JPH05180116A - 燃料噴射ポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】高圧噴射タイプのポンプにおいて高い接触圧が
作用する摺接面を良好に潤滑し、焼き付きや摩耗を防止
してポンプの長寿命化を可能にした。 【構成】カム４により押されるタペット２０の本体２１
に、このタペット本体の外面からタペットピン２３とカ
ムローラ２４との摺接部に通じる潤滑油導入孔２５を形
成したことを特徴とする。 【作用】潤滑油導入孔がタペットピンとタペット本体と
の摺接面やタペットピンとカムローラとの摺接部に潤滑
油を導くので、高い接触面圧が加わるこれらの摺接面を
良好に潤滑することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、エンジンにより回転さ
れるカムシャフトに形成したカムの回転によりプランジ
ャを往復運動させ、このプランジャにより燃料を供給す
る燃料噴射ポンプに係り、特にカムの回転をプランジャ
の往復運動に変換するタペットの構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば、エンジンに燃料を供給する列型
燃料噴射ポンプは、エンジンにより回転駆動されるカム
シャフトに、軸方向に沿って複数のカムを形成し、これ
らカムの回転をそれぞれタペットにより往復運動に変換
してプランジャに伝え、これらプランジャの往復運動に
よりポンプ室内の燃料を加圧して各気筒に設けた噴射弁
へ供給するようにしている。

【０００３】上記カムの回転をプランジャの往復運動に
変換するために用いられている上記タペットは、実公昭
６３−１６８６０号公報にも示されている通り、ポンプ
ハウジングに形成した摺動孔の内壁に沿ってプランジャ
の往復運動と同方向に摺動可能なタペット本体と、この
タペット本体に上記カムシャフトと略平行に形成した挿
通孔に挿通されたタペットピンと、このタペットピンに
取着され上記カムに当接されるカムローラとを備えてお
り、このカムローラが上記カムの外面に転接することに
より上記摺動孔内を摺動しつつ往復運動するようになっ
ている。

【０００４】このような往復運動をするタペットは焼き
付きを防止する必要があり、このため従来から、潤滑油
で強制潤滑するようになっている。

【０００５】従来の強制潤滑方式の１種として、図４に
示す構造が採用されている。同図において４０はハウジ
ング、４１はカムシャフト、４２はカム、４３は上記ハ
ウジング４０に形成した摺動孔である。この摺動孔４３
にはタペット４４が摺動自在に取着されており、このタ
ペット４４は、タペット本体４５、タペットピン４６お
よびカムローラ４７とで構成されている。ハウジング４
０にはエンジンにより駆動される潤滑ポンプにより供給
される潤滑油の供給孔４８が形成されており、この供給
孔４８は上記摺動孔４３の内面に開口している。

【０００６】したがって、タペット４４は、上記潤滑油
供給孔４８から供給される潤滑油により、タペット本体
４５の側面と、摺動孔４３の内面との摺動面が潤滑され
るようになっている。なお、潤滑油の油量は、タペット
本体４５の側面と摺動孔４３の内面との間の隙間ｓによ
り調量されるようになっている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】ところで、最近では、
ディーゼル機関の排ガス対策として燃料の高圧噴射が有
効であることから燃料噴射ポンプの吐出圧を高圧化する
ことが進められている。吐出圧を高くするにはカムリフ
トを高くする必要がある。しかし、このようにするとタ
ペットにかかる負荷が増大し、接触面の面圧が高くな
る。特に、高い荷重が作用するタペットピンとタペット
本体との摺接面、およびタペットピンとカムローラとの
摺接面で焼き付きが心配される。

【０００８】しかしながら、上記図４に示した従来の潤
滑構造の場合、タペット本体４５の外側面と摺動孔４３
との間の摺動面は潤滑されるが、タペット本体４５の内
部まで潤滑油が充分に行き渡らず、タペットピンとタペ
ット本体との摺接面、およびタペットピンとカムローラ
との摺接面の潤滑が不充分である。

