JPH05179412A - アルミニウム合金部材の製造方法 - Google Patents
アルミニウム合金部材の製造方法Info
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- JPH05179412A JPH05179412A JP35952291A JP35952291A JPH05179412A JP H05179412 A JPH05179412 A JP H05179412A JP 35952291 A JP35952291 A JP 35952291A JP 35952291 A JP35952291 A JP 35952291A JP H05179412 A JPH05179412 A JP H05179412A
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- Japan
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- quenching
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 より一層、強度を向上させることができるア
ルミニウム合金部材の製造方法を提供する。 【構成】 先ず、アルミニウム合金製シリンダヘッド等
の基材1に対してショットピ−ニング等の塑性加工を行
ない、その基材1に加工変形層を形成する。次いで、そ
の加工変形層に対して焼入れ処理を行ない、加工変形層
を再結晶化して再結晶粒子数を増加させると共に焼入れ
処理による急冷により各再結晶粒子に対して歪み(圧縮
残留応力)を生じさせる。
ルミニウム合金部材の製造方法を提供する。 【構成】 先ず、アルミニウム合金製シリンダヘッド等
の基材1に対してショットピ−ニング等の塑性加工を行
ない、その基材1に加工変形層を形成する。次いで、そ
の加工変形層に対して焼入れ処理を行ない、加工変形層
を再結晶化して再結晶粒子数を増加させると共に焼入れ
処理による急冷により各再結晶粒子に対して歪み(圧縮
残留応力)を生じさせる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウム合金部材
の製造方法に関する。
の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】アルミニウム合金部材の製造方法には、特
開昭61−193773号公報に示すように、アルミニ
ウム合金部材の必要部分に高密度エネルギを照射して、
再溶融させるようにしたものが広く知られている。この
製造方法によれば、組織が微細化して機械的強度が向上
することになる。
開昭61−193773号公報に示すように、アルミニ
ウム合金部材の必要部分に高密度エネルギを照射して、
再溶融させるようにしたものが広く知られている。この
製造方法によれば、組織が微細化して機械的強度が向上
することになる。
【0003】しかし、近時、製品としてのアルミニウム
合金部材はより過酷な条件の下で使用される傾向にあ
り、アルミニウム合金部材の強度信頼性、耐久性をより
一層向上させることが望まれている。特に、自動車にお
いては、高出力化、高燃費化に伴い、エンジン部品とし
てのアルミニウム合金部材の強度、耐久性の向上に対す
る要求は強い。
合金部材はより過酷な条件の下で使用される傾向にあ
り、アルミニウム合金部材の強度信頼性、耐久性をより
一層向上させることが望まれている。特に、自動車にお
いては、高出力化、高燃費化に伴い、エンジン部品とし
てのアルミニウム合金部材の強度、耐久性の向上に対す
る要求は強い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記実情に鑑
みてなされたもので、その目的は、より一層、強度を向
上させることができるアルミニウム合金部材の製造方法
を提供することにある。
みてなされたもので、その目的は、より一層、強度を向
上させることができるアルミニウム合金部材の製造方法
を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに本発明(第1の発明)にあっては、基材に対して塑
性加工をして加工変形層を形成し、その後、前記加工変
形層に対して焼入れ処理を行う、構成としてある。上述
