JPH0422672B2 - - Google Patents
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- JPH0422672B2 JPH0422672B2 JP60178032A JP17803285A JPH0422672B2 JP H0422672 B2 JPH0422672 B2 JP H0422672B2 JP 60178032 A JP60178032 A JP 60178032A JP 17803285 A JP17803285 A JP 17803285A JP H0422672 B2 JPH0422672 B2 JP H0422672B2
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- Arc Welding In General (AREA)
Description
「産業上の利用分野」
本発明は、耐食性および機械的特性に優れるよ
うに高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼材
を溶接できる方法に関する。 「従来技術」 化学プラント等には、種々の材料を合せ材とし
たクラツド鋼が多数使用されているが、中でも、
オーステナイト系ステンレスクラツド鋼は、優れ
た耐食性をもつが故に、最も広く使用される材料
となつている。しかし、本クラツド鋼は、塩化物
環境下において、応力腐食割れを発生する危険性
を有しており、このような環境下では、従来、高
Ni系合金あるいはTi材を合せ材としたクラツド
鋼が使用されている。しかし、これらの材料は、
高価であることから、より低廉で、かつ、高耐食
性を有する材料の開発が望まれていた。 そこで近年、この要求を受け、C(炭素)、N
(窒素)等の不純物元素量の低減化によつて、耐
食性を著しく改善した高純度フエライト系ステン
レス鋼が開発され、実際に使用されるようになつ
たが、本鋼材の使用方法としても厚板構造物に対
しては、経済性の面からクラツド鋼として用いる
方向へとより拡大していく可能性がある。ところ
が、現状では、この種の高純度フエライト系ステ
ンレスクラツド鋼材を溶接するには、従来、チタ
ンクラツド鋼材の溶接に用いられているような当
て板を用いた溶接法によらざるを得ない。すなわ
ち、第2図に示すように、炭素鋼製の母材1の片
面に高純度フエライト系ステンレス板2を接合し
た高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼の溶
接は、母材1,1同士を溶接した後、前記ステン
レス板2,2間の間隙を高純度フエライト系ステ
ンレス鋼のスペーサ3で埋める。次いで、母材1
に小孔4をあけるとともに、その小孔4を通じて
母材1の表面1a側からアルゴンガスを母材1の
溶接部の裏面まで流入させ、これにより、その溶
接部裏面を大気から保護する。そして、前記ステ
ンレス板2と同材質の当て板5を、前記スペーサ
3を覆つた状態で前記ステンレス板2,2の端部
表面間にすみ肉溶接を行つていた。 「発明が解決しようとする問題点」 ところが、前記高純度フエライト系ステンレス
クラツド鋼材の従来の溶接方法にあつては、小孔
4の形成や当て板5の設置等、複雑な製作工程を
要し、更に溶接部に応力集中部を形成してしまう
問題がある上に、溶接部の検査において最も信頼
性の高い放射線透過試験は高純度フエライト系ス
テンレス板2と当て板5との溶接部であるすみ肉
溶接部6に対しては一般には適用することができ
ず、本溶接部6に対する検査方法は液体浸透探傷
試験に限定されていることなど品質管理上問題が
ある。 そこで、高純度フエライト系ステンレスクラツ
ド鋼材同士を直接、肉盛り溶接によつて溶接する
ことが考えられ、この方法によればより高品質の
溶接構造を得る可能性がある。しかしながら、こ
の方法では、炭素鋼製の母材1,1同士の突合せ
溶接を行い、その溶接部の上層を高純度フエライ
ト系ステンレス鋼溶加棒を用いて肉盛り溶接によ
り仕上げることになるが、その肉盛り溶接の際
に、前記ステンレス板2よりもC含有量の多い炭
素鋼製の母材1及び母材1の溶接部から、Cが高
純度フエライト系ステンレス鋼溶加棒を用いた溶
接部分にピツクアツプされ、この部分のC含有量
が増加して、機械的特性に、特に、曲げ特性の著
しい劣化を生じてしまう問題がある。そしてこの
曲げ特性の劣化現象は、溶接のままの状態では勿
論のこと、各種規格および仕様で定められる溶接
後の熱処理を行つた肉盛り溶接部において特に顕
著になつてしまう傾向にある。 本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもの
で、溶接のままの状態では勿論、溶接後の熱処理
を経た場合であつても、良好な機械的特性と耐食
性とを兼ね備えた肉盛り溶接部を得ることができ
る高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼材に
対する溶接方法を提供することを目的とする。 「問題点を解決するための手段」 上記目的を達成するために、本発明の方法は、
高純度フエライト系ステンレス鋼材を母材に対す
る合せ材に使用した高純度フエライト系ステンレ
スクラツド鋼材に対して、母材同士を母材と同材
質の溶接材料により溶接した後、C0.01%以下、
N0.015%以下、Zr0.4%以下を含有し、かつ上記
合せ材に使用した高純度フエライト系ステンレス
鋼材よりCr含有量の低いフエライト系ステンレ
ス鋼からなる下盛り溶加棒を使用して前記母材同
士の溶接部の上部を溶接し、次いで、前記合せ材
と同等の組成を有する高純度フエライト系ステン
レス鋼からなる上盛り溶加棒を用いて前記合せ材
の肉盛り溶接を行うようにしたものである。 「作用」 本発明の方法では、母材の溶接部の上部を溶接
する下盛り溶加棒として、Zrを意図的に添加す
るとともに合せ材よりCr含有量を低くした低炭
素かつ低窒素のフエライト系ステンレス鋼を使用
することによつて、合せ材と同等の材料からなる
上盛り溶加棒によつて溶接が行われる合せ材の肉
盛り溶接部分へCやNがピツクアツプされるのを
抑制する。 「実施例」 以下、本発明の方法の一実施例を説明する。 第1図は本発明の方法の一実施例によつて施工
された高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼
10の溶接部を示している。このクラツド鋼10
は、炭素鋼からなる板状の母材10Aの一面に、
母材10Aより薄く高純度フエライト系ステンレ
ス鋼から成る合せ材10Bが接合されて構成され
たもので、その合せ材10Bは、C0.025%以下、
N0.025%以下(但しC+N量は0.04%以下)、
Cr16〜32%、Mo0.5〜4.5%残部Feの組成を有す
るものである。 前記クラツド鋼10,10同士を溶接するには
まず、母材10A,10A同士を母材10Aと同
材質の溶接材料で突合せ溶接した後に、その母材
溶接部11の上部を、Cr15〜27.5%、Ni0.6%以
下、C0.01%以下、N0.015%以下、Zr0.4%以下、
残部Feの組成を有するフエライト系ステンレス
鋼から成る下盛り溶加棒を用いて溶接し、下盛り
溶接部12(図面では1層)を形成する。次い
で、この下盛り溶接部12の上層を前記合せ材1
0Bと同材質の高純度フエライト系ステンレス鋼
よりなる上盛り溶加棒を用いて肉盛り溶接を行
い、1つ以上の層(図面では2層)の上盛り溶接
部13を形成する。 以上説明したような溶接方法を実施した場合、
下盛り溶接部12が低炭素かつ低窒素であるため
に、溶接中に上盛り溶接部13のCやNの含有量
の上昇はほとんど生じない。このため機械的強度
および耐食性に優れるとともに、溶接後に熱処理
を施したとしても機械的特性に優れ、かつ、耐食
性に優れた溶接部を形成できる。また、下盛り溶
接部12の比較的Cr量が少なく、かつ、Cとの
親和力の強い安定化元素であるZrを含有してい
ることからも、前記溶接部はより良好な機械的特
性を呈する。したがつて、前記方法を実施して溶
接された前記クラツド鋼10は、化学プラント機
器、食品化工機械、熱交換器、温水器用等の腐食
環境での使用に好適である。また、前記方法は、
当て板5を用いた従来の溶接法に比較して溶接作
業が容易になるとともに、本溶接部は突合せ溶接
部であることから放射線透過試験を製品検査用に
導入することが可能になり、これによつて溶接部
分の品質の安定化をなし得る。なお、フエライト
系ステンレス鋼からなる下盛り溶加棒のC含有量
が0.01%より多かつたり、N含有量が0.015%よ
り多いと、耐食性及び曲げ延性が低下し、実用上
支障が出る。また、Zr含有量が0.4%を越えると、
溶接時に凝固割れが生じやすくなる。 「実験例」 次に、本発明の溶接方法と他の溶接方法によつ
て施工した高純度フエライト系ステンレスクラツ
ド鋼10の溶接部の機械的特性について比較実験
を行つた結果を示す。なお、第1図における母材
10Aの母材溶接部11は母材10Aと同材質の
溶接材料を用いて溶接されるが、この部分の溶接
は炭素鋼の溶接施工であるため何等困難な問題は
ない。問題となる箇所は合せ材10Bの溶接部、
すなわち、下盛り溶接部12、上盛り溶接部13
である。そこで、本実験では、この箇所の現象を
より詳細に検討することを目的として、母材10
