JPH0371319B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、フロントフオーク上にエンジンを
搭載したフロントドライブ自動２輪車または自動
３輪車に関する。

自動２輪車および自動３輪車には前輪をエンジ
ンで駆動するフロントドライブ方式をとるものが
あり、この場合、前輪はステアリング軸によつて
操舵するのでエンジンと前輪とを結合する駆動系
になるべく変位が生じないように、エンジンをス
テアリング軸を中心とした可動部の上に設置する
のが普通である。すなわち、ハンドルからフロン
トフオークのブラケツト、フロントフオーク、前
輪軸までの都合のよい部分を選んでエンジンを固
定する。しかしこの場合でも、エンジンは比較的
重量物であるから、その重心位置がステアリング
軸心と離れているとハンドル操作が不安定にな
り、重心が高い位置にあつても好ましくない。ま
た外観上カバーリングを施すとしてもコンパクト
にすることが望ましく、また駆動系の関係部品の
配置を適正に考慮する必要もある。

従来のこの種のフロントドライブ自動２輪車ま
たは自動３輪車でのエンジン搭載位置は、前輪の
上方でフロントフオークの前方、あるいは前輪の
側面が多く見られ、上記の条件をある程度満足さ
せてある不充分である。フロントフオーク前部に
置くものでは、重心がステアリング軸心より前方
に出て操舵が不安定であり、また前方に突出する
ので外観をまとめにくい。前輪側面に置くもので
は左右のバランスが悪く、操舵性がよくない。

この発明は、以上の点を考慮し、操舵性を良好
にし、外観をまとめやすく、伝導系の構成部品の
配置を適正にしたフロントドライブ自動２、３輪
車を提供することを目的とする。

上記の目的を達成するため、この発明のフロン
トドライブ２、３輪車の概要を述べると次の通り
である。

車体前上端のヘツドパイプを貫通して軸支され
たステアリング軸の下端にテレスコピツク型の一
対のフロントフオークを設けてその下端に前輪を
挾むように軸支する。この左右のフロントフオー
クと、その上端を支持するフオークブラケツト
と、下端に軸支した前輪とによつて囲まれたほぼ
方形のスペースをエンジンが収容できる大きさに
設定する。上記一対のフロントフオークのぞれぞ
れのばね下パイプに前輪上方を跨いでエンジンブ
ケツトの両側部を固定し、このエンジンブラケツ
トの車幅方向中央部上に上記エンジンを設置する
とともに、エンジンの出力軸と前輪の軸とを結ぶ
線を上記フロントフオークの軸心とほぼ平行に設
定する。

ステアリング軸心はフロントフオークのやや後
方を通るが、上記のように構成することによつて
エンジンを後方へ寄せて重心をステアリング軸と
一致させることができる。従つてハンドル操作が
安定する。さらに、エンジンブラケツトの両側部
が左右一対のフロントフオークのそれぞれのばね
下パイプに固定され、このエンジンブラケツトの
車幅方向中央位置にエンジンが設置されたので、
エンジンの荷重は、左右のフロントフオークの両
方に均等に作用する。このため、左右のフロント
フオークの荷重バランスが良好になり、操舵性を
一層向上させることができる。またこのようにエ
ンジンがフロントフオークの前後に振り分けられ
て位置するので、前後への突出が少く、カバーリ
ングが容易でコンパクトになり外観を処理しやす
い。さらに緩衝作用によつてもエンジンドライブ
軸と前輪軸との間に相対変位がなくまた近い位置
にあるので、チエーンやベルトなどの駆動系部品
の配置が容易であり、両軸を結ぶ線がフロントフ
オークの軸心と平行し、ベルト、チエーンなどが
フロントフオークを跨いで前後対称位置を通るの
でテレスコピツク型のフオークに対する曲げ荷重
が少く、またこの部分の外観が整う。