の構成により、焼入れ処理に先だち、基材に対して塑性
加工をして加工変形層を形成することから、焼入れ処理
(加熱)に伴って、加工変形層が再結晶化されて再結晶
組織が形成され、その再結晶組織は微細となり、その再
結晶粒子数は増加することになる。しかも、上記焼入れ
処理により、各再結晶粒子に歪み(圧縮残留応力)が形
成されることになるが、この場合、前工程において、再
結晶粒子数が増加されていることから、全体としての圧
縮残留応力は増大することになり、焼入れ効果が著しく
向上することになる。このため、疲労強度は飛躍的に向
上し、いままで以上に強度を向上させることができるこ
とになる。
めに本発明(第1の発明)にあっては、基材に対して塑
性加工をして加工変形層を形成し、その後、前記加工変
形層に対して焼入れ処理を行う、構成としてある。上述
の構成により、焼入れ処理に先だち、基材に対して塑性
加工をして加工変形層を形成することから、焼入れ処理
(加熱)に伴って、加工変形層が再結晶化されて再結晶
組織が形成され、その再結晶組織は微細となり、その再
結晶粒子数は増加することになる。しかも、上記焼入れ
処理により、各再結晶粒子に歪み(圧縮残留応力)が形
成されることになるが、この場合、前工程において、再
結晶粒子数が増加されていることから、全体としての圧
縮残留応力は増大することになり、焼入れ効果が著しく
向上することになる。このため、疲労強度は飛躍的に向
上し、いままで以上に強度を向上させることができるこ
とになる。
【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。先ず、基材に対して塑性加工をして加工変形層を
形成する。これは、この後の工程における焼入れ処理に
よって、加工変形層を再結晶化して再結晶組織を形成
し、その際に、その再結晶組織を微細化して再結晶粒子
数を増加せんとするために行われる。すなわち、再結晶
化する前工程として、塑性加工を行えば、加工により導
入された転位(端的に結晶のすべり)はひずみの増加に
伴って、その密度を増しセル組織を形成し、セル組織
は、小角粒界の網目組織、すなわち亜結晶粒組織へと変
化し、さらに亜結晶組織が合体して、新しい結晶粒(再
結晶粒)となる。このため、再結晶組織は微細化し、再
結晶粒子数は増加するのである。
する。先ず、基材に対して塑性加工をして加工変形層を
形成する。これは、この後の工程における焼入れ処理に
よって、加工変形層を再結晶化して再結晶組織を形成
し、その際に、その再結晶組織を微細化して再結晶粒子
数を増加せんとするために行われる。すなわち、再結晶
化する前工程として、塑性加工を行えば、加工により導
入された転位(端的に結晶のすべり)はひずみの増加に
伴って、その密度を増しセル組織を形成し、セル組織
は、小角粒界の網目組織、すなわち亜結晶粒組織へと変
化し、さらに亜結晶組織が合体して、新しい結晶粒(再
結晶粒)となる。このため、再結晶組織は微細化し、再
結晶粒子数は増加するのである。
【0007】上記基材は、疲労強度を高めたい部材であ
り、その材質は、アルミニウム合金(例えばJIS A
C4D)とされている。より具体的には、基材として、
アルミニウム合金製シリンダヘッド等が対象となる。
り、その材質は、アルミニウム合金(例えばJIS A
C4D)とされている。より具体的には、基材として、
アルミニウム合金製シリンダヘッド等が対象となる。
【0008】上記塑性加工としては、ショットピ−ニン
グ加工、ロ−ル加工等が用いられ、これら各加工方法に
より塑性加工が行われる。
グ加工、ロ−ル加工等が用いられ、これら各加工方法に
より塑性加工が行われる。
【0009】上記塑性加工による加工変形層は、疲労強
度を高めたいところに形成され、それは、基材に対して
全体的であっても、或いは部分的であってもよい。例え
ば、図1に示すように、基材であるアルミニウム合金製
シリンダヘッド1においては、バルブシ−ト2(2aは
エキゾ−スト用、2bはインレット用)周辺において形
成するのがよい。これは、バルブシ−ト2の圧入により
シリンダヘッド1の下穴周縁部の周方向に引っ張り応力
が発生するため、そこに熱負荷等が作用するとクラック
が発生し易くなるからである。このことは、図2、図3
からも明らかである。すなわち、図2は、図1における
各計測位置A〜Fの残留応力(X線法による)であっ
