JPH0311662Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 (イ) 産業上の利用分野 本考案は、クライオポンプやHe液化装置等に
適用可能な冷凍装置用の膨張機に関する。

(ロ) 従来技術 クロードサイクル、ソルベーサイクル、ギフオ
ードマクマホンサイクルあるいはスターリングサ
イクル等のガスサイクルを利用した極低温用の小
型冷凍装置においては、冷媒ガスを断熱膨張等に
よつて低温化させる手段として膨張機が使用され
ている。そして、近時、低振動化や高速化あるい
は装置の小型化を図るために、前記膨張機として
ロータリ型のものや揺動ピストン型のものが考え
られている。

ところで、従来考えられているロータリ型ある
いは揺動ピストン型の膨張機は、軸心回りに回動
可能に設けたロータをケーシングにより囲繞し、
このケーシングの内側面と該ケーシングの内周面
とによりシリンダを形成し、前記ロータの外周に
突設した回動ベーンを前記ケーシングの内側面お
よび内周面に摺接させつつ回動させ、該回動ベー
ン相互間あるいは該回動ベーンと前記ケーシング
の内周に突設した固定ベーンとの間に形成した膨
張室を拡縮させるようにするものである。詳述す
れば、ロータが一定方向に回動するロータリ型の
膨張機の場合には、ロータに複数枚の回動ベーン
を径方向に突没可能に設けておき、これらの回動
ベーンでシリンダ内を区画することにより各回動
ベーン間にそれぞれ膨張室を形成するようにして
いる。そして、このようにしてシリンダ内に形成
された膨張室の容積が回動ベーンの回動に伴つて
変化するように、前記ケーシングの内周面に所要
の形態変化をもたせてある。一方、ロータが往復
回動動作を行う揺動ピストン型の膨張機の場合に
は、円形のロータを真円の内周面を有したケーシ
ングにより囲繞し、このケーシングの内側面と内
周面とにより形成されるシリンダ内に、ケーシン
グの内周から突設した固定ベーンを配設し、この
固定ベーンをケーシングの内側面に密着させると
ともにロータの外周面に摺接させている。そし
て、このシリンダ内を、前記ロータの外周に突設
され前記ケーシングの内側面および内周面に摺接
する回動ベーンにより区画することにより膨張室
を形成している。しかして、これらの膨張室は、
前記回動ベーンと前記固定ベーンとの間に存在す
ることになり、該回動ベーンの往復回動に伴つて
その容積が変化するようになつている。ところ
が、このようなものでは、加工誤差により前記ロ
ータや回動ベーンと前記ケーシングの内側面との
間に隙間が生じ易く、シールが不十分になつて膨
張室からのガス漏れが発生し、冷凍機能が低下す
るという問題がある。すなわち、かかる構成のも
のでは、前記ケーシングの内周面と内側面との間
の直角度に高い精度が要求されることになり、そ
の直角度が不十分な場合、ベーンやロータの側面
部において隙間が生じ、高圧側の膨張室から低圧
側の膨張室へのガス漏れの原因になる。そのた
め、加工が難かしく、製作に手間がかかるという
問題がある。

(ハ) 目的 本考案は、このような事情に着目してなされた
もので、加工の困難さを招くことなしにロータお
よび回動ベーンの側面部におけるシール性を向上
させることができる上に、その側面シール部分で
発生する摩擦熱を最小限に抑制することができ、
これによつて冷凍機能の低下を有効に防止するこ
とができる膨張機を提供することを目的とする。

(ニ) 構成 本考案は、前記目的を達成するために、次のよ
うな構成を採用したものである。

すなわち、本考案に係る膨張機は、軸心回りに
回動可能に設けたロータと、このロータを囲繞す
るケーシングと、このケーシングの内側面と前記
ロータの側面との間に微小傾動可能に介設され該
ケーシングの内周面とともにシリンダを形成する
側板と、前記ロータの外周に突設され前記側板お
よびケーシングの内周面に摺接する回動ベーン
と、前記シリンダ内を前記回動ベーンで区画する
ことにより形成され該回動ベーンの回動に伴つて
容積が拡縮する膨張室と、この膨張室の平均圧力
程度の圧力を有したガスを前記ケーシングの内側
面と前記側板との間に導入するガス導入系路と、
前記側板を押圧して前記ロータおよび前記回動ベ
ーンの側面に常時密接させる予圧付与機構とを具
備してなることを特徴とする。

