JPH05203644A - 胎便成分の測定方法 - Google Patents

胎便成分の測定方法

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JPH05203644A
JPH05203644A JP4013195A JP1319592A JPH05203644A JP H05203644 A JPH05203644 A JP H05203644A JP 4013195 A JP4013195 A JP 4013195A JP 1319592 A JP1319592 A JP 1319592A JP H05203644 A JPH05203644 A JP H05203644A
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JP
Japan
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amniotic fluid
stn
meconium
sample
antibody
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JP4013195A
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Hiroshi Kobayashi
浩 小林
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Otsuka Pharmaceutical Co Ltd
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Otsuka Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】本発明は、検体中のシアリルTN抗原を該抗原
に対する抗体を用いて免疫検定して該検体中に存在する
胎便成分を測定する方法、殊に検体が羊水、血液及び肺
組織から選択されるものである上記方法を提供する。 【効果】本発明方法は、検体中の胎便成分の測定に有効
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新しい胎便成分の測定方
法、より詳しくは羊水混濁の測定及び判定、母体血中に
流入した胎便成分の測定、羊水塞栓症の確定診断に有効
な、新しい胎便成分の測定方法に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】羊水混濁(meconium staining
)とは、羊水が胎便によって着色される現象であり、
分娩中に上記羊水混濁を認めた症例での胎児仮死や胎児
死亡の頻度は高く、これが胎児仮死の重要な徴候の一つ
となっている。しかして、上記羊水混濁の判定は、従来
破水前では羊水鏡を用いた肉眼判定により、また破水後
では漏出する羊水を直接観察することにより行なわれて
いる[荻田幸雄、今中基晴、羊水混濁・産婦の実際、
,1738−1741,1988]が、このような目
視観察では軽度の羊水混濁は判定困難であり、より高精
度で羊水中の胎便成分を測定できる手段の開発が当業界
で切望されている。
【0003】また従来より、羊水中の胎便成分が母体血
中に流入することにより、母体の肺循環系が閉塞した
り、凝固系を活性化して、致死的な羊水塞栓症、播種性
血管内凝固症候群(DIC)となり、母体死亡に至らせ
る頻度が高い(母体死亡率80%)ことも知られている
[高橋昌俊、羊水塞栓症、日産婦関東連合会報告、
,68−69,1991]。かかる母体死危険因子の
スクリーニング及び高リスク妊娠の母体把握管理等に有
効であると考えられる上記母体血中の胎便成分の確認及
び測定法としては、最近、光学的手法を用いた光ファイ
バーセンサーによる羊水混濁装置が開発されたが、これ
は現在、大学病院レベルでの臨床応用に止まるに過ぎな
い[住本和博、金山尚裕、寺尾俊彦、「工学的手法を用
いた非侵襲的羊水診断」、周産期学シンポジウム,N
o.6,138,1988:住本和博、金山尚裕、寺尾
俊彦、川島吉良、山下豊、羊水混濁測定装置の開発、産
婦治療、56,345,1988:寺尾俊彦、住本和
博、成瀬寛夫、羊水鏡・産婦の実際、38,347−3
52,1989:Kentaro Horiuchi, Kyoko Adachi, Yu
takaFujise, Hiroo Naruse, Kazuhiro Sumimoto, Naohi
ro Kanayama and ToshihikoTerao, Isolation and char
acterization of Zinc coproporphyrin I, a majorfluo
rescent component in meconium, Clin. Chem.,37, 117
3-1177, 1991 ]。また、母体血中の亜鉛コプロポルフ
ィリンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によ
り測定する方法が最近報告された[成瀬寛夫、住本和
博、金山尚裕、寺尾俊彦、蛍光を用いた胎便吸引症候群
(MAS)の特異的診断法に関する研究、日産婦誌、
,719−726,1990:Naruse, H., Kanayam
a, N., Sumitomo, K., Terao, T., and Kawashima, Y.,
