JPH0522923U - プーリ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】金属製ボスと樹脂プーリ本体とを結合した複合
材料からなるオフセット型のプーリにおいて、樹脂プー
リ本体の嵌合部を破損しにくくさせること。 【構成】金属製ボスａの外向き環状部４にその肉厚の半
分の上半断面ほぼＬ字形の環状段差部４ｂを形成し、こ
れを埋めるように金属製ボスａの外向き環状部４の外周
に樹脂プーリ本体ｂの嵌合部６を外嵌することにより、
嵌合部６において反オフセット方向Ｘ′側を厚肉嵌合部
分６ｂとしている。これにより、特に、反オフセット方
向Ｘ′側からの荷重に対する耐破断強度が高まる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、内径部分が金属で外径部分が樹脂で形成された複合材料からなるプ ーリに係り、特に、金属部分の軸方向中心と樹脂部分の軸方向中心とを軸方向に 偏らせた構造のいわゆるオフセット型のプーリの改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来のこの種のプーリを図３ないし図５に示して説明する。図中、ａは金属製 ボス、ｂは樹脂プーリ本体である。金属製ボスａは、例えばアルミニウムのダイ カストなどで製作されており、樹脂プーリ本体ｂは、例えばガラス繊維強化フェ ノール樹脂などのモールド成形品である。

【０００３】 金属製ボスａは、回転軸装着用の内筒２と、この内筒２の外周の軸方向一方（ 図の左側）へ偏った部位に径方向外向きに突設された外向き環状部４とを有する 。外向き環状部４の外周には複数個の凸部（セレーション）４ａがくし歯状に形 成されており、各凸部４ａの軸方向の両肩部分にはテーパー状の面取り４ａ₁ ， ４ａ₂ が設けられている。

【０００４】 樹脂プーリ本体ｂは、ベルト掛止用の外筒８と、外筒８の内周の軸方向他方（ 図の右側）へ偏った部位に径方向内向きに突設された内向き環状部１０と、内向 き環状部１０の内周に設けられ外向き環状部４の外周に嵌合される嵌合部６と、 内向き環状部１０の一側面（オフセット方向Ｘ側の面）に設けられた補強リブ１ ２と、内向き環状部１０の他側面（反オフセット方向Ｘ′側の面）に設けられた 小リブ１４とを有している。補強リブ１２と小リブ１４とは、周方向に等間隔を 隔てて複数個形成されており、それぞれが放射方向に沿って細長く形成されてい る。

【０００５】 そして、金属製ボスａの外向き環状部４の外周に樹脂プーリ本体ｂの嵌合部６ を嵌合させることにより、両者が結合されている。実際には、金属製ボスａを成 形金型にセットした状態での溶融樹脂のインジェクションによるインサート成形 で製作される。

【０００６】 このようなプーリＰ₀ は、樹脂プーリ本体ｂの外筒８の軸方向中心Ｃ₀ が、金 属製ボスａの外向き環状部４の軸方向中心Ｃ₁ に対して軸方向一方（図の左側） 側へ偏った状態で結合されている。これが金属製ボスａに対する樹脂プーリ本体 ｂのオフセットＯＳとなっている。このオフセットＯＳは、結局、樹脂プーリ本 体ｂの嵌合部６に対する外筒８のオフセットでもある。なお、外向き環状部４の 軸方向中心Ｃ₁ から外筒８の軸方向中心Ｃ₀ に向かう方向をオフセット方向Ｘと し、また、その反対方向を反オフセット方向Ｘ′とする。

【０００７】 このようなオフセットＯＳは、例えば図３に示すように、自動車のパワーステ アリング用のオイルポンプなどの補機５０の駆動軸５１に装着される場合など、 補機５０の一部が外側に突出していて、プーリＰ₀ の外筒８を軸方向一方へずら さなければならない状況で使用されることを考慮して、設定されている。図中、 ５３はプーリ固定用のナットである。