しかして、本考案は、前述したロータリ型の膨
張機にも、揺動ピストン型の膨張機にも適用が可
能であり、ロータリ型の膨張機に適用した場合に
は、前記膨張室が回動ベーン相互間に存在するこ
とになり、揺動ピストン型の膨張機に適用した場
合には、前記膨張室が回動ベーンと、ケーシング
の内周に突設した固定ベーンとの間に存在するこ
とになる。

(ホ) 実施例 以下、本考案の１実施例を図面を参照して説明
する。

第１図および第２図に示すように本考案に係る
膨張機Ａは、軸心回りに回動可能なロータ１をケ
ーシング２により囲繞し、このケーシング２の内
側面２ａと前記ロータ１の側面１ａとの間に円板
状の側板３を介設し、この側板３と前記ケーシン
グ２の内周面とによつてシリンダ４を形成してい
る。また、前記側板３と前記ケーシング２の内側
面２ａとの間に空間５を形成せしめている。ま
た、前記ロータ１の外周面１ｂに回動ベーン６を
突設し、この回動ベーン６の先端６ａを前記ケー
シング２の内周面２ｂに摺接させている。また前
記ケーシング２の内周面２ｂに固定ベーン７を突
設し、この固定ベーン７と前記回動ベーン６との
間に交互に拡縮する対をなす膨張室８，９を２組
形成している。すなわち、この実施例では、前記
シリンダ４内を対をなく固定ベーン６により２分
割し、２分割したシリンダ４内を対をなす回動ベ
ーン７で区画することによつて膨張室８，９を２
組形成している。ロータ１は、出つぱりや軸部等
を一切有さない円筒体状のものであり、その軸心
中空部にシヤフト１１の一端部が挿入してある。
そして、このシヤフト１１の挿入端１１ａと前記
ロータ１とは、スプライン継手１２を介して比較
的自由度を持たせた状態で連結してある。また、
ケーシング２は、前記ロータ１と側板３とを囲繞
する円筒体状のものである。また、前記回動ベー
ン６は、前記ロータ１の外周面１ｂに固設した壁
状体である。また、前記固定ベーン７は、前記ケ
ーシング２の内周面２ｂに固定したブロツク状の
もので、その先端に前記ロータ１の外周面１ｂに
微小な隙間を介して密接する円弧面７ａが形成し
てあり、この円弧面７ａで前記ロータ１を回動可
能に支承している。すなわち、この円弧面７ａが
軸受としての働きをなすようにしてある。なお、
この固定ベーン７は、前記ロータ１と前記ケーシ
ング２との間に形成される空間を埋め得るような
リング状の素材から切出した扇形のブロツクであ
り、ボルト１３を用いて前記ケーシング２の内周
面２ｂに固定されている。なお、３ｂは側板の中
央部に設けたシヤフト１１を貫通させる貫通孔で
ある。

このような膨張機Ａにおいて、前記側板３を、
前記ケーシング２の内側面２ａと前記ロータ１の
側面１ａとの間で微小傾動可能としている。ま
た、第３図に示すように前記ケーシング２の内周
面２ｂと前記側板３の曲面状の外周面３ａとの間
に微小な隙間を形成し、この隙間をガス導入系路
１４としている。そして、このガス導入系路１４
を介して、前記膨張室８，９と前記空間５とを連
通させている。

さらに、前記ケーシング２の内側面２ａの複数
所要部位に予圧付与機構をなすバネ１５を取着
し、該バネ１５の先端を前記側板３に設けた対応
する凹陥溝１６に挿入し、該バネ１５の押圧力に
よつて、前記側板３を均等に押圧して、前記ロー
タ１、回動ベーン５および固定ベーン６に密接す
るようにしている。なお、このバネ１５の押力は
前記側板３を密接させるのに必要な最小限の力に
設定している。なお、１０は前記隙間５内のガス
がシヤフト１１の外周囲の空間から漏出するのを
防止するためのシール手段である。

