JPH028047B2 - - Google Patents

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JPH028047B2
JPH028047B2 JP16844682A JP16844682A JPH028047B2 JP H028047 B2 JPH028047 B2 JP H028047B2 JP 16844682 A JP16844682 A JP 16844682A JP 16844682 A JP16844682 A JP 16844682A JP H028047 B2 JPH028047 B2 JP H028047B2
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JP
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stretching
temperature
hollow fibers
microporous
micropores
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JP16844682A
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Inventor
Seiichi Hayashi
Takanori Anazawa
Yoshuki Ono
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DIC Corp
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Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
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Publication of JPH028047B2 publication Critical patent/JPH028047B2/ja
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Description

【発明の詳細な説明】
本発明は、ポリ(p−フエニレンスルフイド)
を主成分とする微多孔中空繊維に関するものであ
り、その目的は、耐熱性と耐薬品性にすぐれた微
多孔中空繊維及びそれを溶融紡糸、熱処理延伸等
の組合せで能率よく生産する方法を提供すること
にある。 従来から、高分子素材の使用形態として微多孔
中空繊維があり、高分子材製微多孔中空繊維は多
くの分野で使用されてきた。例えば水、廃液、溶
液の分離・精製・回収に限外過膜として、ま
た、人工腎臓等の医療器具等である。 これらはいづれも上記微多孔中空繊維を隔膜分
離膜として機能させることであるが、従来から実
際に市販されている膜の素材は、セルロース、セ
ルロースアセテート、芳香族ポリアミド、ポリア
クリロニトリル、ポリサルホン等であつた。しか
し、これらの素材はいづれも耐熱性と耐薬品性に
関して、いづれかの特性に欠点があり、ユーザー
から耐熱性、及び耐薬品性のすぐれた膜素材はな
いかとの要望が強かつた。即ち、耐熱性に関して
は、常用で80℃、短時間では95〜100℃以上の耐
熱性が欲しいが、実際にこれまでの市販の膜素材
は常用で80℃は無理である。 他方、耐薬品性に関しては、耐強酸性、耐強ア
ルカリ性、耐塩素性(300ppm以上の濃度に耐え
ること)、耐酸化剤性(有機物除去洗浄剤に耐え
ること)、耐有機溶剤性に対して、従来の市販膜
素材はいづれかの特性に弱いことが欠点であつ
た。 他方、従来の微多孔中空繊維の製造方法は、い
づれも素材とその良溶媒との溶液を、中空繊維紡
糸口金から湿式紡糸し、然る後、貧溶媒の凝固浴
