JPH05270912A - 圧電/電歪膜型素子 - Google Patents

圧電/電歪膜型素子

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JPH05270912A
JPH05270912A JP4094742A JP9474292A JPH05270912A JP H05270912 A JPH05270912 A JP H05270912A JP 4094742 A JP4094742 A JP 4094742A JP 9474292 A JP9474292 A JP 9474292A JP H05270912 A JPH05270912 A JP H05270912A
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electrostrictive
oxide
ceramic substrate
mol
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Yukihisa Takeuchi
幸久 武内
Koji Kimura
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NGK Insulators Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 低作動電圧で大変位が得られ、また信頼性が
高く、応答速度が早く、且つ発生力が大きい、更に高集
積化が可能である、強度並びにアクチュエータ作動特性
に優れた圧電/電歪膜型素子を提供する。 【構成】 薄肉のセラミック基板と、該セラミック基板
上に設けられた、電極及び圧電/電歪層からなる圧電/
電歪作動部とを備えた圧電/電歪素子において、該圧電
/電歪作動部を膜形成する一方、前記セラミック基板
を、結晶相が部分安定化され、且つその結晶相が、主と
して正方晶、若しくは立方晶、正方晶、単斜晶のうち2
つ以上の結晶相の混晶からなる酸化ジルコニウムを主成
分とする材料にて構成すると共に、かかる基板の表面粗
さ:Raを0.03〜0.9μmの範囲とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、圧電/電歪膜型素子、中でも主
にインクジェットプリントヘッド、マイクロホン、発音
体(スピーカー等)、各種振動子や発振子、更にはセン
サー等に用いられるユニモルフ型やバイモルフ型等の、
屈曲変位を発生させるタイプの圧電/電歪膜型素子に関
するものである。なお、ここで呼称される素子とは、電
気エネルギーを機械エネルギーに変換、即ち機械的な変
位または応力または振動に変換する素子の他、その逆の
変換を行なう素子をも意味するものである。また、本発
明による素子は、圧電/電歪特性の他、誘電性も有して
いるので、膜状のコンデンサ素子等としても用いること
が可能である。
【0002】
【背景技術】近年、光学や精密加工等の分野において、
サブミクロンのオーダーで光路長や位置を調整する変位
素子や微小変位を電気的変化として検知する検出素子が
所望されるようになってきており、これに応えるものと
して、強誘電体等の圧電/電歪材料に電界を加えた時に
起こる逆圧電効果や電歪効果に基づくところの変位或い
はその逆の現象を利用した素子である、アクチュエータ
やセンサの如き圧電/電歪素子の開発が進められてい
る。
【0003】ところで、インクジェットプリントヘッド
等においては、そのような圧電/電歪素子構造として、
従来から知られているユニモルフ型やバイモルフ型が、
好適に採用されている。そして、そこでは、そのような
素子を用いたプリンタの印字品質・印字速度等の向上が
要求されており、それに応えるべく、かかる圧電/電歪
膜型素子の小型高密度化、低電圧作動化、高速応答化を
図るための開発が進められている。
【0004】また、それらユニモルフ型やバイモルフ型
の圧電/電歪素子においては、大きな屈曲変位や発生力
或いは発生電位を得るために、振動板となる基板の厚さ
を薄くすることが重要とされるが、かかる基板の厚さを
減少させると、強度が低下するという欠点があった。し
かも、従来のユニモルフ型やバイモルフ型の圧電/電歪
素子においては、何れも、圧電/電歪板等の板状の構成
部材を接着剤等を用いて貼り付けてなる構造を採用する
ものであるために、素子としての作動の信頼性にも問題
があるものであった。
【0005】
【解決課題】ここにおいて、本発明は、かかる事情を背
景にして為されたものであって、その課題とするところ
は、相対的に低作動電圧で大変位が得られ、また信頼性
が高く、応答速度が早く、且つ発生力が大きい、更に高
集積化が可能である、インクジェットプリントヘッド、
マイクロホン、発音体(スピーカー等)、各種振動子や
発振子、更には加速度センサー、圧力センサー、振動セ
ンサー、角速度センサー等に好適に用いられる、強度に
優れた圧電/電歪膜型素子を提供することにあり、また
そのような圧電/電歪膜型素子における圧電/電歪作動
部と基板との間の付着強度を確保しつつ、圧電/電歪作
動部に発生する歪み、応力を有効に基板に伝え得るよう
にすることにある。
【0006】
