JPH0247609Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、自動車に搭載した各種情報通信機器
の性能を最大限に発揮させるために利用されるダ
イバーシテイーアンテナシステムに対し、最適に
使用することができる自動車後部窓用ガラスアン
テナに関するものである。

〔従来の技術〕

情報化社会が進展するにつれて、車載用ラジオ
受信機にはじまり、テレビ受信機、パーソナル無
線機など各種の情報通信機器類が自動車に搭載装
備されるようになつてきている。

そして、このような各種の車載用情報通信機器
に用いられるアンテナとしては、ポイツプアンテ
ナなどに代るものとして従来から既に自動車の窓
ガラスの表面あるいは内部にアンテナを配して設
けられたガラスアンテナが広く用いられてきてい
る。このようなガラスアンテナの場合、アンテナ
のパターンの改良やアンテナに付設されるアン
プ、チヨーク、コイル、コンデンサー等の改良に
伴つて、無指向性、受信感度、さらにはＳ／Ｎ比
などに優れた特性を示すようになつてきている。

しかしながら、このように優れた特性を示すガ
ラスアンテナを用いても、ビルの谷間や山間など
のように反射波による影響の大きな場所で受信す
る場合には、しばしば鋭い指向性が現われてしま
うことから無指向性が損なわれたり、感度が低下
してしまうなどといつた問題点が指摘されてい
た。特に、FM放送波などのような超短波につい
ては、直線的な伝搬特性を示すため、ある条件に
おいては放送局などの発信局から送信された電波
が受信アンテナに直接入射されることよりも、高
層建造物や山岳などの障害物に反射してから受信
アンテナに間接的に入射してくる場合が多くな
る。このような複雑な経路を伝搬してきた電波の
偏波面は、送信時の偏波面がたとえ水平であつた
としても、次第にねじれてきてＶ成分（垂直成
分）の方に偏つてくると考えられる。

ところが、上記のガラスアンテナは、実用面か
らFM放送波などの超短波に対する無指向性の改
善に最も強い影響を及ぼす水平偏波を中心として
設計されている。このため、種々の偏波成分を含
んでいる街中や山間での電波、例えば水平偏波の
成分が弱く、垂直成分が高い電波に対しては、指
向性が出て感度が低下してしまう。

このような偏波成分を異にする電波を受信した
時の受信性能を改善するものとしては、指向性を
異にする複数本のアンテナを予め設けておき、い
くつかの偏波成分を有する電波を受信した際に、
受信電波の状況に応じて感度及び指向性の優れた
方のアンテナを択一的に選択して使用するように
したダイバーシテイーアンテナシステムが知られ
ており、徐々に普及してきている。

このダイバーシテイーアンテナシステムは、主
アンテナと補助アンテナとを適当な間隔をおいて
設置することにより、各々のアンテナに受信され
る電力の瞬時値が異なることを利用してフエージ
ングによる回線の瞬断、又は雑音の増加を軽減し
ようとするものであることから、アンテナの設置
本数もある程度多ければそれだけより優れた機能
を発揮させることができるようになつている。

〔考案が解決しようとする問題点〕

このようなダイバーシテイーアンテナシステム
において使用されるアンテナを、比較的スペース
が限られている自動車後部窓用のガラスを利用し
てこれに適用するについては、指向性を異にさせ
たアンテナを複数本設置することがスペースとの
関係で事実上不可能であることから、自動車後部
窓用のガラスのみでは必要なアンテナを十分にま
かなうことができず、例えばホイツプアンテナや
フロントガラスアンテナと併用しなければならな
いなどの不都合があつた。

すなわち、本考案の目的は、従来の自動車後部
窓用のガラスアンテナが有していた以上のような
溢路を打開し、自動車後部窓用のガラス面のみを
利用することで、ダイバーシテイーアンテナシス
テムに十分に適応させることができる複数本のア
ンテナを設置した自動車後部窓用ガラスアンテナ
を提供することにある。

