JPH05266520A - 光磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

光磁気記録媒体およびその製造方法

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JPH05266520A
JPH05266520A JP6044792A JP6044792A JPH05266520A JP H05266520 A JPH05266520 A JP H05266520A JP 6044792 A JP6044792 A JP 6044792A JP 6044792 A JP6044792 A JP 6044792A JP H05266520 A JPH05266520 A JP H05266520A
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JP6044792A
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English (en)
Inventor
Takeo Kawase
瀬 健 夫 川
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Original Assignee
Seiko Epson Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 磁界感度が高くかつ磁区安定性も高い磁界変
調法用の光磁気記録媒体を提供する。 【構成】 透明基板2上に第1誘電体層4が形成され、
この第1誘電体層4上に、交換結合した第1磁性層6a
と第2磁性層6bとからなる記録層6が形成される。こ
の記録層6上に第2誘電体層8および反射層10が順に
形成される。記録層6中の第1磁性層6aと第2磁性層
6bのうち、一方の層はキュリー温度が比較的高くかつ
磁壁エネルギーのゆらぎが比較的小さく(Aタイプ
層)、他方の層はキュリー温度が比較的低くかつ磁壁エ
ネルギーのゆらぎが比較的大きい(Bタイプ層)。Aタ
イプ層は磁界感度が高く、Bタイプ層は磁区安定性が高
い。この記録媒体への記録は、Aタイプ層の特性に支配
される形で行われるため、高い磁界感度が得られる。一
旦記録がなされると、Bタイプ層の磁区がAタイプ層の
磁区を固定させるため、高い磁区安定性が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、記録方法として磁界変
調法を用いる光磁気記録媒体、およびこの光磁気記録媒
体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光磁気記録媒体の記録方法には、大別し
て、光変調法と磁界変調法とがある。磁界変調法は、オ
ーバーライトが容易で、エッジ記録に適する。しかし、
磁界変調法には磁気ヘッドが必要で、高速に磁界をスイ
ッチングするためには、ヘッドのインダクタンスを小さ
くして、大きな電流をスイッチングする必要がある。ま
た、磁気ヘッドを記録媒体の記録層に極力接近させて、
記録層に作用する磁界をできるだけ大きくするために、
特開昭63−217548号に記載されているように、
浮上型磁気ヘッドを用いることが実用上有利である。
【0003】しかし、いずれにせよ、記録層に作用する
磁界ができるだけ小さくて済むように、磁界変調法用の
光磁気記録媒体は低磁界で記録できることが望ましい。
そのために、「第11回日本応用磁気学会学術講演概要
集」第268頁にあるように、Na等の第4元素を添加
して低磁界記録での特性向上を図ったり、特開昭62−
128040号に述べられているように、組成の異なる
磁性層を交換結合させて、浮遊磁界を小さくして外部磁
場への応答性を良くしたり、或いは、特開昭61−18
8758号に見られるように、垂直磁化膜と面内磁化膜
とを積層させて、垂直磁化膜に効率的に磁束を集めて、
