JPH0467936B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 本発明は動物用害虫防除材に関し、特に犬や猫
などのペツトに装着することにより、これらペツ
トの体毛中に生息する蚤、しらみ、ダニ等の害虫
を忌避あるいは殺虫することができる害虫防除材
に関する。 （従来の技術） 従来より、種々の害虫防除材が開発されている
が、これを大別すると、樹脂中に害虫防除薬剤を
分散させたタイプのものと、散布面を網体にて形
成した防除剤収容体の内部に粒状の害虫防除薬剤
を充填したタイプのものがある。 前者の代表的なものとしては、例えばDDVP
（ジメチル・ジクロロ・ビニルフオスフエート）
を防除薬剤の主剤とし、これを塩化ビニル樹脂中
に混合して細帯状に形成したものが挙げられ、一
方、後者の代表的なものとしては、例えば繊維織
物で散布面を形成した布製の防除剤収容体の内部
に、害虫防除薬剤を担持する珪酸粒（SiO₂）等
の無機フイラーを充填したものがあげられる。 しかしながら、これらの動物用害虫防除材は次
のような問題があつた。 （発明が解決しようとする問題点） 即ち、前者の害虫防除材では、DDVPが比較
的高い蒸気圧（20℃で1.2×10^-2mmHg）を持つた
め、これを動物の首に巻付けた初期の数日間に防
除薬剤の大部分がガスとして放出する。そのた
め、動物に有害な生理作用を及ぼし、該防除材を
巻付けた部位の皮膚が炎症をおこす危険がある。
またペツトに直接触れる機会の多い子供等に対し
ても有害であり、実用上極めて危険なものとな
る。しかも最初のDDVPガスの放出速度が高過
ぎることにより、防除薬剤は急速に失われ、寄生
害虫を有効に抑制できる期間は短いものとなる。 一方、後者の害虫防除材では、珪酸粒がアルカ
リ特性を示し、また表面が多孔質であるので、高
い表面活性を有するため、これに担持されている
害虫防除薬剤が酸化分解されるなどして比較的短
期間に変質する欠点がある。しかも防除薬剤を担
持した珪酸粒は散布面の織物の布目より多量に放
出散布されるので、前記の場合と同様、初期の害
虫防除効果は大きいものの、一度に薬剤が多量に
放出するので防除効果が短時間のうちに低下、消
失し、長期間にわたつて有効に害虫を防除するこ
とができないという問題がある。 （問題点を解決するための手段） 本発明は上記問題を解決するため、散布面を網
体にて形成したフイラー収容体の内部に、害虫防
除薬剤を担持し且つ上記網体の網目を通過し得る
大きさとされた小さな粒状有機フイラー又は粒状
の害虫防除薬剤自体と、該網目を通過し得ない大
きとされた大きな粒状有機フイラーとを、0.3：
10〜3.0：10の重量比の範囲内で混合して充填し
たことを要旨とするものである。これらの有機フ
イラーはいずれも薬剤に対して表面不活性なもの
であり、好ましくは球状をなしているものであ
る。 （作用及び効果） かかる構成の動物用害虫防除材は、それ自体を
首輪としてあるいは首輪の内面に取付ける等によ
つてペツト等に装着され、フイラー収容体内部の
害虫防除薬剤乃至はこれと担持した小さな粒状有
機フイラーが網目を通つてペツトの体毛間に散布
されるが、その場合、フイラー収容体内部には網
目を通過し得ない大きな粒状有機フイラーが小さ
な粒状有機フイラー又は粒状の害虫防除薬剤に対
して前記の重量比の範囲内で存在するため、小さ
な粒状有機フイラーはこの大きな粒状有機フイラ
ーによつて邪魔されながらその間隙を通つて網体
の方へ移動し、網目より放出されることになる。
そのため、防除薬剤あるいはこれを担持した小さ
な粒状有機フイラーのみが少しずつ長期間にわた
つて網目より放出、散布され、防除効果を長期間
持続できるようになる。つまり薬剤の徐放性がコ
ントロールされる。しかも、防除薬剤を担持する
小さなフイラー及び散布量を調節する大きなフイ
ラーは、いずれも表面活性の少ない有機ポリマー
であるため、従来の珪酸粒のように防除薬剤を酸
化、変質させることがない。また表面不活性の度
合を高め、また薬剤のネツトからの放出をコント
ロールする意味で有機ポリマーの形状は球状が望
ましく、更にこれらは最密充填の状態でネツト内
に充填する方が徐放性をコントロールするのに有
効である。防除薬剤を担持する粒状有機フイラー
は見掛けの比重が小さく、一般に静電気を帯びる
ため動物の体毛によくまつわりつき徐放薬剤放出
