各測定値は、比較例9の磁気テープを0dBとした
場合の相対値として表した。
【0116】
【表4】
【0117】表4に示すように、記録層の全厚に対する
中間層の合計層厚を20%以下に抑えた磁気テープにお
いては、出力特性、C/N比ともに良好な結果が得られ
ることが判った。 実施例18 本実施例は、非磁性支持体の法線方向に対する蒸気流の
入射角を40〜70°の範囲で変化させて上記非磁性支
持体上に2層の強磁性金属薄膜をそれらの傾斜柱状構造
の成長方向が互いに同じである順2層型の磁気テープを
作製した例である。
【0118】先ず、厚さ10μmのポリエチレンテレフ
タレートフィルムよりなる非磁性支持体の一方の面上に
例えばアクリル系エマルジョン等の下塗り液を塗布して
微細な突起を有する塗膜を形成した後、上記非磁性支持
体を一方向に走行させながら、蒸発源からの蒸気流を上
記非磁性支持体の法線方向に対する入射角が連続的に減
少するように入射させて斜め蒸着を行った。この時、蒸
着開始における最大入射角θ1 を70°とし、最小入射
角θ2 が40°となるまでの間に上記非磁性支持体上に
1000Å厚の第1層目の強磁性金属薄膜を成膜した。
このような斜め蒸着においては、上記蒸発源としてCo
80Ni20合金を用い、蒸着雰囲気中に導入されるO2
ス流量を200SCCMとし、上記非磁性支持体の走行速度
を10m/分とした。そして、この斜め蒸着を同じ条件
にて繰り返して行い、上記第1層目の強磁性金属薄膜上
に第2層目の強磁性金属薄膜を積層させた。この時、上
記非磁性支持体の走行方向を上記第1層目の強磁性金属
薄膜を成膜する場合と同じ方向とすれば、上記第2層目
の強磁性金属薄膜の傾斜柱状構造の成長方向は、上記第
1層目の強磁性金属薄膜のそれと同じとなる。なお、第
2層の強磁性金属薄膜の表面には膜厚50Åの酸化物層
が形成されていた。
【0119】その後、上記非磁性支持体の他方の面側に
通常の手法によりバックコート層を形成し、カーボン保
護層(150Å)及び潤滑剤よりなるトップコート層を
形成した後、所定の条件にて防錆処理を行って磁気テー
プを作製した。 実施例19 最大入射角θ1 を65°に変えるとともに、最小入射角
θ2 を45°に変えて、他は実施例18と同様にして磁
気テープを作製した。 比較例11 ここでは、比較のために入射角の変化範囲を90°まで
広げて斜め蒸着を行って強磁性金属薄膜を形成した。
【0120】即ち、最大入射角θ1 を90°に変えて
(最小入射角θ2 は40°)、他は実施例18と同様に
して磁気テープを作製した。これら実施例18及び実施
例19、比較例11について、出力特性及び周波数特性
を調べた。この結果を表5に示す。なお、上記出力特性
は、入力信号の波長を0.5μmとした場合の再生出力
の測定値を比較例11に対する相対値として表した値で
ある。上記周波数特性は、5MHzにおける再生出力に
対する10MHzにおける再生出力の減衰が比較例3に
対してどの位改善されたかを相対的に表したものであ
る。
【0121】
【表5】
【0122】表5より、本発明を適用した場合には、何
れも良好な出力特性が得られることが判った。また、比
較例11を基準としてみた場合、5MHzにおける再生
出力に対する10MHzにおける再生出力の減衰が抑制
されていることが判った。 実施例20 本実施例は、非磁性支持体の法線方向に対する蒸気流の
入射角が70°から40°まで連続的に減少するように
変化させて斜め蒸着を行い、上記非磁性支持体上に互い
に順方向である2層の強磁性金属薄膜を形成し、それら
強磁性金属薄膜間に酸化物からなる中間層を介在させた
例である。
【0123】予めエマルジョン等の下塗り液による塗膜
が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(1
0μm厚)よりなる非磁性支持体を一方向に10m/分
の速度で走行させながら、上記実施例18と同様にして
斜め蒸着を行い、上記非磁性支持体上に900Å厚の第
1層目の強磁性金属薄膜を形成した。なお、斜め蒸着に
おいて、最大入射角θ1 は70°とし、最大入射角θ2
は40°とした。 続いて、上記実施例14と同様にし
てマグネトロンスパッタリングを行い、上記第1層目の
強磁性金属薄膜上にコバルト酸化膜からなる中間層を層
厚200Åとなるように形成した。
【0124】更に、上記第1層目の強磁性金属薄膜と同
様にして斜め蒸着を行い、上記中間層上に900Å厚の
第2層目の強磁性金属薄膜を成膜した。このように作製
された磁気テープの記録層は、非磁性支持体上に第1層
目の強磁性金属薄膜と第2層目の強磁性金属薄膜とが上
記中間層を介して積層された2層構造からなり、その全
厚は2000Åとされる。また、上記第1の中間層の層
厚は、上記記録層の全厚に対して10%とされる。さら
に、その表面には膜厚50Åの酸化物層が形成されてい
た。
【0125】その後、上記非磁性支持体の他方の面側に
通常の手法によりバックコート層を形成し、カーボン保
護層(150Å)及び潤滑剤よりなるトップコート層を
形成した後、所定の条件にて防錆処理を行って磁気テー
プを作製した。 実施例21 最大入射角θ1 を65°に変え、非磁性支持体の走行速
度を20m/分として、他は実施例20と同様にして磁
気テープを作製した。
【0126】なお、中間層の層厚は100Åとし、記録
層の全厚に対する中間層の層厚を5%とした。これら実
施例20及び実施例21で作製した磁気テープを用い、
上述の方法により出力特性及びC/N比をそれぞれ調べ
た。この結果を表6に示す。
【0127】
【表6】
【0128】表6より、上記実施例14及び実施例15
の結果と併せて比較すると、単に斜め蒸着を行った場合
よりも、実施例20や実施例21のように非磁性支持体
の法線方向に対する蒸気流の入射角を本発明で規制され
る範囲内に調節した場合の方が、より優れた出力特性、
C/N比を確保することができることが判った。多層構造におけるボンバード処理の効果 本実施例の磁気テープは、図11に示すように、ポリエ
チレンテレフタレートからなる非磁性支持体401の一
方の主面上に第1の磁性薄膜402及び第2の磁性薄膜
403からなる2層構造を有する磁性層が形成されてな
る。
【0129】上記非磁性支持体401の一方の主面上に
は、上記第1の磁性薄膜402の下塗り膜としてアクリ
ル酸エステル系高分子ラテックスによる塗膜が形成され
ており、この下塗り膜を介して該非磁性支持体401上
に第1の磁性薄膜402が形成されている。この下塗り
膜は、平均粒径400Åの微粒子を含有してなり、この
微粒子が1000万個/mm2 の割合で存在するように
形成される。
【0130】この下塗り膜上には、第1の磁性薄膜40
2が形成され、この第1の磁性薄膜402上に第2の磁
性薄膜403が積層される。これら第1の磁性薄膜40
2及び第2の磁性薄膜403は、斜め蒸着法により得ら
れるものであり、その成長方向は互いに同じ方向(順方
向)となるように形成される。これら第1の磁性薄膜4
02及び第2の磁性薄膜403の膜厚は、それぞれ10
00Åである。
【0131】ここで、上記第1の磁性薄膜402の表面
は、部分的に酸化された状態とされ、この第1の磁性薄
膜402と該第1の磁性薄膜402上に積層される第2
の磁性薄膜403とが磁気的に分断されるようになされ
ている。このような上記第1の磁性薄膜402表面の酸
化状態は、斜め蒸着時に雰囲気中に酸素ガスを導入する
ことにより実現することができる。
【0132】このような第1の磁性薄膜402の表面
は、後述するように蒸着時にボンバード処理されてい
る。これにより、斜め蒸着時に該第1の磁性薄膜402
上に形成された酸化層の膜厚が薄くされ、或いは除去さ
れて、前記酸化層による磁性層の電磁変換特性の劣化が
防止される。一方、上記第2の磁性薄膜403上には、
酸化層(50Å)が形成されるとともに、カーボン保護
膜(150Å)及びパーフルオロポリエーテルからなる
トップコート層404が形成されている。
【0133】上記非磁性支持体401の他方の主面上に
は、カーボン、ウレタンからなるバックコート層405
が形成される。このような構成を有する磁気テープは、
以下のような構成を有する製造装置を用いて製造するこ
とができる。この製造装置においては、図12に示すよ
うに、頭部と底部にそれぞれ設けられた排気口423か
ら排気されて内部が真空状態となされた真空室411内
に、図中の反時計回り方向に定速回転する送りロール4
13と、図中の時計回り方向に定速回転する巻取りロー
ル414とが設けられ、これら送りロール413から巻
取りロール414にテープ状の非磁性支持体412が順
次走行するようになされている。
【0134】これら送りロール413から巻取りロール
414側に上記非磁性支持体412が走行する中途部に
は、上記各ロール413,414の径よりも大径となさ
れた冷却キャン415が設けられている。この冷却キャ
ン415は、上記非磁性支持体412を図中下方に引き