【０００９】このため、高圧噴射タイプの場合、高い接
触面圧が加わるタペットピンとタペット本体との摺接
面、およびタペットピンとカムローラとの間の摺接面が
早期に摩耗したり、焼き付きを発生する恐れがあり、ポ
ンプ寿命を縮める原因となる。

【００１０】本発明はこのような事情にもとづきなされ
たもので、その目的とするのは、高圧噴射タイプのポン
プにおいて高い接触圧が作用する摺接面を良好に潤滑
し、焼き付きや摩耗を防止してポンプの長寿命化を可能
にした燃料噴射ポンプを提供しようとするものである。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明は、タペット本体に、タペット本体の外面からタ
ペットピンとカムローラとの摺接部に通じる潤滑油導入
孔を形成したことを特徴とする。

【００１２】

【作用】本発明によれば、タペット本体に形成した潤滑
油導入孔がタペットピンとタペット本体との摺接面、お
よびタペットピンとカムローラとの摺接部に潤滑油を導
くので、高い接触面圧が加わるこれらの摺接面が良好に
潤滑されるようになる。

【００１３】このため、高圧噴射タイプのポンプであっ
ても、上記摺接面が早期に摩耗したり、焼き付きを生じ
るのが防止される。

【００１４】

【実施例】以下本発明について、図１ないし図３に示す
一実施例にもとづき説明する。

【００１５】本実施例は、列型燃料噴射ポンプを縦断面
して示すが、本発明は列型燃料噴射ポンプに限らず、筒
型燃料噴射ポンプであってもよい。

【００１６】図において１はポンプハウジングを示し、
このポンプハウジング１内には、下部にカム室２が形成
されている。カム室２にはカムシャフト３が挿通されて
おり、このカムシャフト３は図示しない軸受により回転
自在に支持されている。

【００１７】カムシャフト３は図示しないエンジンによ
り回転駆動されるようになっており、このカムシャフト
３の外面にはカム４が形成されている。なお、カム４
は、カムシャフト３に一体成形してもよく、または別に
形成しておいて一体に取付けてもよい。

【００１８】上記カム室２には潤滑油が収容されてお
り、上記カム４はこの潤滑油に浸漬されるようになって
いる。よってカム４の外周面は潤滑油により潤滑され
る。

【００１９】ポンプハウジング１の上部には、プランジ
ャバレル５が嵌挿されている。プランジャバレル５には
ポンプ室６が形成されており、このポンプ室６にはプラ
ンジャ７の上端部が摺動自在に嵌挿されている。

【００２０】プランジャ７の下端は下部ばね座９を介し
て後述するタペット２０に連結されており、このタペッ
ト２０はカム４により上下に往復運動されるようになっ
ている。

【００２１】したがって、プランジャ７はタペット２０
により上下に往復運動される。プランジャ７が押し上げ
られると、このプランジャ７はプランジャバレル５のポ
ンプ室６に吸引した燃料を押圧する。この燃料の圧力が
吐出弁１２の開弁圧以上になると、ポンプ室６の高圧燃
料が吐出口体１４を通じてエンジンの噴射弁（図示しな
い）へ供給されるようになっている。

【００２２】なお、プランジャ７は上下のばね座８、９
の間に掛け渡したスプリング１０により常時下向きに押
されて復帰されるようになっている。なお、１６は燃料
噴射タイミングを制御するためにピニオンギアである。

【００２３】ポンプハウジング１には、カム室２に連な
る摺動孔１８が形成されており、この摺動孔１８には上
記タペット２０が摺動自在に嵌挿されている。

【００２４】タペット２０について、図２および図３を
加えて説明する。タペット２０は、上記摺動孔１８内で
プランジャ７の往復運動と同方向に往復運動されるタペ
ット本体２１を有し、このタペット本体２１には上記カ
ムシャフト３と平行するような挿通孔２２を形成してあ
る。この挿通孔２２にはタペットピン２３が挿通されて
いる。このタペットピン２３は図示しない止め輪により
上記タペット本体２１に係止されて抜け止めされてい
る。このタペットピン２３にはカムローラ２４が回転自
在に取着されている。カムローラ２４はカム４の上面に
押付けられており、カム４の回転に伴って転接する。

