JPH05179470A - 被膜密着性に優れた電食防止用絶縁管材 - Google Patents

被膜密着性に優れた電食防止用絶縁管材

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JPH05179470A
JPH05179470A JP23992A JP23992A JPH05179470A JP H05179470 A JPH05179470 A JP H05179470A JP 23992 A JP23992 A JP 23992A JP 23992 A JP23992 A JP 23992A JP H05179470 A JPH05179470 A JP H05179470A
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JP
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corrosion
layer
film
metal
pipe material
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JP23992A
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English (en)
Inventor
Nobuhiko Hiraide
信彦 平出
Masakatsu Ueda
昌克 植田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】油井などにおいて異種金属管材を継ぐ場合に生
じる電食および隙間腐食を防止するとともに、絶縁防止
被膜の剥離を防止する。 【構成】低耐食性管材1と高耐食性管材2は、直接また
はカップリング3をもって螺合連結されている。低耐食
性管材1の管材の内外面の管端から60mm以上の範囲
L、高耐食性管材2の管材の内外面の管端から60mm以
上の範囲L、およびカップリング3の内外面の両管端か
ら60mm以上の範囲L、さらに連結した時の隙間部分
A.Bに、金属またはその酸化物、窒化物あるいは炭化
物の単層または複合層を形成した後、この上層に厚さ
0.4μm以上で、かつ比抵抗が108 Ωcm以上の絶縁性
無機化合物皮膜を被覆率90%以上100%未満で形成
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一般の管または特に油
井管の配管にあたり、異種金属の管材を継ぐ場合に生じ
る電食および隙間腐食を防止するとともに、被覆される
膜材の密着性を高めた電食防止用絶縁管材に関する。
【0002】
【従来の技術】油井においては、油井用金属管材が原油
や天然ガスの採取・生産のため、地盤の表面に垂直、あ
るいは垂直に近い角度にて地下数千mに及んで配管され
る。前記油井管としては、原油および天然ガスを地下の
産出層から地上に運搬するためのチュービング、掘られ
た井戸の保護のために前記チュービングの周囲に設けら
れるケーシング、油層の圧力上昇を図るために配管され
るスチームインジェクションパイプおよび石油二次回収
用のCO2 配管等の管材が配管される。したがって、本明
細書における「油井管」は、これらの全ての管を含んで
言う。
【0003】一般に、油井においては深い所では温度が
高く、腐食性が大きい。一方、浅い所では温度が低く腐
食性が小さいため、経済性を考慮して井戸の深い所で
は、例えば各種ステンレス鋼、Ni基合金、Ti、Ti
合金等の高耐食性金属管材を使用し、井戸の浅い所で
は、例えば、炭素鋼、低合金鋼等の低耐食性金属管材を
使用することが多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって、当然に、
低耐食性金属管材と高耐食性金属管材との連結部が生じ
る。その際、前記高耐食性金属管材と前記低耐食性金属
管材を単純連結した場合には、異種金属材料の接触によ
り電位差が生じ、いわゆるガルバニック腐食(電食)が
発生する。このガルバニック腐食によって、低耐食性金
属管材側では例えば通常の炭素鋼管材単独の腐食に比し
て、2〜10倍の速度で腐食が進行する。