Diagnosis of Meconium Aspiration Syndrome (MAS) a
nd Amniotic Fluid Embolism by the Fluorescent Meas
urement Based on the Characteristics of Porphyrin
s, J. Perinat. Med., 17 (Suppl.1),104, 1989 ]。し
かしながら、上記亜鉛コプロポルフィリンのHPLCに
よる測定はそれ自体繁雑である欠点がある更に、上記羊
水塞栓症の確定診断は、一般には死後の肺剖検によるこ
とがほとんどであり、肺血管腔内に存在する胎児成分や
ムチンを染色し、母体肺中に存在する胎児成分の証明に
よってなされている。剖検による確定診断には組織染色
としてヘマトキシリン・エオジン染色、ムチン染色、コ
トイドイオン染色等が行なわれている[William, D. Ro
che and Henry, J. Norris, Detection and Significan
ce of Maternal Pulmonary Amniotic Fluid Embolim.,
Obstet. Gynecol.,43, 1974]。
【0004】本発明は、上記羊水混濁の測定乃至判定、
母体血中に流入した胎便成分の測定及び羊水塞栓症の確
定診断に有効な新しい胎便成分の測定技術を提供するこ
とを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記現状よ
り胎便中のムチンに着目し、ムチン母核構造を認識する
モノクローナル抗体(シアリルTn(STN)抗原、即
ちNeuAcα2→6GalNAcα1→O−Ser/
Thr構造に対する抗体)による羊水塞栓症の非観血的
診断技術につき鋭意研究の結果、上記胎便成分の測定
が、検体中のSTN抗原の免疫測定によってなし得るこ
と、即ち、検体中のSTN抗原量の測定値が該検体中に
存在する胎便成分量と非常によく相関することを見出
し、ここに本発明を完成するに至った。
【0006】即ち、本発明は検体中のSTN抗原を該抗
原に対する抗体を用いて免疫検定して該検体中に存在す
る胎便成分を測定する方法、殊に検体が羊水、血液及び
肺組織から選ばれるものである上記測定方法に係わる。
【0007】本発明方法は、通常の一般的免疫検定法に
従いSTN抗原を測定することによって、検体中の胎便
成分の測定を可能とするものであり、従来例のない新し
いものである。しかして、従来よりSTN抗原はヒト癌
関連抗原として知られておりその測定技術は癌の診断に
研究開発されてきているが、これが胎便成分となんらか
の関連を有することは報告された例がなく、本発明者ら
が独自に見出した新しい知見である。
【0008】本発明方法においては、検体として羊水、
血液又は肺組織を用い、これにSTN抗原に対する抗体
を免疫反応させて該検体中のSTN抗原量を測定する。
ここで用いられる検体は特になんらの処理も成されてい
ない臨床サンプルそのものでよく、血液の場合は、採血
された血液自体及び採血後常法に従い分離された血清、
血漿のいずれであってもよい。
【0009】また上記サンプルと免疫反応させるSTN
抗原に対する抗体としては、通常STN抗原と特異反応
性を有するモノクローナル抗体が好ましく、該抗体は既
に種々確立されている。その具体例としては、例えば
「TKH−2」、「BM−3」、「BM−4」、「MA
54」、「MA61」、「B72.3」、「CC49」
[Cancer Research,48, 2214-2220 (1988)、特開平2−
503387号公報等参照]等を例示でき、之等の内で
は特にTKH−2がその感度、特異性等の面で好適であ
る。之等のモノクローナル抗体は、免疫抗原として動物
から単離されたムチン、例えばヒツジ顎下腺ムチン(O
SM)、ウシ顎下腺ムチン(BSM)等のSTN、即ち
ムチン型糖蛋白質であって且つポリペプチド鎖を構成す
るセリン残基(Ser)又はスレオニン残基(Thr)
の水酸基に、N−アセチルガラクトサミン−N−アセチ
ルノイラミン酸残基(NeuAcα2→6GalNA
c)がα結合したものや、既に確立された細胞ライン、
例えば扁平上皮肺癌細胞ライン(QG56及びLU−6
5)等の培養上清から単離されたSTN抗原を用いて、
一般的方法に従い製造することができる。即ち、上記免
疫抗原で免疫した哺乳動物の形質細胞(免疫細胞)と哺
乳動物のミエローマ細胞との融合細胞(ハイブリドー
マ、hybridoma)を作成し、これより所望抗体(モノクロ
ーナル抗体)を産生するクローンを選択し、該クローン
の培養により製造、採取する方法によることができる。
上記各方法における、操作等はいずれも公知である[Ha
nfland, P.,Chem. Phys. Lipids, 15, 105 (1975); Han
fland, P., Chem. Phys.Lipids,10,201 (1976) ; Kosci
elak, J., Eur. J. Biochem., 37, 214 (1978)等参
照]。
【0010】所望の抗体は粗製抗体液、即ち抗体産生ハ
イブリドーマ培養上清或はマウス腹水そのままで使用で
き、また硫酸アンモニウム分画やイオン交換クロマトグ
ラフィー或はプロテインA抗原カラム等によるアフィニ
