JPH05110U - 医科歯科用ｘ線装置の頭部固定装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 頭部固定装置に患者の頭部を設定固定した後
Ｘ線撮影終了までの間頭部の揺動変位を極力少なくして
鮮明なＸ線画像を得る。 【構成】 頭部固定装置には、前頭部押えもしくはチン
レストのいずれか及び一対の対向する側頭部押え片と共
に、後頭部押え手段を設ける。後頭部押え手段は、当該
一対の対向する側頭部押え片の間に、伸縮性もしくは可
撓性のバンドを横架し、側頭部押え片に当該バンドを面
ファスナーで係止するか、又はバンドに点設された小孔
を側頭部押え片に突設した突起に係止して係止する。他
の後頭部押え手段は、側頭部押え片を支持する支持装置
の後部から後頭部押え片を垂設する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、パノラマＸ線撮影、セファロ撮影や顎関節撮影に使用される医科歯 科用Ｘ線装置の患者頭部の固定装置の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】

近年の医科歯科用Ｘ線装置は、患者の歯牙列の配列や歯根管部、顎関節、副鼻 孔などの状態を、歯牙列を展開した曲面断層画像により観察するのに、パノラマ Ｘ線撮影が広く利用されている。このＸ線装置では、Ｘ線源とフィルムホルダー とが対向して旋回アームの両端から懸垂され、Ｘ線源とフィルムホルダーとの間 に患者の頭部を静止状態に固定する頭部固定装置が設けられている。その頭部固 定装置は旋回アームを回動可能に枢着した昇降アームから当該旋回アームの旋回 部を貫通して設けられた支持装置に垂下固定する方式と、装置支柱に昇降可能に 設けられた支持装置に装着する方式のものとがある。

【０００３】 頭部固定装置は、Ｘ線撮影時間中、撮影の対象となる歯顎部を正確にフィルム 上に投影するために頭部を一時的に静止させるものであるが、従来のものは、昇 降アームから懸垂して固定する方式のものでは、支持装置から下方に支持された 前頭部押えと一対の対向する側頭部押え片とから構成されており、これらの押え 部材により患者頭部を挟んでその前後左右の移動を規制している。また、装置支 柱に昇降可能に設けられた支持装置を利用する方式のものでは、その支持装置か ら上方に突設された一対の側頭部押え片と下顎前部を固定するチンレストにより 頭部を固定している。

【０００４】 頭部固定装置は、装置支柱に対して昇降可能に設けられた水平アームの先端に 専用に設けられて、セファロ撮影や顎関節撮影にも使用されるが、この場合には 、Ｘ線装置にたいして、両顎部を正確に位置づけする必要があり、さらに頭部の 上下前後移動を規制するために、側頭部押え片の端部側に頭部耳孔に係合する突 起部が設けられている。

【０００５】

【考案が解決しょうとする課題】

これらの頭部固定装置では、撮影に先立って、患者頭部を挟接する上記押え部 材の移動を微調整して、患者頭部を正確に位置づけして後撮影を行う。前頭部押 えあるいはチンレストにより頭部の前方への変位を規制し、また一対の側頭部押 え片により頭部の両側頭部の左右への変位を規制するのである。 しかしながら、従来の頭部固定装置では頭部の後方への移動が規制できないも ので、頭部の微小な回動その他揺動も阻止し得ず、矯正治療のために数回の撮影 を行うセファロ撮影や顎関節撮影においては、撮影時の患者の姿勢の再現性が重 要であるが、充分な再現性が得られなかったり、撮影開始までに頭部の設定位置 がずれてしまう欠点があった。また撮影時間の長いパノラマ撮影では、撮影中に 頭部が装置に対して動いてしまってブレを生じやすいので展開画像が不鮮明とな り、また不正確となり易いという問題があった。

【０００６】 また、セファロ撮影や顎関節撮影に使用されるＸ線装置に側頭部に耳孔用突起 部を設けた場合でも、なお頭部の微小な変位は避けられず、精密な咬合調整に誤 差を生ずる原因となりうるものであった。

【０００７】 本考案は、頭部固定装置に患者の頭部を設定固定した後Ｘ線撮影終了までの間 、頭部の揺動変位を極力少なくして鮮明なＸ線画像を得ることを目的としてなさ れたものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

本考案の医科歯科用Ｘ線装置の頭部固定装置は、Ｘ線装置に昇降可能に設けら れた支持装置と、当該支持装置に水平方向移動調整可能に支持されて突設された 前頭部押えもしくはチンレストのいずれか及び一対の対向する側頭部押え片と、 後頭部押え手段と、から成る頭部固定装置である。

