JPH0314274Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案はクランク半径の異なる複数種のクラン
ク軸のクランクピン部の油穴開口部を面取り加工
するための受治具に関するものである。

（従来技術） 一般にクランク軸にはジヤーナル部からクラン
クピン部に連通開口する油穴が穿設されており、
該油穴の開口部は加工ラインの一工程において自
動的に面取り加工されるものである。ところで自
動車の仕様によつては上記クランクピン部の所定
位置に油穴（この油穴は最初に穿設された油穴に
連通する）を追加して穿設し、さらに該油穴の開
口部を面取り加工するようにしたクランク軸もあ
る。この各クランクピン部に追加で穿設される油
穴は、その開口部の位置が、ジヤーナル部を中心
軸とした時に、その中心軸から垂直なラインを引
くと同一距離になるように穿設される。このよう
なクランク軸は一般に生産量が少ないためその追
加した油穴の面取り加工は自動化することなく上
記加工ライン外において、公知のボール盤を用い
て手作業によつて行なわれている。

そこで従来、このような手作業によつて面取り
加工を行なうための受治具として、固定台上に略
長方形状のワーク台を２本の平行なレールで支持
し、その長手方向に移動自在に設け、該ワーク台
上にクランク軸をそのジヤーナル部の軸方向と上
記長手方向に、かつ平行に載置するために、クラ
ンク軸両端のジヤーナル部を各々支持して、クラ
ンク軸の上記ワーク台での水平移動を規制する２
個のＶ型の受具を設けたものがあつた。そして、
このような従来の受治具を用いて面取り加工を行
なうには、上記受具に、クランクピン部に追加で
複数穿設された油穴のうち、加工すべき油穴の開
口部位置に応じて、クランク軸を所定の向き（開
口部が上側を向く方向）で載置する一方、その向
きのまま作業者がクランク軸を保持した状態で、
ワーク台をその長手方向に移動させるとともに、
クランクピン部の油穴開口部を作業者の目測で面
取り工具の下方に位置せしめて面取り加工を行つ
ていた。また、他のクランクピン部の追加で穿設
された油穴についても、クランク軸を軸中心に回
転させて向きを決めて上記受具に載置し、ワーク
台をその長手方向に移動させて、同様に面取り加
工を行つていた。

しかしながら、上述するような受治具では、油
穴開口部の位置を面取り工具の鉛直下方に割り出
す手間がかかるという問題があつた。

また、クランク半径が少しずつ異なる複数種の
クランク軸の場合、その半径が小さくなるに従つ
て油穴の開口部もジヤーナル部の中心側に平行に
ずれてくる。このような複数種のクランク軸の面
取り加工を１つの受治具を用いて行なうには、上
記ワーク台の長手方向への移動機能に加え、この
ワーク台そのものを、さらにワーク台の移動方向
と直角な方向に２本のレールに案内されて移動可
能とする可動台を設け、この可動台を結果的に平
面内で移動させることも考えられるが、固定台に
対する可動台の移動案内構造が２本のレールの設
定に伴ない、大型化し、設置スペースが大きくな
り、またワーク台を支持した可動台を平行移動さ
せるため、その操作力もより大きな力が必要にな
るという問題が生じる。

（考案の目的） 本考案はこのような従来の状況において、構造
が簡単で大型化することなく、かつ操作力をあま
り要さずにクランク半径の異なる複数種のクラン
ク軸の油穴開口部の面取り加工を行なうことので
きる面取り加工用受治具を提供することを目的と
している。

（考案の構成） 本考案は固定台上に略長方形の可動台を揺動可
能に配置し、該可動台上にワーク台をその長手方
向に移動可能に設け、これによりクランク軸を揺
動及び長手方向に移動させてそのクランクピン部
の油穴開口部を面取り工具の下方に位置させるこ
とができるようにしたものである。

（実施例） 以下本考案の実施例を図について説明する。

なお、本実施例で示す左および右側は第１図に
おける上および下側にあたり、また、前および後
側は第１図における右および左側にあたり、以下
説明する。

第１図ないし第４図は本考案の一実施例を示
し、これは４気筒エンジンに用いられ気筒ピツチ
は等しくかつクランク半径（ジヤーナル部の中心
軸からクランクピン部の中心軸の距離）の異なる
３種のクランク軸の面取り加工用受治具に適用し
たものである。図において、１は固定台であり、
これは大略Ｔ字状の板状体でその縦辺部１ａの
左、右側面（第１図上、下側面）にはフランジ部
１ｂが一体形成され、該フランジ部１ｂはアンカ
ボルト２によりボール盤の定盤３等に締付固定さ
れている。また該固定台１の縦辺部１ａの前端部
（第１図右端部）には回動ピン４がそのフランジ
部４ａを取付ボルト４ｂで締付けて固着されてお
り、該回動ピン４は上方に突出している。

