JPH0244514B2 - Biseibutsuseikintainokoteika*zoshokuho - Google Patents

Biseibutsuseikintainokoteika*zoshokuho

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JPH0244514B2
JPH0244514B2 JP14398381A JP14398381A JPH0244514B2 JP H0244514 B2 JPH0244514 B2 JP H0244514B2 JP 14398381 A JP14398381 A JP 14398381A JP 14398381 A JP14398381 A JP 14398381A JP H0244514 B2 JPH0244514 B2 JP H0244514B2
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aqueous solution
microorganisms
water
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Description

【発明の詳細な説明】
本発明は、微生物生菌体の固定化・増殖法に係
り、特に、弾力性に富み機械的強度に優れた高含
水性ゲル中に微生物生菌体を包括(捕捉)後、こ
れを効果的に増殖させる方法に関する。 本発明は、ポリビニルアルコールと微生物生菌
体とを含む懸濁水溶液から所定条件下に得られる
凍結・乾燥体(ゲル)中の空洞に、微生物生菌体
を包括(捕捉・包埋)し、ここへ増殖用培地を供
給することにより、微生物生菌体包括空洞が膨張
すること、しかも、この空洞の大きさを一定限度
(直径550μm)にとどめるよう、前記増殖用培地
の供給量を制御することにより、ゲル内の固定化
微生物生菌体の効果的増殖と活用が達成されるこ
とを見いだした事実に基づくものである。 即ち、本発明は、けん化度95モル%以上で、し
かも粘度平均重合度1500以上のポリビニルアルコ
ールの水溶液と微生物生菌体より成る懸濁液を、
成型用鋳型へ注入し、これを−6℃より低い温度
で凍結・成型し、しかる後、この凍結・成型体を
融解即ち凍結解除させることなく脱水率5wt%以
上に真空脱水し、必要に応じ水中に浸漬すること
により、含水率20〜92wt%(湿潤体基準)に到
達させ、微生物生菌体を包括(包埋)したゲルを
得て後、このゲルに微生物増殖用培地を供給し、
これにより形成される増殖微生物菌体集落の直径
を50μm〜550μmの範囲にまで拡大させることを
特徴とする微生物生菌体の固定化・増殖法を提供
するものである。 微生物生菌体をゲル内に捕捉(包括)後、これ
を増殖させる試みは既に公知であるが、下記(1)〜
(6)に要約するとおり、いずれにも難点があり、更
に優れた固定化増殖法の開発が望まれてきた。 (1) コリネバクテリウム・シンプレツクス
(Corynebacterium simplex)、別名アルトロ
バクター・シンプレツクス(Arthrobacter
simlex)、バシルス・サブチルス(Bacillus
sabtilus)、シユードモナス・プチダ
(Pseudomonas putida)等の細菌を、ポリ・
アクリルアミドゲル中に固定化後、栄養源(培
地)を供給して増殖させ、それぞれの活性、す
なわち、ステロイド変換能、α−アミラーゼ生
産能、ベンゼンの酸化分解能などを高める方法
が公知である(Nature、263、Oct.28、796
(1976)、Biotech.Bioeng.、20、1267(1978)、
Eurpp.J.Appl.Microbiol.Biotechnol.、、233
(1978)、、75(1977))。 しかし、これらの場合、増殖による活性上昇
率は、たかだか5〜10倍程度にすぎないほか、
この固定化担体の原料であるモノマー(アクリ
ルアミド)が猛毒であるため、微生物に対し有
害であり(醗酵と工業、35、92(1977)、
Biotech.Bioeng.、20、1267(1978))、さらに、
固定化(モノマーの重合およびポリマーの架
橋)に用いるラジカル開始剤により、微生物
(タンパク質)が損傷を受ける(Science、142
678(1963)、Adv.Biochem.Eng.、、125
(1977)、Agr.Biol.Chem.、42、683(1978)、化
学工学、43、269(1979))ほか、固定化ゲル自
体が軟弱で(化学工学、40、139(1976))、実用
上、きわめて不満足な点が多い。 (2) 寒天に各種微生物を固定化後、これを増殖さ
せることは、古来広く行なわれているが、この
寒天ゲルは、機械的強度に劣り、実験室的に利
用することはできるものの、固定化担体として
工業的に用いるには難がある。また、微生物の
増殖に伴ない、ゲル内部から亀裂の生じる難点
も指摘されている(Biotech.Bioeng.、22、681
(1980))。 (3) ロイコノストツク・メセンテロイデス
(Leuconostoc mesenteroides)を、ポリビニ
ルアルコール・ホウ酸錯体ゲルに包括後、これ
を増殖させる試みもある(特開昭54−135295)。
しかし、この場合、けん化度の高いポリビニル
アルコールから生成するホウ酸錯体(ゲル)は
軟弱で、成型し難い。この場合、けん化度の低
いポリビニルアルコールを用いることにより、
この難点はかなり改善されるが、ゲルの粘着性
が強いため、成型後の形状は維持され難く、実
用に耐えない。 (4) サツカロマイセス・セレビシエ
(Saccharomyces serevisiae)を、ゼラチン膜
に固定化後、増殖させる提案もあるが、活性は
4倍程度に上昇するにとどまり、また、ゲル成
型体は軟弱でその形状は不安定である
(Biotech.Bioeng.、22、1735(1980))。 (5) サツカロマイセス・セレビシエをアルギン酸
カルシウム・ゲルに固定化後、これを増殖させ
る試みもあるが、天然系多糖類ゲルにしばしば
見受けられるとおり、雑菌汚染を招きやすいう
え、指先につまみわずかに指圧を加えることに
より、直ちに形くずれして軟弱な糊状を呈する
ほか、栄養源として供給されるリン酸塩によ
り、ゲル構造組織が破壊される(Biotech.