て、鋳造からバルブシ−ト圧入までの製造過程で発生し
た残留応力の変遷を示しており、この図2から、バルブ
シ−ト2の圧入によりバルブシ−ト2周辺に大きな引っ
張り応力が発生することが理解できる。また、図3は、
発生応力(引っ張り応力)とバルブシ−ト1の圧入時に
おける焼きばめタイト量との関係を示しており、バルブ
シ−トの圧入時における焼きばめタイト量が引っ張り応
力に大きく影響を及ぼすことが理解できる。なお、図3
においては、図1におけるB、C、E、Fの各計測位置
の計測値が示されている。
度を高めたいところに形成され、それは、基材に対して
全体的であっても、或いは部分的であってもよい。例え
ば、図1に示すように、基材であるアルミニウム合金製
シリンダヘッド1においては、バルブシ−ト2(2aは
エキゾ−スト用、2bはインレット用)周辺において形
成するのがよい。これは、バルブシ−ト2の圧入により
シリンダヘッド1の下穴周縁部の周方向に引っ張り応力
が発生するため、そこに熱負荷等が作用するとクラック
が発生し易くなるからである。このことは、図2、図3
からも明らかである。すなわち、図2は、図1における
各計測位置A〜Fの残留応力(X線法による)であっ
て、鋳造からバルブシ−ト圧入までの製造過程で発生し
た残留応力の変遷を示しており、この図2から、バルブ
シ−ト2の圧入によりバルブシ−ト2周辺に大きな引っ
張り応力が発生することが理解できる。また、図3は、
発生応力(引っ張り応力)とバルブシ−ト1の圧入時に
おける焼きばめタイト量との関係を示しており、バルブ
シ−トの圧入時における焼きばめタイト量が引っ張り応
力に大きく影響を及ぼすことが理解できる。なお、図3
においては、図1におけるB、C、E、Fの各計測位置
の計測値が示されている。
【0010】上記加工変形層の加工変形量(変形前の基
材の長さ(例えば厚み)に対する変形長さの割合(%)
で、ショットピ−ニングにおいてはア−クハイト量が用
いられる。)は、図4に示す実験結果から明らかなよう
に、大きくなればなるほど、焼入れ処理に伴う再結晶化
により、再結晶粒子の大きさが小さくなる傾向を示すこ
とになり、後工程のために再結晶粒子の大きさをできる
だけ小さくして再結晶粒子数を増加する必要から、加工
変形量は、基材の強度が許す限り、できるだけ大きい方
が好ましい。しかし、アルミニウム合金部材において
は、一般的には、加工変形量が60%を越えると、クラ
ックないしは破断が生じる。これは、加工が進むに従っ
て材料の結晶粒が伸びると共に向きを変え、選択的な結
晶方位をとるようになり、ある特定の向きをもった組織
となる、つまり、加工度が大きくなると、材料の変形抵
抗は大きくなり、さらに加工すると延性を失い、亀裂を
発生することになるからであり、その現象は、Si量が
多くなるほど限界加工度がより低くなるからである。こ
のため、アルミニウム合金部材の加工変形量は、上限条
件として60%が望ましい。尚、図4の実験において
は、JIS AC4Dについて、再結晶温度(焼入れ温
度)360度C、加熱時間3分の下で行われた。
材の長さ(例えば厚み)に対する変形長さの割合(%)
で、ショットピ−ニングにおいてはア−クハイト量が用
いられる。)は、図4に示す実験結果から明らかなよう
に、大きくなればなるほど、焼入れ処理に伴う再結晶化
により、再結晶粒子の大きさが小さくなる傾向を示すこ
とになり、後工程のために再結晶粒子の大きさをできる
だけ小さくして再結晶粒子数を増加する必要から、加工
変形量は、基材の強度が許す限り、できるだけ大きい方
が好ましい。しかし、アルミニウム合金部材において
は、一般的には、加工変形量が60%を越えると、クラ
ックないしは破断が生じる。これは、加工が進むに従っ
て材料の結晶粒が伸びると共に向きを変え、選択的な結
晶方位をとるようになり、ある特定の向きをもった組織
となる、つまり、加工度が大きくなると、材料の変形抵
抗は大きくなり、さらに加工すると延性を失い、亀裂を
発生することになるからであり、その現象は、Si量が
多くなるほど限界加工度がより低くなるからである。こ
のため、アルミニウム合金部材の加工変形量は、上限条
件として60%が望ましい。尚、図4の実験において
は、JIS AC4Dについて、再結晶温度(焼入れ温
度)360度C、加熱時間3分の下で行われた。
【0011】次に、上述の加工変形層に対して焼入れ処
