JPH0457042B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 (イ) 産業上の利用分野 本発明は電気絶縁油に関する。更に詳しくは、
エチルトルエン製造時に得られる重質分から製造
される電気絶縁油に関するものである。

(ロ) 従来の技術 近年、油含浸コンデンサーなどの油含浸電気機
器の小型化、軽量化の傾向は著しく、それに対応
して、絶縁体あるいは誘電体としてのプラスチツ
ク材料が開発され、従来から使用されている絶縁
紙と併用して、あるいは絶縁紙の代りに使用され
るようになつた。

ところで、油含浸電気機器に含浸させる電気絶
縁油についても、上述のプラスチツク材料の使用
に伴う種々の問題点が生じている。すなわち従来
の電気絶縁油、例えば、精製された鉱油、ポリブ
テン、アルキルベンゼンなどは、上記の油含浸電
気機器に使用されるポリオレフインなどのプラス
チツク材料との適合性が必ずしも満足し得るもの
ではない。従来の電気絶縁油は、これらプラスチ
ツク材料を溶解し、若しくは膨潤させて、油含浸
電気機器の絶縁耐力を低下させることがある。

従つて、ポリオレフインなどのプラスチツク材
料を用いた油含浸電気機器に、より一層適応し得
る高性能の含浸用電気絶縁油の開発が望まれてい
る。

一方、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水
素を、アルキル化触媒により、エチレン、プロピ
レンなどのオレフインでアルキル化し、アルキル
ベンゼンを製造することは、エチルベンゼン、エ
チルトルエン、キユメンなどを得ることを目的と
して広く行なわれている。また、その際に使用す
るアルキル化触媒としては、塩化アルミニウム、
固体リン酸、シリカ−アルミナ、フツ化ホウ素な
ど多くの触媒が使用されている。

上記のアルキル化のプロセスからは、重質分と
して、反応原料、アルキル化触媒などに応じた構
造を有するジアリールアルカン、トリアリールジ
アンカンなどを含む留分が副生する。この留分の
利用としては、例えば特開昭54−23086号、同54
−23087号、同54−23088号公報などに記載されて
いるように、塩化アルミニウム触媒の存在下に、
ベンゼンをエチレンによりアルキル化するプロセ
ルからの重質分が、一般の電気絶縁油として利用
できることが知られている。

しかるに、上記公報に開示された留分からなる
電気絶縁油は、前記プラスチツク材料を用いた油
含浸電気機器用の含浸油としては必ずしも満足す
べきものではない。すなわち、それらの留分は比
較的流動点が高く、単なる蒸留では分離し難いタ
ール状物、不飽和化合物、カルボニル化合物など
の不純物が混入しているため、たとえ精製処理を
施しても、過酷な条件下で使用する含浸油として
は好ましくない。また、ポリオレフインなどのプ
ラスチツク材料をかなり膨潤させるので、プラス
チツク材料を用いた油含浸電気機器に含浸させる
ためには不適当である。

(ハ) 発明が解決しようとする問題点 上記のように、従来のこの種の電気絶縁油は、
蒸留で分離し難いタール状物、不飽和化合物、カ
ルボニル化合物などを含有しており好ましくな
い。またプラスチツク材料に対する適合性が良好
ではなかつた。

一方、本発明者らは、原料としてトルエンおよ
びエチレンを用い、アルキル化触媒として合成ゼ
オライト触媒を使用したアルキル化プロセスにお
ける重質分から得られた留分は、前記公報に開示
された留分よりも、電気機器の含浸用として極め
て好適であるという知見を得た。

従つて、本発明の目的は、従来技術における上
記のような欠点を解消し得る新規な電気絶縁油を
提供することである。換言すれば、本発明の目的
は、ポリオレフインなどのプラスチツク材料を、
絶縁体または誘電体の少なくとも一部として使用
した油含浸コンデンサーや油含浸ケーブルなどの
油含浸電気機器用の含浸油として好適な電気絶縁
油を提供することにある。

(ニ) 問題点を解決するための手段 本発明は、合成ゼオライト触媒の存在下に、ト
ルエンをエチレンによりアルキル化し、エチルト
ルエンを製造するプロセスから得られる重質分を
蒸留して得られる。沸点が270〜350℃の範囲にあ
る留分を含有することを特徴とする電気絶縁油に
係るものである。

本発明において使用する前記のアルキル化触媒
は、合成ゼオライト、すなわち結晶性アルミノシ
リケート・ゼオライトである。特に好ましくは、
ZSM−５型のゼオライトであり、例えば、ZSM
−５およびZSM−11として知られている。これ
らZSM−５型の合成ゼオライトは下記の特許公
報中に説明されている。

ZSM−５：米国特許第3702886号および英国特
許第1161974号 ZSM−11：米国特許第3709979号 一般に、ZSM−５型の合成ゼオライトは、
SiO₂／Al₂O₃としてのモル比が20〜400であり、
特性Ｘ線回析パターンを有する（詳しくは、前記
特許公報にそれぞれ開示されている）。

