JPH0440834Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は孔明等の工作機械に使用するもので、
特に被加工物の加工位置をその軸線に沿つた他の
加工位置に切り替える被加工物の加工位置決め装
置に関するものである。

（従来の技術） 一般に、孔明等の工作機械はできるだけ多種類
の加工が可能なように、孔の深さの位置決め、テ
ーブルの自動送り等、幾つかの機能をもたせてい
るが、被加工物の複数箇所に同じ孔径の孔明を施
したり、共通形状の大小異なつた被加工物の同一
箇所に同じ径の孔を明けたりする場合、孔明治具
を交替する、いわゆる段取替えの時間を低減する
ために簡便な位置決め装置が使用されている。こ
の種の位置決め装置としては、第３図に示すよう
なものがある。この図は、水平方向に延設された
搬送レール１上を被加工物としてのピストン２が
搬送爪３の移動によつて押されながら移送され、
ピストン２が工作機械に到達した位置で、その切
削工具４が進出してボーリング加工を施す状態を
示している。このボーリング加工をピストン２に
施すために、ピストン２を保持する治具構造は、
まず、上方に位置する治具本体５に貫通孔６が形
成され、その貫通孔６の下部は大径に形成された
ボア部７となつている。ボア部には、基準金８の
スリーブ部９が上下動できるように嵌まり込んで
いる。基準金８はボルト１０によつて治具本体５
に固定されるようになつている。そして基準金８
のスリーブ部９と反対側にカツプ状の凹部１１が
形成され、上記の治具本体５の貫通孔６から凹部
１１へ円筒状のクランプ部材１２が摺動可能に嵌
まり込んでいる。基準金８の凹部１１内における
クランプ部材１２の先端部は上記貫通孔６よりも
大径に形成された段部１３を有し、さらに、切削
工具４とは反対側の位置にはピストン２の水平の
姿勢を維持するためにクランプ部１４を横方向に
突出させると共に下方へも、わずかに突き出させ
る。このクランプ部１４に対向した基準金８の凹
部１１内は、上記のクランプ部１４と共にピスト
ン２の上面を受け止める段部１５が形成されてい
る。そして、基準金８の上面と治具本体５の下面
との間には、所定厚味のスペーサ１６が位置し、
着脱自在となつている。このように、ピストン２
が基準金８によつて加工位置決めする際、スペー
サ１６を取り外したときと、挿入したときとの、
二箇所の加工位置に切替えることができ下方に位
置する他のクランプ部材１２ａの上昇によつてピ
ストン２を基準金８に押し上げることによつて加
工位置決めを行なつている。

（考案が解決しようとする問題点） 通常、孔明後の孔径の精度は、孔径公差、孔の
傾き、孔の真円度等によつて決まるものである
が、上記構成の位置決めでは、段取替えの際、切
削冷却液や切粉等の付着がスペーサ、基準金の上
面、また治具本体の下面に生じて、上記した精度
を得るために、清掃、寸法確認等が必要である。
この段取替えに要する時間のために、ここで例に
取り上げたボーリング加工の前後の工程は停止さ
せることになり、流れ作業に支障をきたすと共
に、稼動時間に重要な影響を与える。さらに、被
加工物の加工位置毎に専用機械を設置すること
は、床面積の問題がある。

そこで、本考案は被加工物の加工位置を他の位
置に切替えるために、治具本体にクランプ部材を
嵌め込んで、そのクランプ部材をケースに内蔵し
たスペーサの切替えによつて正確に位置決めする
ことによつて、段取替えの時間が不要で、しかも
高精度に加工位置を切替えることができる被加工
物の加工位置決め装置を提供することを目的とす
る。

（問題点を解決するための手段） 本考案は、上記目的を達成するための手段とし
て、密閉したケースに孔を設けて先端に基準金を
取付けた一方のクランプ部材を貫通し、該貫通し
たクランプ部材の前記基準金に対向させて同軸上
に他方のクランプ部材を昇降自在に設け、一方の
クランプ部材の基準金と上昇した位置における他
方のクランプ部材の間に被加工物を把持し、該把
持した状態で前記一方のクランプ部材を昇降させ
ることにより、前記被加工物の二位置に加工位置
を定めるようにし、前記ケースを貫通したクラン
プ部材のケース内に位置するところに段面を設け
て環状体を形成し、ケース内の該環状体に対向す
る部位にカラー部材を装着し、該カラー部材と環
状体との間に、シリンダにより往復動するスペー
サを係脱自在に臨ませた構成としたものである。

（作用） 上記構成によつて、被加工物の最初の加工位置
が、例えば切削工具によつて加工された後、同一
被加工物または装置の異なる他の被加工物の加工
位置に切替える場合、ケース内に形成されたスペ
ーサをクランプ部材の段面に係合させるか、また
は離脱させるかによつて加工位置の位置決めを行
うことができる。このようにして切削冷却液や切
粉等がクランプ部材の段面等に付着することがな
いので、段取替えの時間が不要で、高精度の加工
位置の切替えが実現できる。