【０００９】 本考案の頭部固定装置は、Ｘ線源とフィルムホルダーとを懸架する旋回アーム 直下で、その旋回軸近傍に配置されるが、その旋回アームを支持する昇降アーム から下方に固定されるものでもよく、またＸ線装置の支柱に昇降可能に横設され た下部支持装置に配置されるものでもよい。

【００１０】 当該後頭部押え手段としては、当該支持装置の後部において後方より下側前方 に付勢するように回動可能に突設された突片を利用することができ、他の手段と して、当該支持装置の後部側方に垂設された回動可能な棒状部材の先側に後方よ り前方に付勢するように横設された突片を利用することができる。

【００１１】 最も簡単な後頭部押え手段は、当該一対の対向する側頭部押え片の間に横架さ れた伸縮性もしくは可撓性のバンドを利用するものである。 さらに、当該後頭部押え手段が、当該一対の対向する各側頭部押え片の先側に 後方に向けて横設された突片であって、当該突片が各々対向する側に曲げられて なるものも使用される。

【００１２】 本考案の頭部固定装置には、当該側頭部押え片にその先端部近傍に耳孔係合用 突起部が形成されているものが含まれる。

【００１３】

【実施例】

本考案の実施例を、図面に基き説明する。 図１は、セファロ撮影兼用の歯科用パノラマＸ線撮影装置の正面図であるが、 このＸ線装置は、その垂直支柱５０に昇降アーム５１が前方に突出するように支 持され、昇降アーム５１の前方の端部下面には、回動駆動機構を介して旋回アー ム５２が支持されており、その旋回アームの両端からはＸ線源５４とフイルムホ ルダー５３が懸架されている。旋回アーム５２の旋回中心部下側には、昇降アー ム５１から旋回アーム５２を貫通して固定支持された支持装置５が設けられ、こ の支持装置５から一対の側頭部押え片２１，２２と前頭部押え３が下方に突設さ れて、パノラマＸ線撮影用の頭部固定装置を形成している。

【００１４】 また、垂直支柱５０に添設され昇降アーム５１と連動する垂直部材５５から突 設された下部支持装置４１には、下顎前部受け即ちチンレスト４が立設されてい る。 このような前頭部押え３及びチンレスト４は前後移動と上下移動の調整が可能 に支持されており、また、一対の側頭部押え片２１，２２は、左右移動の調整を して、相互間隔を調整することができるように支持装置５に摺動機構を備えてい る。

【００１５】 また、上記の下部支持台４１にチンレスト４とともに、一対の側頭部押え片を 垂設して成る頭部固定装置もある。

【００１６】 以上のパノラマ撮影用の頭部固定装置を使用して、顎関節撮影を行うことがで きる。

【００１７】 また、セファロ撮影用頭部固定装置は、Ｘ線装置に昇降可能に設けられた垂直 部材５５に固定された水平アーム５６の先端に取着された支持装置５７に設けら れる。

【００１８】 図２は、本考案の実施例を示した頭部固定装置のみの斜視図である。支持装置 ５から横方向の移動調整可能に、一対の側頭部押え２１，２２が垂設されている が、後頭部押え手段として、伸縮性のバンド１１をその側頭部押え２１，２２の 間に横設するもので、伸縮性のバンド１１と側頭部押え２１，２２とは面ファス ナー１８でもって着脱可能に貼設するものである。バンド１１は、帯状の軟質ゴ ム材や、ゴム糸編成布が使用される。

【００１９】 面ファスナー１８は、側頭部押え２１，２２のいずれか一方に設けて、当該バ ンド１１の一端が固定されていてもよく、また、図４のように、一対のバンド１ １の両端を当該側頭部押え２１，２２にそれぞれ固定し、その両他端を後方で面 ファスナーにより面着してもよい。

【００２０】 撮影時に使用するには、支持装置５を調整して、患者頭部の額に前頭部押え３ を当接し、次いで、側頭部押え２１，２２の内側の面を側頭部両側に当接して、 患者歯顎部を所定位置に固定すると共に、当該バンド１１を後頭部に回して、緊 張しながら、面ファスナー１８でもって、側頭部押え２１，２２に面着固定する 。患者の後頭部はその伸縮性のバンドが面接してその収縮力により前方に押圧さ れるので、患者頭部は前頭部押え３により前後方向が固定されて、頭部の揺動が 阻止される。

【００２１】 図３には、可撓性のバンド１４の一端を側頭部押え２１，２２のいずれかに固 定し、他端側には小孔６１をその長手方向に点設し、他方の側頭部押え２１，２ ２の側面に設けられた係止用突起６２を適当な当該小孔６１に貫入して、側頭部 押え２１，２２に可撓性のバンド１４の他端部を係止して、バンド１４を側頭部 押え２１，２２間に横設する方式の後頭部押え手段を示している。 可撓性のバンドには、軟質の合成樹脂や合成皮革の帯状体を利用することがで きる。