中で凝固させ、洗浄脱溶媒して中空繊維にする、
いわゆる半乾式湿式、又は湿式紡糸による成形方
法であつた。この方法で、溶媒を扱うために製造
が複雑になること、また、生産速度も50m/分以
下であり、生産性が極めて低いことなどが欠点で
あつた。 本発明者らは、膜の素材として、特に耐熱性、
耐薬品性及び力学的強度のすぐれた素材の探索
と、その素材から微多孔中空繊維を製造する方法
について検討した結果、ポリ(p−フエニレンス
ルフイド)(以下PPSと略称する)を主成分とす
る原料樹脂が素材として適していることを見い出
した。PPSは結晶性高分子であり、熱可塑性を有
するので、溶融紡糸ができる。この特徴を効果的
に利用して、溶融紡糸して得た中空繊維を熱処理
して結晶を発生させ、次いで結晶延伸を円滑に行
なつて微多孔を生成させ、最後に微多孔構造を熱
固定するという方法である。この方法は、従来の
半乾式又は湿式法とは微多孔を形成させる機構が
全く別のものであり、ユニークであるといえる。 かくして、本発明者らの提案は、65重量%以上
がポリ(p−フエニレンスルフイド)からなる結
晶性高分子物質が溶融押出延伸成形された微多孔
中空繊維であつて、繊維横断面積比による中空率
が8〜85%であり、その外表面から内表面へ通じ
る連通孔の微多孔を多数有し、微多孔の平均孔径
が0.003μm〜〜3μmであり、該微多孔中空構造が
熱固定されたことを特徴とする微多孔中空繊維の
提供と、 65重量%以上がポリ(p−フエニレンスルフイ
ド)からなる原料樹脂を、ドラフト率25以上で中
空繊維紡糸口金を通して溶融紡糸して中空繊維を
形成し、該中空繊維を延伸倍率DR1=1.0〜3.3、
温度T1=20〜(Tg+30)℃(Tgはポリマーのガ
ラス転移温度℃)にて延伸し、次いで、緊張度
DR2=0.5〜1.5、温度T2=(Tg+20)〜(Tg+
180)℃にて熱処理した後、該中空繊維を延伸倍
率DR3=1.05〜2.8、温度T3=10〜(Tg+10)℃
にて延伸し、引続いて延伸倍率DR4=1.0〜2.5、
温度T4=(Tg+10)〜(Tg+180)℃にて延伸
し、最後に、緊張度DR5=0.7〜1.3、温度T5
(Tg+110)〜(Tg+180)℃にて熱固定すると
共に、その全工程を通じての総延伸倍率(熱固定
後の中空繊維長/紡糸度の中空繊維長)をDRt、
紡糸時のドラフト率をDf、断糸ドラフト率を
Dfmaxとして、25Df<0.4Dfmaxの場合に0.8
DRt7.0、および0.4DfmaxDf0.97Dfmax
の場合に0.7DRt4.0とすることにより、中空
繊維に微多孔を形成させることを特徴とする、微
多孔中空繊維の製造法を提供するものである。 ここにおいて、微多孔の平均孔径が0.003μmよ
り小さいかまたは3μmより大きい中空繊維も製
造可能であるが、孔径0.003μm未満の中空繊維
は、気体や液体の透過速度が著しく小さいため実
用的でなく、また3μmを超えるものは、孔の分
布密度が小さいため性能的に劣る膜となり、不織
布その他に比べて有利とは言えない。 本発明のポリ(p−フエニレンスルフイド)と
は、ポリマーの主構成単位としてp−フエニレン
スルフイドを90モル%以上に含有したポリマーを
いう。他に10モル%未満で含有できる構成単位と
しては、例えば、メタフエニレンスルフイド、3
官能フエニルスルフイド
【式】ジフ エニルエーテルスルフイド、ジフエニルケトンス
ルフイド、ジフエニルスルホンスルフイド、ビフ
エニルスルフイド、置換フエニルスルフイド
【式】(R:アルキル、フエニル、アル コキシ、ニトロ、ハロゲン基のいづれか)等を例
示できる。 また、本発明の微多孔形成の原理は、溶融紡出
中空繊維を結晶化させ、その結晶化物を強制的に
延伸して微多孔を形成するものであるから、意図
的にPPSに他のポリマーをブレンドした原料から
なる中空繊維を結晶化させて、微細構造的にPPS
の微結晶領域と、他のポリマーの領域から成る複