Aとなる炭素鋼板上に直接肉盛り溶接部を形成
し、その溶接部の機械的特性を調べることにし
た。また、本実験では、従来の溶接方法によるも
のとして、母材10A上に合せ材10Bと同等の
組成の高純度フエライト系ステンレス鋼からなる
溶加棒によつて肉盛り溶接して溶接部を形成した
ものを採用する一方、本発明の方法によるものと
してCr量及びZr量を種々に変えた下盛り溶加棒
を用いて下盛り溶接を行つたものを検討し、特
に、Cr量及びZr量の及ぼす効果について詳細に
検討した まず、従来の方法では、第1表の炭素鋼からな
る母材上に同表中の高純度フエライト系ステンレ
ス溶加棒により第2表の溶接条件に従つて肉盛り
溶接を行い、その肉盛り溶接部に関して試験温度
−20℃までの側曲げ試験を実施するとともに、そ
の肉盛り溶接部に対する熱処理の実施前後におけ
る曲げ延性の変化を調べた。第3図及び第4図は
その各結果を示すもので、第3図から、熱処理前
においては前記肉盛り溶接部は全ての試験温度範
囲で良好な曲げ延性を呈することがわかるが、第
4図から、溶接後熱処理を行うとその曲げ延性は
急激に低下することがわかる。この延性低下の理
由は、溶接後熱処理の実施に伴い、母材中のCが
Cr炭化物として粒界に析出することによつて肉
盛り溶接部を脆化させたものと考えられる。 次に、本発明の方法では、第3表に示した母材
(該母材の組成は第1表のものと同一)上に、第
3表に示すようにCr量を変えた2種の低炭素フ
エライト系ステンレス鋼溶加棒を用いて溶込率25
%並びに35%の条件で1層の下盛り溶接を行つた
後、その上層に第3表の高純度フエライト系ステ
ンレス溶加棒(該溶加棒の組成は第1表のものと
同一)を用いて所定の条件で2層の上盛り溶接を
行い、さらに、その肉盛り溶接部に熱処理を実施
した後、側曲げ試験を行つた。第5図はその結果
を示すもので、下盛り溶加棒中のCr量の変化
うに高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼材
を溶接できる方法に関する。 「従来技術」 化学プラント等には、種々の材料を合せ材とし
たクラツド鋼が多数使用されているが、中でも、
オーステナイト系ステンレスクラツド鋼は、優れ
た耐食性をもつが故に、最も広く使用される材料
となつている。しかし、本クラツド鋼は、塩化物
環境下において、応力腐食割れを発生する危険性
を有しており、このような環境下では、従来、高
Ni系合金あるいはTi材を合せ材としたクラツド
鋼が使用されている。しかし、これらの材料は、
高価であることから、より低廉で、かつ、高耐食
性を有する材料の開発が望まれていた。 そこで近年、この要求を受け、C(炭素)、N
(窒素)等の不純物元素量の低減化によつて、耐
食性を著しく改善した高純度フエライト系ステン
レス鋼が開発され、実際に使用されるようになつ
たが、本鋼材の使用方法としても厚板構造物に対
しては、経済性の面からクラツド鋼として用いる
方向へとより拡大していく可能性がある。ところ
が、現状では、この種の高純度フエライト系ステ
ンレスクラツド鋼材を溶接するには、従来、チタ
ンクラツド鋼材の溶接に用いられているような当
て板を用いた溶接法によらざるを得ない。すなわ
ち、第2図に示すように、炭素鋼製の母材1の片
面に高純度フエライト系ステンレス板2を接合し
た高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼の溶
接は、母材1,1同士を溶接した後、前記ステン
レス板2,2間の間隙を高純度フエライト系ステ
ンレス鋼のスペーサ3で埋める。次いで、母材1
に小孔4をあけるとともに、その小孔4を通じて
母材1の表面1a側からアルゴンガスを母材1の
溶接部の裏面まで流入させ、これにより、その溶
接部裏面を大気から保護する。そして、前記ステ
ンレス板2と同材質の当て板5を、前記スペーサ
3を覆つた状態で前記ステンレス板2,2の端部
表面間にすみ肉溶接を行つていた。 「発明が解決しようとする問題点」 ところが、前記高純度フエライト系ステンレス
クラツド鋼材の従来の溶接方法にあつては、小孔
4の形成や当て板5の設置等、複雑な製作工程を
要し、更に溶接部に応力集中部を形成してしまう
問題がある上に、溶接部の検査において最も信頼
性の高い放射線透過試験は高純度フエライト系ス
テンレス板2と当て板5との溶接部であるすみ肉
溶接部6に対しては一般には適用することができ
ず、本溶接部6に対する検査方法は液体浸透探傷
試験に限定されていることなど品質管理上問題が
ある。 そこで、高純度フエライト系ステンレスクラツ
ド鋼材同士を直接、肉盛り溶接によつて溶接する
ことが考えられ、この方法によればより高品質の