【解決手段】そして、本発明にあっては、上記の如き課
題を解決するために、薄肉のセラミック基板と、該セラ
ミック基板上に設けられた、電極及び圧電/電歪層から
なる圧電/電歪作動部とを備えた圧電/電歪素子におい
て、前記圧電/電歪作動部が膜形成法によって形成され
ている一方、前記セラミック基板が、酸化イットリウ
ム、酸化セリウム、酸化マグネシウム及び酸化カルシウ
ムからなる群より選ばれた少なくとも一つの化合物の含
有によって結晶相が部分安定化され、且つその結晶相
が、主として正方晶、若しくは主として、正方晶、立方
晶、単斜晶のうちの少なくとも2種以上の結晶相を含む
混晶からなる酸化ジルコニウムを主成分とする材料から
構成されていると共に、かかるセラミック基板の表面粗
さ:Raが0.03〜0.9μmの範囲内とされている
ことを特徴とする圧電/電歪膜型素子を、その要旨とす
るものである。
【0007】
【作用・効果】このような本発明に従う圧電/電歪膜型
素子にあっては、薄肉のセラミック基板と、その基板面
上に形成された膜状の圧電/電歪作動部(二つの電極膜
とそれら電極膜の間に形成された膜状の圧電/電歪層か
ら構成される)とからなるものであるところから、相対
的に低作動電圧にて大変位が得られ、また応答速度が早
く、且つ発生力或いは発生電位も大きい特徴が得られる
他に、厚膜形成法の如き膜形成プロセスが得意とすると
ころの、同一基板面上に多数個の圧電/電歪作動部を有
する素子を接着材を用いずに同時に且つ容易に形成する
ことが出来る特徴があり、更には、かかる圧電/電歪作
動部の高集積化が可能となる特徴をも有している。
【0008】しかも、本発明にあっては、そのような圧
電/電歪作動部が形成される基板として用いられるセラ
ミック基板は、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化
カルシウム及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれ
た少なくとも一つの化合物の含有によって、その結晶相
が部分安定化された酸化ジルコニウムを主成分とする材
料であるところから、薄い板厚においても、機械的強度
が大きい、高靭性である、また圧電/電歪材料との熱処
理時の応力が小さい、更にその圧電/電歪材料との化学
的な反応性が小さい等の特徴が得られ、以て優れた特性
を有する素子の提供が可能となったのである。
【0009】すなわち、酸化ジルコニウムは、公知のよ
うに、添加物を含まない純粋な状態では、1000℃近
辺での単斜晶・正方晶間の相変態により、磁器破壊が生
じ、薄肉の基板としては製造することが困難となるが、
上記の如き化合物を添加することにより、そのような結
晶変態が起こらないように、結晶相を完全に若しくは部
分的に安定化することが出来るのである。ここで、部分
的に安定化するとは部分的に結晶変態が起こり得るよう
に材料を調整することである。そして、本発明において
は、その結晶相が、主として正方晶、若しくは主とし
て、正方晶、立方晶、単斜晶のうち少なくとも2種以上
の結晶相を含む混晶からなる部分安定化された酸化ジル
コニウムは、応力によって結晶変態が生じる、即ち応力
誘起相変態強化メカニズム等により、高い機械強度、靭
性を示し、圧電/電歪層と電極膜と基板とが接着剤なし
に一体として構成され、変位または、力或いは電位を発
生する圧電/電歪膜型素子における基板材料として、非
常に好適に用いられ得るものであり、そのような材料特
性を利用して、膜型素子を有利に構成し得たものであ
る。
【0010】また、本発明では、優れた圧電/電歪材料
特性を得る為に、後述するように、電極材料や圧電/電
歪材料はガラス等の所謂接着質のものを含有するもので
はないので、圧電/電歪作動部と基板との付着性を高
め、圧電/電歪層の発生する歪み、応力を、振動板とな
る基板に有効に伝えるために、またその逆の作用が有効
に行なわれるために、基板の表面粗さが重要な因子とな
るのである。そして、そのために、本発明にあっては、
Raで表わされる表面粗さにおいて、0.03〜0.9
μmの範囲が、更に好ましくは0.1〜0.7μmの範
囲の表面粗さが、選択されることとなるのである。な
お、この表面粗さが大きくなると、付着強度は増大する
ものの、圧電/電歪作動部の平坦性が低下するため、圧
電/電歪層に作用する電界に不均一が生じ、以て素子特
性を低下させることになる。また、本発明において好ま
しく採用される厚さ50μm以下の板厚を有する基板の
強度も、その表面粗さに影響を受けるため、前記表面粗
さの範囲は重要である。
【0011】なお、本発明において、マグネシウムニオ
ブ酸鉛を第三成分としたジルコン酸チタン酸鉛を圧電/
電歪材料の主成分として用い、前記部分安定化した酸化
ジルコニウム基板と組み合わせることにより、厚膜手法
等によって膜形成した圧電/電歪層の熱処理時、基板と
の反応等による膜状の圧電/電歪層の組成変動或いはパ
イロクロア等の結晶相を惹起させることが非常に少な
く、目的とする組成及び結晶構造の圧電/電歪層を有利
に形成することが出来る特徴を発揮する。
【0012】また、本発明に従う圧電/電歪膜型素子で
は、低電圧作動が可能で、しかも大きな屈曲変位・発生
力或いは発生電位を得るために、有利には、厚さとして