Bioeng.、19、387(1977))。 (6) 寒天と同じくポリガラクトースの酸性硫酸エ
ステル型構造を有する天然系多糖類としてのκ
−カラゲナンに、サツカロマイセス・セレビシ
エ(Saccharomyces cerevisiae)、サツカロマ
イセス・カルスベルゲンシス
(Saccharomyces carlsbergensis)、アセトバ
クター・サブオキシダンス(Acetobacter
suboxydans)、セラチア・マルセセンス
(Serratia marscescens)、エシエリシア・コ
リ(Escherichia coli)、ブレビバクテリウ
ム・フラブム(Brevibacterium flavum)、ス
トレプトマイセス・フエオクロモゲネス
(Streptomyces phaeochromogenes)ブレビ
バクテリウム・アンモニアゲネス
(Brevibacterium ammoniagenes)などを固
定化後、これらを増殖させる試みもある。しか
し、このゲルは軟弱で(引張り強度<1Kg/
cm2)、更に塩化カリウム、ヘキサメチレンジア
ミン、グルタルアルデヒド、タンニン等を用い
る硬化処理を施しても、ポリアクリルアミド・
ゲルと同程度の強度(1〜1.5Kg/cm2)にまで
改善されるにすぎず、きわめて軟弱である。従
つて、ゲル内で微生物が増殖するに伴ない、ゲ
ル組織に亀裂が発生し、破壊される(J.Solid
Phase Biochem.、、225(1977)、Enzyme
Microb.Technol.、95(1979)、J.Ferment.
Technol.、88、(4)327(1980)、高分子、29
238(1980))。 これらの例に見るとおり、従来の微生物固定化
用担体のいずれにも、問題があり、更に優れた担
体(ゲル)が望まれている(高分子、29、238
(1980))。 これらの公知の手法と異なり、本発明によれ
ば、ポリビニルアルコールと微生物生菌体の混合
懸濁液を凍結・成型・脱水する過程でゲルが生成
し、しかも、微生物生菌体のほぼ全量が、このゲ
ル中に包括される。本発明では、この固定化(包
括)過程で、酸、アルカリ、放射線、ラジカル発
生剤、有機溶媒、反応試薬などを全く用いず、ま
た、2次的硬化処理も全く必要としない。本発明
のゲルは、含水性に富み、微生物生菌体の活動に
要する炭素源、窒素源、酸素ガス、二酸化炭素ガ
スその他の無機物の透過性にも優れるゴム状の弾
性体であり、引張り強度の点でも、前記のカラゲ
ナン(<1Kg/cm2)または、2次的硬化処理を施
したカラゲナン(1〜1.5Kg/cm2)をはるかにし
のぐ強度(4〜6Kg/cm2以上)を有する。 このゲルに増殖用培地を供給することにより、
微生物生菌体は当然のことながら増殖するが、本
発明のゲルにおいては、この増殖に伴ない、微生
物包括空洞が押し拡げられる。しかし、本発明の
ゲルがきわめて弾力性に富み、しかも機械的強度
に優れることから、ゲル内空洞の直径が、当初
(8〜30μm)の20〜70倍(550μm)に達する激
しい増殖(膨脹)にも耐え、ゲル組織は破壊され
ない特長を有する。 もつとも、本発明のゲルにおいて、増殖集落直
径が約150μmに達すると、増殖菌体の一部は、
空洞壁(微細網目構造から成るゲル組織)の少な
くとも一部の網目をくぐり抜け、空洞外へ排出さ
れ、その排出位置(小空洞)において、引続き増
殖・排出の過程を反復し、最終的には、ゲル表面
近傍の空洞から、ゲル外へ排除される。また、更
に増殖用培地を供給することにより、増殖集落直
径が約550μmを超えると、上記菌体流失量が著
しく増加する。 したがつて、増殖菌体の流失(損失)を回避す
るには、大部分の増殖菌体集落の直径を150μm
以下にとどめるのが良い。 ところで、一般に、微生物生菌体は、増殖する
と同時に、少なくともその一部は死滅する。この
死滅菌体の自己消化残留分(主として細胞壁構成
分)が生菌体集落中に蓄積し続けることは好まし
くないため、本発明のゲルにおいても、これを断
続的または連続的に、ゲル外へ排除しなければな
らない。しかるに、死菌体(自己消化残留分)の
みを選択的にゲル外へ排出する方法はまだ知られ
ていないため、止むを得ず、生菌体および死菌体
から成る集落菌体の一部を、断続的または連続的
にゲル外へ流失させなければならない。これに関
しては、本発明において、集落直径を前記の