〔問題点を解決するための手段〕

このような目的を達成するために、本考案は次
のような構成としている。

すなわち、本考案に係る自動車後部窓用アンテ
ナガラスは、屈曲形成された折曲部を左右両側に
有する自動車後部窓用のガラス板に、多数本のヒ
ーター線とこれらのヒーター線に給電するバスバ
ーとを有する曇り除去用通電加熱ヒーターを設
け、この曇り除去用通電加熱ヒーターの上方又は
下方に位置する余白部には第１のアンテナを、前
記折曲部におけるいずれか一方の折曲部には第２
のアンテナを、他方の折曲部には第３のアンテナ
を配設したことをその要旨とするものである。

〔作用〕

本考案によれば、リヤガラス、屈曲形成された
折曲部を左右両側に有する、いわゆるシヤープベ
ントガラスによつて形成されているので、第１の
アンテナに対して指向性を異にする第２、第３の
アンテナを左右両側の各折曲部に配することがで
き、したがつて、受信時にはこれら第１ないし第
３のアンテナのうち最適なアンテナを択一的に選
択して使用することができ、ダイバーシテイーア
ンテナシステムにおいて使用されるアンテナとし
て十分に機能させることができる。

〔実施例〕

以下、本考案を図面に従つてさらに詳細に説明
する。

図において、１は自動車後部窓用のガラス板で
あり、屈曲線２，３を介して中央部４と左右両側
の折曲部５，６とに区画されている、いわゆるシ
ヤープベンドガラスにより形成されている。７は
このガラス板１に設けられた曇り除去用通電加熱
ヒーターであり、この曇り除去用通電加熱ヒータ
ー７は、多数本のヒーター線８とこれらのヒータ
ー線８に給電するバスバー９とから構成されてい
る。１０は、曇り除去用通電加熱ヒーター７の設
けられたガラス板１の上部余白部１０に設けられ
た第１のアンテナであり、１１はこのガラス板１
の左側に位置する折曲部５に設けられた第２のア
ンテナ、１２は右側の折曲部６に設けられた第３
のアンテナである。このうち、第１のアンテナ１
０は、図示は省略してあるが、曇り除去用通電加
熱ヒーター７の設けられたガラス板１の下部余白
部に設けるものであつてもよい。

第１のアンテナ１０を構成するアンテナ導線
は、限られたスペースを利得向上、無指向性向上
等のアンテナ特性の向上に効果的に利用すること
ができるように、ガラス板１の中央部４における
上部余白部１１内の横方向に伸びる多数本の横ア
ンテナ導線を主体とするのが好ましい。

また、ガラス板１における左右の折曲部５，６
に設けられる第２、第３のアンテナ１２，１３を
構成するアンテナ導線は、アンテナ特性の向上を
図る上からも左右非対称のパターンとすることが
望ましいが、屈曲形成された折曲部５，６自体の
存在により中央部４も含めてそれぞれに配線され
たアンテナ１０，１２，１３の指向性は既に異つ
ているので、左右対称のパターンとするものであ
つてもよい。

第１のアンテナ１０と第２のアンテナ１２と第
３のアンテナ１３とは、ダイバーシテイーアンテ
ナシステムにあつて択一的に選択して使用する各
アンテナとして機能するように設計されなければ
ならない。したがつて、いずれか１つのアンテナ
の指向性が低下して利得が低下する部分におい
て、他方のいずれか１つのアンテナが高い利得を
有するというように、それぞれのアンテナが他方
のアンテナ性能の低下を補完する指向性を有する
パターン、例えば第４図に示したようにデイツプ
点を示す方向がそれぞれ異つている特性を示すよ
うにして第１、第２及び第３のアンテナ１０，１
２，１３のパターンが設計される。