出すように設けられ、図中の時計回り方向に定速回転す
る構成とされる。なお、上記送りロール413、巻取り
ロール414及び冷却キャン415は、それぞれ非磁性
支持体412の幅と略同じ長さからなる円筒状をなすも
のであり、また上記冷却キャン415の内部には、図示
しない冷却装置が設けられ、上記非磁性支持体412の
温度上昇による変形等を抑制し得るようになされてい
る。
【0135】従って、上記非磁性支持体412は、送り
ロール413から順次送り出され、さらに上記冷却キャ
ン415の周面を通過し、巻取りロール414に巻き取
られていくようになされている。なお、上記送りロール
413と上記冷却キャン415との間及び該冷却キャン
415と上記巻取りロール414との間にはそれぞれガ
イドロール416,417が配設され、上記送りロール
413から冷却キャン415及び該冷却キャン415か
ら巻取りロール414に亘って走行する非磁性支持体4
12に所定のテンションをかけ、該非磁性支持体412
が円滑に走行するようになされている。
【0136】また、上記真空室411内には、上記冷却
キャン415の下方にルツボ418が設けられ、このル
ツボ418内に金属磁性材料(Co80Ni20)419が
充填されている。このルツボ418は、上記冷却キャン
415の幅と略同一の幅を有してなる。更に、上記真空
室411の側壁部には、上記ルツボ418内に充填され
た金属磁性材料419を加熱蒸発させるための電子銃4
20が取付けられる。この電子銃420は、該電子銃4
20より放出される電子線Xが上記ルツボ418内の金
属磁性材料419に照射されるような位置に配設され
る。そして、この電子銃420によって蒸発せしめられ
た金属磁性材料419が上記冷却キャン415の周面を
定速走行する非磁性支持体412上に磁性層として被着
形成されるようになされている。
【0137】そして、上記冷却キャン415の近傍に
は、該冷却キャン415の周面に沿ってシャッタ422
が配設されている。これにより、上記非磁性支持体41
2表面の一部が覆われるかたちとなるので、蒸発せしめ
られた金属磁性材料419の該非磁性支持体412の表
面に対する入射角を規制することができる。従って、こ
のような製造装置においては、上記ルツボ418内に充
填された金属磁性材料419が上記電子銃420により
加熱蒸発され、上記冷却キャン415の周面を走行する
非磁性支持体412に被着されるが、当該非磁性支持体
412が上記シャッタ422の一端部(上記非磁性支持
体412の送出し側の端部)413aにより被覆される
時点までの領域で当該非磁性支持体412に対して蒸着
がなされ、この時点で蒸発せしめられた金属磁性材料4
19の上記非磁性支持体412に対する入射角θ1 が最
低値となるようになされている。
【0138】また、上記真空室411内には、上記冷却
キャン415の下方側と上方側を分断するごとく、仕切
り板421が設けられている。これにより、上記送りロ
ール413から送り出された非磁性支持体412がこの
仕切り板421を通過した時点より蒸着が行われ、この
時点で上記蒸発せしめられた金属磁性材料419の上記
非磁性支持体412に対する入射角θ2 が最高値をとる
ようになされている。また、このような仕切り板421
を設けることにより、仕切り板421よりも上方側には
蒸発せしめられた金属磁性材料419が拡散されること
がなくなるので、蒸着効率が向上する。
【0139】更に、上記真空室411の側壁部には、酸
素ガス導入口428がこの真空室411の側壁を貫通し
て設けられており、蒸着時にこの酸素ガス導入口428
を介して非磁性支持体412の表面に酸素ガスが供給さ
れるようになされている。これにより、得られる磁性薄
膜中に酸素が取り込まれて、磁気特性の向上が図られ
る。
【0140】また、この製造装置においては、上記非磁
性支持体412の送出し側と巻取り側の各ガイドロール
416,417と上記冷却キャン415との中途部にそ
れぞれ処理装置424,425が設けられている。これ
ら処理装置424,425は、上記非磁性支持体412
の表面及び上述のような斜め蒸着により形成される磁性
薄膜の表面をそれぞれボンバード処理するために設けら
れるものであり、上記磁性薄膜の形成前と形成後に、上
記非磁性支持体412及び上記磁性薄膜が形成された磁
気テープが当該処理装置424,425中を通過すると
ともに、これら上記非磁性支持体412と上記磁性薄膜
の表面にボンバード処理がなされるように構成されてい
る。
【0141】従って、送りロール413から送り出され
た上記非磁性支持体412は、上記処理装置424内を
通過し、そして上記冷却キャン415の周面を走行し、
更に上記処理装置425内を通過して、上記巻取りロー
ル414に巻き取られる。上記処理装置424,425
には、上記非磁性支持体412及び上記磁性薄膜が形成
された磁気テープが通過するための入口424a,42
5aと出口424b,425bがそれぞれ設けられてお
り、これら入口424a,425aから上記処理装置4
24,425内に介入した時点から上記出口424b,
425bに至までの間に上記非磁性支持体412及び上
記磁性薄膜が形成された磁気テープの表面に対してボン
バード処理が施される。このようなボンバード処理を行
うことにより、上記非磁性支持体412上、或いは蒸着
により得られた磁性薄膜上に形成された酸化層の膜厚が
薄くされる、或いは除去されるので、前記酸化層の存在
に起因する電磁変換特性の劣化が防止される。
【0142】上記処理装置424(又は処理装置42
5)内には、上記非磁性支持体412(又は上記磁気テ
ープ)を介して1対の棒状の電極426,426(又は
電極427,427)が配設されており、これら電極4
26,426(又は電極427,427)間で放電が発
生する構成とされている。これら電極426,426
(又は電極427,427)としては、直流型でも、交
流型でも何れも使用可能である。
【0143】また、これら処理装置424,425内に
は、不活性ガス又は還元ガスを含む不活性ガスが導入さ
れ、上記電極426,426(又は電極427,42
7)は水冷される。なお、この処理装置によれば、上述
のような斜め蒸着により得られた磁性薄膜の表面に加え
て、上記非磁性支持体412の表面にもボンバード処理
がなされるが、少なくとも上述の磁性薄膜の表面がボン
バード処理されていれば良く、上記非磁性支持体412
の表面のボンバード処理は省略しても良い。
【0144】そこで、このような製造装置を用いて以下
のような手順に従って各種磁気テープを製造した。 実施例22 10μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの一
主面にアクリル酸エステル系高分子ラテックス(平均粒
径400Å)を1000万個/mm2 となるように塗布
して下塗り膜を形成した。
【0145】次に、金属磁性材料としてCo80Ni20
金(数値は組成比を表す。)を用い、上記下塗り膜が形
成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを30m
/分のテープスピードで走行させると同時に、酸素ガス
を導入しながら真空中で斜め蒸着を行って、上記ポリエ
チレンテレフタレートフィルム上に膜厚が1000Åと
なるように第1の磁性薄膜を形成した。
【0146】この時、酸素ガスの導入量を200cc/
分とし、蒸発せしめられた上記金属磁性材料の上記ポリ
エチレンテレフタレートフィルムの表面に対する入射角
を45〜90°の範囲で変化させた。また、このような
蒸着に際し、上記ポリエチレンテレフタレートフィルム
の表面と得られた第1の磁性薄膜の表面をボンバード処
理した。このボンバード処理の条件としては、上記ポリ
エチレンテレフタレートフィルムの表面においては、A
rガス雰囲気中で上記電極の電圧を500V、電流を
0.2Aとし、第1の磁性薄膜の表面においては、5%
のH2 ガスを含有するArガス雰囲気中で上記電極の電
圧を500V、電流を0.3Aとした。
【0147】そして、上記巻取りロールに巻き取られた
上記ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き戻した
後、上記第1の磁性薄膜と同様にして膜厚が1000Å
となるように第2の磁性薄膜を形成するとともに、得ら
れた第2の磁性薄膜の表面をボンバード処理した。な
お、このボンバード処理の条件は、上記ポリエチレンテ
レフタレートフィルムの表面に施した場合と同様とし
た。
【0148】このような蒸着後、得られた磁気テープに
カーボン、ウレタンからなるバックコート層と、パーフ
ルオロポリエーテルを用いたトップコート層をそれぞれ
形成し、更にこの磁気テープを8mm幅に裁断した。 実施例23 上記実施例22において第1の磁性薄膜の表面をボンバ
ード処理した際に、5%のH2 ガスを含有するArガス
