JPH041051Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

「産業上の利用分野」 本考案は、例えば、オレンジジユース等のホツ
ト充填に利用される複合紙製の容器に関するもの
であり、ホツト充填された内填物の冷却によつて
生ずる容器内の負圧によつても、容器胴部に凹状
の変形が生ずるようなことがなく、しかも廉価に
供給され得る複合紙製の容器を提供するものであ
る。 「従来の技術」 オレンジジユース等の各種の液体飲料の充填に
は、金属缶が多用されているが、これらの金属缶
は、その廃棄処理に問題があるため、複合の紙製
の容器が開発され始めている。 ところで、オレンジジユース等の液体飲料に
は、ビールやコーラのような高い内圧がかかるよ
うなことはないが、液体を容器に充填する際に加
熱殺菌を行なう、いわゆるホツト充填されるもの
であるため、密閉状態にある容器内部の充填物が
冷却されると、容器内部に負圧が発生し、これに
伴つて、円筒状の容器胴部に凹状の変形が発生
し、商品価値を低下させるものである。 このため、容器の内部に負圧が発生したときに
は、容器底部が容器の内方へ向かつて凸出変形し
得るようにして、前記容器胴部に発生する凹状の
変形が防止されている容器が提案されている（特
開昭53−83879号公報）。 前記容器の内部に負圧が発生したときに、容器
底部が容器の内方へ向かつて凸出変形し得るよう
にされている容器において、容器底部の形状を、
リブ方式にしたもの（実開昭56−14877号公報）
や、ドーム方式にしたもの（実開昭55−16205号
公報）等も提案されている。 「本考案が解決しようとする課題」 ところで、前記容器底部の形状をリブ方式にす
る容器として前記実開昭56−14877号公報に説明
されている容器は、容器底部を閉塞する底部材と
して、紙、合成紙、プラスツチクシート、熱可塑
性合成樹脂内添紙等を使用するものであるため、
前記底部材にはガスバリヤー性がなく、シエルラ
イフの長い商品には使用し得ないという欠点を有
している。 また、前記底部材は、容器底部の成形工程中で
の伸びが少ないために、底部材の成形時において
破れが発生し易いという欠点をも有している。 なお、一般に、ジユース等をホツト充填させる
ための容器には、例えば直径55mmの250ml容量の
容器の場合で、約４mm程度の深さの成形体からな
る底部材が必要であり、底部材となる成形用素材
には、約５％程度の伸びが必要とされるものであ
る。 さらにまた、前記容器底部をドーム方式にする
容器として、前記実開昭55−16205号公報に説明
されている容器は、底部材として通常の紙を利用
するものであり、ガスバリヤー性における欠点を
有するものであることは勿論であるが、容器底部
の成形工程中に必要とされる伸びの点においても
十分ではなく、深絞り成形に対する成形特性の点
で満足されるものではない。 他方、合成樹脂層／アルミニウム箔／合成樹脂
層からなる積層シートによる底部材を使用した容
器が提案されている（実開昭55−176112号公報）
が、前記容器は、該容器における底部材の接着性
を向上させるものであつて、容器内に発生する負
圧を吸収し得る作用を奏するものではなく、しか
も、底部材にピンホールが発生し易いという欠点
をも有している。 なお、前記したリブ方式やドーム方式による容
器底部を有する容器の底部材として、前述の合成
樹脂層／アルミニウム箔／合成樹脂層からなる積
層シートを利用した場合には、底部材中のアルミ
ニウム箔が、耐引き裂き性や耐突き刺し性に弱
く、例えば、容器を輸送する段階で容器に加わる
振動によつて、リブ部分や底部材が反転したとき
に生ずる皺の部分が繰り返し屈曲したときに、前
記部分にピンホールが発生し易いという欠点を有