理を行う。これは、前述したように、加工変形層を再結
晶化して微細な再結晶組織を形成することにより再結晶
粒子数を増加させると共に、焼入れ処理による急冷によ
り各再結晶粒子に対して歪み(圧縮残留応力)を生じさ
せるために行われる。
理を行う。これは、前述したように、加工変形層を再結
晶化して微細な再結晶組織を形成することにより再結晶
粒子数を増加させると共に、焼入れ処理による急冷によ
り各再結晶粒子に対して歪み(圧縮残留応力)を生じさ
せるために行われる。
【0012】この場合、上記焼入れ処理を行う手段とし
ては、基材に対し、加熱と急冷とを行えれば、どのよう
なものでもよいが、前述のシリンダヘッド1におけるバ
ルブシ−ト2周辺を局部的に行うような場合において
は、レ−ザ照射が適している。
ては、基材に対し、加熱と急冷とを行えれば、どのよう
なものでもよいが、前述のシリンダヘッド1におけるバ
ルブシ−ト2周辺を局部的に行うような場合において
は、レ−ザ照射が適している。
【0013】上記焼入れ処理における焼入れ温度は、焼
入れ処理が加工変形層を再結晶化させると共に各再結晶
粒子に歪みを生じさせなければならないことから、その
両者を考慮して決められる。すなわち、再結晶化する温
度(再結晶温度)は、図5の実験結果(JIS AC4
Dについて、保持時間(加熱時間)を2時間に一定)か
ら明らかなように、加工変形量が大きくなるに従って小
さくなる傾向を有しており、加工変形量に応じた再結晶
温度以上とする必要がある。その一方、再結晶温度が高
過ぎると、結晶の二次的な成長が生じて粗大化するた
め、再結晶温度は、基材の材質等に応じて、粗大化温度
以下とするのが好ましく、アルミニウム合金鋳物、アル
ミニウム鍛造品等のアルミニウム合金部材については、
380度Cを越えると、粗粒化が始まることから、その
粗粒化を防ぐべく、再結晶温度は380度C以下が望ま
しい。また、この場合、再結晶温度に加熱時間(保持時
間)が影響を与えており、再結晶温度は、図6の実験結
果(JIS AC4Dについて、加工変形量を55%に
一定)から明らかなように急速加熱するほど高温としな
ければならない。一方、各再結晶粒子に歪みを生じさせ
るために必要な温度(便宜上、焼入れ温度と称す)につ
いては、図7の実験結果(JIS AC4Dについて、
保持時間2時間、粒径1mm)から明らかなように、焼入
れ温度が高いほど歪みが大きく、引っ張り強度が大きく
なる。
入れ処理が加工変形層を再結晶化させると共に各再結晶
粒子に歪みを生じさせなければならないことから、その
両者を考慮して決められる。すなわち、再結晶化する温
度(再結晶温度)は、図5の実験結果(JIS AC4
Dについて、保持時間(加熱時間)を2時間に一定)か
ら明らかなように、加工変形量が大きくなるに従って小
さくなる傾向を有しており、加工変形量に応じた再結晶
温度以上とする必要がある。その一方、再結晶温度が高
過ぎると、結晶の二次的な成長が生じて粗大化するた
め、再結晶温度は、基材の材質等に応じて、粗大化温度
以下とするのが好ましく、アルミニウム合金鋳物、アル
ミニウム鍛造品等のアルミニウム合金部材については、
380度Cを越えると、粗粒化が始まることから、その
粗粒化を防ぐべく、再結晶温度は380度C以下が望ま
しい。また、この場合、再結晶温度に加熱時間(保持時
間)が影響を与えており、再結晶温度は、図6の実験結
果(JIS AC4Dについて、加工変形量を55%に
一定)から明らかなように急速加熱するほど高温としな
ければならない。一方、各再結晶粒子に歪みを生じさせ
るために必要な温度(便宜上、焼入れ温度と称す)につ
いては、図7の実験結果(JIS AC4Dについて、
保持時間2時間、粒径1mm)から明らかなように、焼入
れ温度が高いほど歪みが大きく、引っ張り強度が大きく
なる。
【0014】焼入れ温度については、アルミニウム合金
部材の対象に応じて、さらに条件が加わることになる。
すなわち、アルミニウム合金部材をシリンダヘッド1に
用いる場合においては、実運転において燃焼室壁温度が
330度C近くまで昇温することから、焼入れ温度を上
記温度(330度C)よりも低いと、その実運転によ
り、再結晶化、結晶の粗大化が生じ、必要な強度が確保
できなくなる。このため、アルミニウム合金部材をシリ
ンダヘッド1に用いる場合には、再結晶温度の下限条件
