JPH0320589Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、遠心クラツチにおいて、遠心力によ
つて半経方向外側に変位して摩擦係合により入力
軸と出力軸とを連結する摩擦材に関する。

（従来の技術） 従来、例えば、入力軸と一体回転するハウジン
グ内に羽根を設け、この羽根に対向する別の羽根
を有するタービンをハウジング内に配し、ハウジ
ング内の流体の流れを介して入力軸すなわちハウ
ジングの回転をタービンに伝え、タービンの回転
を出力軸に伝達する流体式トルクコンバータがあ
る。この様な流体式トルクコンバータに遠心クラ
ツチを設けて、ハウジングの回転を摩擦係合によ
つてタービン側に伝達させることが提案されてい
る。

即ち、ハウジングとタービン間にタービンと一
体回転するクラツチ手段を設けるものであるが、
このクラツチ手段は、半経方向外周端面の円周方
向に間隔をもつて配置されハウジングの内周面に
対向する摩擦係合面を有する複数の摩擦材を有し
ている。

以上の構成のクラツチ手段は、入力軸と共にハ
ウジングが回転するとハウジング中の流体が流れ
てタービンへとトルクを伝達するようになるが、
この時タービンと一体的に回転する摩擦材は遠心
力を受けハウジングの内周面方向に変位してハウ
ジングと摩擦係合する。こうして、摩擦材は断続
的或は連続的にハウジングとかみ合いトルクを直
接タービン側へ伝達する。

（考案が解決しようとする問題点） しかし、上記の従来例においては、相手面と接
触した状態で摩擦材が半クラツチ状態で滑るとき
の発熱の問題や、摩擦材が相手面と離れている状
態から相手面に接近し接触しようとするときのエ
ンゲージの確実性の問題や、摩擦材が相手面から
離れている状態から急速にエンゲージしようとす
るときのシヨツクの少ない滑らかなエンゲージの
実現の問題や、摩擦材と相手面との間に異物が侵
入した場合の部材の損傷の問題などが存在する。

（問題点を解決するための手段） 従つて、本考案は、これらの問題点を鑑み、
発熱を防いで潤滑性能を向上させ摩擦材の耐久性
の向上と特性の安定化を図ること、摩擦材と相
手面との間に介在する油を出来るだけ速やかに油
溝や油穴などを介して排出させエンゲージを確実
にすること、急速にエンゲージしようとすると
き摩擦材と相手面との間から油が排出される時間
を或る程度長くして油を一種の緩衝材として作用
させ滑らかにエンゲージさせシヨツクの低減と部
材の耐久性の向上を図ること、異物が摩擦材と
相手面との間に侵入しても油溝や油穴などを通し
て容易に外部に排出されるようになして部材の損
傷を防ぎ耐久性の向上を図ることの少なくとも１
つを目論んで様々な態様の潤滑流路を形成した遠
心クラツチ用摩擦材を提供することを目的とす
る。

（実施例） 第１図は本考案による摩擦材が用いられた遠心
式ロツクアツプクラツチの全体を示す側断面図で
ある。ナツト１１は自動車のエンジン等の駆動源
からの図示なき入力軸に連結されており、カバー
１２とともに一体的に回転する。カバー１２はカ
ツプ形状を成し、対向してポンプ１４が嵌合わさ
れて内部に環状の空所を形成してハウジングを構
成している。ハウジングの空所内にはトルク伝達
用の流体２８が密封されている。

ポンプ１４の内面には空所内に突出する複数の
羽根１４′を有している。カバー１２とポンプ１
４より構成されたハウジングはナツト１１を含む
入力部の回転により一体的に回転する。ハウジン
グ内の空所にはポンプ１４の羽根１４′に対向す
る羽根１８′を有するタービン１８が内包されて
いる。ポンプ１４とタービン１８の間には流体２
８の流れを形成するためのステータ１６が介在さ
れている。

タービン１８はハブ１９上にリベツト２４によ
り一体的に固定されており、一方、ハブ１９は出
力軸用孔２６を有しておりこの孔２６には図示な
き出力軸が嵌入れられる。

クラツチ装置２０はタービン１８とカバー１２
との間に配置され、リベツト２４によりタービン
１８及びハブ１９とともに一体的に固定されてい
る。クラツチ装置２０は半経方向外周上に適当な
間隔で離間されている複数個のシユー２２を有し
ている。