相構造を形成させ、この構造物を延伸すると、目
的とする微多孔が形成される場合がある。 PPSにブレンドできる他のポリマーの量は35%
未満である。他のポリマーが35%以上を占める
と、微多孔の形成、耐熱性、耐薬品性、力学的特
性等のいづれかに欠点が生じてPPSの特質が消え
てくる。ブレンドできる他のポリマーとしては、
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレ
フタレート、ナイロン−6、ナイロン−66、ポリ
カーボネート、ポリオキシメチレン、ポリフエニ
レンオキシド、ポリ−4−メチルペンテン−1、
ポリプロピレン、ポリテトラフロロエチレン、ポ
リエーテルエーテルケトン等の結晶性ポリマー
や、ポルサルホン、ポリエーテルサルホン等の非
晶性ポリマーを例示できる。また、この様な原料
樹脂は、酸化防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、滑
剤、表面活性剤等の添加剤を必要に応じて適量含
有することができる。 上記の通り規定されたPPSを主成分とするポリ
マーを中空繊維に溶融紡糸する際の紡糸口金は、
従来から知られている環状ノズル又はスリツト状
ノズルのいづれでもよいが、多数孔のノズルから
多数本の中空繊維を紡糸するにはスリツト状ノズ
ルの方が好適である。溶融紡糸する際のドラフト
率Dfは25以上でなければならない。ここでドラ
フト率とは、口金におけるポリマーの吐出速度
Voと、中空繊維の引取速度V1の関係式Df=V1
Voである。Df<25では、後工程での微多孔構造
の発現が困難である。即ち、結晶化のための熱処
理を経た中空繊維は脆く伸度がないので、結晶延
伸が困難になる。Dfは25以上、好ましくは50以
上である。 紡糸温度(ノズル部のポリマー温度)は、可紡
性の範囲内で可及的に低温であることが望まし
く、300℃近傍が適当である。PPS100%の原料の
場合は285〜310℃の範囲が好適である。 その理由は、後述の通り、後工程でラメラを発
達させるための熱処理を行う必要があることから
も分る如く、本発明ではより高い分子配向状態に
あることが望ましいため、溶融紡糸で成形する未
延伸中空繊維の非晶配向もより高いことが望まし
いからである。 上記の如く、本発明の中空繊維の製造法は低温
紡糸気味に紡糸するのであが、口金からの吐出時
のポリマーの溶融粘度は500〜1000ポイズ、好ま
しくは3000〜5000ポイズである。かかる溶融粘度
と曵糸性を与えるために、ポリマーは一定以上の
分子量を有しなければならない。PPS100%の原
料の場合の分子量はα−クロロナフタレン溶液
中、205℃で測定した固有粘度が0.25〜0.80、好
ましくは0.30〜0.50を有する程度の高分子量であ
る。PPSにブレンドする他のポリマーの固有粘度
は、0.30以上であることが望ましい。 紡出した中空繊維の外径は30μm〜5mmが望ま
しい。外径や中空率は、用途目的によつて設定で
きる。但し、外径が30μm未満の中空繊維や、5
mmを越える中空繊維の成形は、中空繊維口金、紡
糸温度等を調節しても、実際上むづかしい。 上述の如く成形した未延伸中空繊維は、次に、
延伸倍率DR1=1.0〜3.3、温度T1=20〜(Tg+
30)℃にて延伸する。この工程は、次工程の熱処
理により、ラメラを十分に発達させる配向結晶化
に必要な、未延伸繊維の分子鎖の配向を向上する
ことにある。先の溶融紡糸において、ドラフト率
を次第に上昇していくと、あるドラフト率
Dfmax(たとえば後述の比較例2における450倍)
で断糸が生ずる。高ドラフト紡糸、即ち
0.4DfmaxDf0.97Dfmaxの場合には、この段
階での延伸工程(非晶延伸)を省略してもよい
(DR1=1.0はこの省略を意味する)。しかし、25
Df<0.4Dfmaxの場合には、延伸倍率1.0<DR1
