JPH05167307A - 積層型誘電体フィルタ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ストリップ線路を立体的に折り返す構造にし
て全体を小形化し、実装基板の回路に組み込み易い構造
にする。 【構成】 折り返しストリップ線路型誘電体共振器基板
１０ａ，１０ｂ，１０ｃと結合調整用誘電体基板１２
ａ，１２ｂとを交互に厚み方向に積層する。更に厚み方
向の両側に位置する誘電体共振器基板１０ａ，１０ｂに
外側誘電体基板１４ａ，１４ｂを配置し、各誘電体基板
を位置決めして接着剤で一体化する。両端に位置する誘
電体共振器基板の無電極端面近傍の外周部分に独立した
島状電極１６ａ，１６ｂを設けて、それを入出力結合電
極とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、誘電体基板の外周部を
利用して立体的に折り返しストリップ線路を形成した誘
電体共振器基板を用い、複数の誘電体共振器基板を間に
結合調整用誘電体を挾むように厚み方向に積層し一体化
した積層型誘電体フィルタに関するものである。この誘
電体フィルタは、例えばマイクロ波用の各種無線機器な
どに好適である。

【０００２】

【従来の技術】マイクロ波用フィルタとして共振器をス
トリップ線路で構成する形式がある。例えば１／４波長
共振器の場合、誘電体基板上に直線状のストリップ線路
型の共振器導体を設け、その一端が開放となり、他端が
接地用電極に短絡されるように構成する。ここで共振器
導体は、共振波長の１／４波長の奇数倍の長さに設定さ
れる。実際のフィルタを構成する場合には、複数の上記
共振器導体を誘電体基板上に並べて短絡側を共通に接続
し、隣接する共振器導体の間隔はフィルタ特性に対応し
た結合強度となる所定の距離に定める。

【０００３】また１／２波長共振器では、誘電体基板上
に形成する共振器導体をヘアピン構造（Ｕ型構造）にす
る技術があり、フィルタを構成するには、複数のヘアピ
ン状共振器導体を互いに平行結合するように配置する。

【０００４】いずれにしても従来のストリップ線路型フ
ィルタでは、誘電体基板の表面に所定形状の共振器導体
が形成される。つまり共振器導体は平面的に配置され
る。例えば、誘電体基板上にスクリーン印刷法によって
所定形状に導電ペーストを付着させるか、あるいは誘電
体基板の表面に所定形状となるように電極形成部をやや
窪ませる加工を施し、その内部に導電ペーストを充填す
る。その後、誘電体基板を加熱処理して導電ペーストを
焼き付け、所望の電極パターンを形成する。また別の例
としては、２枚の誘電体基板の間に、予め打抜きあるい
はエッチングなどにより所定の形状に成形した薄肉導電
板（共振器導体）を挾み込むトリプレート構造もある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】これら従来のストリッ
プ線路型フィルタは、いずれにしても共振器導体が誘電
体基板上で平面的に配置されるため、面積的にはあまり
小形化できない。特に共振器導体を多段に接続してフィ
ルタを構成する場合は、高さ寸法は増大しなくても、ど
うしても平面的には大きくならざるを得ない。

【０００６】スクリーン印刷による共振器パターンの形
成は、一般に印刷精度が悪く、周波数及び結合が変化す
るため、トリミングが必要となる。また誘電体基板に凹
部を形成して導電材料を充填する場合は、不必要な部分
にまで導電材料が付着してしまうため、それを除去しな
ければならず、煩雑な作業が要求される。更にトリプレ
ート構造の場合は、導電板の存在によって、その厚み分
だけ両誘電体基板の間に隙間が生じるため、等価誘電率
が低下し、寸法をさほど小さくできない。また導電板の
厚みの部分の遮蔽対策も必要となる。

【０００７】本発明の目的は、上記のような従来技術の
欠点、即ちスクリーン印刷による電極寸法のばらつきの
問題、凹部への導電ペーストの塗布の困難性、及びトリ
プレート構造における導電板電極の厚みによる不具合を
解決でき、且つ多段フィルタを構成する場合に全体を小
形化でき、実装基板の回路に組み込み易い構造にできる
積層型誘電体フィルタを提供することである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、基本的には、
折り返しストリップ線路型の誘電体共振器基板と結合調
整用誘電体とを交互に厚み方向に積層して一体化する形
式の積層型誘電体フィルタである。ここで誘電体共振器
基板は、誘電体基板の両主表面を除く部分に折り返しス
トリップ線路を立体的に形成した構造である。また結合
調整用誘電体は外周部に電極を有する。前記の誘電体共
振器基板を複数枚、それらの間に結合調整用誘電体を挾
むように積層する。厚み方向の両側に位置する誘電体共
振器基板の更に外側に外側誘電体を設ける。この外側誘
電体は外側主表面と外周部に電極を形成した構造であ
る。そして両側に位置する誘電体共振器基板の外周部分
に独立した島状電極を形成し、該島状電極を入出力結合
電極とする。

