JPH0521673Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案はスクロール式圧縮機、スクロール式真
空ポンプ等として用いられるスクロール式流体機
械に関し、特に２個の旋回スクロールを備えてな
るスクロール式流体機械に関する。

〔従来の技術〕

一般に、スクロール式圧縮機は、ケーシング
と、該ケーシング内に配設され鏡板にうず巻状の
ラツプ部が立設された固定スクロールと、該固定
スクロールのラツプ部に対し偏心して旋回可能に
設けられ、鏡板にうず巻状のラツプ部が立設され
た旋回スクロールと、該固定スクロールと旋回ス
クロールとの間に形成された圧縮室と、該圧縮室
に連通され圧縮媒体の給排を行なうための吸込口
および吐出口とを備えたものがある。

そして、旋回スクロールを固定スクロールに対
して旋回させることにより、吸込口から吸込んだ
圧縮媒体を圧縮室を縮小することで圧縮した後、
吐出口から吐出する構成となつている。

これに対し、旋回スクロールを２個設けて、各
旋回スクロール間に圧縮室を形成し、両旋回スク
ロールを回転駆動することにより圧縮効率を高
め、単位時間当たりの圧縮量を増大することがで
きるようにしたものも知られている。

このようなスクロール式圧縮機は、例えば一方
の旋回スクロールをモータにより駆動し、このモ
ータに連結されたタイミングギヤにより他方の旋
回スクロールを駆動する構成となつている。

［考案が解決しようとする課題］ しかしながら、このように、２個の旋回スクロ
ールをタイミングギヤで連結する従来のスクロー
ル式圧縮機にあつては、１個のモータにより２個
の旋回スクロールを駆動するのにタイミングギヤ
を用いているため、作動時に噛み合い音等の騒音
が発生するという課題がある。また、両旋回スク
ロール間に位相のずれが生じた場合、モータに過
負荷が生じる虞れがある。

本考案は、上記課題に着目してなされたもの
で、２個の旋回スクロールを備えた構成でありな
がら、騒音の発生およびモータの過負荷を抑える
ことができるようにしたスクロール式流体機械の
提供を目的とする。

［課題を解決するための手段］ 上記課題を達成するために、本考案は、スクロ
ール室を挟んで両側に第１，第２の駆動室が形成
されたケーシングと、該ケーシングの各駆動室に
それぞれ設けられ、同一の回転数で回転する第
１，第２のモータと、軸線が互いに偏心するよう
に前記ケーシングに軸支され、該第１，第２のモ
ータによつて回転駆動される第１，第２の回転軸
と、前記スクロール室内に位置して該第１，第２
の回転軸に連結して設けられ、鏡板に互いに重な
り合つて旋回する間に密閉空間を形成するうず巻
状のラツプ部が立設された第１，第２の旋回スク
ロールとを備え、該第１，第２の旋回スクロール
のうち、一方の旋回スクロールの鏡板には他方の
旋回スクロールに向けて複数本のピンを立設し、
他方の旋回スクロールの鏡板には該各ピンが挿入
され、前記第１，第２の回転軸間の偏心量に対応
して該各ピンの旋回軌跡を確保する円筒体を複数
本立設する構成としたことにある。

〔作用〕

このように構成することにより、ピンの外周部
が円筒体の内周部に係合可能な状態で嵌合される
から、第１，第２の旋回スクロールはこれらピン
と円筒体に案内されて相対的な旋回運動を行な
い、各ピンと円筒体との間に相対的な位置ずれが
生じたときには、当該位置ずれを補正するカムと
して機能する。

［実施例］ 以下、本考案の実施例をスクロール式圧縮機を
例に挙げ、図面に基ずいて詳細に説明する。

第１図ないし第３図は、この考案の一実施例に
係るスクロール式圧縮機を示している。

まず構成を説明すると、１は全体として密閉構
造となつている円筒体のケーシングを示し、該ケ
ーシング１は円筒部１Ａ、左側端壁１Ｂ、右側端
壁１Ｃ、左側隔壁１Ｄ、右側隔壁１Ｅよりなつて
いる。該ケーシング１は、左側端壁１Ｂおよび左
側隔壁１Ｄ間に画成された第１の駆動室２、左側
隔壁１Ｄおよび右側隔壁１Ｅ間に画成され、中央
に位置するスクロール室３、右側隔壁１Ｅおよび
右側端壁１Ｃ間に画成された第２の駆動室４に区
画されている。