溶接構造を得る可能性がある。しかしながら、こ
の方法では、炭素鋼製の母材1,1同士の突合せ
溶接を行い、その溶接部の上層を高純度フエライ
ト系ステンレス鋼溶加棒を用いて肉盛り溶接によ
り仕上げることになるが、その肉盛り溶接の際
に、前記ステンレス板2よりもC含有量の多い炭
素鋼製の母材1及び母材1の溶接部から、Cが高
純度フエライト系ステンレス鋼溶加棒を用いた溶
接部分にピツクアツプされ、この部分のC含有量
が増加して、機械的特性に、特に、曲げ特性の著
しい劣化を生じてしまう問題がある。そしてこの
曲げ特性の劣化現象は、溶接のままの状態では勿
論のこと、各種規格および仕様で定められる溶接
後の熱処理を行つた肉盛り溶接部において特に顕
著になつてしまう傾向にある。 本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもの
で、溶接のままの状態では勿論、溶接後の熱処理
を経た場合であつても、良好な機械的特性と耐食
性とを兼ね備えた肉盛り溶接部を得ることができ
る高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼材に
対する溶接方法を提供することを目的とする。 「問題点を解決するための手段」 上記目的を達成するために、本発明の方法は、
高純度フエライト系ステンレス鋼材を母材に対す
る合せ材に使用した高純度フエライト系ステンレ
スクラツド鋼材に対して、母材同士を母材と同材
質の溶接材料により溶接した後、C0.01%以下、
N0.015%以下、Zr0.4%以下を含有し、かつ上記
合せ材に使用した高純度フエライト系ステンレス
鋼材よりCr含有量の低いフエライト系ステンレ
ス鋼からなる下盛り溶加棒を使用して前記母材同
士の溶接部の上部を溶接し、次いで、前記合せ材
と同等の組成を有する高純度フエライト系ステン
レス鋼からなる上盛り溶加棒を用いて前記合せ材
の肉盛り溶接を行うようにしたものである。 「作用」 本発明の方法では、母材の溶接部の上部を溶接
する下盛り溶加棒として、Zrを意図的に添加す
るとともに合せ材よりCr含有量を低くした低炭
素かつ低窒素のフエライト系ステンレス鋼を使用
することによつて、合せ材と同等の材料からなる
上盛り溶加棒によつて溶接が行われる合せ材の肉
盛り溶接部分へCやNがピツクアツプされるのを
抑制する。 「実施例」 以下、本発明の方法の一実施例を説明する。 第1図は本発明の方法の一実施例によつて施工
された高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼
10の溶接部を示している。このクラツド鋼10
は、炭素鋼からなる板状の母材10Aの一面に、
母材10Aより薄く高純度フエライト系ステンレ
ス鋼から成る合せ材10Bが接合されて構成され
たもので、その合せ材10Bは、C0.025%以下、
N0.025%以下(但しC+N量は0.04%以下)、
Cr16〜32%、Mo0.5〜4.5%残部Feの組成を有す
るものである。 前記クラツド鋼10,10同士を溶接するには
まず、母材10A,10A同士を母材10Aと同
材質の溶接材料で突合せ溶接した後に、その母材
溶接部11の上部を、Cr15〜27.5%、Ni0.6%以
下、C0.01%以下、N0.015%以下、Zr0.4%以下、
残部Feの組成を有するフエライト系ステンレス
鋼から成る下盛り溶加棒を用いて溶接し、下盛り
溶接部12(図面では1層)を形成する。次い
で、この下盛り溶接部12の上層を前記合せ材1
0Bと同材質の高純度フエライト系ステンレス鋼
よりなる上盛り溶加棒を用いて肉盛り溶接を行
い、1つ以上の層(図面では2層)の上盛り溶接
部13を形成する。 以上説明したような溶接方法を実施した場合、
下盛り溶接部12が低炭素かつ低窒素であるため
に、溶接中に上盛り溶接部13のCやNの含有量
の上昇はほとんど生じない。このため機械的強度
および耐食性に優れるとともに、溶接後に熱処理
を施したとしても機械的特性に優れ、かつ、耐食
性に優れた溶接部を形成できる。また、下盛り溶
接部12の比較的Cr量が少なく、かつ、Cとの
親和力の強い安定化元素であるZrを含有してい
ることからも、前記溶接部はより良好な機械的特
性を呈する。したがつて、前記方法を実施して溶
接された前記クラツド鋼10は、化学プラント機
器、食品化工機械、熱交換器、温水器用等の腐食
環境での使用に好適である。また、前記方法は、
当て板5を用いた従来の溶接法に比較して溶接作
業が容易になるとともに、本溶接部は突合せ溶接
部であることから放射線透過試験を製品検査用に
導入することが可能になり、これによつて溶接部
分の品質の安定化をなし得る。なお、フエライト