【０００９】前記の折り返しストリップ線路型の誘電体
共振器基板としては、例えば一部に切り込み部を形成し
て全体をほぼＵ型とした誘電体基板の両主表面及び切り
込み開口部両端面近傍のどちらか一方を除く外周部分に
電極を形成した構造がある。別の例としては、誘電体基
板と、その両主表面を除き外周面にＵ型に形成した外側
電極と、前記誘電体基板の内部にＵ型に形成した中間部
電極及び中央に形成した中央部電極を有し、それら各電
極をそれぞれ一端のみで誘電体基板の外周面上で短絡し
た構造もある。結合調整用誘電体は、単純な平板状の誘
電体基板の他、誘電体基板の一部に開口部あるいは切り
込み部を形成して結合度を調整する構造もある。基板に
代えて非導電性接着剤を用いてもよい。

【００１０】

【作用】誘電体共振器基板は、誘電体基板の外周あるい
は外周及び内部にストリップ線路形式の電極を立体的に
折り曲げたかのような形状になっている。そして、その
外周面の一端で、無電極部分（電極を形成していない
方）が開放側、電極を形成している方が短絡側となる。
従って１／４波長ストリップ線路が折り返されることに
より半分以下の長さになり、誘電体共振器基板自体が大
幅に小形化される。それら誘電体共振器基板で挾まれる
結合調整用誘電体は、その厚み、開口部や切り込み部の
形状や位置等に応じて、隣接する共振器間での結合を調
整する。

【００１１】しかも上記の誘電体共振器基板では、スト
リップ線路を従来のように平面的にではなく立体的に折
り返すため、誘電体共振器基板を厚み方向に、間に結合
調整用誘電体基板を介して積層すると、所望段数の誘電
体フィルタを容易に製造でき且つ極めて小形化でき有利
である。

【００１２】

【実施例】図１は本発明に係る積層型誘電体フィルタの
一実施例を示す分解・組立斜視図であり、３段フィルタ
の例である。この積層型誘電体フィルタは、折り返しス
トリップ線路型の３枚の誘電体共振器基板１０ａ，１０
ｂ，１０ｃと、２枚の結合調整用誘電体基板１２ａ，１
２ｂとを、交互に厚み方向に積層する形式である。更に
厚み方向の両側に位置する誘電体共振器基板１０ａ，１
０ｂの外側に外側誘電体基板１４ａ，１４ｂを配置し、
各誘電体基板を位置決めして接着剤などで結合し一体化
する。両端に位置する誘電体共振器基板１０ａ，１０ｃ
の無電極端面近傍の外周部分には独立した島状電極１６
ａ，１６ｂを設けて、それを入出力結合電極とする。

【００１３】誘電体共振器基板１０ａ，…，１０ｃは、
両主表面を除く部分に折り返しストリップ線路を立体的
に形成した構造である。ここでは誘電体基板２０の一部
に切り込み部２２を形成して全体をほぼＵ型とし、その
両主表面（表裏両面）及び切り込み開口部両端面近傍の
どちらか一方を除く外周部分（外側の面及び切り込み部
の内面）に電極２４を形成したものである。開口部端面
の一方（無電極側）が開放側、他方（電極形成側）が短
絡側となる。また両側の誘電体共振器基板１０ａ，１０
ｂには島状電極１６ａ，１６ｂを設けるが、その場合は
誘電体基板の無電極端面近傍の外周部分に他の電極から
分離するように形成する。結合調整用誘電体基板１２
ａ，１２ｂは、誘電体基板２６の両主表面を除く外周部
（但し一部を除く）に電極２８を形成した構造である。
更に外側誘電体基板１４ａ，１４ｂは、誘電体基板３０
の外側主表面と外周部（但し一部を除く）に電極３２を
形成したものである。なお結合調整用誘電体基板１２
ａ，１２ｂ及び外側誘電体基板１４ａ，１４ｂの電極２
８，３２は、前記島状電極１６ａ，１６ｂに接続されな
いように、それらの近傍は無電極部とする。