【0005】一方、高耐食性金属管材側では水素が発生
し、この水素が金属管材内に侵入して水素脆性が生じる
問題点があった。さらに、ネジ継手部の隙間では隙間腐
食が生じ、電食によって腐食が促進される。
【0006】前記問題点を解決するために、現状におい
ては高耐食性金属管材と低耐食性金属管材とを直接継が
ずに、耐食性が前記高耐食性金属管材と低耐食性金属管
材の中間にある例えば2相ステンレス鋼等の金属管材を
介在させて腐食防止を図っている。しかしながら、たと
え中間耐食性金属管材を介在させた場合でも金属管材相
互間の電食を完全に防止することは不可能であり、腐食
速度を若干緩和させるに過ぎない。
【0007】他方、管材同士をネジ継手構造により連結
する際に、完全に密封してシールすることは実際上不可
能であり、不可避的に一方が腐食環境に開いた隙間が存
在することになる。ネジ継手構造部分に上記隙間が存在
すると、この隙間部では液体の流動がほとんどないた
め、鉄等の金属が腐食されて生じた水素イオン等が高濃
度で溜まり易く、pHが非常に低下し、母材より激しい
腐食が生じる。すなわち、隙間腐食は母材部の腐食環境
より弱い環境下でも発生する。この隙間腐食が生じる
と、応力腐食割れに発展する危険があるとともに、シー
ル面を浸食することにより継手として重要機能であるシ
ール性を損なう結果となる。
【0008】上記問題を解決するために、例えば特開平
1−199088号公報では、重量%でCrを7.5%
以上含有する同一材質同士の油井管のネジ継手部分に1
〜100 μmの非金属層を被覆することにより、腐食環境
から遮断し、隙間腐食を防止することを開示している。
しかしながら、上記公報技術に従って被覆する非金属層
を、導体と絶縁物とに分けて考えると、導体により被覆
したとしても、全く貫通孔の存在しない無欠陥の皮膜形
成は事実上不可能で、通常かなり多量の貫通孔が生成さ
れるので、その皮膜欠陥部の腐食が促進されることを防
止できない。一方、絶縁物で被覆した場合でも、その被
覆の被覆率次第ではやはり隙間腐食を生じ、いずれにし
ても上記公報技術では隙間腐食を充分に防止できない。
【0009】かかる皮膜欠陥部を減少させるには皮膜の
厚みを大きくして貫通孔数を減少させればよいとも考え
られるが、皮膜厚みの増大は母材への密着性の低下を招
き、継手締結時等に、母材と皮膜とのヤング率の相違に
起因する剪断応力等により皮膜が剥離するおそれがあ
る。
【0010】そこで本発明の目的は、油井などにおいて
異種金属管材を継ぐ場合に生じる電食および隙間腐食を
防止するとともに、前記金属管材に対する密着性に優れ
た電食防止用絶縁管材を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題は、管端部に連
結用の螺合ネジ部が形成された金属管材において、該金
属管材が連結されたときに露出する内面および外面の少
なくとも一方面における、前記螺合ネジ部を除く内面端
または外面端から60mm以上の範囲に渡って、ならび
に連結したとき隙間が生じる前記螺合ネジ部分に、金属
またはその酸化物、窒化物あるいは炭化物の単層または
複合層を形成した後、この上層に厚さ0.4μm以上で、
かつ比抵抗が108 Ωcm以上の絶縁性無機化合物皮膜を
被覆率90%以上100%未満で形成したことで解決で
きる。前記金属またはその酸化物、窒化物あるいは炭化
物の単層または複合層は、前記金属管材と絶縁性無機化
合物との中間の熱膨張係数を有することが望ましい。さ
らに、この場合において、好ましくは前記絶縁性皮膜の
表面に、その絶縁性無機化合物皮膜保護用の合成樹脂皮
膜を積層される。
【0012】ここで、前記絶縁性被膜の下層として用い
られる、金属またはその酸化物、窒化物あるいは炭化物
の膜(以下、この層を応力緩和層膜という。)は、金属
管材と絶縁性被膜との熱膨張係数の差を緩和し、これら
電食防止被膜と金属管材に生じる残留応力を軽減し、密
着性を向上させることを目的とする。前記応力緩和層膜
として使用される材料としては、Cr,Ti,Ta,Zr,Si,Nb,W
の金属材料およびこれらの酸化物、窒化物および炭化物
が挙げられる。本発明者等は、これらを金属管材と絶縁