【０００８】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、上記従来のオフセット型のプーリＰ₀ は、経時的に嵌合部６が破断 し、金属製ボスａと樹脂プーリ本体ｂとが分離するおそれがある。

【０００９】 嵌合部６の破断は、図５に示すように、面取り４ａ₂ に面する箇所のうち強度 的に比較的弱いウェルド部において放射方向にクラック６０が入ることから始ま る。ウェルド部というのは、プーリＰ₀ のインサート成形時において、あるイン ジェクションゲートからキャビティ内に射出された溶融樹脂がキャビティの奥に 流入していくに従って次第に冷やされて低温化し、その低温化した状態で他のイ ンジェクションゲートからの低温化した溶融樹脂と合流した部分である。このウ ェルド部は、インジェクションゲートを補強リブ１２の位置に配した場合、内向 き環状部１０において隣り合う補強リブ１２の間の部位に発生しやすい。

【００１０】 次の段階では、図４に示すように、放射方向のクラック６０と隣接するクラッ ク６０との間で、嵌合部６に周方向のクラック６２が発生する。そして、最終的 に周方向のクラック６２が全周に行き渡って嵌合部６が破断し、金属製ボスａか ら樹脂プーリ本体ｂが分離してしまうのである。

【００１１】 なお、上記の放射方向のクラック６０も周方向のクラック６２も、嵌合部６の 両側の面取り４ａ₁ ，４ａ₂ で均等に生じるのではなく、反オフセット方向側Ｘ ′の面取り４ａ₂ の方において発生する場合がほとんどであり、オフセット方向 Ｘ側の面取り４ａ₁ の方ではクラックはほとんど生じない。

【００１２】 このように、樹脂プーリ本体ｂの外筒８と金属製ボスａの外向き環状部４との 間にオフセットＯＳが存在することに起因して、樹脂プーリ本体ｂにおける嵌合 部６のクラック６０，６２の発生の仕方に軸方向での差異が生じることを、本考 案者は次のような実験で確かめた。

【００１３】 図６（ａ）に示すように、まず、プーリＰ₀ を固定台７０上にオフセット方向 Ｘを下側にしてセットした。外筒８におけるオフセット方向Ｘ側の面８ａが固定 台７０に載置支持される。この状態で、金属製ボスａの内筒２に対してオフセッ ト方向Ｘに沿った押圧荷重Ｆをかけた。そして、樹脂プーリ本体ｂの嵌合部６が どの程度の押圧荷重Ｆによって破断されるかを調べた。１回目の耐破断強度は１ １８０ｋｇｆであり、２回目は１３００ｋｇｆであった。

【００１４】 また、図６（ｂ）に示すように、プーリＰ₀ を固定台７０上に反オフセット方 向Ｘ′を下側にしてセットした。外筒８における反オフセット方向Ｘ′側の面８ ｂが固定台７０に載置支持される。この状態で、金属製ボスａの内筒２に対して 反オフセット方向Ｘ′に沿った押圧荷重Ｆをかけ、嵌合部６がどの程度の押圧荷 重Ｆによって破断されるかを調べた。１回目の耐破断強度は４４０ｋｇｆであり 、２回目は４５０ｋｇｆであった。

【００１５】 このように、オフセット方向Ｘの押圧荷重Ｆに対する耐破断強度〔図６の（ａ ）の場合〕に比べて、反オフセット方向Ｘ′の押圧荷重Ｆに対する耐破断強度〔 図６の（ｂ）の場合〕が、約１／２．５〜１／３も弱いことが判る。

【００１６】 これは、金属製ボスａの外向き環状部４と樹脂プーリ本体ｂの外筒８との間の オフセットＯＳにより、オフセット方向Ｘ側の補強リブ１２に比べて反オフセッ ト方向Ｘ′側の小リブ１４が相当に小さくなることが原因であると考えられる。

