JPH05268946A - ザントモナス・カンペストリス新菌株及びそれを有効成分として含有するスズメノカタビラ防除剤 - Google Patents

ザントモナス・カンペストリス新菌株及びそれを有効成分として含有するスズメノカタビラ防除剤

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JPH05268946A
JPH05268946A JP4359970A JP35997092A JPH05268946A JP H05268946 A JPH05268946 A JP H05268946A JP 4359970 A JP4359970 A JP 4359970A JP 35997092 A JP35997092 A JP 35997092A JP H05268946 A JPH05268946 A JP H05268946A
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Japan
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poa annua
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campestris
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JP4359970A
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Inventor
Katsuhiro Miyabe
克宏 宮部
Tomonori Nishino
友規 西野
Shigeko Imaizumi
誠子 今泉
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Japan Tobacco Inc
Original Assignee
Japan Tobacco Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ゴルフ場のパッティンググリーン、公園の芝
生等の人為的に管理された緑地に生育する強害雑草スズ
メノカタビラの防除に有効な植物病原細菌の新菌株を提
供すること及び該菌株を有効成分として含有するスズメ
ノカタビラ防除剤を提供すること。 【構成】 スズメノカタビラに病原性を有するザントモ
ナス・カンペストリス及びこれを有効成分とするスズメ
ノカタビラ防除剤を提供した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はゴルフ場のパッティング
グリーン、公園の芝生、庭園あるいはラグビー場等の運
動競技場にみられる人為的に管理された芝地に生育する
強害雑草スズメノカタビラ(Poa annua)の防
除に有効な植物病原細菌ザントモナス・カンペストリス
Xanthomonas campestris)菌
の新菌株及びこれを有効成分として含有するスズメノカ
タビラ防除剤に関する。
【0002】
【従来の技術】芝生地ではその性格上、雑草が周年、繰
り返し発生するので刈り込み、手取り除草さらに農耕地
で行われているような耕種的な手段では広大な面積をた
えず完全に除草することはできない。特に、ゴルフ場で
はティーグランド、フェアウェー、ラフ、パッティング
グリーンのようにさまざまな地形を有する緑地ではそれ
ぞれの地形に適した多種多様な雑草が発生する。
【0003】スズメノカタビラは秋から翌春ないし、初
夏にかけて芝生地に発生し、刈り取りに強く、地面に横
に広がって育つうえに群がって成長するため芝生の生育
に著しい影響をおよぼす芝生地における強害雑草であ
る。化学除草剤による防除は芝草に薬害が生じないよう
にするため発芽前〜発芽初期にしか行えず、成長したス
ズメノカタビラに対する有効な薬剤はこれまでに開発さ
れていない。
【0004】一方、化学農薬の使用は近年、人畜に対す
る安全性、残留性、環境破壊の点で問題となっており、
化学農薬に頼らない雑草の防除剤とその利用法の開発が
望まれている。これまでのところ微生物の代謝産物を利
用した非選択性の非農耕地用の除草剤および、雑草の病
原菌を成分とする農耕地用に除草剤が開発されているの
みである。微生物除草剤の特徴は自然界に存在する微生
物自体、あるいはその代謝物の作用によって雑草を防除
するものであり、化学的に合成された薬剤に比較して環
境におよぼす影響が少ないことである。
【0005】芝地を対象とした微生物除草剤として、ザ
ントモナス・カンペストリスを用いる雑草イネ科植物の
抑制法(特願昭63−502438)が知られている
が、同菌(NRRL−B−18078)による顕著なス
ズメノカタビラの生育抑制は28〜30℃という温度条