として、330度Cとするのが望ましく、前述の上限条
件としての380度Cと併わせて、330〜380度C
の範囲を焼入れ温度とするのが好ましい。
部材の対象に応じて、さらに条件が加わることになる。
すなわち、アルミニウム合金部材をシリンダヘッド1に
用いる場合においては、実運転において燃焼室壁温度が
330度C近くまで昇温することから、焼入れ温度を上
記温度(330度C)よりも低いと、その実運転によ
り、再結晶化、結晶の粗大化が生じ、必要な強度が確保
できなくなる。このため、アルミニウム合金部材をシリ
ンダヘッド1に用いる場合には、再結晶温度の下限条件
として、330度Cとするのが望ましく、前述の上限条
件としての380度Cと併わせて、330〜380度C
の範囲を焼入れ温度とするのが好ましい。
【0015】焼入れ時間(加熱時間)は、再結晶化に必
要な時間が確保されることを前提として、他の部位への
熱的影響(変形)を極力抑える必要から、できるだけ、
短時間が望ましい。但し、アルミニウム合金部材をシリ
ンダヘッドに用いる場合には、前述したように、再結晶
温度を330度C以上としなければならないことから、
急速焼入れするほど再結晶温度を高めなければならない
関係を示す図6に基づき、加工変形量を、上限条件に近
い55%としたときには、0.04(Hr)以下の焼入
れ時間をもって、再結晶温度の下限条件を330度Cを
満足させなければならない。
要な時間が確保されることを前提として、他の部位への
熱的影響(変形)を極力抑える必要から、できるだけ、
短時間が望ましい。但し、アルミニウム合金部材をシリ
ンダヘッドに用いる場合には、前述したように、再結晶
温度を330度C以上としなければならないことから、
急速焼入れするほど再結晶温度を高めなければならない
関係を示す図6に基づき、加工変形量を、上限条件に近
い55%としたときには、0.04(Hr)以下の焼入
れ時間をもって、再結晶温度の下限条件を330度Cを
満足させなければならない。
【0016】このようにして、適切な条件を選択して上
記両工程を経ると、多くの再結晶粒子に歪みが生じるこ
とになり、歪みは全体的に多くなって、引っ張り強度が
向上することになる。このことは、図8の実験結果(J
IS AC4Dについて)が、焼入れ温度が低くても、
加工変形量が大きいほど(再結晶粒子の大きさが小さい
ほど)引っ張り強度が大きくなることを示していること
からも明らかである。尚、図8において、焼入れ温度が
420度Cのものについては、低い加工変形量の段階か
ら粗大化温度以上となるため、低い引っ張り強度とな
る。
記両工程を経ると、多くの再結晶粒子に歪みが生じるこ
とになり、歪みは全体的に多くなって、引っ張り強度が
向上することになる。このことは、図8の実験結果(J
IS AC4Dについて)が、焼入れ温度が低くても、
加工変形量が大きいほど(再結晶粒子の大きさが小さい
ほど)引っ張り強度が大きくなることを示していること
からも明らかである。尚、図8において、焼入れ温度が
420度Cのものについては、低い加工変形量の段階か
ら粗大化温度以上となるため、低い引っ張り強度とな
る。
【0017】したがって、具体的に、JIS AC4D
を用いたシリンダヘッド1(基材強度は約29Kgf /mm
2 とする)におけるバルブシ−ト2周辺の強度を向上さ
せる場合には、バルブシ−ト2周辺においては、その圧
入後、図2に示すように、約10Kgf /mm2 の引っ張り
応力が発生し、実質的に必要な引っ張り強度が、基材の
強度を加えて約39Kgf /mm2 以上となることから、こ
の値を得るためには、再結晶温度の上限温度(380度
C)を考慮し、図8から、加工変形量を30%C以上と
すればよいことが理解できる。このため、再結晶温度を
330〜380度Cの範囲とすることを前提として、加
工変形量を、前述の上限条件60%と併せて30〜60
%の範囲とするのが好ましい。
を用いたシリンダヘッド1(基材強度は約29Kgf /mm
2 とする)におけるバルブシ−ト2周辺の強度を向上さ
せる場合には、バルブシ−ト2周辺においては、その圧
入後、図2に示すように、約10Kgf /mm2 の引っ張り
応力が発生し、実質的に必要な引っ張り強度が、基材の
強度を加えて約39Kgf /mm2 以上となることから、こ
の値を得るためには、再結晶温度の上限温度(380度
C)を考慮し、図8から、加工変形量を30%C以上と