150μm以上に達せしめることにより、容易に上
記の目的を達成することができる。 また、集落直径が550μmを超えることは、前
記の増殖菌体の大量流失を招き、好ましくない。 従つて、本発明においては、菌体集落の直径を
550μm以下、例えば50〜550μmに維持すること
により、増殖生菌体の無益な大量流失を回避する
と共に、固定化生菌体を有効に増殖せしめ、これ
を括用すると共に、必要に応じ、死菌体を排出す
ることができる。 本発明における菌体集落の直径の制御は、たと
えば、該集落の拡大状況を追跡観察することによ
り、増殖用培地の供給量を制御することによつて
容易に行なうことができる。 一方、ポリビニルアルコールの水容液を0〜30
℃で1日〜1週間貯蔵することにより、粘度上昇
あるいはゲル化の現象がしばしば見受けられるこ
とは、古くから周知である。しかし、このゲル
は、前記天然産多糖類のゲルにしばしば見られる
とおり、例えば寒天のように軟弱であり、しか
も、単に激しくかきまぜるか、水を加えてかきま
ぜるか、あるいは若干温めることにより溶解する
ため、微生物固定化担体として用いることは不可
能である。 さらにポリビニルアルコール水溶液に微生物生
菌体を混合後、風乾して、微生物生菌体含有膜を
得る方法があるが、この膜は、耐水性に劣り、軟
弱で、また微生物捕捉容量も低い。この膜をナイ
ロン布等により支持(補強)する提案もあるが、
上記の難点の大部分は依然として解消されない。
また、ポリビニルアルコール・フイルムの特色と
して、微生物の活動に要する炭素源、窒素源、無
機物等の透過性に乏しいことに因り、固定化微生
物生菌体の活性が減退する(特開昭52−145592、
特公昭55−35415、プラスチツク材料講座、14
P.135、P.133(昭45)日刊工業新聞社)。 ポリビニルアルコール水溶液と微生物または酵
素とを混合後、酸素を排除してコバルト60(γ線)
を照射するポリビニルアルコールの架橋・ゲル化
法も周知である。しかし、この場合、グリセリン
等の放射線障害保護物質を併用しても、なお、微
生物または酵素への悪影響をまぬがれず、照射経
費もかさむほか、得られるゲルが軟弱で、しばし
ば、他の化学試薬による2次的硬化処理を要する
(Biotech.、Bioeng.、15、607(1973)、醗酵と工
業、35、92(1977))。 ポリビニルアルコール、テトラエチルシリケー
トおよび微生物を含む懸濁水溶液に酸を加え風乾
することによる、ポリビニルアルコール・ケイ酸
複合酵母膜の製法も提案されたが、やはりこの膜
も軟弱である。 この場合、酸を加えた後、凍結・乾燥しても、
生成する膜の機械的強度はかえつて低下し、ほと
んど成型不能である。 いずれにしても、微生物の懸濁液へ酸も加えて
PH3以下に調整する工程が含まれており、微生物
への悪影響もしばしば無視できない(特公昭55−
11311、特公昭55−30358)。 ポリビニルアルコールと酵素とを溶解した水溶
液を低温ゲル化(凍結・固化)させることによる
酵素の固定化法も提案されている(特開昭50−
52276)。しかし、単なる凍結・固定処理により得
られるゲルは、弾性を示さず、機械的強度もきわ
めて低く、ゼリー様の軟弱品(又は粘液)であ
り、激しいベトツキ(粘着性)を示すうえ、耐水
性に乏しく水中に溶出し残部は糊状と化す。ま
た、凍結・固化・融解後に風乾する場合は、軟弱
な湿潤フイルムあるいは含水性の低いフイルムが
生成するにすぎず、微生物生菌体の固定化用担体
として好ましくない。 なお、凍結・固化・融解後に減圧脱水を試みる
場合は、融解液の泡立ちが激しく、しばしば、操
作続行不能の状態をきたすほか、たとえ長時間を
費し脱水しても、ほとんど弾性を示さぬ、もろい・・・
白濁ゲルが得られるにすぎず、その含水性も低い
ため、微生物生菌体の固定化・増殖用担体として
は、好ましくない。 本発明に用いるゲルは、水または温水に不溶
で、前記のポリビニルアルコールの貯蔵により生
成するゲルとは全く異なる。 また、本発明のゲルは、粘着性を示さず、弾性
に富み、その引張り強度、圧縮強度とも、4Kg/
cm2以上に及び、しかも、微生物生菌体の激しい増
殖によつても、ゲル組織の破壊をきたさないなど
の諸点でも、前記(公知)の微生物固定化用担体
のいずれにも勝る利点を有している。なお、本発
明のゲルは、γ線、ラジカル開始剤、酸、アルカ
