JPH0344484B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明は架空送電線の張設に用いられる吊車
における案内ワイヤの取付構造に関する。

（従来の技術） 屋外の鉄塔間に張設される架空送電線の架設ま
たは張替に際しては従来から吊金車（吊車または
金車ともいう。以下吊車と総称する。）を用いて
行ういわゆる吊金工法と称される方法が多用され
ている。

この吊金工法は、後にも詳しく説明するが、案
内ワイヤーに適宜間隔を置いて多数の吊車を吊り
下げ配設し、この吊車に新しい送電線を送り出す
ものであるが、この工法においては案内ワイヤー
を弛緩させたりあるいは緊張させたりすることに
よつて該吊車の天地を反転させることが行なわれ
る。

この案内ワイヤーの弛緩または緊張による吊車
の反転は、該ワイヤーと吊車が一体になつてはじ
めて可能となることはいうまでもない。

しかるに、従来では、ワイヤークリツプ等によ
つて案内ワイヤーを強く挟み込んで吊車と結合し
ているのであるが、ワイヤーの緊張時には張力に
よつてワイヤーが伸びてその径が細くなるのでク
リツプがワイヤーをスリツプして吊車から外れて
しまうというトラブルがしばしばある。

一方、案内ワイヤーをウインチ等で巻き上げて
緊線する際には該ワイヤーに撚りが発生するので
あるが、クリツプがワイヤーを強く挟み込んでい
るとこの撚りによつて金車が左右に振られて傾い
たりあるいは外れたり、また吊車を反転させる際
にその転倒方向が一致せずにバラバラ方向に反転
したりして、工事の能率を大きく妨げるという問
題が存していた。

（発明が解決しようとする課題） この発明は、このような点に鑑み、案内ワイヤ
ーの保持を確実にするという要請と、一方におい
てはワイヤーに生じた撚りを自由に逃がすという
一見互いに相反するようにみえる要請をともに満
たすことができる新規な吊車における案内ワイヤ
ーの取付構造を提案するものである。

（課題を解決しようとする手段） すなわち、この発明は、被張設用線条のための
走行滑車を有する吊車の前記線条の長さ方向に案
内ワイヤのための前部ワイヤ挿通部および後部ワ
イヤ挿通部からなる案内ワイヤ保持部を有し、該
案内ワイヤ保持部において、前記案内ワイヤが、
前記ワイヤ挿通部を通り抜けずかつ前記ワイヤ保
持部内で回転可能なストツパ部材に固定されてい
ることを特徴とする吊車における案内ワイヤの取
付構造に係る。

（実施例） 以下添付の図面に従つて説明すると、第１図は
この発明の一実施例を示す吊車およびストツパ部
材の正面図、第２図は同じくその側面図、第３図
各図は送電線の張替え工事の概略を示す側面図、
第４図各図はストツパ部材の側面図ならびに正面
図、第５図各図は他の実施例を示すストツパ部材
の正面図並びに断面図、第６図各図は別の実施例
のストツパ部材の正面図ならびに断面図、第７図
各図はさらに他の実施例のストツパ部材を示す平
面図ならびに正面図ならびに断面図である。

まず、第１図および第２図について吊車１０の
説明をする。

図から明らかなように、吊車１０は、箱形の金
車フレーム１１内に送電線等の張設用線条Ｗのた
めの走行滑車３０を有するとともに、該金車フレ
ーム１１の上側にナイロンロープ等の案内ワイヤ
ー９を挿通して吊下げる部分であるワイヤー保持
部２０を有する。

金車フレーム１１内に設けられた走行滑車３０
には、線条Ｗが走行中外れたりしないように、胴
部中央にくびれ部３１または溝等が形成される。
また、該走行滑車３０を備えたフレーム部分１２
は、第１図鎖線で表わしたように、線条Ｗの挿入
のために、一方の側の蝶番部１３、および他方の
側にリング部１４ならびにその止めピン１５を設
けて開閉可能に構成される。符号３１は走行滑車
３０の回転軸である。

なお、実施例では、金車フレーム１１内に、前
記走行滑車３０と対向する側、すなわち図では上
方側において、線条Ｗが自由に移動しうる空間Ｓ
を置いて螺旋溝４５を有する反転ガイドローラ４
０が回動自在に設けられている。この反転ガイド
ローラ４０は、吊車１０を反転させる際に案内ワ
イヤー９を緩めることによつて線条Ｗをその螺旋
溝４５に導いて走らせ吊車１０自体にひねりを与
えて傾斜させ、その結果該吊金車を一定方向に反
転せしめようとするものである。符号４１は、反
転ガイドローラ４０の回転軸である。