系ステンレス鋼からなる下盛り溶加棒のC含有量
が0.01%より多かつたり、N含有量が0.015%よ
り多いと、耐食性及び曲げ延性が低下し、実用上
支障が出る。また、Zr含有量が0.4%を越えると、
溶接時に凝固割れが生じやすくなる。 「実験例」 次に、本発明の溶接方法と他の溶接方法によつ
て施工した高純度フエライト系ステンレスクラツ
ド鋼10の溶接部の機械的特性について比較実験
を行つた結果を示す。なお、第1図における母材
10Aの母材溶接部11は母材10Aと同材質の
溶接材料を用いて溶接されるが、この部分の溶接
は炭素鋼の溶接施工であるため何等困難な問題は
ない。問題となる箇所は合せ材10Bの溶接部、
すなわち、下盛り溶接部12、上盛り溶接部13
である。そこで、本実験では、この箇所の現象を
より詳細に検討することを目的として、母材10
Aとなる炭素鋼板上に直接肉盛り溶接部を形成
し、その溶接部の機械的特性を調べることにし
た。また、本実験では、従来の溶接方法によるも
のとして、母材10A上に合せ材10Bと同等の
組成の高純度フエライト系ステンレス鋼からなる
溶加棒によつて肉盛り溶接して溶接部を形成した
ものを採用する一方、本発明の方法によるものと
してCr量及びZr量を種々に変えた下盛り溶加棒
を用いて下盛り溶接を行つたものを検討し、特
に、Cr量及びZr量の及ぼす効果について詳細に
検討した まず、従来の方法では、第1表の炭素鋼からな
る母材上に同表中の高純度フエライト系ステンレ
ス溶加棒により第2表の溶接条件に従つて肉盛り
溶接を行い、その肉盛り溶接部に関して試験温度
−20℃までの側曲げ試験を実施するとともに、そ
の肉盛り溶接部に対する熱処理の実施前後におけ
る曲げ延性の変化を調べた。第3図及び第4図は
その各結果を示すもので、第3図から、熱処理前
においては前記肉盛り溶接部は全ての試験温度範
囲で良好な曲げ延性を呈することがわかるが、第
4図から、溶接後熱処理を行うとその曲げ延性は
急激に低下することがわかる。この延性低下の理
由は、溶接後熱処理の実施に伴い、母材中のCが
Cr炭化物として粒界に析出することによつて肉
盛り溶接部を脆化させたものと考えられる。 次に、本発明の方法では、第3表に示した母材
(該母材の組成は第1表のものと同一)上に、第
3表に示すようにCr量を変えた2種の低炭素フ
エライト系ステンレス鋼溶加棒を用いて溶込率25
%並びに35%の条件で1層の下盛り溶接を行つた
後、その上層に第3表の高純度フエライト系ステ
ンレス溶加棒(該溶加棒の組成は第1表のものと
同一)を用いて所定の条件で2層の上盛り溶接を
行い、さらに、その肉盛り溶接部に熱処理を実施
した後、側曲げ試験を行つた。第5図はその結果
を示すもので、下盛り溶加棒中のCr量の変化
【表】
【表】
【表】
【表】
【表】
【表】
【表】
に対して、割れが発生しない最も低い温度(以下
割れ発生遷移温度と称す)がどのように変わるか
を示している。これによれば、下盛りの溶加棒中
のCr量が少なくなる程肉盛り溶接部の曲げ延性
が著しく改善され、例えば溶加棒中のCr量が19
%の場合、溶込率25%の溶接条件下では273K(0
℃)まで良好な曲げ延性を有していることがわか
る。 また次に、第4表に示した母材(該母材の組成
は第1表、第3表のものと同一)上に、第4表に
示すように、Zr量を約0.1%から約0.25%まで3
段階に変化させたZr添加低Cr化フエライト系ス
テンレス鋼溶加棒を用いて下盛り溶接を行つた
後、その上層に第4表の高純度フエライト系ステ
ンレス溶加棒(該溶加棒の組成は第1表、第3表
のものと略同一)を用いて所定の条件の2層の上
盛り溶接を行い、さらに、その肉盛り溶接部に熱
処理を実施した後、側曲げ試験を行つた。第6図
及び第7図はその結果を示すもので、第6図よ
り、Zr量を約0.16%及び0.25%とした各下盛り溶
加棒を用いた場合には253Kにおいても180°まで
割れなしに曲がる良好な曲げ延性を有することが
わかり、また、第7図では、溶込率によらずZr
量が増加するにつれ、曲げ延性は改善される傾向
がみられ、Zr量が約0.25%の場合の割れ発生遷移
温度は溶込率25%では253K、溶込率35%では
263KとZr無添加の時に比べると著しい曲げ延性
改善効果があることが認められる。 さらに、前記実験でZr添加により曲げ延性が
改善することがわかつたが、その理由の検討を目
的として、Zr量の異なる数種の下盛り溶加棒を
用いて溶込率25%の条件で施工した肉盛り溶接部
の溶融境界線近傍の炭化物幅を調べた。第8図は
その結果を示すもので、Zr添加量の増加につれ
第1層目及び第2層目溶接部の粒界の炭化物幅は
Zr無添加の場合に比べてさらに減少しており、