している。 これに対して、本考案は、容器内に発生する負
圧によつて、容器胴部が変形するようなことがな
く、しかも、ガスバリヤー性に優れ、かつ、緩球
面形状に成形される際の成形工程中で必要とされ
るに十分な伸びを有する積層シートによつて成形
されている底部材が取り付けられている容器であ
つて、前記底部材が繰り返し屈曲したときにも、
前記底部材に、ピンホールが発生するようなこと
のない複合紙製の容器を提供するものである。 「課題を解決するための手段」 本考案の容器は、複合紙製の容器における容器
胴部の底部に対して、少なくとも、ポリオレフイ
ン系樹脂によるヒートシール層と、金属箔と該金
属箔に接着されている平均繊維長５mm以上の繊維
による紙質層との積層部材層とを具備しており、
しかも、容器胴部の肉厚よりも薄肉の緩球面形状
に成形されている可撓性の底部材が、前記底部材
におけるヒートシール層面が容器内周面層となる
ようにして取り付けられているものであり、前記
緩球面形状をなす可撓性の底部材が、容器の内、
外に対して反転自在になるものである。 前記構成からなる本考案の複合紙製の容器にお
いて、該容器の底部材は、必要に応じて形成され
ている熱可塑性合成樹脂による表面保護層と、積
層部材層を具備する層と、ポリオレフイン系樹脂
によるヒートシール層との積層構成からなるもの
であつて、前記金属箔と該金属箔に接着されてい
る平均繊維長５mm以上の繊維による紙質層との積
層部材層を具備している層が、必要に応じて形成
されている熱可塑性合成樹脂による表面保護層
と、ヒートシール層との間に介装されているもの
であり、前記底部材におけるポリオレフイン系樹
脂によるヒートシール層が、容器内周面層となる
ようにして、容器胴部の底部に取り付けられてい
るものである。 前記本考案の複合紙製の容器における前記底部
材は、該底部材と対応する積層構成からなる成形
用の積層シートを、緩球面形状の成形体に深絞り
成形することによつて得られるものである。 前記底部材において、必要に応じて形成される
前記表面保護層には、ポリオレフイン系樹脂層か
らなるヒートシール層との間の接着性が良好なも
のを使用するのが好ましく、例えば、ポリエチレ
ンやポリプロピレン等のポリオレフイン系フイル
ムが好適であるが、ポリエステルフイルムやナイ
ロンフイルム等も使用し得る。 また、金属箔と該金属箔に接着されている平均
繊維長５mm以上の繊維による紙質層との積層部材
層は、この両者による積層部材で形成されていて
も十分であるが、前記金属箔と平均繊維長５mm以
上の繊維による紙質層とからなる積層部材に対し
て、さらに、例えば、ポリエチレンテレフタレー
トフイルム、ナイロンやポリプロピレン等による
延伸フイルム等を積層させた中芯層を利用するこ
とによつて、前記金属箔に対する耐ピンホール特
性がより一層優れた底部材とすることもできる。 前記平均繊維長５mm以上の繊維による紙質層
は、例えば、こうぞ、みつまた等による繊維長の
長い木質系繊維による抄造紙をはじめ、平均繊維
長５mm以上のポリプロピレンやポリエチレン等の
合成繊維やレーヨン繊維等による再生繊維等をヒ
ートプレスし、繊維同志を接着させる等によつて
得られる不織布、さらには、前述の木質系繊維と
合成繊維や再生繊維等とを、通常の抄紙条件によ
る抄紙工程と同様にして、混合抄紙した混抄紙等
が利用される。 なお、前記紙質層における繊維の平均繊維長が
５mm未満の場合には、前述の緩球面形状をなす底
部材の成形時に、該紙質層に紙切れが発生し、品
質の良好な底部材が得られなくなるので、前記紙
質層における繊維は平均繊維長５mm以上の繊維に
よつて形成されていることが必要である。 また、前記底部材中において、前述の紙質層に
積層され、積層部材層として利用される金属箔、