以上の通りこの発明に係るフロンドドライブ、
自動２、３輪車は、操舵性能上、外観意匠上およ
び各部品の構成や組立などの生産性上に大きい効
果を有する。

以下図に就いてこの発明の好ましい実施例を説
明する。

図は前フレーム傾斜型の自動３輪車を示す。前
フレーム１は左右の後輪４で支持された後フレー
ム２に対し、前後方向のロール軸３によつて揺動
自在に軸支される。前フレーム１の後端にはシー
ト５が装着され、前上端にヘツドパイプ６を備え
る。ヘツドパイプ６にはステアリング軸７が貫通
軸支され、その上端にハンドル８が固設される。

ステアリング軸７の下端には、両側方に張り出
したフオークブラケツト９が固設され、その両端
部に下方へ延びる一対のテレスコピツク型のフロ
ントフオーク１０の上端が固着される。テレスコ
ピツク型のフロントフオーク１０は下半部にはス
プリングによつて下方へ押圧された可動のばね下
パイプ１０ａが嵌着され、ばね下パイプ１０ａの
下端に前輪アクスル１１を挿着して前輪１２を軸
支する。以上は前輪１２の緩衝懸架装置である。

第３図に示すように、両フロントフオーク１０
に左右を囲まれ、フオークブラケツト９と前輪１
２で上下を囲まれたスペース１３は大きく設定
し、この中にエンジン１４が納まるようにする。
エンジンブラケツト１５は前輪１２の上方を跨い
で、両側下端を前輪アクスル１１に係合させ、か
つフロントフオークのばね下パイプ１０ａ上の取
付ボス１６に挿着されたボルト１７によつて固定
される。このエンジンブラケツト１５の車幅方向
中央部上に、つまり第３図における前輪１２の直
上にエンジン１４が設置される。さらに、エンジ
ン１４は、重心が前記ステアリング軸７の軸心と
ほぼ一致するように固定され、また前輪１２の軸
心と相対変位がないように結続される。フオーク
ブラケツト９下縁とエンジン１４上縁との間には
フロントフオーク１０の緩衝ストローク分の隙間
があつて干渉しないようになつている。

前輪１２の一側方には、エンジンブラケツト１
５の外側にフロントフオークばね下パイプ１０ａ
内側との間に縦動プーリー１８が前輪アクスル１
１上に回転自在に軸支され、ボルト１９によつて
前輪１２のハブに設けたフランジ２０に結合され
て前輪１２と一体に回転する。エンジン１４の出
力軸２１に固定した駆動プーリー２２は縦動プー
リー１８の上方に位置し、両プーリー１８，２２
にベルト２３を懸け渡す。２４はテンシヨンプー
リーでエンジンブラケツト１５外面に装設され
る。こうしてベルト２３はフロントフオークばね
下パイプ１０ａの前後に振り分けられる形に張設
される。

前輪１２の他側方には、エンジンブラケツト１
５とばね下パイプ１０ａとの間に、エンジン排気
系に連る偏平なマフラー２５を設置する。マフラ
ー２５にはこれを左右方向にパイプ２６が貫通し
ており、このパイプ２６内の貫孔に前記エンジン
ブラケツト１５を固定するボルト１７を挿通して
マフラー２５を共締めして支持する。２７はスペ
ーサで、マフラー２５の両側面とばね下パイプ１
０ａおよびエンジンブラケツト１５との間に隙間
をあけて排気熱を遮断すると共に、冷却空気の流
通を図る。

エンジンに燃料を供給する燃料タンク２８は、
フオークブラケツト９の上面に重ねて設置する。
フロントフオーク１０は、その上端をフオークブ
ラケツト９の両端部に下から挿通されて取付ボル
ト２９で締着される。その取付ボルト２９の外周
に置いたクツシヨンゴム３０の上に燃料タンク２
８を支承し、ゴムバンド３１によつて浮動式に定
着する。フオークブラケツト９は片持式なので上
方にはかなりのスペースがあり、ここを燃料タン
クとして利用でき、またエンジン１４の直ぐ上方
に位置するので燃料は重力による流下によつて供
給ができる。燃料パイプ３４はフロントフオーク
１０の緩衝ストローク分を吸収するだけのフレキ
シブルな構成が必要であるが短くて済み、配管が
容易である。

