JPH0464860B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （技術分野） この発明はインクジエツトプリントヘツド、更
に詳しくはオンデマンド方式のインクジエツト記
録装置において、記録用インク小滴を発生させる
ためのヘツド部分の構造に関する。

（技術的背景） この種のオンデマンド方式のインクジエツトプ
リントヘツドは、インク溜りとする圧力室の一側
を圧電素子の作用で機械的に変位される振動部材
で郭定（室壁を形成）し、前記圧電素子へのパル
ス電圧印加により振動部材を振動させて該圧力室
の容積を急激に減少させ、これに基づいて発生す
る圧力により圧力室壁の一部に設けた微小なオリ
フイス（ノズル孔）より、所定量のインク滴を摘
出噴射させるようになされている。従つて、斯る
インクジエツトプリントヘツドに於いては、イン
ク滴の吐出量に対応して順次圧力室内にインクを
補給しなければならない。このため、圧力室は、
何らかのインク供給通路を介してインク貯室に連
通したものとなされる。ところが、前記圧電素子
に電気信号が印加されて圧力室の容積が減少され
た際、その室内のインクは加圧力によつてオリフ
イス方向に移動する一方で、同時に前記通路の方
向にもむしろ支配的に移動しようとする傾向を示
す。ここに、オリフイス方向に移動するインク
は、オリフイスからインク液滴として有効に噴射
されるが、供給通路方向に移動するインクは、む
しろ上記インク液滴の形成噴射に対して有害に作
用し、インク滴形成効率を低下させる。このため
に圧電素子に印加する駆動電圧も高いものを要す
ることとなり、電気回路が大きくなり、消費電力
が増加すると共に、駆動周波数も数ＫHzと非常に
低いものとなさざるを得ず、従つて、高速記録に
不向きなものとなる。

また、逆に、インク液滴の噴射後、圧力室の容
積が増大せられた際には、内圧の急激な減少によ
つて前記オリフイスから外気を吸引するおそれを
生じる。そしてこれが圧力室内に混入すると、所
謂エアー障害を起こす。即ち圧電素子を駆動させ
たときに、圧力室に作用される噴出エネルギーが
エアーに吸収され、オリフイスからのインク吐出
特性にばらつきを生じさせるのみならず、昂じて
吐出不能状態を招来することがある。

（従来技術） 従来、上記のような問題点を解消するための手
段として、一般的には逆止弁を用いることが考慮
されている。即ち、圧力室とオリフイスとの間、
及び（あるいは）インク供給通路と圧力室との間
に逆止弁を設けてインクの流れ方向をオリフイス
方向のみに規制する試みがなされている。ところ
がこの場合、逆止弁はあくまでも機械的な作動に
よるものであるために、圧電素子による振動板の
高速振動に完全同調作動せしめることが困難であ
り、前記同様高速記録に不向きであると共に、前
記エアー障害をひき起こすおそれが大であるとい
うような問題点を払拭し得なかつた。

（発明の目的） この発明は上記のような問題点を解決した高速
記録に適する可及的簡易構成のインクジエツトプ
リントヘツドを提供することを目的とする。

（発明の構成） 前記の目的において、この発明に係るインクジ
エツトプリントヘツドは、上面を開放した箱状容
器内に形成されたインク貯室と、このインク貯室
内の収蔵インクに常時所定圧力を印加するべく前
記箱状容器内に収蔵インクの減少に応じて自重下
降するように落し込み状態にはめ込まれた加圧用
蓋体と、少なくとも一側が圧電素子の作用で機械
的に変位される振動部材で郭定され、前記圧電素
子へのパルス電圧印加により振動部材を振動させ
ることにより所定のインク滴を噴出させるオリフ
イスを備えた圧力室と、上記両室を連通するイン
ク供給用連通路とよりなり、前記インク供給用連
通路は、ベース基板の上面に刻設された屈折形の
溝と、この溝の上面開口を両端の出入口部を除い
て塞ぐように設けられたインク貯室の底壁とによ
つて複数個の屈折部を有するジグザグ状あるいは
蛇行状等の細い屈折形の通路に構成され、前記イ
ンク貯室は、常温では固相状態を呈する固形イン
クを収蔵するものとして構成され、該インク貯室
の少なくとも１つ以上の側壁及びインク供給用連
通路の構成部材、並びに圧力室の少なくとも一側
の郭定部材中に、前記固形インクを融解する発熱
体が仕組まれてなることを特徴とするものであ
る。

