JPH0352490Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 (1) 産業上の利用分野 この考案は歯科用パノラマＸ線撮影装置によつ
て歯列域や上下顎を含む顔面域の断層像を撮影す
る際、散乱Ｘ線の頭部以外の生体各部への被曝を
防護するようにした頭部固定装置に関する。

(2) 従来技術 歯科用パノラマＸ線撮影装置（以下パノラマＸ
線装置と記す）は、歯顎域の観察だけでなく、矯
正、補綴、口腔外科、耳鼻咽喉、整形外科と多用
途性を有し、その使用頻度は高い。このパノラマ
Ｘ線装置での撮影は、患者頭部を装置の頭部固定
装置すなわちあご台、ヘツド当および１対のイヤ
ーロツトによつて固定し、さらにミラーおよび投
光器を用いて断層域の位置づけを行つたのち、両
端にＸ線源とカセツテを対向状に配設した水平ア
ームを回動させて行う。したがつてＸ線源の焦点
と顔面との間隔は回動に伴ない変化し、さらに複
雑な顔面形状によつて散乱Ｘ線量および散乱方向
は刻々に変化する。すなわち散乱Ｘ線はパノラマ
撮影のたとえば約10秒もの間にわたり被写体であ
る歯行域だけでなく、顔面の皮膚・皮下組織・ほ
ぼ骨などすべての生体組織を散乱体として四方八
方に散乱する。この散乱線の強度は一般に散乱体
から１ｍの点で散乱体位置での１次Ｘ線の0.1％
位といわれており、上記１ｍ以内に於いては距離
の２乗に反比例して強度が増加する。このため頭
部に近接する頚部の甲状線や胸部、さらに腹部
（とくに妊婦の腹部）、下腹部の生殖腺などに照射
される散乱線量は無視しうるものではない。しか
しながら従来のパノラマＸ線装置において上記患
者頭部や頭部固定装置などからの散乱Ｘ線が上記
した患者胴部の各部への被曝を防護する手段を設
けたものは無いのが現況である。

(3) 目的 この考案は上記の現状に鑑みてなされたもの
で、パノラマ撮影の時間中散乱Ｘ線によつて被検
者の頭部以外の各部が被曝するのを防護した装置
の提供を目的とする。

(4) 構成 この考案の要旨は、歯科用パノラマＸ線撮影装
置の頭部固定装置にＸ線防護処置を施したことで
あり、すなわち、頭部固定装置のあご台の下方に
おいて、たとえば鉛含有の合成樹脂などのＸ線吸
収係数の大きい部材にてなるＸ線防護板を被検者
に対向するように突設するとともに、その防護板
前縁部に被検者の頚部に対応し、近接する凹部ま
たは咽喉覆いを付した凹部を設けた点である。

(5) 実施例 以下図面によつてこの考案の一実施例を説明す
る。第１図はこの考案にかかる歯科用パノラマＸ
線撮影装置の頭部固定装置の側面図、第２図は第
１図の−′断面を上方から見た平面図であり、
かつパノラマ撮影の原理を説明する模式図であ
る。パノラマＸ線撮影装置全体は図示を省略する
が、通常床上据置または床上固定の基台の一端に
樹設された支柱に昇降自在の撮影部がコの字状に
上記基台と平行して突設されている。その上部突
設部に設けた回動機構の回動軸に水平アーム（第
２図の１がその中心軸を示し、以下これを水平ア
ームと記す）が懸垂されている。この水平アーム
１の両端に被検者頭部２をはさんでＸ線源３と回
転ドラム式または平板式カセツテホルダ４とを所
定の相対位置に対向配置している。第２図の４は
回転ドラムを示し、始動時および回動終了時のＸ
線源３，３″は紙面の都合で図示しない。水平ア
ーム１が矢印ａ方向に回動を始めるとドラム４内
のカセツテ５が上記アーム回動と連動し、その回
動速度に対し一定の相対速度を保ちながら矢印ｂ
方向に回転しながらドラム４は上記回動機構によ
つて歯列弓断層軌道６とを相似の擬似だ円形軌道
７に沿つて、たとえば約10secかかつて回動する。
一方水平アーム１の他端のＸ線源３の焦点３Ｘか
らのＸ線ビームは矢印ｃ方向に相対的に回動し、
焦点およびカセツテに対し一定の相対位置Ｐの軌
跡すなわち歯列弓断層軌道６を正方投影し、ドラ
ム４のスリツト８を通してカセツテ４内のＸ線フ
イルムに歯列弓断層像をパノラマ状に撮影するこ
とは衆知のとおりである。第１図にもどつて上記
コの字状撮影部の下部突設部９の先端に、ハンド
ル１０の操作を介して矢印ｄ方向に進退自在の頭
部固定装置１１が設けられている。この固定装置
は、被検者のあごを載せるあご台１２と、両外耳
孔に挿入する１対のイヤーロツト１３を対向状に
保持し、かつイヤーロツト間隔を調整自在にした
イヤーロツト保持部１４と、上記１対のイヤーロ
ツト１３を揺動支点として頭部２を矢印ｅ方向に
揺動せしめ、眼耳平面１５（外耳孔上縁と眼窩下
端を結ぶ平面）を水平に調整するヘツド当て１６
などを備え、支台９に対し進退自在に係合する可
動基板１７上に樹設した１対のＸ線透過率のすぐ
れた透明合成樹脂材にてなる支柱１８を介して構
成されている。以上の構成は従来装置のものであ
り、この考案にかかる頭部固定装置１１は上記可
動基板１７上に高さｈがたとえば約10mmの補助台
１９を設け、この台上にＸ線吸収係数の大きいた
とえば透明アクリル系含鉛合成樹脂板の厚さがた
とえば約10mm位のＸ線防護板２１を固定する。こ
の防護板は第２図で示すように平面はほぼ馬てい
形で、２点鎖線で示す被検者の頚部２２に近接す
る凹部を上記頚部の前縁すなわち咽喉部２２Ｆの
曲率に見合う半径Ｒをたとえば約60mmとした円弧
状に形成するとともに、その凹部に沿つて高さＨ
がたとえば約30mmの同一部材にてなる咽喉覆い２
３を接合させている。上記１対の透明材の支柱１
８をその根元にて結合する支柱結合部材２４は上
記Ｘ線防護板２１を介在せしめた状態で上記補助
台１９に数本のビス２５にて固定され、あご台１
２も上記基台２４に結合する。このように構成す
ることによつて頭部２の顔面方向にては頚部から
優に約12cm、側方の肩部においては同じく頚部か
ら約９cmにわたり、Ｘ線防護板２１が張り出すこ
とになり、上記補助台１９の高さｈを適切に選定
すれば、頭部に近接して回動するカセツテホルダ
４の回動に支障を与えることはない。このＸ線防
護板のＸ線しや蔽によつて撮影時、頭部やその固
定装置を散乱体とする２次Ｘ線が頭部以外の人体
各部特にＸ線障害が問題となる頚部の甲状線・胸
部・妊婦の腹部・下腹部の生殖腺などに被曝する
のをほぼ完全に防護しうることとなる。

