JPH0518500Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は回転軸の中空部への給油技術に係り、
ことに回転軸の外周面からの給油と同時に該回転
軸の支承をなす周面式給油装置に関するものであ
る。

〔従来の技術〕

回転軸の中空部へ給油する構造としては、従来
よりメカニカルシール機構を有する軸端面式給油
装置およびメカニカルシール方式の周面給油装置
等があるが、いずれもメカニカルシール機構によ
つて軸封した状態での供給構造を構成しており、
構造が複雑なばかりでなく、回転軸の自重を支承
することはできないものであつた。

〔考案が解決しようとする問題点〕

本考案は上記問題に鑑みてなされたもので、中
空部を形成した回転軸の外周面より簡単かつ確実
に、該中空部に給油を行なわしめるとともに、該
回転軸の自重を支承する軸受機能を有する周面式
給油装置を提供することを目的とするものであ
る。

〔問題点を解決するための手段〕

上記問題を解決するために、本考案は、中空部
の回転軸の外周に、内周面に環状空間が設けられ
るとともにこの環状空間に向けて開設された給排
油孔を有する環状のケース部材を配置し、前記環
状空間内に、回転軸の外周面と摺接する内周面に
環状凹部が設けられるとともにこの環状凹部と前
記環状空間を連通する油穴が開設された軸受リン
グを配置し、前記回転軸に、その中空部と前記環
状凹部を連通する油穴を開設し、前記ケース部材
と軸受リングの対向周面間のうちの下部に保持部
材を介装するとともに、前記ケース部材と軸受リ
ングの対向端面間をＯリングで密封し、前記ケー
ス部材に、前記環状空間の外側に位置してドレン
穴を開設したものである。

〔作用〕 ケース部材の給排油孔と回転軸の中空部の間
は、ケース部材内周の環状空間におけるケース部
材と軸受リングの対向周面間と、軸受リングの油
穴及び環状凹部と、回転軸の油穴を介して連通し
ており、これによつて回転軸の中空部への油の給
排が可能となり、その流通過程で、高圧となる軸
受リング内周の環状凹部における油の一部は、軸
受リングと回転軸の摺動面間を潤滑して漏出し、
ドレン穴から回収される。ケース部材と軸受リン
グの対向端面間に介装されたＯリングは環状空間
からの油の大量漏れを防止して、前記摺動面間へ
の油の漏出を促す。

〔実施例〕

以下、本考案に係る周面式給油装置の一実施例
を図面にしたがつて説明する。

符号１は、軸芯に中空部２を有する回転軸であ
り、該中空部２から外周面に連通する油穴３，３
を穿設してなる。該回転軸１の油穴３開口部は、
ホワイトメタル、合成樹脂またはカーボン等の潤
滑性に優れた材料よりなる摺動材４を内面に被着
した軸受リング５を、回転軸１の外周面との間に
微小の間隙（軸受嵌合による間隙）をもつて外挿
してなる。該軸受リング５は、上部ケーシング６
と下部ケーシング７および該両ケーシング６，７
の端部に固設した２個のリテーナ８，８からなる
ケース部材の内周の環状凹部に内装し、両リテー
ナ８，８との間にノツクピン９，９を介して担持
するとともに、Ｏリング１０，１０を介挿して気
密保持し、環状空間１２を形成してなる。該環状
空間１２の下半部には保持部材１１を介挿して上
記軸受リング５を支持するとともに、該軸受リン
グ５の中央部内周に形成した環状凹部１３におい
て周方向に等配穿設した多数の油穴１４，１４…
を介して上記環状空間１２と回転軸１の中空部２
を連通してなる。上記両リテーナ８，８の各端部
にはバツフルプレート１５を介してそれぞれ端部
カバー１６が固設され、環状の油溜室１７を形成
するとともに、リテーナ８に漏液回収ドレン穴１
８を穿設してなり、さらに上記端部カバー１６内
には回転軸１の外周に固設した環状の油切り１９
を端壁に向かつて位置せしめ、環状の油溜室２０
を形成するとともに、該端部カバー１６に漏液回
収ドレン穴２１を穿設した構造になる。また、符
号２２は前記下部ケーシング７に穿設し、内径に
連通した給油穴２３と連結してなる給油配管であ
る。