カバー１２は前述の如くカツプ形状をしており
内側凹所を有しているが、この凹所は、半経方向
に拡がる面と、パイロツト軸１０の軸方向に延び
る内周面１２′とを有している。この内周面１
２′は、パイロツト軸１０側より出力軸用孔２６
へと向うに従い半経方向外側へと開放する形状と
なつている。即ち、内周面１２′は不図示の入出
力軸に対し平行とはなつておらず傾斜して設けら
れている。

内周面１２′に対し、シユー２２は対向するよ
うに配置されているので、シユー２２の取付けら
れているクラツチ装置の端部も不図示の入出力軸
に対し傾斜することになる。シユー２２は遠心力
を受け半経方向外側に偏寄して、内周面１２′に
対向してシユー２２上に接着されている摩擦材３
０が内周面１２′上を摺動し、更に、それとかみ
合つてカバー１２とクラツチ装置２０を一体的に
する。

本考案を説明するための好適な例を第２図及至
第２４図を用いて説明する。

第２図と第３図は、夫々、流体式トルクコンバ
ータの出力軸側のタービンと一体回転し半経方向
外周端面の円周方向に間隔をもつて配置され入力
軸側のハウジングの内周面に対向する複数の摩擦
材のうちの１つ３１，３２であつて、表面に回転
方向（矢印で示す）に平行に油溝３３，３４が形
成された例を示す。摩擦材３１，３２はバツクメ
タル３５上に設けられている。

第２図の例では、油溝３３が摩擦材３１の全長
に亘つて貫通して形成され、第３図の例では、油
溝３４が途中で一端途切れ、間隔をおいて再び始
まつて形成されている。

これらの例では、回転中に回転方向前方から油
が溝３３，３４内に取り込まれ、ハウジングの摺
動面を潤滑後回転方向後方から油が排出される。
従つて、これらの例では、出力軸側が回転し始め
て遠心力の作用で摩擦材３１，３２が入力軸側の
ハウジングの相手面と摩擦係合しようとするとき
及び相手面との間で接触しながら滑つているとき
に、特に上記とに関する効果が奏される。

第４図及至第７図には、摩擦材の回転方向に対
して角度をもつて油溝が形成された例が示され
る。

第４図では、油溝３６が直線状に伸びＸ字状に
交差している。

第５図では、油溝３７が円弧やサインカーブ等
の曲線状に伸び、その一端は摩擦材両端部の完全
に材料が切り取られた切込み３８に出ている。

第６図では、油溝３９が左右非対称に伸びてい
る。

第７図では、油溝４０が斜めに一定方向に伸び
ている。

第４図及至第７図の例では油溝が摩擦材の端部
に出ているが、出なくて途中で切れてもよい。

第４図及至第７図の例でも、特に上記とに
関する効果が奏される。

第８図及至第１１図には、潤滑流路として摩擦
材の表面に油穴又は凹みが形成された例が示され
る。

第８図では、油穴４１が円形である。

第９図では、油穴が三角形穴４２や角形穴４３
や異形穴４４である。

第１０図は側方から見た図であり、摩擦材にの
み油穴ないし凹み４５や貫通孔４６が形成され、
バツクメタル３５から先には貫通していない。

第１１図では、油穴４７が摩擦材とバツクメタ
ル３５の両方を貫通して裏側にも出ている。従つ
て裏側への油の排出や裏側からの油の供給が可能
である。

第８図及至第１０図の例では特に上記に関す
る効果が奏され、第１１図の例では特に上記と
に関する効果が奏される。

第１２図及至第１４図には、油溝と共に摩擦材
の回転方向入口側、出口側、又は側面部に切込み
や凹部を設けた例が示される。

第１２図では、回転方向両側に角度をつけ間口
を広くした切込み４８が形成され、第１３図で
は、幅の広がつた油溝である凹部４９が形成さ
れ、第１４図では回転方向両側の切込み５０と共
に側両部に切込み５１と凹部５２が形成されてい
る。