ティクロマトグラフィーにより精製して使用することも
できる。尚、上記免疫細胞とミエローマ細胞との融合反
応は、公知の方法、例えばマイルスタイン(Milstein)
らの方法[Method inEnzymology, Vol.73, 3 (1981)]
等に準じて実施でき、得られる所望のハイブリドーマの
分離は、通常の選別用培地、例えばHAT培地で培養す
ることにより行なわれ、得られるハイブリドーマは、通
常の限界希釈法により目的とする抗体の検索及び単一ク
ローン化に供され、目的抗体産生株の検索は、例えばE
LISA法[Engvall, E., Meth. Enzymol.,70, 419-43
9 (1980)]、プラーク法、スポット法、凝集反応法、オ
クタロニー (Ouchterlony)法、ラジオイムノアッセイ
(RIA)法等の一般に抗体の検出に用いられている種
々の方法〔「ハイブリドーマ法とモノクローナル抗
体」、株式会社R&Dプラニング発行、第30-53 頁、昭
和57年3月5日〕に従い実施できる。上記ハイブリド
ーマからの目的モノクローナル抗体の採取は、該ハイブ
リドーマを常法に従って、無血清培地にて培養してその
培養上清として得る方法やハイブリドーマをこれと適合
性のある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として
得る方法等が採用される。前者の方法は、高純度の抗体
を得るのに適しており、後者の方法は、抗体の大量生産
に適している。上記のごとくして得られる抗体は、更に
塩析、ゲル濾過法、アフィニティクロマトグラフィー等
の通常の手段により精製することができる。
【0011】上記STNモノクローナル体を用いた免疫
反応(STN抗原の測定法)は、通常の競合法、サンド
イッチ法によるラジオイムノアッセイ(RIA)法、酵
素免疫測定法(ELISA)、凝集法、組織染色法等の
免疫学的手法に従い実施でき、之等方法の操作、手順等
は、常法と変わるところはない。かかる操作において、
モノクローナル抗体を不溶化させる場合、該不溶化は常
法に従い抗体を不溶性担体に物理的又は化学的に結合さ
せることにより実施でき、不溶化のための不溶性担体と
しては、例えばポリスチレン、セファデックス、イオン
交換樹脂、プラスチックチューブ、アミノ共重合体等を
使用でき、不溶化は共有結合法としてのジアゾ法、ペプ
チド法、アルキル化法、架橋試薬による担体結合法、U
gi反応による担体結合法等の化学反応、或はイオン交
換樹脂のような担体を用いるイオン結合法、ガラスビー
ズ等の多孔性ガラスを担体として用いる物理的吸着法等
によって行ない得る。また標識抗体を利用する場合、該
標識抗体としては、上記モノクローナル抗体もしくは第
2抗体としての既に市販のマウス、ラット、モルモッ
ト、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、馬、牛等の動物に免疫して
得られる抗イムノグロブリン抗体を、例えばパーオキシ
ダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ等の酵素で
標識したものを使用できる。
【0012】上記各種のSTN抗原の測定系に利用され
る溶媒としては、反応に悪影響を与えない通常のものを
いずれも利用でき、例えばクエン酸緩衝液、リン酸緩衝
液、トリス塩酸緩衝液、酢酸緩衝液等のpHが約5〜9
程度の緩衝液の利用が好ましい。また、測定の際の免疫
反応条件は、特に制限はなく、通常のこの種測定法と同
様のものとすることができる。一般には約45℃以下、
好ましくは約4〜40℃程度の温度条件下に、約1〜8
0時間程度を要して反応を行なえばよい。
【0013】上記免疫反応終了後において、反応複合体
と非結合標識抗体との分離を要する場合は、例えば遠心
分離、濾別、デカンテーション、洗浄等の通常の方法に
よりこれを行なうことができる。かくして分離された各
物質の標識活性の測定は、使用した標識の種類に応じ
て、公知の各種方法に従い実施することができる。例え
ば酵素としてパーオキシダーゼを用いる場合には、o−
フェニレンジアミン(OPD)等の発色試薬溶液を用い
ることができ、発色反応の停止も常法に従い例えば反応
液に1〜4Nの硫酸等の適当な酵素活性阻害剤を添加す
ることにより実施できる。
【0014】かくして、本発明方法によれば、臨床サン
プル等の胎便成分を含有する試料を検体として、該検体
の胎便成分量を高精度、高感度で、しかも簡便な操作で
測定することができる。
【0015】
【実施例】以下、本発明を更に詳しく説明するため、本
発明方法につき参考例及び実施例を挙げて詳述する。
【0016】
【参考例1】 標準抗原の調製 ヒルらの方法[Hoyle D. Hill Jr., et al., The Journ
al of Biological Chemistry, Vol. 252, No. 11, pp.3
791-3798 (1977) ]に従って調製したヒツジ顎下腺ムチ
ン(OSM)をSTN抗原として用いて試験を行なっ
た。
【0017】尚、以下の例においては、特開昭64−3
5271号公報に準じて調製した胎便抽出液を用い、こ
れを400U/mlのSTN抗原濃度と任意に設定し
て、12.5U/mlまでの段階希釈系列を作製して、
標準抗原とした。
【0018】 不溶化抗原の調製 ポリスチレンビーズ(セキスイ化学工業社製、直径6.
