JPH0523851B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は織編物に使用する高純度の金細線を用
いた装飾用圧縮金糸の製造方法に関する。

より詳しくは、高純度の金細線を同心撚りした
ものを、その外径より小さい径の線引きダイスに
通して円型に圧縮し、外層の線間に凹部を設け、
該凹部に着色性合成樹脂又は塗料を充填してその
外観に金との色縞模様をスパイラル状に付すこと
を特徴とする装飾用圧縮金糸の製造方法に関す
る。

（従来技術） 従来より金銀糸を作る方法としては雁皮紙に金
銀箔を貼着したものを細長に細截し芯糸に巻付け
たり、下撚りを施した片撚糸に金銀粉を混和した
糊状液を糊付けし、乾燥して強撚りの上撚りを施
したり、基体シート上に金銀を真空蒸着した後、
その上に合成樹脂塗料で保護層を設けたものを細
長に細截して芯糸に巻付ける方法が知られてい
る。

特に、銀を真空蒸着した銀糸では、保護層を黄
色にして装飾用金糸としたり、銀の大気中におけ
る変色を防止するため薄くインジウム鍍金を施し
たり、高級直鎖アルキルイミダゾールを用いて銀
の表面をキレート化させる方法により銀の耐食性
を向上させることが用いられている。

（発明が解決しようとする問題点） 前記に述べたように、雁皮紙に金銀箔を貼着す
るか、又は基体シート上に金銀を真空蒸着させた
ものを細長に截断した金銀糸は、外観が装飾的に
すぐれていても、前者の場合には均一厚の金銀箔
の製造が高価につき、且つ金銀箔を貼着するのに
特殊な技術が必要である。

後者の場合には、真空蒸着による金銀の飛散に
よる損失が大きく、歩留まりが悪くなる。

したがつて、上記の金銀糸は、基体シート上に
アルミを真空蒸着して得た装飾用金銀糸にくらべ
て相当に割高となるのに対して、織編物が汚染さ
れたり、使用によるいたみを生じた場合におい
て、金銀としての貴金属の回収が事実上困難なも
のとなるため、豪華な織編物もその資産的価値は
皆無となる欠点を有している。

しかしながら、芯糸を種々な色彩として間隙を
設けて巻付けられたこれらの金銀糸は、幾何的な
スパイラル状の色縞模様を呈し、外観的に美麗で
あつて装飾的な見映えを有している。

このような色縞模様が純金の金細線で形成でき
ないものかは一つの課題でもある。

次に、直径が0.05〜0.3mmφの純金の軟質金線
を用いて織編物を織成することを試みたが、金細
線の破断荷重、屈曲性、可撓性が織成加工条件に
適合しないため容易に断線したり、折れ曲つた
り、又は織成時の作業性を著しく阻害する問題を
生じると共に、得られた織編物の外観は全体的に
金独自の優雅な黄金色を呈するが、単なる黄金色
であつて幾何的な陰影による色縞模様を呈しな
い。

例えば、金細線の表面に塗料などによつて間欠
的なリングマークによる色縞模様を付けることが
できるとすれば、その外観はより装飾的なものと
なる。しかし本発明に使用する金線はその直径が
極めて小さいため、リングマーク法による塗装着
色は至極困難である。

仮りに作られたとしても織編時において、リン
グマークを付けた部分が節々となつて折れ曲がつ
たり、又はその後の使用において、リングマーク
の着色部分は摩擦、摩耗、屈曲および外傷等を受
けて、装飾着色されたリングマークが剥離、脱落
して装飾的価値を失うことになる。

そこで、第３図に示すように、金細線の１本を
中心線２として、その上に同一線径の金細線を同
心撚りした７本構成の金糸１について、該金糸外
径のダイスを用いて外層線間の谷間８に着色性合
成樹脂又は塗料６を充填して金との色縞模様を形
成させることを試みた結果、第４図のように金糸
の外周前面に着色性合成樹脂又は塗料６が全面に
被覆され、外層の金線が表面に露出されないの
で、同心撚りの金糸１の装飾的価値を皆無にする
ものであつた。

本発明はかかる問題を解決することを目的とす
るものであつて、純金の金細線を同心撚りした金
糸を円形に圧縮形成して外層の線間に凹部を設
け、該凹部に着色性合成樹脂又は塗料を充填して
その外観を黄金色の光輝のあるスパイラル状のす
じと凹部の充填樹脂などとの明暗の色縞模様とす
る装飾用圧縮金糸の製造方法を提供するものであ
る。

本発明の他の目的は、本発明に係る装飾用圧縮
金糸を織編物に織成した後、該織編物が汚染され
たり、いたみを生じた場合に織編物に使用されて
いる純金の金線を貴金属として回収し、織編物の
資産的価値を高め得ることも併せ提供するもので
ある。

