JPH0468066B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、走行ベルト上で溶融金属を冷却・凝
固することにより、鋼帯等の金属薄帯を連続的に
製造する装置に関する。

〔従来の技術〕

最近、溶鋼等の溶融金属から最終形状に近い数
mm〜数十mm程度の厚みをもつ薄帯を直接的に製造
する連続鋳造方法が注目されている。この方法に
よるとき熱延工程を必要としなかつたり、あるい
は大幅に簡易化でき、工程及び設備の簡略化が図
られる。

この連続鋳造方法の一つとして、単ベルト方式
がある。この方式においては、たとえば無端走行
するベルトの上に湯溜り部を形成し、ここに注湯
された溶融金属をベルトを介した抜熱によつて冷
却・凝固し、生成したシエルをベルトの走行に伴
つて湯溜り部から送り出し、金属薄帯を製造して
いる。この単ベルト方式によるとき、溶融金属
は、一方向から冷却され、ベルトと反対側の面は
開放されている。そのため、タンデイシユ等の容
器から溶融金属をベルト上の湯溜り部に供給する
ノズルの配置に対する制約が双ベルト方式や双ド
ラム方式に比べて少なくなる。

本発明者等は、この単ベルト方式において、湯
溜り部の側面を仕切る堰を移動可能にした鋳造装
置を開発し、これを特開昭62−16851号公報に開
示した。

第２図は、この先願で提案された装置を示す。
この装置においては、金属製のベルト１が一対の
プーリ２ａ，２ｂに掛け渡されており、無限軌道
を走行するようになつている。そして、一方のプ
ーリ２ａを高く保持することにより、ベルト１の
無限軌道は、プーリ２ａに向かつて上昇するもの
となる。このベルト１の周囲には、チエーン等に
よつて連結した複数の耐熱ブロツク３が配置さ
れ、これら耐熱ブロツク３は、ベルト１の走行に
同期して移動する。

耐熱ブロツク３は、ベルト１が直線状に走行す
る上側部分で湯溜り部４の側部を仕切るサイド堰
５となる。他方、湯溜り部４の後方端には、固定
堰６が設けられている。これによつて、ベルト１
の進行方向のみが開放された湯溜り部４が形成さ
れる。この湯溜り部４に、注湯装置７から溶融金
属８が注湯される。

注湯された溶融金属８は、ベルト１の裏面に配
置されている冷却装置９により抜熱され、冷却・
凝固して凝固シエル１０となる。この凝固シエル
１０は、ベルト１の移動に伴つて、第２図の右方
向に搬送される。この搬送の過程でも抜熱が継続
して行われるので、凝固シエル１０は所定の厚み
をもつ薄帯１１に成長し、湯溜り部４から送り出
される。

この薄帯１１は、次いで加圧ロール１２によつ
て目標板厚に圧延され、巻取り装置１３によつて
薄板コイル１４として巻き取られる。なお、加圧
ロール１２は、本質的な板厚変動を伴う必要はな
く、薄帯１１の表面性状を整えるような加工を行
うものとして、作動させることもできる。

〔発明が解決しようとする問題点〕

この形式の装置により厚肉の薄帯１１を製造し
ようとすると、湯溜り部４において凝固シエル１
０の成長を充分に行わせる必要がある。そこで、
湯溜り部４の鋳造方向に沿つた長さを大きくとる
ことによつて、凝固シエル１０の成長に必要な時
間を確保する方法が採用される。

しかし、湯溜り部４の長さを大きくとるとき、
必然的に湯面の面積が広がる。そのため、この湯
面を介した放熱が問題となつてくる。たとえば、
その放熱により、湯溜り部４の表面に溶融金属が
凝固した薄膜が形成され、これが本来の凝固シエ
ル１０と共に湯溜り部４から搬出されることによ
つて、薄帯１１の表面に薄膜が付着したものが得
られる。それによつて、薄帯１１に皺が発生し、
また表面層が剥離し易いものとなる。しかも、湯
面の面積が広がつたことにより、その薄膜が外気
と接触する時間が長くなり、一部酸化された状態
になる。このように酸化された薄膜が薄帯１１の
表面に付着すると、製品の表面性状が著しく劣化
する。

こうした湯溜り部４にある溶融金属の温度低下
や酸化は、湯溜り部４を長くとる場合に顕著に現
れるものである。しかし、これらの温度低下や酸
化は、湯溜り部４の長さを特別長くとらない通常
の設計仕様においても同様に生じ、製品の品質を
低下させる原因となる。