【００２５】上記ポンプハウジング１にはエンジンによ
り駆動される潤滑ポンプにより供給される潤滑油の供給
孔３０が形成されており、この供給孔３０は上記摺動孔
１８の内面に開口している。なお、ポンプハウジング１
には、他の気筒用摺動孔にも潤滑油を分配する分配通路
３１が形成されており、上記潤滑ポンプにより供給され
る潤滑油はこの分配通路３１を通じてそれぞれ供給孔３
０に分配され、これら供給孔３０から各摺動孔１８の内
面に所定の圧力で射出されるようになっている。 そし
て、上記タペット本体２１には、その側壁に位置して、
タペット本体２１の外側面とタペットピン２３の外周面
との間に連通する２個の潤滑油導入孔２５、２５が形成
されているとともに、上壁に位置して、タペット本体２
１の上面とカムローラ２４の外面との間に連通する潤滑
油滴下孔２６が形成されている。

【００２６】上記潤滑油導入孔２５、２５は、タペット
２０が上下に摺動運動する場合に、上記摺動孔１８の内
面に開口した潤滑油供給孔３０に対向し、この潤滑油供
給孔３０から所定の射出圧力で供給される潤滑油がこれ
ら潤滑油導入孔２５、２５に強制的に導入され、この潤
滑油はタペットピン２３の外周面に吐出される。タペッ
トピン２３の外周面に射出された潤滑油は、タペットピ
ン２３の外周面を伝わって、タペットピン２３とタペッ
ト本体２１との摺接面、およびタペットピン２３とカム
ローラ２４との摺接面に流れ込み、これらの面を潤滑す
るようになっている。

【００２７】また、タペット本体２１が上昇する場合に
摺動孔１８の内面に付着している潤滑油を掻き取るの
で、この掻き取った潤滑油をタペット本体２１の上壁に
開口した潤滑油滴下孔２６がカムローラ２４の外面に滴
下させ、カムローラ２４の外面を潤滑する。

【００２８】このような構成の実施例について、作用を
説明する。

【００２９】カムシャフト３の回転によりカム４が一体
に回転すると、カム４の上面に押付けられているカムロ
ーラ２４がカム４に転接し、カムプロフィルに伴って往
復運動する。この運動はタペットピン２３からタペット
本体２１に伝えられ、よってタペット２０はポンプハウ
ジング１に形成した摺動孔１８に摺接しつつ上下に往復
運動する。

【００３０】上記タペット２０の往復運動はプランジャ
７に伝えられ、プランジャ７が同動して往復運動され
る。プランジャ７が押し上げられた時にポンプ室６に吸
引した燃料を押圧し、この燃料圧力が吐出弁１２の開弁
圧以上になると、ポンプ室６の高圧燃料を吐出口体１４
を通じてエンジンの噴射弁（図示しない）へ供給する。

【００３１】そして、上記タペット２０が摺動孔１８を
摺接して往復運動するとき、タペット本体２１の側壁に
形成した２個の潤滑油導入孔２５、２５が、ポンプハウ
ジング１に形成した潤滑油供給孔３０と連通されると潤
滑油供給孔３０側から潤滑油が所定の射出圧力で供給さ
れ、この潤滑油は潤滑油導入孔２５、２５を通じてタペ
ットピン２３の外周面に吹き付けられる。このタペット
ピン２３の外周面に射出された潤滑油は、タペットピン
２３の外周面を伝わって、タペットピン２３とタペット
本体２１との摺接面、およびタペットピン２３とカムロ
ーラ２４との摺接面に浸入し、これらの面に油膜を形成
して潤滑する。そして、余剰の潤滑油はタペットピン２
３の外面から落下し、カム室２に溜まる。