性被膜との中間層として形成することにより、特に油井
環境における応力下での耐剥離性に優れることを見出し
た。
【0013】また、前記応力緩和層としては、好ましく
は金属管材と絶縁性被膜との中間の熱膨張係数を有する
材料が望まれる。前記絶縁性被膜としては、Al2O3,Si3N
4,Ta2O5,SiO2,AlN,BN を想定しており、その下層に用い
る上記応力緩和層膜種との組合せは、金属管材を含めた
相互の熱膨張係数差を考慮して選択すればよい。さら
に、前記応力緩和層膜については、異種の金属およびそ
の酸化物、窒化物および炭化物同士をそれぞれ複合化、
あるいは多層化(本発明においては、これら複合化と多
層化を総称して複合層というものとする。)しても同
等、あるいはそれ以上の油井環境における応力下での耐
剥離性向上に寄与することができる。
【0014】前記応力緩和層膜と絶縁性無機化合物被膜
との合計膜厚は100μm以内とされる。合計膜厚が1
00μmを超えると、ネジ部形成部およびシール部の寸
法精度に悪影響を及ぼすおそれがあるとともに、膜の内
部応力等による剥離が懸念される。前記応力緩和層膜
は、金属管材と絶縁性無機化合物被膜との間の応力緩和
による密着性向上を目的とするもので、前記絶縁性無機
化合物被膜よりも薄いことが望まれる。好適に選定され
る前記応力緩和層膜厚としては、0.1μm〜5μmの
範囲とされる。膜厚が0.1μm未満ではその効果が得
られず、5μmを超えるとその効果は消失する。一方、
前記被覆率は、電気化学的方法により決定される。すな
わち、母材のみが溶解しうるような液中において、定電
位分極によりその電流をモニターし、被覆率(%)=
(被覆のない母材の電流密度)−(被覆のある母材の電
流密度)/(被覆のない母材の電流密度) ×100によ
り定義される値とされる。本発明において、管としては
油井管のみに限定されることはなく、例えば海水および
土壌運搬用パイプライン、プラント用パイプライン等に
おいて、異種金属を継ぐ場合にも適用し得る。
【0015】
【作用】異種金属が接触した場合に生じるガルバニック
腐食は、腐食しにくい金属がカソード(陰極)となり、
腐食し易い金属をアノード(陽極)として、アノード側
の反応が促進されることに起因する。すなわち、異種金
属間の電位差によりボルタ電池が組み立てられるためで
ある。したがって、電食を防止するためには、異種金属
間に絶縁性皮膜、好ましくは絶縁性無機化合物皮膜を被
覆して、その相互の距離を離して液間抵抗を大きくする
ことにより、腐食電流が流れないようにしてやればよい
ことを本発明者らは知見し、かつこの態様が実際に有効
であることを確認した。ここで、絶縁性無機化合物皮膜
の被覆率と被覆領域の大きさにより、電食防止効果の発
現の有無が決定されるが、この点は以下の実施例により
明らかにする。
【0016】また、被覆率を100%未満としたのは、
現状ではピンホール欠陥(母材まで貫通している膜の欠
陥)のない膜をコーティングすることが困難であること
が知られているためである。
【0017】一方、隙間腐食は、腐食により生じた金属
イオンおよび水素イオン、塩素イオン等が隙間部に溜ま
り、pHが非常に低下し著しい腐食が起きる現象であ
る。通常、油井管においてはネジ継手を用いて連結され
る。ところが、図1、図2中のネジ部20の内面側と外
面側の連結境界A、B部分に隙間が存在し、ここに隙間
腐食が生じる。さらに、この隙間腐食は電食により促進
される。そこで本発明者らは、この隙間部にも絶縁性皮
膜を被覆することにより、隙間腐食を防止できることを
知見し、かつこの態様が実際に有効であることを確認し
た。また、上記手段により電食および隙間腐食を防止す
ると、高耐食性管材側の水素の進入を抑止し、水素脆性
の防止にも有効である。
【0018】さらに、以上の電食および隙間腐食防止法
において用いられる絶縁性無機化合物被膜の下層に、両
者の中間の熱膨張係数を有する金属あるいはその酸化
物、窒化物よりなる応力緩和層を形成することにより、
特に応力下にある油井環境において絶縁性無機化合物被
膜の耐剥離性向上に有効である。前記応力緩和層として
形成されるCr,Ti,Ta,Zr,Si,Nb,W およびこれらの酸化
物、窒化物および炭化物層、その上層に形成されるAl2O