件に加え、接種直後に過湿処理(相対湿度100%、連
続48時間)を行うことによって実現されたものであ
る。すなわち、この従来技術では、高い抑制効果を得る
ためには接種直後の過湿処理によって雑草植物への感染
を成立させた後、一定期間の高温条件を必要とする。し
かしながら、スズメノカタビラが発生する秋から翌春な
いし、初夏の時期における最高気温が25℃を超えるこ
とは少なく、また、相対湿度100%の環境が野外で4
8時間連続することはありまれである。従って、前記従
来技術を用いて芝地雑草の防除を行なうことは現実的に
不可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記従来技術
の課題を解決し、芝生地に発生する雑草スズメノカタビ
ラの効果的な防除手段を提供するものである。すなわ
ち、本発明の目的は、ゴルフ場のパッティンググリー
ン、公園の芝生等の人為的に管理された緑地に生育する
強害雑草スズメノカタビラの防除に有効な植物病原細菌
の新菌株を提供すること及び該菌株を有効成分として含
有するスズメノカタビラ防除剤を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】有用芝生には全く薬害を
与えず雑草であるスズメノカタビラにのみ殺草あるいは
生育抑制効果を持つ雑草防除剤、雑草防除方法を研究す
るために、本願発明者らは植物病原菌の持つ宿主特異性
に着目し、スズメノカタビラの病原細菌の探索を行っ
た。さらに、萎凋病を起こす細菌が宿主植物に感染侵入
後は宿主植物の導管内に定着、増殖することに着目し、
採集された植物の組織内部から様々な細菌を分離し、さ
らに、それら分離細菌の中からスズメノカタビラに対し
てのみ病原性を持つザントモナス・カンペストリスを分
離した。本菌の選抜に当たっては、、スズメノカタビラ
が野外で発生する期間の気候条件に近い環境条件に(温
度20−25℃、相対湿度60%)に調節した温室内で
接種試験を行なった。さらに、ゴルフ場で栽培される主
要な芝草、およびイネに代表されるイネ科作物に対する
病原性についても詳しく検討した。その結果、(1) 接種
後48時間の95−100%の相対湿度を必要とせず、
(2) 幅広い温度適性を持つ。スズメノカタビラに対し萎
凋症状に加え、本菌の代謝産物によると思われる黄化症
状を引き起こす。(3) 有用芝生にウインターバッチ病を
起こす病原糸状菌リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctnia s
olani)に対し抗糸状菌活性を示す。さらに、(4) ゴルフ
場における主要な芝草に対して病原性を持たないという
点で、高い性能を有するザントモナス・カンペストリス
の新菌株を発見し、本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は、スズメノカタビラに
病原性を有するザントモナス・カンペストリスを提供す
る。また、本発明は、ザントモナス・カンペストリスを
有効成分として含有するスズメノカタビラ防除剤を提供
する。
【0009】本発明の菌株は、上述のように、また下記
実施例において詳述するように、スズメノカタビラの葉
及び茎からスクリーニングにより分離されたものであ
る。
【0010】本発明の菌株は、下記に詳述した菌学的性
質及び理由からXanthomonas campes
trisの新菌株と同定された。
【0011】本発明の菌株の1つであるザントモナス・
カンペストリスP−192菌株は、工業技術院微生物工
業技術研究所(微工研)に微工研菌寄第12613号と
して寄託されている。
【0012】本発明の菌株は、下記実施例に示す種々の
培地で生育可能であり、例えば、普通寒天培地(Nut
rient agar)上で28℃で培養した後、普通
培地(Nutrient broth)に接種し、28
℃で振盪培養することによりよく増殖させることができ
る。
【0013】本発明のスズメノカタビラ防除剤は、前記
本発明のザントモナス・カンペストリスを有効成分とし
て含むものである。該菌株の生菌を含むものであれば、
該菌株細胞の懸濁液であっても、培養液であってもよ
い。防除剤中のP−192菌株の濃度は、特に限定され
ないが105 ないし1010cfu/mlが好ましく、さ
らには108 ないし1010cfu/ml程度が好まし
い。
【0014】本発明のスズメノカタビラ防除剤は、スズ
メノカタビラの発芽前及び発芽後のいずれの生育段階に
おいてもスズメノカタビラに対して防除効果を発揮す
る。散布量は、防除剤中の菌株濃度及びスズメノカタビ
ラの生育段階に応じて適宜選択されるが、例えば、防除
剤中の菌株濃度が109 cfu/mlであり、生育した
スズメノカタビラを防除する場合には、1m2 当り0.