3mm)1万個を、30%エタノールを含む1/100
0N NaOH水溶液でよく洗浄し、更に蒸留水で充分
に洗浄した。
【0019】上記で調製した胎便抽出液を0.1M炭
酸水素ナトリウム緩衝液に溶解し、上記ビーズの1万個
を加え、2時間攪拌し、次いで4℃で一晩放置した。
【0020】常法に従い、非特異反応部位のブロック処
理後、ビーズを濾取し、充分に洗浄して不溶化抗原を得
た。
【0021】 標識抗体の調製 モノクローナル抗体TKH−2の200μgを、0.1
Mホウ酸緩衝液(pH8.0)の0.5mlに溶かした
溶液を調製し、これにNa 125I(NEN社製)の1m
Ciを加えた。
【0022】ヨードゲン(Iodogen, Pierce 社製)1m
g/mlのジクロルメタン溶液2μgをガラス試験管に
入れ、窒素ガス気流下に溶媒をとばして乾燥し、この試
験管に上記で調製した抗体溶液を加え、氷冷下に10分
間かるく攪拌しながら反応させた。この反応物を別の試
験管に移し、反応を停止させた後、ゲル濾過[セファロ
ースCL6B(ファルマシア社)使用、溶出液=0.5
%BSA及び0.05%NaN3 を含む50mMクエン
酸ナトリウム緩衝液]により、放射活性のピークに一致
するIgG画分を採取して、 125I−標識抗体を得た。
【0023】 標準曲線の作成 上記で得たSTN標準抗原、不溶化抗原及び標識抗体を
用いて、“STN「オーツカ」RIAキット”(大塚製
薬社製)の用法・用量に従った測定操作を実施した。
【0024】得られた結果を、横軸に各STN標準抗原
の濃度を対数目盛りで、縦軸に各STN標準抗原のB/
0 (%)をロジット変換して、プロットし、一次回帰
より標準曲線を作成した。
【0025】
【実施例1】妊婦検体のSTN量の測定 妊婦より調製した羊水及び血清を検体として利用し、上
記の方法をそれぞれ実施(標準抗原の代わりに之等検体
を用いる)して、之等各検体中のSTN抗原量を測定し
た。
【0026】得られた各結果(B/B0 %)を、上記で
得た標準曲線のそれぞれにあてはめて各検体中の抗原量
(STN抗原量、U/ml)を算出した。
【0027】尚、最初の検査で検体のSTN抗原濃度が
400U/mlより高値を示した場合は、その希釈液を
調製して、その抗原濃度を測定、算出した。得られた結
果を次に示す。
【0028】 羊水中STN抗原濃度 羊水中のSTN抗原濃度を測定した結果は図1に示す通
りである。
【0029】図1は、肉眼的に混濁のない症例(羊水混
濁例、Clear AF、n=177)及び肉眼的に混濁の認め
られた症例(羊水非混濁例、Meconuim stained AF 、n
=30)のそれぞれについてのSTN抗原濃度(U/m
l)測定結果をプロット(黒丸印)したグラフであり、
黒三角印は混濁(intermixture of meconium)を、また
白三角印は妊娠17〜20週に採取された検体を示す。
【0030】該図より以下のことが判明した。
【0031】即ち、肉眼的に混濁のない症例のSTN抗
原濃度の平均±SDは105.3±120.2U/ml
であり、肉眼的に混濁の認められた症例のそれは68
8.4±313.7U/mlであった。後者は、前者に
比較して有意に高値を示した(p=0.026354
5)。尚、肉眼的に混濁のない症例においても、STN
抗原濃度が比較的高値を示す症例も存在した。また、妊
娠17〜20週に採取された羊水中のSTN抗原濃度
は、それ以外の時期に採取されたものよりも高値を示し
た。一方、羊水混濁例の内、胎便混入のみの症例は、比
較的低値を示した。更に、羊水中STN抗原濃度が40
0U/ml以上の症例の殆ど(96%)は、肉眼的混濁
症例であった。
【0032】以上のことより、羊水STN抗原濃度を測
定することによって、羊水混濁の程度を定量的に把握す
ることが可能であると推定される。また、羊水混濁のな
い症例でSTN抗原濃度が高値を示した症例は、肉眼的
に検出されない程度の微量の胎便が混入しているものと
解釈される。
【0033】 妊娠中における羊水STN抗原濃度の
変化 妊娠中における羊水STN抗原濃度の変化は図2に示す
通りである。