雰囲気中で行ったのを、4%のアセチレンを含有するA
rガス雰囲気に変えて、その他は実施例22と同様にし
て磁気テープを作製した。 実施例24 上記実施例22において第1の磁性薄膜の表面をボンバ
ード処理した際に、上記電極の電圧を500V、電流を
0.3Aとしたのを、電圧を500V、電流を0.05
Aに変えて、その他は実施例22と同様にして磁気テー
プを作製した。 実施例25 上記実施例22において第1の磁性薄膜の表面をボンバ
ード処理した際に、上記電極の電圧を500V、電流を
0.3Aとしたのを、電圧を500V、電流を0.9A
に変えて、その他は実施例22と同様にして磁気テープ
を作製した。 比較例12 上記実施例22において第1の磁性薄膜の表面をボンバ
ード処理した際に、5%のH2 ガスを含有するArガス
雰囲気中で行ったのを、還元性ガスを含まないArガス
雰囲気に変えて、その他は実施例22と同様にして磁気
テープを作製した。
【0149】このようにして得られた各磁気テープにつ
いて、ソニー社製の商品名EVS−900により0.5
4μmの波長における再生出力、C/N及びエラーレー
トをそれぞれ測定した。この結果を表7に示す。なお、
表7中に、各磁気テープにおける第1の磁性薄膜の表面
をボンバード処理した際の処理能力を示す定数K(上記
(1)式参照。)の値も併せて記した。
【0150】
【表7】
【0151】表7に示すように、実施例22〜25で
は、比較例に比べて再生出力及びC/Nが高く、またエ
ラーレートが低減されていることが判った。従って、蒸
着時に上述のようなボンバード処理を行うことにより、
良好な耐久性が得られるとともに、電磁変換特性の向上
が図られることが判った。但し、実施例24のようにボ
ンバード処理における定数Kの値が小さいと、再生出力
やC/N、或いはエラーレートを十分に改善することが
出来なかった。このことから、上記ボンバード処理にお
ける定数Kの値はおよそ10以上とされることが望まし
いと言える。パーフルオロポリエーテルのアミン塩化合物による潤滑
効果 先ず、磁性層の表面に形成されたカーボン膜上に下記の
化6或いは化7に示されるパーフルオロポリエーテル誘
導体を用いて潤滑剤層を形成した蒸着テープについて、
種々の使用条件下における耐久性、走行性を検討した。
【0152】
【化6】
【0153】
【化7】
【0154】実験1 先ず、14種類のパーフルオロポリエーテル誘導体(化
合物1〜14とする。)を用いて以下の通りに磁気記録
媒体を作成した。なお、本実験において使用したパーフ
ルオロポリエーテル誘導体(化合物1〜14)を構成し
ている主鎖(末端にカルボキシル基を有するパーフルオ
ロポリエーテル鎖)の種類、極性基部分に含まれる炭化
水素基(又は水素基)及び分子量は、下記の表8乃至表
9に示す通りである。
【0155】
【表8】
【0156】
【表9】
【0157】即ち、14μ厚のポリエチレンテレフタレ
ートフィルムの表面に斜方蒸着法によりCoを被着さ
せ、膜厚200nmの強磁性金属薄膜を形成した。続い
て、この金属磁性薄膜の表面にスパッタリングによりカ
ーボン膜からなる保護膜を表面酸化物層(5nm)との
トータルの膜厚20nmとなるように成膜した。
【0158】そして、この保護膜上に各化合物1〜14
をフレオンとエタノールの混合溶媒に溶解したものを塗
布量が5mg/m2 となるように塗布して潤滑剤層を形
成した後、この磁気テープを8mm幅に裁断してサンプ
ルテープ1〜14を得た。このようにして作製された各
サンプルテープ1〜14について、温度25℃湿度60
%のとき、温度−5℃のとき、温度40℃湿度80%の
各条件下における摩擦係数、スチル耐久性及びシャトル
耐久性をそれぞれ測定した。この結果を表11及び表1
2に示す。
【0159】なお、比較用として、カーボン膜が形成さ
れ潤滑剤を保有していない磁気テープ(比較例13)、
潤滑剤として下記の表10に示される末端にカルボキシ
ル基を有するパーフルオロポリエーテルや末端に水酸基
を有するパーフルオロポリエーテルをそれぞれ使用した
磁気テープ(比較例14〜17)、カーボン膜が形成さ
れず潤滑剤層のみが形成された磁気テープ(比較例1
8)についても同様に測定し、その結果を表13に示
す。
【0160】
【表10】
【0161】
【表11】
【0162】
【表12】
【0163】
【表13】
【0164】表11乃至表13中、スチル耐久性はポー
ズ状態にて出力が−3dB低下するまでに要した時間を
表す。シャトル耐久性は1回につき2分間のシャトル走
行を行った時に出力が3dB低下するまでのシャトル回
数を表す。表11乃至表13から明らかなように、潤滑
剤として末端にカルボキシル基や水素基を有するパーフ
ルオロポリエーテルを単独で用いた場合よりも、本実施
例のように末端にカルボキシル基を有するパーフルオロ
ポリエーテルのアミン塩化合物を用いた場合には、摩擦
係数が低く、良好な走行性、耐久性が得られた。
【0165】また、各サンプルテープ1〜14と比較例
18の比較から、上記潤滑剤の使用に併せて磁性層の表
面にカーボン膜を形成させることにより、低温、或いは
高温高湿等の厳しい条件下でも摩擦係数、スチル耐久
性、シャトル耐久性は劣化することなく非常に良好な結
果を示すことが判った。更に、上記サンプルテープ1〜
14及び比較例13〜18について、温度25℃湿度6
0%の条件下での粉落ち量及びシャトル出力の低下量を
それぞれ測定したとこと、下記の表14に示す結果が得
られた。なお、粉落ち量は光学顕微鏡により磁性層の表
面を観察して評価し、シャトル出力の低下量は100回
シャトル走行した後の出力の低下量を調べた。
【0166】
【表14】
【0167】表14より、各サンプルテープ1〜14で
は、何れも粉落ちが少なく、出力の下もごく僅かである
ことが明らかとなった。 実験2 先ず、10μ厚のポリエチレンテレフタレートからなる
ベースフィルムの表面に溶媒としてイソプロピルアルコ
ールを用いてアクリル酸エステルを主成分とするバイン
ダー成分とSiO2 粒子(平均粒径18nm)を分散混
合したものを、前記SiO2 粒子の密度が1000万個
/mm2 となるように塗布して表面突起を設けた。
【0168】続いて、真空室内に配設されたルツボ内に
Co80Ni20(数値は重量%)合金を充填し、これを所
定の加熱手段により加熱溶解せしめながら、通常の手法
により斜方蒸着を行い、移動走行させれるベースフィル
ムの表面に上記ルツボより蒸発せしめられた磁性材料を
被着させて金属磁性薄膜を成膜した。この時、上記ベー
スフィルムの表面には、300cc/分の割合で酸素ガ
スを導入し、このベースフィルムの表面に対する上記磁
性材料の入射角が40〜90°の範囲で変化するように
設定した。また、上記ベースフィルムの走行速度は、得
られる金属磁性薄膜の膜厚が200nmとなるように調
整した。
【0169】そして、この金属磁性薄膜が形成された面
と反対側の上記ベースフィルムの表面にウレタンとカー
ボンを主成分とするバックコート層を形成した。その
後、連続巻取り式スパッタ装置を用い、Arガス雰囲気
中で直流マグネトロンスパッタリングを行って上記金属
磁性薄膜の表面にカーボン膜を成膜した。なお、このス
パッタリングに際し、真空度は2Paとし、得られるカ
ーボン膜の膜厚が20nmとなるように磁気テープの送
り速度を調整した。また、ターゲットの寸法は、幅20
0mm×長さ150mmの角型であり、このターゲット
と上記磁気テープとの基板間距離は50mmとした。
【0170】更に、この磁気テープを8mm幅に裁断し
た後、下記の表15中に示される化合物A、或いは化合
物Bがそれぞれ濃度0.06重量%の割合でフロン11
3に溶解されてなる潤滑剤に1m/分の速度で浸漬し
て、上記カーボン膜の表面に潤滑剤層を形成して各サン
プルテープ15,16を得た。
【0171】
【表15】
【0172】このようにして作製された上記サンプルテ
ープ15,16について、スチル耐久性、シャトル耐久
性及び偏摩耗量をそれぞれ調べた。この結果を下記の表
16に示す。なお、スチル耐久性はソニー社製のビデオ
デッキ(商品名EV−S1改造機)を用いて常温常湿に
てスチル走行させ、24時間を打切りとして出力が−3
dB低下するまでに要した時間を調べた。シャトル耐久
性はソニー社製のビデオデッキ(商品名EV−S90
0)を用いて常温常湿にて60分間を繰り返し走行した
時における1パス後の出力に対する100パス後の出力
の減衰量により評価した。このシャトル耐久性は次式
(2)により表される。
【0173】
【数2】
【0174】また、偏摩耗量は、光学顕微鏡で干渉縞を
つくり生じた段差を観察することによって評価した。
【0175】
【表16】
【0176】表16から明らかなように、両末端或いは
どちらか一方の末端にカルボキシル基を有するパーフル
オロポリエーテルのアミン塩化合物を潤滑剤として使用
することにより、何れの場合にも偏摩耗量が少なく、良