そこで、本発明は、この湯溜り部における溶融
金属の温度低下及び酸化を防止することにより、
優れた品質の金属薄帯の製造を可能とする連続鋳
造装置を提供することを目的とする。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明の連続鋳造装置は、走行するベルト上に
形成された湯溜り部の後端側を固定堰で仕切り、
前記湯溜り部から凝固シエルが搬出される先端位
置よりも前記固定堰側の位置に、成長する凝固シ
エルに接触しないように底部が開放された表面仕
切り堰を配置し、前記固定堰から該表面仕切り堰
までの間にある湯溜り部に表面保護剤を散布する
ノズルを臨ませるとともに、溶融金属注入流の位
置を囲むように該表面保護剤の巻き込み防止堰を
配設したことを特徴とする。

〔作用〕

湯溜り部に散布された表面保護剤は、表面保護
膜となつて湯溜り部の表面に浮遊する。この表面
保護膜によつて、湯溜り部にある溶融金属の外気
による冷却が緩和され、凝固した薄膜が湯面に生
成することがない。また、溶融金属が外気に接触
することがないため、湯面の酸化が防止される。
その結果、湯溜り部から搬出される凝固シエルに
これらの薄膜や酸化物の随伴がないので、得られ
た薄帯の表面性状は優れたものとなる。また、表
面保護膜は、湯溜り部の温度変化に与える外乱の
影響を少なくするので、金属薄帯の生成・成長段
階が安定した条件の下で行われる。

〔実施例〕

以下、図面を参照しながら、実施例により本発
明の特徴を具体的に説明する。

第１図は、本実施例である連続鋳造装置の要部
を示す。なお、同図において、第２図で示した部
材等に対応するものは、同一の符番で指示し、そ
の説明を省略した。また、基本的には第２図の装
置と共通する構造をもつものであるから、以下に
おいては、第２図の符番を適宜使用して説明して
いる。

この装置においても、ベルト１はプーリ２ａ，
２ｂの間に張設されている。そして、ベルト１の
搬送径路の途中に固定堰６を設け、この固定堰６
と移動式のサイド堰５（第２図参照）とによつて
湯溜り部４を形成している。この湯溜り部４に対
して、注湯装置７から溶融金属８が注湯される。
注湯された溶融金属８は、ベルト１を介した抜熱
により凝固シエル１０となつて、ベルト１の走行
に伴つて湯溜り部４から搬出される。第１図にお
いて、符番１５で示した個所が、湯溜り部４から
凝固シエル１０が引き出される位置である。

この凝固シエル１０の引出し位置１５から所定
の間隔をもつて、表面仕切り堰１６が配置されて
いる。この表面仕切り堰１６は、湯溜り部４の表
層部だけを仕切るものであり、成長しつつある凝
固シエル１０とは接触しない。したがつて、湯溜
り部４の内部は固定堰６から凝固シエル１０の引
出し位置１５まで連続して溶融金属が存在してい
る。そして、固定堰６から表面仕切り堰１６まで
にある湯溜り部４の表面に臨むように、ノズル１
７が配置されている。このノズル１７から散布さ
れた表面保護剤１８は、固定堰６から表面仕切り
堰１６までの湯溜り部４の表面に表面保護膜１９
となつて広がる。また、溶融金属８の注入流落下
位置を囲むごとく巻き込み防止堰２０が配設され
ており、注入流の擾乱の伝播を堰止め、表面保護
剤またはその溶融物が溶鋼中に巻き込まれ、鋳片
中に非金属介在物として残存するのを防止してい
る。

表面保護剤１８としては、アルミナ、シリカ、
カルシア、カーボン等の断熱性に優れた耐火材粉
末の混合物が使用される。この表面保護膜１９に
より、湯溜り部４が外気に直接触れることがなく
なるため、外気による冷却及び酸化反応が抑制さ
れる。

表面保護剤１８の散布量は、湯溜り部４の単位
表面積当たり１〜10g/cm²とすることが好ましい。
この散布量が１g/cm²より少ないときには、表面
保護膜１９の厚みが薄くなりすぎ、所期の効果が
発揮されない。他方、散布量が10g/cm²を越える
と、表面保護剤１８の使用量が無駄に増えるばか
りでなく、表面保護剤１８の溶融物が溶鋼中に混
入する等の欠点が派生する。