変調用磁界を小さくする等の工夫がなされていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、実際に
は、これら従来技術では、変調磁界を±100Oe以下
にすることは困難であり、また、第4元素の添加や面内
磁化膜との積層が再生信号特性を劣化させることがあっ
た。
【0005】従って、本発明の第1の目的は、従来より
も小さな変調磁界で充分な記録が行えるよう、高い磁界
感度をもった磁界変調法用の光磁気記録媒体を提供する
ことにある。
【0006】さらに、本発明の第2の目的は、高い磁界
感度をもつだけでなく、多数回の再生にも耐えられるよ
う、記録磁区の安定性にも優れた光磁気記録媒体を提供
することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の光磁気記録媒体
は、磁界変調法により情報が記録できる記録層を有し、
この記録層は交換結合した第1および第2の磁性層を含
む。そして、第1の磁性層はキュリー温度が比較的高く
かつ磁壁エネルギーのゆらぎが比較的小さく、また、第
2の磁性層はキュリー温度が比較的低くかつ磁壁エネル
ギーのゆらぎが比較的大きい。
【0008】このような光磁気記録媒体を製造するため
の本発明の方法は、記録層の下地となる下地層を形成す
る過程と、この下地層の上に、上述したような特性をも
つ第1の磁性層と第2の磁性層とを積層させて記録層を
形成する過程とを有する。この場合、下地層上にまず第
1の磁性層を形成し、その上に第2の磁性層を形成して
もよいし、或いは、下地層上にまず第2の磁性層を形成
し、その上に第1の磁性層を形成してもよい。
【0009】キュリー温度は、磁性層の組成を選ぶこと
によって変化させることができる。また、磁壁エネルギ
ーのゆらぎは、磁性層を形成する条件を選ぶことによっ
て変化させることができる。好適な実施例では、磁性層
はスパッタリングによって形成され、その際、その磁性
層の形成前に下地の表面をプラズマエッチングにより平
坦化したり、スパッタガス圧を比較的低く設定したり、
或いは、原子量の比較的小さいスパッタガスを使用した
りすることにより、磁壁エネルギーのゆらぎが比較的低
い磁性層が形成できる。
【0010】
【作用】本発明の光磁気記録媒体では、磁壁エネルギー
のゆらぎが比較的小さい第1の磁性層が、情報を記録す
るための磁性層としての役割を担う。この第1の磁性層
は、磁壁エネルギーのゆらぎが小さいために磁界感度が
高く、結果として低磁界での記録が可能である。一方、
磁壁エネルギーのゆらぎの大きい第2の磁性層は、磁壁
抗磁力が大きく磁区が移動しにくいため、第1の磁性層
に形成された記録磁区の位置を固定させ安定性を高め
る。
【0011】
【実施例】図1は、本発明の光磁気記録媒体の一実施例
の断面構造を示す。
【0012】図1において、透明基板2の表面に、第1
誘電体層4、第1磁性層6a、第2磁性層6b、第2誘
電体層8および反射層10が順に積層されている。第1
および第2磁性層6a,6bは交換結合して、記録層6
を構成している。ここで、各層の材料の一例を示せば、
基板2はポリカーボネート(PC)基板であり、第1誘
電体層4は約70nm厚のSiN層であり、第1磁性層
6aは約10nm厚のNdDyFeCo層であり、第2
磁性層6bは約20nm厚のTbFeCo層であり、第
2誘電体層8は約15nm厚のSiNであり、反射層1
0は約30nm厚のAl層である。
【0013】記録層6において、第1磁性層6aのNd
DyFeCoのキュリー温度は180℃であり、第2磁
性層6bのTbFeCoのキュリー温度は210℃であ
る。つまり、第1磁性層6aにはキュリー温度の比較的
高い材料が使用され、第2磁性層6bにはキュリー温度
の比較的低い材料が使用される。これら磁性層に使用で
きる材料はNdDyFeCoとTbFeCoに限られる
ものではなく、例えば、TbFe、DyFe、GdTb
Fe、GdDyTbFe、TbFeCo、軽希土類+重