100μm以下、好ましくは50μm以下である圧電/
電歪作動部と、厚さとして50μm以下、好ましくは3
0μm以下、更に好ましくは10μm以下のセラミック
基板とから構成されることとなる。また、そのような薄
い板厚においても高い機械強度を得るために、部分安定
化酸化ジルコニウムとしては、好ましくは、酸化イット
リウムで安定化された酸化ジルコニウムが基板材料とし
て採用され、且つそのような酸化イットリウムの含有量
は、2モル%以上7モル%以下、好ましくは2モル%以
上4モル%以下とされ、且つその部分安定化された酸化
ジルコニウムの結晶相は、主として正方晶、若しくは主
として、正方晶、立方晶、単斜晶のうち少なくとも2種
以上の結晶相を含む混晶からなることとなる。更に、基
板の結晶粒子径としても、基板の機械強度の点から、平
均粒子径として、0.05μm〜3μmであることが好
ましく、更に好ましくは1μm以下であることが望まし
い。このような範囲の結晶粒子径は、前記した結晶相を
安定に存在させるためにも重要である。
【0013】
【具体的構成・実施例】以下に、本発明に従う圧電/電
歪膜型素子の具体的構造を示す図面を参照しつつ、本発
明を更に具体的に明らかにすることとする。なお、理解
を容易にするために、各図面を通して、同様の構造乃至
は機能を有するものには、同一の符号を付すものとす
る。
【0014】先ず、図1に示される圧電/電歪膜型素子
(アクチュエータ)は、薄肉の平板状のセラミック基板
2の一方の面上に、第一の電極膜4、膜状の圧電/電歪
層6及び第二の電極膜8が、通常の膜形成手法によって
順次積層形成されて、多層の一体構造とされている。な
お、第一及び第二の電極膜4,8は、それぞれ、圧電/
電歪層6の端部より延び出させられて、リード部4a,
8aを形成しており、それらリード部4a,8aを通じ
て、それぞれの電極膜4,8に電圧印加が行なわれるよ
うになっている。また、セラミック基板2は、本発明に
従って、部分安定化された酸化ジルコニウム材料から構
成されており、しかも、その表面粗さ:Raが0.03
〜0.9μmの範囲となるように仕上げられている。従
って、このような構造の圧電/電歪膜型素子において
は、その圧電/電歪層6に電界が作用せしめられると、
電界誘起歪の横効果により、セラミック基板2の板面に
垂直な方向の屈曲変位乃至は発生力が発現せしめられる
のである。
【0015】また、図2においては、セラミック基板2
の一面上に複数の帯状電極10とそれらを接続する帯状
の電極接続部12とからなる櫛型の電極膜14a及びそ
れと同形状の電極膜14bが、図示の如き配置形態にお
いて、それぞれ設けられると共に、更にそれらの電極膜
14a,14b間に、それら電極膜14a,14bと接
するように、圧電/電歪層6が形成され、一体構造とさ
れている。そして、かかる構造の圧電/電歪膜型素子に
おいては、その圧電/電歪層6に電界が作用せしめられ
ると、電界誘起歪の縦効果により、セラミック基板2の
板面に垂直な方向の屈曲変位乃至は発生力が発現せしめ
られるのである。
【0016】さらに、図3及び図4には、それぞれ、図
1及び図2に示される如き素子において、そのセラミッ
ク基板2の形状を変えた例が示されている。即ち、図3
及び図4においては、外縁部が厚肉とされる一方、内側
部位が薄肉厚部16aとされたセラミック基板16が用
いられており、そして、その薄肉厚部16aの面上に
は、二つの電極膜4,8;14a,14bと圧電/電歪
層6とからなる圧電/電歪作動部が、一体的に設けられ
ている。
【0017】さらにまた、図5に示される素子は、セラ
ミック基板16の薄肉厚部16aの両面に、圧電/電歪
作動部(4,6,8)がそれぞれ設けられたバイモルフ
型の圧電/電歪膜型素子の例である。
【0018】図6に示される素子においては、セラミッ
ク基板2の一方の面上に、二つの帯状電極膜18,18
が渦巻状に相対向して位置するように設けられ、またこ
れら帯状電極膜18,18を埋め込むように、圧電/電
歪層6が設けられることによって、それら帯状電極膜1
8,18と圧電/電歪層6とによって、圧電/電歪作動
部が構成されている。
【0019】また、図7〜図11は、それぞれ、複数の
圧電/電歪作動部がセラミック基板上に設けられてな
る、本発明に従う素子の異なる例を示すものであって、
それら複数の圧電/電歪作動部は、積層形態において、
或いは並設形態において、セラミック基板上に設けられ
ている。
【0020】例えば、図7では、セラミック基板2の一
方の面上に、一定の間隔で複数の帯状電極膜18が配列
され、そして、それら帯状電極膜18を埋め込んだ状態
において、所定厚さの圧電/電歪層6が設けられること
によって、圧電/電歪作動部が形成された例が示されて
おり、更にその圧電/電歪作動部(6,18)上には、
電極膜20、膜状の圧電/電歪層22及び電極膜20が
順次積層一体化せしめられた構造とされている。かかる
二つの電極膜20,20と圧電/電歪層22によって、
他の一つの圧電/電歪作動部が形成されているのであ
る。
【0021】また、図8〜図10に示される例において
は、複数の圧電/電歪作動部(4,6,8)がセラミッ
ク基板2上に並設形態において設けられており、特に図