【００２２】 使用に際しては、患者の歯顎部が所定の位置になるように頭部を設定し、当該 可撓性のバンドを後頭部に締めつけることにより、頭部を前後方向に移動不能に 固定することができる。

【００２３】 図４は、可撓性のバンド１４を２片を用いて、各片の端部をそれぞれ側頭部押 え２１，２２に接着し、他端側には、一片については小孔６１を点設し、他片に は係止用突起６２を設け、後頭部で両片を係止接合するものを示している。

【００２４】 図５に示す後頭部押え手段は、側頭部押え２１，２２の端部近傍に、後方に突 出する弾性突片１２，１２を設け、当該突片の先側を対向方向に湾曲させて、後 頭部押え手段とするものである。これらの突片が患者の後頭部を挟接すると、前 方に付勢力を及ぼすので、頭部の動揺を阻止することができる。

【００２５】 図６は、支持装置５の後部に回動可能に一端が枢支された押え片１５をもって 患者後頭部を前方に押圧する後頭部押え手段を示している。この後頭部押え片１ ５は、使用前には後方上部に撥ね上げられており、この頭部固定装置への頭部の 移動や設定の際に邪魔にならないようにされている。また、使用時に下方前方に 押し下げれば前方への付勢力を及ぼす。

【００２６】 その支持部の構造は、図７に示す。支持装置５の内部で、仕切り板７２に左右 方向に貫通配置して固定された中空状の軸受６１に回動可能に貫通した軸６の先 端に後頭部押え片１５が取着されており、当該軸の先端には、軸芯に対して反対 方向に延びるアーム６２が取着され、当該アーム６２の先側にピン６３が突設さ れている。また、当該軸の端面より先方には、他の仕切板７１に他のピン６５が 突設されており、当該ピン６５は、当該軸６の軸芯からの鉛直線に対して後方約 ４５゜の角度の位置に配置されており、当該ピン６３，６５の間には、コイルバ ネ６４が緊張状態で張架されている。

【００２７】 図７は後頭部押え片１５が垂下している状態を示しており、コイルバネ６４に よるアーム６５の後方への引張りによって、後頭部押え片１７の先側は、前方へ 付勢するので、患者の後頭部を前方へ押圧することになる。 当該後頭部抑え片１５を後ろ上方へ撥ね上げれば、当該アーム６２の前側下方 に回動して、当該コイルバネ６４は、軸芯を交叉して軸芯より下方に位置するの で、当該コイルバネ６４の引張りにより当該後頭部抑え片１５を後ろ上方へ付勢 する。この際、支持装置５の容器に設けた後頭部抑え片１５通過用のスロット７ ３の終端部で、当該後頭部抑え片１５は停止される。また当該後頭部抑え片１５ の軸６の回動操作は、当該軸６の他端側に取着されたハンドル６６によりなされ る。

【００２８】 図８（Ａ）の後頭部押え手段は、支持装置５の後部側方から回動可能に垂設さ れた棒状部材１８の下側に押え片１７，１７’が横設されており、この押え片１ ７，１７’により患者の後頭部を押圧するものである。使用前には、この後頭部 押え片１７，１７’は、後側に引き止められており、使用時には、この後頭部押 え片１７，１７’を前側に押し出せば前方へ付勢力を付与する。

【００２９】 当該棒状部材１８の回動係止機構は、図８（Ｂ）に示すように、棒状部材１８ の上端が支持装置５の底部に固定された軸受６１を介在して、支持装置５の内部 に回動可能に軸支され、その先端に取着されたアーム６２の先側のピン６３と支 持装置５の底部から突設されたピン６５との間にコイルバネ６４が緊張状態で張 架され、図７において説明したのと同様に、後頭部抑え片１７，１７’を前方に 付勢して、患者の後頭部を前方に押圧する。また、後頭部抑え片１７，１７’が 後方に引き止められている場合は、支持装置５の底部から突設された係止ピン６ ８に、当該アーム６２の側部が当接して、その回転が停止される。後頭部抑え片 １７，１７’の回動操作は、当該棒状部材１８に横設されているハンドル６６に より行われる。