34リットル程度で十分な防除効果を与えることができ
る。スズメノカタビラが発芽前や生育途中である場合に
は、これより少ない量で防除効果が得られる。
【0015】
【実施例】実施例1 1 病原細菌の分離方法 ゴルフ場あるいは公園等に生育するスズメノカタビラ
Poa annua)を採集し、損傷組織を除いて得られた植物
標本から長さ1cmの葉あるいは茎の切片を作製し、7
0%エタノール水溶液に1分間浸漬してから殺菌蒸留水
で洗浄することにより表面殺菌を行った。表面殺菌した
切片は200μlの殺菌蒸留水中で磨砕された後、普通
寒天培地(Nutrient agar)上に画線さ
れ、28℃の恒温器内で培養された。以上の操作によっ
て植物内部に存在する細菌のみを分離することができ
る。
【0016】培養期間中に寒天培地上に現われた多数の
コロニーの中からザントモナス(Xanthomona
)属菌に類似するコロニーを選抜し、それらを少量の
殺菌蒸留水に懸濁した。この細菌懸濁液に70%エタノ
ールおよび火炎殺菌したハサミを浸漬し、温室内でおよ
そ1カ月間育苗したスズメノカタビラの葉先を切断する
ことにより植物体中に接種してそれらの病原性を検定し
た。その結果、10都道府県、22箇所からp−192
菌に代表されるスズメノカタビラ病原菌58菌株が分離
された。分離されたスズメノカタビラ病原菌を表1に示
した。
【0017】
【表1】 表1 分離したザントモナス属菌に類似した細菌のスズメノカタビラに対する病 原性 ─────────────────────────────────── 分離菌株 病原力 ─────────────────────────────────── P−192 +++ P−195 +++ P−196 +++ P−197 +++ P−275 +++ P−328 +++ P−329 +++ P−330 +++ P−331 +++ P−332 +++ P−333 +++ P−334 +++ P−335 +++ P−336 +++ P−337 +++ P−338 +++ P−339 +++ P−340 +++ P−341 +++ P−342 +++ P−343 +++ P−344 +++ P−345 +++ P−346 +++ P−347 +++ P−403 ++ P−404 ++ P−405 +++ P−406 +++ P−407 +++ P−408 +++ P−409 +++ P−410 +++ P−411 +++ P−412 +++ P−413 +++ P−414 +++ P−415 +++ P−416 ++ P−417 ++ P−418 + P−419 + P−420 +++ P−421 +++ P−422 +++ P−423 + P−424 + P−425 ++ P−426 +++ P−427 +++ P−428 +++ P−429 +++ P−430 +++ P−431 +++ P−432 +++ P−433 +++ P−434 +++ P−435 +++ ─────────────────────────────────── +++:枯死あるいは萎凋による植物の生育抑制が60
%以上 ++:枯死あるいは萎凋による植物の生育抑制が30ー
60% +:枯死あるいは萎凋による植物の生育抑制が10ー3
0% −:植物の生育に影響なし
【0018】表1に示すようにP−192菌株に代表さ
れるスズメノカタビラに対し病原性を有するザントモナ
ス・カンペストリスは日本各地に広く、一般的に存在し
ている。P−192菌に代表される表1に示した菌株を
接種されたスズメノカタビラの接種葉上には接種4日後
に水浸病斑が現われ、接種7〜10日後には接種葉全体
の萎凋および、淡緑〜白色の葉の抽出等の萎凋病の症状
が観察された。接種3週間後には接種植物のほとんどが
枯死した。
【0019】実施例2 P−192菌の菌学的性質 実施例1で得られたP−192菌の菌学的性質を下記表
2に示す。
【0020】
【表2】 表2 P−192菌の菌学的性質 ─────────────────────────────────── 形態 桿菌 鞭毛 極毛1本 本グラム反応 陰性 酸素に対する要求性 好気性 レバン産生(5%ショ糖寒天) +(粘性集落) オキシダーゼ反応 + カタラーゼ反応 + アルギニン加水分解 − デンプンの加水分解 − ゼラチン液化試験 − 色素:普通寒天 黄色 キングB(蛍光色素) − リトマスミルク反応 青変・脱色・凝固 サッカロース還元 − グルコン酸の酸化 − カゼインの消化試験 + ツイーン80の分解 + レシチナーゼ + ペクチンの溶解 + 配糖体の分解(エスクリン) + メチルレッド試験 − アセトインの産生 − インドールの産生 − 硫化水素の産生 + 硝酸塩の還元性 − ウレアーゼ反応 − 耐食塩性 4% CおよびN源としての アスパラギンの利用 − 0.1%TTC培地発育性 − ジャガイモの腐敗能力 − タバコ過敏感反応 − 