（問題点を解決するための手段） 本発明の目的を解決するための手段は、直径が
0.05〜0.2mmφの高純度の金細線のうち、いずれ
かの１本若しくは３〜５本を撚り合わせたものを
中心線とし、その上に同一線径の金細線を同心状
に、撚りピツチを最外層の線の中心を通る円の直
径（以下、層心径という）の50倍以下として撚り
合わせ、撚り構成の総本数を７〜61本の撚り合わ
せ金糸とする。

かくして構成される種々の撚り合わせ金糸を圧
縮率３％以上として、撚り合わせ金糸の仕上外径
より小さい径の線引きダイスに通して円型に圧縮
した後、該圧縮金糸を500±10℃の温度範囲で短
時間調質して軟質の圧縮金糸とし、該圧縮金糸の
外層線間に形成される凹部の間隙に、着色性の熱
可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を充填して、圧縮金
糸の外観に黄金色と着色性合成樹脂との色縞模様
のスパイラル状に形成させることを特徴とするも
のである。

次に、圧縮前の撚り合わせ金糸の構成最小限、
すなわち中心線径0.05mmφ、撚り本数７本とする
のは、この構成未満では機械的性質の破断荷重が
低くなり、織編物の織成加工時に断線を生じる恐
れがあるためである。

また構成の最大限、すなわち中心線径0.2mmφ、
撚り本数61本とするのは、この構成以上では金糸
の仕上外径が大きくなり、織編物の織成加工時の
作業性に支障をきたす恐れがあるためである。

撚り合わせ金糸の好ましい構成範囲は中心線径
0.07〜0.15mmφ、撚り本数７〜37本である。

撚り合わせ金糸の撚りピツチは層心径の50倍以
下とするのが好ましい。

その値以上では、織編物の織成時に受ける曲げ
応力によつて撚りがもどけやすくなるためであ
る。

好ましい撚りピツチは層心径の10〜25倍の範囲
である。

次に、好ましい圧縮率は４〜15％の範囲であ
る。

撚り合わせ金糸について圧縮率が３％未満で
は、線引きダイスによつて圧縮され、研磨される
外層の円弧部が小さくなり、外層線間の凹部に充
填される着色性合成樹脂の帯状すじが大きくなつ
て外観の装飾的価値を失うことになるためであ
る。

圧縮率を大にすると撚り合わせ金糸はソリツド
状を呈し、好ましくない。

更に、本発明に使用する金細線の化学的成分は
18K（100％×18／24）以上であり好ましいのは
24Kである。

18K未満では織編物に織成されている圧縮金糸
を貴金属として回収する場合、その回収価値が低
くなり、資産的効果を失うことになるためであ
る。

使用する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のビカ
ツト式軟化温度（J13K7206）は60℃以上が好ま
しい。その理由は使用または保管中に装飾用圧縮
金糸が受ける環境温度を考慮するためである。

（作用） これを第１図および第２図に示す７本構成の金
糸について説明する。

同心状に撚り合わせた金糸１を線引きダイスを
用いて円型に圧縮すると、中心線２は変形を受け
ないが、外層の金細線３は大きく変形し、線引き
ダイスによつて研磨された大きな円弧部４と外層
の線間に凹部５を形成する。

該凹部の間隙に、着色性の熱可塑性樹脂又は熱
硬化樹脂６を充填すると、円弧部４と凹部に充填
された着色性合成樹脂は圧縮金糸７の長さ方向に
対して、前者では光輝のある黄金色の帯状のすじ
として、後者では着色性合成樹脂が帯状のすじと
なつて交互にスパイラル状の色縞模様を呈し、そ
の外観は優雅な装飾用金糸となる。

以上、７本構成の圧縮金糸の一例について説明
したが、多層撚り構成の各圧縮金糸の外観も前者
と同様に黄金色と着色性樹脂との色縞模様を呈す
る。

（実施例） 実施例 １ 直径0.1±８／1000mmφの24K金細線を中心線
として、その上に同質同一線径の金細線６本を同
心状に、撚りピツチを層心径の30倍として右撚り
に撚り合わせて金糸とする。

該金糸を圧縮率７％とする径の線引きダイスに
通して円型に圧縮した後、トリクレン溶剤で脱脂
を行ない、温度500±10℃に調整した連続軟化装
置によつて軟質に調質して圧縮金糸とした。

該圧縮金糸をエポキシ−イソシアネート樹脂
（１：１）20部、カーボンブラツク0.1部、酢酸エ
チル35部、メチルエチルケトン35部、シクロヘキ
サノン15部からなる樹脂塗料中に浸漬させ、仕上
外径に相当するダイスに通して引き上げて加熱乾
燥し、圧縮金糸の外層線間の凹部に黒色樹脂を充
填した。