【００３０】 本考案の後頭部押え手段は、頭部を前方に付勢力を及ぼすものであり、この付 勢力を当該頭部固定装置の前側に設けた前頭部受け３によって支持することによ り頭部の動揺を抑制して、Ｘ線装置に対して正確に位置付けられた頭部の位置を 保持するが、前頭部受け３に代えて又は共用して、チンレスト４により前顎下部 を固定するようにしてもよい。また、上記の側頭部押え片２１，２２の下端に耳 孔係合用の突起を使用すれば、頭部保持機能は一層精度のよいものになる。

【００３１】 上記実施例は、専ら旋回アームの旋回軸直下に設けた頭部固定装置に適用する ものを示したが、これらの後頭部押え手段は、Ｘ線装置の支柱に昇降可能に設け られた下部支持装置４１から側頭部押え片２１，２２が立設される頭部固定装置 に適用することも可能である。一例として、図９は、当該側頭部押え片２１，２ ２の上部に、伸縮性バンド１１を横設して、面ファスナーにより側頭部押え片２ １，２２に着脱自在に面着するものを示している。

【００３２】 さらに、図３と４に示した可撓性バンドや図５の側頭部押え片２１，２２の端 部近傍から後方に突設した弾性突片を利用して後頭部押え手段とすることも可能 である。

【００３３】

【作用及び効果】

後頭部押え手段を有する本考案の頭部固定装置は、頭部の左右の変動を側頭部 押え片に挟持されて規制され、その前後の変動は当該後頭部押え手段と前頭部押 え又はチンレストのいずれかとの間で押圧されて規制されるので、Ｘ線撮影終了 まで、患者の頭部のＸ線装置に対する位置は設定のまま正確に保持される。そこ で頭部の揺動によるＸ線画像のブレなど不鮮明・不正確になることはほぼ完全に 防止することができ、再現性のよいＸ線撮影ができる。

【００３４】 特に、伸縮性の帯状のバンドや可撓性バンドを一対の側頭部押え片の間で、頭 部後側を締め付ける構造のものは、極めて安価に容易に成しえて、且つ頭部の不 意の回動による頭部の変位を阻止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】セファロ撮影兼用の歯科用パノラマＸ線撮影装
置の正面図。

【図２】側頭部押え片に横設した伸縮性のバンドによる
後頭部押え手段を有する頭部固定装置の斜視図。

【図３】可撓性のバンドによる場合の図１同様図。

【図４】可撓性のバンドによる場合の図１同様図。

【図５】側頭部押え下方に横設した弾性突片による場合
の図１同様図。

【図６】上下に回動する後頭部押え片を有する頭部固定
装置の斜視図。

【図７】上下に回動する後頭部押え片の支持装置内の構
造の斜視図。

【図８】後頭部押え片を棒状部材の回動可能に取り付け
た場合の図６同様図（Ａ）とその棒状部材の回動係止機
構の上面図（Ｂ）。

【図９】下方より立設された側頭部押え片に伸縮性のバ
ンドを横設してなる後頭部押え手段を有する頭部固定装
置の斜視図。

【符号の簡単な説明】

１ 後頭部押え手段 １１ 伸縮性のバンド １２ 弾性突片 １５ 後頭部押え片 １７ 後頭部押え片 １８ 面ファスナー ２１ 側頭部押え片 ２２ 側頭部押え片 ３ 前頭部押え ４ チンレスト ４１ 下部支持装置 ５ 支持装置

Claims (6)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 医科歯科用Ｘ線装置の頭部固定装置にお
   いて、Ｘ線装置に昇降可能に設けられた支持装置と、当
   該支持装置に水平方向移動調整可能に支持されて突設さ
   れた前頭部押えもしくはチンレストのいずれか及び一対
   の対向する側頭部押え片と、後頭部押え手段と、から成
   る医科歯科用Ｘ線装置の頭部固定装置。
2. 【請求項２】 当該後頭部押え手段が、当該支持装置の
   後部において後方より前方に付勢するように回動可能に
   突設された突片により成る請求項１記載の頭部固定装
   置。
3. 【請求項３】 当該後頭部押え手段が、当該支持装置の
   後部側方に垂設された回動可能な棒状部材の先側に後方
   より前方に付勢するように横設された突片により成る請
   求項１記載の頭部固定装置。
4. 【請求項４】 当該後頭部押え手段が、当該一対の対向
   する側頭部押え片の間に横架された伸縮性もしくは可撓
   性のバンドである請求項１記載の頭部固定装置。
5. 【請求項５】当該後頭部押え手段が、当該一対の対向す
   る各側頭部押え片の先側に後方に向けて横設された突片
   であって、当該突片が各々対向する側に曲げられてなる
   請求項１記載の頭部固定装置。
6. 【請求項６】 当該側頭部押え片には、その先端部近傍
   に耳孔係合用突起部が形成されている請求項１記載の頭
   部固定装置。