５は第１の回転軸で、該第１の回転軸５は左側
端壁１Ｂと左側隔壁１Ｄとにベアリング６，７を
介して軸心Ｃ１をもつて軸支されている。該第１
の回転軸５の右先端部はスクロール室３に臨み、
該先端部には第１の旋回スクロール８が一体形成
されている。９はシール部材であり、該シール部
材９は第１の駆動室４とスクロール室３とを互い
に密閉している。

１０は第１駆動室２内に設けられた第１のモー
タで、該第１のモータ１０はケーシング１の円筒
部１Ａ内周面に形成された段部１A₁に設けられ
たステータ１１と、第１の回転軸５外周部に固着
されたロータ１２とよりなつている。従つて、第
１の回転軸５、旋回スクロール８は第１のモータ
１０により軸心Ｃ１を軸線として回転する構成と
なつている。

一方、１３は第２の回転軸で、該第２の回転軸
１３は右側隔壁１Ｆと右側端壁１Ｃとにベアリン
グ１４，１５を介して軸心Ｃ２をもつて軸支され
ている。該第２の回転軸１３の左先端部はスクロ
ール室３に臨み、該先端部には前記第１の旋回ス
クロール８と相対旋回可能な第２の旋回スクロー
ル１６が一体形成されている。１７，１８はシー
ル部材であり、一方のシール部材１７はスクロー
ル室３と第２の駆動室４とを互いに密閉し、他方
のシール部材１８は第２の駆動室４と外部を互い
に密閉している。

１９は第２駆動室４内に設けられた第２のモー
タで、該第２のモータ１９はケーシング１の円筒
部１Ａ内周面に形成された段部１A₂に設けられ
たステータ２０と、第２の回転軸１３外周部に固
着されたロータ２１とよりなつている。従つて、
第２の回転軸１３は第２のモータ１９により軸心
Ｃ２を中心として回転する構成となつている。こ
こで、第１の回転軸５の軸心Ｃ１と第２の回転軸
１３の軸心Ｃ２とは、互いに偏心量εをもつて偏
心している。

然るに、前述した第１の旋回スクロール８は、
第２図に示すように、回転軸５と一体成形された
円盤状の鏡板２２と、該鏡板２２上の第２の旋回
スクロール１６側に立設され、巻き始め２３Ａか
ら巻き終り２３Ｂに至るうず巻き状のラツプ部２
３とから形成されている。一方、第２の旋回スク
ロール１６は、第３図に示すように、回転軸１３
と一体成形された円盤状の鏡板２４と、該鏡板２
４上に第１の旋回スクロール８側に立設され、巻
き始め２５Ａから巻き終り２５Ｂに至るうず巻き
状のラツプ部２５とから形成されている。

２６，２６，…は前記第１の旋回スクロール８
のラツプ部２３と第２の旋回スクロール１６のラ
ツプ部２５との間に形成された圧縮室で、該各圧
縮室２６は第１の旋回スクロール８と第２の旋回
スクロール１６との相対的な旋回運動によりラツ
プ２３，２５部間で漸次収縮される。２７はケー
シングの円筒部に形成された吸込口で、該吸込口
２７はスクロール室３を介して前記圧縮室２６に
ラツプ部２３，２５の巻き終り２３Ｂ，２５Ｂ間
から空気や冷媒等の圧縮媒体を供給する。

２８は第２の回転軸１３と第２の旋回スクロー
ル１６とを貫通する圧縮媒体通路で、該圧縮媒体
通路２８は一端が圧縮室２６のラツプ部２３，２
５巻き始め２３Ａ，２５Ｂ間に開口し、他端がケ
ーシング１の右側端壁１Ｃに形成され圧縮媒体を
吐出するための吐出口２９に開口している。

３０，３０はケーシング１の第１，第２の駆動
室２，４底部に貯溜されたオイルであり、オイル
該３０は圧縮媒体の圧縮時に発生する圧縮熱を冷
却し、かつ第１および第２の回転軸５，１３を円
滑に回転させる潤滑油等として作用する。なお、
図示はされていないが、オイル３０はバランスウ
エイトまたは油掻きによつて掻き上げられ、第１
および第２の駆動室２，４内に給油される。他
方、スクロール室３はシール部材９，１７でシー
ルされ、当該スクロール室３内にはオイル３０は
供給されない。

次に、３１，３１，…は第１の旋回スクロール
の鏡板の周方向に複数（この実施例では４箇所）
立設された円柱状のピンを示し、該各ピン３１は
例えば鏡板２２に形成された穴３２，３２，…に
嵌装されてラツプ部２３の高さと同様な高さを有
している。ここで、前記各ピン３１の径は、ラツ
プ部２３全体の重心位置と第１の回転軸５の軸心
Ｃ１とが同一となるようそれぞれ異なつている。