分解能: L・アラビノース + キシロース + リボース − グルコース + フラクトース + ガラクトース + マンノース + L・ラムノース − サッカロース + マルトース − セロビオース + トレハロース + メリビオース − ラクトース + メレジトース − ラフィノース − α−メチル・D・グルコシド − アルブチン + サリシン − エスクリン − エタノール − マニトール − イノシトール − エリトリトール − ドルシトール − ソルビトール − アドニトール − グリセリン + デンプン − イヌリン − リンゴ酸ナトリウム + コハク酸ナトリウム + クエン酸ナトリウム + フマール酸ナトリウム + 乳酸ナトリウム + 酢酸ナトリウム + マロン酸ナトリウム + 酒石酸ナトリウム − プロピオン酸ナトリウム − 蟻酸ナトリウム − シュウ酸ナトリウム − グリコール酸ナトリウム − マレイン酸ナトリウム + 安息香酸ナトリウム − グルコン酸ナトリウム − n−酢酸ナトリウム − α−ケトグルタール酸ナトリウム + ガラクツロン酸ナトリウム − ゲラニオール + トリアセチン − DL−α−アラニン + L−ロイシン − L−ヒスチヂン + L−チロシン + L−トリプトファン − ───────────────────────────────────
【0021】分離されたスズメノカタビラに対する病原
細菌P−192菌に代表される植物病原細菌は普通培地
(Nutrient broth)および馬鈴薯ブドウ
糖寒天培地上で黄色集落を形成するグラム陰性細菌であ
り、顕微鏡観察の結果からは桿菌で、極毛1本を持つこ
とが確認された。また、好気性で、硝酸塩を還元せず、
唯一の炭素源及び窒素源としてアスパラギンを利用しな
い、0.1%TTC添加培地で生育しないなどの諸性質
でXanthomonas属に属する細菌と判定され
た。さらに、5%ショ糖添加普通寒天培地上で粘性集落
を形成し、エスクリンを分解し、硫化水素を産生する、
ウレアーゼ反応は陰性、塩化ナトリウム(NaCl)耐
性は4%、アラビノース、グルコース、フラクトース、
マンノース、ガラクトース、セルビオースから酸を生ず
る、などの細菌学的諸性質からXanthomonas
campestrisと同定された。また、ジャガイ
モの腐敗能力がなく、マルトース、メリビオース、メレ
ジトース、ラフィノース、マニトール及びデンプンの分
解能がなく、L−チロシンの分解能を有する点でXan
thomonas campestris pv.or
yzae(以下、oryzae)と異なっている。さら
に、脂肪酸の検定の結果、oryzaeでは、ante
iso 15:0がほとんど0で、iso 15も数%
程度なのに対してP−192菌は両者併せて25.6%
もあり明らかに異なる。また、oryzaeは16:0
が普通20%近くに達するが、P−192菌は4.7%
で、この点においても異なる。
【0022】実施例3 P−192菌に代表されるザン
トモナス・カンペストリスとNRRL−B−18078
菌のプラスミドDNAに関する相違点 日本各地より分離されたザントモナス・カンペストリス
13菌株(P−192、P−195、P−196、P−
197、P−275、P−328、P−330、P−3
34、P−337、P−347、P−421、P−43
3、P−431)及びNRRL−B−18078菌より
DNAを抽出した後、0.7%及び0.5%のアガロー
スゲルを用いたサブマリン電気泳動を行うことにより、
これら菌株のプラスミドDNAの有無を調べた。その結
果、NRRL−B−18078菌は約38キロベースペ
アーのプラスミドDNAを有していることが明らかとな
った。しかし、P−192菌をはじめとする日本各地よ
り分離されたスズメノカタビラに病原性を有し、実施例
4に示す特徴的な病徴をスズメノカタビラに起こすザン
トモナス・カンペストリス13菌株は全てプラスミドD
NAを有していなかった。この結果を表3に示した。
【0023】
【表3】 表3 プラスミドDNAの有無 ─────────────────────────────────── 菌株 プラスミド ─────────────────────────────────── P−192 − P−195 − P−196 − P−197 − P−275 − P−328 − P−330 − P−334 − P−337 − P−347 − P−421 − P−433 − P−431 − NRRL−B−18078 + ─────────────────────────────────── + プラスミドDNA有り − プラスミドDNA無し
【0024】実施例4 P−192菌に代表されるザン
トモナス・カンペストリス菌によるスズメノカタビラ
Poa annua)の病徴とNRRL−B−18078菌によ
る病徴の相違点 P−192菌に代表されるザントモナス・カンペストリ