この粒界炭化物幅の減少が肉盛り溶接部の曲げ延
性を改善させた主要因であると推察される。 以上の結果より、従来の方法により施工した溶
接部においては溶接後熱処理を行うと曲げ延性が
急激に低下するのに対して、低Crフエライト系
ステンレス鋼溶加棒により下盛り溶接を行う本発
明の方法では、溶接部は良好な曲げ延性を示し、
特に、下盛り溶加棒中のCr量を低減し、さらに、
当該溶加棒にZrを添加することにより、曲げ延
性が一段と改善されることがわかる。 「発明の効果」 以上説明したように本発明の方法は、C0.025%
(重量%、以下同じ)以下、N0.025%以下を含有
する高純度フエライト系ステンレス鋼材を母材に
対する合せ材に使用した高純度フエライト系ステ
ンレスクラツド鋼材に対して、母材同士を母材と
同材質の溶接材料により溶接した後、C0.01%以
下、N0.015%以下、Zr0.4%以下を含有し、かつ
上記合せ材に使用した高純度フエライト系ステン
レス鋼材よりCr含有量の低いフエライト系ステ
ンレス鋼からなる下盛り溶加棒を使用して前記母
材同士の溶接部の上部を溶接し、次いで、前記合
せ材と同等の組成を有する高純度フエライト系ス
テンレス鋼からなる上盛り溶加棒を用いて前記合
せ材の肉盛り溶接を行う構成としたので、溶接時
に合せ材の溶接部分へピツクアツプするCやNの
量が極力抑えられ、合せ材の溶接部分の曲げ延性
を良好にして機械特性の向上をなし得るととも
に、CやNといつた不純物元素が溶接部分で少な
くなるために、耐食性が向上する効果がある。し
たがつて本発明の方法により溶接された高純度フ
エライト系ステンレスクラツド鋼材は、塩化物環
境等の腐食環境におかれる化学プラント用として
好適である。また、肉盛り溶接によつてクラツド
鋼を接合できるために、この種のクラツド鋼の溶
接手段として、従来行なわれていた当て板を用い
た溶接法は行わなくて済むようになり、溶接作業
の簡略化をなし得る。さらに、肉盛り溶接を行う
ために、溶接部分は突合せ溶接部となることから
溶接部分の検査として放射線透過試験の採用が可
能になり、これによつて溶接部分の品質の安定化
をなし得る。
割れ発生遷移温度と称す)がどのように変わるか
を示している。これによれば、下盛りの溶加棒中
のCr量が少なくなる程肉盛り溶接部の曲げ延性
が著しく改善され、例えば溶加棒中のCr量が19
%の場合、溶込率25%の溶接条件下では273K(0
℃)まで良好な曲げ延性を有していることがわか
る。 また次に、第4表に示した母材(該母材の組成
は第1表、第3表のものと同一)上に、第4表に
示すように、Zr量を約0.1%から約0.25%まで3
段階に変化させたZr添加低Cr化フエライト系ス
テンレス鋼溶加棒を用いて下盛り溶接を行つた
後、その上層に第4表の高純度フエライト系ステ
ンレス溶加棒(該溶加棒の組成は第1表、第3表
のものと略同一)を用いて所定の条件の2層の上
盛り溶接を行い、さらに、その肉盛り溶接部に熱
処理を実施した後、側曲げ試験を行つた。第6図
及び第7図はその結果を示すもので、第6図よ
り、Zr量を約0.16%及び0.25%とした各下盛り溶
加棒を用いた場合には253Kにおいても180°まで
割れなしに曲がる良好な曲げ延性を有することが
わかり、また、第7図では、溶込率によらずZr
量が増加するにつれ、曲げ延性は改善される傾向
がみられ、Zr量が約0.25%の場合の割れ発生遷移
温度は溶込率25%では253K、溶込率35%では
263KとZr無添加の時に比べると著しい曲げ延性
改善効果があることが認められる。 さらに、前記実験でZr添加により曲げ延性が
改善することがわかつたが、その理由の検討を目
的として、Zr量の異なる数種の下盛り溶加棒を
用いて溶込率25%の条件で施工した肉盛り溶接部
の溶融境界線近傍の炭化物幅を調べた。第8図は
その結果を示すもので、Zr添加量の増加につれ
第1層目及び第2層目溶接部の粒界の炭化物幅は
Zr無添加の場合に比べてさらに減少しており、
この粒界炭化物幅の減少が肉盛り溶接部の曲げ延
性を改善させた主要因であると推察される。 以上の結果より、従来の方法により施工した溶
接部においては溶接後熱処理を行うと曲げ延性が
急激に低下するのに対して、低Crフエライト系
ステンレス鋼溶加棒により下盛り溶接を行う本発
明の方法では、溶接部は良好な曲げ延性を示し、
特に、下盛り溶加棒中のCr量を低減し、さらに、
当該溶加棒にZrを添加することにより、曲げ延
性が一段と改善されることがわかる。 「発明の効果」 以上説明したように本発明の方法は、C0.025%
(重量%、以下同じ)以下、N0.025%以下を含有
する高純度フエライト系ステンレス鋼材を母材に
対する合せ材に使用した高純度フエライト系ステ