8及び図9に示される素子においては、それら複数の圧
電/電歪作動部(4,6,8)の間に位置するセラミッ
ク基板2に、スリット24が入れられて、それぞれの圧
電/電歪作動部が互いに独立した形態とされている。ま
た、図10の素子においは、セラミック基板2に長手の
矩形孔26が所定ピッチで設けられ、梯子状のセラミッ
ク基板2とされており、そして、この梯子状のセラミッ
ク基板2の矩形孔26,26に挟まれた接続部2a上に
第一の電極膜4と膜状の圧電/電歪層6と第二の電極膜
8とからなる圧電/電歪作動部が、それぞれ形成されて
いる。なお、図8において、28は、圧電/電歪層6の
背部で、第一の電極膜4と第二の電極膜8とを電気的に
絶縁する絶縁膜である。
【0022】さらに、図11に示される素子の例におい
ては、1枚の大きなセラミック基板2上に、第一の電極
膜4と膜状の圧電/電歪層6と第二の電極膜8とからな
る圧電/電歪作動部の複数が、所定ピッチにて一体的に
並設された構造において設けられている。
【0023】更にまた、図12及び図13には、図11
に示される素子において、そのセラミック基板2の形状
及び圧電/電歪作動部(4,6,8)の配設形態を変え
た例が示されている。即ち、基板裏面形態を示す図12
から明らかなように、厚肉のセラミック基板16の裏面
に、所定の大きさのキャビティ30が所定ピッチで千鳥
状に設けられており、以てこのキャビティ30の底部に
よって与えられる薄肉厚部16aが千鳥状に配置された
基板構成となっている。そして、このセラミック基板1
6の表面には、図13に示されるように、前記薄肉厚部
16a上に位置するように、圧電/電歪作動部(4,
6,8)が一体的に形成されて、千鳥状に配置せしめら
れている。
【0024】そして、このような各種の構造の素子にお
いては、何れも、アクチュエータとして機能させるべ
く、その圧電/電歪作動部を構成する二つの電極膜の間
に、従来と同様にして通電が行なわれ、それによって圧
電/電歪層に電界が作用せしめられると、そのような電
界に基づくところの圧電/電歪層の電界誘起歪が誘起さ
れ、以てセラミック基板の板面に垂直な方向の屈曲変位
乃至は発生力が発現せしめられるのである。
【0025】ところで、これら本発明に従う圧電/電歪
膜型素子において、その圧電/電歪作動部が形成される
セラミック基板(2,16)に関して、それを与える材
料としては、所定の化合物で結晶相が主として正方晶若
しくは主として、立方晶、正方晶、単斜晶のうち少なく
とも2種以上の結晶相からなる混晶とされた部分安定化
酸化ジルコニウムを主成分とする材料が用いられること
となる。本発明に従う膜型素子は、後述するように、一
般に、基板と共に、高い温度で熱処理され、その際の耐
熱性、また圧電/電歪材料との電極膜を介した反応性、
更には熱処理時の応力に対する強度等、基板の材料特性
によって、得られる膜型素子の特性、例えば発生力や変
位が影響を受けることを見い出したことに基づくもので
あるが、その中で、部分的に安定化された酸化ジルコニ
ウムは、素子の変位、発生力等の特性に優れ、基板材料
として極めて有効なものである。
【0026】この酸化ジルコニウムを部分安定化せし
め、且つその結晶相を、主として正方晶、若しくは主と
して、立方晶、正方晶、単斜晶のうち少なくとも2種以
上の結晶相からなる混晶にするための化合物としては、
酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、
酸化カルシウムのうちの少なくとも一つの化合物を添
加、含有せしめることにより、酸化ジルコニウムは部分
安定化されることとなるが、その部分安定化は、一種類
の化合物の添加のみならず、それらの化合物を組み合わ
せて、添加することによっても、目的とする酸化ジルコ
ニウムの部分安定化は可能である。なお、それら部分安
定化剤の添加含有量としては、酸化イットリウムに関し
ては2モル%〜7モル%、酸化セリウムに関しては6モ
ル%〜15モル%、酸化マグネシウム、酸化カルシウム
に関しては5モル%〜12モル%とすることが好ましい
が、その中でも、特に酸化イットリウムを部分安定化剤
として用いることが好ましく、その場合においては、2
モル%〜7モル%、更に好ましくは2モル%〜4モル%
とすることが望ましい。そのような範囲で酸化イットリ
ウムを添加・含有せしめてなる酸化ジルコニウムは、そ
の主たる結晶相が、正方晶、若しくは立方晶、正方晶、
単斜晶のうち少なくとも2種以上の結晶相からなる混晶
において部分安定化され、優れた基板特性を与えること
となる。なお、ここで論じた結晶相は、焼成した磁器基
板を鏡面研磨し、X線により同定されるものである。ま
た、その結晶相を安定に存在させ、大きな基板強度が得
られる為には、基板の平均結晶粒子径も重要となる。即
ち、平均粒子径として、0.05μm〜3μmであるこ
とが好ましく、更に好ましくは1μm以下であることが
望ましい。
【0027】なお、酸化ジルコニウム基板の安定化に用
いられる化合物としては、一般に、酸化イットリウム、
酸化マグネシウム等が知られているが、そのような化合
物の添加量によって、安定化される結晶相は異なるもの
となる。しかし、結晶相は、そのような化合物の添加量