なお、図中２４は各部材間を締結する締結用ボ
ルトである。また前記保持部材１１は、下部ケー
シング７あるいは軸受リング５と一体構造にする
かまたは、単体で環状空間１２に介装する構造に
よつて構成することができるものであるが、該環
状空間１２の下半部に材料を注入し、固化するこ
とによつても実施することができる等、種々の組
み付け実施方法を有するものである。

上記構成の周面式給油装置は、図示されていな
い油ポンプ（または油タンク等）より送られてき
た油が、前記配管２２が給油穴２３を経て上下部
ケーシング６，７の内面と軸受リング５の外周面
とによつて形成される環状空間１２に導入され、
さらに軸受リング５に穿設された複数の油穴１４
を経て軸受リング５内面の環状凹部１３に導入さ
れ、回転軸１の油穴３を経て同回転軸１の中空部
２に供給される。このとき上記軸受リング５は、
その下方に配置した保持部材１１によつて軸支さ
れているため回転する回転軸１の荷重を支承しな
がら給油を行なうようになる。したがつて、該保
持部材１１に金属類等の剛性の高い材料を用いる
と、軸受リング５は回転軸１の半径方向の振動ま
たは微小移動に追随しなくなり、剛性支持軸受と
して実施することができるとともに、該保持部材
１１にゴム類または合成樹脂等の高弾性を有する
材料を用いると、弾性支持軸受または防振軸受と
して活用することができる。

前記環状空間１２の油は軸受リング５の両端面
とリテーナ８間に介挿したＯリング１０によつて
シールされるとともに、回転軸１に半径方向の振
動または微小移動が生じた場合には、保持部材１
１が高弾性体のとき該Ｏリング１０によつて該軸
受リング５が回転軸１とともに半径方向に自由に
追随する作用をなす。また、回転に伴い、回転軸
１の油穴３内の油に作用する遠心力によつて環状
凹部１３内および環状空間１２内は高圧になり、
しかも軸受リング５とケース部材であるリテーナ
８の対向端面間はＯリング１０によつてシールさ
れているため、高圧になつた油の一部は、環状凹
部１３から軸受リング５内面の摺動材４と回転軸
１との摺動面間の微小間隙に漏出し、摺動面を潤
滑するとともに、該微小間隙を通過した油（漏
油）は油溜室１７に流入して漏液回収ドレン穴１
８から図示されていない配管により回収され、再
び使用に供される。また、万一上記漏油が油溜室
１７からバツフルプレート８を乗り越えて端部カ
バー１６の油溜室２０に流入した場合には、該端
部カバー１６の漏液回収ドレン穴２１から回収さ
れるので装置外へ油が漏洩することはない。

〔考案の効果〕

以上述べたように本考案の周面式給油装置は、
オイルシールまたはメカニカルシールのような軸
封構造を持たないため構造が簡単になるばかりで
なく、損耗部品がないため半永久的な使用が可能
となる。また、本考案の構造によれば油の流通経
路を兼ねる軸受リングと回転軸の摺動面が、前記
油の一部で効率良く潤滑されるので、配置設計上
制約の多い船舶用二重反転プロペラ装置の内軸お
よび外軸に構成する軸受兼用の給排油装置として
適用することによりコストおよび配置設計上非常
に有利になる特徴を有するものであり、本考案の
実用的効果はきわめて大きい。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る周面式給油装置の一実施
例を示す正断面図、第２図および第３図は第１図
におけるＡ−Ａ線、Ｂ−Ｂ線断面図である。 １……回転軸、２……中空部、３，１４……油
穴、４……摺動材、５……軸受リング、６，７…
…ケーシング、８……リテーナ、１２……環状空
間、１５……バツフルプレート、１６……端部カ
バー、１７，２０……油溜室、１８，２１……漏
液回収ドレン穴、２３……給油穴。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 中空の回転軸の外周に、内周面に環状空間が設
   けられるとともにこの環状空間に向けて開設され
   た給排油孔を有する環状のケース部材を配置し、
   前記環状空間内に、回転軸の外周面と摺接する内
   周面に環状凹部が設けられるとともにこの環状凹
   部と前記環状空間を連通する油穴が開設された軸
   受リングを配置し、前記回転軸に、その中空部と
   前記環状凹部を連通する油穴を開設し、前記ケー
   ス部材と軸受リングの対向周面間のうちの下部に
   保持部材を介装するとともに、前記ケース部材と
   軸受リングの対向端面間をＯリングで密封し、前
   記ケース部材に、前記環状空間の外側に位置して
   ドレン穴を開設したことを特徴とする周面式給油
   装置。