【0034】図において、縦軸はSTN抗原濃度(U/
ml)を、横軸は妊娠経過期間(Gestational Weeks 、
週)を示し、白丸印は羊水混濁例であり、黒丸印は羊水
非混濁例である。
【0035】該図より、妊娠14週以前では羊水中ST
N抗原濃度は比較的低値を示したが、15週から22週
にかけて高値をとり、以後漸減し、再度妊娠35週頃よ
り漸増する傾向を示し、分娩時期に最高値を示した。
【0036】分娩時に肉眼的に混濁のあった症例のST
N抗原濃度はその殆どが400U/ml以上を示した
が、肉眼的に混濁のなかった症例でも400U/ml以
上を示した症例も存在した。但し、今回の症例中には羊
水混濁のためにMASを含め胎児、新生児に重度仮死を
きたした症例は含まれておらず、その殆どが正常の妊娠
経過をたどった。妊娠15週から22週にかけて高値を
とる理由は、妊娠20週頃に胎児の肛門活約筋が発達し
閉じると考えられるため、これ以前の羊水には胎便が生
理的にも容易に混入しやすいために羊水中STN抗原濃
度が高値を示したものと考えられる。
【0037】 妊娠中における血清STN抗原濃度の
変化 このSTN抗原濃度の変化は図3に示す通りである。
【0038】図3は図2と同様にして作成されたグラフ
であるが、横軸の妊娠期間(40週)以降の数値は分娩
後日数を示す。
【0039】該図より、血清STN抗原濃度は羊水中S
TN抗原濃度とは相関せず、妊娠経過中1例を除いて、
いずれの症例も全て50U/ml以下を推移した。上記
高値を示した1例は、羊水混濁、前期破水(PROM)
例であった。
【0040】以上より、本発明に従う羊水中STN抗原
濃度の測定によれば、羊水混濁の程度、即ち羊水に混入
した胎便量を定量的に評価できることが明らかとなっ
た。
【0041】 羊水塞栓症の診断における血清STN
抗原濃度測定の有用性 羊水塞栓症は羊水中の胎便成分が何らかの原因で母体中
に流入し、血管腔内に栓塞して、血流遮断ないし乏血の
ためにその血管支配雑木の機能障害をもたらす疾患で、
主として肺動脈に栓塞して急激な重症ショック症状、出
血を起こす疾患であり、母体致死率は80%程度と非常
に高い。その確定診断は現在剖検がもっぱら用いられて
おり、非剖検による診断方法の確立が望まれている。
【0042】本発明によれば、上述した通りSTN抗原
濃度により羊水混濁の程度、即ち羊水に混入した胎便の
量を定量的に評価できることが判明したので、今回、羊
水塞栓症により死亡した症例の母体血清STN抗原濃度
(U/ml)を測定することにより、上記非剖検による
診断が可能か否かを検討した。
【0043】結果は、図4に示す通りである。
【0044】図は通常分娩例(羊水混濁例(n=15)
及び羊水非混濁例(n=17)並びに羊水塞栓症例(A
FE、n=4)の各例における血清STN濃度(U/m
l)を求めたグラフ(黒丸印)であり、白丸印はPRO
Mを示す。
【0045】該図より、清澄羊水をもつ母体血清中のS
TN抗原濃度及び羊水混濁例でもPROMのない症例で
の該抗原濃度は、全て30U/ml以下であることが判
った。一方、羊水塞栓症では105.6±59.0U/
mlという高値が得られた(p<0.01)。
【0046】このことから、本発明方法によれば、羊水
塞栓症の母体血中において高濃度のSTN抗原を検出で
き、これにより羊水塞栓症の診断を行ない得ることが明
らかとなった。上記羊水塞栓症における母体血中の高濃
度STN抗原の証明は、胎便成分が何らかの原因で母体
血中に流入し、結果として羊水塞栓症を発生したことの
証明である。
【0047】 Zn−コプロポルフィリン(Zn−C
P)とSTNとの相関 Zn−CPは、405nmの励起光に対して580nm
と630nmに蛍光ピークを有する物質であり、胎便中
に特異的存在することが判明している。従って、羊水及
び母体血清中の該Zn−CP濃度をHPLCにて測定す
ることによって、胎便の混入を定量的に測定することが
できるといわれている。
【0048】本試験では、本発明方法に従う結果と、上
記HPLC測定結果との相関関係を、同一検体について
比較検討した。
【0049】その結果、羊水を検体とした場合、両者を
