JPH0376707B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は金属材の表面疵の探傷装置に関する。

金属材の表面疵の探傷方法としては種々の非破
壊検査法が実用化されており、存在が予想される
欠陥に応じて一種若しくは複数種類の方法が適用
されている。表面疵の探傷方法としては、漏洩磁
束を検出する磁気探傷法及び渦流探傷法が一般的
である。

漏洩磁束を検出する磁気探傷法は、被検査材表
面に存在が予想される欠陥に対して磁束が直交す
るように被検査材を磁化し、欠陥に起因する漏洩
磁束を感磁性素子、サーチコイル等の磁場検出器
で検出して欠陥の存在、情報を得る方法である。
この方法では鉄鋼材料等の強磁性体の表面欠陥
の検出に優れている。割れが開口していない地
きずのような欠陥でも検出できる。欠陥の位
置、表面上の長さの検出が可能であるという長所
を有している反面、磁束の方向と平行な欠陥の
検出は困難である。開口幅の広い疵、例えばピ
ツト状疵、打込み疵に対しては漏洩磁束量が小さ
く検出は困難である。という短所を併せもつてい
る。

短所に記載したように、磁気探傷法では欠陥
と同方向に磁化した場合には、欠陥部には磁極が
生じないので、磁束の方向と同方向の欠陥の探傷
は不可能であつたが、現在では複数の磁場を利用
する方法で欠陥の方向に関係なく探傷出来るよう
になつてきた。即ち、第１図に示すように、棒鋼
１′の軸方向欠陥をａ、周方向の欠陥をｂとすれ
ば、電源Ａを用いて棒鋼１′は軸通電法による円
周方向磁化を、また電源Ｂを用いて棒鋼１′に軸
方向磁化をコイル法で行わせしめ、これら夫々の
磁化で欠陥ａ，ｂを探傷する方法、また第２図に
示すように、管材１が貫通する磁化コイルＥ，
E′と、管材１を直径方向より磁化する一対の磁化
マグネツトＦを夫々タンデル配置せしめ、これら
磁化コイルＥ，E′及び磁化マグネツトＦで軸方向
欠陥ａと周方向欠陥ｂを連続的に探傷する方法等
である。このように上記短所についての不都合
は解消されたが、依然上記短所のピツト状欠陥
の探傷が困難であるという問題があつた。

また後者の渦流探傷法は、被検査材に磁場を与
えて渦流を発生させ、欠陥を起因する渦流の乱れ
による磁場の乱れを、ピツクアツプコイルのイン
ピーダンス変化として検出し、欠陥の存在、情報
を得る方法であり、探傷結果が直接的に電気的
出力として得られる。非接触であるので試験速
度が速い。表面欠陥の検出に適している。欠
陥、材質、寸法変化等に対しても追従でき適用範
囲が広い。信号と欠陥体積とが略比例関係にな
るためピツト状欠陥、打込状欠陥の検出に有効で
ある。等の長所を有しているが、反面材料形状
が単純なものでないと適用しにくい。表面下の
深い位置にある欠陥の検出ができない。試験対
象以外の材料的因子の影響が雑音の因子となる。
等の短所も併せもつている。

このように、磁気探傷法、渦流探傷法のいずれ
かにおいても長所、短所を併せもつているため
に、一種類の探傷方法で全ての種類の疵を検出す
ることは困難であつた。

今、丸棒鋼を例にとつてみると、割れ状の欠陥
は磁気探傷法の一つである磁粉探傷法での検出能
が良好であり、またピツト状の疵は渦流探傷法で
の検出能が良好であるため、通常は検査目的に応
じて最良の探傷方法を採択し、使用しているのが
現状である。このため疵の性状によつては、どち
らか一種類のみの探傷では検出能が低下するため
数種類の探傷方法を実施する必要があつた。

本願出願者らは、上記問題点を解消すべく特願
昭57−102600号にて、一回の探傷で欠陥の性状に
影響されることがなく、かつ良好なる検出能を有
する金属材料の表面疵探傷方法及びその装置を提
供した。