【００１７】 すなわち、図６（ａ）の場合は、補強リブ１２が嵌合部６にかかる押圧荷重Ｆ を内向き環状部１０および外筒８の全体に分散させてしまうために耐破断強度が 増大するのに対して、図６（ｂ）の場合は、小リブ１４が荷重の分散にほとんど 何の役目も果たさないから、耐破断強度が大幅に低下してしまうのである。

【００１８】 以上のようなことに起因して、嵌合部６の面取り４ａ₁ ，４ａ₂ のうち反オフ セット方向Ｘ′側の面取り４ａ₂ の方において集中的にクラック６０，６２が発 生していたのである。

【００１９】 本考案は、このような事情に鑑みて創案されたものであって、樹脂プーリ本体 の嵌合部を破損しにくくさせることを課題とする。

【００２０】

【課題を解決するための手段】

このような課題を達成するために、本考案は、金属製ボスと、金属製ボスの外 径側に結合される樹脂プーリ本体とからなり、かつ、前記金属製ボスが、回転軸 装着用の内筒と、内筒の外周に径方向外向きに突設された外向き環状部とを有す る一方、前記樹脂プーリ本体が、ベルト掛止用の外筒と、外筒の内周に径方向内 向きに突設された内向き環状部とを有し、前記樹脂プーリ本体の外筒の軸方向中 心が前記金属製ボスの外向き環状部の軸方向中心に対して軸方向一方へ偏る部位 にオフセットされたプーリにおいて、次のような構成をとる。

【００２１】 本考案のプーリは、前記金属製ボスの外向き環状部の外周において軸方向他方 （反オフセット方向）側へ偏った部位に、その肉厚のほぼ半分にわたる上半断面 がほぼＬ字形の環状段差部が設けられているとともに、 前記樹脂プーリ本体の内向き環状部の内周に、前記金属製ボスの環状段差部を 埋める状態で金属製ボスの外向き環状部の外周に嵌合される嵌合部が設けられて いることに特徴を有する。

【００２２】

【作用】

金属製ボスの外向き環状部にその肉厚のほぼ半分にわたる上半断面ほぼＬ字形 の環状段差部を反オフセット方向側に形成し、その環状段差部を埋める状態で嵌 合部を外向き環状部の外周に嵌合することにより、嵌合部の外向き環状部に対す る嵌合肉厚を反オフセット方向側でより大きくしてあるので、反オフセット方向 側からの荷重に対する耐破断強度を高めることが可能となる。

【００２３】

【実施例】

以下、本考案の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。

【００２４】 図１および図２に本考案の一実施例を示している。実施例の図において従来例 の図に付してある符号と同じものは同じ部品または部分を指す。図中、ａは金属 製ボス、ｂは樹脂プーリ本体であり、金属製ボスａは回転軸装着用の内筒２と外 向き環状部４とからなり、樹脂プーリ本体ｂはベルト掛止用の外筒８と内向き環 状部１０と嵌合部６とからなる。

【００２５】 本実施例において従来例と異なる構成は、金属製ボスａと樹脂プーリ本体ｂと の結合部分である。具体的に、図２に示すように、樹脂プーリ本体ｂの嵌合部６ に嵌合している金属製ボスａの外向き環状部４の外周部分において、反オフセッ ト方向Ｘ′側の肩部全周にわたって、軸方向幅が外向き環状部４の肉厚のほぼ半 分にわたる上半断面ほぼＬ字形の環状段差部４ｂが形成されている。そして、嵌 合部６は、環状段差部４ｂを埋める状態で外向き環状部４の外周部分の全体にわ たって嵌合されている。つまり、嵌合部６の外向き環状部４に対する嵌合肉厚が 反オフセット方向Ｘ′側でより大きくされている。図２では、嵌合部６の嵌合部 分のうち、オフセット方向Ｘ側の肉厚の小さい嵌合部分を６ａで示し、反オフセ ット方向Ｘ′側の肉厚の増大された嵌合部分を６ｂで示してある。