、第１２図及至第１４図の例では、特に上記と
に関する効果が奏される。

第１５図と第１６図には、摩擦材の回転方向端
部、油溝部や穴部に摩擦材の厚さ方向に向かつて
傾斜部や面取部を設けた例が示される。

第１５図では回転方向端部に傾斜部５３が形成
され、第１６図では、端部や油穴や凹部に面取部
５４，５５，５６が形成されている。

第１５図と第１６図の例では、特に上記に関
する効果が奏される。

第１７図と第１８図には、油溝の深さを油の流
れ方向（矢印で示す）に沿つて変えた例が示され
る。

第１７図では油の出口側が入口側より深い油溝
５７が形成され、第１８図では入口側が深い油溝
５８が形成されている。

第１７図の例では特に上記に関する効果が奏
され、第１８図の例では特に上記に関する効果
が奏される。

第１９図及至第２４図には、上記の例を組合わ
せた複合形状の摩擦材が示され、図中、油溝５９
や油穴６０や切込み６１が種々に組合わされてい
る。

第２５図は、本考案による摩擦材を示す。摩擦材
７０は、バツクメタル３５上に設けられている。
摩擦材７０には、第２図で示したような溝７１が
中央に全長にわたつて貫通して形成されている。
この溝７１に間隔を置いて第１９図に示したよう
な穴７２が形成されている。穴７２から側面部へ
斜めに溝７３が形成されている。溝７３の間には
第８図に示したような凹所７４が形成されてい
る。溝７１は、回転方向前端部の入り口７１ａか
ら油を取り込み、回転方向後端部の出口７１ｂと
側面部の出口７３ａから油を排出する。これによ
り、前記，，に関する効果が奏される。
又、摩擦材７０とカバー１２の内周面１２′が急
速にエンゲージしようとするときに、穴７２及び
凹所７４に蓄えられた油が緩衝材として作用し、
前記に関する効果が奏される。

（考案の効果） 以上、本考案によれば、遠心クラツチにおいて
用いられる摩擦材に様々な態様でもつて潤滑流路
を形成することにより、用途・目的に応じて柔軟
に種々の効果を目論んだ摩擦材が供給される。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案による摩擦材が用いられた遠心
式ロツクアツプクラツチの側断面図、第２図と第
３図は本考案の説明のために好適な第１の例を示
す図、第４図及至第７図は本考案の説明のために
好適な第２の例を示す図、第８図及至第１１図は
本考案の説明のために好適な第３の例を示す図、
第１２図及至第１４図は本考案の説明のために好
適な第４の例を示す図、第１５図と第１６図は本
考案の説明のために好適な第５の例を示す図、第
１７図と第１８図は本考案の説明のために好適な
第６の例を示す図、第１９図及至第２４図は本考
案の説明のために好適な第７の例を示す図、第２
５図は本考案による実施態様を示す図である。 （主要部分の符号の説明）、７０……摩擦材、
７１，７３……溝、７２……穴、７４……凹部。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 内部に羽根を有し内部を流体で満たされ第一の
   回転軸と一体に回転するハウジングと、前記ハウ
   ジング内に配置され前記ハウジングの羽根に対抗
   する羽根を有し前記ハウジング内の流体の流れを
   介して前記ハウジングの回転を第二の回転軸に伝
   達するタービンと、前記タービンと一体に回転し
   遠心力により半経方向外側へ変位して前記ハウジ
   ングと係合し前記ハウジングの回転を前記タービ
   ンに伝達するクラツチ手段と、前記クラツチ手段
   の半経方向外周面の円周方向に間隔をもつて配置
   され前記ハウジングの内周面に対向する摩擦係合
   面を有する複数の摩擦材とから成る流体式トルク
   コンバータの遠心クラツチ用摩擦材において、 前記摩擦材は、回転方向前端部に入り口を有し
   側面部又は回転方向後端部に出口を有し回転中に
   流体が回転方向前方から取り込まれハウジングの
   摺動面を潤滑した後排出されるように形成された
   溝と、前記摩擦材の表面の所定位置に複数個流体
   溜め用の周囲が閉じた凹所とを設けていることを
   特徴とする遠心クラツチ用摩擦材。