この方法は、被検査材表面に、これに沿う方向
とこの方向とは直交する方向との二方向から同時
に磁場を与えることにより、被検査材表面付近
に、経時的にその方向が変化する合成磁場を形成
せしめ、表面疵からの漏洩磁場と、表面に誘起さ
れる渦電流の表面疵による乱れに起因する磁場と
を、両者の合成磁場として測定し、この測定値に
よつて表面疵の情報を得る金属材料の表面疵探傷
方法、及び装置であり、更に詳述すると、第３図
に示すように被検査材１１表面に沿う磁場を発生
させる第１の磁場発生器１２と、被検査材１１表
面に直交する方向の磁場を発生させる第２の磁場
発生器１３とから成る交流磁場発生装置１４を用
いて被検査材１１表面に沿う第１の磁場イと、該
磁場イに直交するような被検査材１１表面に直交
する第２の磁場ロとを同時に被検査材１１に与え
て被検査材１１表面付近に合成磁場を形成せしめ
るが、この場合例えば第４図に示すように、周波
数ω、時間をｔとして第１の磁場イをsinωtで、
また第２の磁場ロをcosωtで変化させて夫々与
え、経時的にその方向が変化する合成磁場、つま
り回転磁場を形成し、表面疵が存在する場合には
合成磁場の経時的変化に伴い、表面疵からの漏洩
磁場と、被探傷面に誘起される渦電流の表面疵の
乱れに起因する磁場との合成磁場が現われ、この
合成磁場の垂直方向成分を被検査材１１表面に近
接配置した磁場検出器により被検査材１１の表面
疵を探傷するものである。合成磁場は経時的にそ
の方向を変じるので、欠陥の向き、形状の如何に
拘わらず、欠陥による漏洩磁場が現われ、又は欠
陥に起因する磁場の乱れが現われ、所要の信号処
理を行うことにより各種欠陥が捉えられる。

このような装置においては、被検査材１１表面
に直交する方向の磁束を発生させる第２の磁場発
生器１３と、合成磁場の垂直方向成分を検出する
磁場検出器とを、磁場を形成せしめられた被検査
材１１表面と対向する位置に設ける必要がある。

第５図は、この探傷装置の一例を示し、被検査
材１１表面付近に発生する合成磁場の検出を行わ
せる磁場検出器１５を、第２の磁場発生器１３の
被検査材１１表面と対向する位置に取付けたもの
であるが、第２の磁場発生器１３はコイルを巻回
して重量が増加しているために、被検査材１１表
面の走査においては、磁場検出器１５の追従性能
が悪化し、被検査材１１表面の全域に亘る高速か
つ精密な探傷が行えないという不都合があつた。

本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであ
り、一度の探傷で欠陥の種類、方向とは無関係に
被検査材の全域に亘る高精度、高効率な探傷を可
能とした探傷装置の提供を目的とする。

本発明に係る探傷装置は、軸方向に搬送される
円形断面の被検査材の搬送域に設けられ、被検査
材の中心対称に夫々対設され、２組の磁極に位相
の異なる交流を印加して相互に直交する磁場を発
生させ、磁極直近の被検査材の表面に回転磁場を
形成する交流磁場発生器と、被検査材を軸方向に
磁化する磁場発生器と、前記交流磁場発生器の磁
極における被検査材との対向面に設けられ、被検
査材の外周面に沿つて回転しつつ前記回転磁場に
より誘起された渦電流の表面疵による磁場の乱れ
及び漏洩磁場の検出が可能な磁場検出器とを具備
することを特徴とする。

以下本発明をその実施例を示す図面に基づいて
詳述する。第６図は本発明装置の模式図、第７
図、第８図はその説明図である。図において１は
長手方向に搬送される被検査材たる鋼管であり、
該鋼管１の搬送域には、鋼管１とは同心状に配さ
れ、その中心対称に対設された２対の磁極２ａ，
２ａ、２ｂ，２ｂを有する交流磁場発生器たる環
状電磁石２が設けられていて、対設された夫々の
磁極間の磁束が相互に直交するように、磁極２
ａ，２ｂは90度の角度を有して配設され、各磁極
２ａ，２ｂにはコイル３ａ，３ｂが夫々巻回され
ている。そして磁極２ａに巻回されたコイル３ａ
には励磁電流としてia＝Im sinωt（ただしω：周
波数、ｔ：時間）の交流電流を通電し、また磁極
２ｂに巻回されたコイル３ｂに、該交流電流とは
π／２位相の異なる励磁電流ia＝Im cosωtを通
電して、各磁場強度HA，HBが経時的に変化す
る直交磁場を形成すると、両磁場強度の経時変化
に伴い両磁場の合成磁場は経時的にその方向が変
化する。即ち磁極直近の鋼管の表面には交流電流
の位相のずれにより磁場強度Hcが一定であり、
回転速度がωtである回転磁場が形成される。そ
してこの回転磁場により鋼管１は周方向に磁化さ
れ、また回転磁場の仮想磁極近傍には鋼管１の表
面と直交する方向の磁場による渦電流が誘起され
ることになり、鋼管１外周面に表面疵が存在する
場合には、その疵による漏洩磁場と、渦電流の表
面疵による乱れによる起因する磁場の乱れとを磁
場検出器４にて検出して探傷を行う構成は前述の
特願昭57−102600号の原理と同様である。