【００２６】 以上のように、金属製ボスａの外向き環状部４にインサート成形する樹脂プー リ本体ｂの嵌合部６は、オフセット方向Ｘ側では大きな補強リブ１２が存在して いることから従来通り薄肉嵌合部分６ａとされている。しかし、反オフセット方 向Ｘ′側ではそのような大きな補強リブが形成できず、せいぜい小リブ１４しか 形成できないことから、図６（ｂ）に示したように反オフセット方向Ｘ′側での 耐破断強度が極端に小さくなっていた。これを補うため、外向き環状部４の反オ フセット方向Ｘ′側に上半断面ほぼＬ字形の環状段差部４ｂを形成し、その環状 段差部４ｂを埋める状態でインサート成形した樹脂プーリ本体ｂの嵌合部６は、 反オフセット方向Ｘ′側で充分な肉厚をもつ厚肉嵌合部分６ｂとしたのである。

【００２７】 このことにより、特に、反オフセット方向Ｘ′側からの荷重に対する耐破断強 度を大幅に高くすることができて、プーリＰ₀の寿命延長に貢献できるようにな る。ちなみに、図６（ｂ）の状態での耐破断強度が、従来例の場合、４４０ｋｇ ｆであったのに対し、本実施例の場合、耐破断強度が６６０ｋｇｆとなり、１． ５倍も増大することを本願考案者らは確認している。

【００２８】

【考案の効果】

以上のように、本考案によれば、金属製ボスの外向き環状部に上半断面ほぼＬ 字形の環状段差部を形成することにより、外向き環状部に対する嵌合部の嵌合肉 厚を反オフセット方向側で大きくしたので、反オフセット方向側からの荷重に対 する耐破断強度を大幅に高めることができ、結果としてプーリの寿命延長に貢献 することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例に係るプーリを示す断面図。

【図２】図１のプーリの要部であるインサート成形の嵌
合部分の拡大断面図。

【図３】従来例のプーリを示す断面図。

【図４】図３のプーリの一部破断の正面図。

【図５】図３のプーリのインサート成形の嵌合部分の拡
大断面図。

【図６】耐破断強度の測定の様子を示す断面図。

【符号の説明】

ａ 金属製ボス ｂ 樹脂プ
ーリ本体 ２ 内筒 ４ 外向き環
状部 ４ｂ 環状段差部 ６ 嵌合部 ６ａ 薄肉嵌合部分 ６ｂ 厚肉嵌
合部分 ８ 外筒 １０ 内向き環
状部 １２ 補強リブ Ｃ₀ 外筒の
軸方向中心 Ｃ₁ 外向き環状部の軸方向中心 ＯＳ オフセ
ット Ｘ オフセット方向 Ｘ′ 反オフセ
ット方向

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】金属製ボスと、金属製ボスの外径側に結合
   される樹脂プーリ本体とからなり、かつ、 前記金属製ボスが、回転軸装着用の内筒と、内筒の外周
   に径方向外向きに突設された外向き環状部とを有する一
   方、前記樹脂プーリ本体が、ベルト掛止用の外筒と、外
   筒の内周に径方向内向きに突設された内向き環状部とを
   有し、 前記樹脂プーリ本体の外筒の軸方向中心が前記金属製ボ
   スの外向き環状部の軸方向中心に対して軸方向一方へ偏
   る部位にオフセットされたプーリであって、 前記金属製ボスの外向き環状部の外周において軸方向他
   方（反オフセット方向）側へ偏った部位に、その肉厚の
   ほぼ半分にわたる上半断面がほぼＬ字形の環状段差部が
   設けられているとともに、 前記樹脂プーリ本体の内向き環状部の内周に、前記金属
   製ボスの環状段差部を埋める状態で金属製ボスの外向き
   環状部の外周に嵌合される嵌合部が設けられている、こ
   とを特徴とするプーリ。