JPH0420608B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は靴用中底に関し、詳しくは靴履用者の
歩行時に、足の中足指関節部に履用者の体重が集
中的に負荷されることを防止するための負荷分散
手段を具えた靴用中底に関するものである。

〔従来の技術〕

履用者に足の形状に適合した歩き易い靴を提供
するため、これ迄、靴の中底に体重支持用のクツ
シヨンを設けたり、受け底を設けたりすることが
提案されている。前者としては例えば実開昭57−
27902号公報が、また後者としては例えば特公昭
59−32121号公報が挙げられる。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら、工業的規模で多量生産する場
合、個々に異なる履用者の足の形状に適合するよ
うに靴の各部の形状を調節することは実際問題と
して可成り困難である。特にフアツシヨン性を重
視したハイヒール・シユーズ等の婦人靴の履用者
には、形状不適合による体重の集中的な負荷等の
障害が引き起こされる場合が少なくなかつた。こ
のような足の形状に合わない靴の履用は、中足骨
痛、魚の目等の機能障害や足部疾患の原因とな
る。

本発明の主要な目的は、従来の多量生産システ
ムによつて製作された靴で問題とされて来た靴と
履用者の足の形状との不適合に起因する体重の集
中的な負荷、及びこれにより引き起こされる中足
骨痛、魚の目等の足部疾患の防止手段を提供する
ことにある。

〔課題を解決するための手段〕

上記課題の解決手段として本発明は、靴の接地
底上に重ね合わせ状態で接合される中底に於い
て、踵部から足先部に向つて延びる中底主体の
内、履用者の母指の中足指節関節部が当たる部分
に、体重の集中的な負荷を緩和するための貫通孔
を穿設開口させたことを特徴とする靴用中底を提
供するものである。

〔作用〕

中底主体の内、履用者の母指の中足指節関節部
が当たる部分に、体重の集中的な負荷を緩和する
ための貫通孔からなる受圧くぼみを設けることに
よつて、履用者の体重負荷を母指の中足指節関節
部の周辺部に分散させ、これによつて中足骨痛、
魚の目等の機能障害が足部疾患の発生を未然に回
避する。

〔実施例〕

第１図は本発明に係る靴用中底を分解状態で示
す平面図、第２図はその縦断面図である。また、
第３図は足の骨格の上面、内・外側縦足弓形成部
分の上面図、第４図は関節包を部分的に切除し、
第１中足骨の遠位半を縦に割断した足の母指に於
ける中足指節関節の側面図である。

本発明の具体例の記述に先立つて、第３図及び
第４図に基づき背景技術としてて靴履用者の足の
骨格構造について説明する。先ず第４図に於い
て、１は母指の基節骨底の関節軟骨、２は第１中
足骨頭２ａを含む中足指節関節、３は中足骨頭の
底側板、４は関節包、５は長母指屈筋腱、６は足
底腱膜の一部を示す。また、第３図に於いて、７
は内側縦足弓、８は中足骨頭と中足骨底、９は末
節骨、１０は中節骨、１１は基節骨、１２は外側
縦足弓、１３は内側楔状骨、１４は中間楔状骨、
１５は外側楔状骨、１６は茎状突起、１７は立方
骨、１８は舟状骨、１９は距骨頭、２０は踵骨を
示す。

靴履用者の歩行のメカニズムに関して記述した
文献“軟部組織の痛みと機能障害”（南カリフオ
ルニア大Rene Cailliet著、荻島秀男訳、医師薬
出版株式会社、昭和54年11月10日発行）にも記載
されているように、着地足の踏み切り時点で、足
の第１中足骨頭２には履用者の全体重の約5/6が
負荷される。従つて、歩行用具としての靴には、
第１中足骨頭２に負荷される体重を出来得る限り
緩和軽減させる機能を具備させることが必要とな
る。

ところで、骨格構造上、足の母指の中足指節関
節２は、他の第２指乃至第５指の中足指節関節と
大きく相違している。第１に、母指の中足指節関
節２を構成する基節骨底の関節軟骨１、第１中足
骨頭２ａ及び中足骨頭の底側板３は、第２指乃至
第５指を構成するそれ等に比較して大形となつて
いる。上記母指の中足指節関節の骨格的特徴は、
歩行時に靴履用者の体重の約5/6が負荷されると
いう機能上の役割からも明確に理解し得るところ
である。

各々の足指の中足指節関節は、足の関節の中で
も数少ない球関節であり、屈曲と伸展が主な動き
であるが、僅か乍ら足指の内転と外転もこの中足
指節関節で行われる。このため、球関節は、動き
の自由度が舟状骨１８、内側楔状骨１３、中間楔
状骨１４、外側楔状骨１５、立方骨１７等の間に
存在する平面関節や指節間関節のような蝶番関節
よりも大きくなつている。