リ、化学試薬、有機溶媒、水以外の無機溶媒など
を全く用いない点でも、公知の手法のいずれにも
勝る利点を有する。 本発明に用いるポリビニルアルコールのけん化
度は95モル%以上、好ましくは97モル%以上であ
ることを要する。けん化度80〜88モル%、特に85
モル%以下のポリビニルアルコールを用いても、
軟弱なゲルが得られるにすぎず、本発明の目的は
達成されない。 また、本発明では、粘度平均重合度1500以上の
ポリビニルアルコールを用いる。ポリビニルアル
コールの重合度が低下すると共に、得られるゲル
の機械的強度も低下するため、本発明では、通常
市販されている高重合度品(重合度1700〜2600程
度)を用いるのが良い。 本発明では、まず、ポリビニルアルコールの水
溶液を調合する。その濃度に特に制限はないが、
例えば1〜20wt%、好ましくは7〜15wt%とす
ることができる。この濃度を、更に例えば90wt
%まで高めることもできるが、常温における水溶
液の粘度が10000cP以上にも達し、また、貯蔵中
に粘度上昇あるいはゲル化をきたすこともあり、
若干取扱い難い。この濃度を3wt%以下とするこ
ともできるが、後述の脱水(乾燥)所要時間が長
びき、経費(脱水動力費)がかさむ。 本発明においては、上記ポリビニルアルコール
水溶液へ微生物生菌体を添加するに先立ち、ポリ
ビニルアルコール水溶液を滅菌する。滅菌処理条
件としては、100℃×5minで目的を達する場合も
あるが、耐熱性菌に汚染されている場合は、たと
えば、120℃×15min〜6hの高圧・蒸気滅菌を施
す。柴外線照射滅菌法も使用できるが、その有効
性が照射表面に限られることから、前記の加熱滅
菌法と併用するのが望ましい。いずれにしても、
これらの処理により、本発明に用いる資材が変質
することはなく、本発明の実施になんら支障をき
たさない。 滅菌された水溶液は、次に、固定化対象とする
微生物生菌体と混合される。微生物生菌体として
は、アスペルギルス属、リゾプス属、シユードモ
ナス属、アセトバクター属、ストレプトマイセス
属、エシユリシア属、サツカロマイセス属、カン
デイダ属等のかび、すなわち糸状菌、放線菌、細
菌、酵母、藻類など多くの微生物生菌体を対象と
することができる。 この場合、凍結・乾燥保存した生菌体、生菌体
の増殖培養液、あるいは増殖培養液から遠心分離
された生菌体濃縮懸濁液などのいずれを用いるこ
ともできる。この微生物生菌体の添加(混合)操
作は、10〜35℃程度で行なうのが至便であるが、
耐熱性生菌体を固定する場合には、それぞれの耐
熱性に応じ、35℃以上で操作することもできる。
10℃以下では水溶液の粘度が上昇し、生菌体の混
合・分散が緩慢であるが、この点に留意するなら
ば、上記操作を10℃以下で実施することも差支え
ない。 微生物生菌体の添加量(乾燥体基準)として
は、水溶液中のポリビニルアルコールの7倍量以
下にとどめるのが、微生物生菌体のほぼ全量を固
定化する観点から好ましく、この場合、後述の脱
水(ゲル化)工程を経ることにより、微生物生菌
体の96〜98%を確実に捕捉(包括・固定化)でき
る。 後述の凍結・成型・脱水工程を経て得られる本
発明のゲルを、走査型電子顕微鏡により観察した
結果、例えば、ポリビニルアルコールの1/4相当
重量に及ぶサツカロマイセス・セレビシエを固定
化して場合でさえ、微生物生菌体は個別分散し、
それぞれ8〜30μmの空洞に包埋されており、空
洞壁は、主として0.1〜1μmの網状組織から構成
されている。しかもこの個別分散包埋された微生
物生菌体は、後述の増殖操作により容易に激しく
増殖する。従つて、本発明においては、あらかじ
めゲル内へ特に大量の微生物生菌体を包埋するよ
り、むしろ後述の増殖による包括空洞の膨脹の余
地を残すのが良い。すなわち、本発明における固
定化当初の微生物生菌体添加量としては、ポリビ
ニルアルコール使用量の7倍以下とし、例えば1/
20000以上、好ましくは1/15000〜1/2とすること
ができる。 本発明では、このようにして得たポリビニルア
ルコールと微生物生菌体の混合懸濁水溶液へ雑菌
が混入しないよう留意し、しかも殺菌燈(柴外
線)が直接照射されぬよう留意しつつ、懸濁水溶
液を任意形状の容器または所望の成型用鋳型へ注
入し、凍結・成型する。ここで成型用鋳型とは最
終用途の形状のものが望ましいが、板状物を得る