3.3、温度T1=20〜(Tg+30)℃にて延伸する
ことが必要である。ここで、延伸倍率とは、延伸
前の原長に対する延伸後の長さの倍率をいう。
DR1>3.3の場合には、非晶延伸による分子鎖の
配向度が上昇し過ぎてしまい、微多孔の生成は困
難になる。延伸温度T1は20T1(Tg+30)
℃、好ましくは(Tg−20)T1(Tg+10)℃
である。T1<20℃の場合は、未延伸中空繊維が
白化してボイドが激しく発生し、次工程での熱処
理によるラメラの発達が阻害される。他方、T1
>(Tg+30)℃の場合は、流動延伸気味になり、
目的とする非晶分子鎖の配向度が上昇しない。延
伸の実施態様は、一対の回転ロール間で、供給ロ
ールを熱ロールにして、ドライブロールの周速を
供給ロールの周速よりも速くすることにより行な
いうる。供給ロールの周速は50m/分以上、通常
は150m/分前後の高速にできるので、本発明の
微多孔中空繊維の生産性は極めて高い。この点は
本発明の特長の1つである。 次に、配向下結晶化により、ラメラを発達させ
るために、緊張度DR2=0.5〜1.5、温度T2=(Tg
+20)〜(Tg+180)℃にて熱処理する。ここで
緊張度とは、熱処理前の原長に対する、熱処理中
の熱処理装置に把持されている間の長さの倍率で
ある。従つて、DR2=0.9とは10%の収縮を施す
ことであり、DR2=1.1とは10%の伸長を施すこ
とである。緊張度は、好ましくは0.9DR21.1
である。DR2<0.5の場合は、発達したラメラの
配向がランダムになつたり、球晶が発生するの
で、次工程での結晶延伸で微多孔の形成が不可能
になる。また、DR2>1.5の場合は、ラメラが発
達しにくくなる。 熱処理温度T2は、最終的には、(Tg+110)
T2(Tg+160)℃にすることが好ましい。熱
処理の方法としては、初めに(Tg+20)℃近傍
の温度に導入して、次第に温度を上昇させて、最
終的に(Tg+110)〜(Tg+160)℃にて処理し
ても、あるいは(Tg+20)〜(Tg+180)℃の
範囲内一定温度で処理しても、又は(Tg+20)
〜(Tg+18)℃の範囲内で、数段階に分けて、
次第に昇温してもよい。T2<(Tg+20)℃の場
合は、実質的にラメラの発達はない。他方、T2
>(Tg+180)℃の場合は、ラメラがランダムに
なることと、結晶化速度が遅くなるという欠点が
生ずる。 熱処理時間は2〜60分、好ましくは5〜30分で
ある。熱処理の実施態様としては、一対のロール
間で、供給ロールと引取ロールの周速を調整する
ことにより、緊張度を設定し、一対のロール間に
熱風、遠赤外線等の熱浴の中に挿入して処理
することが好ましい。 上記熱処理により比較的配向したラメラを発達
させた中空繊維は、次に、延伸倍率DR3=1.05〜
2.8、温度T3=10〜(Tg+10)℃にて、冷延伸気
味に延伸する。この延伸は結晶延伸であり、この
工程により微多孔が生成を始める。先の熱処理条
件と、本工程の延伸条件の組み合わせにより、微
多孔の孔サイズはほぼ決定される。延伸倍率とは
延伸前の原長に対する、延伸後の長さの倍率をい
う。ラメラを変形させる結晶延伸がこの製造法の
基本思想であるので、冷延伸気味の延伸のため
に、延伸温度は、15T3(Tg−30)℃が好ま
しい。これは、通常の繊維やフイルムの延伸とは
異なつた特徴的なことである。DR3=1.05〜1.5の
場合は、生成する微多孔の平均孔径が0.003〜
0.06μmになり、DR3=1.5〜2.0では0.06〜0.6μm
になり、DR3=2.0〜2.8では0.6〜3μmの平均孔径
になる。勿論、微妙な孔径の設計と調整には、全
工程の条件の微妙な調整が必要であることは当然
である。DR3<1.05の場合は、実質的に微多孔を
形成することはできない。DR3>2.8の場合は、
中空繊維のマクロなボイドによる構造の破壊が生