第１図に示した例は、自動車後部窓用のガラス
板１の上部余白部１１、つまり曇り除去用通電加
熱ヒーター７の上方にあつて、ガラス板１の上側
辺に位置した給電点１４を持つ左右対称形のパタ
ーンで設けられた第１のアンテナ１０と、この第
１のアンテナ１０及び曇り除去用通電加熱ヒータ
ー７と分離してガラス板１左側の折曲部５に形成
された左側余白部１５にガラス板１の上側辺に位
置する給電点１６付きのアンテナ導線を持つ第２
のアンテナ１２と、この第２のアンテナ１２及び
第１のアンテナ１０と曇り除去用通電加熱ヒータ
ー７のそれぞれと分離して、ガラス板１右側の折
曲部６に形成された上側余白部１７にガラス板１
の上側辺に位置する給電点１８付きのアンテナ導
線を持つ第３のアンテナ１３を設けた本考案のア
ンテナガラスである。

第２図は、ガラス板１における中央部４に曇り
除去用通電加熱ヒーター７を設け、この曇り除去
用通電加熱ヒーター７の上方に形成される上部余
白部１１に給電点１４付きの左右非対称のパター
ンの第１のアンテナ１０と、ガラス板１左側の折
曲部５に第１のアンテナ１０及び曇り除去用通電
加熱ヒーター７と分離して設けた第２のアンテナ
１２と、ガラス板１右側の折曲部６に第１、第２
のアンテナ１０，１２、及び曇り除去用通電加熱
ヒーター７と分離して設けた第３のアンテナ１３
とからなる本考案のアンテナガラスの例である。

第３図は、ガラス板１の屈曲線２，３を越えて
左右の折曲部５，６にまで至る曇り除去用通電加
熱ヒーター７を設け、ガラス板１の中央部４の上
部余白部１１には、上側辺に位置した給電点１４
を持つ左右対称形のパターンの第１のアンテナ１
０を曇り除去用通電加熱ヒーター７と直接結合さ
せて設けるとともに、左右の折曲部５，６内にあ
る曇り除去用通電加熱ヒーター７の左右両側部の
ヒーター線８と交差させて直接結合させ、折曲部
５，６の各上側辺近傍に位置させた給電点１６，
１８を持つ同一パターンの第２、第３のアンテナ
１２，１３を設けた場合の一例である。

本考案における第１のアンテナ１０は、曇り除
去用通電加熱ヒーター７の設けられたガラス板１
の上部余白部１１、必要によつては下部余白部に
設けられるものであるが、第１のアンテナ１０は
地上高のより高い位置に配した方が高いアンテナ
の利得が得られる傾向がある。したがつて、第１
のアンテナ１０は、ガラス板１の上部余白部１１
に設けた方がより高い利得が得られ、より好まし
い結果が得られる。また、このように上部余白部
１１に設けることにより、雑音の発生原因の一つ
となるリヤのランプ等の電気系統から第１のアン
テナ１０をより引き離すことができるので、雑音
の減少という点からも好ましい。

本考案における第１、第２及び第３の各アンテ
ナ１０，１２，１３は、曇り除去用通電加熱ヒー
ター７の設けられた１枚のガラス板１内に第１図
ないし第３図に例示したパターンのみならず、そ
の他の適宜の好適なパターンを選択して自由に設
けられるものである。そして、このように適宜の
パターンで第１、第２、第３の各アンテナ１０，
１２，１３を設けたとしても、それらのアンテナ
が示す指向特性は、ガラス板１における位置や角
度の相違、方向を異にしたアンテナ導線を持つ異
質なアンテナパターンによる相違、給電点の位置
の相違、さらには自動車のボデイ形状、窓まわり
の金属体や曇り除去用通電加熱ヒーター７からの
反射波の影響の相違などのため、種々の偏波面を
有する電波に対し同一となる確率が極めて低いも
のである。

本考案において、ガラス板１に設けられる曇り
除去用通電加熱ヒーター７は、各図に示したよう
にガラス板１の横方向に２cm〜４cmの間隔をおい
て平行に配設された線巾0.5mm〜２mm程度の多数
本のヒーター線８と、このヒーター線８へ電流を
給電するために接続されたバスバー９とを有し
て、ガラス板１の中央部４のみ、あるいは左右両
側の各折曲部５，６にかけて設けたものを例示し
たが、もちろんこれらに限定されるものではな
い。