好な耐久性が得られた。 実験3 先ず、10μ厚のポリエチレンテレフタレートフィルム
の表面に真空蒸着法によりCo80Ni20(数値は重量
%)を被着させて金属磁性薄膜を成膜した。この時、上
記ベースフィルムの表面には、250cc/分の割合で
酸素ガスを導入し、このベースフィルムの表面に対する
上記磁性材料の入射角が45°となるように設定した。
【0177】続いて、Arガス雰囲気中でスパッタリン
グを行って上記金属磁性薄膜の表面に膜厚が20nmと
なるようにカーボン膜を成膜した。このスパッタリング
に際し、Arガス流量は300SCCMとし、磁気テー
プの送り速度は1m/分とした。そして、この磁気テー
プを上記の表9中に示される化合物C、或いは化合物D
がそれぞれ濃度0.06重量%の割合でフロン113に
溶解されてなる潤滑剤に1m/分の速度で浸漬して、上
記カーボン膜の表面に潤滑剤層を形成して各サンプルテ
ープ17,18を得た。
【0178】このようにして作製された各サンプルテー
プ17,18について、スチル耐久性、シャトル耐久
性、表面粗さ及び粉落ち量をそれぞれ調べた。この結果
を表17に示す。なお、スチル耐久性はソニー社製のビ
デオデッキ(商品名EV−S900)を用いてスチル走
行させた時の出力が−3dB低下するまでに要した時間
を表し、シャトル耐久性は上記ビデオデッキにて1回に
つき2分間のシャトル走行を行った時の100パス後の
出力減衰量を表す。また、表面粗さはタリステップ(針
圧2mg/mm2 )にて測定し、粉落ち量は各サンプル
テープ17,18と磁気ヘッドとを摺接させて使用した
後に光学顕微鏡(倍率:100倍)により上記磁気ヘッ
ドの表面を観察して評価した。
【0179】なお、比較用として、上記化合物C(又は
化合物D)の代わりに市販されているパーフルオロポリ
エーテル(商品名Z−DOL)を使用した磁気テープ
(比較例19)について同様に調べ、その結果を表17
に併せて記した。
【0180】
【表17】
【0181】表17に示すように、末端にカルボキシル
基を有するパーフルオロポリエーテルのアミン塩化合物
を潤滑剤として使用することにより、優れた耐久性が得
られるとともに、粉落ちが非常に少ないことが判った。
そこで、潤滑剤として使用されるパーフルオロポリエー
テル誘導体の分子量を変化させた時の各特性への影響を
調べた。 実験4 上記実験3と同様にしてベースフィルム上に金属磁性薄
膜及びカーボン膜を順次積層形成した後、上記カーボン
膜の表面に上記実験3と同じ条件にて分子量の異なる各
種パーフルオロポリエーテル誘導体を用いて潤滑剤層を
形成し、各サンプルテープ19〜22を作製した。な
お、本実験において使用したパーフルオロポリエーテル
誘導体の分子量は、下記の表18に示す通りである。
【0182】このようにして作製された各サンプルテー
プ19〜22について、上記実験3と同様にしてシャト
ル耐久性、表面粗さ及び摩擦係数をそれぞれ測定し、こ
の結果を表18に示した。
【0183】
【表18】
【0184】表18に示すように、潤滑剤として用いら
れるパーフルオロポリエーテル誘導体の分子量が140
0〜4500の範囲である場合には、摩擦係数を十分に
抑えることができ、良好な耐久性が得られるとともに、
粉落ちを防止することができた。これに対して、上記パ
ーフルオロポリエーテル誘導体の分子量が上記範囲より
も小さすぎる場合(比較例20)や逆に大きすぎる場合
(比較例21)には、繰り返し走行後の出力の低下が大
きくなるだけでなく、粉落ち量が増大した。
【0185】次に、上述のようなパーフルオロポリエー
テル誘導体の極性基部分の分子量と諸特性の関係につい
て検討した。 実験5 上記実験2と同様にしてベースフィルム上に金属磁性薄
膜及びカーボン膜を順次積層形成した後、上記カーボン
膜の表面に上記実験2と同じ条件にて異なる極性基を有
する3種類のパーフルオロポリエーテル誘導体を用いて
潤滑剤層をそれぞれ形成し、各サンプルテープ23〜2
5を作製した。なお、上記パーフルオロポリエーテル誘
導体は、両末端にそれぞれ極性基を有しており、その極
性基部分の構造及び分子量は、下記の表19に示す通り
である。
【0186】このようにして作製された各サンプルテー
プ23〜25について、上記実験2と同様にしてシャト
ル耐久性及び偏摩耗量をそれぞれ測定し、この結果を表
12に示した。但し、本実験では、シャトル耐久性試験
を行うに際し、ソニー社製のビデオデッキEV−S1改
造機(商品名)を使用した。なお、比較用として、極性
基部分の分子量が120を越えるパーフルオロポリエー
テル誘導体を潤滑剤として用いた場合(比較例22,比
較例23とする。)についても同様にして測定し、この
結果を表19に併せて記した。
【0187】
【表19】
【0188】表19に示すように、極性基部分の分子量
が大きくなるに従って、繰り返し走行後の出力劣化が増
大する傾向が見られた。また、偏摩耗量に関しても同様
の結果が得られた。このことから、良好な耐久性を確保
するためには、極性基部分の分子量を120以下に抑え
ることが必要であることが判った。非磁性支持体の裏面の表面性の検討 先ず、本実施例の磁気記録媒体の製造を行う真空蒸着装
置の構成について説明する。
【0189】この真空蒸着装置は、2層の金属磁性薄膜
を蒸着して磁性層を形成する場合の装置であり、図15
に示すように、内部が低圧状態となされた真空室581
内の上部左右に送り出しロール582,巻取りロール5
83を配設するとともに、真空室中央左右には第1の冷
却キャン584と第2の冷却キャン585を配してなる
ものである。また、送り出しロール582と冷却キャン
584の間にはガイドロール586、冷却キャン584
と冷却キャン585の間にはガイドロール587,58
8、さらに冷却キャン585と巻取りロール583の間
にはガイドロール589が配設されている。
【0190】上記第1の冷却キャン584は、送り出し
ロール582に巻装されている可撓性支持基板590を
図中下方に引き出すように設けられ、第2の冷却キャン
585は冷却キャン584と同一の高さに設けられてい
る。また、冷却キャン584,585は、送り出しロー
ル582や巻取りロール583の径よりも大径となされ
ている。なお、送り出しロール582、巻取りロール5
83及び冷却キャン584,585は、それぞれ可撓性
支持基板590と略同一な幅を有する円筒状をなすもの
であり、また冷却キャン584,585には、内部に図
示しない冷却装置が設けられ、上記可撓性支持基板の温
度上昇による変形等を抑制するような機構とされてい
る。
【0191】なお、ガイドロール586,589は、そ
れぞれ、送り出しロール582と冷却キャン584の
間、冷却キャン585と巻取りロール583の間に配設
され、他のガイドロール587,588は第1の冷却キ
ャン584及び第2の冷却キャン585の間に配設さ
れ、冷却キャン584,585よりも図中上方に設けら
れている。よって、ガイドロール586,587,58
8,589は、送り出しロール582から第1の冷却キ
ャン584に供給され、第1の冷却キャン584から第
2の冷却キャン585へ供給され、さらに第2の冷却キ
ャン585から巻取りロール583に巻取られる可撓性
支持基板590に所定のテンションをかけ、該可撓性支
持基板590が確実に冷却キャン584及び585の周
面上を走行するようになされているものである。
【0192】また、冷却キャン584,585の下方に
はルツボ591及び592が設けられ、このルツボ内に
金属磁性材料593が充填されている。上記第1の冷却
キャン584と金属磁性材料593の充填されたルツボ
591の間にあって該冷却キャン584の近傍には、冷
却キャン584の周面に対向するように湾曲形成されて
シャッター594が配設されている。第2の冷却キャン
585においても同様であり、シャッター595が配設
されている。さらに、冷却キャン585の側方の真空室
581壁面には監視窓596が設けられ、真空室581
外部には加熱装置597及び598が設けられている。
【0193】以上のように構成される真空蒸着装置にお
いては、送り出しロール582に巻装された可撓性支持
体590は、反時計回り方向に定速回転する送り出しロ
ール582からガイドロール586による所定のテンシ
ョンを受けながら、時計回り方向に定速回転する第1の
冷却キャン584に供給され、さらにガイドロール58
7によってテンションを受けながら図中上方に引き上げ
られ、ガイドロール588に渡って走行する。そして、
ガイドロール588から時計回り方向に定速回転する第
2の冷却キャン585に供給され、ガイドロール589
によって所定のテンションを受けながら時計回り方向に
定速回転する巻取りロール583に巻取られるようにな
されている。
【0194】そして、非磁性体である可撓性支持基板5
90は、上記第1の冷却キャン584及び第2の冷却キ
ャン585の周面を通過する際に蒸着加工される。すな