本発明において使用する合成ゼオライトは、水
素イオン、あるいはカルシウム、マグネシウム、
ストロンチウム、バリウムなどの２価イオン、稀
土類としてのセリウム、イツトリウムなおの３価
イオンでイオン交換したものを用いる。等に、ホ
ウ素、ガリウム、リン、若しくはこれらの化合物
で変性した合成ゼオライトなども使用することが
できる。

アルキル化は液相でも行ない得るが、通常は気
相で行ない、その温度は300〜650℃、好ましくは
350〜550℃である。アルキル化の圧力は特に限定
されないが、１〜100Kg／cm²で、通常は大気圧下
で行なう。供給する原料の比率はエチレン／トル
エン（モル比）で0.05〜５の範囲が好適であり、
また、WHSVは１〜500、好ましくは１〜300で
ある。

上記のアルキル化により、未反応トルエン、エ
チルトルエン、ポリエチルトルエンおよび重質分
からなる反応液が得られる。次に、この反応液か
ら未反応トルエン、エチルトルエンおよびポリエ
チルトルエンを留去し、沸点250℃以上の重質分
を得る。

上記重質分は、アルキル化触媒として合成ゼオ
ライト触媒を用いるため、塩化アルミニウム触媒
の場合よりもタール分が非常に少なく、また色相
や熱安定性を損なう原因となる不飽和化合物やカ
ルボニル化合物もまた極めて少ない。しかしなが
ら、必要に応じて、更に精製処理を施すこともで
きる。この精製処理における処理剤、処理条件、
その他は、電気絶縁油に対する通常の精製と何ら
変りなく、例えば、活性白土、硫酸などによる酸
処理、あるいは水酸化アルカリ金属、水酸化アル
カリ土類金属などによるアルカリ処理など、いず
れの方法により行なつてのよい。なお、この精製
処理は次の蒸留の後の段階で行なつてもよい。

次に、上記重質分から蒸留により沸点270〜350
℃、好ましくは275〜320℃の範囲にある留分を得
る。沸点が270℃未満のもの、あるいは350℃を越
える留分は、プラスチツク材料との適合性や電気
性能を悪くするので好ましくない。

上記の工程により得られた留分は、下記一般式
Ｉで示されるジアリールアンカンを主として含
み、その分子式は、C_oH_2o-14（ｎは14〜16）であ
る。

ここでR₁およびR₃は水素またはメチル基であ
り、R₂はメチレン基、エチレン基はエチリデン
基である。またｐおよびｑは１〜３の整数であ
る。

上記の留分は、前述のような塩化アルミニウム
触媒を使用して得た留分と比較し、タール分が少
なく、またカルボニル化合物や不飽和化合物が少
ないという特徴を有し、また、プラスチツク材料
を著しく膨潤させることがないので、油含浸電気
機器、特に誘電体または絶縁体の少なくとも一部
にプラスチツク材料を使用した油含浸電気機器、
例えば油含浸コンデンサーや油含浸ケーブルなど
に好適である。

そのような油含浸コンデンサーは、電極として
のアルミニウム箔などの金属箔と、誘電体として
のプラスチツクフイルムとを巻回してコンデンサ
ー素子となし、次に含浸油としての電気絶縁油を
含浸させたものである。絶縁紙をプラスチツクフ
イルムと併用することもできる。また金属箔の代
りに、蒸着金属層を付与した金属化（メタライズ
ド）プラスチツクフイルムを電極として用いても
よい。プラスチツクフイルムとしては、ポリエチ
レン、ポリプロピレンなどのポリオレフイン、ポ
リエステル、ポリフツ化ビニリデンなどがある。
これらの内、ポリオレフイン、特にポリプロピレ
ンが好ましい。

また、前記油含浸ケーブルは、銅、アルミニウ
ムなどの金属からなる導体の周囲を、絶縁体とし
てのプラスチツクフイルムで巻回し、電気絶縁油
を含浸させたものである。絶縁体としては、プラ
スチツクフイルムと絶縁紙を併用することもで
き、例えば、絶縁紙にプラスチツクフイルムを押
出し溶融により積層した複合フイルムや、シラン
架橋プラスチツクと絶縁紙を結合させた複合フイ
ルムなどの他に、プラスチツク繊維とパルプの混
抄紙などが挙げられる。プラスチツクとしては、
ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフ
インやポリエステル、ポリフツ化ビニリデンなど
が使用できるが、好ましいプラスチツクはポリオ
レフインである。

これらの油含浸電気機器は、高電圧下で、しか
も長時間の課電を強いられるので、その使用条件
は過酷である。従つて、含浸させるべき電気絶縁
油に僅かな不純物が含まれていても、その影響は
大であるが、本発明の前記留分は、合成ゼオライ
トを触媒としているために、不飽和化合物やカル
ボニルは極めて少ない。それ故、この留分を含浸
させた油含浸電気機器は長期にわたり安定な性能
を維持する。