だけで決定されるものではなく、原料粉末の結晶粒子径
によっても異なることとなり、更には焼成によって作製
された酸化ジルコニウム磁器の結晶粒子径、それに関連
して焼成温度・時間も因子となるのである。例えば、酸
化イットリウムを安定化剤として用いた場合には、結晶
相を主として正方晶にするためには、安定化剤の添加量
として2〜4モル%、原料粉末の粒子径として0.1μ
m以下、作製される磁器の結晶粒子径として1μm以
下、焼成温度は原料によって異なるため、一概に言えな
いところであるが、粒成長の起こらない温度・時間が必
要となるのである。即ち、これらの条件を同時に満足し
てはじめて、正方晶が安定に存在した結晶相を主とする
酸化ジルコニウム基板の調製が可能となるのである。一
方、結晶相を主として、立方晶、正方晶、単斜晶のうち
少なくとも2種以上の結晶相からなる混晶とするために
は、安定化剤の添加量の上限を7モル%程度までとし、
作製した磁器の結晶粒子径も3μm以下という条件が採
用される。これらの条件の範囲外では、例えば、安定化
剤の添加量が2モル%より少なくなると単斜晶が主とな
り、また原料粉末や磁器の結晶粒子径も大きくなると、
正方晶が安定して出来難くなるのである。
【0028】かかる状況下、本発明に従う部分安定化酸
化ジルコニウム基板を作製するためには、一般に、前述
の如き化合物の所定量を用いると共に、原料粉末の結晶
平均粒子径が0.1μm以下の原料を使用し、焼成温度
を1300℃〜1600℃に設定する条件が採用される
こととなる。
【0029】また、セラミック基板の形態としては、先
に、図1や図2等に示した単板状の物(2)でも、また
図3や図4等に示される如き、凹所の底部が薄肉厚部
(16a)とされ、その薄肉厚部の面上に圧電/電歪作
動部が形成されるキャビティ構造を有している基板(1
6)でも良いが、後者のキャビティ構造を有する基板の
方が、当該部位の基板厚さを薄くすることが出来、以て
素子基板の強度を低下させることなく、また並設形態に
おいて隣接する圧電/電歪作動部同士が変位或いは振動
時に薄肉厚部と薄肉厚部の間にある厚肉部によって互い
に干渉することが少ないために、好ましく用いられる。
なお、このようなキャビティ構造を有している基板(1
6)のキャビティの寸法に関し、そのようなキャビティ
の長さは、その幅の2倍から20倍であることが好まし
く、一方キャビティ基板(16)の薄肉厚部(16a)
に形成される圧電/電歪作動部は、素子の変位・発生力
の点から、該キャビティの幅に対して50%〜90%と
することが好ましい。
【0030】さらに、薄肉のセラミック基板の厚さに関
しては、素子の高速応答性と大きな変位を得るために、
一般に50μm以下、好ましくは30μm以下、更に好
ましくは10μm以下とされる。
【0031】更にまた、かかるセラミック基板は、最終
的には、焼結せしめられた形態とされるが、圧電/電歪
作動部の形成に先立って、予め焼結した基板としておく
ことが出来、また基板材料のグリーンシートを用い、後
述の膜形成による圧電/電歪作動部の形成を行なった後
に焼結させても良いが、その中では、予め焼結した基板
が、素子の反りを小さくすることが出来、またパターン
寸法精度が得られることから、有利に用いられることと
なる。なお、キャビティ構造を有するセラミック基板
(16)は、金型や超音波加工等の機械加工法を用いて
空孔部を設けたグリーンシートに、薄肉厚部となる薄い
グリーンシートを積層・熱圧着した後、焼成・一体化す
ることによって作製することが、高い信頼性の点から好
ましい。また、本発明に従う部分安定化された酸化ジル
コニウムを主成分とする基板材料中に、酸化アルミニウ
ムや酸化チタン、更には粘土等の焼結助剤を添加しても
良いが、焼成した基板に酸化珪素(SiO2 ,SiO)
が1%以上含有されないように、助剤の組成や添加量を
調整することが望ましい。過剰に酸化珪素が基板に含有
されていると、圧電/電歪材料との熱処理時に反応が生
じ易く、組成の制御が困難となる。
【0032】ところで、かくの如きセラミック基板は、
その上に形成される圧電/電歪作動部の作動特性、換言
すればそこにおいて発生する歪み、応力を有効に受け、
またその逆の作用を有効に行なうために、Raにて表わ
される表面粗さが0.03〜0.9μmの範囲内となる
ように調整される。このような表面粗さ:Raの調整
は、また、薄い基板の強度を確保する上においても有効
である。
【0033】そして、このようなセラミック基板上に所
定の電極膜(4,8)及び圧電/電歪層6を設けて圧電
/電歪作動部を形成するには、公知の各種の膜形成法が
適宜に採用され、例えばスクリーン印刷、スプレー、デ
ィッピング、塗布等の厚膜形成手法、イオンビーム、ス
パッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング、CV
D、メッキ等の薄膜形成手法が適宜に選択される。特
に、膜状の圧電/電歪層(6)を形成するには、スクリ
ーン印刷、スプレー、ディッピング、塗布等による厚膜
形成手法が好適に採用されることとなる。この厚膜形成
手法によれば、圧電/電歪材料のセラミック粒子を主成
分とするペーストやスラリーを用いてセラミック基板上
に膜形成することが出来、良好な素子特性が得られるか