希土類十Fe、NdDyFeCo、GdDyTbFeC
oなどの種々の希土類−遷移金属合金中から適当なもの
を選択することができる。この場合、第1磁性層と第2
磁性層とのキュリー温度の差が10℃以上であることが
望ましい。
【0014】第1磁性層6aは、その磁壁エネルギーの
ゆらぎが比較的大きくなるように形成されており、一
方、第2磁性層6bは、その磁壁エネルギーのゆらぎが
比較的小さくなるように形成されている。
【0015】この光磁気記録媒体を製造するための本発
明の方法の一実施例を図2を参照して説明する。
【0016】(1)まず、グルーブ付きPC基板2を用
意し、図2(A)に示すように、その表面にRFスパッ
タリング法により約70nm厚のSiN層(第1誘電体
層)4を蒸着させる。このときのスパッタリングの条件
は、例えば、スパッタガスがAr80%+N2 20%、
ガス圧が1mTorr、ターゲットがSiN焼結タイ
プ、投入パワーがRF200Wである。
【0017】(2)次に、図2(B)に示すように、S
iN層14上に、直流スパッタリング法により約10n
m厚のNdDyFeCo層(第1磁性層)6aを蒸着さ
せる。このときの条件は、例えば、スパッタガスがA
r、ガス圧が1.5mTorr、ターゲットが鋳造タイ
プ、電流量がDC0.3Aである。完成したNdDyF
eCo層6aの組成は、例えばNd5.9%、Dy2
3.5%、Fe54.6%、Co16.0%である。
【0018】(3)次に、プラズマエッチング法を用い
て、NdDyFeCo層6aの表面を平坦化する。この
ときのエッチングの条件は、例えば、エッチングガスが
Ar、ガス圧が1.5mTorr、投入パワーがRF6
0W、エッチング時間が20分である。
【0019】(4)次に、図2(C)に示すように、平
坦化されたNdDyFeCo層6aの表面上に、直流ス
パッタリング法により約20nm厚のTbFeCo層
(第2磁性層)6bを蒸着させる。このときの条件は、
例えば、スパッタガスがAr、ガス圧が1.5mTor
r、ターゲットが鋳造タイプ、電流量がDC0.3Aで
ある。完成したTbFeCo層6bの組成は、例えばT
b23.8%、Fe66.7%、Co9.5%である。
【0020】(4)その後、図2(D)に示すように、
TbFeCo層6b上に、RFスパッタリング法により
約15nm厚のSiN層(第2誘電体層)18を蒸着さ
せる。このときのスパッタリングの条件は、先程のSi
N層4のそれと同様である。
【0021】(5)最後に、直流スパッタリング法によ
り約30nm厚のAl層20を形成する。このときの条
件は、例えば、スパッタガスがAr、ガス圧が2mTo
rr、電流量がDC0.3Aである。
【0022】このような製法を用いることにより、Nd
DyFeCo層6aは磁壁エネルギーのゆらぎが比較的
大きい状態に形成され、TbFeCo層6bは磁壁エネ
ルギーのゆらぎが比較的小さい状態に形成される。その
理由は、確定的ではないが、次のように推測される。
【0023】スパッタリング法でSiNなどの誘電体層
やNdDyFeCoなどの磁性層を形成した場合、その
表面には、数十nm程度の高さの微小な凹凸が存在す
る。この表面にプラズマエッチングを施すと、凹凸が減
少し表面が平坦化される。
【0024】上記製法では、第1磁性層6aは、プラズ
マエッチングを施してない第1誘電体層4の凹凸ある表
面上に形成される。この場合、第1磁性層6aのNdD
yFeCoの結晶粒(結晶核)は、基板面に対して一様
に垂直な方向には成長せず、表面の凹凸の斜度に応じた
方向にそれぞれの結晶粒が成長する。この成長の過程で
結晶粒の成長方向が互いに衝突する結果、結晶粒の大き
さが制限され、ランダムな成長方向をもった微小な結晶
粒の集まりとして第1磁性層6aが形成される。
【0025】一方、第2磁性層6bは、エッチングによ
り平坦化された第1磁性層6aの表面上に形成される。
したがって、その結晶粒は基板面に対して一様に垂直な
方向に成長し、垂直な成長方向をもった比較的大きな結