3,Si3N4,Ta2O5,SiO2,AlN,BN 絶縁体層を形成する手法に
は、イオンプレーティング、スパッタリング、プラズマ
CVD、MO(Metal-Organic)−CVD、溶射、拡散浸
透処理といった方法を採用することができ、適宜その物
質にあった手法を選択すればよい。
【0019】
【実施例】以下、本発明を主に油井管に適用した場合の
具体例について詳説する。図1および図2は本発明に係
る絶縁性皮膜、より具体的には絶縁性無機化合物皮膜を
施した油井管の連結部を示す図である。図1はカップリ
ング使用連結型の場合について示し、図2は直接連結型
の場合について示す。図1において、低耐食性管材1と
高耐食性管材2は、カップリング3をもって螺合連結さ
れている。これらは本明細書において連結要素を構成す
る。なお、前記カップリング3は、通常高耐食性管材2
と同材質か、実質同材質のもので作製される。
【0020】本具体例においては、前記低耐食性管材1
の管材の内外面においてネジ部20を除く管端から60
mm以上の範囲(符号Lで示す範囲、以下同じ)に渡っ
て、ならびにネジ部20の連結境界A、B部(図7にA
部分、図8にB部分をそれぞれ模式拡大して示す。)に
対して、本発明に係る、下層に金属あるいはその酸化
物、窒化物および炭化物からなる被膜層(応力緩和被膜
層)と、この上層に積層された絶縁性無機化合物皮膜層
からなる複膜層(以下、この複膜層を密着性絶縁被膜と
いう。)が4、5、21、22部に形成されている。ま
た、カップリング3においては、管材内外面の前記ネジ
部20のA、B部分を含む全域に渡って、密着性絶縁被
膜が6、7、23、24部に形成されている。
【0021】一方、前記高耐食性管材2においても前記
低耐食性管材1と同様に管材の内外面において前記ネジ
部20を除く管端から60mm以上の範囲に渡って、ネジ
部20の連結境界A、B部に対して、本発明に係る、密
着性絶縁被膜が8、9、21、22部に形成されてい
る。
【0022】なお、前記具体例の場合には、低耐食性管
材1と高耐食性管材2およびカップリング3の全てに対
して、密着性絶縁被膜を4〜9および21〜26部に形
成させたが、電食防止の観点から見る場合には、低耐食
性管材1、高耐食性管材2およびカップリング3の何れ
か1または2つに前記密着性絶縁被膜を形成しても良
く、カップリング3の6、7部に形成させるのが最も望
ましい。要するに、前記密着性絶縁被膜の適用箇所およ
びその組合せは、用途や予想される腐食の程度により適
宜選定できる。
【0023】一方、図2の場合には、低耐食性管材1と
高耐食性管材2とがカップリングを用いることなく直接
螺合連結されている。図2具体例の場合も図1具体例と
同様に、低耐食性管材1の管材の内外面においてネジ部
20を除く管端から60mmの範囲に渡って、ならびにネ
ジ部20の連結境界A、B部分(図9にA部分、図10
にB部分をそれぞれ模式拡大して示す。)に対して、本
発明に係る密着性絶縁被膜が4、5、21、22部に形
成されている。また、高耐食性管材2においても前記低
耐食性管材1と同様に管材の内外面において前記ネジ部
20を除く管端から60mm以上の範囲に渡って、ならび
にネジ部20の連結境界A、B部分に対して、前記密着
性絶縁被膜が8、9、25、26部に形成されている。
【0024】図2具体例の場合も図1具体例の場合と同
様に、低耐食性管材1および高耐食性管材2の両方に対
して、すなわち密着性絶縁被膜を4、5、8、9、2
1、22、25、26部に形成させたが、電食防止の観
点からは、高耐食性管材2側の8、9部のみとすること
もできる。なお、図1および図2において、4部にも前
記密着性絶縁被膜を形成する場合には、応力緩和層が導
電性膜である場合にはこの膜と、低耐食性管材1との間
で電食が危惧される。その場合には、上層の絶縁性膜の
被覆領域を下層の応力緩和層より長くすればよい。ま
た、密着性絶縁被膜を施す面は、前記二つの具体例の場
合には管材1、2の内外面の両面としたが、必ずしも内
外面の両面に施す必要はなく、最低限油井において腐食
環境に曝される面のみでよい。具体的にはチュービング
の場合には内外面の両方、ケーシングの場合には内面の