同時測定し得た検体22例につき、Zn−CPが20ピ
コモル/ml以上の検体は3例存在し、之等の検体のS
TN値は380U/ml以上の高値であった。また、Z
n−CPが20ピコモル/ml以下の検体(19例)で
は、STN値は低値から高値まで分散しており、両者は
必ずしも相関しないことが判った(r=0.36458
9)。
【0050】また、母体血清を検体とした場合は、検体
29例について、Zn−CPが100ピコモル/ml以
上の検体が4例存在し、之等検体のSTN値は、それぞ
れ5.3、8.3、28/4及び187.3U/mlを
示した。上記187.3U/mlを示した症例は羊水塞
栓症と診断された。Zn−CPが低値を示した症例では
全て母体血清STN値は低値を示した。
【0051】以上のことから、Zn−CPとSTNとは
いずれも胎便中に存在するが、その代謝、半減期等は異
なる可能性があり、それら相互の相関性は認められなか
った(r=0.376736)。
【0052】
【実施例2】STN抗原を認識する各種抗体と胎便との
反応性 STNを認識すると推定されている5種の抗体(TKH
−2、MA54、MA61、B72.3及びCC49)
について、之等各抗体と胎便との反応性をELISA法
にて検討した。即ち、胎便抽出液を96穴のマルチタイ
タープレートにコーティングし、之等各抗体を各種濃度
で反応させた。
【0053】その結果を図5[縦軸:450nmでの吸
光度(A450)、横軸:抗体濃度(μg/ml)]に
示す。
【0054】図中、黒丸印はTKH−2を、黒三角印は
CC49を、黒四角印はMA61を、白丸印はMA54
を、白三角印はB72.3をそれぞれ示す。
【0055】該図より、抗体TKH−2が最も低濃度で
反応が認められ、次いで抗体CC49、MA61、MA
54の順に反応が認められた。一方、抗体B72.3の
胎便に対する反応は非常に弱かった。
【0056】次に、胎便抽出液をノイラミニダーゼで処
理してから各種抗体の反応を検討した。その結果は上記
図5と同様にして図6に示す通りであり、TKH−2、
MA54、MA61の反応は消失していた。
【0057】また、OMSに対する阻害実験を行なっ
た。その結果を、用いた抗体毎に、それぞれ図7(TK
H−2)、図8(MA54)、図9(MA61)、図1
0(B72.3)及び図11(CC49)に示す。
【0058】各図において、縦軸は%結合抗体を、横軸
は阻害剤濃度(mM)を示す。また各図における阻害剤
としては、○がGluを、●がGalを、△がFuc
を、▲がGluNAcを、□がGalNAcを、■がM
anを、▽がGal−Gluを、▼がNeuAcを、×
がNeuAc−Galβ−Gluを、※がMalを、◎
がOSMを、それぞれ示す。
【0059】上記の結果、抗体CC49は比較的阻害が
かからなかった。それ以外の抗体は全てOMSにより完
全に阻害された。
【0060】以上の実験より、胎便との反応性は抗体T
KH−2が最もよく、この抗体はSTN抗原を認識して
いることが確認され、感度及び特異性の面で、本発明に
より有効に利用できることが判った。
【0061】
【実施例3】日本白色種家兎を使用して実験的羊水塞栓
症を作成した。1%の胎便溶液を作成し、下大静脈より
10秒以内に5mlを注入した。この条件では家兎は死
に至らなかった。胎便溶液を注入してから1時間後に肺
を摘出し、ホルマリン固定後、組織染色を行なった。こ
の時の血清STN値は150〜200U/mlであっ
た。組織染色としてHE染色とTKH−2による免疫染
色を行なって、之等を比較した。
【0062】その結果、HE染色では何等の特徴的な所
見は得られなかったが、TKH−2染色では肺動脈血管
内にびまん性にTKH−2が染色された。一方、TKH
−2は肺の気管支腺の一部にも陽性像を認めるが、羊水
塞栓症という疾患の特性上、肺動脈内に胎便成分が認識
できれば診断が確定するため、気管支腺の陽性所見は診
断確定に何等の影響をも及ぼさない。
【0063】
【実施例4】羊水塞栓症診断のための簡易測定試薬の開
発 本発明によれば、現在血清中のSTN濃度はRIAによ
り測定しているが、疾患の緊急性を考えると、この方法