（実施例） 図示実施例において、１はインク貯室、２は圧
力室、３は両室１，２を連通せしめたインク供給
用連通路を示す。

インク貯室１は第１図に示すように上面を開放
した箱状の容器１１からなり、その上部に加圧手
段としての加圧用蓋体１３を有する。該加圧用蓋
体１３は、周縁にゴム等の弾性材料からなるリツ
プ状シール部材１４を有し、該シール部材１４を
前記箱状容器１１の周側壁内面に弾接させた状態
において該容器内に落し込み状態に嵌め込まれて
おり、インク貯室１内の内蔵インク量が減少する
のに応じて自重で下降し、常時該室内のインクを
蓋体自身の重量で加圧するものとなつている。従
つて、蓋体１３の板状本体は比較的比重の大きい
金属板でつくられ、その下面は上記シール部材１
４の延長部分で全面的に被覆されて、インクには
直接接触しないように考慮されている。また、箱
状容器１１の底壁１１ａの一部には連通路３の一
端の入口３ａに合致する供給孔１２が穿設されて
おり、プリントヘツドの作動中、該供給孔１２か
ら連通路３にインクを送り出すようになつてい
る。

圧力室２は、インク貯室１の下面から突出され
たベース基板４の突出部４ａの上面側に設けられ
たもので、第２図に示すように四方の周側壁はイ
ンク貯室１の容器１１の左右両側壁１１ｂ，１１
ｃから延長された突出部分１１１ｂ，１１１ｃで
郭定されると共に、上面は圧電素子５が取付けら
れた振動板６によつて郭定されている。そしてま
た、圧力室２の先端側の側壁部分には、ベース基
板４との間に細小なインク滴噴出用のオリフイス
７が設けられている。従つて、上記圧電素子５に
適当なパルス電圧を印加して振動板６を微振動さ
せ、圧力室２の容積を急激に変化させることによ
り、オリフイス７からインク液滴を記録媒体に向
けて噴射させうるものとなされている。

インク供給用連通路３は、実質上ベース基板４
の上面側に刻設された溝８によつて形成されたも
のである。該溝８は第３図に示すように、多数の
コ字状部分が順次反対向きに連続された略蛇行状
にものとして形成されている。従つて、この溝８
の上面の開口を、両端の出入口部３ａ，３ｂを除
いて塞ぐ形で、ベース基板４上にインク貯室１の
底壁１１ａが重ねて接着されることにより、前記
連通路３は多数の屈折部分を有する細い略蛇行状
のものとして形成されている。

このような屈折形態の細い通路構成は、この発
明において重要な意味をもつものである。即ち、
振動板６の振動によつて加圧室２の容積が減少さ
れたとき、インクに対する加圧力がインク貯室１
の方向に向つて伝播するのを阻止し、インク滴の
吐出エネルギーをオリフイス７の方向に集中的に
作用せしめるのに役立つものである。従つて、こ
の連通路３は、インクの円滑な供給を妨げない範
囲内で、出来るだけ細く、しかも多数の屈折部分
をもつようなものにするのが有利であり、図示の
ような形態が最も推奨されるところであるが、多
数のＶ字形部分が互いに逆向きに連続したジグザ
グ形状に形成しても充分に初期目的を達成するこ
とができる。