また、含浸油が、電気機器中のプラスチツクを
膨潤させたり、溶解したり、あるいはプラスチツ
クに対する含浸性が不充分である場合、そのよう
な箇所は、コンデンサーにおいては電界集中の原
因となるボイドを生じ、またケーブルにおいては
油流の抵抗を生じる箇所となるので好ましくな
い。しかしながら、本発明の前記留分は、プラス
チツクを膨潤させたり、溶解したりすることが少
なく、またプラスチツクに対する含浸性も良好で
ある。従つて、本発明の前記留分を含浸させたコ
ンデンサーやケーブツなどは、高電圧下において
も長期にわたつて安定である。

(ホ) 作用 本発明の上記留分は、以上に説明したように、
塩化アルニミウム触媒を使用して得た留分と比較
して、タール分、カルボニル化合物、不飽和化合
物などが少なく、プラスチツク材料を著しく膨潤
させることがなく、電気特性も良好であるから、
油含浸電気機器、特に誘電体または絶縁体の少な
くとも一部にプラスチツク材料を使用した油含浸
電気機器の含浸油として好適である。

(ヘ) 実施例 次に実施例により本発明を更に詳述する。

［製造例］ 合成ゼオライトZSM−５〔H⁺型、SiO₂／Al₂O₃
（モル比）＝60〕100gを、ステンレス製流通式反
応器に入れ、次の条件下でトルエンをエチレンで
アルキル化した。

反応温度 450℃ 圧力 大気圧 エチレン／トルエン（モル比） 0.2 WHSV 4.5 得られた反応液を蒸留し、未反応トルエン、エ
チルトルエンおよびポリエチルトルエンを含む沸
点250℃未満の留分を留去し、重質分を収率2.1％
で得た。

続いて、この重質分を減圧蒸留し、常圧換算で
275〜320℃の留分（Ａ）を得た。

この留分（Ａ）を分析したところ、主としてジ
アリールアルカンを含むものであり、その組成お
よび物性は次の通りであつた。

組成分析値 重量％ ジアリールアルカン （C_oH_2o-14） 85.0 （ｎ＝14） （15.3） （ｎ＝15） （43.8） （ｎ＝16） （25.9） その他 15.0 計100.0 物性値 臭素価 0.05cg／ｇ 流動点 −50℃以下 粘度（＠40℃） 4.6cSt 絶縁破壊電圧 70KV／2.5mm以上 体積固有抵抗率 １×10¹⁶Ω.cm 誘電率 2.53 誘電正接（＠80℃） 0.001 ［比較製造例］ 塩化アルミニウム触媒を使用して、ベンゼンと
エチレンを５：１のモル比で、130℃の温度にお
いて、反応器内で攪拌しながら１時間反応させ
た。触媒を失活させた後、未反応ベンゼン、エチ
ルベンゼンおよびポリエチルベンゼンを蒸留で除
き、残つた留分を減圧で蒸留し、常圧における沸
点が270〜320℃の留分（Ｂ）を回収した。この留
分を分析したところ、次の通りであつた。

１，１−ジフエニルエタン 36.9％ １−フエニル−１−（エチルフエニル）エタン
32.3％ その他 30.8％ 計100.0％ 実施例 アルミニウム箔を電極とし、２枚重ねのポリプ
ロピレンフイルム（厚み14μ）を誘電体として、
常法に従いこれらを巻回してコンデンサー素子を
形成し、油含浸用モデルコンデンサーを作製し
た。

次に、このモデルコンデンサーに、製造例で得
られた留分（Ａ）および（Ｂ）を真空下で含浸さ
せ、静電容量約0.4μFの油含浸コンデンサーを作
製した。

この油含浸コンデンサーに交流電圧を課電し、
そのコンデンサーが破壊するまでの時間を測定し
た。

なお、それぞれの含浸油について、15個のコン
デンサーを作製し、最大と最小の破壊時間は除外
し、残余のコンデンサーの破壊時間の平均値を以
てその値とした。結果は次の通りである。

含浸油 破壊時間（hrs.） 留分（Ａ） 850 留分（Ｂ） 320 留分（Ｃ）^(*) 330 （＊）：留分（Ｂ）を、電気絶縁油として通常
の条件により活性白土で精製したものである。

(ト) 発明の効果 前記の詳細な説明および実施例から明らかなよ
うに、本発明の電気絶縁油は、エチルトルエンの
製造プロセスにおける副生留分を原料とし、簡単
な工程により製造するので、容易かつ廉価に得ら
れると共に、タール分、カルボニル化合物、不飽
和化合物などが少ない。また、プラスチツク材料
を著しく膨潤させることはなく、電気特性も良好
である。

従って、油含浸電気機器、特に誘電体または絶
縁体の少なくとも一部にプラスチツク材料を使用
した油含浸電気機器の含浸油として好適である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 合成ゼオライト触媒の存在下に、トルエンを
   エチレンによりアルキル化し、エチルトルエンを
   製造するプロセスから得られる重質分を蒸留して
   得られる、沸点が270〜350℃の範囲にある留分を
   含有することを特徴とする電気絶縁油。 ２ 前記合成ゼオライト触媒が結晶性アルミノシ
   リケート・ゼオライトである特許請求の範囲第１
   項記載の電気絶縁油。