の拠点となるので、防除効果がより一層高められ
る場合もある。更に防除薬剤を担持した粒状有機
フイラーを少しずつ放出、散布する性質、即ち徐
放性があると、ペツトに有害な生理作用を及ぼし
たり、ペツトに直接触れる機会の多い子供等に害
を与えたりすることがなく、安全性の面でも優れ
たものとなる。このようなシステムによれば微小
粒体に担持された微少量の薬剤が極めて有効にノ
ミ、ダニと接触し、その皮膚面から効率よく吸収
されて害虫をノツクダウンから死に致らしめる。
著しい場合は本発明の製剤の全有機フイラーに対
して数10mgから数100mgの少量の薬剤でもその効
果が短期間（数日内）に顕著にあらわれ、効力も
長期に持続する。従つて人体に対して比較的無害
であるが分解しやすい薬剤であるピレスロイド系
の殺虫剤を主体として製剤する方法が本発明方に
て始めて実用化可能となるものである。 以下、実施例を挙げて本発明を詳述する。 （実施例） 第１図は、首輪の内面に取付ける帯状の害虫防
除材に構成した実施例を示す斜視図、第２図は第
１図の−線拡大断面図であつて、この害虫防
除材は、可撓性を有する帯状基材１の片面に網体
２を重ね、周囲を封着してフイラー収容体３を形
成すると共に、その内部に害虫防除薬剤を担持し
た小さな粒状有機フイラー４と、これより大きい
粒状有機フイラー５とを混合して充填した構造と
されている。そして、望ましくは、内部のフイラ
ー４，５が使用前に網体２よりこぼれるのを防止
するための剥離シート（不図示）が網体２の表面
に設けられる。 この帯状基材１は、例えば軟質もしくは半硬質
のポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリウレタン等の合成樹脂シートやフアツシ
ヨン性豊かな合成皮革などからなるもので、この
実施例では平帯状に形成されているが、場合によ
つては浅い凹溝状に形成してもよい。このように
凹溝状とすれば、その凹部に多量のフイラー３，
４を充填できる利点があるので望ましい。 この帯状基材１の片面に設けられて散布面を構
成する網体２は、例えばポリエチレン、ポリプロ
ピレン等の長繊維にて製された合成樹脂網よりな
るもので、１平方インチ当たり30〜300個の網目
を有するものが好適に使用される。このような網
体２は目詰りを生じることが殆どなく、且つ散布
量も調度適量となるからである。この網体２の周
囲は、例えば接着、熱融着等の手段で帯状基材１
に封着され、フイラー収容体３が構成される。
又、別途袋状容体を貼着してもよい。 このフイラー収容体３内部に充填される害虫防
除薬剤あるいはこれを担持した小さな粒状有機フ
イラー４は、網目を通過し得る大きさに粒度調節
されたもので１〜70μ程度の粒径を有するものが
好適に使用される。その理由は、粒径が1μより
小さいと表面活性が強くなつて防除薬剤に悪影響
を与える虞が生じ、70μより大きくなれば網目を
スムーズに通過しにくくなるからである。 このような害虫防除薬剤を担持した粒状有機フ
イラー４は、その表面から該薬剤が徐々に放出さ
れるようにコントロールすることが望ましい。こ
れには防除薬剤と粒状有機フイラーとの化学的親
和性が関与し、この化学的親和性は防除薬剤の種
類に応じて変化するが、本発明者等の経験的知見
によれば、有機フイラーとしてポリスチレン、ス
チレン−アクリル酸エステルの共重合体、各種ポ
リオレフイン（共重合体、ハロゲン化物も含む）、
ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリア
ミド、ポリフエニレンサルフアイド、ポリカーボ
ネート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアク
リル酸エステル、エポキシベンゾグアナミンナイ
ロン等の各樹脂の粉体が好適に使用でき、配合さ
れる薬剤の分子構造及び有機フイラー自身の表面
性状によつて適宜選択可能であるが望ましくは表
面積が最も小さい球状（パール状）の有機ポリマ
ーがよい。この場合は表面が多孔質のものより物
理的に不活性であり、薬剤も表面の孔内に入るこ
となく、表面に有効に担持されるためである。し
かして、害虫防除薬剤と比較的親和性の良好な粒
状有機フイラー４を選択するのが望ましい。 上記のような粒状有機フイラーに担持される害