なお図中３２は縦動プーリー１８およびベルト
２３下部を被覆するベルトカバー、３３は燃料タ
ンク２８からエンジン１４およびフロントフオー
ク１０上部を含めてその前後左右を被覆するフロ
ントカバーで、この部分の外観を整える。

上記実施例によれば、エンジン１４の重心をス
テアリング軸７の軸心とほぼ一致させることがで
き、操舵性を良好にできる。さらに、エンジンブ
ラケツト１５の両側部が左右一対のフロントフオ
ーク１０のそれぞれのばね下パイプ１０ａに固定
され、このエンジンブラケツト１５の車幅方向中
央位置に、つまり第３図における前輪１２の直上
にエンジン１４が設置されたので、エンジン１４
の荷重は、左右のフロントフオーク１０の一方の
みに作用することなく、両フロントフオーク１０
に均等に作用する。このため、左右のフロントフ
オーク１０の荷重バランスが良好になり、操舵性
を一層向上させることができる。

また、エンジン１４がフロントフオーク１０の
前後に振り分けられて位置するので、前後への突
出が少なくコンパクトになる。このため、フロン
トカバー３３も前後に突出せずコンパクトになつ
て、車両の外観を処理し易い。

さらに、エンジン１４の出力軸２１と前輪１２
の前輪アクスル１１との間に相対変位がなく、ま
た近い位置にあるので、駆動プーリ２１、従動プ
ーリ１８、ベルト２３およびテンシヨンプーリ２
４などの駆動系部品の配置が容易である。

また、出力軸２１と前輪アクスル１１とを結ぶ
線がフロントフオーク１０の軸心と平行に配置さ
れたので、出力軸２１から前輪アクスル１１へ動
力を伝導する駆動系がフロントフオーク１０に対
し前後両側に対称に設置される。このため、フロ
ントフオーク１０のばね下パイプ１０ａに作用す
る曲げ荷重が少なく、フロントフオーク１０の伸
縮運動に支障を来すことがない。

また、エンジン１４を載置するエンジンブラケ
ツト１５は、フロントフオーク１０のばね下パイ
プ１０ａに固定されるので、フロントフオーク１
０の伸縮運動に伴いエンジン１４が昇降する。こ
のため、エンジン１４の出力軸２１から前輪２１
の前輪アクスル１１へ動力を伝導する駆動系の構
造を簡素化でき、フロントカバー３からのコンパ
クト化および車両の軽量化に寄与できる。

以上の実施例にも示す通り、この発明のフロン
トドライブ自動２輪車または自動３輪車は、ハン
ドル操作が安定し、駆動系各部の配置が適正にな
り、またコンパクトにまとめて外観上の処理がし
やすいなどの効果がある。

【図面の簡単な説明】

図はこの発明の好ましい実施を示すもので、第
１図は前フレーム傾斜型自動３輪車の側面図、第
２図は同前輪懸架部の拡大した縦断側面図、第３
図は同第２図の−線にほぼ沿う縦断正面図で
ある。 ７……ステアリング軸、９……フオークブラケ
ツト、１０……フロントフオーク、１０ａ……ば
ね下パイプ、１２……前輪、１３……スペース、
１４……エンジン、１５……エンジンブラケツ
ト。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ステアリング軸の下端に固定されて左右に張
   り出したフオークブラケツトと、その両端から下
   方へ延びスプリングを内装した左右一対のテレス
   コピツク型フロントフオークと、上記フロントフ
   オーク下端に軸支された前輪とによつて前輪緩衝
   懸架装置を構成すると共に、上記フオークブラケ
   ツトと左右のフロントフオークと前輪とによつて
   囲まれたスペースをエンジンが収容できる大きさ
   に設定し、上記一対のフロントフオークのそれぞ
   れのばね下パイプには上記前輪上方を跨いでエン
   ジンブケツトの両側部が固定され、このエンジン
   ブラケツトの車幅方向中央部上に上記エンジンを
   設置するとともに、上記エンジンの出力軸と上記
   前輪とを結ぶ線を上記フロントフオークの軸心と
   ほぼ平行に設定したことを特徴とするフロントド
   ライブ自動２、３輪車。