JP4662664B2 - 液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像記録装置(画像形成装置)として用いるインクジェット記録装置は、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通するインク液室(インク流路、吐出室、圧力室、加圧液室、液室等とも称される。)と、このインク液室内のインクを加圧するエネルギーを発生するエネルギー発生手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)とを備えて、エネルギー発生手段を駆動することでインク液室内インクを加圧してノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドを搭載し、記録画像に応じてエネルギー発生手段を駆動することでインク液室内インクを加圧してノズルからインク滴を吐出させて画像を記録する。
【0003】
このインクジェット記録装置に用いるインクジェットヘッドとしては、インク液室内のインクを加圧するエネルギーを発生するエネルギー発生手段として、圧電素子を用いてインク液室の壁面を形成する振動板を変形させてインク液室内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの(特開平2−51734号公報参照)、或いは、発熱抵抗体を用いてインク液室内でインクを加熱して気泡を発生させることによる圧力でインク滴を吐出させるいわゆるバブル型のもの(特開昭61−59911号公報参照)、インク液室の壁面を形成する振動板と電極とを平行に配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク液室内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの(特開平6−71882号公報参照)などが知られている。
【0004】
上述したバルブ型インクジェットヘッドは、ヘッドの個別液室に発熱体を設け、この発熱体への通電によって発熱体の温度を上昇させて、個別液室内に気泡を成長させ、この気泡の成長によって個別液室内の圧力を上昇させて、個別液室に設けた吐出流路(ノズル)側へ向かう流れを発生させ、発熱体への通電を解除して、成長させた気泡を縮小させて吐出流路端から、液滴を慣性力で吐出させるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の気泡を用いるインクジェットヘッドにあっては、発熱体が必要であり、ヘッドのノズル数が増加すると、連続動作時にヘッドの温度上昇が著しくなって動作が不安定となる。また、滴の吐出に際して発熱体の発熱過程と冷却過程が必要であり、これに要する時間には上限があり、この上限を超えて高速に吐出を繰り返すことは原理的に不可能である。さらに、形成される気泡は液室内の圧力制御手段として用いられているに留まっているというような課題がある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、気泡を利用した新規の吐出原理に基づく液滴吐出ヘッド及びこの液滴吐出ヘッドを搭載するインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、複数の個別液室の各々に吐出流路を設け、各々の個別液室内に気泡を発生させて吐出流路から液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドであって、液体が充填された個別液室の壁面から発生されたトーラス状のリング気泡が、液室の壁面に対向して設けた先端径が収束する形状を有する吐出流路内に導かれて、吐出流路端より液滴が吐出される構成としたものである。
【0008】
ここで、個別液室の壁面に気体が圧入されるオリフィスを有することが好ましい。この場合、オリフィスは円形開口であることが好ましい。そして、オリフィスを開閉してオリフィスから個別液室内に気体を圧入し、個別液室内にトーラス状の気泡を発生させる圧入手段を備えることが好ましい。この場合、圧入手段はオリフィスと接触する側の先端部の形状が突状の曲面をなし、オリフィス面の法線方向に進退可能に設けることができる。或いは、圧入手段はオリフィスと接触する側の先端部の形状が略円錐形状をなし、オリフィス面の法線方向に進退可能に設けることができる。
【0009】
本発明に係るインクジェット記録装置は、インク滴を吐出させるインクジェットヘッドとして本発明に係る液滴吐出ヘッドを搭載したものである。この場合、液滴吐出ヘッドの圧入手段の動作速度を変化できることが好ましい。また、圧入手段をオリフィスに当接させる第1工程と圧入手段を前記オリフィスから離接させる第2工程を含み、第2工程の離接動作速度を変化させて気泡体積を変化できることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドを説明する模式的斜視説明図である。
このインクジェットヘッドは、液体(インク)が充填される個別液室1と、この個別液室1に連通し、先端径が収束する形状を有する吐出流路2とを有し、個別液室1の壁面(底面)3にはオリフィス4を形成している。なお、個別液室1は複数設けられるが、1個のみ図示している。
【0011】
このインクジェットヘッドにおいては、インクを充填した個別液室1の底面3に設けたオリフィス4を瞬間的に開閉することにより、個別液室1の外側より個別液室1内に気泡を圧入することで、個別液室1内にトーラス状のリング気泡(トーラス気泡)51を発生させる。
【0012】
このトーラス気泡51の周囲の流れは、図2に矢印6で示すように、リングの内周側は下(即ち液室1の底方向)から上(即ち吐出流路2の先端方向)に、リングの外周側では上から下に向かって回転する旋回流を形成している。このトーラス気泡51は個別液室1を矢印7に示す方向に進行し、吐出流路2に至る(この段階のトーラス気泡51をトーラス気泡52と表記する。)。