そして上記固定台１上には可動台５が配設され
ており、該可動台５は略長方形の板状体であり、
下面前部（第１図右側部）には回動孔５ａが凹設
され、これは上記回動ピン４に回動自在に嵌装さ
れており、これにより上記可動台５は該回動ピン
４を中心に上記固定台１の上面に沿つて左右方向
に揺動可能となつている。

また上記可動台５上にはワーク台６が該可動台
５の前後（長手）方向に配設されており、該ワー
ク台６は上記可動台５と同様の略長方形の板状体
であり、これの下面四隅にはローラ６ａが回転自
在に取付けられ、該各ローラ６ａは上記可動台５
の上面の左、右側部に長手方向に凹設されたガイ
ド溝５ｂ内に挿入されており、これにより該ワー
ク台６はその長手方向に移動可能となつている。
なお、６ｂはワイパであり、これはゴム等の弾性
部材からなり、その下部は上記ガイド溝５ｂ内に
挿入されてここを摺動し、ガイド溝５ｂ内の切粉
等を外方に排出するためのものである。

そして上記ワーク台６の上面の前、後端部には
前、後の受具７ａ，７ｂが固着されており、これ
はＶブロツク状のもので、クランク軸２１の前、
後端のジヤーナル部２１ａ，２１ｂを支持して該
クランク軸２１をワーク台６上にこれに移動方向
に沿つて載置するためのものである。またこのワ
ーク台６の上記受具７ａ，７ｂの少し内方２箇所
には前、後ピン受金８ａ，８ｂの脚部８ｃが締付
固着されており、該脚部８ｃの上端には平坦な支
持部８ｄが形成され、該前、後ピン受金８ａ，８
ｂはクランク軸２１の第１、第４のクランクピン
部２１ｃ，２１ｆ部分の面取り加工を行なう際に
該部分を支持するためのものである。さらに上記
ワーク台６の上記前、後ピン受金８ａ，８ｂの内
方２箇所には受金ガイド９が固着され、これは直
方体状のもので、その下面にはガイド溝９ａが凹
設され、該ガイド溝９ａ内には中心ピン受金１０
ａ，１０ｂが摺動自在に挿入されている。該中央
ピン受金１０ａ，１０ｂは角棒を側面Ｌ字状に形
成したものでその縦辺部はクランク軸２１の第
２、第３のクランクピン部２１ｄ，２１ｅを支持
する平坦な支持部１０ｃ，１０ｄとなり、またそ
の横辺部の先端部は当接部１０ｅ，１０ｆとなつ
ている。そしてこの両中央ピン受金１０ａ，１０
ｂは連結ロツド１１で連結され、該連結ロツド１
１には操作ハンドル１１ａが固着されている。

また上記可動台５の後端部には直方体状の支持
ブラケツト１２が固着され、これには回動軸１３
が回動自在に挿入され、該回動軸１３の左端部に
はアジヤストボルト１３ｃを備えた当接部材１３
ａが固着され、またその右端部には切換ハンドル
１３ｂが固着されている。そして上記固定台１の
横辺部１ｃの左側部には左ストツパ１４が固着さ
れ、該左ストツパ１４の側面には第１当接面１４
ａとこれより突出した第２当接面１４ｂとが形成
され、また上記横辺部１ｃの右側部にはアジヤス
トボルト１５ａを備えた右ストツパ１５が固着さ
れており、上記可動台５を揺動すると、上記アジ
ヤストボルト１３ｃが上記左ストツパ１４の第１
又は第２当接面１４ａ，１４ｂと当接し、また上
記可動台５の右側面前端部が上記右ストツパ１５
のアジヤストボルト１５ａと当接するようになつ
ている。

また上記可動台５の右側面の中央部及び前部に
はストツパ取付座５ｄ，５ｅが一体形成されてお
り、該ストツパ取付座５ｄ，５ｅの各々にはアジ
ヤストボルト１６ｃ，１６ｄを備えた中央ストツ
パ１６ａ，１６ｂが固設されており、該中央スト
ツパ１６ａ，１６ｂのアジヤストボルト１６ｃ，
１６ｄは各々上記中心ピン受金１０ｂ，１０ａの
当接部１０ｆ，１０ｅと当接し得るようになつて
いる。さらにまた上記可動台５の前、後端部の
各々にはアジヤストボルト１７ｃ，１７ｄを備え
た前、後部ストツパ１７ａ，１７ｂが固設されて
おり、これらのアジヤストボルト１７ｃ，１７ｄ
は各々上記ワーク台６の前、後端面と当接し得る
ようになつている。