じて微多孔の形成ができない。T3<10℃の場合
は、結晶延伸が困難になり、他方T3>(Tg+10)
℃の場合は微多孔の形成がむづかしい。 続いて、上記の延伸により微多孔の形成された
中空繊維を延伸倍率DR4=1.0〜2.5、温度T4
(Tg+10)〜(Tg+180)℃にて熱延伸気味に延
伸する。前記に延伸倍率DR3で延伸形成された微
多孔の平均孔径が小さい場合、即ち、0.003〜
0.06μmのときは、続く本工程での延伸を省略
(即ちDR4=1.0)しても、微多孔の形成にほとん
ど支障はないが、孔径が0.06μmを越えると、本
工程の熱延伸を施すことにより、微多孔の形成
を、より円滑に行なうことができる。但し、本工
程の延伸は、余り大きな倍率ではなく、DR4
1.0〜2.5、好ましくは1.1DR41.5である。DR4
>2.5になると、延伸率DR3による先の延伸でせ
つかく形成した微多孔が変形して消失してしま
う。好ましい延伸温度は(Tg+20)T4(Tg
+80)℃である。T4<(Tg+10)℃の場合は、
微多孔の円滑な形成に効果がほとんどなく、他
方、T4>(Tg+180)℃の場合は、微多孔が変形
して消失する。 かくして、形成した微多孔を、最後に、緊張度
DR5=0.7〜1.3、温度T5=(Tg+110)〜(Tg+
180)℃にて熱固定のための熱処理を施す。緊張
度は、先の工程での熱処理と同様に、熱処理前の
原長に対する、熱処理中の熱処理装置の把持の長
さの倍率である。好ましくは、緊張度DR5が0.9
DR51.1、処理温度T5が(Tg+130)T5
(Tg+170)℃、時間は5秒〜5分である。本工
程の熱固定処理を施さないと、形成され微多孔構
造が経時的に変化して、孔径が次第に小さくな
り、孔形状が変化することと、耐熱寸法安定性が
悪いという問題が生ずる。熱固定を施さない場
合、例えば、150℃の空気浴に30分間放置したと
きの熱収縮率が25〜35%であるのに対し、熱固定
処理後の熱収縮率は2〜4%に大巾に低下し、且
つ孔形状及び孔径は、ほとんどもとの状態を保持
する。これ故従来の膜素材による半乾式又は湿式
紡糸による微多孔中空繊維と比較すると抜群の耐
熱性、耐熱寸法安定性を有することは明らかであ
る。 また、本発明中空繊維の製造法においては、上
記の延伸および熱処理等の全工程を通じての総延
伸倍率(熱固定後の中空繊維長/紡糸後の中空繊
維長)をDRtとして、比較的低ドラフト紡糸に当
る25Df<0.4Dfmaxの場合にDRtが0.8DRt
7.0、好ましくは1.2DRt3.5を満足するか、ま
たは比較的高ドラフト紡糸に当る0.4DfmaxDf
0.97Dfmaxの場合にDRtが0.7DRt4.0、好
ましくは0.9DRt2.0を満足しなければならな
い。 以上の方法により製造した微多孔中空繊維は、
その外表面から内表面に至る膜厚内で、周囲から
独立の微孔はほとんどなく、大部分が外表面から
内表面へ通じている連通孔になつていることが、
繊維の断面の電子顕微鏡写真の観察から確認され
る。 本発明の微多孔中空繊維の断面を観察すると、
微多孔の孔径と微多孔の分布密度は、外表面から
内表面にかけて、ほとんど粗密がなくほぼ均質で
ある。それ故従来の半乾式ないし湿式紡糸による
中空繊維がいわゆるスキン層とコア層からなる、
粗密を有する不均質構造であるのとは対照的であ
る。本発明の中空繊維の微多孔の数は、孔径と空
孔率にもよるが繊維外表面において107〜1011
cm2程度であることが、電顕写真の統計的観察によ
り数えられる。また、製造条件の組み合わせと選
定により、得られる中空糸の平均孔径は0.003〜
3μmの範囲をとりうる。平均孔径は、用途、目
的に応じて適宜、設計できる。平均孔径は中空繊
維の外表面の走査型電子顕微鏡写真又は、透過型
電子顕微鏡によるレプリカ写真から、100個の孔
を測定して平均した。 中空繊維の微多孔が外表面から内表面に連通し