ス菌を接種されたスズメノカタビラの接種葉上には接種
4日後に水浸病班が現れ、接種7〜10日後には接種葉
全体が萎凋し、さらに、該菌株の代謝産物によると思わ
れる未接種葉の黄化症状あるいは白化症状が観察され
た。そして、接種3週間後には接種植物のほとんどが枯
死した。ここに示した病徴は、実施例1に示した58菌
株全てについて同様であった。しかし、NRRL−B−
18078菌によるスズメノカタビラの病徴はこれと違
っていた。すなわち、NRRL−B−18078菌に感
染したスズメノカタビラは萎凋するものの、未接種葉の
黄化症状あるいは白化症状は全く観察されなかった。
【0025】実施例5 日本国内より分離された5菌株
(P−192、P−195、P−196、P−197、
P−275)の抗糸状菌活性に関する相違点 日本国内より分離されたP−192、P−195、P−
196、P−197、P−275及びNRRL−B−1
8078菌を白金耳を用い、直径9cmの馬鈴薯半合成
寒天培地(馬鈴薯300g抽出物、0.05%硝酸カル
シウム、0.2%リン酸水素二カリウム、0.5%ペプ
トン、1.5%ショ糖、1.8%寒天)プレートの中央
に植菌し、28℃のインキュベ−タ−で培養した。2日
後、インキュベ−タ−より取り出し、生育した細菌塊よ
り2cm離れた位置に直径9mmのリゾクトニア・ソラ
ニ(Rhizoctonia solani)菌株WP
−WG−JBの菌糸体ディスクを置き、さらに28℃の
インキュベ−タ−で培養を続けた。ここで用いたリゾク
トニア・ソラニは芝にウインターバッチ病を起こす芝の
重要病害である。その結果、日本国内より分離された5
菌株(P−192、P−195、P−196、P−19
7、P−275)はリゾクトニア・ソラニに対し阻止体
を形成させた。しかし、NRRL−B−18078菌は
阻止体を形成しなかった。結果を表4に示した。この結
果より、日本国内より分離された5菌株(Pー192、
P−195、P−196、P−197、P−275)を
用いたスズメノカタビラ除草剤は芝草の重要病害である
ウインターバッチ病の抑制効果についても期待される。
【0026】以上実施例3、実施例4、実施例5が示す
ようにP−192菌に代表されるザントモナス・カンペ
ストリス(Xanthomonas campestr
is)はNRRL−B−18078菌に比較し、いくつ
かの異なった性質を有していることから、ザントモナス
・カンペストリス(Xanthomonas camp
estris)の新菌株であると同定できる。
【0027】
【表4】 表4 リゾクトニア・ソラニ菌株WP−WG−IBに対するスズメノカタビラに 病原性を有するザントモナス・カンペストリスの抗糸状菌活性 ─────────────────────────────────── 菌株 抗糸状菌活性 ─────────────────────────────────── P−192 + P−195 + P−196 + P−192 + P−192 + NRRL−B−18078 − ─────────────────────────────────── + 阻止帯を形成した − 阻止帯を形成しなかった
【0028】実施例6 P−192菌培養物のスズメノ
カタビラ(Poa annua)に対する殺草活性 普通寒天培地(Nutrient agar)上で培養
されたP−192菌を三角フラスコに入った普通培地
(Nutrient broth)に接種し、28℃で
72時間振とう培養することにより1010cfu/ml
の濃度まで増殖させることができる。本実験ではこの培
養物を109 cfu/mlの濃度に調整したものを接種
源として用いた。
【0029】スズメノカタビラは種子を育苗ポット(1
2cm×12cm×6cm)の表面に均一になるように
播種した後、温室内で3週間育苗した植物を接種試験に
使用した。植物は接種に先立ち、電動芝刈り機を用いて
草丈を2cmの高さまで刈り込まれた後、上述した10
9 cfu/mlの濃度のP−192菌の懸濁液を液量5
ml噴霧接種した。また、対照標準として同量の栄養培
地(Nutrientbroth)のみを噴霧接種し
た。接種された植物の半数は相対湿度(95−100
%)を維持するように濡れたペーパータオルを入れたプ
ラスチック袋に入れ、温度を昼間28℃/夜間25℃に
制御された温室に移された。これら植物は48時間後に
プラスチック袋から取り出された。残りの半数の植物は
接種後、過湿処理は行わず温室に移された。P−192
菌を噴霧接種された植物体上には同菌をハサミを用いて
接種したのと同様の病徴が観察された。接種3週間後の
結果を表5に示した。
【0030】試験の結果、本発明のザントモナス・カン
ペストリス(Xanthomonas campest
ris)P−192菌はスズメノカタビラに対する防除
の点ではザントモナス・カンペストリスNRRL−B−
18078菌に比べ、接種後48時間の過湿処理無しに