【００１４】これらの誘電体基板は、例えばチタン酸バ
リウム系など、通常マイクロ波用フィルタに使用してい
るマイクロ波用高誘電率材料の焼結体である。各電極の
形成は、例えば導電性ペーストの塗布と焼付けによって
行う。なお図面を分かり易くするため、電極形成部分に
影線を施し、無電極部分（誘電体の素地が露出している
部分）には細かな点々を付して表している。誘電体基板
同士は接着剤などを用いて結合一体化する。

【００１５】上記のような折り返しストリップ線路型の
誘電体共振器基板は、結果的には、恰も細長い棒状の誘
電体の外表面にＵ型に電極を形成した１／４波長共振器
を、更に半分に折り返したものと見なすことができ、誘
電体材料を効果的に利用して小形化したものとなる。各
誘電体共振器は、間に位置する結合調整用の誘電体基板
によって段間の結合調整が行われ、それによって所望の
フィルタ特性が発現する。

【００１６】図２は、本発明で用いることのできる誘電
体共振器基板の他の実施例を示している。基板やそれに
形成する電極の形状などは、基本的には図１に示すもの
と同様であってよいから、説明を簡略化するため異なる
点についてのみ述べる。図２のＡに示す誘電体共振器基
板４０は、基板に形成する切り込み部４２の壁面を波形
に成形したものである。これによって波形にした分だけ
電極長さが増大し、より一層の小形化を図ることができ
る。また図２のＢに示す誘電体共振器基板４４は、切り
込み部内に別体の誘電体材料４６を充填した例である。
別体の誘電体材料４６は誘電体基板と同一材質でもよい
し別材質でもよい。これによってＱが増大し、機械的強
度も向上する。

【００１７】図３は本発明で用いることのできる結合調
整用誘電体基板の他の実施例を示している。図３のＡに
示す結合調整用誘電体基板４８は、基板の一部に切り込
み部５０を形成したものである。また図３のＢに示す結
合調整用誘電体基板５２は、基板の中央に開口部５４を
形成したものである。電極は各基板の外周部のみに形成
する（切り込み部や開口部には形成しない）。これら切
り込み部５０や開口部５４の形状の調整によって隣接す
る誘電体共振器間の結合度を調整し、フィルタ特性を制
御する。

【００１８】前記のような誘電体共振器基板は、先ずＵ
型の誘電体基板を成形して、その基板１枚ずつに電極を
形成する方法で製造してもよいが、誘電体材料からなる
断面Ｕ型の長尺ブロックを用意して（予め断面Ｕ型の長
尺ブロックに成形し焼成するか、長尺ブロック焼結体に
切り込み溝加工を施す）、その外周の所定の面、所定の
位置に電極を塗布して焼付け、それを所定の厚みで切断
する方法が望ましい。この方法よって、同一特性の多数
の誘電体共振器を容易に量産できる。また複数の板状あ
るいは棒状の誘電体長尺ブロックを貼り合わせてＵ型の
断面形状にし、それに電極を形成した後、細断する方法
でもよい。結合調整用誘電体基板についても同様の手法
で量産可能である。

【００１９】図４は本発明に係る積層型誘電体フィルタ
の他の実施例を示している。これも３段フィルタの例で
あり、誘電体共振器基板の部分を除けは基本的には前述
した図１と同様である。この積層型誘電体フィルタは、
折り返しストリップ線路型の誘電体共振器基板６０ａ，
…，６０ｃと結合調整用誘電体基板６２ａ，６２ｂとを
交互に厚み方向に積層する形式である。更に厚み方向両
側の誘電体共振器基板６０ａ，６０ｂに外側誘電体基板
６４ａ，６４ｂを配置し、各誘電体基板を位置決めして
接着剤で一体化する。外側の誘電体共振器基板６０ａ，
６０ｃの外周部分には独立した島状電極６６ａ，６６ｂ
を設けて入出力結合電極とする。

【００２０】ここで誘電体共振器基板６０ａ，…，６０
ｃは、一部に切り込み部を形成して全体をほぼＵ型とし
た誘電体基板６８の両主表面及び切り込み開口部両端面
近傍のどちらか一方を除く外周部分に電極７０を形成し
たＵ型共振器部と、それとは別体の誘電体片７２の外周
面にＵ型電極７４を形成し中央の部分電極７６と一端の
みで接続した内部共振器部とを備え、該内部共振器部を
前記Ｕ型共振器部の切り込み部に無電極端面の部分を揃
えて収容し一体化したものである。両側の誘電体共振器
基板６０ａ，６０ｂには島状電極６．ａ，６６ｂを設け
る。結合調整用誘電体基板は、図３に示すような構造で
あってもよい。