例えばアルミニウム箔等の金属箔は、従来のこの
種の容器の底材や蓋材等に利用されているアルミ
ニウム箔の厚さである30〜130μよりも薄くでき
るが、最低15μの厚さは必要である。 なお、底部材に成形される積層シートの成形性
を考慮し場合には、前記アルミニウム箔等による
金属箔は、厚さ30μ以上とされていることが好ま
しい。 所望に応じて、金属箔と紙質層との積層部材に
対して積層され、耐ピンホール性層として作用す
るところのポリプロピレンフイルム、延伸ナイロ
ンフイルム、延伸ポリエステルフイルム等には、
その強度が十分であり、しかも、成形時における
伸び特性の良好な厚さ10〜25μ程度のものが利用
される。 さらに、前記底部材における容器内周面層とな
るヒートシール層は、例えば、ポリエチレン、ポ
リプロピレン等によるポリオレフイン系樹脂によ
つて形成されているものであり、既製のフイルム
の貼り合わせや、溶融樹脂の押し出しコーテイン
グ等によつて、積層、形成されるものである。 「実施例」 以下、本考案の複合紙製の容器の具体的な構成
を、図面実施例に基づいて説明する。 第１図は、本考案の複合紙製の容器に使用され
る底部材の成形素材たる積層シートの１実施例品
を示すものであり、緩球面形状の底部材に成形さ
れる積層シート１は、ポリオレフイン系樹脂によ
る表面保護層２と、平均繊維長５mm以上の繊維に
よる紙質層３とアルミニウム箔４との積層部材に
よる中芯層と、ポリオレフイン系樹脂によるヒー
トシール層５とからなるものである。 また、第２図は、本考案の複合紙製の容器に使
用される底部材の成形素材たる積層シートの別の
実施例品を示すものであり、緩球面形状の底部材
に成形される積層シート１は、ポリオレフイン系
樹脂による表面保護層２と、平均繊維長５mm以上
の繊維による紙質層３とアルミニウム箔４との積
層部材と、前記積層部材に積層されているポリエ
チレンテレフタレートの延伸フイルム６と、ポリ
オレフイン系樹脂によるヒートシール層５とから
なるものである。 第３〜第４図は、容器胴部７，７ａと、前記容
器胴部７，７ａの底部に取り付けられている底部
材８とで構成されている本考案の複合紙製の容器
のそれぞれ別の実施例品を示すものであり、前述
の積層シート１によつて成形されている底部材
８、すなわち、反転自在の緩球面形状に成形され
ており、しかも、前記容器胴部７，７ａの厚さよ
りも薄肉に形成されている底部材８が、該底部材
８における表面保護層２面が容器外周面層となる
ようにして、前記容器胴部７，７ａの底部に取り
付けられているものである。 なお、前記容器胴部７，７ａの底部材８とは、
第３〜４図に示されるように、容器胴部７，７ａ
の下端縁９が容器胴部７，７ａの内方へ折り曲げ
られることによつて形成されている容器胴部７，
７ａと前記下端縁９との間の間隙に、前記底部材
８の外周端縁１０が挿入され、加熱、加圧される
ことによつて、容器胴部７，７ａの下端縁９が底
部材８にカシメシールされ、固着されているもの
である。 実 験 本考案の要部をなす底部材に成形される成形素
材たる積層シートの成形性、得られた緩球面形状
の成形体（底部材）を容器胴部にシールした際の
圧力カムラの発生し易さ、前記成形体の剛度、前
記成形体の底部材としての強度等についての実験
結果を、比較例品と比較して、第１表に説明す
る。 なお、積層シート中に使用したテスト紙１は、
みつまたパルプからなる平均繊維長５mm以上の繊
維による坪量30ｇ／m²の抄造紙であり、また、テ
スト紙２は、みつまたパルプと混抄用ポリプロピ
レン繊維との１：１からなる平均繊維長５mm以上
の繊維による坪量30ｇ／m²の抄造紙である。 また、比較例品の積層シート中に使用した純白
ロール紙は、平均繊維長２〜３mmのパルプ繊維に
