JPH05110283A - プラスチツク筐体及びその成形方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】電磁波シールド用プラスチック筐体において、
外観を良好にし、電磁波シールド効果を上げるために、
磁性を有する融点の低い高透磁率物質をプラスチック筐
体の内面部に偏在させる。 【構成】磁性を有する融点の低い高透磁率物質を混入し
た溶融プラスチックを成形具に注入し、電磁波シールド
用プラスチック筐体を成形する方法において、プラスチ
ック筐体の内面部を形成する内面成形具に、温度調整装
置および磁場発生装置を埋設し、該内面成形具に高温と
磁場を発生させながらプラスチック筐体を成形する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は電磁波シールド用プラス
チック筐体及びその成形方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、電子機器の急速な普及に伴い、そ
れら機器より放射される高周波の電磁波ノイズが問題視
されるようになってきた。ところでこのような電磁波ノ
イズを防ぐ方法としては、前記電子機器の周囲を導電性
をもつ材質からなる筐体例えば金属でできた筐体、ある
いはプラスチック筐体の内面に金属溶射、金属メッキ、
導電性塗料などを施したもので遮蔽するのが良い。また
プラスチック中に金属繊維等の導電性混合物を混入し筐
体を成形する方法などもある。

【０００３】この種のものとして、例えば、特開平２−
１５８２００号公報がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら金属筐体
は電磁波シールド効果において優れているもの加工性に
劣り、重量の点においても問題がある。また溶接や外面
塗装などの後工程が必要である。次にプラスチック筐体
の内面に金属溶射、金属メッキ、導電性塗料等の導電性
加工を施す方法については、作業環境の点、経時的に剥
離を起す恐れがある点、及びマスキングなどの複雑な処
理を必要とする点などに問題がある。そこでプラスチッ
ク中に導電性混合物を混入して筐体を成形する方法が発
明されたが、導電性混合物が暗色限定されるため、筐体
を自由に着色することができず成形後外面塗装をする必
要がある、外観が悪くなるなどの恐れが生じる。また、
導電性混合物が酸化しやすい物質の場合には、電磁波シ
ールド特性の劣化も考えられる。導電性混合を混入して
成形したプラスチック筐体の外面にさらに普通のプラス
チック筐体を二層成形する方法もあるが、この場合成型
金型が２組必要となるとともに、成型工程も２回になる
ためコスト高となるといった問題点があった。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は上記の問題点を
解決するためになされたもので、第１の発明は、磁性を
有する融点の低い高透磁率物質がプラスチック筐体の内
面部に偏在していることを特徴とし、第２の発明は磁性
を有する融点の低い高透磁率物質を混入した溶融プラス
チックを成形具に注入し、電磁シールド用プラスチック
筐体を成形する方法において、プラスチック筐体の内面
部を形成する内面成形具の内部に温度調整装置と磁場発
生装置を埋設し、該内面成形具の周囲に高温と磁場を発
生させながらプラスチック筐体を成形することを特徴と
するものである。

【０００６】以下本発明を図１ないし図３に基づいて説
明する。図１及び図２はそれぞれ本発明の電磁シールド
用プラスチック筐体の斜視図及び断面図で、融点の低い
高透磁率物質８がプラスチック筐体１０の内面部９に偏
在しているようすを示している。次に本発明の成形方法
について説明する。図３は本発明の電磁波シールド用プ
ラスチック筐体を成形するための射出成形装置の概略図
であり、ホッパー６から融点の低い高透磁率物質８を含
んだプラスチックを供給し、シリンダ７内のスクリュー
５により溶融撹拌した後、スプール２から外面成形具la
内のキャビティー３に射出しつつ、内面成形具lb内に埋
設された磁場発生装置４を駆動して、前記内面成形具lb
の周囲に高温と磁場を発生させ、融点の低い高透磁率物
質８を内面成形具lb側に偏在させた後に固化させる。本
発明に使用される融点の低い高透磁率物質混入プラスチ
ックのマトリックス樹脂としては熱可塑性樹脂であれば
制限はなく、例えばＡＢＳ、ポリスチレン、ポリカーボ
ネート、変性ＰＰＯ、ＰＢＴ、ＰＰ等が挙げられる。融
点の低い高透磁率物質は低融点フェライト等の磁性物質
の繊維状、粉末状、フレーク状のものなどが望ましい。

【０００７】温度調整装置としては従来から世の中で使
用されている、金型に適当な温度を発生させることが可
能な装置などで良い。磁場発生装置としては従来から世
の中で使用されている、適当な磁場の発生が可能な電磁
石あるいは永久磁石などで良い。