虫防除薬剤としては、ピレスロイド系殺虫剤、有
機燐系殺虫剤カーバメイト系殺虫剤等の他、アル
キルベンゾイル系の忌避剤、ピペロニルブトキサ
イド等の共力剤も併用される。前記ピレスロイド
系殺虫剤としては、アレスリン、フタルスリン、
レスメトリン、フラメトリン、プロパルスリン、
フエノトリン、ペルメトリン、フエンバレート、
その他に１−エチニル−２−メチル−２−ペンテ
ニルシス／トランス−クリサンテマート、１−エ
チニル−２−メチル−２−ペンテニル２，２−ジ
メチル−３−（２−メチル−１−プロペニル）シ
クロプロパン−１−カルボキシレート、１−エチ
ニル−２−メテル−２−ペンテニル−２，２，
３，３−テトラメチルシクロプロパンカルボキシ
レート、１−エチニル−２−メチル−２−ペンテ
ニル−２，２−ジメチル−３−（２，２−ジクロ
ロビニル）シクロプロパン−１−カルボキシレー
トを挙げることができ、前記有機燐系殺虫剤とし
ては、フエニトロチオン等を挙げることができ、
さらにカーバメイト系殺虫剤としては、カーバリ
ール、プロポクサー等を挙げることができる。 これら害虫防除剤は一種を単独で使用すること
もでき、また、二種以上を混合して使用すること
もできる。 もう一方の大きい粒状有機フイラー５は、上記
の害虫防除薬剤を担持した粒状有機フイラー４の
移動を適度に妨げることにより、該有機フイラー
４の網体２からの散布量を適度に調節するために
混合されるものであつて、望ましくはパール状の
有機ポリマーがよい。この形状であればネツト内
の充填も効率のよい最密充填となり、微小粒体は
この間隙をぬつてネツトの表面にコントロールさ
れて徐放されるからである。そしてその大きさは
該網体２の網目を通過し得ない大きさ、望ましく
は70〜1000μの粒径を有するものが使用される。
かかる範囲の粒径であれば、薬剤を担持した小さ
な粒状有機フイラー４が適度に移動し得る大きさ
の粒子間空隙を形成し、その散布量を適量に抑制
することができるからである。このような粒状有
機フイラー５の具体例としては、防除薬剤に悪影
響を与えない有機ポリマー、本質的には微小粒体
担持の有機ポリマーと同材質のものでよいが、ポ
リスチレンやポリスチレン−アクリル酸エステル
などのパール重合物が好適であり、その他には塩
素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニル
アルコール、ポリエチレン、ナイロン等の粒状物
も使用される。 上記の如き散布量調節用の大きい有機フイラー
５と防除薬剤を担持した小さい有機フイラー４と
の混合割合は粒径の大きさ比により異なるが、10
重量部の有機フイラー５に対して有機フイラー４
を0.3〜3.0重量部の範囲で混合するのがよい。有
機フイラー４が0.3重量部より少ないと、薬剤散
布量がわずかなため害虫防除効果及びその持続期
間が低減される不都合を生じ、逆に３重量部より
多いと、もう一方の有機フイラー５の量が相対的
に少なくなり過ぎて充分な散布量抑制作用を発揮
しにくくなるからである。 以上のような構成の動物用害虫防除材は、例え
ば首輪の内面に取付ける等によつてペツト等に装
着されて使用される。その他、バンドタイプ等、
各種の使用形態に適用できるものである。このよ
うに装着すると、ペツトが動作するときに体毛が
網目をつきぬけて内部に入り粉出を助長する作用
し、又フイラー収容体３が振動等をうけ、該フイ
ラー収容体３内部の害虫防除薬剤を担持した小さ
な粒状有機フイラー４が網体２の網目を通つてペ
ツトの体毛間に散布されるが、その場合、フイラ
ー収容体３内部には網目を通過し得ない大きな粒
状有機フイラー５が存在するため第３図に示すよ
うに、小さな粒状有機フイラー４はこの大きな粒
状有機フイラー５によつて邪魔されながらその間
隙を通つて網体２の方へ移動し、網目より放出さ
れることになる。そのため、防除薬剤を担持した
小さな粒状有機フイラー４のみが少しずつ長期間
にわたり網目から放出、散布されて体毛に付着
し、防除効果を長期間持続できるようになる。し
かも、防除薬剤を担持する小さなフイラー４及び
散布量を調節する大きなフイラー５は、いずれも
表面活性の少ない有機ポリマーであるため、従来
の珪酸粒のように防除薬剤を酸化、変質させるこ
とがない。さらに、夏季の特に高温高湿時のよう
な苛酷条件で経年の商品貯蔵を行う場合に防除薬
剤の酸化、変質をより確実に防止する方法として