即ち、第２図に示すように、ラツプ部２３全体
の重心位置をＷ１、該重心位置Ｗ１から第１の回
転軸５の軸心Ｃ１までの距離をｒ１、ラツプ部２
３全体の質量をｍ１、各ピン３１全体の重心位置
をＷ２、該重心位置Ｗ２から第１の回転軸５の軸
心Ｃ１までの距離をｒ２、各ピン３１全体の質量
をｍ２とすると、 ｍ１×ｒ１＝ｍ２×ｒ２ ……(1) を満足するようピン３１の径が設定されている。

一方、３３，３３，…は第２の旋回スクロール
１６の鏡板２４の周方向に複数（この実施例では
４箇所）立設され、前記ピン３２がそれぞれ嵌合
する円筒体を示し、該各円筒体３３は前記各ピン
３１と対応する位置に設けられ、例えば鏡板２４
に形成された穴３４に嵌装されてラツプ部２５の
高さと同様な高さを有している。ここで、前記各
円筒体３３の肉厚は、ラツプ部２５全体の重心位
置と第２の回転軸１３の軸心Ｃ２とが同一となる
ようそれぞれ異なつている。

即ち、第３図に示すように、ラツプ部２５全体
の重心位置をＷ３、該重心位置Ｗ３から第２の回
転軸１３の軸心Ｃ２までの距離をｒ３、ラツプ部
２５全体の質量をｍ３、各円筒体３３全体の重心
位置をＷ４、該重心位置Ｗ４から第２の回転軸１
３の軸心Ｃ２までの距離をｒ４、各円筒体３３全
体の質量をｍ４とすると、 ｍ３×ｒ３＝ｍ４×ｒ４ ……(2) を満足するよう円筒体３３の肉厚が設定されてい
る。

ここで、各ピン３１と円筒体３３との関係に付
いて述べると、第１，第２の旋回スクロール８，
１６のラツプ部２３，２５は、数μmの隙間を有
して旋回運動するものであり、この旋回運動を案
内し、前記旋回スクロール８，１６の自転を防止
するため、ピン３１の外周部と円筒体３３の内周
部とは数μmの隙間を有して係合可能となつてお
り、各円筒体３３の内周面は、それぞれ嵌合され
たピン３１の旋回軌跡を確保する構成となつてい
る。即ち、第１図において、円筒体３３の内周面
の径が各ピン３１の径と前記第１，第２回転軸
５，１３間の偏心量εとを加えた大きさとなつて
おり、従つて、各円筒体３３の内周面とピン３１
との隙間が偏心量εと同一となる。

本実施例はこのように構成されるが、次にその
作用を説明する。

まず、第１，第２のモータ１０，１９のステー
タ１１，２０に通電すると、ロータ１２，２１と
一体的な第１，第２の回転軸５，１３がそれぞれ
の軸心Ｃ１，Ｃ２を中心とし偏心量εをもつて互
いに同方向に旋回する。吸込口２７からは圧縮媒
体としての空気がスクロール室３内に順次供給さ
れ、該空気はラツプ部２３，２５の巻き終り２３
Ｂ，２５Ｂ間から圧縮室２６内に封入される。第
１，第２の旋回スクロール８，１６は相対的に旋
回しており、圧縮室２６は漸次収縮され、ラツプ
部２３，２５の巻き始め２３Ａ，２５Ａに至まで
空気が圧縮され、該圧縮空気は圧縮媒体通路２８
を介して、ケーシング１の吐出口２９から外部に
吐出される。

このように、圧縮室２６は第１，第２の旋回ス
クロール８，１６により収縮されるため、圧縮効
率が高く単位時間当たりの圧縮量は多い。また、
各旋回スクロール８，１６はそれぞれの軸心Ｃ
１，Ｃ２を中心として回転するため、旋回軸受を
用いることがなく通常の軸受を用いることができ
コストダウンが図れる。

しかも、タイミングギヤを用いて１個のモータ
により第１，第２の旋回スクロール８，１６を駆
動する構成ではないため、ギヤの噛み合い音等の
騒音が発生することはない。第１の旋回スクロー
ル８のピン３１と第２の旋回スクロール１６の円
筒体３３との間には微小な隙間が設けられている
ため、相対的な位相のずれが生じないときは、各
旋回スクロール８，１６の摩擦による摺動音は発
生しない。従つて、低騒音のスクロール圧縮機を
実現することができる。