なお、１７，１８は蓄冷器である。蓄冷器１
７，１８は、銅等により作られた多数の通気孔を
有する蓄熱エレメントとステンレススチール線等
により作られたスペーサ（図示せず）とを交互に
積み重ねて構成したものであり、蓄冷器１７の低
温端１７ａは、ポート１９を介して各膨張室８に
連通させてあるとともに、蓄冷器１８の低温端１
８ａは、ポート２１を介して各膨張室９に連通さ
せてある。また、これら各蓄冷器１７，１８の高
温端１７ｂ，１８ｂは、高圧バルブ２２，２３を
介して給気系路２４に接続してあるとともに、低
圧バルブ２５，２６を介して排気系路２７に接続
してある。

次いで、この実施例の作動を説明する。

まず、第４図ａに示す状態では、第１の膨張室
８が最小で、第２の膨張室９が最大となつてい
る。そして、この場合、第１の高圧バルブ２２と
第２の低圧バルブ２６とが開成している。そのた
め、給気系路２４を通して供給される圧縮機（図
示せず）からの高圧ガスは、蓄冷器１７を通して
第１の膨張室８に導入される。膨張室８に高圧ガ
スが入ると、このガス圧によつて回動ベーン６が
押圧され、ロータ１が反時計回り方向に回動を続
けることになる。このとき、ガスの圧力により前
記ロータ１に付与された回転エネルギはシヤフト
１１を介して外部に取り出され、図示しない発電
機等により消費される。そして、前記ロータ１が
第４図ｂに示す位置、つまり、膨張室８が最大で
膨張室９が最小になる位置まで達すると、前記第
１の高圧バルブ２２と第２の低圧バルブ２６が閉
成し、代わりに、第１の低圧バルブ２５が開成し
て前記膨張室８が排気系路２７に接続される。そ
の結果、該膨張室８内のガスの一部が蓄冷器１７
を介して排気系路２７へ吹き出し、圧縮機の吸入
口に戻される。このとき、前記膨張室８内に残つ
たガスは、他のガスを押し出すという仕事をし、
自らも冷える。次いで、第４図ｃに示すように、
前記第１の低圧バルブ２５に加えて、第２の高圧
バルブ２３が開成して他方の膨張室９が給気系路
２４に接続され、圧縮機からの高圧ガスが該膨張
室６に導入される。そうすると、このガス圧によ
つて前記回動ベーン６が先ほどとは逆の方向に押
圧され、ロータ１が時計回り方向に回動し始め
る。そして、このロータ１は該膨張室９の容積が
最大になる位置、つまり、第４図ｄに示す位置に
まで時計回り方向に回転を続けることになる。し
かして、この際に前記膨張室８はその容積が最小
になるまで減少し、該膨張室８内の低圧ガスは略
全部押し出される。この作動を繰り返すことによ
つてギフオードマクマホンサイクルが営まれ、前
記ケーシング２部分が極低温となる。

このようにして膨張機Ａは膨張作動を営むもの
であるが、本実施例によれば、側板３をケーシン
グ２の内側面２ａとロータ１の側面１ａとの間に
微小傾動可能に介設するとともに、膨張室８，９
と、前記ケーシング２の内側面２ａと前記側板３
との間の空間５とを、ガス導入系路１４を介して
連通させ、さらに、バネ１５によつて押圧して前
記側板３を前記ロータ１、回動ベーン６および固
定ベーン７に密接させるようにしている。そのた
め、ケーシング２の内側面２ａや側板３やロータ
１の側面１ａや回動ベーン６の側端６ｂの加工誤
差が大きくても、バネ１５の押圧力により側板３
を傾動させて前記ロータ１および回動ベーン６に
常時密接させることができる。したがつて、従来
考えられているもののように加工誤差によつてロ
ータや回動ベーンの側面部分に隙間が生じるとい
うことがなく、ガス漏れによる冷凍機能の低下と
いう不都合が生じない。また、ケーシング２の内
側面２ａと側板３との間に形成した空間５内のガ
ス圧力を、該空間５を流路抵抗の比較的大きなガ
ス導入系路１４を介して膨張室８，９と連通させ
ることによつて、該膨張室８と９の平均圧力と略
等しい値にしているので、側板３の表裏のガス圧
力が相殺される。したがつてバネ１５はわずかの
押圧力であつても側板３をロータ１および回動ベ
ーン６に密接させることができ、該側板３とロー
タ１および回動ベーン６との摩擦を小くして、摩
擦熱による冷凍機能の低下を防止することができ
る。さらに、本実施例によれば、側板３をケーシ
ング２の内側面２ａとロータ１の側面１ａとの間
に微小傾動可能に介設し、ガス導入系路およびバ
ネ１５を設けるというだけの簡単な加工で冷凍機
能の低下を防止することができ、したがつて、加
工精度を高めてガス漏れを防ぐものに比べて加工
容易でかつコストも低くて済む。すなわち、ケー
シング２の内側面２ａと内周面２ｂとの直角度の
加工公差も大きくできるので、加工が容易であ
り、製作に手間がかからない。