なお、この表面保護剤１８に金属アルミ、酸化
鉄等を添加しておけば、これらが反応するときの
発熱反応によつて湯溜り部４の保温が図られる。

表面仕切り堰１６の位置は、表面仕切り堰１６
の湯面下に浸漬される部分の長さを、表面保護膜
１９が凝固シエル１０と共に湯溜り部４から搬出
されないような値にしたときの堰１６の位置にす
る必要がある。また、この湯面下に浸漬される部
分の長さが長すぎるときには、表面仕切り堰１６
から凝固シエル１０の引出し位置１５までの距離
が長くなり、この範囲における酸化が問題とな
る。このようなことから、固定堰６から凝固シエ
ル１０の引出し位置１５までの距離L₁に対する
固定堰６から表面仕切り堰１６までの距離L₂を、
L₂／L₁＝0.6〜0.95の範囲とすることが好ましい。

次いで、本発明の効果を、具体的データによつ
て明らかにする。

幅300mmの湯溜り部４に、普通鋼組成をもつ温
度1570℃の溶鋼を220Kg／分の割合で注湯し、薄
帯１１を製造した。なお、このとき固定堰６から
凝固シエル１０の引出し位置１５までの距離を
L₁＝1100mmとし、固定堰６から表面仕切り堰１
６までの距離をL₂＝980mmとした。また、表面仕
切り堰１６の湯溜り部４表面下に浸漬される長さ
を３mmとした。

そして、表面保護剤１８としてCaO35％、
SiO₂30％及びAl₂O₃7％を有効成分として含む組
成のものを用い、散布量４g/cm²で固定堰６から
表面仕切り堰１６までの範囲にある湯溜り部４に
散布した。なお、溶鋼注湯位置の周囲には、表面
保護剤の巻き込み防止堰２０が配設されている。

このような条件の下で、厚み10mmの薄帯１１を
10m／分の速度で製造した。得られた薄帯１１
は、表面粗さ30μの良好な表面性状をもち、肉厚
変動も少ないものであつた。他方、表面保護剤１
８を散布せずに製造した薄帯１１にあつては、そ
の表面に薄い被膜が生成し、表面粗さが120μと
大きなものであつた。また、その被膜は、部分的
に基材である薄帯１１から剥離しており、酸化さ
れた物質であつた。

なお、以上では、サイド堰５を移動式にしたも
のを備えた装置について説明したが、サイド堰５
としては、これに拘束されることなく、固定式の
ものでも構わない。或いは、上方に指向する突起
を両端部に設けたベルト１を用いることにより、
サイド堰５を省略することも可能である。なお、
ベルト１のサイド堰５が接触する部分は、コルゲ
ート状又はフラツトのいずれであつても良い。更
に、本発明は、双ベルト式、ベルトードラム式等
の他の形式のベルトを使用した連続鋳造装置にも
適用できることは勿論である。

〔発明の効果〕

以上説明したように、本発明の連続鋳造装置に
おては、ベルト上に形成される湯溜り部の溶融金
属湯面を最適条件のもとで表面保護剤で覆うこと
を第一の目的とし、こによつて、溶融金属の降温
や酸化を防止している。その結果、湯面に薄膜が
形成されることがないので、その薄膜が凝固シエ
ルと共に持ち出されることに起因する薄帯の表面
性状の劣化がない。また、溶融金属の酸化が防止
されるため、注湯された溶融金属を歩留りよく薄
帯に製造することができる。更には、表面保護剤
で湯溜り部が覆われているため、外乱による湯溜
り部の温度変化がなくなり、安定した条件下で金
属薄帯を製造することができる。このように、本
発明の連続鋳造装置によるとき、優れた品質をも
つ金属薄帯を高い生産性で製造することが可能と
なつた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明実施例における連続鋳造装置の
要部を示し、第２図は本発明者等が先に開発した
連続鋳造装置を示す。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 走行するベルト上に形成された湯溜り部の後
   端側を固定堰で仕切り、前記湯溜り部から凝固シ
   エルが搬出される先端位置よりも前記固定堰側の
   位置に、成長する凝固シエルが接触しないように
   底部が開放された表面仕切り堰を配置し、前記固
   定堰から該表面仕切り堰までの間にある湯溜り部
   に表面保護剤を散布するノズルを臨ませるととも
   に、溶融金属注入流の位置を囲むように該表面保
   護剤の巻き込み防止堰を配設したことを特徴とす
   る金属薄帯の連続鋳造装置。