ための任意形状の容器でもよく、これらも本発明
にいう成型用鋳型に包含される。凍結するための
冷却剤としては、例えば、食塩一氷(23:77)
(−21℃)、塩化カルシウム一氷(30:70)(−55
℃)などの寒剤、あるいはドライアイス−メチル
アルコール(−72℃)、液体窒素(−196℃)など
を用い、−6℃より低い温度に冷却し、凍結させ
る。冷却が不十分であると、後述する乾燥工程を
経て得られるゲルの形状が、当初予期した形態す
なわち、ポリビニルアルコール水溶液注入容器ま
たは成型用鋳型の形状と合致し難いほか、ゲルの
機械的強度に劣る。液体ヘリウムを用いれば、−
269℃まで冷却できるが、実用上はフレオン冷凍
機を用い、例えば−35℃以下に冷却するのが良
い。微生物生菌体の多くは、−20℃近辺の温度に
長時間さらされると好ましくないことから、むし
ろ−20℃以下、例えば−35〜−80℃まで急速に冷
却するのが良い。このような低温で凍結・成型す
ることは、微生物生菌体担持用ゲルの機械的強度
を高めることに寄与し、−20℃と−6℃との間の
温度で凍結・成型するより好ましい。 本発明による凍結・成型においては、ポリビニ
ルアルコール水溶液は任意の形状の鋳型内で固化
(氷結)・成型され、しかる後、鋳型に上面カバー
または下面カバー(あるいはその双方)がある場
合は、それらの一方又は双方を取りはずし、成型
体の形状を保持しつつ凍結・脱水することができ
る。 したがつて、本発明のゲルの形状としては、固
定化微生物生菌体の増殖・生育活動に好都合な
気・液・固相間の拡散を考慮し、任意の大きさと
形状を凍結時に選定することができる。好ましい
成型体の形状としては、既に化学工業において、
蒸留塔またはガス吸収塔などに用いられているラ
シヒリング(raschig ring)、多孔板
(Perforated plate、sieve tray)、テラレツト
(tellerette)、インターロツク・サドル(intalox
saddle)、ポールリング(pall ring)などの成型
用鋳型によることができる。また特願昭56−
51096に記載した突起を有する平板又は曲板状の
鋳型を用いることもできる。これらの成型用鋳型
を用いて得られる本発明の微生物生菌体固定化ゲ
ルは、いずれも、固定化微生物生菌体の増殖・生
育活動に必要な栄養源または基質との接触、物質
移動の点において優れ、また反応塔へ充てんした
場合の塔内圧損失の低い点においても、粒状品、
球状品、板状品または膜状品などに比べてより勝
れている。 もちろん粒状品等も本発明に含まれるし、板状
体を得て後に切断する等の方法も本発明に含まれ
る。 前述の凍結・成型を目的とする冷却操作の冷却
速度としては、前述の微生物生菌体への影響を考
慮して、−10℃程度までは0.1〜7℃/min程度の
緩慢冷却でも差支えないが、その後は、7〜1000
℃/minの急速冷却が好ましい。 本発明においては、前述の容器または鋳型へ注
入されたポリビニルアルコールと微生物生菌体と
の混合懸濁水溶液が凍結されたことを確認後、こ
れに真空脱水を施す。この場合、冷凍室から凍
結・成型体を取り出し、これを真空乾燥室で移
し、直ちに吸引・脱水するならば、水分の除去
(昇華)に伴ない、試料が冷却されるので、特に
外部冷却を施さなくとも、凍結・成型体が融解す
ることはない。凍結・成型体が融解しない程度に
加熱することは差支えなく、これにより脱水を促
進することができる。つまり脱水工程の温度とし
ては、凍結・成型体を融解即ち凍結解除させない
かぎり、特に制限はなく、これがゲルの品位に特
に影響することはない。この脱水工程において
は、脱水率を5wt%以上とし、たとえばゲルの含
水率を20〜92%、好ましくは60〜90wt%(湿潤
体基準)に到達させる。含水率を20%以下とする
こともできるが、この場合においても後記するよ
うに、水中に浸漬させることにより含水率50〜
90wt%に到達させることができる。 本発明においては、ポリビニルアルコールの濃
度のいかんにかかわらず、凍結・成型体に若干の
脱水処理(真空乾燥)を施す。この場合、脱水率
(凍結・成型体の重量減少率)としては、例えば
5wt%、さらには15wt%以上が採用される。すな
わち、脱水が進行するとともにゲル強度が著しく
高まることから、所望のゲル強度に応じ、脱水量
を選定するのが良い。 この脱水工程(凍結・乾燥)を省略することは