わち、図15の真空室内には、上述のように第1の冷却
キャン584の下方に金属磁性材料593が充填された
ルツボ591が設けられており、このルツボ591は上
記冷却キャン584の幅と同一の幅からなるものであ
る。このルツボ591に充填された金属磁性材料593
は真空室581外部に設けられた加熱装置597によっ
て加熱蒸発させられるものである。従って、この加熱装
置597によって蒸発した金属磁性材料593は、上記
冷却キャン584の周面を定速走行する可撓性支持基板
590上に第1の金属磁性薄膜として被着形成されるよ
うになされている。
【0195】また、さらに第1の金属磁性薄膜が被着形
成された可撓性支持基板590は、ガイドロール587
に図中上方に引き上げられ、ガイドロール588に渡
り、第2の冷却キャン585に供給される。第2の冷却
キャン585においても第1の冷却キャン584と同様
なルツボ592が設けられており、このルツボ592に
充填された金属磁性材料593は真空室1外部に設けら
れた加熱装置598によって加熱蒸発させられるもので
ある。従って、この加熱装置598によって蒸発した金
属磁性材料593は、上記冷却キャン585の周面を定
速走行する第1の金属磁性薄膜の形成された可撓性支持
基板590上に第2の金属磁性薄膜として被着形成され
るようになされている。
【0196】ここで、前述のシャッター594及び59
5がそれぞれ冷却キャン584,585の所定の領域を
覆うように配設されているため、上記金属磁性材料59
3が所定の角度範囲θで蒸着し、第1の金属磁性薄膜,
第2の金属磁性薄膜が形成されることになる。このよう
な装置によって、製造される磁気記録媒体は、図16に
示されるような構造を有しており、ポリエチレンテレフ
タレート等よりなる可撓性支持基板599の一方の主面
上に第1の金属磁性薄膜601a及び第2の金属磁性薄
膜601bが形成され、磁性層601が形成されてい
る。
【0197】上記可撓性支持基板599の一方の主面上
には、上記第1の金属磁性薄膜601aの下塗り膜60
0が塗布形成されており、この下塗り膜600を介して
該可撓性支持基板599上に第1の金属磁性薄膜601
aが形成されている。また、上記可撓性支持基板599
の他方の主面は、フィラー602による複数の突起59
9aを有する面とされている。さらには、磁性層601
上には保護膜603が形成され、可撓性支持基板599
の他方の主面上にはバックコート604が形成される。
【0198】そこで、前述の構成を有する真空蒸着装置
を用いて、以下のような手順に従って、上述のような構
造を有した2層の金属磁性薄膜より磁性層の構成されて
いる各種磁気テープの製造を行った。可撓性支持基板と
して、一主面(被蒸着面)が非常に平滑で、他方の主面
(走行面)はある程度の粗さを有する10μm厚のポリ
エチレンテレフタレートを用い、走行面の表面粗さを変
えたポリエチレンテレフタレートのフィルムに、下塗り
膜,磁性層,バックコート,トップコートの形成を行
い、比較例24〜27及び実施例26〜28を作成し
た。
【0199】この時の下塗り膜の形成条件はすべて同一
であり、平均粒径250Åのアクリル酸エステル系エマ
ルジョンを1000万個/mm2 の密度で被蒸着面に塗
布し、下塗り膜を形成した。また、蒸着条件も全て同一
であり、金属磁性材料としては、Co95−Ni5 (数字
は重量パーセントを示す。)を使用し、導入酸素量を2
00cc/min、第1,2の冷却キャン温度を−20
℃、入射角を45〜90°、テープ速度を18m/mi
nとした。なお、1層めの金属磁性薄膜の厚さを100
0Å、2層めの金属磁性薄膜の厚さも1000Åとして
磁性層を形成した。
【0200】磁性層の蒸着後、カーボン顔料とウレタン
系バインダーを中心とするバックコートを施し、H/R
処理を行い(150℃,0.3秒間)、トップコート処
理を施して、所定のテープ幅に裁断して、比較例24〜
27及び実施例26〜28とした。そして、これらの試
料の製造時の熱負けの個数、各試料の磁性層表面の粗
さ,エネルギー積,エラーレートを測定した。熱負けの
個数は、第2の冷却キャン周面上にて第2の金属磁性薄
膜を形成した直後に原反状態を図15中に示すような監
視窓516より目視によって確認したもので、比較例2
4〜27及び実施例26〜28の製造を1000m長行
った際に発生した熱負けの個数を示す。
【0201】また、表面粗さの測定には、ランクテイラ
ーボブソン社製のタリステップを用い、針圧2mg,針
径0.2×0.2μmの台形針を使用し、スキャン長
0.5mmでの測定とした。さらに、エネルギー積は残
留磁束密度Br と飽和磁化δ、保磁力Hc の積によって
求めた。結果を表20に示す。
【0202】
【表20】
【0203】表20をみてわかるように、可撓性支持基
板の走行面の粗さを規定する中心線平均粗さRa 及び突
起の最大高さRmax が本発明によって規定された範囲内
にある実施例26〜28は、Ra またはRmax が規定さ
れた範囲内にない比較例24〜27と比較して(尚、比
較例26,27は、冷却キャン走行時、表面にシワが発
生し、各項目について測定不可能であった。)、熱負け
がなくなり、これによって、磁気テープの磁性層側の面
の粗さも抑えられて平滑となり、また、エネルギー積も
向上し、エラーレートも向上した。
【0204】なお、上述の裏面側の表面粗さの規定は、
先の実施例のように、酸化物層を介して保護層を形成し
た場合や、ボンバード処理を施した場合等にも適用して
好適であことは言うまでもない。記録再生装置の構成 上述の各実施例の磁気記録媒体はディジタルVTRの記
録媒体として最適なものである。
【0205】ディジタルVTRは、カラービデオ信号を
ディジタル化して磁気テープ等の記録媒体に記録するも
のであり、放送局用のD1フォーマットのコンポーネン
ト形ディジタルVTR及びD2フォーマットのコンポジ
ット形ディジタルVTRが実用化されている。前者のD
1フォーマットディジタルVTRは、輝度信号及び第
1,第2の色差信号をそれぞれ13.5MHz、6.7
5MHzのサンプリング周波数でA/D変換した後、所
定の信号処理を行って磁気テープ上に記録するもので、
これらコンポーネント成分のサンプリング周波数が4:
2:2であることから、4:2:2方式とも称されてい
る。
【0206】一方、後者のD2フォーマットディジタル
VTRは、コンポジットカラービデオ信号をカラー副搬
送波信号の周波数の4倍の周波数の信号でサンプリング
を行ってA/D変換し、所定の信号処理を行った後、磁
気テープに記録するようにしている。いずれにしても、
これらのディジタルVTRは、共に放送局用に使用され
ることを前提に設計されているために、画質最優先とさ
れ、1サンプルが例えば8ビットにA/D変換されたデ
ィジタルカラービデオ信号を実質的に圧縮することなし
に記録するようになされている。
【0207】したがって、例えばD1フォーマットのデ
ィジタルVTRでは、大型のカセットテープを使用して
も高々1.5時間程度の再生時間しか得られず、一般家
庭用のVTRとして使用するには不適当である。そこで
上述の実施例においては、例えば5μmのトラック幅に
対して最短波長0.5μmの信号を記録するようにし、
記録密度8×105 bit/mm2 以上を実現するととも
に、記録情報を再生歪みが少ないような形で圧縮する方
法を併用することによって、テープ幅が8mmあるいはそ
れ以下の幅狭の磁気テープを使用しても長時間の記録・
再生が可能なディジタルVTRに適用するものとする。
そこで、以下このディジタルVTRの構成について説明
する。 a.信号処理部 先ず、本実施例において用いたディジタルVTRの信号
処理部について説明する。
【0208】図17は記録側の構成全体を示すものであ
り、1Y、1U、1Vでそれぞれ示す入力端子に、例え
ばカラービデオカメラからの三原色信号R,G,Bから
形成されたディジタル輝度信号Y、ディジタル色差信号
U、Vが供給される。この場合、各信号のクロックレー
トはD1フォーマットの各コンポーネント信号の周波数
と同一とされる。すなわち、それぞれのサンプリング周
波数が13.5MHz、6.75MHzとされ、且つこ
れらの1サンプル当たりのビット数が8ビットとされて
いる。したがって、入力端子1Y、1U、1Vに供給さ
れる信号のデータ量としては、約216Mbpsとな
る。この信号のうちブランキング時間のデータを除去
し、有効領域の情報のみを取り出す有効情報抽出回路2
によってデータ量が約167Mbpsに圧縮される。
【0209】そして、上記有効情報抽出回路2の出力の
うちの輝度信号Yが周波数変換回路3に供給され、サン
プリング周波数が13.5MHzからその3/4に変換
される。周波数変換回路3としては、例えば間引きフィ
ルタが使用され、折り返し歪みが生じないようになされ
ている。この周波数変換回路3の出力信号は、ブロック
化回路5に供給され、輝度データの順序がブロックの順