すればよいことが理解できる。このため、再結晶温度を
330〜380度Cの範囲とすることを前提として、加
工変形量を、前述の上限条件60%と併せて30〜60
%の範囲とするのが好ましい。
【0018】次に、本発明の効果を裏付けるために、実
施例に係るシリンダヘッドと、比較例1、2に係るシリ
ンダヘッドとについて、下記条件の下で実機耐久テスト
を行った。実施例に係るシリンダヘッドの条件 基材:JIS AC4D 塑性加工:ショットピ−ニング加工(ア−クハイト量
0.2mm) 焼入れ処理:レ−ザ照射による急熱急冷処理 焼入れ温度350〜370土C 再結晶粒子の大きさ0.06〜0.1mm 加熱時間2.5分比較例1に係るシリンダヘッドの条件 基材:JIS AC4D 塑性加工、焼入れ処理行わず。比較例2に係るシリンダヘッドの条件 基材:JIS AC4D リメルト(再溶融)処理 予熱:210度C×1Hr リメルト深さ:1mm リメルト:TIG(タングステンイナ−トガス)
施例に係るシリンダヘッドと、比較例1、2に係るシリ
ンダヘッドとについて、下記条件の下で実機耐久テスト
を行った。実施例に係るシリンダヘッドの条件 基材:JIS AC4D 塑性加工:ショットピ−ニング加工(ア−クハイト量
0.2mm) 焼入れ処理:レ−ザ照射による急熱急冷処理 焼入れ温度350〜370土C 再結晶粒子の大きさ0.06〜0.1mm 加熱時間2.5分比較例1に係るシリンダヘッドの条件 基材:JIS AC4D 塑性加工、焼入れ処理行わず。比較例2に係るシリンダヘッドの条件 基材:JIS AC4D リメルト(再溶融)処理 予熱:210度C×1Hr リメルト深さ:1mm リメルト:TIG(タングステンイナ−トガス)
【0019】上記条件のテストの結果、下記表1の内容
を得た。この内容によれば、実施例に係るシリンダヘッ
ドは、比較例1、2に係るシリンダヘッドよりも、引っ
張り強度、熱サイクル耐久テスト(低速無負荷と高速全
負荷の繰り返し)において優れている。これは、特に比
較例2との関係においては、比較例2が組織の微細化に
より強度向上を図ろうとしているが、そこでの組織は結
晶粒内の第2相粒子であるSiの微細化(Siの大きさ
約12μm、金型鋳造で約25μm)及び分散にポイン
トをおいているのに対し、本実施例は、結晶粒の微細化
による強度向上を特徴としており、微細化の対象を異に
した結果に基づくと考えられる。
を得た。この内容によれば、実施例に係るシリンダヘッ
ドは、比較例1、2に係るシリンダヘッドよりも、引っ
張り強度、熱サイクル耐久テスト(低速無負荷と高速全
負荷の繰り返し)において優れている。これは、特に比
較例2との関係においては、比較例2が組織の微細化に
より強度向上を図ろうとしているが、そこでの組織は結
晶粒内の第2相粒子であるSiの微細化(Siの大きさ
約12μm、金型鋳造で約25μm)及び分散にポイン
トをおいているのに対し、本実施例は、結晶粒の微細化
による強度向上を特徴としており、微細化の対象を異に
した結果に基づくと考えられる。
【表1】
【0020】
【発明の効果】本発明は以上述べたように、より一層、
強度を向上させることができるアルミニウム合金部材の
製造方法を提供できる。
強度を向上させることができるアルミニウム合金部材の
製造方法を提供できる。
【図1】シリンダヘッドの残留応力計測部位を示す説明
図である。
図である。
【図2】シリンダヘッドの製造過程での残留応力の変遷
を説明する図である。
を説明する図である。
【図3】シリンダヘッドにおいて、発生応力に及ぼすタ
イト量の影響を説明する図である。
イト量の影響を説明する図である。
【図4】加工変形量と再結晶粒子の大きさとの関係を説
明する特性線図である。
明する特性線図である。
【図5】加工変形量と再結晶の生成温度(再結晶温度)
との関係を説明する特性線図である。
との関係を説明する特性線図である。
【図6】再結晶の生成温度(再結晶温度)に及ぼす加熱
時間(焼入れ時間)の影響を説明する特性線図である。
時間(焼入れ時間)の影響を説明する特性線図である。
【図7】引っ張り強度に及ぼす焼入れ温度の影響を説明
する特性線図である。
する特性線図である。
【図8】加工変形量と引っ張り強度との関係を説明する
特性線図である。
特性線図である。
1 シリンダヘッド