晶粒の集まりとして第2磁性層6bが形成される。
【0026】ところで、磁性層録層6a、16bたる希
土類−遷移金属合金の薄膜は、大きな垂直磁気異方性を
もつ。この垂直磁気異方性は膜の成長方向と関係が深い
ので、上述のような成長様式の相違は、垂直磁気異方性
にも相違をあたえる。つまり、成長方向の分布(ゆら
ぎ)が大きければ、垂直磁気異方性エネルギーにも大き
なゆらぎが生じる。磁壁エネルギーは垂直磁気異方性エ
ネルギーの2分に1乗に比例するので、垂直磁気異方性
エネルギーのゆらぎは磁壁エネルギーのゆらぎに反映さ
れる。
【0027】したがって、図3に示すように、成長方向
のゆらぎの大きい第1磁性層6aは磁壁エネルギーのゆ
らぎが大きく(曲線A)、成長方向のゆらぎの小さい第
2磁性層6bは磁壁エネルギーのゆらぎが小さい(曲線
B)。
【0028】図4は、本発明の光磁気記録媒体の別の実
施例の断面構造を示す。
【0029】この実施例では、記録層16の構成が、図
1の実施例のそれとは逆になっている。すなわち、Si
N層(第1誘電体層)14上に第1磁性層としての約2
0nm厚のTbFeCo層16aが形成され、その上に
第2磁性層としての約10nm厚のNdDyFeCo層
16bが形成されている。既に述べたように、第1磁性
層6aのTbFeCoのキュリー温度は210℃であ
り、第2磁性層6bのNdDyFeCoのキュリー温度
は180℃である。つまり、第1磁性層6aにはキュリ
ー温度の比較的低い材料が使用され、第2磁性層6bに
はキュリー温度の比較的高い材料が使用される。材料選
択のバリエーションに関しては、図1の実施例で述べた
ことが同様に適用できる。
【0030】磁性層16a、16bの磁壁エネルギーも
図1の実施例と逆の関係になっている。すなわち、第1
磁性層16aは磁壁エネルギーのゆらぎが比較的小さく
なるように、また、第2磁性層16bは磁壁エネルギー
のゆらぎが比較的大きくなるように形成されている。
【0031】この光磁気記録媒体を製造するための本発
明の方法の一実施例を図5を参照して説明する。
【0032】(1)まず、グルーブ付きPC基板12を
用意し、図5(A)に示すように、その表面にRFスパ
ッタリング法により約70nm厚のSiN層(第1誘電
体層)14を蒸着させる。このときのスパッタリングの
条件は、先の実施例のSiN層形成時のそれと同様であ
る。
【0033】(2)次に、プラズマエッチング法を用い
て、SiN層14の表面を平坦化する。このときのエッ
チングの条件は、先の実施例のエッチング条件と同様で
ある。
【0034】(3)次に、図5(B)に示すように、平
坦化したSiN層14の表面上に、直流スパッタリング
法により約20nm厚のTbFeCo層(第1磁性層)
16aを蒸着させる。このときのスパッタ条件は、スパ
ッタガス圧を除いて、先の実施例のTbFeCo層形成
時のそれと同様である。スパッタガス圧は、先の実施例
のそれより低く、例えば0.5mTorrとする。完成
したTbFeCo層16aの組成は、前の実施例のそれ
と同様である。
【0035】(4)次に、図5(C)に示すように、T
bFeCo層16aの表面にプラズマエッチングを施す
ことなく、この表面上に直流スパッタリング法により約
10nm厚のNdDyFeCo層(第2磁性層)16b
を蒸着させる。このときのスパッタ条件は、スパッタガ
ス圧を除いて、先の実施例のNdDyFeCo形成時の
それと同様である。スパッタガス圧は、先の実施例のそ
れより高く、例えば4.0mTorrとする。完成した
NdDyFeCo層16bの組成は、前の実施例のそれ
と同様である。
【0036】(5)次に、図5(D)に示すように、N
dDyFeCo層16b上に、RFスパッタリング法に
より約15nm厚のSiN層(第2誘電体層)18を蒸
着させ、さらにその上に、直流スパッタリング法により
約30nm厚のAl層20を形成する。このときのスパ
ッタリングの条件は、先の実施例のそれと同様である。