なお、上記インク貯室１を構成する箱状容器１
１、及びベース基板４は、ガラス、セラミツク、
またはガラス・セラミツクなどを用いて製作しう
るが、なかでも、感光性珪酸塩ガラスを用いて製
作するのが有利である。即ち斯る材料を用いるこ
とにより、前記のような屈折形のインク供給用連
通路３の形成、極微細なオリフイス７の形成等
を、フオトエツチング操作によつて精緻に、しか
も簡単かつ能率的に行いうる点で非常に有利であ
る。

ところで、従来、インクジエツト記録装置は、
主に常温で液状であるような速乾性インクを用い
るものとして開発されてきた。ところがこの場
合、インクジエツト記録装置を長時間停止状態も
置くと、インク中の液体成分が蒸発して固形成分
が残り、こが一般に直径数10ミクロン程度である
微細なオリフイスを塞ぐ結果となり、インクジエ
ツト記録装置を再起動した場合にインク滴の吐出
を阻害するという、所謂目ずまりを起こし易い欠
点があることが知られている。

このような欠点を排除するためには、既に数件
の提案がなされているように、常温において固相
状態を呈する固形インクを用い、インクジエツト
記録装置の起動時のみ、該固形インクを加熱溶融
して噴射させる方式を採用することが望ましい。

そこで、図示のこの発明に係るインクジエツト
プリントヘツドの実施例も、特に固形インクを用
いる場合に適合するように構成されたものとなさ
れている。

即ち、インク貯室１が、常温では固相状態を呈
する固形インクを収蔵するものとして構成され、
該インク貯室１の少なくとも１つ以上の側壁及び
インク供給用連通路３の構成部材、並びに圧力室
２の少なくとも一側の郭定部材中に、前記固形イ
ンクを溶融する発熱体９，１０が仕組まれたもの
となされている。更に具体的には、ベース基板４
が第３図に示すような上面板４１と第４図に示す
ような下面板４２との積層接着による二重構造の
ものとなされ、それらの間にプリント法等により
第４図に示すように抵抗発熱体１０を介在させた
ものとさなれて、該発熱体１０に通電することに
より、インクジエツト記録装置の起動時に連通路
３及び圧力室２内の固形インクを瞬時に加熱、溶
融せしめうるものとなされている。かつ、インク
ジエツト貯室１においては、左右の両側壁が同様
に二重構造のものとなされて、その内部に第５図
に示すような形態に抵抗発熱体９が設けられてお
り、インク貯室１内の固形インクを加熱溶融させ
うるものとなされている。

（作用） 上記において、インクジエツト記録装置の起動
時には、加熱溶融状態のインク貯室１内のインク
に、加圧用蓋体１３によつて常時所定の圧力が加
えられており、この状態で圧電素子５にパルス電
圧が印加され、振動板６は振動して圧力室２内の
容積が急激に増減変化される。そこで、この容積
が減少された時には圧力室２内のインクは、イン
ク貯室１の方向への逆流が、細くて屈折した連通
路３による著しい圧力減衰によつて阻止される結
果、オリフイス７の方向に向けて主として流れ、
これにより所定のインク液滴を形成して記録媒体
に向けて確実に噴射される。一方、圧力室２の容
積が増大されたときには、インク貯室１内のイン
クに常時加圧用蓋体１３により所定圧力が加えら
れている結果、インク供給用連通路３から圧力室
２に向けてインクが速やかに流入する。従つて、
オリフイス７から外気を吸引するのが防止され、
前述のようなエアー障害の発生が防止される。

（効果） 以上説明したように、この発明は、インク液滴
を噴射せしめる圧力室とは別に、これと連通路を
介して連通したインク貯室をヘツド自体に備え、
連続的にインク供給を行いうるものとなされてい
るから、長時間の記録作動が可能であるのはもと
より、特に前記連通路が細い屈折形の通路となさ
れ、しかもインク貯室に常時その収蔵インクに所
定圧力を加える加圧手段が具備せられたものとな
されていることにより、圧電素子へのパルス電圧
印加によつて発生する圧力室内のインク滴吐出エ
ネルギーを、オリフイスからのインク滴の噴射の
ために効果的に作用せしめることができ、消費電
力の節減、記録作動の高速化に貢献しうる。もと
より、従来の逆止弁を用いる場合に較べても、装
置の構造の簡略化、従つて低コスト化はもちろ
ん、メンテナンス面でも有利であるし、高速記録
の要請に何ら支障なく対応しうる顕著な利点があ
る。また圧力室の容積増大時に、前述のようにオ
リフイスからの外気の有害な吸込みを効果的に阻
止しうる。従つて、エアー障害をなくし、記録作
動の安定性の向上にも顕著な効果を実現しうる。