【0013】
そして、吐出流路2内を通過するトーラス気泡52は、吐出流路2の内径が次第に狭くなるために、図3(a)に矢印で示す方向に収縮して、次第にリング径が小さくなる。このとき、リングの内側のインクは、圧縮されるとともに、トーラス気泡52の前進方向即ち吐出方向への推力を受け、同図(b)に示すように、インク81がトーラス気泡52から突出した状態になる。
【0014】
更にトーラス気泡52のリング径が小さくなって、図4(a)に示すように、最終的にトーラス気泡52の内側に存在していたリング状の空隙は消滅する(気泡53となる)。この瞬間において、トーラス気泡52のリング孔の上下で連続していたインクは破断され、同図(b)に示すように、破断されたインクが滴化し、それまでに気泡52から受け取っていた慣性力によって、インク滴82として吐出飛翔する。
【0015】
このように、トーラス状のリング気泡は、リングの内側にある液体を圧縮する効果を有するとともに、トーラス状気泡が形成する流れ場は液体を吐出させる推力をもち、液滴の吐出を可能にする。したがって、液体が充填された個別液室の壁面から発生されたトーラス状のリング気泡が、液室の壁面に対向して設けた先端径が収束する形状を有する吐出流路内に導かれて、吐出流路端より液滴が吐出される構成とすることで、気泡発生に要する加熱装置を特に使用せず、発熱体の発熱・冷却時間の制約のない、従来存しない新規な吐出原理に基づく液滴吐出ヘッドが得られる。
【0016】
この液滴吐出ヘッドにおいては、上述したようにオリフィス4から個別液室1に気体を圧入することによってトーラス状のリング気泡51を生成することができるが、気体の圧入速度が遅いと、トーラス状の気泡形状になりにくい。実験によれば、一回の圧入に要する時間は10msec以下とすることで確実にトーラス状のリング気泡を生成できることを確認した。
【0017】
また、オリフィス4の形状は円形状が好ましい。実験によれば、オリフィス4を円形状にすることで、同心円状の対称性のよいトーラス状のリング気泡が形成され、この気泡による回転推力と上述したリングの内側に向かう圧縮力の対称性も良好となり、滴の吐出曲がりを防ぐことができることを確認した。
【0018】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、従来のバブル型ヘッドに対して、上述したように発熱体やその温度制御機構が不要になるだけでなく、次のような特徴を有している。すなわち、本発明では気泡がトーラス状であることから、▲1▼トーラス状のリング気泡が形成する図2に示すような旋回流が滴の吐出に対し有効に機能すること、▲2▼トーラス状のリング気泡が、狭い吐出流路内を移動するにつれて、図3、図5に示すように、リング孔径が狭くなってゆき、リング気泡自身が、リング孔の内側に存在する液体を圧縮する作用を持つこと、▲3▼図5に示すように、最終的にトーラス状気泡の内側のリング孔はなくなり、この瞬間に、リング孔の上下に連通していた液体が切断されて液が滴化されること、という格別の作用効果を有している。これに対して、従来のバブル型ヘッドでは気泡がトーラス状でないために本発明の上記▲1▼〜▲3▼の作用効果がない。
【0019】
次に、この液滴吐出ヘッドにおけるトーラス気泡生成機構の一例について図5を参照して説明する。なお、同図は同機構をその動きとともに説明する模式的説明図である。
このインクジェットヘッド10も、上述したインクジェットヘッドと同様に、個別液室1の底面3にオリフィス4が設けられており、このインクジェットヘッド10のオリフィス4の下側に個別液室1内にトーラス状の気泡を発生させる圧入手段21を配置している。
【0020】
この圧入手段21は、オリフィス面の法線方向(即ち、オリフィス面と垂直となる方向)に上下動可能(進退可能)に配置し、この圧入手段21のオリフィス4と接触する先端部の形状は突状の曲面形状に形成している。そして、図示しないインクジェット記録装置本体側の駆動機構によって圧入手段21はオリフィス4に対して進退動される。
【0021】
そこで、圧入手段21を同図(a)に示す状態から上昇させて、同図(b)に示すようにオリフィス4に当接させてオリフィス4を封止した状態とする。そして、圧入手段21を同図(c)に示すようにオリフィス4から離接する方向に移動させると、オリフィス4の縁の部分が先に離れ、ここから矢印で示すように気流が個別液室1内に入り込み、オリフィス4の近傍で渦を形成して、個別液室1内でトーラス状のリング気泡5が形成される。
【0022】
このとき、圧入手段21はオリフィス4と接触する先端部の形状を突状の曲面に形成することで、トーラス状のリング気泡を安定して形成することができる。
【0023】
なお、圧入手段21としては図6に示すようにオリフィス4と接触する先端部の形状を略円錐形状に形成したものを用いることもできる。この場合も、圧入手段21を同図(a)に示す状態から上昇させて、同図(b)に示すようにオリフィス4に当接させてオリフィス4を封止した状態とし、同図(c)に示すようにオリフィス4から離接する方向に移動させると、オリフィス4の縁の部分が先に離れ、ここから矢印で示すように気流が個別液室1内に入り込み、オリフィス4の近傍で渦を形成して、個別液室1内でトーラス状のリング気泡5が形成される。
【0024】
この液滴吐出ヘッドにおいては、気泡生成機構の圧入手段の動作速度を変化させることでトーラス状気泡の体積を変えることができる。すなわち、上述したように気泡生成機構の圧入手段をオリフィスに当接させる第1工程の後、圧入手段をオリフィスから離接させる第2工程を行なうが、この離接行程(第2工程)において圧入機構の離接速度を速くすると、液室に入り込む気流速度が速くなって気泡の体積は大きくなる。逆に、離接速度を遅くすれば体積は減少する。
【0025】