【0037】このような製法により、第1磁性層(Tb
FeCo層)16aは磁壁エネルギーのゆらぎが小さく
形成され、第2磁性層(NdDyFeCo層)16bは
磁壁エネルギーのゆらぎが大きく形成される。
【0038】その理由の一つは、既に述べたように、第
1磁性層16aはエッチングにより平坦化された表面上
に形成され、第2磁性層16bはエッチングしてない凹
凸のある表面上に形成されるからである。
【0039】さらに、もう一つの理由として、スパッタ
ガス圧の相違があると推測される。すなわち、第1磁性
層16aのスパッタリングのガス圧は比較的低く、第2
磁性層16bのそれは比較的高い。ガス圧が低いほど、
スパッタ原子の平均自由行程が長く、逆に、ガス圧が高
いほど、スパッタ原子の平均自由行程が短い。例えば、
ガス圧0.1mTorrでは平均自由行程は1m程度で
あるのに対し、10mTorrでは1cm程度となる。
ターゲットと基板間の距離は10cm程度に選ばれるの
が通常であり、その場合、ターゲットから飛び出したス
パッタ原子は0.1mTorrではスパッタガスに衝突
することなく基板に到達するであろうし、10mTor
rでは数回衝突した後に基板に到達するであろう。その
結果、スパッタ原子が基板に入射する角度の分布が、低
圧と高圧とで異なってくる。つまり、低圧では、基板面
に垂直に入射する原子の割合が大きく、高圧では、衝突
により飛行方向が散乱されて基板に斜めに入射する原子
の割合が増加する。斜めに入射する原子が増えると、射
影効果によって柱状組織が発生し易くなる。柱状組織が
増えると、磁壁エネルギーのゆらぎが大きくなって、凹
凸表面上に形成した磁性層と同様な特性を示すようにな
る。プラズマエッチングにより平坦化した表面上にスパ
ッタ蒸着させる場合でも、十分に高圧のガス中でこれを
行えば、凹凸表面上に形成した磁性層と同様に磁壁エネ
ルギーのゆらぎの大きい磁性層が形成できる。
【0040】ところで、これと同様な効果は、スパッタ
ガス種類の選択によっても得ることができる。すなわ
ち、原子数の比較的大きいガス(例えばKr)を使用し
た場合は、原子数の小さいガス(例えばAr)を使用し
た場合に比較して、スパッタ原子の飛行方向がスパッタ
ガスとの衝突により分散される度合いが大きいため、原
子の入射角度の分布が大きくなり、磁壁エネルギーのゆ
らぎが大きい磁性層が形成される。
【0041】図6は、上述した2種類の製法を用いてそ
れぞれ作製した図1の構造の記録媒体(以下、試料Aと
いう)および図4の構造の記録媒体(以下、試料Bとい
う)について、磁界感度を測定した結果を示す。比較の
ために、試料CおよびDとして、記録層をNdDyFe
Co層の一層で形成した記録媒体も用意した。試料C
は、第1誘電体層(SiN層)の表面をエッチングによ
り平坦化してからNdDyFeCo層をスパッタリング
により形成したものであり、試料Dは、第1誘電体層
(SiN層)の表面を平坦化せずにNdDyFeCo層
をスパッタリングに形成したものである。そのスパッタ
条件は、試料A(図1)のNdDyFeCo層6a形成
時のそれと同様である。試料Cは、磁壁エネルギーのゆ
らぎが十分小さいNdDyFeCo層を有し、試料D
は、磁壁エネルギーのゆらぎが十分大きいNdDyFe
Co層を有する。なお、試料Dの構成および製法は共に
公知であり、試料Cのそれは出願人の知る限り公知では
ない。
【0042】磁界感度の測定は、各試料に線速度5.6
5m/sで1MHzの信号を記録して、1MHzでのノ
イズレベルの変調磁界強度依存性を測定することにより
行った。記録は出射レーザパワー8mWで行われた。
【0043】図6より、本発明に従う試料AおよびB、
並びに磁壁エネルギーのゆらぎが十分小さい記録層をも
つ試料Cが、磁界感度において優れている、つまり、相
当小さい変調磁界強度でもノイズが低減していることが
わかる。特に、変調磁界が±50Oeでもノイズが十分
低減していることは注目に値する。
【0044】図7は、上記試料A,B、CおよびDにつ
