JPH05152815A - 折り返しストリツプ線路型誘電体共振器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ストリップ線路型誘電体共振器を小形で効率
が高く且つ製造し易くする。フィルタとして構成し易
く、実装基板の回路に組み込み易い構造にする。 【構成】 誘電体基板１０に、その両主表面を除き外周
面にＵ型に形成した外側電極１２と、内部にＵ型に形成
した中間部電極１４及び中央に形成した中央部電極１６
とを形成し、それら各電極をそれぞれ一端のみで誘電体
基板の外周面上で短絡用電極１８により短絡した折り返
しストリップ線路型構造の誘電体共振器である。入出力
結合には無電極端面近傍の外周面に形成した島状電極を
用いる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、誘電体基板に立体的に
ストリップ線路を形成した誘電体共振器に関し、更に詳
しく述べると、誘電体基板の両主表面を除いて、外周及
び内部の所定の位置に電極を形成することにより、スト
リップ線路型１／４波長共振器を半分に折り返したよう
に見える構造とした折り返しストリップ線路型誘電体共
振器に関するものである。この誘電体共振器は、例えば
マイクロ波用の各種無線機器などで用いるフィルタや発
振器に好適なものである。

【０００２】

【従来の技術】マイクロ波用フィルタとして共振器をス
トリップ線路で構成する形式がある。例えば１／４波長
共振器の場合、誘電体基板上に直線状のストリップ線路
型の共振器導体を設け、その一端が開放となり、他端が
接地用電極に短絡されるように構成する。ここで共振器
導体は、共振波長の１／４波長の奇数倍の長さに設定さ
れる。実際のフィルタを構成する場合には、上記共振器
導体を誘電体基板上に並べて短絡側を共通に接続し、隣
接する共振器導体の間隔はフィルタ特性に対応した結合
強度となる所定の距離に定める。

【０００３】また１／２波長共振器では、誘電体基板上
に形成する共振器導体をヘアピン構造（Ｕ型構造）にす
る技術があり、実際のフィルタを構成する場合には、複
数のヘアピン状共振器導体を互いに平行結合するように
配置する。

【０００４】いずれにしても従来のストリップ線路型フ
ィルタでは、誘電体基板の表面に所定形状の共振器導体
が配設される。つまり共振器導体は平面的に配置され
る。例えば、誘電体基板上にスクリーン印刷法によって
所定形状に導電ペーストを付着させるか、あるいは誘電
体基板の表面に所定形状となるように電極形成部をやや
窪ませる加工を施し、その内部に導電ペーストを充填す
る。その後、誘電体基板を加熱処理して導電ペーストを
焼き付け、所望の電極パターンを形成する。また別の例
としては、２枚の誘電体基板の間に、予め打抜きあるい
はエッチングなどにより所定の形状に成形した薄肉導電
板（共振器導体）を挾み込むトリプレート構造もある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】これら従来のストリッ
プ線路型フィルタは、いずれにしても共振器導体が誘電
体基板上で平面的に配置されるため、面積的にはあまり
小形化できない。特に共振器導体を多段に接続してフィ
ルタを構成する場合は、高さ寸法は増大しなくても、ど
うしても平面的には大きくならざるを得ない。

【０００６】スクリーン印刷による共振器パターンの形
成は、一般に印刷精度が悪く、周波数及び結合が変化す
るため、トリミングが必要となる。また誘電体基板に凹
部を形成して導電材料を充填する場合は、不必要な部分
にまで導電材料が付着してしまうため、それを除去しな
ければならず、煩雑な作業が要求される。更にトリプレ
ート構造の場合は、導電板の存在によって、その厚み分
だけ両誘電体基板の間に隙間が生じるため、等価誘電率
が低下し、寸法をさほど小さくできない。また導電板の
厚みの部分の遮蔽対策も必要となる。

【０００７】本発明の目的は、上記のような従来技術の
欠点、即ちスクリーン印刷による電極寸法のばらつきの
問題、凹部への導電ペーストの塗布の困難性、及びトリ
プレート構造における導電板電極の厚みによる不具合を
解決でき、小形化に適し、効率が高く、回路に組み込み
易いストリップ線路型誘電体共振器を提供することであ
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、平板状の誘電
体基板を用い、その両主表面を除く外周面にＵ型に形成
した外側電極と、該誘電体基板の内部にＵ型に形成した
中間部電極及び誘電体基板の中央に形成した中央部電極
とを有し、それら各電極をそれぞれ一端のみで前記誘電
体基板の外周面上で短絡した折り返しストリップ線路型
誘電体共振器である。

【０００９】より具体的には、例えば一部に切り込み部
を形成して全体をほぼＵ型とした誘電体基板の両主表面
及び切り込み開口部両端面近傍のどちらか一方を除く外
周部分に電極を形成したＵ型共振器部と、それとは別体
の誘電体片の外周面にＵ型電極を形成し中央の部分電極
を一端のみで接続した内部共振器部とを組み合わせ、該
内部共振器部を前記Ｕ型共振器部の切り込み部に無電極
端面の部分を揃えて収容し一体化した構造がある。