このようにそれぞれの足指の中足指節関節は動
きの自由度を持つているが、元来、構造的に大形
の母指の中足指節関節２は、履用者が踵を挙げた
とき（例えばヒールが高い婦人靴を履いて立脚し
たとき）、特に、前方に踏み切るために踵を大き
く上げたとき、即ち、母指の中足指節関節２の底
側伸展が最大となるときに、他の第２指以下の何
れの中足指節関節よりも下方への張り出し量が大
きくなる。

本発明に於いては上記足の母指の中足指節関節
２の構造的特性に着目し、この部分に歩行時、殊
に前方への踏み切り時に履用者の体重が集中的に
負荷されることのない靴用中底を創案した。

第１図及び第２図に基づいて例示的に説明する
と、靴履用者の踵部から足先部に向かつて延びる
中底主体２２の内、履用者の母指の中足指節関節
部２が当たる部分に、体重の集中的な負荷を防止
するための貫通孔２４を穿設開口させる。この
後、上記貫通孔２４を含む中底主体２２の下面に
接着剤等の接合手段を利用して補強板２３を固着
して一体構造の中底２６を形成し、この中底２６
を甲皮及び接地底（何れも図示省略）の間に釣込
み成型してハイヒール・シユーズを形成する。か
くして、靴型を抜き取つた後、中底主体２２の上
面には、前記貫通孔２４内に嵌まり込む凹部２５
ａをくせ付け成形した皮革製の中敷２１を張り付
ける。この場合、中底主体２２の成型時、または
中敷２１の張り付け或いは甲皮と接地底の間への
釣込み成型に先立つて、中底主体２２に設けられ
た上記貫通孔２４の周縁部分に、面取り加工を施
す、或いは細径の傾斜リングを嵌め込む等の方法
で傾斜受圧面２５を形成し、貫通孔２４内へ嵌ま
り込む母指の中足指節関節２の足底部の足当たり
を良くすることが望ましい。

貫通孔２４の形状としては上記の円形の外、楕
円形や前円後方形或いは前方後円形等が挙げられ
るが、何れの場合もその深さは通常２mm〜４mm程
度であり、中底主体２２の貫通孔２４の穿設域の
厚みを調節することによつて履用者の中足指節関
節２の張出し量に対応した所望の深さに設定する
ことが可能となる。また、上記実施例に於いて
は、予備成型された中底主体２２と補強板２３が
接着剤によつて一体構造に接合されているが、別
法として貫通孔２４に相当する中子を具えた成型
用金型を利用して中底主体２２と補強板２３とを
モールド成形し、一体構造の中底２６を形成する
方法も利用することができる。

中底主体２２に貫通孔２４を設けることによつ
て、母指の中足指節関節２の足底部は、立脚時に
は比較的小さな押し込み負荷の作用下に貫通孔２
４内に受入れられ、また、歩行踏み切り時には立
脚時よりも稍大きな押し込み負荷の作用下に貫通
孔２４内に受入れられる。このように、第２指以
下と比較して下方への張り出し量が格別に大きい
母指の中足指節関節２の足底部を他の部位よりも
２mm〜４mm低くなるように貫通孔２４内に受け入
れることによつて、他の部位の床反力の発動が早
められる。また、母指の中足指節関節２の体重支
持点が２mm〜４mm下がることによつて、足底の他
の部位、即ち、第２指乃至第５指の中足指節関
節、中足骨８と足根骨から構成されている内外側
縦足弓７，１２、および母指を始めとする各指の
指節間関節部等の体重支持への参加割合が増大す
る。これによつて、体重負荷が母指の中足指節関
節部の周辺部に分散し、歩行踏み切り時に於ける
第１中足骨頭２ａへの体重の集中的負荷が緩和さ
れる。

尚、上記実施例では、本発明をハイヒール・シ
ユーズに適用した場合が説明されているが、この
例示説明によつて本発明の権利範囲は限定的に解
釈されるべきものではなく、一般靴に対しても同
様に適用することができる。

〔発明の効果〕

本発明に係る靴用中底を使用することによつ
て、歩行踏み切り時に於ける第１中足骨頭への体
重の集中的な負荷が緩和される。この結果、本発
明は、従来の靴の履用で問題とされていた中足骨
痛、魚の目等の機能障害や足部疾患の発生防止に
顕著な効果を発揮する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る靴用中底を分解状態で示
す平面図、第２図はその縦断面図である。また、
第３図は足の骨格の上面、内・外側縦足弓形成部
分の上面図、第４図は関節包を部分的に切除し、
第１中足骨の遠位半を縦に割断した足の母指に於
ける中足指節関節の側面図である。 ２１……中敷、２２……中底主体、２３……補
強板、２４……貫通孔、２６……靴用中底。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 靴の接地底上に重ね合わせ状態で接合される
   中底に於いて、 踵部から足先部に向かつて延びる中底主体の
   内、履用者の母指の中足指節関節部が当たる部分
   に、体重の集中的な負荷を緩和するための貫通孔
   を穿設開口させたことを特徴とする靴用中底。