ているために、非多孔のPPS中空繊維の密度がほ
ぼ1335〜1360g/cm3(20℃)であるのに対し、本
発明中空繊維の見掛密度は0.13〜1.22g/cm3とか
なり低い。この場合の見掛密度は、微多孔中空繊
維の一定量を採取して重量を秤量し、20℃の大気
圧下で試料を水銀に浸漬して試料の体積を測定
し、中空率を測定して、微多孔を含めた膜の体積
を求めれば得られる。見掛密度と真密度から求め
られる空孔率(=100×見掛密度/真密度)は15
〜85%である。 本発明の中空繊維の外径は35μm〜3mmの範囲
をとりうる。外径及び内径は、光学顕微鏡又は走
査型電顕の断面写真から、20個の中空繊維の外径
及び内径を測定して平均した。中空繊維用口金と
してスリツト型ノズルを使用した場合、得られる
中空繊維の断面は完全な真円ではないが、ほぼ円
型であり、外径、内径の測定は容易である。本発
明の中空繊維は、製造条件の組合わせと選定によ
り、中空率を8〜85%の範囲にとることができ
る。中空率は、顕微鏡により統計的に測定した平
均外径oと平均内径iから、中空率=(
i/o)2×100(%)として計算した。隔膜分離
に使用して、圧力を50〜100Kg/cm2程度印加する
場合は、中空率を8〜40%、1〜5Kg/cm2程度の
ように、低圧力の印加の場合は、中空率を70〜85
%にすることができる。 中空繊維の外径と内径の間の膜厚は、用途に応
じて決定される外径及び中空率の設定から決まる
値である。中空繊維を隔膜分離に使用して、圧力
を印加する場合、中空繊維が変形破壊する圧力P
は、中空繊維の外径o、ヤング率E、膜厚t、
ポアソン比vとの間に次の関係が成立すると一般
に考えられている。 PPSの場合、v≒0.3、E≒300Kg/mm2として、
上式を用途設計に用いている。中空繊維の外径径
が細い35μmの場合の膜厚は印加圧力の如何を問
わず実用上、最低5μm(中空率50%)が必要で
ある。他方、外径の太い3mmの場合の膜厚は
150μm(中空率80%)が実用上必要である。 本発明の微多孔中空繊維は、特に耐熱性、耐薬
品性にすぐれている。空気中、例えば200℃に6
ケ月放置した後の引張強度保持率は50%以上であ
り、抜群の耐熱性を示す。従来の市販素材の半乾
式又は湿式紡糸による中空繊維は常用で80℃以上
は無理であつたが、本発明によりそれが可能にな
つた。また、ほとんど全ての有機薬品、アンモニ
ア水、苛性ソーダ水溶液等のアルカリ水溶液、塩
酸、50%濃度以下の硫酸、30%濃度以下の硝酸、
フツ酸等の無機薬品には、室温では全く侵されな
い。 本発明の微多孔中空繊維は、それをモジユール
に多数本組み込んで、限外過、精密過の隔膜
分離に使用できる。特に、耐熱性、定薬品性にす
ぐれているので、自動車・家電などの電着塗装、
化成品、パルプ、染料排水からの有価物の回収と
水の再利用、メツキ、酸洗、表面処理排水からの
金属、無機塩の回収と水の再利用等の工場排水処
理、また医薬・発酵工業における蛋白質・酸素・
糖分などの分離・精製、電子工業における超純水
の製造、食品工業における濃縮・塩水除去・清澄
過等の製造プロセスの合理化、また、塗料・塗
装・染料工場での溶剤回収や、食品・石油化学・
化成品工業での有機溶剤処理等に特性を発揮でき
る。 更に、本発明の微多孔中空繊維を分離膜の支持
体として使い、ポリサルホン、芳香族ポリアミド
等の比較的耐熱性のよいポリマーの溶液中に、本
発明の中空繊維を浸漬し、取出して乾燥・溶媒除
去して、これらポリマーの0.1〜1.5μmの膜厚な
緻密なスキン層を、本発明の中空繊維の表面に形
成させた複合膜を作成すれば、逆浸透分離にも使
用できる。今後は、この様な複合膜により透過量
と排除率の向上が業界の課題になつているが、耐
熱・耐薬品性にすぐれ、高生産性からくる価格の
安価な支持膜が要望されており、本発明の微多孔
中空繊維は、かかる要望に応えられるのである。 また、本発明で使用するポリマーは、PPSを主