フイラー収容体の内部を真空脱気して後、あるい
は不活性ガスで置換して後にガス不透過性フイル
ムを剥離シートとして用いれば収容体の密封を行
えるもので、このような貯蔵にも十分耐えること
ができる。また、全体をアルミパツクで包装して
もよい。また、防除薬剤を担持する粒状有機フイ
ラー４は粒径が小さいため見掛けの比重が小さ
く、且つ一般に静電気を帯びるため、動物の体毛
によく付着して徐放薬剤放出の拠点となるので、
少量の薬剤量でも防除効果がより一層高められ、
極めて少量の薬剤でも効力が顕著に発現される。
更に、防除薬剤を担持した粒状有機フイラーを少
しずつ放出する徐放効果があるため、人体に害の
少ないピレスロイド系の薬剤を少量使えばペツト
に有害な生理作用を及ぼしたり、ペツトに直接触
れる機会の多い子供等に害を与えたりすることが
なく、安全性の面でも優れたものとなる。 次に本発明の動物用害虫防除材についての実験
例を挙げる。 （実験例） 次に本発明に基づく具体的構成を示す。巾3.5
cm×長さ55cm×厚さ0.1cmのポリエチレンシート
の中央部に一平方インチ当たり200個の網目を有
するポリエチレン網を熱融着して、巾２cm×長さ
25cm×高さ0.3cmの容積を持つフイラー収容体を
設けた。この中に次に示す組成例の充填物をでき
るだけ最密に充填し、動物用害虫防除材とした （組成例） (1) 大径粒状有機フイラー 100重量部 スチレン−アクリル共重合樹脂 粒径200〜450μm 中心330μm 小径粒状有機フイラー 20重量部 薬剤担持粒子、スチレン−アルリル 共重合樹脂 粒径10〜50μm、中心35μm （液状）ｄ，ｌ−アレスリン ３重量部 (2) 大径粒状有機フイラー 100重量部 メタアクリル酸エステル樹脂 粒径110〜300μm 中心190μm 害虫防除薬剤− ５重量部 果粒状、粒径１〜10μm 中心2.5μm (3) 大径粒状有機フイラー 100重量部 スチレン樹脂 平均粒径100μm 小径粒状有機フイラー 15重量部 薬剤担持粒子、スチレン−アルリル 共重合樹脂 平均粒径5μm （液状）ｄ，ｌ−レスメトソン ２重量部 害虫防除薬剤− ２重量部 （液状）ピペロニルブトキサイド （実験例 １） 次に本発明に係る害虫防除材の徐放性を確認す
るために行つた実験を説明する。前記組成例にお
ける組成(3)を充填した防除材を構成し、これを犬
の首に取り付けて害虫防除薬剤の放出量を所定日
数毎に測定した。その結果を第４図に示す。縦軸
は害虫防除薬剤の累積放出量（mg単位）、横軸は
時間（日単位）である。防除薬剤の放出曲線は初
期の防除効果にすぐれ、且つ長期間に亘つて防除
効果が持続し徐放性を有するもものであることを
示している。 （実験例 ２） また本発明の実施品の長期間に亘る害虫防除効
果を確認する実験を行つた。即ち試料として前記
の各組成例(1)〜(3)を充填した防除材を作製し、こ
れを犬の首に取り付ける前に、予め捕集しておい
たイヌノミ20頭を犬に放ち、ノミが犬の体毛中に
入り込んだことを確認した後、各試料を犬の首に
取り付け、所定日数毎に目視で犬に残存している
ノミの数を調べた。試験に供した犬は体重1.5Kg、
胴長45cm、体高35cmの雄の雑種犬である。各経過
日数における残存率（％）で示した。結果を第１
表に示す。

【表】 表より本発明による実施品が有効な殺虫防除効
果を持ち、かつ長時間持続することを確認した。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例の斜視図、第２図は
第１図の−線断面図、第３図は第２図の部分
拡大図、第４図は害虫防除薬剤の累積放出量と時
間との関係を示すグラフである。 １……帯状基材、２……網体、３……フイラー
収容体、４……小さな粒状有機フイラー、５……
大きな粒状有機フイラー。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 散布面を網体にて形成したフイラー収容体の
   内部に、害虫防除薬剤を担持し且つ上記網体の網
   目を通過し得る大きさとされた小さな粒状有機フ
   イラー又は粒状の害虫防除薬剤自体と、該網目を
   通過し得ない大きさとされた大きな粒状有機フイ
   ラーとを、0.3：10〜3.0：10の重量比の範囲内で
   混合して充填して成る動物用害虫防除材。