なお、図において符号１９は吊車１０の反転の
際または線条Ｗの移動時に該線条をフレーム１１
との接触から保護するプラスチツクカバーであ
る。

ワイヤー保持部２０は、線条Ｗの長さ方向の前
後に設けられた前部ワイヤー挿通部２１および後
部ワイヤー挿通部２２よりなり、ワイヤー９の横
側からの挿入を可能にするために、第１図のよう
にアーム根本部が蝶番部２３によつて開閉自在に
構成されている。図中、符号２６はワイヤー挿通
部２１，２２の先端のフツク部２４，２５に嵌入
する固定ボルト、２７および２８はワイヤー９の
下側の位置を規制する持ち上げアームである。

案内ワイヤー９は、吊車１０のワイヤー保持部
２０において、前記ワイヤ挿通部２１，２２を通
り抜けずかつ当該ワイヤー保持部２０内で回転可
能なストツパ部材に固定保持される。

このようなストツパ部材を用いてワイヤー９を
吊金車の保持部２０に保持せしめることによつ
て、ワイヤー９の所定間隔毎に吊車１０を配置す
ることができるとともに、該ストツパ部材は吊車
１０のワイヤー保持部２０において回動可能な本
体を有するものであるから、ワイヤー９に撚りが
生じた際においては該ワイヤーと一体に回転する
ことができ、従つて該撚りを吊車に伝達すること
なく自然に逃すことができるのである。

すなわち、第１図および第２図に図示のストツ
パ部材５０は、第４図ａにその側面図ならびにｂ
に正面図を示したように、プラスチツクスまたは
金属からなる円柱形状の本体５１を有し、案内ワ
イヤー固定のために、その長手方向中間部分に屈
曲部５６を形成した屈曲保持溝５５を備えてい
る。

ストツパ部材本体は、第１図および第２図に図
示のように、吊車１０のワイヤー保持部２０にお
いてワイヤー９を挿通した状態で、該本体５１が
回動することができる大きさならびに形状に構成
される。一般的には、第４図または第５図に示す
ストツパ部材５０，６０のように円形状の本体５
１，６１が通常であろうが、この本体の形状は、
第６図のストツパ部材７０のような立（直）方体
７１，７２、あるいは第７図に示すストツパ部材
８０のようなフレーム状本体８１であつてもよ
い。

案内ワイヤー９を固定する屈曲保持部は、その
中間部分においてワイヤー９を強制的に屈曲せし
めることにより、ワイヤー９の緊線の際にテンシ
ヨンが加われば加わるほど強い摩擦抵抗が生じて
抜けにくくなるように配慮されたものである。

この屈曲保持部としては、第４図のように溝の
横方向への屈曲部５６を有する屈曲溝５５である
場合、第５図のように溝の上下方向への屈曲部６
６を有しボルト等の固定具６６，６７にてワイヤ
ーを挟み込むように構成された屈曲溝６５である
場合、さらに第６図のように切欠７３，７４を有
し、かつボルト等の固定具７７によつて合着され
る本体ピース７１，７２の合接部に屈曲溝７５が
できるように構成される場合、また第７図のよう
に、前後の支持部８２，８３とフレーム８１のフ
ツク部８７に掛け渡されたボルト８９によつてワ
イヤーを屈曲保持する場合等、種々の構造が提案
される。

次に、第３図はこの発明構造を用いて送電線の
旧線Ｗ１と新線Ｗ２とを張替える作業をａ，ｂ，
ｃ，ｄ，ｅの順に示したものである。

まず、同図ａに示すように、ナイロンロープ等
の案内ワイヤー９の一定間隔（実施例では15m間
隔）毎にストツパ部材５０を装着してこれを吊車
１０のワイヤー保持部２０に取付けることによつ
て案内ワイヤー９の一定間隔毎に吊車１０，１０
…を配置し、自走車８によつて該吊車を既設の旧
線Ｗ１に沿つて走らせ旧線Ｗ１の下方に略平行状
態に案内ワイヤー９が張設される。