みとすることができる。
【0025】ところで、ワイヤーロープを用いて吊り下
げ搬送操作等により管材1、2の表面に傷がつけられる
おそれのある場合には、前記絶縁性無機化合物被膜の表
面にその剥離や破壊防止のために、フッ素系樹脂あるい
はポリプロピレン系等の有機被膜を施すのが好ましい。
【0026】一方、上記各例では、連結要素端を基準と
して、密着性絶縁被膜の形成範囲Lを60mm以上として
規定しているが、連結要素の連結境界を挟んで上記膜層
を形成する場合、たとえば一方の連結要素に対して30
mm以上の長さに渡って、他方の連結要素に対しても30
mm以上の長さに渡って前記被膜を形成し、合計として6
0mm以上の長さ範囲になっていてもよい。ただし、上記
各例において、連結したときに隙間が生じる箇所におい
ては、電食と隙間腐食が重畳することを考慮すると、最
低限腐食環境に晒される図7〜図10中の隙間部21〜
26には、前記密着性絶縁被膜を形成することが必要と
なる。また、密着性絶縁被膜を4〜9部に形成するにあ
たり、連結境界を挟んで前記密着性絶縁被膜を形成する
場合、両膜層が可能な限り連続するようにすることが望
ましいことは言うまでもない。したがって、図1または
図2に示すように、金属管材1、2間あるいは金属管材
1、2とカップリング3間に段差がある場合、その段の
壁面にも上記密着性絶縁被膜を形成するのが現実的には
必須となることが多い。
【0027】以下、実施例を示しながら、本発明の数値
限定理由と、本発明の効果を明らかにする。 (実施例1)電食試験においては、図1例の連結構造を
想定して、図3に示されるように上面が裸の低耐食性材
料10と上面が裸の高耐食性材料11との間に、密着性
絶縁被膜13を施した継ぎ材12を直列的に連結させる
とともに、各部材相互間をボルト14をもって連結させ
たものを供試体としてその電食状況について調べた。な
お、L1 、L3 共100mmとし、各部材の側面および
裏面はフッ素皮膜を形成した。
【0028】一方、隙間腐食試験においては、図4に示
されるように、30mm×30mmで厚さ3mmの板状の低耐
食性材料10と高耐食性材料11とに密着性絶縁被膜1
3を施したものを作製し、両者の密着性絶縁被膜13同
士を向かい合わせて積層しボルト14により締結し試験
に供した。
【0029】また、耐剥離性試験においては、継ぎ材1
2と同材質により、図5に示す形状の引張試験片を作製
した。前記試験片は、全長L4 ;120mm、中間の小径
部長L5 ;50mm、両端の太径部がφ1 ;20mmで、中
間の小径部がφ2 ;10mm±0.05mmである。そし
て、この試験片全体に前記密着性絶縁被膜を形成し、
0.3%の引張歪を付加して、剥離の有無について調べ
た。
【0030】以上の試験に用いられる前記低耐食性材料
10としては、表3〜表5に示されるように、API-N80
級用の中炭素鋼を用いた。一方、前記高耐食性材料11
としては、UNSNO.NO8825(22Cr-42Ni-3Mo) を用いた。前
記継ぎ材12としては、API-N80 級用の中炭素鋼、UNSN
O.NO8825の2種類を用いその表面に本発明に係る密着性
絶縁被膜を施したものを用いた。
【0031】密着性絶縁被膜の下層側応力緩和層は、金
属層としてはCr,Ti,Ta,Zr,Si,Nb,Wを、金属酸化物層と
してはCr2O3,TiO2, を、金属窒化物層としてはCrN,TiN,
TaN,ZrN,NbN を、金属炭化物層としてはCr7C3,Cr23C6,C
r3C2,TiC,TaC,ZrC,NbC,SiC,WC を用いた。上層側絶縁性
無機化合物被膜層としてはAl2O3,Si3N4,Ta2O5,SiO2,Al
N,BN を用いた。さらに、前記絶縁性無機化合物被膜層
の保護のため、その上層にフッ素系樹脂を積層させたも
のについても同様の試験を行った。ここで、本実施例に
おいて、下層として使用する金属層、この酸化物、窒化
物、炭化物層と、その上層に用いる絶縁性無機化合物被
膜層との組合せについて整理した結果を表1に示し、各
材料の熱膨張係数を表2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】なお、前記応力緩和層と絶縁性無機化合物