いて記録磁区の安定性を測定した結果を示す。測定は、
具体的には、前もって信号を良好に記録した各試料に、
線速度8.5m/s、再生レーザパワー2.5W、印加
磁界400Oeの条件下で過負荷再生を行い、その再生
時間に応じてC/N比がどのように変化するかを測定す
ることにより行った。
【0045】図7より、本発明に従う試料AおよびB、
並びに磁壁エネルギーのゆらぎが十分大きい記録層をも
つ試料Dが、磁区の安定性において優れている、つま
り、長時間再生しても記録磁区の変形や消滅が起きず安
定に保持されることがわかる。
【0046】図6および図7の測定結果を統合すると、
本発明に従う試料AおよびBは、磁界感度においても記
録磁区の安定性においても優れた特性を有していること
がわかる。
【0047】その理由は、次のように推測される。
【0048】既に述べたように、本発明に従う光磁気記
録媒体は、交換結合した2種類の磁性層を有し、一方の
磁性層(以下、Aタイプ層という)はキュリー温度が比
較的高くかつ磁壁エネルギーのゆらぎが比較的小さく、
他方の磁性層(以下、Bタイプ層という)はキュリー温
度が比較的低くかつ磁壁エネルギーのゆらぎが比較的大
きい。
【0049】Aタイプ層がもつ小さい磁壁エネルギーの
ゆらぎは、熱磁気記録(光磁気記録媒体の記録方式であ
って、磁性層の温度を上昇させて保磁力を低下させて弱
い印加磁界によって記録を行う方式)を行うような条件
下、つまりキュリー温度付近において、記録磁区の形成
過程に以下のような特長を生じさせる。
【0050】すなわち、Aタイプ層では、キュリー温度
付近での磁壁エネルギーのゆらぎが小さいために、「平
均的な磁壁エネルギーの大きさ」が記録磁区形成を支配
する。磁区形成は静磁エネルギーと磁壁エネルギーとの
バランスの上に行われる。印加磁界方向に磁化した磁区
を形成すると静磁エネルギーは小さくなるが、磁区を形
成することは磁壁エネルギーを上昇させることになる。
このバランスが磁区の形状と大きさとを決定する。ま
た、温度が高いほうが磁壁エネルギーが小さいので、レ
ーザビームスポットで局所的に温度上昇させた場合、よ
り温度の高い位置に磁壁を形成するほうが磁壁エネルギ
ー上自然である。
【0051】つまり、Aタイプ層では、磁壁の位置、換
言すれば磁区の形状は、静磁エネルギーと磁壁エネルギ
ーとの和を最小にするような単純な力学で決まるので、
印加磁界を変化させると、静磁エネルギーが変化するた
め磁区の形状も変化する。したがって、Aタイプ層は磁
界感度が良く、弱い印加磁界でも充分な記録が行える。
図6において、Aタイプ層をもつ試料A,B,Cが高い
磁場感度を示しているのはそのためである。
【0052】しかしながら、Aタイプ層の小さい磁壁エ
ネルギーのゆらぎは、記録磁区の安定性という面では次
のような欠点を生じる。
【0053】すなわち、磁壁エネルギーのゆらぎが小さ
いと、上述のように磁区形成時の磁壁の位置決定が容易
である反面、一旦形成した磁壁がその後の環境に影響さ
れて移動することも容易である。そのため、過負荷な条
件で再生を行うと、一旦記録した磁区が変形したり消滅
したりする事態が生じる。ここで、過負荷な条件とは、
例えば、レーザパワーが規定のパワーより大きかった
り、環境温度が高過ぎたり、或いは、余分な磁界を加え
たりする場合である。このような過負荷再生を繰り返す
と、再生回数の増大に伴って再生信号特性が劣化してし
まう。図7において、Aタイプ層しかもたない試料Cが
低いC/N比を示すのはそのためである。
【0054】このようなAタイプ層の磁区安定性の弱さ
を補強するのが、磁壁エネルギーのゆらぎが大きいBタ
イプ層である。Bタイプ層では、磁壁エネルギーのゆら
ぎが大きいため磁界感度は低いのであるが、一旦磁区が
形成されると、その磁壁が移動するためには、磁壁エネ
ルギーのゆらぎの高い山を越えていかなくてはならない
ため、磁壁が移動しにくく、過負荷の再生条件下でも磁