序に変換される。ブロック化回路5は、後段に設けられ
たブロック符号化回路8のために設けられている。
【0210】図19は、符号化の単位のブロックの構造
を示す。この例は、3次元ブロックであって、例えば2
フレームに跨がる画面を分割することにより、同図に示
すように(4ライン×4画素×2フレーム)の単位ブロ
ックが多数形成される。なお、図19において実線は奇
数フィールドのラインを示し、破線は偶数フィールドの
ラインを示す。
【0211】また、有効情報抽出回路2の出力のうち、
2つの色差信号U、Vがサブサンプリング及びサブライ
ン回路4に供給され、サンプリング周波数がそれぞれ
6.75MHzからその半分に変換された後、2つのデ
ィジタル色差信号が互いにライン毎に選択され、1チャ
ンネルのデータに合成される。したがって、このサブサ
ンプリング及びサブライン回路4からは線順次化された
ディジタル色差信号が得られる。このサブサンプリング
及びサブライン回路4によってサブサンプル及びサブラ
イン化された信号の画素構成を図20に示す。図20
中、○は第1の色差信号Uのサブサンプリング画素を示
し、△は第2の色素信号Vのサンプリング画素を示し、
×はサブサンプルによって間引かれた画素の位置を示
す。
【0212】上記サブサンプリング及びサブライン回路
4からの線順次化出力信号は、ブロック化回路6に供給
される。ブロック化回路6では一方のブロック化回路5
と同様に、テレビジョン信号の走査の順序の色差データ
がブロックの順序のデータに変換される。このブロック
化回路6は、一方のブロック化回路5と同様に、色差デ
ータを(4ライン×4画素×2フレーム)のブロック構
造に変換する。そしてこれらブロック化回路5及びブロ
ック化回路6の出力信号が合成回路7に供給される。
【0213】合成回路7では、ブロックの順序に変換さ
れた輝度信号及び色差信号が1チャンネルのデータに変
換され、この合成回路7の出力信号がブロック符号化回
路8に供給される。ブロック符号化回路8としては、後
述するようにブロック毎のダイナミックレンジに適応し
た符号化回路(ADRCと称する。)、DCT(Dis
crete Cosine Transform)回路
等が適用できる。前記ブロック符号化回路8からの出力
信号は、さらにフレーム化回路9に供給され、フレーム
構造のデータに変換される。このフレーム化回路9で
は、画素系のクロックと記録系のクロックとの乗り換え
が行われる。
【0214】次いで、フレーム化回路9の出力信号がエ
ラー訂正符号のパリティ発生回路10に供給され、エラ
ー訂正符号のパリティが生成される。パリティ発生回路
10の出力信号はチャンネルエンコーダ11に供給さ
れ、記録データの低域部分を減少させるようなチャンネ
ルコーディングがなされる。チャンネルエンコーダ11
の出力信号が記録アンプ12A,12Bと回転トランス
(図示は省略する。)を介して一対の磁気ヘッド13
A,13Bに供給され、磁気テープに記録される。な
お、オーディオ信号と、ビデオ信号とは別に圧縮符号化
され、チャンネルエンコーダ11に供給される。
【0215】上述の信号処理によって、入力のデータ量
216Mbpsが有効走査期間のみを抽出するによって
約167Mbpsに低減され、さらに周波数変換とサブ
サンプル、サブラインとによってこれが84Mbpsに
減少される。このデータは、ブロック符号化回路8で圧
縮符号化することにより、約25Mbpsに圧縮され、
その後のパリティ、オーディオ信号等の付加的な情報を
加えて、記録データ量としては31.56Mbpsとな
る。
【0216】次に、再生側の構成について図18を参照
しながら説明する。再生の際には、図18に示すよう
に、先ず磁気ヘッド13A,13Bからの再生データが
回転トランス及び再生アンプ14A,14Bを介してチ
ャンネルデコーダ15に供給される。チャンネルデコー
ダ15において、チャンネルコーディングの復調がさ
れ、チャンネルデコーダ15の出力信号がTBC回路
(時間軸補正回路)16に供給される。このTBC回路
16において、再生信号の時間軸変動成分が除去され
る。TBC回路16からの再生データがECC回路17
に供給され、エラー訂正符号を用いたエラー訂正とエラ
ー修整とが行われる。ECC回路17の出力信号がフレ
ーム分解回路18に供給される。
【0217】フレーム分解回路18によって、ブロック
符号化データの各成分がそれぞれ分離されるとともに、
記録系のクロックから画素系のクロックへの乗り換えが
なされる。フレーム分解回路18で分離された各データ
がブロック複号回路19に供給され、各ブロック単位に
原データと対応する復元データが複号され、複号データ
が分配回路20に供給される。この分配回路20で複号
データが輝度信号と色差信号に分離される。輝度信号及
び色差信号がブロック分解回路21,22にそれぞれ供
給される。ブロック分解回路21,22は、送信側のブ
ロック化回路5,6とは逆に、ブロックの順序の複号デ
ータをラスター走査の順に変換する。
【0218】ブロック分解回路21からの複号輝度信号
が補間フィルタ23に供給される。補間フィルタ23で
は、輝度信号のサンプリングレートが3fsから4fs
(4fs=13.5MHz)に変換される。補間フィル
タ23からのディジタル輝度信号Yは出力端子26Yに
取り出される。一方、ブロック分解回路22からのディ
ジタル色差信号が分配回路24に供給され、線順次化さ
れたディジタル色差信号U,Vがディジタル色差信号U
及びVにそれぞれ分離される。分配回路24からのディ
ジタル色差信号U,Vが補間回路25に供給され、それ
ぞれ補間される。補間回路25は、復元された画素デー
タを用いて間引かれたライン及び画素のデータを補間す
るもので、補間回路25からはサンプリングレートが2
fsのディジタル色差信号U及びVが得られ、出力端子
26U,26Vにそれぞれ取り出される。 b.ブロック符号化 図17におけるブロック符号化回路8としては、ADR
C(AdaptiveDynamic Range C
oding)エンコーダが用いられる。このADRCエ
ンコーダは、各ブロックに含まれる複数の画素データの
最大値MAXと最小値MINを検出し、これら最大値M
AX及び最小値MINからブロックのダイナミックレン
ジDRを検出し、このダイナミックレンジDRに適応し
た符号化を行い、原画素データのビット数よりも少ない
ビット数により、再量子化を行うものである。ブロック
符号化回路8の他の例としては、各ブロックの画素デー
タをDCT(Discrete Cosine Tra
nsform)した後、このDCTで得られた係数デー
タを量子化し、量子化データをランレングス・ハフマン
符号化して圧縮符号化する構成を用いてもよい。
【0219】ここでは、ADRCエンコーダを用い、さ
らにマルチダビングした時にも画質劣化が生じないエン
コーダの例を図21を参照しながら説明する。図21に
おいて、入力端子27に例えば1サンプルが8ビットに
量子化されたディジタルビデオ信号(或いはディジタル
色差信号)が図17の合成回路7より入力される。入力
端子27からのブロック化データが最大値,最小値検出
回路29及び遅延回路30に供給される。最大値,最小
値検出回路29は、ブロック毎に最小値MIN、最大値
MAXを検出する。遅延回路30からは、最大値及び最
小値が検出されるのに要する時間、入力データを遅延さ
せる。遅延回路30からの画素データが比較回路31及
び比較回路32に供給される。
【0220】最大値,最小値検出回路29からの最大値
MAXが減算回路33に供給され、最小値MINが加算
回路34に供給される。これらの減算回路33及び加算
回路34には、ビットシフト回路35から4ビット固定
長でノンエッジマッチング量子化した場合の1量子化ス
テップ幅の値(△=1/16DR)が供給される。ビッ
トシフト回路35は、(1/16)の割算を行うよう
に、ダイナミックレンジDRを4ビットシフトする構成
とされている。減算回路33からは(MAX−△)のし
きい値が得られ、加算回路34からは(MIN+△)の
しきい値が得られる。これらの減算回路33及び加算回
路34からのしきい値が比較回路31,32にそれぞれ
供給される。なお、このしきい値を規定する値△は、量
子化ステップ幅に限らず、ノイズレベルに相当する固定
値としてもよい。
【0221】比較回路31の出力信号がANDゲート3
6に供給され、比較回路32の出力信号がANDゲート
37に供給される。ANDゲート36及びANDゲート
37には、遅延回路30からの入力データが供給され
る。比較回路31の出力信号は、入力データがしきい値
より大きい時にハイレベルとなり、したがってANDゲ
ート36の出力端子には、(MAX〜MAX−△)の最
大レベル範囲に含まれる入力データの画素データが抽出
される。一方、比較回路32の出力信号は、入力データ
がしきい値より小さい時にハイレベルとなり、したがっ
てANDゲート37の出力端子には、(MIN〜MIN