できない。すなわち、これを実施しないかぎり、
本発明の弾性に富む、しかも機械的強度の優れた
高含水性ゲルは得られず、したがつて、固定化微
生物生菌体ゲルはきわめて軟弱である。また、凍
結状態を維持することなく、凍結・成型体を融解
後、減圧脱水する方式によるときは、泡立ちが激
しく、ほとんど、操作続行不可能であるうえ、た
とえ長時間を費して脱水しても、弾性に乏しい白
濁ゲルが生成するにすぎない。 本発明における真空脱水の真空度は凍結水分が
脱水しうるものであればいずれでもよく、たとえ
ば、10mmHg以下、好ましくは1mmHg以下、さら
にに好ましくは0.1mmHg以下が通常用いられる。 本発明では、次に凍結・成型・脱水体を、例え
ば常温放置し融解(解凍)させることにより、弾
性に富む微生物固定化ゲルが得られる。この場合
の融解操作としては、1〜3℃/minの緩慢昇温
のほか、微生物菌体の耐熱性を考慮したうえで、
場合によつては3〜1000℃/minの急速昇温によ
ることもできる。いずれにしても、60℃以上で
は、ゲルの表面に硬質皮膜が急速に生じることか
ら、微生物生菌体の耐熱性のいかんにかかわら
ず、解凍(融解)操作温度としては40〜50℃以下
が望ましい。この解凍操作後、容器または鋳型の
支持部から、微生物固定化ゲルを容易に取り出す
ことができる。このゲルは必要により水中に浸漬
することにより吸水し、含水率50〜95wt%(湿
潤体基準)に達するが、なお強固な弾性体である
ため、ゲル内に包括された微生物の生育活動に好
適である。前述の走査型電子顕微鏡による知見な
らびに、上記の含水率(50〜95wt%)から明ら
かなとおり、ゲルの内部の大半を空孔(水相)が
占めている。このゲルの含水率は、例えば、
こんにやく・・・・・、(含水率約97wt%、多糖類湿潤

ル)には及ばないが、生体細胞、人間・動物等の
生体組織などの含水率(70〜90wt%)に類似し、
しかも強度と弾性の点で、こんにやく・・・・・、寒天
、ア
ルギン酸、カラゲナン、グアール・ゴム、ローカ
ストピーン・ガム、アガロース、トラガント・ゴ
ム等の多糖類のゲルをはるかにしのぎ、人間、動
物等の生体組織に類似する。本発明のゲルは、多
量の水分を含むにもかかわらず、弾性を示し、堅
く握りしめても、一時的に変形するが、直ちに元
の形状に復し、形くずれしない。しかもこの場
合、含有水分の浸出はほとんど見られず、例えば
含水率90wt%のゲルに2Kg/cm2の圧縮応力を課
しても、浸出(流出)水量は、含有水の1〜2%
にすぎないほか、引張り強度も4Kg/cm2以上に及
び、このような高含水率のゲルとしては、きわめ
て優れた弾性体である。高含水性と機械的強度と
は、従来から、医用高分子および選択的透過膜等
を開発するうえで、両立し難い難題とされている
が、本発明のゲルは、上述の高含水性と強度とを
有し、従来の、ポリビニルアルコール水溶液の風
乾皮膜あるいは、前述のポリビニルアルコール水
溶液を0〜30℃に貯蔵する場合、あるいはポリビ
ニルアルコール水溶液を単に凍結・融解する場合
などに得られる軟弱なゲルとは全く異なる。多く
の水分を強固に保持することからも明らかなとお
り、このゲルの見かけ比重はほぼ水と同程度であ
り、水中で辛うじて沈降するにすぎない。 本発明のゲルには、粘着性がない。板状(8mm
×8mm×2mm)、円筒状(内径3mm、外径6mm、
長さ6mm)、球状(直径4mm)等に成型したゲル
約10gを50mlの水中で10日間かきまぜても、相互
付着、形くずれ等の現象は全く認められない。な
お、水道中に、1年間浸漬したが、溶解せず、弾
性および強度も変らない(これは、例えばこんに
やくを数日間水道水に浸漬した場合、激しい形く
ずれが起るのと、きわめて対照的である)。 本発明においては、ポリビニルアルコール単一
成分がゲル素材(ゲル化成分)として用いられ
る。しかし、ポリビニルアルコールのゲル化現象
を阻害しないかぎり無機物または有機物が共存す
ることは、本発明に差支えなく、その共存量とし
ては、例えば、ポリビニルアルコールの1/2重量
以下とすることができる。これに反し、ポリビニ
ルアルコール(または変性ポリビニルアルコール
としてのポリビニルアセタール、ポリビニルブチ
ラール等)に作用して複合ゲルを生成する物質な
らびにポリビニルアルコールと反応してこれを変
性させる物質は、たとえ少量共存することによつ