また、インク貯室の加圧手段として、箱状容器
内に収蔵インクの減少に応じて自重降下するよう
に落し込み状態にはめ込まれた加圧用蓋体が用い
られているから、最も簡易な構造にして収蔵イン
クに確実かつ安定した加圧力を作用させることが
できる。かつまた、前記インク供給用連通路が、
ベース基板の上面に刻設された屈折形の溝と、こ
の溝の上面開口を両端の出入口部を除いて塞ぐよ
うに設けられたインク貯室の底壁とによつて構成
されているから、該通路を屈折形のものとして容
易につくることができ、製作上有利である。更に
また、インク貯室が、常温では固相状態を呈する
固形インクを収蔵するものとして構成され、該イ
ンク貯室の少なくとも１つ以上の側壁及びインク
供給用連通路の構成部材、並びに圧力室の少なく
とも一側の郭定部材中に、前記固形インクを融解
する発熱体が仕組まれているから、固形インクを
用いて作動させることができ、従来の液状インク
を用いる場合のように、使用を中断したのち再起
動するときにオリフイスが詰つていてインクの円
滑な吐出が阻害されるというような障害をひき起
こすことがない。

【図面の簡単な説明】

図面は、この発明の実施例を示すもので、第１
図はインクジエツトプリントヘツドの全体断面
図、第２図はベース基板を分離した状態で示した
斜視図、第３図は第１図−線の断面図、第４
図はベース基板内の抵抗発熱体の配設状態を示す
平面図、第５図はインク貯室を構成する容器の側
壁内の抵抗発熱体の配線状態を示す平面図であ
る。 １……インク貯室、２……圧力室、３……イン
ク供給用連通路、３ａ……入口、３ｂ……出口、
４……ベース基板、５……圧電素子、６……振動
板、７……オリフイス、８……溝、９，１０……
発熱体、１１……箱状容器、１１ａ……底壁、１
１ｂ，１１ｃ……側壁、１２……孔、１３……加
圧用蓋体、１４……シール部材。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 上面を開放した箱状容器内に形成されたイン
   ク貯室と、このインク貯室内の収蔵インクに常時
   所定圧力を印加するべく前記箱状容器内に収蔵イ
   ンクの減少に応じて自重下降するように落し込み
   状態にはめ込まれた加圧用蓋体と、 少なくとも一側が圧電素子の作用で機械的に変
   位される振動部材で郭定され、前記圧電素子への
   パルス電圧印加により振動部材を振動させること
   により所定のインク滴を噴出させるオリフイスを
   備えた圧力室と、上記両室を連通するインク供給
   用連通路とよりなり、 前記インク供給用連通路は、ベース基板の上面
   に刻設された屈折形の溝と、この溝の上面開口を
   両端の出入口部を除いて塞ぐように設けられたイ
   ンク貯室の底壁とによつて複数個の屈折部を有す
   るジグザグ状あるいは蛇行状等の細い屈折形の通
   路に構成され、 前記インク貯室は、常温では固相状態を呈する
   固形インクを収蔵するものとして構成され、該イ
   ンク貯室の少なくとも１つ以上の側壁及びインク
   供給用連通路の構成部材、並びに圧力室の少なく
   とも一側の郭定部材中に、前記固形インクを融解
   する発熱体が仕組まれてなることを特徴とするイ
   ンクジエツトプリントヘツド。