【０００８】

【作用】外面成形具la、内面成形具lb内に溶融注入され
たプラスチック中に含まれている融点の低い高透磁率物
質８が、内面成形具lb内に埋設された温度調整装置と磁
場発生装置４から発生する高温と磁場により引きつけら
れ、該内面成形具側に適当な分布をもって偏在する。従
って得られた成形品の外面部に融点の低い高透磁率物質
が浮き出ることがない。なお射出成形の他にも押出成形
やプレス成形あるいは圧空成形などにも本発明は同様に
適用できる。

【０００９】

【実施例】次に高透磁率物質としてフェライトの粒子を
用い、マトリックス樹脂として、ＡＢＳ樹脂を用いて、
本発明の成形方法で得られた電磁シールド用プラスチッ
ク筐体(外寸３０cm×３０cm×３０cm、肉厚３mm)を供試
物１６として、その電磁波シールド特性を第４図に示す
ような実験装置を用いて測定した。同図に示すように供
試物１６内に、エレメント部１０cmとなるような５Ｄ−
２Ｗ同軸ケーブルの中心導体を垂直に立て、放射アンテ
ナ１１として用いた。この放射アンテナは供試物１６の
下にアルミ板(４０cm×４０cm、厚さ２mm)のグランドプ
レーン１２を設けその中央に取付けた。受信アンテナ１
３にはダイポールアンテナを用い、周波数(８０〜６０
０MHz)に応じてアンテナ素子を交換するものである。ま
た測定のためのダイナミックレンジを広くとるために２
０dBゲインのブリアンプ１４を電界強度測定器１５のま
えに装着した。該測定器５とのアッテネーションは電界
強度測定器内蔵のアッテネータで行なった。供試物１６
とグランドプレーン１２との接触状況はシールド効果に
大きな影響を及ぼすので、供試物１６側にシールドメッ
シュを施し上部から木製重りを載せた。なお放射アンテ
ナ１１への信号は信号発生器１７から送られる。以上の
ような実験装置を用い、放射アンテナの電力１６dBｍで
周波数１００MHz、２５０MHzの場合について、放射アン
テナ上に供試物を履せない時と履せた時の、電界強度測
定機で測定した受信電界値の差をもってシールド効果と
し、その結果を表１に示した。また比較例として、供試
物が融点の低い非導電製混合物をプラスチック筐体の内
面部に偏在させないものの場合について実施例と同様に
測定し表１に併記した。

【００１０】この結果より融点の低い高透磁率物質をプ
ラスチック筐体の内面部に偏在させた方がシールド効果
が高いことがわかった。

【００１１】

【表１】

【００１２】

【発明の効果】以上説明したように本発明の電磁波シー
ルド用プラスチック筐体は充分なシールド効果特性を有
し、さらにその成形方法は筐体の内面部を形成する内面
成形具の内部に温度調整発生装置と磁場発生装置を埋設
し、該内面成形具の周囲に高温と磁場を発生させながら
プラスチック筐体を成形するため、容易に融点の低い高
透磁率物質を偏在させたものを構成することができる効
果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の電磁シールド用プラスチッ
ク筐体の斜視図である。

【図２】同断面図である。

【図３】本発明の一実施例において使用する電磁シール
ド用プラスチック筐体の成形装置を示す図である。

【図４】電磁波シールド用プラスチック筐体のシールド
効果の測定装置を示す図である。

【符号の説明】

ｌａ…外面成形具、 ｌｂ…内面成形具、 ２…スプール、 ３…キャピティー、 ４…温度調整装置と磁場発生装置、 ５…スクリュー、 ６…ホッパー、 ７…シリンダ、 ８…融点の低い高透磁率物質、 ９…内面部、 １０…電磁波シールド用プラスチック筐体。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】磁性を有する融点の低い高透磁率物質がプ
   ラスチック筐体の内面部に偏在していることを特徴とす
   るプラスチック筐体。
2. 【請求項２】磁性を有する融点の低い高透磁率物質を混
   入した溶融プラスチックを成形具に注入し、電磁波シー
   ルド用プラスチック筐体を成形する方法において、プラ
   スチック筐体の内面部を形成する内面成形具に温度調整
   装置および磁場発生装置を埋設し、該内面成形具に高温
   と磁場を発生させながらプラスチック筐体を成形するこ
   とを特徴とするプラスチック筐体の成形法。