ンレスクラツド鋼材に対して、母材同士を母材と
同材質の溶接材料により溶接した後、C0.01%以
下、N0.015%以下、Zr0.4%以下を含有し、かつ
上記合せ材に使用した高純度フエライト系ステン
レス鋼材よりCr含有量の低いフエライト系ステ
ンレス鋼からなる下盛り溶加棒を使用して前記母
材同士の溶接部の上部を溶接し、次いで、前記合
せ材と同等の組成を有する高純度フエライト系ス
テンレス鋼からなる上盛り溶加棒を用いて前記合
せ材の肉盛り溶接を行う構成としたので、溶接時
に合せ材の溶接部分へピツクアツプするCやNの
量が極力抑えられ、合せ材の溶接部分の曲げ延性
を良好にして機械特性の向上をなし得るととも
に、CやNといつた不純物元素が溶接部分で少な
くなるために、耐食性が向上する効果がある。し
たがつて本発明の方法により溶接された高純度フ
エライト系ステンレスクラツド鋼材は、塩化物環
境等の腐食環境におかれる化学プラント用として
好適である。また、肉盛り溶接によつてクラツド
鋼を接合できるために、この種のクラツド鋼の溶
接手段として、従来行なわれていた当て板を用い
た溶接法は行わなくて済むようになり、溶接作業
の簡略化をなし得る。さらに、肉盛り溶接を行う
ために、溶接部分は突合せ溶接部となることから
溶接部分の検査として放射線透過試験の採用が可
能になり、これによつて溶接部分の品質の安定化
をなし得る。
第1図は本発明の方法を実施して溶接された高
純度フエライト系ステンレスクラツド鋼材の断面
図、第2図は従来の方法によつて溶接されたクラ
ツド鋼材の断面図、第3図は従来の方法により施
工された溶接部の熱処理前の側曲げ試験結果を示
すグラフ、第4図は同溶接部の溶接後熱処理の有
無による曲げ延性の変化を示すグラフ、第5図は
下盛り溶加棒中のCr量と曲げ延性との関係を示
すグラフ、第6図及び第7図はZr添加量の異な
る下盛り溶加棒を用いた場合に対する曲げ延性を
示すグラフ、第8図は下盛り溶加棒中のZr添加
量と溶接部中の粒界に存在する炭化物幅との関係
を示すグラフである。 10……高純度フエライト系ステンレスクラツ
ド鋼、10A……母材、10B……合せ材、11
……母材溶接部、12……下盛り溶接部、13…
…上盛り溶接部。
純度フエライト系ステンレスクラツド鋼材の断面
図、第2図は従来の方法によつて溶接されたクラ
ツド鋼材の断面図、第3図は従来の方法により施
工された溶接部の熱処理前の側曲げ試験結果を示
すグラフ、第4図は同溶接部の溶接後熱処理の有
無による曲げ延性の変化を示すグラフ、第5図は
下盛り溶加棒中のCr量と曲げ延性との関係を示
すグラフ、第6図及び第7図はZr添加量の異な
る下盛り溶加棒を用いた場合に対する曲げ延性を
示すグラフ、第8図は下盛り溶加棒中のZr添加
量と溶接部中の粒界に存在する炭化物幅との関係
を示すグラフである。 10……高純度フエライト系ステンレスクラツ
ド鋼、10A……母材、10B……合せ材、11
……母材溶接部、12……下盛り溶接部、13…
…上盛り溶接部。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1 C0.025%(重量%、以下同じ)以下、
N0.025%以下を含有する高純度フエライト系ス
テンレス鋼材を母材に対する合せ材に使用した高
純度フエライト系ステンレスクラツド鋼材に対し
て、母材同士を母材と同材質の溶接材料により溶
接した後、C0.01%以下、N0.015%以下、Zr0.4%
以下を含有し、かつ上記合せ材に使用した高純度
フエライト系ステンレス鋼材よりCr含有量の低
いフエライト系ステンレス鋼からなる下盛り溶加
棒を使用して前記母材同士の溶接部の上部を溶接
し、次いで、前記合せ材と同等の組成を有する高
純度フエライト系ステンレス鋼からなる上盛り溶
加棒を用いて前記合せ材の肉盛り溶接を行うこと
を特徴とする高純度フエライト系ステンレスクラ
ツド鋼材に対する溶接方法。 2 Cr16.0〜32.0%、Mo0.5〜4.5%、C0.025%以
下、N0.025%以下(但しC+N0.04%以下)を含
有する高純度フエライト系ステンレス鋼材からな
る合せ材を使用するとともに、Cr15〜27.5%、
Mo2.5%以下、Ni0.6%以下、C0.01%以下、
N0.015%以下及びZr0.4%以下を含有するフエラ
イト系ステンレス鋼からなる下盛り溶加棒を使用
することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載
の高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼材に