同等かまたは上回るスズメノカタビラに対する防除効果
を示した。
【0031】また、普通寒天培地(Nutrient
agar)上で培養したP−192菌株を殺菌蒸留水に
懸濁してスズメノカタビラに接種した場合にも同様の結
果が得られている。
【0032】
【表5】 表5 P−192菌培養物によるスズメノカタビラ殺草活性 ─────────────────────────────────── 処理 過湿処理 非過湿処理 ─────────────────────────────────── 刈込みのみ − − 普通培地(Nutrient broth) − − P−192(109 cfu/ml) ++ +++ ─────────────────────────────────── +++:枯死あるいは萎凋による植物の生育抑制が60
%以上 ++:枯死あるいは萎凋による植物の生育抑制が30−
60% +:枯死あるいは萎凋による植物の生育抑制が10−3
0% −:植物の生育に影響なし
【0033】実施例7 異なる温度条件下でのP−19
2菌培養物施用によるスズメノカタビラ(Poa annua)に
対する除草活性 普通寒天培地(Nutrient agar)上で培養
されたP−192菌は三角フラスコに入った普通培地
(Nutrient broth)に接種し、28℃で
72時間振とう培養により得られた培養物を109 cf
u/mlの濃度に調整したものを接種源として用いた。
【0034】ススメノカタビラは種子を育苗ポット(1
2cm×12cm×6cm)の表面に均一になるように
播種した後温室内で3週間育苗した植物を接種試験に使
用した。植物は接種に先立ち、電動芝刈り機を用いて草
丈を2cmの高さまで刈り込まれた後、上述した109
cfu/mlの濃度のP−192菌の懸濁液を液量5m
l噴霧接種した。また、対照標準として同量の栄養培地
(Nutrientbroth)のみを噴霧接種した。
接種された植物は温度を昼間28℃/夜間25℃、昼間
25℃/夜間25℃あるいは昼間25℃/夜間20℃に
制御された温室に移された。本実験期間中は接種植物に
対していかなる過湿処理も行われなかった。接種3週間
後の結果を表6に示した。
【0035】試験の結果、本発明に係わる病原微生物ザ
ントモナス・カンペストリス(Xanthomonas
campestris)P−192菌はスズメノカタ
ビラに対する防除の点では温度条件にかかわらず、優れ
た防除効果を示した。
【0036】
【表6】 表6 異なる温度条件下でのP−192菌培養物の除草活性(%) ─────────────────────────────────── 処理 25℃/20℃ 25℃/25℃ 28℃/25℃ ─────────────────────────────────── 刈込みのみ 0 0 0 栄養培地のみ 0 0 0 1×109 cfu/ml 84 80 75 ───────────────────────────────────
【0037】実施例8 種々の接種濃度のP−192菌
培養物の施用による除草活性 普通寒天培地(Nutrient agar)上で培養
されたP−192菌は三角フラスコに入った普通培地
(Nutrient broth)に接種し、28℃で
72時間振とう培養により得られた培養物を107 、1
5 、103 、102 および10cfu/mlの濃度に
調整したものを接種源とし、実施例6と同様の方法で温
室内で3週間で育苗した植物に接種した。接種された植
物は温度を昼間25℃〜28℃に抑制した温室に移され
た。本実験期間中は接種植物に対していかなる過湿処理
も行われなかった。接種3週間後の結果を表7に示し
た。
【0038】試験の結果、本発明のザントモナス・カン
ペストリス(Xanthomonas campest
ris)P−192菌は濃度10〜107 cfu/mlの範囲
であっても接種したスズメノカタビラに感染し、接種植
物の生育を阻害する活性を持つことが判明した。
【0039】
【表7】 表7 種々の接種濃度のP−192菌培養物の施用による除草活性(%) ─────────────────────────────────── 濃度(cfu/ml) 防除率(%) ─────────────────────────────────── 107 70 105 60 103 10 102 13 10 10 ───────────────────────────────────
【0040】実施例9 分離病原細菌の芝草およびイネ
に対する病原性 P−192菌を普通栄養培地(Nutrient br
oth)で48時間振とう培養し、得られた培養物を接
種源として温室内でおよそ1カ月間育苗されたスズメノ
カタビラ(Poa annua)、主要な芝草およびイネに対して
ハサミを用いて接種を行い、主要なイネ科作物に対する
病原性を検定した。その結果を表8に示した。