らである。また、そのような膜の形状としては、スクリ
ーン印刷法やフォトリソグラフィ法等を用いてパターン
形成する他、レーザー加工法や、スライシング、超音波
加工等の機械加工法を用い、不必要な部分を除去して、
パターン形成しても良い。
【0034】なお、ここで作製される素子の構造や膜状
の圧電/電歪作動部の形状は、何等限定されるものでは
なく、用途に応じて、如何なる形状でも採用可能であ
り、例えば三角形、四角形等の多角形、円、楕円、円環
等の円形、櫛状、格子状又はこれらを組み合わせた特殊
形状であっても、何等差し支えない。
【0035】また、このようにしてセラミック基板上に
上記方法で膜形成されたそれぞれの膜(4,6,8)
は、それぞれの膜の形成の都度、熱処理されて、基板と
一体構造となるようにされても良く、また全部の膜を形
成した後、同時に熱処理して、各膜が同時に基板に一体
的に結合せしめられるようにしても良い。なお、このよ
うな膜形成手法により電極膜を形成する場合には、一体
化するために必ずしも熱処理を必要としないことがあ
る。
【0036】さらに、このように形成された膜と基板と
を一体化するための熱処理温度としては、一般に900
℃〜1400℃程度の温度が採用され、好ましくは10
00℃〜1400℃の範囲の温度が有利に選択される。
また、膜状の圧電/電歪層(6)を熱処理する場合に
は、高温時に圧電/電歪層の組成が不安定とならないよ
うに、そのような圧電/電歪材料の蒸発源と共に雰囲気
制御を行ないながら、熱処理することが好ましい他、圧
電/電歪層(6)上に適当な覆蓋部材を載置して、その
表面が焼成雰囲気に直接に露呈されないようにして、焼
成する手法を採用することも推奨される。その場合、覆
蓋部材としては、基板と同様な材料系のものが用いられ
ることとなる。
【0037】なお、上記の方法にて作製される圧電/電
歪作動部を構成する電極膜(4,8等)の材料として
は、前記熱処理温度並びに焼成温度程度の高温酸化雰囲
気に耐えられる導体であれば、特に規制されるものでは
なく、例えば金属単体であっても、合金であっても良
く、また絶縁性セラミックスと、金属や合金との混合物
であっても、更には導電性セラミックスであっても、何
等差し支えない。尤も、より好ましくは、白金、パラジ
ウム、ロジウム等の高融点貴金属類、或いは銀−パラジ
ウム、銀−白金、白金−パラジウム等の合金を主成分と
する電極材料が好適に用いられ、その中でも更に好まし
くは、白金とセラミック基板材料とのサーメット材料が
好ましく、さらに好ましくは白金と基板材料と圧電材料
とのサーメット材料が好ましい。また、電極に添加する
材料として、ガラスは、圧電/電歪膜との熱処理中に反
応が生じ易く、アクチュエータ特性を低下させる原因と
なり易いため、その使用を避けることが望ましい。な
お、電極中に添加せしめる基板材料としては、5〜30
体積%程度、一方圧電材料としては5〜20体積%程度
であることが好ましい。
【0038】そして、このような導体材料を用いて形成
される電極は用途に応じて適宜の厚さとされることとな
るが、電界誘起歪の横効果を用いるタイプにおいては、
一般に20μm以下、好ましくは5μm以下の厚さにお
いて形成されることとなる。一方、電界誘起歪の縦効果
を用いるタイプにおいては、電極厚さは3μm以上が望
ましく、好ましくは10μm以上であり、更に好ましく
は20μm以上の厚さにおいて、電極形成されることと
なる。
【0039】また、圧電/電歪作動部を構成する圧電/
電歪材料としては、圧電或いは電歪効果等の電界誘起歪
を示す材料であれば、何れの材料であっても採用され得
るものであり、結晶質の材料であっても、非晶質の材料
であっても良く、また半導体材料であっても、誘電体セ
ラミックス材料や強誘電体セラミックス材料であって
も、何等差し支えなく、更には分極処理が必要な材料で
あっても、またそれが不必要な材料であっても良いので
ある。
【0040】尤も、本発明に用いられる圧電/電歪材料
としては、好ましくは、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT
系)を主成分とする材料、マグネシウムニオブ酸鉛(P
MN系)を主成分とする材料、ニッケルニオブ酸鉛(P
NN系)を主成分とする材料、マンガンニオブ酸鉛を主
成分とする材料、アンチモンスズ酸鉛を主成分とする材
料、亜鉛ニオブ酸鉛を主成分とする材料、チタン酸鉛を
主成分とする材料、更にはこれらの複合材料等が用いら
れる。なお、PZT系を主成分とする材料等の前述した
材料に、ランタン、バリウム、ニオブ、亜鉛、セリウ
ム、カドミウム、クロム、コバルト、アンチモン、鉄、
イットリウム、タンタル、タングステン、ニッケル、マ
ンガン、リチウム、ストロンチウム、カルシウム、ビス
マス等の酸化物やそれらの他の化合物を添加物として含
有せしめた材料、例えばPLZT系となるように、前記
材料に所定の添加物を適宜に加えても、何等差し支えな
い。なお、ガラス材料の添加は避けるべきである。なぜ
ならば、PZT系圧電/電歪材料はガラスと反応し易い
ために、所望の圧電/電歪膜組成への制御が困難とな
り、アクチュエータ特性のバラツキ並びに低下を惹起す
るからである。