+△)の最小レベル範囲に含まれる入力データの画素デ
ータが抽出される。
【0222】ANDゲート36の出力信号が平均化回路
38に供給され、ANDゲート37の出力信号が平均化
回路39に供給される。これらの平均化回路38,39
は、ブロック毎に平均値を算出するもので、端子40か
らブロック周期のリセット信号が平均化回路38,39
に供給されている。平均化回路38からは、(MAX〜
MAX−△)の最大レベル範囲に属する画素データの平
均値MAX´が得られ、平均化回路39からは(MIN
〜MIN+△)の最小レベル範囲に属する画素データの
平均値MIN´が得られる。平均値MAX´から平均値
MIN´が減算回路41で減算され、この減算回路41
からダイナミックレンジDR´が得られる。
【0223】また、平均値MIN´が減算回路42に供
給され、遅延回路43を介された入力データから平均値
MIN´が減算回路42において減算され、最小値除去
後のデータPDIが形成される。このデータPDI及び
修整されたダイナミックレンジDR´が量子化回路44
に供給される。この実施例では、量子化に割り当てられ
るビット数nが0ビット(コード信号を転送しない)、
1ビット、2ビット、3ビット、4ビットの何れかとさ
れる可変長のADRCであって、エッジマッチング量子
化がなされる。割り当てビット数nは、ブロック毎にビ
ット数決定回路45において決定され、ビット数nのデ
ータが量子化回路44に供給される。
【0224】可変長ADRCは、ダイナミックレンジD
R´が小さいブロックでは、割り当てビット数nを少な
くし、ダイナミックレンジDR´が大きいブロックで
は、割り当てビット数nを多くすることで、効率の良い
符号化を行うことができる。すなわち、ビット数nを決
定する際のしきい値をT1〜T4(T1<T2<T3<
T4)とすると、(DR´<T1)のブロックは、コー
ド信号が転送されず、ダイナミックレンジDR´の情報
のみが転送され、(T1≦DR´<T2)のブロック
は、(n=1)とされ、(T2≦DR´<T3)のブロ
ックは、(n=2)とされ、(T3≦DR´<T4)の
ブロックは、(n=3)とされ、(DR´≧T4)のブ
ロックは、(n=4)とされる。
【0225】かかる可変長ADRCではしきい値T1〜
T4を変えることで、発生情報量を制御すること(いわ
ゆるバッファリング)ができる。したがって、1フィー
ルド或いは、1フレーム当たりの発生情報量を所定値に
することが要求されるこの発明のディジタルビデオテー
プレコーダのような伝送路に対しても可変長ADRCを
適用できる。
【0226】発生情報量を所定値にするためのしきい値
T1〜T4を決定するバッファリング回路46では、し
きい値の組(T1、T2、T3、T4)が複数例えば3
2組用意されており、これらのしきい値の組がパラメー
タコードPi(i=0、1、2・・・・31)により区
別される。パラメータコードPiの番号iが大きくなる
に従って、発生情報量が単調に減少するように設定され
ている。ただし、発生情報量が減少するに従って、復元
画像の画質が劣化する。
【0227】バッファリング回路46からのしきい値T
1〜T4が比較回路47に供給され、遅延回路48を介
されたダイナミックレンジDR´が比較回路47に供給
される。遅延回路48は、バッファリング回路46でし
きい値の組が決定されるのに要する時間、DR´を遅延
させる。比較回路47では、ブロックのダイナミックレ
ンジDR´と各しきい値とがそれぞれ比較され、比較出
力がビット数決定回路45に供給され、そのブロックの
割り当てビット数nが決定される。量子化回路44で
は、ダイナミックレンジDR´と割り当てビット数nと
を用いて遅延回路49を介された最小値除去後のデータ
PDIがエッジマッチングの量子化により、コード信号
DTに変換される。量子化回路44は、例えばROMで
構成されている。
【0228】遅延回路48、50をそれぞれ介して修整
されたダイナミックレンジDR´、平均値MIN´が出
力され、さらにコード信号DTとしきい値の組を示すパ
ラメータコードPiが出力される。この例では、一旦ノ
ンエッジマッチ量子化された信号が新たにダイナミック
レンジ情報に基づいて、エッジマッチ量子化されている
ためにダビングした時の画像劣化は少ないものとされ
る。 c.チャンネルエンコーダ及びチャンネルデコーダ 次に、図17のチャンネルエンコーダ11及びチャンネ
ルデコーダ15について説明する。
【0229】チャンネルエンコーダ11においては、図
22に示すように、パリティ発生回路10の出力が供給
される適応型スクランブル回路で、複数のM系列のスク
ランブル回路51が用意され、その中で入力信号に対し
最も高周波成分及び直流成分の少ない出力が得られるよ
うなM系列が選択されるように構成されている。パーシ
ャルレスポンス・クラス4検出方式のためのプリコーダ
52で、1/1−D2(Dは単位遅延用回路)の演算処
理がなされる。このプリコーダ52の出力を記録アンプ
12A,13Aを介して磁気ヘッド13A,13Bによ
り、記録再生し、再生出力を再生アンプ14A,14B
によって増幅するようになされている。
【0230】一方、チャンネルデコーダ15において
は、図23に示すように、パーシャルレスポンス・クラ
ス4の再生側の演算処理回路53は、1+Dの演算が再
生アンプ14A,14Bの出力に対して行われる。ま
た、いわゆるビタビ複号回路54においては、演算処理
回路53の出力に対してデータの相関性や確からしさ等
を用いた演算により、ノイズに強いデータの複号が行わ
れる。このビタビ複号回路54の出力がディスクランブ
ル回路55に供給され、記録側のスクランブル処理によ
って並び変えられたデータが元の系列に戻されて原デー
タが復元される。この実施例において用いられるビタビ
複号回路54によって、ビット毎の複号を行う場合より
も、再生C/N換算が3dBで改良が得られる。 d.走行系 磁気ヘッド13A及び磁気ヘッド13Bは、図24に示
すように、一体構造とされた形でドラム76に取付けら
れる。
【0231】ドラム76の周面には、180°よりやや
大きいか、あるいはやや小さい巻き付け角で磁気テープ
(図示せず。)が斜めに巻き付けられており、磁気ヘッ
ド13A及び磁気ヘッド13Bが同時に磁気テープを走
査するように構成される。また、前記磁気ヘッド13A
及び磁気ヘッド13Bのギャップの向きは、互いに反対
側に傾くように(例えば磁気ヘッド13Aはトラック幅
方向に対して+20°、磁気ヘッド13Bは−20°傾
斜するように)設定されており、再生時にいわゆるアジ
マス損失によって隣接トラック間のクロストーク量を低
減するようになされている。
【0232】図25及び図26は、磁気ヘッド13A,
13Bを一体構造(いわゆるダブルアジマスヘッド)と
した場合のより具体的な構成を示すもので、例えば高速
で回転される上ドラム76に一体構造の磁気ヘッド13
A,13Bが取り付けられ、下ドラム77が固定とされ
ている。ここで、磁気テープ78の巻き付け角θは16
6°、ドラム径φは16.5mmである。
【0233】したがって、磁気テープ78には、1フィ
ールドのデータが5本のトラックに分割して記録され
る。このセグメント方式により、トラックの長さを短く
することができ、トラックの直線性に起因するエラーを
小さくすることができる。上述のように、ダブルアジマ
スヘッドで同時記録を行うようにすることで、180°
の対向角度で一対の磁気ヘッドが配置されたものと比較
して直線性に起因するエラー量を小さくすることがで
き、またヘッド間距離が小さいのでペアリング調整をよ
り正確に行うことができる。したがって、このような走
行系により、幅狭のトラックで記録・再生を行うことが
できる。
【0234】
【発明の効果】上述したように、本発明によれば磁性層
上の酸化物層と、この上に被着する保護層との膜厚を適
切に選定することによって、電磁変換特性の劣化を招く
ことなく耐久性を著しく向上させることができる。特に
酸化物層及び保護層の全厚さTを100Å程度以下とし
て、従来に比し各層の厚さを小としても、良好な耐久性
を保持しつつ、電磁変換特性の向上を図ってディジタル
記録におけるビットエラーレートを著しく減少させるこ
とができ、記録再生特性の向上を図ることができる。
【0235】また、保護膜上に非常に優れた潤滑性を有
するパーフルオロポリエーテル誘導体(アミン塩化合
物)を潤滑剤として保有せしめているので、如何なる使
用条件下でも潤滑性を保つことができ、また長期にわた
りその潤滑性を保つことができる。従って、各種使用条
件において優れた走行性、耐摩耗性、耐久性を有する磁
気記録媒体を提供することが可能となる。
【0236】さらに、本発明においては、可撓性支持基
板の一方の面上に複数の金属磁性薄膜が形成されてなる
磁気記録媒体において、中心線平均粗さRa 及び突起の
最大高さRmax をそれぞれ、0.0015≦Ra ≦0.