成分とするものであるが、PPSは主鎖中の硫黄に
不対電子をもつている。これを利用して化学的に
修飾したり、錯体的に利用することができる。例
えば、酵素を微多孔中空繊維に固定化して酸素固
定膜としてバイオリアクターに使用するような、
高機能化隔膜にすることがきる。また、AsF5
SbF5、I2、H2SO4、SO3等の電子受容体や、Li、
K、ナトリウムナフタレン、N(C4H9)・ClO4
の電子供与体を、本発明の微多孔中空繊維にドー
プすると、微多孔構造による膜面積の飛躍的向上
による効果と、ベンゼン環と硫黄が主鎖に存在す
ることから、電気伝導度が10-8mho/cm(25℃)
以上にも向上することを利用して、貴金属・重金
属の回収、電気透析膜、電解質水溶液、あるいは
電解質とと非電解質から成る溶液から特定物質を
分離する選択透過膜、極性、非極性の混合ガス系
からの特定ガスの分離、また、電気抵抗や起電力
の変化を利用する用途;例えば、湿度センサー、
ガスセンサー等に利用できる。 また、連通した微多孔の中空繊維であることか
ら、衣類として、汗を繊維外表面から吸着して、
中空糸内部に移送し、中空糸内部から汗を蒸発さ
せるので、短繊維に切断して編織した編物や織物
は吸汗衣料や医療用の包帯としても利用できる。
特に、耐熱性にすぐれているで、消防服や、熱作
業現場での作業服に適する。また、中空繊維であ
るので断熱性があり、且つ耐熱性がよいので、断
熱材として利用できる。更に、微多孔中空繊維で
あるのでオイルの吸着保持力が大きく、海上、水
上でのオイル流出事故の際のオイルフエンスとし
て利用できる。 以上に詳述した如く、本発明の微多孔中空繊維
は特に、耐熱性と耐薬品性がすぐれ、且ち、硫黄
原子に不対電子を有する、という特長に加え、溶
融紡糸・熱処理・延伸という生産性の高い製造法
によるので価格も安価になるので、従来の用途分
野に加え、更にこれまでになかつた新規な用途分
野を拓くものである。勿論、本発明の微多孔中空
繊維の用途は、上記の例示に制約されるものでは
ない。 以下に本発明について実施例を示すが、本発明
はこれによつて制約されるものではない。 実施例1〜16及び比較例1〜16 高化式フローテスターを使用し、口金1mmφ×
10mmL、温度305℃、せん断速度200sec-1にて測定
した溶融粘度が75000ポイズ、差動熱量計
(DSC)で測定(試料量15mg、昇温速度10℃/
分)したガス転移温度Tgが90.7℃のポリ(p−
フエニレンスルフイド)(PPS)の粉末を原料と
した。このPPSを60℃、1hr、続いて150℃、3hrs
で熱風乾燥後、スクリユー直径30mmφの溶融押出
紡糸機を用いて、中空繊維用口金(4片スリツト
型口金、口金外径5mmφ、フイラメント数12)を
通し、吐出量70g/分口金温度310℃に固定して、
引取速度を変えることによりドラフト率Dfを種
種変えて中空繊維を紡出した。ここで、ドラフト
率Dfは中空繊維の紡糸引取速度Vm(cm/分)と
ポリマーの吐出線速度Vo(cm/分)との比Df=
Vm/Voである。吐出線速度Vo次の量を測定し
て求めた。 Vo=Q/Sfρ、ここで Q:ポリマーの吐出量(g/分) S:スリツト型口金の断面積(cm2) f:フイラメント数 ρ:溶融ポリマー密度(g/cm3) 得られた中空繊維を一組のロール間で延伸倍率
DR1と供給ロール温度(T1℃)を種々変えて延
伸した。DR1は延伸前の原長に対する延伸後の長
さの倍率をいう(延伸)。次に、一組のロール
間に電熱ヒーター浴(温度2℃)を置き、ロール
間で緊張度DR2を、ヒーター浴で温度T2を種々
変えて熱処理した。緊張度DR2は熱処理前の原長
に対する、ロールによる熱処理操作後の長さの倍
率をいう。次に、一組のロール間で延伸倍率DR3
と、供給ロール(温度T3℃)を種々変えて延伸
した(延伸)。引続いて一組のロール間で延伸