層との選択組合せに際しては、好ましくは応力緩和層と
絶縁性無機化合物層が同物質にならないように、かつ応
力緩和層の熱膨張係数>絶縁性無機化合物層の熱膨張係
数、となるように組み合わせるのがよい。
【0035】前記電食または隙間腐食試験における腐食
環境としては、炭酸ガス環境:1気圧CO2 と硫化水素ガ
ス環境:1気圧H2S が複合した環境下とし、他の腐食環
境条件としては温度:60℃、溶液は5%NaCl、腐食時
間は720hとした。そして密着性絶縁被膜13を施し
た継ぎ材12の長さL2 を50mmまたは60mmに変えて
被覆率を測定し、その腐食速度および隙間腐食の有無か
ら必要前記被膜厚さ、長さ、被覆率を求めた。さらに密
着性絶縁皮膜13のエロージョン・コロージョン性を調
べるため、腐食試験後に5%NaCl沸騰溶液中で半径5m
mの半球体を10kg/mm2の力で5回/min の速度で24
h連続して擦りつけて、剥離の有無について調べた。こ
の際に、前記フッ素系樹脂の積層効果についても調べ
た。以上の試験を行った結果を表3〜表5に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】表3〜表5から明らかなように、32通り
の試験ケースの内、試験No29〜31の場合には低耐食
性材料10の腐食速度が1.0g/m2/h以上となり、耐食
性に劣る結果となったのに対し、絶縁性無機化合物皮膜
厚0.4μm以上、絶縁性無機化合物皮膜長60mm以
上、被覆率90%以上99.999%以下の試験No1〜
28およびNo32の場合には、腐食速度が低く電食およ
び隙間腐食を防止して、かつ耐剥離性良好であることが
判った。特に、No32のフッ素系樹脂を施した場合のも
のは、有機被膜を形成しない場合に比較して、とくに剥
離防止等に有用であったことが確認された。
【0040】(実施例2)次に、水素脆性について試験
を行った結果について示す。低耐食性材料10としては
API-N80 級用の中炭素鋼を用い、一方高耐食性材料11
としてはUNSNO.S31803(二相ステンレス) を用いた。ま
た、継ぎ材12としてはUNSNO.S31803に下層膜には厚さ
0.2μmTiN を、上層膜には0.5μmのAl2O3,Si3N
4,Ta2O5,SiO2,AlN,BN 被膜13を施したものを使用し
た。供試体の寸法および形状は、図6に示されるように
低耐食性材料10は板状帯で幅10mm、長さ100mmの
ものとし、一方、高耐食性材料11は幅10mm、長さ1
00mmのものを水素侵食が効果的に行われるようにする
ためU字状に折り曲げたものを使用した。継ぎ材12と
しては、幅10mmとし、長さについては40mm、60m
m、80mmの3種類のものを用意した。連結に当たって
は低耐食性材料10と継ぎ材12とをボルト14で固定
し、一方、継ぎ材12と高耐食性材料11とは長尺ボル
ト15で直列的に固定するとともに、この長尺ボルト5
を高耐食性材料11の他方端に形成された通孔に貫通さ
せ、ナット16により締め付けることによりU字先端部
位の離間距離を5mmだけ絞り込み、拘束応力を与えるよ
うにした。被覆率は、いずれの長さの継ぎ材12におい
ても90%であった。カソード側(高耐食性材料側)で
発生する水素による脆性は、常温において最も吸収が行
われ感受性が高いため、試験は下記に示す工程I〜工程
IIの2工程で行った。 <工程I>炭酸ガス環境 (1気圧CO2)において温度:
150℃、溶液は5%NaCl、腐食時間は720hとす
る。 <工程II>炭酸ガス環境 (1気圧CO2)において温度:
25℃、溶液は5%NaCl、腐食時間は720hとする。
以上の工程Iと工程IIを経た供試体について、Uベンド
部におけるワレの発生の有無について調べた。その結果
を表6に示す。
【0041】
【表6】
【0042】表6より明らかなように、継ぎ材12の長
さ(絶縁被膜長)が60mm以上である60mm、80mm
(ケースNO2、3)の場合には、ワレが発生せず高耐食
性材料11側での水素発生を抑制することが判明され
た。
【0043】
【発明の効果】以上詳説の通り、本発明によれば、油井
などにおいて異種金属管材を継ぐ場合に生じる電食およ