さらに本発明装置においては、環状電磁石２の
鋼管１の搬送方向上、下流側方に、環状ソレノイ
ド５，５が夫々設けられており、各環状ソレノイ
ド５，５間の磁束により鋼管１を軸方向に磁化し
（第８図参照）、鋼管１の表面上に疵が存在する場
合には、その表面疵による漏洩磁場を、前述の磁
場検出器４により検出して、所定の信号処理を行
うことにより疵を標定する。

第９図ｉ〜ivは、回転磁場の方向と鋼管１外周
面に形成される磁束及び回転磁場に誘起される渦
電流を模式的に示したものであり、回転磁場によ
り鋼管外周面には周方向に沿う磁場イが発生し、
回転磁場の仮想磁極近傍には鋼管の外周面と直交
する方向の磁場により渦電流ハが誘起される。ま
た環状ソレノイド５，５により鋼管１の外周面の
軸方向に磁場ロが発生する。従つて鋼管１の外周
面上に軸方向、周方向の割れの如き欠陥が存在す
る場合は、回転磁場による周方向磁場イ、環状ソ
レノイドによる軸方向磁場ロの欠陥からの漏洩磁
場を、またピツトの如き欠陥が存在する場合は、
該欠陥の渦電流ハの乱れに起因する磁場の乱れ
を、磁場検出器４により検出することにより探傷
する。磁場検出器４は回転磁場の回転速度よりも
遅い速度にて回転するようになつており、鋼管１
の搬送と相俟つて、鋼管１の外周面上を磁場検出
器４はスパイラル状に走査し、鋼管１の外周面全
域に亘る精密な探傷がなされる。

第１０図は本発明装置の一実施例を示す一部破
断正面図、第１１図はその縦断面図である。長手
方向に搬送される被検査材としての鋼管１の搬送
域には、円筒状のドラム３１が基盤３２上に、鋼
管１とは同心状に固設されており、その内周面中
程にはブラケツト３３，３３…により環状をした
電磁石２がドラム３１とは同心状に取付けられて
いる。該環状電磁石２の上、下部及び左、右側部
には前述した如く、各磁束が電磁石２の中心にて
直交するように２組の磁極２ａ，２ａ、２ｂ，２
ｂが中心に向つて突設されており、各磁極２ａ，
２ｂにはコイル３ａ，３ｂが夫々巻回されてい
る。また環状電磁石２の鋼管１搬送方向上、下流
側端面には、中央部にドラム３１と同心状の透孔
が形成された支持円板３４，３５が夫々固着され
ていて、各支持円板３４，３５の外側面に環状ソ
レノイド５，５が同心状に取付けられている。

ドラム３１の内周面の環状電磁石２と上流側の
支持円板３４との間の部分には、中央部にドラム
３１と同心状の丸孔を有する円盤状の取付板３６
が固着されており、その丸孔にベアリング３７に
て回転自在に筒体３８の中程が支持されていて、
筒体３８内を鋼管１が搬送される。筒体３８の鋼
管搬送方向下流側端部、即ちドラム３１の中央部
側端部にはフランジ３８ａが形成されており、ま
た筒体３８の鋼管搬送方向上流側端部外周にはプ
ーリ４１が取付けられていて、該プーリ４１とド
ラム３１の側方に設けられているモータ４０の出
力軸に装着されたプーリ４２との間にはタイミン
グベルト４３がドラム３１に設けられた切欠部
（図面には現われない）を介して掛け回されてい
て、モータ４０の回転プーリ４２、タイミングベ
ルト４３、プーリ４１を介して筒体３８に伝達さ
れて筒体３８は回転する。

筒体３８のドラム３１中央部側端部に形成され
たフランジ３８ａの外側端面の中心対称の二位置
にはリンク機構４４，４４を介して磁場検出器を
夫々内蔵したセンサホルダ４５，４５が夫々径方
向への移動可能に取付けられており、また各リン
ク機構４４，４４には、センサホルダ４５，４５
を中心方向に付勢する板バネ４６，４６が夫々設
けられている。

筒体３８のフランジ３８ａと取付板３６との間
の部分にはスリツプリング４７が固設されてお
り、また取付板３６には、スリツプリング４７に
摺接するブラシ４８が取付具４９を介して取付け
られていて、センサホルダ４５内の磁場検出器か
らの信号をこのスリツプリング４７及びブラシ４
８にて装置外に取出す。