したがって、インクジェット記録装置本体側の駆動機構によって圧入手段の離接速度を変化させることによって、気泡の体積を小さくして小滴を形成したり、気泡の体積を大きくして大きな滴を吐出させることができ、多値化を実現できる。
【0026】
なお、上記実施形態では、液滴吐出ヘッドとしてインクジェットヘッドを例に説明したが、この他、例えば液体レジストを液滴として吐出する液滴吐出ヘッド、DNAの試料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドなどにも本発明を適用することができる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、液体が充填された個別液室の壁面から発生されたトーラス状のリング気泡が、液室の壁面に対向して設けた先端径が収束する形状を有する吐出流路内に導かれて、吐出流路端より液滴が吐出されるので、気泡発生のための発熱体などの加熱装置や発熱体の発熱、冷却時間の制約のない新規な液滴吐出ヘッドが得られる。
【0028】
ここで、個別液室の壁面に気体が圧入されるオリフィスを有することによってトーラス状のリング気泡を簡単に発生させることができるようになる。この場合、オリフィスは円形開口とすることで、リング状気泡の真円性が向上し、滴形成に寄与する力のバランス、対称性が向上して安定した滴吐出を行うことが可能になる。
【0029】
そして、オリフィスを開閉してオリフィスから個別液室内に気体を圧入し、個別液室内にトーラス状の気泡を発生させる圧入手段を備えることで、トーラス状の気泡を安定して発生させることができる。
【0030】
本発明に係るインクジェット記録装置によれば、インク滴を吐出させるインクジェットヘッドとして本発明に係る液滴吐出ヘッドを搭載したので、簡単な構成で安定したインク滴吐出を行える新規な記録装置が得られる。この場合、液滴吐出ヘッドの圧入手段の動作速度を変化できるようにすることで、滴体積の制御、多値化を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドを説明する模式的斜視説明図
【図2】トーラス状リング気泡の流れ場を説明する説明図
【図3】トーラス状リング気泡の収縮過程とインクの状態を説明する説明図
【図4】トーラス状リング気泡の非リング化とインク滴吐出を説明する説明図
【図5】 トーラス状リング気泡の生成機構の一例をその動作とともに説明する説明図
【図6】トーラス状リング気泡の生成機構の他の例をその動作とともに説明する説明図
【符号の説明】
1…個別液室、2…吐出流路、3…底面、4…オリフィス、5、51、52…トーラス状のリング気泡、21…圧入手段。

Claims (9)

  1. 複数の個別液室の各々に吐出流路を設け、各々の個別液室内に気泡を発生させて前記吐出流路から液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドにおいて、液体が充填された前記個別液室の壁面から発生されたトーラス状のリング気泡が、前記液室の壁面に対向して設けた先端径が収束する形状を有する前記吐出流路内に導かれて、前記吐出流路端より液滴が吐出されることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 請求項1に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記個別液室の壁面に気体が圧入されるオリフィスを有することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  3. 請求項2に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記オリフィスは円形開口であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  4. 請求項2又は3に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記オリフィスを開閉してオリフィスから前記個別液室内に気体を圧入し、前記個別液室内にトーラス状の気泡を発生させる圧入手段を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  5. 請求項4に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧入手段は前記オリフィスと接触する側の先端部の形状が突状の曲面をなし、オリフィス面の法線方向に進退可能に設けられていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  6. 請求項4に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧入手段は前記オリフィスと接触する側の先端部の形状が略円錐形状をなし、オリフィス面の法線方向に進退可能に設けられていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  7. インク滴を吐出させるインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドが請求項1乃至6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置。
  8. 請求項7に記載のインクジェット記録装置において、前記液滴吐出ヘッドの圧入手段の動作速度を変化できることを特徴とするインクジェット記録装置。
  9. 請求項8に記載のインクジェット記録装置において、前記圧入手段を前記オリフィスに当接させる第1工程と前記圧入手段を前記オリフィスから離接させる第2工程を含み、第2工程の離接動作速度を変化させて気泡体積を変化させることを特徴とするインクジェット記録装置。
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