【0041】これら圧電/電歪材料の中でも、マグネシ
ウムニオブ酸鉛を第3成分としたジルコン酸チタン酸鉛
を主成分とする材料若しくはニッケルニオブ酸鉛とマグ
ネシウムニオブ酸鉛の混合物を第3成分とするジルコン
酸チタン酸鉛を主成分とする材料が好ましく、更にその
中でも特に、マグネシウムニオブ酸鉛を第三成分とした
ジルコン酸チタン酸鉛を主成分とする材料が、その熱処
理中における基板材料との反応が少ないことから成分の
偏析が起きにくく、組成を保つための処理が好適に行な
われ得、目的とする組成及び結晶構造が得られ易い等、
高い圧電定数を有することと併せて有利に用いられ、ス
クリーン印刷、スプレー、ディッピング、塗布等の厚膜
形成手法で圧電/電歪膜を形成する場合の材料として推
奨される。なお、多成分系圧電/電歪材料の場合、成分
の組成によって圧電特性が変化するが、本発明で好適に
採用されるマグネシウムニオブ酸鉛−ジルコン酸鉛−チ
タン酸鉛の3成分系材料では、擬立方晶−正方晶−菱面
体晶の相境界付近の組成が好ましく、特にマグネシウム
ニオブ酸鉛:15モル%〜50モル%、ジルコン酸鉛:
10モル%〜45モル%、チタン酸鉛:30モル%〜4
5モル%の組成が、高い圧電定数と電気機械結合係数を
有することから、有利に採用される。
【0042】なお、上記の如くして形成される電極膜と
圧電/電歪膜(層)から構成される圧電/電歪作動部の
厚さとしては、一般に100μm以下とされ、また圧電
/電歪膜の厚さとしては、低作動電圧で大きな変位等を
得るために、好ましくは50μm以下、更に好ましくは
3μm以上40μm以下とされることが望ましい。
【0043】以下の表1に、結晶相の異なる各種の材料
からなる基板を用いて作製されたアクチュエータの諸特
性を示した。なお、アクチュエータの作製に際しては、
基板形状としては、図3に示される如き薄肉厚部(16
a)を有するキャビティ形状とし、その薄肉厚部(16
a)厚さは10μmとした。また、圧電/電歪作動部に
は、マグネシウムニオブ酸鉛を第三成分として添加して
なるジルコン酸チタン酸鉛からなる圧電/電歪材料を用
い、それを、30μm厚になるようにスクリーン印刷
し、1000℃以上の熱処理を行なって、形成した。薄
肉厚部の大きさは0.8mm×3mmである。破壊強度
の測定は、0.3mmφの面積を有する測定子を薄肉厚
部の中心部に垂直に当て、荷重をかけることにより、行
なった。アクチュエータの変位は、DC30V印加時の
数値である。
【0044】
【表1】
【0045】かかる表の結果から明らかなように、所定
の結晶相を有する部分安定化された酸化ジルコニウム
は、他の基板材料に比べて、圧電/電歪材料との反応が
なく、且つアクチュエータとしての変位が大きく、更に
薄い板厚においても高い機械強度を示している。
【0046】また、基板の表面粗さ:Raを種々異なら
しめて、上記と同様な実験を行ない、その結果を、下記
表2に示した。この表2の結果より、基板の表面粗さ:
Raが0.03〜0.9μmの範囲内にあるものが優れ
た特徴を示している。
【0047】
【表2】
【0048】以上、本発明を幾つかの実施例に基づいて
具体的に説明してきたが、本発明は、上記の実施例によ
って限定的に解釈されるものでは決してなく、本発明の
範囲を逸脱しない限りにおいて、種々なる変更、修正、
改良等を加え得るものであることが理解されるべきであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る圧電/電歪膜型素子の一実施例を
示す斜視部分説明図である。
【図2】本発明に係る圧電/電歪膜型素子の異なる一実
施例を示す斜視部分説明図である。
【図3】本発明に係る圧電/電歪膜型素子の更に異なる
実施例を示す斜視部分説明図である。
【図4】本発明に係る圧電/電歪膜型素子の更に異なる
実施例を示す斜視部分説明図である。
【図5】本発明に係る圧電/電歪膜型素子の他の一つの
実施例を示す斜視部分説明図である。
【図6】本発明に係る圧電/電歪膜型素子の他の異なる
実施例を示す斜視部分説明図である。
【図7】本発明に係る圧電/電歪膜型素子の他の更に異
なる実施例を示す斜視部分説明図である。
【図8】本発明に係る圧電/電歪膜型素子の異なる実施
例の一つを示す斜視部分説明図である。
【図9】本発明に係る圧電/電歪膜型素子の更に異なる
実施例の一つを示す斜視部分説明図である。
【図10】本発明に係る圧電/電歪膜型素子の他の更に
異なる実施例を示す斜視部分説明図である。
【図11】本発明に係る圧電/電歪膜型素子の他の更に
異なる実施例の一つを示す斜視部分説明図である。
【図12】図11に示される圧電/電歪膜型素子の変形
例の素子裏面を示す斜視部分説明図である。
【図13】図12に示される圧電/電歪膜型素子の図1
1に相当する斜視部分説明図である。
【符号の説明】
2,16 セラミック基板 4 第一の電極膜 6,22 圧電/電歪層 8 第二の電極膜 10,18 帯状電極膜 12 電極接続部 14a,14b 櫛状電極膜 16a 薄肉厚部 20 電極膜 24 スリット 26 矩形孔
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年3月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正内容】