【００１０】上記のような折り返しストリップ線路型誘
電体共振器に入出力結合電極を設ける場合には、誘電体
基板の無電極端面近傍の外周面に独立した島状電極を形
成して、その島状電極を入出力結合電極とする。

【００１１】本発明に係るストリップ線路型誘電体共振
器の更に他の例としては、上記のような島状電極（入出
力結合電極）を有する誘電体共振器の両主表面に、それ
ぞれ別体の誘電体基板を接合して三層サンドイッチ構造
とする構造がある。ここで外側に位置する両誘電体基板
は、内側に位置する誘電体共振器の島状電極近傍を除く
外周面と外側の主表面に接地用電極を設ける。

【００１２】

【作用】本発明において、誘電体基板の外周及び内部に
上記のような電極構造を設けるということは、恰もスト
リップ線路を半分に折り曲げて構成したかのように見え
る。誘電体基板の外周面の一端で、無電極部分（電極を
形成していない方）が開放側、電極を形成している方が
短絡側となる。従って１／４波長ストリップ線路が折り
返されることにより半分以下の長さになり、大幅に小形
化される。更にこの誘電体共振器では、内部の共振器部
の存在によってマイクロストリップ線路型ではなく、ス
トリップ線路型となるから、効率が向上する。

【００１３】しかも、この折り返しストリップ線路型共
振器は、従来のような平面的にではなく、立体的に折り
返す恰好となるため、複数の共振器を主表面方向に複数
（間に結合用誘電体基板を介して）積層することにより
多段フィルタを構成する場合に、極めて小形化でき有利
である。

【００１４】

【実施例】図１は、本発明に係る折り返しストリップ線
路型誘電体共振器の一実施例を示す斜視図である。この
誘電体共振器は、平板状の誘電体基板１０を用い、その
両主表面を除き外周面（３面）に電極を形成してＵ型と
した外側電極１２と、該誘電体基板１０の内部に前記外
側電極１２と同じ向きでＵ型に形成した中間部電極１４
及び中央に形成した中央部電極１６を有し、それら各電
極１２，１４，１６をそれぞれ一端のみで該誘電体基板
の外周面上で短絡用電極１８によって短絡した構造であ
る。誘電体基板１０は、例えばチタン酸バリウム系な
ど、通常マイクロ波用フィルタ等に使用しているマイク
ロ波用高誘電率材料の焼結体である。各電極１２，…，
１８の形成は、導電性ペーストの塗布と焼付けによって
行う。なお図面を分かり易くするため、電極形成部に影
線を施し、無電極部分（誘電体の素地が露出している部
分）には細かな点々を付して表している。

【００１５】このような誘電体共振器は、具体的には、
例えば図２に示すような構成部品の組み合わせによって
製造できる。誘電体基板２０の一部に切り込み部２２を
設けて全体ほぼＵ型とし、そのＵ型の誘電体基板２０の
両主表面２４（ここでは誘電体基板２０の上下両面）及
び切り込み開口部両端面２５ａ，２５ｂのどちらか一方
（ここでは２５ｂ）を除く全外周部分（外側の面及び切
り込み部の内面）に電極２６を形成してＵ型共振器部と
する。それとは別体の２個の誘電体片２８ａ，２８ｂを
用意する。それらは接合した時に丁度前記誘電体基板２
０の切り込み部２２に収まるような形状とする。両誘電
体片２８ａ，２８ｂの接合面の一端から他端近傍（他端
までは達しない）までの部分的な中央部電極３０を形成
し、一方の誘電体片（ここでは２８ｂ）の一端面を除く
外周面に電極３２を形成して内部共振器部とする。そし
て、内部共振器部を前記Ｕ型共振器部の切り込み部２２
に無電極端面の部分を揃えて収容しガラス接着などによ
り一体化する。このとき、Ｕ型共振器部の切り込み開口
部端面２５ａの電極と誘電体片２８ａ端面の電極とを電
気的に導通させる。

【００１６】図３は、このような折り返しストリップ線
路型誘電体共振器に入出力結合電極を設ける場合を示し
ている。それには図１の基本構成において、無電極端面
１５近傍の外周部分に、独立した島状電極１９を形成す
ればよい。この島状電極１９は入出力結合電極として用
いることができる。その他の構成は、図１の実施例と同
様であってよいから、対応する部分に同一符号を付し、
それらについての説明は省略する。

【００１７】このような折り返しストリップ線路型誘電
体共振器は、結果的には、恰も細長い棒状の誘電体の両
外側と内側にＷ状に電極を形成したストリップ線路型１
／４波長共振器を、更に半分に折り返したものと見なす
ことができ、誘電体材料を効果的に利用して小形化した
ものとなる。