ても、しばしば、本発明のゲル形成(ポリビニル
アルコール単一成分ゲルの形成)に好ましくない
影響を及ぼし、機械的強度の優れた高含水性ゲル
の生成を困難とする。このような物質としては、
既にポリビニルアルコール類との相互作用が知ら
れているコロイド状アルカリ・シリケート(米国
特許2833661(1958))、コロイド状シリカ(米国特
許2833661(1958))、アルカリ性コロイド状シリカ
(特開昭54−153779)、有機ケイ素化合物(酢酸ビ
ニル樹脂、P.93、日刊工業新聞社(1962))、テト
ラアルキルシリケート(特公昭55−30358、特公
昭55−11311)、ホウ素、ホウ砂(フランス特許
743942(1933))、フエノール、ナフトール、メ
タ・クレゾール、ピロガロール、サリチルアニリ
ド、ジサリチルベンジジド、レゾルシノール、ポ
リアミン類(高分子化学、11(105)23、
(1954))、カオリン(kaolin)(Nature、170
461(1955))などが挙げられる。これらは、いず
れも、その共存量に対応して、ポリビニルアルコ
ールとの複合ゲルを形成して不都合を生ずるの
で、本発明においては回避される。 本発明では、微生物生菌体の懸濁水溶液を凍
結・成型することを不可欠としている。一般に、
微生物または生体組織、あるいはこれらの懸濁水
を凍結する場合、多少とも、これらが凍結障害を
受けることは、古くからよく知られている。この
生体またはその組織、タンパク質等への凍結障害
を回避するか、あるいは、これを著しく軽減する
には、前述の−30℃以下の低温まで急冷する方法
のほか、カルボキシメチルセルロース等の水酸基
含有水溶性高分子物質、さらには各種の凍結・乾
燥障害保護剤を少量添加する方法が著名である。
本発明においては、ポリビニルアルコール(ゲル
化素材)自体が強力な凍結・乾燥障害保護剤とし
て作用するため、通常微生物生菌体の大部分が保
護され、後述するとおり十分な増殖・生育活動が
確保されるが、更に公知の凍結・乾燥障害保護剤
を共存させることができる。凍結・乾燥障害を軽
減する物質は、一般に、保護剤、保護物質
(Protectant、protective substance)、添加剤、
添加物(additives、additional substance)、媒
質、媒剤、媒液(adjuvat)、分散媒(suspended
medium)、安定剤(stabilizer)などと呼ばれ、
具体例としては、マグネシウムイオン、グリセリ
ン、ジメチルスルホキシド、峰密、ペプトン
(peptone)、肉エキス、酵母エキス、脱脂乳(ス
キムミルク)、血清、アルブミン(albumin)、L
−またはD−グルタミン酸のナトリウム塩、カリ
ウム塩、N−アセチルグルタミン酸塩、D−また
はL−アルギニン、DL−2−ピロリドン−5−
カルボン酸塩、ポリビニルピロリドン、L−ホモ
アルギン酸、D−グルコース、D−またはL−ア
スパラギン酸(aspartic acid)、アスコルビン
酸、DL−トレオニン(threonine)、D,L−ア
ロトレオニン(allothreonine)、ゼラチン、ムチ
ン、乳糖、DL−リンゴ酸、L−システイン
(cystene)、L−ソルビトール、アラビトール、
ペクチン、アラビアゴム、マンノース、ガラクト
ース、L−リジン、D−フルクトース、デキスト
リン、デキストラン、スクロース、可溶性殿粉、
ラフイノース、クエン酸、アセチルグリシン、D
−キシリトールなどが知られているほか、L−グ
ルタミン酸塩−脱脂乳(またはデキストラン、可
溶性殿粉ポリビニルピロリドン、カルボキシメチ
ルセルロース、ゼラチン、乳糖)の組合せ、ある
いはデキストラン−塩化アンモニウム−チオ尿素
−アスコルビン酸の組合せ、脱脂乳−アスコルビ
ン酸(またはスクロース)の組合せ、グルコース
と血清の併用処法も知られている。その添加量と
しては、前述のポリビニルアルコール水溶液に
0.5〜2%加えて十分目的を達成することが多い
が、10%程度加えることもできる。 このように本発明により微生物生菌体を高含水
性の弾性に富む、機械的強度の優れたゲル内に捕
捉することができるが、このようにして得られる
固定化微生物生菌体は、本発明の増殖制御により
著しく増殖して活性を高め、本発明の目的とする
微生物生菌体の固定化・増殖が達成される。 微生物生菌体が増殖用培地の供給を受けて増殖