なお、本考案は前記実施例に限られないのは勿
論であり、ガス導入系路はケーシングの内周面と
側板の外周面との間に形成される微小隙間に限ら
れず、他の場所からガスを導入するものでもよく
例えば、膨張室にガスを導入する給気系路から分
岐し該給気系路と前記ケーシングの内側面と側板
の裏面との間の隙間とを連通させる系路であつて
もよい。

また、適用対象は前記揺動ピストン型膨張機に
限られず、ロータリ型膨張機であつてもよい。

また、予圧付与機構は図示実施例に示したバネ
に限られず、他の形状のバネでもよく、また、バ
ネ以外の弾性部材であつてもよい。

また、側板の外周面の曲面状の部分にコーテイ
ング等を施して弾性をもたせたものも本考案に含
まれる。このようなものであれば、前記ガス導入
系路を流通するガスの量を必要最小限に制限する
ことが容易であり冷凍機能に悪影響を及ぼさな
い、また、膨張室以外から前記隙間にガスを導入
する場合は、前記側板の外周面の曲面状の部分に
コーテイング等を施して弾性をもたせ、該側版の
外周面とケーシングの内側面とを密接させてもよ
く、このようなものであれば、膨張室からのガス
漏出を防止することができる。

また、本考案の適用対象となる揺動ピストン型
膨張機は前記実施例のものに限られず、例えば、
ロータに軸部を設けるとともにケーシングに軸受
けを設け、該軸受で該ロータを支承するものでも
よい。また、回動ベーンの先端あるいは固定ベー
ンの先端にシール部材を設け、該シール部材を介
して回動ベーンとケーシングの内周面あるいは固
定ベーンとロータの外周面とを摺接させるように
したものであつてもよい。

また、側板は円板状のものに限られず、例えば
固定ベーンに対応する部分を切欠したものとして
もよく、このようなものであれば、固定ベーンを
側板の回り止めとして利用することができる。

その他、本考案の趣旨を逸脱しない範囲で種々
変形が可能である。

(ヘ) 効果 本考案は、以上のような構成であるから、加工
の困難さを招くことなしにロータおよび回動ベー
ンの側面部におけるシール性を向上させることが
できる上に、その側面シール部分で発生する摩擦
熱を最小限に抑制することができ、これによつて
冷凍機能の低下を有効に防止することができる膨
張機を提供できるものである。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の１実施例を示し、第１図は概略
断面図、第２図は第１図における−線断面
図、第３図は要部を示す拡大断面図、第４図ａ，
ｂ，ｃ，ｄは作用説明図である。 １……ロータ、１ａ……側面、１ｂ……外周
面、２……ケーシング、２ａ……内側面、２ｂ…
…内周面、３……側板、３ａ……外周面、４……
シリンダ、５……空間、６……回動ベーン、６ｂ
……側端、７……固定ベーン、８，９……膨張
室、１４……ガス導入系路、１５……予圧付与機
構（バネ）。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 軸心回りに回動可能に設けたロータと、この
   ロータを囲繞するケーシングと、このケーシン
   グの内側面と前記ロータの側面との間に微小傾
   動可能に介設され該ケーシングの内周面ととも
   にシリンダを形成する側板と、前記ロータの外
   周に突設され前記側板およびケーシングの内周
   面に摺接する回動ベーンと、前記シリンダ内を
   前記回動ベーンで区画することにより形成され
   この回動ベーンの回動に伴つて容積が拡縮する
   膨張室と、この膨張室の平均圧力程度の圧力を
   有したガスを前記ケーシングの内側面と前記側
   板との間に導入するガス導入系路と、前記側板
   を押圧して前記ロータおよび前記回動ベーンの
   側面に常時密接させる予圧付与機構とを具備し
   てなることを特徴とする膨張機。 (2) ガス導入系路が、ケーシングの内周面と側板
   の外周面との間に形成される微小〓間であるこ
   とを特徴とする実用新案登録請求の範囲第１項
   記載の膨張機。