JPH0446146Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、ガス圧縮機、ポンプなどにおいて、
回転軸のまわりに配置され、該回転軸との間の隙
間に軸封液が供給されて高圧室と低圧室との間を
シールする軸封装置用シールリングに関する。

従来の技術 第１図は、従来シールリングを用いている液封
式の軸封装置を示す。

第１図において、ケーシング１′の中に配置さ
れている回転軸２′のまわりにはシールリング
５′が回転軸２′との間に隙間Ｄを有して配置され
ている。そして、ケーシング１′には、シールリ
ング５′を境にして一方側の高圧室３′側の部分に
軸封液の供給口４′が形成され、また他方側の低
圧室７′側の部分に軸封液の流出口６′が形成され
ている。

軸封液は、ケーシング１′の供給口４′からケー
シング１′内の高圧室３′へ供給され、シールリン
グ５′と回転軸２′との間の隙間Ｄを流れ、低圧室
７′へ流入し、ケーシング１′の流出口６′より機
外へ流れ出る。

このように、シールリング５′と回転軸２′との
間の隙間Ｄに軸封液を流すことにより、高圧室
３′と低圧室７′との間をシールする構造となつて
いる。そして、シールリング５′は高圧室３′と低
圧室７′との圧力差によりケーシング１′に低圧側
端面Ｃにおいて押付けられている。

考案が解決しようとする課題 以上述べた従来例において、回転軸２′の回転
時には、シールリング５′と回転軸２′との間の隙
間Ｄ内で動力学的な力が発生し、この隙間Ｄ内の
軸封液のばね作用により、回転軸２′の半径方向
の変動に対して、シールリング５′は隙間Ｄ内の
軸封液を介して追従して半径方向に変位する。

しかし、回転軸２′が高速回転する場合には、
シールリング５′と回転軸２′との間の隙間Ｄ内の
軸封液のばね作用が十分剛性の高いものでない
と、シールリング５′は回転軸２′の変動に対して
追従できなくなり、シールリング５′と回転軸
２′との接触を招き、シールリング５′が焼損する
問題があつた。

本考案は、このような従来技術の課題を解決す
るためになされたもので、シールリングと回転軸
との間の隙間内の軸封液のばね作用の剛性を高く
し、高速回転における回転軸の変動にシールリン
グが十分追従し、焼損を招くことがない軸封装置
用シールリングを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段 上記の課題を解決するために、本考案は、回転
軸のまわりに配置され、該回転軸との間の隙間に
軸封液が供給されて高圧室と低圧室との間をシー
ルする軸封装置用シールリングにおいて、該シー
ルリングの内周面に円周溝を形成するとともに、
該円周溝を低圧室へ連通する排液孔を内周面を等
分して複数個設け、かつ前記円周溝と排液孔と低
圧側端部とで囲まれる複数個の面の各中央部に、
外周側から内周面に連通する外周側寄りの導入孔
と該導入孔より穴径の小さい内周面寄りの供給孔
とを設けものである。

作 用 上記の手段によれば、シールリングはその内周
面に形成された円周溝によりシール作用をなす高
圧室側のシール部と軸受作用をなす低圧側の静圧
軸受部とに分けられ、該シール部には高圧室の軸
封液が直接流れ、シールリングの円周溝、排液孔
を通つて低圧室へ流れ、また該静圧軸受部には高
圧室の軸封液の一部分がシールリングの導入孔及
び供給孔を通して流れる。

実施例 以下、第２図１及び２を参照して本考案の一実
施例について詳述する。

これらの図において、ケーシング１の中に配置
されている回転軸２のまわりにはシールリング５
が回転軸２との間に隙間Ｄを有して配置されてい
る。そして、ケーシング１には、シールリング５
を境にして一方側の高圧室３側の部分に軸封液の
供給口４が形成され、また他方側の低圧室７側の
部分に軸封液の流出口６が形成されている。ここ
までの構成は、第１図に示した従来例のものと同
様である。

しかして、本考案によれば、シールリング５の
内周面に円周溝１０を形成されているとともに、
この円周溝１０を低圧室７へ連通する排液孔１１
が内周面を等分して複数個設けられ、かつ円周溝
１０と排液孔１１と低圧側端部とで囲まれる複数
個の面の各中央部に、外周側から内周面に連通す
る外周側寄りの導入孔８とこの導入孔８より穴径
の小さい内周面寄りの供給孔９とが設けられてい
る。

したがつて、シールリング５はその内周面に形
成された円周溝１０によりシール作用をなす高圧
室３側のシール部Ｅと軸受作用をなす低圧室側の
静圧軸受部Ｆとに分けられ、ケーシング１の供給
口４からケーシング１内の高圧室３へ供給された
軸封液はシール部Ｅへ直接流れ、それからシール
リング５の円周溝１０及び複数個の排液孔１１を
通つて低圧室７へ流れ、これにより高圧室３と低
圧室７との間をシールする。

一方、高圧室３の軸封液の一部分は、シールリ
ング５の複数個の導入孔８及び供給孔９を通して
静圧軸受部Ｆへ流れる。この場合、供給孔９の出
口部の圧力は、シールリング５と回転軸２との間
の隙間Ｄの関数であり、隙間Ｄが大きいと供給孔
９の出口部での圧力低下が大きくなり、また、隙
間Ｄが小さいと供給孔９の出口部の圧力低下が小
さくなる。したがつて、シールリング５の静圧軸
受部Ｆでは、回転軸２の偏心に対して、それを復
元しようとするばね効果を有する。

考案の効果 以上述べたように、本考案によれば、回転軸の
まわりに配置され、該回転軸との間の隙間に軸封
液が供給されて高圧室と低圧室との間をシールす
る軸封装置シールリングにおいて、該シールリン
グをシール部と静圧軸受部とに分け、該静圧軸受
部を設けることにより、回転軸の回転によりシー
ルリングと回転軸との間の隙間内に発生する動力
学的力によるシール隙間内の液の剛性に加え、静
圧軸受としての剛性を期待でき、これにより高速
回転における回転軸の変動にシールリングが十分
に追従し、シールリングの焼損を防止することが
できる効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のシールリングを用いた軸封装置
を示す要部の断面図、第２図１は本考案によるシ
ールリングを用いた軸封装置の一例を示す要部の
断面図、第２図２は第２図１のＡ−Ａ矢視図であ
る。 １……ケーシング、２……回転軸、３……高圧
室、４……軸封液供給口、５……シールリング、
６……軸封液流出口、７……低圧室、８……導入
孔、９……供給孔、１０……円周溝、１１……排
液孔、Ｄ……隙間、Ｅ……シール部、Ｆ……静圧
軸受部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 回転軸のまわりに配置され、該回転軸との間の
   隙間に軸封液が供給されて高圧室と低圧室との間
   をシールする軸封装置用シールリングにおいて、
   該シールリングの内周面に円周溝を形成するとと
   もに、該円周溝を低圧室へ連通する排液孔を内周
   面を等分して複数個設け、かつ前記円周溝と排液
   孔と低圧側端部とで囲まれる複数個の面の各中央
   部に、外周側から内周面に連通する外周側寄りの
   導入孔と該導入孔より穴径の小さい内周面寄りの
   供給孔とを設けたことを特徴とする軸封装置用シ
   ールリング。