0070μm,0.015≦Rmax ≦0.070μmの
範囲に規定することによって可撓性支持基板の走行面の
粗さを規定している。そのため、斜め蒸着法を用いて、
可撓性支持基板を冷却キャン上に沿わせて磁性層の蒸着
を行う際、可撓性支持基板の冷却キャン外周面上への良
好な走行性を得ることができ、しかも可撓性支持基板が
冷却キャン上にて充分冷却されるため、熱負けによる表
面性劣化がないことから、エネルギー積,エラーレート
が向上し、電磁変換特性が向上される。また、熱負けに
よるシワ等の発生がないことから、製造時の歩留りの低
下が起こりにくい。
【0237】一方、保護膜性膜前にボンバード処理を施
すことにより、保護膜の付着力を十分に確保することが
でき、したがって磁気ヘッドの摺接時における上記保護
膜の剥離が抑えられ、耐久性、信頼性に優れた磁気記録
媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明磁気記録媒体の一例の略線的拡大断面図
である。
【図2】蒸着装置の一例の略線的構成図である。
【図3】磁気記録媒体の一例の断面深さ方向の濃度プロ
ファイルである。
【図4】磁気記録媒体の他の例の断面深さ方向の濃度プ
ロファイルである。
【図5】本発明の磁気記録媒体の製造方法を適用して磁
気記録媒体を製造する際に使用した製造装置の構成を示
す模式的な断面図である。
【図6】強磁性金属薄膜成膜後にボンバード処理を施し
て製造された磁気記録媒体のオージェ電子分光分析によ
るデプスプロファイルである。
【図7】強磁性金属薄膜の成膜後にボンバード処理を行
わず保護膜の成膜を行うことによって得られた磁気記録
媒体のオージェ電子分光分析によるデプスプロファイル
である。
【図8】中間酸化層を介して積層された2層構造の強磁
性金属薄膜を磁性層とする磁気記録媒体の一構成例を示
す要部概略断面図である。
【図9】図8に示す磁気記録媒体の製造過程における蒸
気流の入射角の定義を説明するための部分概略側面図で
ある。
【図10】図8に示す磁気記録媒体のオージェ分光分析
によるデプス・プロファイル図である。
【図11】ボンバード処理を施して積層された2層構造
の強磁性金属薄膜を磁性層とする磁気記録媒体の一構成
例を示す要部概略断面図である。
【図12】図11に示す磁気記録媒体を製造する際に使
用される製造装置の一例を示す模式図である。
【図13】蒸着時の酸素ガス流量とこの蒸着により得ら
れる磁性層のスチル時間の関係を示す特性図である。
【図14】蒸着時の酸素ガス流量とこの蒸着により得ら
れる磁性層の出力特性及びC/N特性を示す特性図であ
る。
【図15】2層構造の磁性層を有する磁気記録媒体を製
造するための製造装置の構成例を示す模式図である。
【図16】バック面の面粗さを調整した磁気記録媒体の
構成例を示す要部概略断面図である。
【図17】ディジタル画像信号を再生歪みが少ないよう
な形で圧縮して記録するディジタルVTRの信号処理部
の記録側の構成を示すブロック図である。
【図18】信号処理部の再生側の構成を示すブロック図
である。
【図19】ブロック符号化のためのブロックの一例を示
す略線図である。
【図20】サブサンプリング及びサブラインの説明のた
めの略線図である。
【図21】ブロック符号化回路の一例を示すブロック図
である。
【図22】チャンネルエンコーダの一例の概略を示すブ
ロック図である。
【図23】チャンネルデコーダの一例の概略を示すブロ
ック図である。
【図24】磁気ヘッドの配置の一例を模式的に示す平面
図である。
【図25】回転ドラムの構成例及び磁気テープの巻き付
け状態を示す平面図である。
【図26】回転ドラムの構成例及び磁気テープの巻き付
け状態を示す正面図である。
【符号の説明】
101・・・基板 102・・・金属磁性薄膜 103・・・酸化物層 104・・・保護層
フロントページの続き (72)発明者 近藤 洋文 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 山田 ゆかり 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に金属磁性薄膜、該金属磁性薄膜
    の酸化物層及び保護層が順次形成されて成り、 上記酸化物層の厚さが20〜230Åとされ、 上記保護層の厚さが20〜230Åとされ、 上記酸化物層と上記保護層との全厚さが40〜250Å
    とされたことを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 保護層が無機材料よりなることを特徴と
    する請求項1記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 保護層の表面に下記の化1で示される両
    方の末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエ
    ーテルのアミン塩化合物を潤滑剤として保有することを
    特徴とする磁気記録媒体。 【化1】
  4. 【請求項4】 保護層の表面に下記の化2で示される少
    なくとも一方の末端にカルボキシル基を有するパーフル
    オロポリエーテルのアミン塩化合物を潤滑剤として保有
    することを特徴とする磁気記録媒体。 【化2】
  5. 【請求項5】 末端にカルボキシル基を有するパーフル
    オロポリエーテルのアミン塩化合物の分子量が1400
    〜4500であることを特徴とする請求項3又は4記載
    の磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 末端にカルボキシル基を有するパーフル
    オロポリエーテルのアミン塩化合物の極性基部分の分子
    量が120以下であることを特徴とする請求項3又は4
    記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 非磁性支持体の一方の面上に複数の強磁
    性金属薄膜が形成されてなる磁気記録媒体において、 上記非磁性支持体の他方の面の中心線平均粗さRa 及び
    突起の最大高さRmaxが、それぞれ、0.0015≦R
    a ≦0.0070μm,0.015≦Rmax ≦0.07
    0μmであることを特徴とする磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】 真空チャンバ内でベースフィルム上に真
    空蒸着法により強磁性金属薄膜を形成した後、 この強磁性金属薄膜を1.6kW/m2 以上の投入電力
    密度でボンバード処理し、 更に同一真空チャンバ内で連続的に上記強磁性金属薄膜
    上に保護膜を形成することを特徴とする磁気記録媒体の
    製造方法。
  9. 【請求項9】 ボンバード処理を不活性ガス雰囲気中で
    行うことを特徴とする請求項8記載の磁気記録媒体の製
    造方法。
  10. 【請求項10】 保護膜がカーボン膜であることを特徴
    とする請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法。
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