【００３２】また、潤滑油導入孔２５、２５が、ポンプ
ハウジング１に形成した潤滑油供給孔３０と連通されな
い場合は、従来と同様に、潤滑油供給孔３０から供給さ
れる潤滑油がタペット本体２１の外面と摺動孔１８の内
面との隙間に浸入し、これらの摺動面を潤滑してカム室
２に滴下する。

【００３３】この場合、タペット本体２１が上動する際
に摺動孔１８の内面に付着している潤滑油を掻き取り、
この掻き取った潤滑油をタペット本体２１の上壁に開口
した潤滑油滴下孔２６よりカムローラ２４の外面に導
く。このためカムローラ２４の外面が潤滑される。この
潤滑油もカム室２に滴下する。

【００３４】カム室２に溜った潤滑油は機関に回収さ
れ、潤滑ポンプにより再び供給される。

【００３５】このような潤滑構造によれば、タペット本
体２１に形成した潤滑油導入孔２５、２５を通じて潤滑
油を強制的にタペットピン２３とタペット本体２１との
摺接面、およびタペットピン２３とカムローラ２４との
摺接面に圧送するから、これらの摺接面に確実に油膜が
形成され、これらの面を良好に潤滑する。よってこれら
の面に高い面圧が加わっても早期に摩耗したり、焼き付
きを発生するのが防止される。

【００３６】この結果、ディーゼル機関の排ガス対策と
して高圧噴射を進めた場合に、吐出圧を高くすべくカム
リフトを高くしてタペットの各接触面の面圧が高くなっ
ても、上記良好な潤滑作用により、摩耗および焼き付き
を防止し、ポンプ寿命が長くなる。

【００３７】なお、上記実施例では、タペット本体２１
の上壁に潤滑油滴下孔２６を形成したが、これを省略し
てもよく、また、この潤滑油滴下孔２６はタペットピン
２３の外面に潤滑油を供給するようにしてもよい。

【００３８】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、タ
ペット本体に形成した潤滑油導入孔がタペットピンとタ
ペット本体との摺接面、およびタペットピンとカムロー
ラとの摺接部に潤滑油を導くので、高い接触面圧が加わ
るこれらの摺接面が良好に潤滑されるようになる。この
ため、高圧噴射タイプのポンプであっても、上記摺接面
が早期に摩耗したり、焼き付きを生じるのが防止され、
ポンプ寿命が延びるなどの利点がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示し、燃料噴射ポンプの断
面図。

【図２】同実施例のタペットの平面図。

【図３】図２のIII −III 線の断面図。

【図４】従来の潤滑構造を示す断面図。

【符号の説明】

１…ポンプハウジング、３…カムシャフト、４…カム、
６…ポンプ室、７…プランジャ、１８…摺動孔、２０…
タペット、２１…タペット本体、２３…タペットピン、
２４…カムローラ、２５…潤滑油導入孔、２６…潤滑油
滴下孔、３０…潤滑油供給孔。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ハウジング内にエンジンにより回転され
   るカムシャフトを収容し、このカムシャフトに形成した
   カムの回転によりタペットを往復運動させ、このタペッ
   トの運動を上記ハウジング内に設置したプランジャに伝
   えてこのプランジャを往復運動させ、このプランジャに
   より燃料を圧送するようにし、 上記タペットは、ハウジングに形成した摺動孔内でプラ
   ンジャの往復運動と同方向に摺動可能なタペット本体
   と、このタペット本体に取着したタペットピンと、この
   タペットピンに支持され上記カムに当接されるカムロー
   ラとからなり、 上記ハウジングに形成した潤滑油供給孔から上記タペッ
   ト本体の摺動面に潤滑油を供給するようにした燃料噴射
   ポンプにおいて、 上記タペット本体に、上記タペットピンとカムローラと
   の摺接部に通じる潤滑油導入孔を形成したことを特徴と
   する燃料噴射ポンプ。