よる坪量30ｇ／m²の純白紙である。 さらに、緩球面形状に成形された底部材は、直
径55mm、中心の高さ５mmの深絞り成形体からなる
ものである。

【表】 「本考案の作用、効果」 前記構成からなる本考案の複合紙製の容器は、
該容器内にジユース等の内填物がホツト充填され
た後、第３〜４図にて、符号Ｋで表示される蓋部
材で密封されるものである。 前記内填物のホツト充填直後においては、前記
本考案の複合紙製の容器の底部材８は、第３〜４
図に示されるように、容器外面に対して凸出する
緩球面形状をなしているものであるが、充填、密
封後の時間の経過によつて容器内の内填物が冷却
すると、容器内が徐々に負圧になり、前記底部材
８は容器内面側に凸出するように反転するもので
ある。 したがつて、容器内部に負圧が発生しても、容
器胴部７，７ａには、前記負圧に伴う変形が生ず
るようなことがなく、容器の外郭形状が整然と保
持され得るものである。 また、前記複合紙製の容器の底部材には、金属
箔に対して平均繊維長５mm以上の繊維による紙質
層が積層されている積層部材層が積層構成中に組
み込まれているので、前記金属箔の耐酸化性が前
記紙質層によつて得られ、また、前記紙質層によ
る金属箔へのクツシヨン性が良好であるため、前
記金属箔には、突き傷や擦り傷に対する耐性が十
分であり、しかも、繰り返しの屈曲作用が掛かつ
ても、前記金属箔にはピンホールが発生するよう
なことがなく、品質特性の良好な複合紙製の容器
となるものである。 さらに、本考案の複合紙製の容器の底部材は、
前記底部材の成形用素材たる積層シート中に紙質
層が組み込まれているにも拘らず、該紙質層が平
均繊維長５mm以上の繊維によつて形成されている
ので、前記積層シートに適度の伸びがある（成形
適性がある）ため、容器内の負圧を吸収し得る緩
球面形状の底部材の成形が的確に行なわれ、負圧
を吸収し得る品質の良好な複合紙製の容器となる
ものである。 また、本考案の複合紙製の容器の底部材におい
ては、金属箔は、平均繊維長５mm以上の繊維によ
る紙質層との積層体からなる積層部材層として利
用されているので、例えば、容器を輸送する段階
で容器に加わる振動によつて、前記底部材が反転
したときに生ずる皺の部分が、繰り返し屈曲した
ときにも、前記部分にピンホールが発生するよう
なことがなく、ガスバリヤー性に対する保証度の
高い容器となるものであり、しかも、金属箔の肉
厚を従来のこの種の蓋材や底材中の金属箔の厚さ
よりも薄くし得るので、原料費を低減し得るとい
う作用をも奏するものである。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第２図は、本考案の複合紙製の容器の
底部材に成形される成形用素材たる積層シートの
それぞれ異別の実施例品を示す断面模型図、第３
〜４図は、本考案の複合紙製の容器のそれぞれ異
別の実施例品を示す略示断面図である。 １……成形用素材たる積層シート、２……表面
保護層、３……平均繊維長５mm以上の繊維による
紙質層、４……金属箔、５……ヒートシール層、
６……ポリエチレンテレフタレートフイルム、ま
たは、ナイロンあるいはポリプロピレンの延伸フ
イルム、７……容器胴部、８……底部材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 少なくとも、ポリオレフイン系樹脂によるヒー
   トシール層と、金属箔と該金属箔に接着されてい
   る平均繊維長５mm以上の繊維による紙質層との積
   層部材層とを具備しており、しかも、容器胴部の
   肉厚よりも薄肉の緩球面形状に成形されている可
   撓性の底部材が、容器胴部の底部に対して、前記
   底部材におけるヒートシール層面が容器内周面層
   となるようにして取り付けられていることを特徴
   とする容器。