【００１８】上記の誘電体共振器は、先ずＵ型の誘電体
基板を成形して、その誘電体基板１枚ずつに電極を形成
し、別に作製した内部共振器を挿入する方法で製造して
もよいが、実際には図４に示すように、断面が上記共振
器構造をなしている長尺構造体４０を予め製造し、それ
を所定の厚みを有するように仮想線に示す位置ａ−ａで
細断する方法が望ましい。この方法よって、同一特性の
多数の誘電体共振器を容易に量産できる。前記の長尺構
造体４０は様々な方法で作製できる。例えば誘電体材料
からなる断面Ｕ型の長尺ブロックを用意して（予め断面
Ｕ型の長尺ブロックに成形し焼成するか、長尺ブロック
焼結体に切り込み溝加工を施すなど）、その外周の所定
の面、所定の位置に電極材を塗布して焼付ける。また内
部の長尺ブロックは、２枚の誘電体基板の所定の位置に
電極材を塗布して焼付け、それを貼り合わせる。そして
内部の長尺ブロックを断面Ｕ型の長尺ブロックに嵌め込
み一体化する。更に別の製造方法としては、５個の誘電
体基板をガラス接着剤などで貼り合わせることにより、
一度に所望の断面電極形状をもつ長尺構造体を作製する
方法などもある。

【００１９】図５は本発明に係る誘電体共振器の他の実
施例を示している。Ａに示すように島状電極１９を有す
る誘電体共振器５０（図３に示す構造の誘電体共振器）
の両主表面に、それぞれ別の誘電体基板５２ａ，５２ｂ
を配置し、Ｂに示すように接合して三層サンドイッチ構
造とする。外側に位置する誘電体基板５２ａ，５２ｂに
は、内側に位置する誘電体共振器５０の島状電極１９の
近傍を除く外周面と外側主表面に電極５４を設ける。従
って上側の誘電体基板５２ａは、上面が全面電極面で、
下面が無電極面（誘電体の素地が露出している面）であ
り、下側の誘電体基板５２ｂは逆に、上面が無電極面
で、下面が全面電極である。

【００２０】図５に示したのと同様の三層サンドイッチ
構造の誘電体共振器を試作し、そのフィルタ特性を測定
した。その結果を図６に示す。各誘電体基板は、縦（Ｕ
型の縦方向）約１０mm、横（Ｕ型基板の幅方向）約２．
８mm、Ｕ型切り込み部の深さ約９mm、厚さ約１mm程度の
大きさである。これによって中心周波数約５７６ＭHz
で、減衰量約３１ｄＢ程度の帯域阻止フィルタ特性が得
られた。

【００２１】

【発明の効果】本発明は上記のように、誘電体基板にＵ
型外側電極と、Ｕ型中間部電極及び中央部電極を形成
し、それぞれ一端のみで短絡した構造だから、結果的に
１／４波長共振器導体が折り返されて半分以下の長さに
なったことになり、大幅に小形化でき、しかもストリッ
プ線路型であるため効率も向上する。しかもこの折り返
しストリップ線路は、従来のような平面的にではなく、
立体的に折り返すため、複数の共振器を積層して多段フ
ィルタを構成する場合に、より一層小形化でき、実装す
る際に占有面積を小さく出来るため、機器の小形化に有
利である。更に本発明では、外側電極と島状電極（入出
力結合電極）が実装基板の回路パターンに面接合できる
ため、整合が取り易い利点もある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す斜視図。

【図２】その製作工程の一例を示す分解斜視図。

【図３】本発明の他の実施例を示す斜視図。

【図４】本発明の誘電体共振器の製造方法の一例を示す
斜視図。

【図５】本発明の他の実施例を示す斜視図。

【図６】本発明の誘電体共振器の特性測定線図。

【符号の説明】

１０ 誘電体基板 １２ 外側電極 １４ 中間部電極 １６ 中央部電極 １８ 短絡用電極

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 誘電体基板と、その両主表面を除き外周
   面にＵ型に形成した外側電極と、前記誘電体基板の内部
   にＵ型に形成した中間部電極及び中央に形成した中央部
   電極とを有し、それら各電極をそれぞれ一端のみで誘電
   体基板の外周面上で短絡したことを特徴とする折り返し
   ストリップ線路型誘電体共振器。
2. 【請求項２】 一部に切り込み部を形成して全体をほぼ
   Ｕ型とした誘電体基板の両主表面及び切り込み開口部両
   端面近傍のどちらか一方を除く外周部分に電極を形成し
   たＵ型共振器部と、それとは別体の誘電体片の外周面に
   Ｕ型電極を形成し中央の部分電極と一端のみで接続した
   内部共振器部とを備え、該内部共振器部を前記Ｕ型共振
   器部の切り込み部に無電極端面の部分を揃えて収容し一
   体化したことを特徴とする折り返しストリップ線路型誘
   電体共振器。
3. 【請求項３】 誘電体基板の無電極端面近傍の外周部分
   に独立した島状電極を形成し、その島状電極を入出力結
   合電極とする請求項１又は２記載の誘電体共振器。
4. 【請求項４】 請求項３記載の誘電体共振器の両主表面
   にそれぞれ別体の誘電体基板を接合して三層サンドイッ
   チ構造とし、外側に位置する誘電体基板は、内側に位置
   する誘電体共振器の島状電極近傍を除く外周部分と外側
   主表面に接地用電極を備えている折り返しストリップ線
   路型誘電体共振器。