次に、同図ｂのように、旧線Ｗ１を緩め他方の
案内ワイヤー９をウインチ等で巻き上げ緊線する
ことにより、吊車１０の天地を逆転して、上側に
ワイヤー９、下側に旧線Ｗ１を配置する。

このとき、従来ではウインチ等の巻き上げによ
つてワイヤー９に撚りが発生してこの撚りによつ
て金車がふらついたり転倒してワイヤーから外れ
るようなことがしばしば起きていたのであるが、
本発明においては、ワイヤー９は吊金車１０のワ
イヤー保持部２０において回動可能なストツパ部
材に固定保持されて前記保持部２０に取付けられ
ているものであるから、ワイヤー９の撚りは随時
逃がされており、従つて撚りによつて金車がふら
ついたり転倒することは全く回避される。

そうして、次に、同図ｃに示すように、旧線Ｗ
１の後端Ｗ０に新線Ｗ２を結び、旧線Ｗ１を手操
れば送電線は新線Ｗ２に換えることができる。

新線Ｗ２の張替が完了すると、今度は案内ワイ
ヤー９を緩めるとともに新線Ｗ２を緊線して、第
３図ｄのように、吊金車１０の天地を再び逆転す
る。

なお、実施例においては、先に述べたように、
金車フレーム内に、走行滑車３０と対向して螺旋
溝４５を有する反転ガイドローラ４０を回動自在
に設けたものであるから、吊車１０の反転に際し
ワイヤー９を緩めることによつて線条Ｗをその螺
旋溝４５に導いて走らせ吊車１０自体にひねりを
与えて傾斜させ、その結果該吊車を一定方向に反
転せしめることができるように構成されている。

新線Ｗ２が張設された後は、第３図ｅのよう
に、該新線Ｗ２に沿つて案内ワイヤー９を引き戻
して回収すればよい。符号７はワイヤー９の回収
時に吊金車１０が暴走しないように制動をするた
めの抵抗金車である。

（効果） 以上、図示し説明したように、この発明によれ
ば、吊車のワイヤー保持部において回動可能なス
トツパ部材に案内ワイヤーを固定保持して行なう
ものであるから、案内ワイヤーの保持が確実にな
されるとともに、ワイヤーに生じた撚りは自由に
逃されることができるようになつた。従つて、従
来のように、クリツプがワイヤーがスリツプして
金車が外れてしまつたり、あるいはワイヤーの撚
りによつて金車が左右にふられて傾いたりさらに
は外れたり、また吊車を反転させる際にその転倒
方向が一致せずにバラバラ方向に反転したりし
て、工事の能率を大きく妨げるという問題は、こ
れをことごとく解消することができるようになつ
た。

また、この発明に用いられるストツパ部材にあ
つては、吊金車のワイヤー挿通部において回転可
能な本体を有しかつその中間部分にワイヤーを強
制的に屈曲せしめて固定する屈曲保持部を備える
という極めて簡単な構成によつて、本発明方法を
実現するための確実なワイヤーの固定保持をなす
ことができる。

このように、この発明はこの種工事の能率の向
上に大きく寄与することができるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の一実施例を示す吊車および
ストツパ部材の正面図、第２図は同じくその側面
図、第３図各図は送電線の張替え工事の概略を示
す側面図、第４図各図はストツパ部材の側面図な
らびに正面図、第５図各図は他の実施例を示すス
トツパ部材の正面図並びに断面図、第６図各図は
別の実施例のストツパ部材の正面図ならびに断面
図、第７図各図はさらに他の実施例のストツパ部
材を示す平面図ならびに正面図ならびに断面図で
ある。 ９……案内ワイヤー、１０……吊車、１１……
金車フレーム、２０……ワイヤー保持部、３０…
…走行滑車、４０……反転ガイドローラ、４５…
…螺旋溝、５０，６０，７０，８０……ストツパ
部材、５５，６５，７５……屈曲保持部、Ｗ……
線条。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 被張設用線条のための走行滑車を有する吊車
   の前記線条の長さ方向に案内ワイヤのための前部
   ワイヤ挿通部および後部ワイヤ挿通部からなる案
   内ワイヤ保持部を有し、該案内ワイヤ保持部にお
   いて、前記案内ワイヤが、前記ワイヤ挿通部を通
   り抜けずかつ前記ワイヤ保持部内で回転可能なス
   トツパ部材に固定されていることを特徴とする吊
   車における案内ワイヤの取付構造。