び隙間腐食を確実に防止し得るとともに、応力下でも耐
剥離性良好な金属管材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電食防止を施した油井管の連結部
を示す図である。
【図2】本発明に係る電食防止を施した油井管の連結部
を示す図である。
【図3】実施例1における耐食性試験の供試体を示す図
である。
【図4】実施例1における隙間腐食試験の供試体を示す
図である。
【図5】実施例1における耐剥離性試験の供試体を示す
図である。
【図6】実施例2における水素脆性試験の供試体を示す
図である。
【図7】図1のA部分の拡大断面図である。
【図8】図1のB部分の拡大断面図である。
【図9】図2のA部分の拡大断面図である。
【図10】図2のB部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
1…低耐食性管材、2…高耐食性管材、3…カップリン
グ、4〜9…絶縁性皮膜、10…低耐食性材料、11…
高耐食性材料、12…継ぎ材、13…絶縁性皮膜
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年11月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正内容】
【0013】また、前記応力緩和層としては、好ましく
は金属管材と絶縁性被膜との中間の熱膨張係数を有する
材料が望まれる。前記絶縁性被膜としては、比抵抗が1
8 Ωcm以上のAl2O3,Si3N4,Ta2O5,SiO2,AlN,BN を想
定しており、その下層に用いる上記応力緩和層膜種との
組合せは、金属管材を含めた相互の熱膨張係数差を考慮
して選択すればよい。さらに、前記応力緩和層膜につい
ては、異種の金属およびその酸化物、窒化物および炭化
物同士をそれぞれ複合化、あるいは多層化(本発明にお
いては、これら複合化と多層化を総称して複合層という
ものとする。)しても同等、あるいはそれ以上の油井環
境における応力下での耐剥離性向上に寄与することがで
きる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正内容】
【0016】また、本発明で用いる絶縁性無機化合物を
その比抵抗が108 Ωcm以上のものと規定するのは、
一般に完全な絶縁性が得られるのは比抵抗108 Ωcm
以上の場合であり、比抵抗が108 Ωcm未満の場合に
は半導電性となり、この半導電性被膜では導電性被膜の
場合と同様に、低耐食性管材との間で電食が生じる危険
性が極めて大きいからであるあ。さらに、被覆率を10
0%未満としたのは、現状ではピンホール欠陥(母材ま
で貫通している膜の欠陥)のない膜をコーティングする
ことが困難であることが知られているためである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正内容】
【0031】密着性絶縁被膜の下層側応力緩和層は、金
属層としてはCr,Ti,Ta,Zr,Si,Nb,Wを、金属酸化物層と
してはCr2O3,TiO2, を、金属窒化物層としてはCrN,TiN,
TaN,ZrN,NbN を、金属炭化物層としてはCr7C3,Cr23C6,C
r3C2,TiC,TaC,ZrC,NbC,SiC,WC を用いた。上層側絶縁性
無機化合物被膜層としては、比抵抗が108 Ωcm以上
のAl2O3,Si3N4,Ta2O5,SiO2,AlN,BN を用いた。また、比
較のために比抵抗が108 Ωcmの半導電性のTiO2も用
いた。さらに、前記絶縁性無機化合物被膜層の保護のた
め、その上層にフッ素系樹脂を積層させたものについて
も同様の試験を行った。ここで、本実施例において、下
層として使用する金属層、この酸化物、窒化物、炭化物
層と、その上層に用いる絶縁性無機化合物被膜層との組
合せについて整理した結果を表1に示し、各材料の熱膨
張係数を表2に示す。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正内容】
【0038】
【表5】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正内容】