対する溶接方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17803285A JPS6238770A (ja) | 1985-08-13 | 1985-08-13 | 高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼材に対する溶接方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17803285A JPS6238770A (ja) | 1985-08-13 | 1985-08-13 | 高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼材に対する溶接方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS6238770A JPS6238770A (ja) | 1987-02-19 |
JPH0422672B2 true JPH0422672B2 (ja) | 1992-04-20 |
Family
ID=16041394
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP17803285A Granted JPS6238770A (ja) | 1985-08-13 | 1985-08-13 | 高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼材に対する溶接方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPS6238770A (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4526096B1 (ja) * | 2009-12-08 | 2010-08-18 | 有限会社奥戸溶接 | 消火器 |
Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS57156893A (en) * | 1981-03-23 | 1982-09-28 | Daido Steel Co Ltd | Welding material |
JPS57202995A (en) * | 1981-06-09 | 1982-12-13 | Kawasaki Steel Corp | Ferritic stainless steel welding material for highly anticorrosive structure |
JPS597484A (ja) * | 1982-07-07 | 1984-01-14 | Japan Steel Works Ltd:The | 高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼の突合せ溶接方法 |
JPS5976694A (ja) * | 1982-10-25 | 1984-05-01 | Nisshin Steel Co Ltd | 高純度フエライト系ステンレス鋼用溶接ワイヤ |
-
1985
- 1985-08-13 JP JP17803285A patent/JPS6238770A/ja active Granted
Patent Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS57156893A (en) * | 1981-03-23 | 1982-09-28 | Daido Steel Co Ltd | Welding material |
JPS57202995A (en) * | 1981-06-09 | 1982-12-13 | Kawasaki Steel Corp | Ferritic stainless steel welding material for highly anticorrosive structure |
JPS597484A (ja) * | 1982-07-07 | 1984-01-14 | Japan Steel Works Ltd:The | 高純度フエライト系ステンレスクラツド鋼の突合せ溶接方法 |
JPS5976694A (ja) * | 1982-10-25 | 1984-05-01 | Nisshin Steel Co Ltd | 高純度フエライト系ステンレス鋼用溶接ワイヤ |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS6238770A (ja) | 1987-02-19 |
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