ここで、例えばモータ１０，１９としてインバ
ータモータを使用した場合等には、第１，第２の
旋回スクロール８，１６間に相対的に位相のずれ
が発生する虞れがある。しかし、ピン３１の外周
面と円筒体３３の内周面とが接触し、該円筒体３
３がカムとして作用し反力が発生してずれを補正
する方向に両者が相対的にずれる。このため、ピ
ン３１と円筒体３３とが位相のずれを常に補正し
て適正な位相を保持することができ、モータ１
０，１９の過負荷を防止することができる。

また、ピン３１の径および円筒体３３の肉厚を
変えることで、第１，第２の旋回スクロール８，
１６の軸心Ｃ１，Ｃ２とラツプ部２３，２５の重
心とが一致しているため、前記適正な位相の保持
と相まつて第１および第２の旋回スクロール８，
１６は安定した回転を行なうことができる。

さらに、第１，第２の駆動室２，４にはオイル
３０が供給されており、圧縮熱を冷却でき、第
１，第２の回転軸５，１３の円滑な回転が図れ
る。しかも、この実施例では、スクロール室３が
シール部材９，１７により第１，第２の駆動室
２，４とシールされているため、圧縮媒体にオイ
ル３０が混入するのを防止し、清浄な圧縮空気を
得ることができる。

なお、本考案は上記実施例のものに限定され
ず、例えば第１の回転軸５と第１の旋回スクロー
ル８、または第２の回転軸１３と第２の旋回スク
ロール１６とを別体で構成してもよく、ピン３１
または円筒体３３を各鏡板２２，２４と一体形成
してもよい。

また、各円筒体３３を第１旋回スクロール８に
設け、ピン３１を第２旋回スクロール１６に設け
ても同様な効果が得られる。

さらに、ピン３１、円筒体３３は各鏡板２２，
２４に少なくとも２個設けられていればよい。即
ち、軸心Ｃ１，Ｃ２と該２個のピン３１または円
筒体３３とにより旋回平面が確定されるからであ
る。この場合、２個のピン３１と円筒体３３は、
鏡板２２，２４の同一対角線上に設けてはならな
いことは勿論である。

さらにまた、第１，第２の駆動室２，４には、
特に給油をする構成としなくてもよく、無給油式
流体機械としてもよい。

［考案の効果］ 以上詳細に説明したように、本考案によれば、
２個の旋回スクロールを備えて圧縮効率が高い構
成でありながら、当該２個の旋回スクロールに旋
回軌跡を確保しつつ係合可能なピンと円筒体とを
設けたため、低騒音の圧縮機が実現でき、安定し
た圧縮性能を確保でき、さらにモータの過負荷も
抑えることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本実施例に係るスクロール圧縮機の縦
断面図、第２図は第１図に示した第１の旋回スク
ロールの平面図、第３図は第１図に示した第２の
旋回スクロールの平面図である。 １……ケーシング、２……第１の駆動室、３…
…スクロール室、４……第２の駆動室、５……第
１の回転軸、８……第１の旋回スクロール、１０
……第１のモータ、１３……第２の回転軸、１６
……第２の旋回スクロール、１９……第２のモー
タ、２２……鏡板、２３……ラツプ部、２４……
鏡板、２５……ラツプ部、２６……圧縮室、２７
……吸込口、２９……吐出口、３１……ピン、３
３……円筒体。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. スクロール室を挟んで両側に第１，第２の駆動
   室が形成されたケーシングと、該ケーシングの各
   駆動室にそれぞれ設けられ、同一の回転数で回転
   する第１，第２のモータと、軸線が互いに偏心す
   るように前記ケーシングに軸支され、該第１，第
   ２のモータによつて回転駆動される第１，第２の
   回転軸と、前記スクロール室内に位置して該第
   １，第２の回転軸に連結して設けられ、鏡板に互
   いに重なり合つて旋回する間に密閉空間を形成す
   るうず巻状のラツプ部が立設された第１，第２の
   旋回スクロールとを備え、該第１，第２の旋回ス
   クロールのうち、一方の旋回スクロールの鏡板に
   は他方の旋回スクロールに向けて複数本のピンを
   立設し、他方の旋回スクロールの鏡板には該各ピ
   ンが挿入され、前記第１，第２の回転軸間の偏心
   量に対応して該各ピンの旋回軌跡を確保する円筒
   体を複数本立設してなるスクロール式流体機械。