【0011】なお、本発明において、マグネシウムニオ
ブ酸鉛とジルコン酸鉛とチタン酸鉛とからなる成分を圧
電/電歪材料の主成分として用い、前記部分安定化した
酸化ジルコニウム基板と組み合わせることにより、厚膜
手法等によって膜形成した圧電/電歪層の熱処理時、基
板との反応等による膜状の圧電/電歪層の組成変動或い
はパイロクロア等の結晶相を惹起させることが非常に少
なく、目的とする組成及び結晶構造の圧電/電歪層を有
利に形成することが出来る特徴を発揮する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正内容】
【0041】これら圧電/電歪材料の中でも、マグネシ
ウムニオブ酸鉛とジルコン酸鉛とチタン酸鉛とからなる
成分を主成分とする材料若しくはニッケルニオブ酸鉛と
マグネシウムニオブ酸鉛とジルコン酸鉛とチタン酸鉛と
からなる成分を主成分とする材料が好ましく、更にその
中でも特に、マグネシウムニオブ酸鉛とジルコン酸鉛と
チタン酸鉛とからなる成分を主成分とする材料が、その
熱処理中における基板材料との反応が少ないことから成
分の偏析が起きにくく、組成を保つための処理が好適に
行なわれ得、目的とする組成及び結晶構造が得られ易い
等、高い圧電定数を有することと併せて有利に用いら
れ、スクリーン印刷、スプレー、ディッピング、塗布等
の厚膜形成手法で圧電/電歪膜を形成する場合の材料と
して推奨される。なお、多成分系圧電/電歪材料の場
合、成分の組成によって圧電特性が変化するが、本発明
で好適に採用されるマグネシウムニオブ酸鉛−ジルコン
酸鉛−チタン酸鉛の3成分系材料では、擬立方晶−正方
晶−菱面体晶の相境界付近の組成が好ましく、特にマグ
ネシウムニオブ酸鉛:15モル%〜50モル%、ジルコ
ン酸鉛:10モル%〜45モル%、チタン酸鉛:30モ
ル%〜45モル%の組成が、高い圧電定数と電気機械結
合係数を有することから、有利に採用される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正内容】
【0043】以下の表1に、結晶相の異なる各種の材料
からなる基板を用いて作製されたアクチュエータの諸特
性を示した。なお、アクチュエータの作製に際しては、
基板形状としては、図3に示される如き薄肉厚部(16
a)を有するキャビティ形状とし、その薄肉厚部(16
a)厚さは10μmとした。また、圧電/電歪作動部に
は、マグネシウムニオブ酸鉛とジルコン酸鉛とチタン酸
鉛とからなる成分を主成分とする圧電/電歪材料を用
い、それを、30μm厚になるようにスクリーン印刷
し、1000℃以上の熱処理を行なって、形成した。薄
肉厚部の大きさは0.8mm×3mmである。破壊強度
の測定は、0.3mmφの面積を有する測定子を薄肉厚
部の中心部に垂直に当て、荷重をかけることにより、行
なった。アクチュエータの変位は、DC30V印加時の
数値である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 薄肉のセラミック基板と、該セラミック
    基板上に設けられた、電極及び圧電/電歪層からなる圧
    電/電歪作動部とを備えた圧電/電歪素子にして、前記
    圧電/電歪作動部が膜形成法によって形成されている一
    方、前記セラミック基板が、酸化イットリウム、酸化セ
    リウム、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムからなる
    群より選ばれた少なくとも一つの化合物の含有によって
    結晶相が部分安定化され、且つその結晶相が、主として
    正方晶、若しくは主として、正方晶、立方晶、単斜晶の
    うちの少なくとも2種以上の結晶相を含む混晶からなる
    酸化ジルコニウムを主成分とする材料から構成されてい
    ると共に、かかるセラミック基板の表面粗さ:Raが、
    0.03〜0.9μmの範囲内とされていることを特徴
    とする圧電/電歪膜型素子。
  2. 【請求項2】 前記セラミック基板が、前記酸化イット
    リウムで部分安定化された酸化ジルコニウムを主成分と
    する材料からなり、且つかかる酸化イットリウムの含有
    量が2モル%以上、7モル%以下であることを特徴とす
    る請求項1に記載の圧電/電歪膜型素子。
  3. 【請求項3】 前記セラミック基板が、前記酸化セリウ
    ムで部分安定化された酸化ジルコニウムを主成分とする
    材料からなり、且つかかる酸化セリウムの含有量が6モ
    ル%以上、15モル%以下であることを特徴とする請求
    項1に記載の圧電/電歪膜型素子。
  4. 【請求項4】 前記セラミック基板が、前記酸化マグネ
    シウムまたは酸化カルシウムで部分安定化された酸化ジ
    ルコニウムを主成分とする材料からなり、且つかかる酸
    化マグネシウムまたは酸化カルシウムの含有量が5モル
    %以上12モル%以下であることを特徴とする請求項1
    に記載の圧電/電歪膜型素子。
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