（実施例） 以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。まず、第１図は、本考案の加工位置決め装置
１７であつて、この加工位置決め装置１７の一部
は、第３図に基づき、従来の技術としてすでに説
明した箇所を含むので、その箇所は第３図と同じ
符号を付すことによつて説明を省略する。第１図
に示す加工位置決め装置１７の一部をなす治具本
体５には貫通孔６が形成され、その端部は後述す
るケース１８の蓋１９に形成された挿入孔２０の
途中まで嵌め込まれている。蓋１９の内側から
は、貫通孔６よりも大径に形成されたフランジ２
１を有するカラー部材２２が治具本体５の端部に
接して、同じく挿入孔２０に嵌め込まれている。
ケース１８は上記の蓋１９と、蓋１９に平行に形
成された容器２３とからなり、容器２３が密封状
に蓋１９に取り付けられたものである。容器２３
には、治具本体５に形成された貫通孔６に対向し
て貫通孔６よりも大径の摺動孔２４が形成されて
いる。この摺動孔２４には、上記した治具本体５
の貫通孔６およびカラー部材２２を通してピスト
ン状のクランプ部材１２が摺動可能に嵌め込まれ
ている。クランプ部材１２の上部には治具本体５
内を往復動するピストン２５が形成され、環状体
２８および基準金８を上下動させる。ピストン２
５の下端面２６が治具本体５に接する前に段面２
７、端面２９がスペーサ１６に接し、位置決めさ
れる。クランプ部材１２の先端部分、すなわち摺
動孔２４に嵌まり込む箇所には、摺動孔２４の内
径に応じた径の段面２７を有する環状体２８が形
成されている。この環状体２８の断面２７と、上
記したカラー部材２２の端面２９との間には、ス
ペーサ１６が係脱自在となる。このスペーサ１６
は第２図に示すように略Ｕ字形状で所定の厚味を
有する部材であり、クランプ部材１２を挟むよう
に形成されている。スペーサ１６にはシリンダ３
０のピストンロツド３１が取り付けられて、上記
したカラー部材２２の端面２９と環状体２８の段
面２７との間に対して進退動可能となつている。
上記したクランプ部材１２の下端部に形成された
環状体２８の下端面には、被加工物としてのピス
トン２を嵌め込むように凹部１１を有する基準金
８が図示省略されているが、取り付け、取り外し
可能に位置している。さらに基準金８の下方に
は、第３図に基づいてすでに説明した他のクラン
プ部材１２ａが昇降自在に設けられている。

以上の構成からなる加工位置決め装置の動作を
説明すると、第１図に基づいて、まず、ピストン
孔３２を有するピストン２が搬送レール１によつ
て移送されてきて、ピン孔３２に対してボーリン
グ加工を施すときは、そのピン孔３２に対応した
位置にピストン２を位置決めするために、クラン
プ部材１２を一度、下降させて、カラー部材２２
の端面２９と段面２７との間隔を広げ、スペーサ
１６を進出させて、その間に挿入する。そして、
クランプ部材１２ａを上昇させることによつて、
切削工具４とピン孔３２の中心軸が一致する。次
にピストン２が前回のものよりも大きく、このピ
ン孔３２の中心軸が、スペーサ１６の厚味に等し
い寸法だけ前回のピン孔３２の中心軸よりも下方
に位置するときは、クランプ部材１２を下降させ
スペーサ１６を後退させた後、クランプ部材１２
を上昇させることによつて段面２７はカラー部材
２２の端面２９に当接することによつてピン孔３
２と切削工具４との中心軸は一致する。そして、
他のクランプ部材１２を上昇させてピストン２を
基準金８に押しつけ固定することによつてボーリ
ング加工が行なわれる。

本実施例は、一種類の基準金８について述べた
が、ピストン２の加工位置に応じて幾種類ものス
ペーサを用意しておけが幾種類ものピストンの加
工位置決めが可能となり、また、ピストンのみな
らず、多くの被加工物の形状に応じたスペーサを
用意することによつて、その加工位置決めができ
る。このようにして本考案の加工位置決め装置に
よつて、段取替えの時間が不要で、高精度の加工
位置の切替えができる。

（考案の効果） 以上説明したように、本考案による被加工物の
加工位置決め装置は、密閉したケースの内部で一
方のクランプ部材に対してスペーサを係脱自在に
して被加工物の位置変更を行なうようにし、この
クランプ部材とこれに対向した他方のクランプ部
材で被加工物を把持して加工を行なうために、ス
ペーサへの切粉や切削液の付着についての影響を
考慮することなく、高精度の位置決めが迅速に行
なえることになる。したがつて、加工不良を生ず
ることがない。また他方のクランプ部材も昇降自
在に設けたことにより、被加工物の把持が確実に
なる。スペーサを一方のクランプ部材に対して係
脱自在に設けたことにより、このスペーサを進退
させるだけで基準金の位置を自動的に変えること
ができるから、自動段階での異種製品のランダム
生産にも対応できることになる。スペーサが係合
するカラー部材の端面と一方のクランク部材の段
面との当接部がケース内にあることによつて、こ
の部分への潤滑油の供給を安定して行なうことが
できることから、位置決めのときに生ずる微小な
押圧の変化が避けられるので寸法誤差は発生せ
ず、位置決めが高精度となつて品質が保証され
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案の加工位置決め装置を示す縦
断面図、第２図は、第１図に矢印Ａ−Ａによつて
示す平断面図、第３図は、従来の位置決め装置を
示す縦断面図である。 ２……被加工物（ピストン）、１２……クラン
プ部材、１６……スペーサ、１８……ケース、２
７……段面、３０……シリンダ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 密閉したケースに孔を設けて先端に基準金を取
   付けた一方のクランプ部材を貫通し、該貫通した
   クランプ部材の前記基準金に対向させて同軸上に
   他方のクランプ部材を昇降自在に設け、一方のク
   ランプ部材の基準金と上昇した位置における他方
   のクランプ部材の間に被加工物を把持し、該把持
   した状態で前記一方のクランプ部材を昇降させる
   ことにより、前記被加工物の二位置に加工位置を
   定めるようにし、前記ケースを貫通したクランプ
   部材のケース内に位置するところに段面を設けて
   環状体を形成し、ケース内の該環状体に対向する
   部位にカラー部材を装着し、該カラー部材と環状
   体との間に、シリンダにより往復動するスペーサ
   を係脱自在に臨ませたことを特徴とする被加工物
   の加工位置決め装置。