区の変形や消滅がおきにくい。図7において、Bタイプ
層をもつ試料A,B,Dが長時間の過負荷再生を行って
も高いC/N比を維持しているはそのためである。
【0055】本発明の光磁気記録媒体では、上記のよう
に磁界感度の高いAタイプ層と磁区安定性の高いBタイ
プ層とを交換結合させ、かつ、Aタイプ層はキュリー温
度を高く、Bタイプ層はキュリー温度を低く設定してあ
る。このような記録媒体の熱磁気記録は次のように行わ
れる。
【0056】まず、レーザビームの照射を受けて、Aタ
イプ層およびBタイプ層はそれらのキュリー温度以上に
加熱される。この状態で変調磁界が印加されるため、こ
の変調磁界を反映した磁区が磁界感度の高いAタイプ層
に形成される。レーザビームの照射がなくなると両層の
温度は低下して、まずAタイプ層のキュリー温度を下回
る。このときに、Aタイプ層の磁区の形状と位置が確定
する。このとき、両層の温度はまだBタイプ層のキュリ
ー温度は超えているため、確定したAタイプ層の磁区が
交換結合の効果によってBタイプ層に転写される。つま
り、磁界感度の高いAタイプ層に支配される形で記録が
行われるので、低磁界でも充分な記録が行える。
【0057】このようにして一旦記録が行われた後は、
安定性の高いBタイプ層の磁区が安定性の低いAタイプ
層の磁区に作用して、その移動を抑止し位置を固定する
ため、過負荷再生を行っても、記録磁区の変形や消滅が
起きにくく、長期間にわたって良好な再生特性が維持で
きる。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
光磁気記録媒体が交換結合した2種類の磁性層を有し、
一方の磁性層はキュリー温度が比較的高くかつ磁界感度
が高く、他方の磁性層はキュリー温度が比較的低くかつ
磁区安定性が高いため、記録は磁界感度の高い前者の磁
性層に支配される形で行われ、かつ、一旦記録がなされ
た後は、磁区安定性の高い後者の磁性層が前者の磁性層
に磁区安定性を与えるため、高い磁界感度と高い磁区安
定性の双方を満たす光磁気記録媒体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光磁気記録媒体の一実施例の構造を示
す断面図。
【図2】図1の光磁気記録媒体を製造するための本発明
の方法の一実施例を示す断面図。
【図3】凹凸表面および平坦表面上にそれぞれ形成され
た磁性層の磁壁エネルギーのゆらぎの状態を対比して示
す図。
【図4】本発明の光磁気記録媒体の別の実施例の構造を
示す断面図。
【図5】図4の光磁気記録媒体を製造するための本発明
の方法の一実施例を示す断面図。
【図6】図1および図4の構造をもつ光磁気記録媒体の
試料AおよびBと、他の構造をもつ光磁気記録媒体の試
料CおよびDの磁界感度を測定した結果を示す図。
【図7】試料A,B,CおよびDの磁区安定性を測定し
た結果を示す図。
【符号の説明】
2、12 ポリカーボネート基板(透明基板) 4、14 SiN層(第1誘電体層) 6、16 記録層 6a NdDyFeCo層(第1磁性層) 6b TbFeCo層(第2磁性層) 16a TbFeCo層(第1磁性層) 16b NdDyFeCo層(第2磁性層) 8、18 SiN層(第2誘電体層) 10、20 Al層(反射層)

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】磁界変調法により情報が記録できる記録層
    を有する光磁気記録媒体において、 前記記録層は交換結合した第1および第2の磁性層を有
    し、前記第1の磁性層はキュリー温度が比較的高くかつ
    磁壁エネルギーのゆらぎが比較的小さく、前記第2の磁
    性層はキュリー温度が比較的低くかつ磁壁エネルギーの
    ゆらぎが比較的大きいことを特徴とする光磁気記録媒
    体。
  2. 【請求項2】磁界変調法により情報が記録できる記録層
    を有する光磁気記録媒体の製造方法おいて、 前記記録層の下地になる下地層を形成する過程と、 前記下地層上にキュリー温度の比較的大きい材料の第1