次に動作について説明する。

本実施例の受治具においては、クランク半径が
大、中、小と少しづつ異なる３種類のクランク軸
のクランクピン部の油穴開口部の面取り加工を行
なうことができる。この面取り加工は、加工時の
抵抗があまりないため、作業者がクランク軸端部
を軽く押えるだけで行えるものである。なお、こ
の場合面取り工具は第１図に・印で示す加工位置
Ａ上方に配設されている。

先ずクランク半径の最も大きい大クランク軸
２１の面取り加工を行なう場合において、第３
のクランクピン部２１ｅの油穴開口部の面取り
加工を行なうには、クランク軸２１をワーク台
６の前、後の受具７ａ，７ｂ上にその前、後端
のジヤーナル部２１ａ，２１ｂを当接して載置
する一方、クランク軸の両端のカウンタウエイ
ト部２２ａ，２２ｂの各々の側面と、受具７
ａ，７ｂの各側面とにより、クランク軸の軸方
向の移動は規制される。可動台５を回動ピン４
軸廻りに右方に揺動してその右側面前端部をス
トツパ１５のアジヤストボルト１５ａに当接せ
しめ、中央ピン受金１０ａ，１０ｂの当接部１
０ｅ，１０ｆを第１図下方に突出した後、ワー
ク台６をその長手方向に前進して上記当接部１
０ｅを前側の中央ストツパ１６ｂのアジヤスト
ボルト１６ｄに当接せしめる。すると本実施例
受治具は第１図に示す状態となつて、クランク
軸２１の第３のクランクピン部２１ｅの油穴開
口部が上記加工位置Ａに位置することとなり、
ここで面取り工具を下降して面取り加工を行え
ば良い。

また第２のクランクピン部２１ｄの面取り加
工を行なうには、ワーク台６をその長手方向に
そのまま後退して当接部１０ｆを後側の中央ス
トツパ１６ａのアジヤストボルト１６ｃに当接
せしめる。するとこれにより第２のクランクピ
ン部２１ｄが加工位置Ａに位置することとな
る。

次に第１、第４クランクピン部２１ｃ，２１
ｆを面取り加工するには、クランク軸２１をそ
のジヤーナル軸を中心に180゜回転して第１、第
４のクランクピン部２１ｃ，２１ｆを前、後ピ
ン受金８ａ，８ｂ上に当接せしめ、上記中央ピ
ン受金１０ａ，１０ｂの当接部１０ｅ，１０ｆ
を受金ガイド９内方に没入させた後、ワーク台
６をその長手方向に後退してその後端面を後部
のストツパ１７ｂのアジヤストボルト１７ｄに
当接せしめる。すると第１のクランクピン部２
１ｃが加工位置Ａに位置することとなる。さら
に第４のクランクピン部２１ｆを面取り加工す
るには、そのままワーク台６をその長手方向に
前進してその前端面を前部のストツパ１７ａの
アジヤストボルト１７ｃに当接せしめると良
く、これにより第４のクランクピン部２１ｃが
加工位置Ａに位置することとなる。

このようにしてこの最大のクランク半径を有
する大クランク軸２１の各クランクピン部２１
ｃ〜２１ｆの面取り加工を順次行なうことがで
きる。

次に上記クランク軸２１よりそのクランク半
径が少し小さい中クランク軸の場合、大クラン
ク軸に比べクランクピン部の中心がジヤーナル
部の中心軸側に若干近づくが、各ピン受金８
ａ，８ｂ，１０ａ，１０ｂの支持部は第４図に
示すように平坦になつているため、クランクピ
ン部の位置が若干ずれても、大クランク軸を支
持した時と同様に支持できる。以下、小クラン
ク軸についても同様である。したがつて、中ク
ランク軸の面取り加工を行なう場合は、先ず切
換ハンドル１３ｂを第２図に一点鎖線で示す位
置に移動させるために回動軸１３廻りに回動さ
せる。すると当接部材１３ａが回動してアジヤ
ストボルト１３ｃが第１図に一点鎖線で示す位
置に回動し、この状態で可動台５を回動ピン４
軸廻りに左方に揺動して上記アジヤストボルト
１３ｃを左ストツパ１４の第２当接面１４ｂに
当接せしめる。この状態で上記）〜）と同
様に操作すれば各クランクピン部が加工位置Ａ
に位置することとなり、面取り加工を行なうこ
とができる。なお、本実施例の受治具は３種の
大、中、小クランク軸を加工するためのもので
あるため、この中間の半径を有する中クランク
軸の加工においてクランクピン部の油穴開口部
が上記加工位置Ａに厳密に一致するようになつ
ている。