以上がこの考案の一実施例であるが、この考案
は図示や説明に限定されるものではなく、たとえ
ばＸ線防護板も透明アクリル系含鉛合成樹脂材に
限らず、Ｘ線吸収係数の大きい部材なら何でもよ
く、また咽喉覆いを付設しないばあいもある。ま
たＸ線防護板の形状もフイルムホルダの回動範囲
を避ける形に形成すれば、取付高さｈを大きくと
ることができ、被検者に窮屈な思いをさせなくて
よい。また頭部固定装置にはいろいろの種類が従
来から存在し、図示のように透明材の支柱１８を
要せず、回動機構を収容した上部突設部からイヤ
ーロツト保持部やヘツド当てを吊下する型式のも
のもあるが、そのばあいでもあご台下方にＸ線防
護板を設ける点には変りはない。

(6) 効果 この考案は以上のように構成されているので、
従来の歯科用Ｘ線パノラマ撮影装置のＸ線防護上
の欠点を解消するものである。すなわちパノラマ
撮影中、被検者頭部および頭部固定装置またはそ
の他の装置を散乱体とする２次Ｘ線が約10秒間も
にわたり、被検者の頭部以外の生体部分とくに放
射線感受性の高い組織や細胞を照射することを防
護し、それらの組織・細胞が放射線障害を起すお
それの全くない安全な装置を提供しえたものであ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の実施例頭部固定装置の側面
図、第２図は第１図の−′断面の平面図（パ
ノラマ撮影の原理説明用模式図を含む）である。 １……水平アーム、２……被検者頭部、３……
Ｘ線源、３Ｘ……Ｘ線焦点、４……カセツテホル
ダ（この例では回転ドラム）、５……カセツテ、
６……歯列弓断層軌道、７……カセツテホルダの
回動軌道、９……頭部固定装置支台、１１……頭
部固定装置、１２……あご台、１７……可動基
板、１９……Ｘ線防護板固定用補助台、２１……
Ｘ線防護板、２３……咽喉覆い、２４……支柱結
合部材。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 被検者の頭部を固定し、これをはさんでＸ線
   源とカセツテとを対向配設した水平アームを頭
   部回りで回動させ、かつ回動の逆方向に前記カ
   セツテを移動せしめ、全顎断層面をパノラマ状
   に撮影するようにした装置の頭部固定装置にお
   いて、放射線吸収係数の大きい部材にてなり、
   被検者のあごを載せるあご台の下方において被
   検者に対向して突設され、かつその対向する前
   縁に被検者の頚部に対応し、近接する凹部を形
   成したＸ線防護板を設けたことを特徴とする歯
   科用パノラマＸ線撮影装置の頭部固定装置。 ２ Ｘ線防護板がその凹部に沿つて直立する咽喉
   覆いを付してなる実用新案登録請求の範囲第１
   項記載の歯科用パノラマＸ線撮影装置の頭部固
   定装置。