    の磁性層を、その磁壁エネルギーのゆらぎが比較的小さ
    くなるように形成する過程と、 前記第1の磁性層上にキュリー温度の比較的低い材料の
    第2の磁性層を、その磁壁エネルギーのゆらぎが比較的
    大きくなるように形成する過程と、を有し、交換結合し
    た前記第1および第2の磁性層により前記記録層が構成
    されることを特徴とする光磁気記録媒体の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項2記載の方法において、 前記第1の磁性層を形成する過程では、前記下地層の表
    面を平坦化し、この平坦化した表面上に前記第1の磁性
    層を形成し、 前記第2の磁性層を形成する過程では、前記第1の磁性
    層の表面を平坦化せずに、この表面上に前記第2の磁性
    層を形成することを特徴とする光磁気記録媒体の製造方
    法。
  4. 【請求項4】請求項2記載の方法において、 前記第1および第2の磁性層はスパッタリングにより形
    成され、前記第1の磁性層を形成するときのスパッタガ
    ス圧は比較的低く、前記第2の磁性層を形成するときの
    それは比較的高いことを特徴とする光磁気記録媒体の製
    造方法。
  5. 【請求項5】請求項2記載の方法において、 前記第1および第2の磁性層はスパッタリングにより形
    成され、前記第1の磁性層を形成するときのスパッタガ
    スは原子量が比較的小さく、前記第2の磁性層を形成す
    るときのそれは原子量が比較的大きいことを特徴とする
    光磁気記録媒体の製造方法。
  6. 【請求項6】磁界変調法により情報が記録できる記録層
    を有する光磁気記録媒体の製造方法おいて、 前記記録層の下地になる下地層を形成する過程と、 前記下地層上にキュリー温度の比較的低い材料の第1の
    磁性層を、その磁壁エネルギーのゆらぎが比較的大きく
    なるように形成する過程と、 前記第1の磁性層上にキュリー温度の比較的高い材料の
    第2の磁性層を、その磁壁エネルギーのゆらぎが比較的
    小さくなるように形成する過程と、を有し、交換結合し
    た前記第1および第2の磁性層により前記記録層が構成
    されることを特徴とする光磁気記録媒体の製造方法。
  7. 【請求項7】請求項6記載の方法において、 前記第1の磁性層を形成する過程では、前記下地層の表
    面を平坦化せずに、この表面上に前記第1の磁性層を形
    成し、 前記第2の磁性層を形成する過程では、前記第1の磁性
    層の表面を平坦化し、この平坦化した表面上に前記第2
    の磁性層を形成することを特徴とする光磁気記録媒体の
    製造方法。
  8. 【請求項8】請求項6記載の方法において、 前記第1および第2の磁性層はスパッタリングにより形
    成され、前記第1の磁性層を形成するときのスパッタガ
    ス圧は比較的高く、前記第2の磁性層を形成するときの
    それは比較的低いことを特徴とする光磁気記録媒体の製
    造方法。
  9. 【請求項9】請求項6記載の方法において、 前記第1および第2の磁性層はスパッタリングにより形
    成され、前記第1の磁性層を形成するときのスパッタガ
    スは原子量が比較的大きく、前記第2の磁性層を形成す
    るときのそれは原子量が比較的小さいことを特徴とする
    光磁気記録媒体の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4810533A (en) * 1987-11-02 1989-03-07 Smith Albert B Surface treatment process for porous solids

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