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松井 恵子 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内
Claims (3)
- 【請求項1】 基材に対して塑性加工をして加工変形層
を形成し、 その後、前記加工変形層に対して焼入れ処理を行う、こ
とを特徴とするアルミニウム合金部材の製造方法。 - 【請求項2】 請求項1において、 前記塑性加工の加工変形量が30〜60%とされてい
る、ことを特徴とするアルミニウム合金部材の製造方
法。 - 【請求項3】 請求項1又は2のいずれかにおいて、 前記塑性加工がショットピ−ニング加工である、ことを
特徴とするアルミニウム合金部材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35952291A JPH05179412A (ja) | 1991-12-28 | 1991-12-28 | アルミニウム合金部材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35952291A JPH05179412A (ja) | 1991-12-28 | 1991-12-28 | アルミニウム合金部材の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05179412A true JPH05179412A (ja) | 1993-07-20 |
Family
ID=18464937
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP35952291A Pending JPH05179412A (ja) | 1991-12-28 | 1991-12-28 | アルミニウム合金部材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH05179412A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5549768A (en) * | 1994-09-02 | 1996-08-27 | Rockwell International Corporation | Process for imparting a localized fine grain microstructure in edge surfaces of aluminum alloy sheets |
JPH10330927A (ja) * | 1997-06-05 | 1998-12-15 | Riyouka Massey Kk | アルミニウム合金製スパッタリングターゲット材 |
US20150068485A1 (en) * | 2014-11-18 | 2015-03-12 | Caterpillar Inc. | Cylinder head having wear resistant laser peened portions |
-
1991
- 1991-12-28 JP JP35952291A patent/JPH05179412A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5549768A (en) * | 1994-09-02 | 1996-08-27 | Rockwell International Corporation | Process for imparting a localized fine grain microstructure in edge surfaces of aluminum alloy sheets |
JPH10330927A (ja) * | 1997-06-05 | 1998-12-15 | Riyouka Massey Kk | アルミニウム合金製スパッタリングターゲット材 |
US20150068485A1 (en) * | 2014-11-18 | 2015-03-12 | Caterpillar Inc. | Cylinder head having wear resistant laser peened portions |
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