本考案における第１、第２、第３の各アンテナ
１０，１２，１３を構成するアンテナ導線は、銀
粉末などの導電性金属粉末と低融点ガラスフリツ
トとビヒクルとその他所望の成分とを混合して懸
濁させた導電ペーストを強化ガラスあるいは合わ
せガラスで形成されたガラス板１面に所定のパタ
ーンにプリントし、焼成し、さらに必要に応じて
メツキ加工した線条タイプのものが最も代表的で
はあるが、銅線、タングステン線、ニクロム線な
どの導電性金属細線を用いるものであつてもよ
い。そして、これらの金属細線を用いる場合に
は、合せガラス用プラスチツク中間膜、例えばポ
リビニールブチラール膜に配線し、配線後のこの
中間膜を２枚のガラス板の間に挟んで熱圧着し
た、いわゆる合わせガラスタイプとする。

上記した本考案の説明は、自動車後部窓用のガ
ラス板１の中央部４と左右の折曲部５，６とに第
１、第２、第３の各アンテナ１０，１２，１３を
設け、この３つのアンテナのうち受信信号の感度
の高い方の信号を択一的に選択して使用するよう
にしたガラスアンテナについて行なつたが、さら
に他の余白部を利用して４つ以上のアンテナを設
け、これらのアンテナのうち受信信号の感度の高
い方の信号を択一的に選択して使用するようにす
ることもできる。

本考案のガラスアンテナをダイバーシテイーア
ンテナシステムに対し利用するについては、複数
個のアンテナからの複数のアンテナ出力、例えば
第１、第２、第３の各アンテナ１０，１２，１３
からの３つのアンテナ出力のうちいずれか一つを
択一的に選択するスイツチング回路（図示せず）
を、ガラスアンテナを構成する各アンテナ１０，
１２，１３の給電点１４，１６，１８とラジオ放
送等の受信機との間、あるいはこの受信機内に設
け、択一的に選択されたアンテナの受信信号のい
ずれかが受信機に入力することができるようにさ
れる。

〔考案の効果〕

以上述べたように、本考案のガラスアンテナに
よれば、ラジオ放送波帯あるいはテレビ放送波帯
など、各種の放送波帯の広い帯域において高い利
得と優れた無指向性とが得られ、さらには自動車
の走行中に生ずるフエージング現象などの受信状
況の諸変化に対しても即応することができ、自動
車搭載用の各種情報通信機のアンテナとして極め
て優れた効果を発揮させることができる。

また、本考案のガラスアンテナによれば、自動
車後部窓用のガラスのみでダイバーシテイーアン
テナシステムに対応する指向性の異なる複数個の
アンテナを手当てすることができるから、棒状ア
ンテナを自動車の車体表面から突出させて設ける
必要がなく、したがつて、空気抵抗やデザイン面
からみても好ましいのみならず、安全面や性能面
からの要請にも十分に応え得るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図は、本考案の具体例に係る
自動車後部窓用ガラスアンテナの正面図、第４図
は本考案に係る自動車後部窓用ガラスアンテナが
示す指向特性の一例である。 １……ガラス板、２，３……屈曲線、４……中
央部、５，６……折曲部、７……曇り除去用通電
加熱ヒーター、８……ヒーター線、９……バスバ
ー、１０……第１のアンテナ、１１……上部余白
部、１２……第２のアンテナ、１３……第３のア
ンテナ、１４，１６，１８……給電点、１５……
左側余白部、１７……上側余白部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 屈曲形成された折曲部を左右両側に有する自動
   車後部窓用のガラス板に、多数本のヒーター線と
   これらのヒーター線に給電するバスバーとを有す
   る曇り除去用通電加熱ヒーターを設け、この曇り
   除去用通電加熱ヒーターの上方又は下方に位置す
   る余白部には第１のアンテナを、前記折曲部にお
   けるいずれか一方の折曲部には第２のアンテナ
   を、他方の折曲部には第３のアンテナを配設した
   ことを特徴とする自動車後部窓用アンテナガラ
   ス。