倍率DR4と、供給ロール温度(T4℃)を種々変
えて延伸した(延伸)。但し、200℃を越える温
度で加熱したときは一組のロール間に電熱ヒータ
ー浴を置いてヒーター浴の温度をT4℃に設定し
て延伸した。引続き最後に、一組のロール間に電
熱ヒーター浴(温度T5℃)を置き、ロール間で
緊張度DR5を、ヒーター浴で温度T5を種々変え
て熱固定した。 得られた中空繊維は、先に詳述した中空繊維の
断面の光学顕微鏡写真から統計的に繊維外径
(ODμm)と内径(IDμm)を求め、中空率は
(ID/OD)2×100(%)として求めた。微多孔の
平均孔径は先に詳述したように、走査型電子顕微
鏡写真から統計的に求めた。但し、平均孔径が
0.01μm以下の場合は、透過型電子顕微鏡写真
(カーボンレプリカ法)から統計的に求めた。 成形条件と、微多孔中空繊維の外径、中空率、
平均孔径を表−1に示す。比較例1はドラフト率
が低すぎて引取不能であつた。実施例1、2の如
く、比較的ドラフト率が低い場合は、非晶配向を
させるために延伸()が必要であるが、実施例
3〜16、比較例3〜16のようにドラフト率が比較
的高い場合は、延伸()を省略(DR1=1.0)
できる。比較例2はドラフト率が高く断糸が生じ
た場合である。比較例3の如く、熱処理時の弛緩
が大き過ぎると、熱処理中に球晶が発生し、次の
延伸()が不可能になる。熱処理時の温度が余
りに低い場合は、後の条件を如何に操作しても微
多孔が生成されないが(比較例4)、T2温度は微
多孔径を大きく変える(実施例6〜8)。余り熱
処理温度T2が高いと、次の延伸()が不可能
になる(比較例5)。熱処理時の緊張度が大き過
ぎると微多孔が生成しない(比較例6)。低温延
伸()を省略して、高温延伸()のみ行なつ
ても微多孔は生成しない(比較例7)。延伸()
の延伸倍率DR3は微多孔の孔径に大きく影響する
(実施例9〜12)。しかしDR3が余り大きいと断糸
が生じて延伸不可能となる(比較例8)。延伸
()温度T3が余りに低いか、高いときは延伸不
可能になつたり、微多孔が生成しない(比較例
9、10)。実施例14の如く、高温延伸()を省
略(DR4=1.0)しても微多孔中空繊維が得られ
るが、延伸()を入れることは(DR4>1.0)、
大きな孔をあけるときは不可欠である。しかし、
延伸()の延伸倍率DR4を大きく入れることは
できない(比較例11)。延伸()の温度T4を余
り高くすると微多孔が生成しない(比較例12)。
熱固定の際、弛緩が大き過ぎたり(比較例13)、
逆に緊張が大き過ぎると(比較例14)、微多孔が
生成しない。熱固定温度T5が低く過ぎると熱寸
法安定性が悪い(比較例15)。逆にT5が高過ぎる
と微多孔が生成しない。 実施例1〜16は、いづれも本発明の微多孔中空
繊維である。これらを100℃の50%硫酸、50%苛
性ソーダ水溶液、50℃のフエノール、トルエン、
酢酸、エチレングリコール等の薬品に浸漬して封
をし、6ケ月保存した後、取出して水洗乾燥し、
引張強力保持率(浸漬後の強力/浸漬前の強力×
100%)を測定した。いづれも保持率は50〜75%
であり、極めてすぐれた力学的特性、耐熱性及び
耐薬品性を有していた。
【表】
【表】

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 1 65重量%以上がポリ(p−フエニレンスルフ
    イド)からなる結晶性高分子物質が溶融押出延伸
    成形された微多孔中空繊維であつて、繊維横断面
    積比による中空率が8〜85%であり、その外表面
    から内表面へ通じる連通孔の微多孔を多数有し、
    微多孔の平均孔径が0.003μm〜3μmであり、該微
    多孔中空構造が熱固定されたことを特徴とする微
    多孔中空繊維。
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