【0041】表8に示すように本発明に係わる病原微生
物であるザントモナス・カンペストリス(Xanthomonas c
ampestris)の新菌株P−192菌はスズメノカタビラに
対してのみ強い病原性を示し、主要な芝草さらにイネに
対しては病原性を持たないことが判明した。試験の結
果、本発明に係わるP−192菌は、ゴルフ場のバッテ
ィンググリーンをはじめとする芝生地に発生するスズメ
ノカタビラ防除のための微生物除草剤として使用可能で
あることが確認された。
【0042】
【表8】 表8 P−192菌の有用植物に対する病原性 ─────────────────────────────────── 植物名 病原性 ─────────────────────────────────── スズメノカタビラ + ベントグラス − メドウフェスキュー − ペレニアルライグラス − イタリアンライグラス − イネ − ─────────────────────────────────── +:病原性有、−:病原性無
【0043】
【発明の効果】本発明により、スズメノカタビラ防除剤
として有用なザントモナス・カンペストリス新菌株及び
これを有効成分とするスズメノカタビラ防除剤が提供さ
れた。本発明の防除剤は、スズメノカタビラを有効に防
除することができ、しかも、他の有用植物に対して病原
性を示さない。従って、本発明の防除剤は、ゴルフ場の
パッティンググリーン、公園の芝生、庭園あるいはラグ
ビー場等の運動競技場にみられる人為的に管理された芝
地に生育する強害雑草スズメノカタビラの防除に威力を
発揮するものと考えられる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 今泉 誠子 神奈川県横浜市緑区梅が丘6−2 日本た ばこ産業株式会社植物開発研究所横浜セン ター内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スズメノカタビラに病原性を有するザン
    トモナス・カンペストリス。
  2. 【請求項2】 スズメノカタビラの未接種葉に黄化又は
    白化症状を引き起こす請求項1記載のザントモナス・カ
    ンペストリス。
  3. 【請求項3】 ザントモナス・カンペストリスP−19
    2菌株(微工研菌寄第12613号)である請求項2記
    載のザントモナス・カンペストリス。
  4. 【請求項4】 スズメノカタビラに病原性を有するザン
    トモナス・カンペストリスを有効成分とするスズメノカ
    タビラ防除剤。
  5. 【請求項5】 前記ザントモナス・カンペストリスはス
    ズメノカタビラの未接種葉に黄化又は白化症状を引き起
    こす請求項4記載のスズメノカタビラ防除剤。
  6. 【請求項6】 前記ザントモナス・カンペストリスはザ
    ントモナス・カンペストリスP−192菌株(微工研菌
    寄第12613号)である請求項5記載の防除剤。
JP4359970A 1991-12-27 1992-12-28 ザントモナス・カンペストリス新菌株及びそれを有効成分として含有するスズメノカタビラ防除剤 Pending JPH05268946A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5559079A (en) * 1993-12-28 1996-09-24 Japan Tobacco Inc. Herbicidal composition for the control of annual bluegrass comprising xanthomonas campestris and sulfonylurea herbicides
US6162763A (en) * 1998-04-28 2000-12-19 Japan Tobacco Inc. Herbicidal composition for the control of annual bluegrass

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US5559079A (en) * 1993-12-28 1996-09-24 Japan Tobacco Inc. Herbicidal composition for the control of annual bluegrass comprising xanthomonas campestris and sulfonylurea herbicides
US6162763A (en) * 1998-04-28 2000-12-19 Japan Tobacco Inc. Herbicidal composition for the control of annual bluegrass

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