第１２図は斯かる装置の電気回路の一例を示す
ブロツク図である。環状電磁石２の各磁極２ａ，
２ｂに巻回された各コイル３ａ，３ｂには、位相
が夫々π／２異なつて発振器５１より発せられる
交流電流（Im sinωt、Im cosωt）が夫々パワー
アンプ５２，５３を介して供給され、磁極２ａ，
２ｂ直近の鋼管１の表面には経時的にその方向が
変化する回転磁場が形成される。また環状ソレノ
イド５，５には直流電源５４からの直流電流がパ
ワーアンプ５５にて増幅されて供給され、鋼管１
の外周面に軸方向磁場を形成する。なお環状ソレ
ノイド５，５の励磁電流としては直流電流に限ら
ず交流電流でもよい。

各センサホルダ４５内に設けられた各磁場検出
器４は鋼管１の外周面上に存在する周方向及び軸
方向の割れ状の疵に起因する漏洩磁場と、回転磁
場により誘起される渦電流が鋼管１の外周面に存
在するピツト状の表面疵により乱れた場合に起こ
る磁場の乱れとを検出し、各検出信号は、ブラシ
４８及びスリツプリング４７を介して各増幅器５
６に夫々与えられて増幅され、コンパレータ５７
に入力される。コンパレータ５７は各増幅器５６
の出力信号、換言すれば各磁場検出器４の出力信
号を比較し、両信号の差が有害疵と判断されるレ
ベルの場合にはマーカ５８にて鋼管１の疵位置に
マーキングを施す。また各増幅器５６の出力信号
は、レコーダ５９に入力され各磁場検出器１７の
検出信号を記録する。

斯く構成された本発明装置においては、モータ
４０を回転駆動させてドラム３１内の筒体３８を
回転させておき、鋼管１を搬送すると、各センサ
ホルダ４５の下面は鋼管１の外周面に当接し、筒
体３８の回転と鋼管１の搬送と相俟つて鋼管１の
外周面上をスパイラル状に移動して鋼管１の表面
疵の探傷を行う。この場合、各センサホルダ４５
は板バネ４６により鋼管１の中心方向に押圧され
るので各センサホルダ４５は鋼管１の外周面に確
実に当接することになり、鋼管１の細かい振動、
曲がり等にも確実に追従する。

なお上述の実施例においては磁場検出器を中心
対称に一対設ける構成としたが、これに限らず、
一個だけまたは２個以上設ける構成としてもよ
い。

以上の如く本発明にあつては、被検査材の中心
対称に夫々対設され、２組の磁極に位相の異なる
交流を印加して相互に直交する磁場を発生させ、
磁極直近の被検査材の表面に回転磁場を形成する
交流磁場発生器と、被検査材を軸方向に磁化する
磁場発生器と、前記交流磁場発生器の磁極におけ
る被検査材との対向面に設けられ、前記回転磁場
により誘起された渦電流の表面疵による磁場の乱
れ及び漏洩磁場の検出が可能な磁場検出器とを有
するから、回転磁場により被検査材の周方向磁
場、被検査材の表面と直交する方向の磁場及び被
検査材の軸方向の磁場が形成されることとなり、
しかも周方向磁場、表面と直交する方向の磁場は
時間的に変化することとなつて、軸方向、周方向
に割れ状欠陥、ピツト状欠陥をその性状、種類の
如何を問わず検出し得、またこれを弁別すること
が可能となり、加えて被検査材自体を強磁性体に
限らず非磁性材料にも適用が可能となり、更に被
検査材の壁厚さに影響されることなく探傷を行う
ことが出来る等本発明は優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は磁粉探傷法の説明図、第３
図は原理説明のための模式図、第４図はその説明
図、第５図は従来装置の模式図、第６図は本発明
装置の模式図、第７図、第８図、第９図〜は
その説明図、第１０図は本発明装置の一部破断正
面図、第１１図はその縦断面図、第１２図は本発
明装置の電気回路のブロツク図である。 １……鋼管、２……環状電磁石、２ａ，２ｂ…
…磁極、３ａ，３ｂ……コイル、４……磁場検出
器、５……環状ソレノイド、３１……ドラム、３
８……筒体、４０……モータ、４５……センサホ
ルダ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 軸方向に搬送される円形断面の被検査材の搬
   送域に設けられ、被検査材の中心対称に夫々対設
   され、２組の磁極に位相の異なる交流を印加して
   相互に直交する磁場を発生させ、磁極直近の被検
   査材の表面に回転磁場を形成する交流磁場発生器
   と、 被検査材を軸方向に磁化する磁場発生器と、前
   記交流磁場発生器の磁極における被検査材との対
   向面に設けられ、被検査材の外周面に沿つて回転
   しつつ前記回転磁場により誘起された渦電流の表
   面疵による磁場の乱れ及び漏洩磁場の検出が可能
   な磁場検出器と を具備することを特徴とする探傷装置。