【0039】表3〜表5から明らかなように、33通り
の試験ケースの内、試験No29〜31,33の場合には
低耐食性材料10の腐食速度が1.0g/m2/h以上とな
り、耐食性に劣る結果となったのに対し、比抵抗108
Ωcm以上、絶縁性無機化合物皮膜厚0.4μm以上、
絶縁性無機化合物皮膜長60mm以上、被覆率90%以上
99.999%以下の試験No1〜28およびNo32の場
合には、腐食速度が低く電食および隙間腐食を防止し
て、かつ耐剥離性良好であることが判った。特に、No3
2のフッ素系樹脂を施した場合のものは、有機被膜を形
成しない場合に比較して、とくに剥離防止等に有用であ
ったことが確認された。
【手続補正書】
【提出日】平成4年11月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正内容】
【0031】密着性絶縁被膜の下層側応力緩和層は、金
属層としてはCr,Ti,Ta,Zr,Si,Nb,Wを、金属酸化物層と
してはCr2O3,TiO2, を、金属窒化物層としてはCrN,TiN,
TaN,ZrN,NbN を、金属炭化物層としてはCr7C3,Cr23C6,C
r3C2,TiC,TaC,ZrC,NbC,SiC,WC を用いた。上層側絶縁性
無機化合物被膜層としては、比抵抗が108 Ωcm以上
のAl2O3,Si3N4,Ta2O5,SiO2,AlN,BN を用いた。また、比
較のために比抵抗が107 Ωcmの半導電性のTiO2も用
いた。さらに、前記絶縁性無機化合物被膜層の保護のた
め、その上層にフッ素系樹脂を積層させたものについて
も同様の試験を行った。ここで、本実施例において、下
層として使用する金属層、この酸化物、窒化物、炭化物
層と、その上層に用いる絶縁性無機化合物被膜層との組
合せについて整理した結果を表1に示し、各材料の熱膨
張係数を表2に示す。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】管端部に連結用の螺合ネジ部が形成された
    金属管材において、 該金属管材が連結されたときに露出する内面および外面
    の少なくとも一方面における、前記螺合ネジ部を除く内
    面端または外面端から60mm以上の範囲に渡って、な
    らびに連結したとき隙間が生じる前記螺合ネジ部分に、
    金属またはその酸化物、窒化物あるいは炭化物の単層ま
    たは複合層を形成した後、この上層に厚さ0.4μm以上
    で、かつ比抵抗が108 Ωcm以上の絶縁性無機化合物皮
    膜を被覆率90%以上100%未満で形成したことを特
    徴とする被膜密着性に優れた電食防止用絶縁管材。
  2. 【請求項2】前記金属またはその酸化物、窒化物あるい
    は炭化物の単層または複合層は、金属管材と絶縁性無機
    化合物との中間の熱膨張係数を有する請求項1記載の電
    食防止用絶縁管材。
  3. 【請求項3】前記絶縁性無機化合物皮膜の表面にその絶
    縁性無機化合物皮膜保護用の合成樹脂皮膜が積層されて
    いる請求項1または2記載の電食防止用絶縁管材。
JP23992A 1992-01-06 1992-01-06 被膜密着性に優れた電食防止用絶縁管材 Pending JPH05179470A (ja)

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US08/002,492 US5660211A (en) 1992-01-06 1993-01-06 Galvanic corrosion resistant insulating pipe having excellent film adhesion
DE69306466T DE69306466T2 (de) 1992-01-06 1993-01-07 Gegen Korrosion resistentes Rohr
EP93100154A EP0570657B1 (en) 1992-01-06 1993-01-07 corrosion resistant pipe

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