得られた圧縮金糸の外観は、光輝のある黄金色
の帯状のすじと凹部に充填された黒色の帯状のす
じとが交互にスパイラル状となり、美麗な幾何的
なの色縞模様を呈していた。

実施例 ２ 直径0.1±８／1000mmφの24K金細線を中心線
として、その上に同質同一線径の金細線６本を同
心状に左撚りし、更に同一線径の金細線12本を同
心状に、最外層の撚りピツチを層心径の20倍とし
て右撚りに撚り合わせて金糸とする。

該金糸を圧縮率６％とする径の線引きダイスに
通して円型に圧縮した後、トリクレン溶剤で脱脂
を行ない温度500±10℃に調整した連続軟化装置
によつて軟質に調質して圧縮金糸とした。

該圧縮金糸を実施例１と同様なエポキシ−イソ
シアネート樹脂塗料中に浸漬させ、仕上外径に相
当するダイスに通して引き上げて加熱乾燥し、圧
縮金糸の外層線間の凹部に黒色樹脂を充填した。

得られた圧縮金糸の外観は、実施例１と同様に
光輝のある黄金色の帯状のすじと、黒色の帯状の
すじとが交互にスパイラル状となり、美麗な幾何
的な色縞模様を呈していた。

実施例 ３ 直径0.15±８／1000mmφの24K金細線を用い、
実施例１と同様にして同心撚りの軟質の圧縮金糸
を作り、該圧縮金糸をエポキシ−フエノール樹脂
（１：１）50部、セロソルブ150部、キシロール50
部、青色顔料若干からなる樹脂塗料中に浸漬さ
せ、仕上外径に相当するダイスに通して引き上げ
て加熱乾燥し、圧縮金糸の外層線間の凹部に青色
樹脂を充填した。

得られた圧縮金糸の外観は、光輝のある黄金色
の帯状のすじと、凹部に充填された青色の帯状す
じとが交互にスパイラル状となり、美麗な幾何的
色縞模様を呈していた。

実施例 ４ 直径0.15±８／1000mmφの24K金細線を用い、
実施例２と同様にして同心撚りの軟質の圧縮金糸
を作り、該圧縮金糸を塩化ビニル−酢酸ビニル共
重合樹脂10部、可塑剤３部、ベンゾール50部、ア
セトン20部、酢酸エチル25部、赤色着色剤若干か
らなる樹脂塗料中に浸漬させ、仕上外径に相当す
るダイスに通して引き上げて加熱乾燥し、圧縮金
糸の外層線間の凹部に赤色樹脂を充填した。

得られた圧縮金糸の外観は、各実施例と同様に
黄金色と赤色との帯状のすじが交互にスパイラル
状となり、美麗な色縞模様を呈していた。

（発明の効果） 本発明の方法により得られた装飾用圧縮金糸の
外観は、その長さ方向において鏡面光輝のある黄
金色の帯状のすじと圧縮金糸の表面凹部に充填さ
れた着色性合成樹脂の帯状のすじとが交互にスパ
イラル状となり、きらびやかで優雅な色縞模様を
呈するので、より装飾的な効果をもつ。

更に、本発明の方法により得られた装飾用圧縮
金糸は、織編物に織成した後、織編物が汚染され
たり、いたみを生じた場合に使用されている高純
度の金糸を貴金属として回収でき、織編物の資産
的効果を高め得るので需要に寄与する度合が大で
ある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の方法により製造された装飾用
圧縮金糸の横断面の拡大図の一実施例、第２図は
７本構成の同心撚り金糸を圧縮した圧縮金糸の横
断面の拡大図、第３図は金細線の１本を中心線と
し、その上に同一線径の金細線６本を同心状に撚
り合わせた金糸の横断面の拡大図、第４図は第３
図の金糸上に着色性合成樹脂を被覆した横断面の
拡大図である。 図面の主要な符号は次の通りである。１……同
心状に撚り合わせた金糸、２……金細線の中心
線、３……外層の金細線、４……鏡面光沢のある
円弧部、５……外層線間の凹部、６……着色性合
成樹脂塗料、７……圧縮金糸、８……外層線間の
谷間。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 直径が0.05〜0.2mmφの高純度の金細線のう
   ち、いずれかの１本若しくは２〜５本を撚り合わ
   せたものを中心線とし、その上に同一線径の金細
   線を同心状に撚り合わせ、その撚り合わせ構成総
   本数を７〜61本とし、かくして構成される撚り合
   わせ金糸を線引きダイスに通して円型に圧縮した
   後、該圧縮金糸を加熱処理して軟質とし、該圧縮
   金糸の外層線間に形成される凹部の間隙に着色性
   の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を充填すること
   を特徴とする装飾用圧縮金糸の製造方法。