また上記クランク軸よりさらにクランク半径
の小さいクランク軸を面取り加工するには、切
換ハンドル１３ｂを第２図に実線で示す位置に
回動し、可動台５をさらに回動ピン４軸廻りに
揺動して当接部材１３ａのアジヤストボルト１
３ｃを第１当接面１４ａに当接せしめ、この状
態で上記）〜）と同様に操作すればよい。

なお、最大、最小のクランク半径を有する
大、小クランク軸の加工においては、可動台５
を回動ピン４軸廻りに揺動するとクランクピン
部の油穴開口部は円弧を描くため、これは加工
位置Ａに厳密には一致しないが、この誤差は、
加工位置Ａと回動ピン４との間隔が大きいため
ごくわずかであり、また面取り工具は油穴開口
部に倣うものであるため実用上何ら問題ないも
のである。

このように本実施例の受治具では可動台５を回
動ピン４軸廻りに揺動可能にしたので、受治具が
大型化することなく、簡単な構造でクランク半径
の異なる３種類のクランク軸の油穴開口部の面取
り加工を行なうことができ、またこの際に小さな
操作力でもつて操作できる。

なお、上記実施例では３種のクランク半径を有
するクランク軸の面取り加工を行なう受治具につ
いて説明したが、本考案は４種以上のクランク軸
の面取り加工を行なう受治具についても適用でき
るものである。また本考案は４気筒用クランク軸
に限らず、６気筒以上用のクランク軸にも適用で
きることは当然である。

（考案の効果） 以上のように本考案に係るクランク軸における
油穴の面取り加工用受治具によれば、固定台上に
略長方形状の可動台を該固定台上で揺動可能に設
け、該可動台上にワーク台をその長手方向に移動
自在に設け、上記可動台、ワーク台の揺動角、移
動量を規制するストツパを設けたので、クランク
半径の異なる複数種のクランク軸におけるクラン
クピン部の油穴開口部の面取り加工を行う際に、
油穴開口部の位置を迅速に、面取り工具下方に割
り出すとともに、その油穴開口部の位置を割り出
すために受治具の可動台を固定台上で揺動操作す
るので、操作力が軽減され、しかも構造が非常に
簡単で、コンパクトにできる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例によるクランク軸に
おける油穴の面取り加工用受治具の平面図、第２
図はその断面図、第３図はその正面図であり、第
４図は第１図におけるＡ−Ａ断面図である。 １……固定台、４……ピン、５……可動台、６
……ワーク台、７ａ，７ｂ……ジヤーナル受具、
８ａ，８ｂ，１０ａ，１０ｂ……ピン受金、１
４，１５……第１ストツパ部材、１６ａ，１６
ｂ，１７ａ，１７ｂ……第２ストツパ部材、２１
……クランク軸、２１ｃ〜２１ｆ……クランクピ
ン部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クランク半径の異なる複数種類のクランク軸の
   クランクピン部に開口した油穴に面取り加工を行
   なうにあたり、クランク軸を載置し、油穴の開口
   部を面取り工具の下方に位置決めする移動可能な
   受治具であつて、固定台上に略長方形の可動台が
   その一側部を中心にピンにより固定台上で揺動可
   能に配置され、上記可動台上にはワーク台がその
   長手方向にローラにより移動自在に配置され、該
   ワーク台にはクランク軸を、その軸方向がワーク
   台の移動方向と同方向になるように支持し、かつ
   クランク軸を、ワーク台上での水平移動を規制す
   るジヤーナル受具と、該ジヤーナル受具上に、ク
   ランク軸を、その軸廻りの所定向きで載置した際
   に、クランクピン部を支持可能なピン受金とが
   各々複数設けられ固定台には可動台の揺動角を規
   制して各種のクランクピン部を面取り工具の下方
   に対応させる複数の第１ストツパ部材が設けら
   れ、上記可動台にはワーク台の移動量を規制して
   各気筒のクランクピン部を面取り工具の下方に対
   応させる複数の第２ストツパ部材が設けられてい
   ることを特徴とするクランク軸における油穴の面
   取り加工用受治具。