では尚不充分な点があり、ラテックス凝集法等による簡
易測定試薬の開発が望まれ、かかる要求に合致する簡易
測定試薬が提供できる。診断としては半定量法で充分で
あり、血清中のSTN濃度が50U/ml未満を−、5
0〜100U/mlを+、100〜150U/mlを+
+、150U/mlを+++として、反応するような免
疫学的判定を行なえばよい。即ち、本発明によれば、血
清中STN濃度が50U/ml未満を「羊水塞栓症の疑
いなし」、50〜100U/mlを「羊水塞栓症の疑い
あり」、100〜150U/mlを「羊水塞栓症と診断
し得る」、150U/mlを「羊水塞栓症を強く診断す
る」に分けて判定するような簡易測定試薬を提供でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に従う羊水中STN抗原濃度の測定結果
を示すグラフである。
【図2】実施例に従う羊水中STN抗原濃度の測定結果
を示すグラフである。
【図3】実施例に従う血清中STN抗原濃度の測定結果
を示すグラフである。
【図4】実施例に従う血清中STN抗原濃度の測定結果
を示すグラフである。
【図5】実施例に従う胎便抽出液に対する各種抗体(T
KH−2、MA54、MA61、B72.3、CC4
9)の反応性を調べたグラフである。
【図6】実施例に従うノイラミニダーゼ処理後の胎便抽
出液に対する各種抗体の反応性を調べたグラフである。
【図7】実施例に従う胎便抽出液に対するTKH−2抗
体の反応性阻害を調べたグラフである。
【図8】実施例に従う胎便抽出液に対するMA54抗体
の反応性阻害を調べたグラフである。
【図9】実施例に従う胎便抽出液に対するMA61抗体
の反応性阻害を調べたグラフである。
【図10】実施例に従う胎便抽出液に対するB72.3
抗体の反応性阻害を調べたグラフである。
【図11】実施例に従う胎便抽出液に対するCC49抗
体の反応性阻害を調べたグラフである。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】検体中のシアリルTN抗原を該抗原に対す
    る抗体を用いて免疫検定して該検体中に存在する胎便成
    分を測定する方法。
  2. 【請求項2】検体が羊水である請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】検体が血液である請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】検体が肺組織である請求項1に記載の方
    法。
  5. 【請求項5】検体がラジオイムノアッセイにより行なわ
    れる請求項1に記載の方法。
  6. 【請求項6】検体がラテックス凝集反応により行なわれ
    る請求項1に記載の方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008510508A (ja) * 2004-08-21 2008-04-10 マギル・ユニヴァーシティ 羊水を分析するための方法および装置
WO2010150804A1 (ja) * 2009-06-26 2010-12-29 公立大学法人奈良県立医科大学 破水および羊水塞栓症の検査方法
JP2011500196A (ja) * 2007-10-16 2011-01-06 テル ハショマー メディカル リサーチ インフラストラクチャー アンド サーヴィシーズ リミテッド 羊水中の胎便を確認するための装置及び方法
US8165661B2 (en) 2003-08-21 2012-04-24 Mcgill University Method and apparatus for analyzing amniotic fluid
WO2013008239A1 (en) * 2011-07-14 2013-01-17 Mor Gideon Noninvasive detection of meconium in amniotic fluid

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