【００２１】通常、図５及び図６に示すように、積層型
誘電体フィルタ８０には金属製ケース８２を被せて回路
基板に実装する。金属製ケース８２は、少なくとも底面
が開口しており、底面の側部外向きに４個のアースタブ
８４を突設すると共に上面に貫通した長窓８６を設けた
ものである。島状電極１６ａ，１６ｂが底面で露出する
向きに積層型誘電体フィルタ８０を金属製ケース８２内
に装着し、長窓８６から半田を流し込んで両者の機械的
固定と電気的接続を行う。このような誘電体フィルタ製
品は回路基板上に面実装できる。回路基板上に乗せて島
状電極１６ａ，１６ｂを回路基板の入出力パターンに接
続すると共にアースタブ８４も回路基板のアースパター
ンに半田付けして電気的接続と機械的固定を行う。

【００２２】上記の各実施例は誘電体共振器基板を３枚
使用した３段フィルタであるが、本発明は２段あるいは
４段以上の多段誘電体フィルタにも適用できることは言
うまでもない。また結合調整用誘電体基板に代えて非導
電性接着剤を用いることもできる。その場合、接着層の
端面に導電性材料の膜を形成して、隣接する誘電体共振
器基板の電極との導通を図る。

【００２３】

【発明の効果】本発明は上記のように、誘電体基板の外
周あるいは外周と内部を使用して電極を形成し、一端の
みで短絡した構造のストリップ線路型誘電体共振器基板
を用いるから、結果的に１／４波長共振器導体が折り返
されて半分以下の長さになったことになり、大幅に小形
化できる。しかもこの折り返しストリップ線路は、従来
技術のような平面的にではなく立体的に折り返すため、
間に結合調整用誘電体を介して複数の誘電体共振器基板
を積層して誘電体フィルタを構成する時に、より一層小
形化でき、実装する際に占有面積を小さく出来るため、
機器の小形化に有利である。更に本発明では、外部電極
と島状電極（入出力結合電極）が実装基板の回路パター
ンに面接合できるため、整合が取り易い利点もある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す分解・組立斜視図。

【図２】本発明で用いる誘電体共振器基板の例を示す斜
視図。

【図３】本発明で用いる結合調整用誘電体基板の例を示
す斜視図。

【図４】本発明の他の実施例を示す分解・組立斜視図。

【図５】本発明の更に他の実施例を示す説明図。

【図６】図５に示す積層型誘電体フィルタの底面図。

【符号の説明】

１０ａ，１０ｂ，１０ｃ 誘電体共振器基板 １２ａ，１２ｂ 結合調整用誘電体基板 １４ａ，１４ｂ 外側誘電体基板 １６ａ，１６ｂ 島状電極

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 誘電体基板の両主表面を除く部分に折り
   返しストリップ線路を立体的に形成した複数枚の誘電体
   共振器基板を、それらの間に結合調整用誘電体を挾むよ
   うに積層し、その厚み方向の両側に位置する誘電体共振
   器基板の更に外側に外側誘電体を配置して一体化した構
   造をなし、前記の結合調整用誘電体は外周部に電極を有
   し、外側誘電体は外側主表面と外周部に電極を有してお
   り、両側に位置する誘電体共振器基板の外周部分に独立
   した島状電極を形成して、該島状電極を入出力結合電極
   とすることを特徴とする積層型誘電体フィルタ。
2. 【請求項２】 折り返しストリップ線路型の誘電体共振
   器基板は、一部に切り込み部を形成して全体をほぼＵ型
   とした誘電体基板の両主表面及び切り込み開口部両端面
   近傍のどちらか一方を除く外周部分に電極を形成した構
   造をなしている請求項１記載の誘電体フィルタ。
3. 【請求項３】 折り返しストリップ線路型の誘電体共振
   器基板は、誘電体基板と、その両主表面を除き外周面に
   Ｕ型に形成した外側電極と、前記誘電体基板の内部にＵ
   型に形成した中間部電極及び中央に形成した中央部電極
   を有し、それら各電極をそれぞれ一端のみで誘電体基板
   の外周面上で短絡した構造をなしている請求項１記載の
   誘電体フィルタ。
4. 【請求項４】 結合調整用誘電体は、誘電体基板の一部
   に開口部あるいは切り込み部を形成した構造をなしてい
   る請求項１記載の誘電体フィルタ。