すること自体は、なんら特筆すべき新事実ではな
く、古来きわめて当然の原理であるが、本発明の
ゲルが弾性に富むことから、ゲル中に包埋された
微生物生菌体は、容易にその包括空洞を押し拡げ
つつ増殖して巨大な集落に成長し、しかも本発明
のゲルが機械的強度に優れることから、微生物生
菌体の増殖に伴なうゲル組織の破壊(亀裂)が回
避される。本発明のゲルは引張り強度、圧縮強度
とも4Kg/cm2以上に及び、天然系多糖類(寒天、
カラゲナン、ペクチン等、強度1Kg/cm2以下)ま
たは、カラゲナンの2次的硬化処理品(強度1〜
1.5Kg/cm2)に比し、遥かに優れる。しかし、本
発明のゲルにおいて、増殖菌体集落の直径が
150μm程度に達すると、増殖菌体の一部は、空
洞壁の少なくとも一部の網目をくぐり抜け、空洞
外へ排出され、その排出位置(小空洞)におい
て、引続き、増殖・排出の過程を反復し、最終的
には、ゲル表面近傍の空洞からゲル外へ排除され
る。また、なおも増殖用培地を供給し続けると、
増殖菌体集落直径が約550μmを超え、これに因
り、上記菌体流失量も著しく増加する。したがつ
て、本発明において増殖菌体の流失を回避するに
は、集落の直径を通常150μm以下にとどめるこ
とが好ましい。また、集落中に死菌体の蓄積する
のを回避するには、多量の増殖用培地を供給して
集落直径を150μm以上に達せしめる手法を採る
ことができる。ただし集落直径が550μmを超え
ることは、前述のとおり増殖菌体の大量流失をき
たし、好ましくない。従つて、本発明において
は、菌体集落の直径を550μm以下、例えば50〜
550μm、好ましくは100〜500μmに維持して、増
殖菌体の無益な大量流失を回避すると共に、菌体
集落直径を断続的または連続的に150〜550μmに
達せしめることにより、菌体集落から死菌体(自
己消化残留分)を含む一部の菌体をゲル外へ排除
する。すなわち、本発明では、増殖菌体集落の直
径を550μm以下にとどめるように、増殖用培地
の供給を制御することにより、増殖菌体の無益な
大量流失を回避する。 本発明においては、固定化微生物生菌体へ増殖
用倍地を供給し、断続的にゲルの極微量を採取
し、例えば走査型電子顕微鏡により、ゲル内の増
殖集落を観察し、その直径が550μm以下に達し
た時点で、増殖用培地の供給を停止することによ
り、増殖生菌体の大量流失をまぬがれることがで
きる。 一方、固定化微生物生菌体の活性を高めるに
は、ゲル内の生菌体濃度を高める必要がある。単
位体積のゲルに収容しうる生菌体数はもちろん有
限で、その限界値(最密充てん濃度)は、生菌体
の形状と大きさに基づき、数学的に算出され、例
えばサツカロマイセス・セレビシエ(球形または
楕円形、平均約5μm)では、約1/2・109個/mlで
ある。実際のゲルにおいては、ゲル素材も若干の
空間を占有するため、上記の極限値を完全に達成
することは不可能であるが、本発明において、増
殖菌体集落の直径が前記550μmを超えない範囲
で、上記極限値にきわめて近い菌体濃度を達成す
ることができる。すなわち、ポリビニルアルコー
ルに対し、例えば1/400(乾燥菌体基準重量)の
サツカロマイセス・セレビシエを添加し、本発明
の包括処理を施し、増殖用培地を3〜4日供給し
た場合、ゲル内に直径約400μmの菌体集落が密
集し、酵母濃度は約109個/ml−ゲルと推算され
た。また、同じくサツカロマイセス・セレビシエ
を、ポリビニルアルコールに対し1/40程度添加
し、増殖用培地を2日間供給した場合、ゲルに直
径200μm程度の菌体集落が密集し、酵母濃度は、
やはり109個/ml−ゲルと推算される。 このようにして得られる固定化増殖菌体の活性
は、増殖用培地の供給停止後も急激に低下するこ
とはなく、しばしば2〜3週間同様の活性が維持
される。もつとも1〜2カ月後には、菌体集落の
直径が当初の2〜4割程度減少し、活性も3割程
度低下する例が多いが、このような事態を招いた
後も、再び増殖用培地を12〜24h供給することに
より、固定化菌体の活性及び集落直径は元に復す
る。 本発明においては、ゲル内に直径50〜550μm、
好ましくは100〜500μmの菌体集落を多数生成せ
しめ、しかる後、ここへ増殖用培地を断続的もし
くは少量ずつ連続的に供給することにより、当初
の菌体活性を維することを特徴とする。本発明の
ゲルに、上記操作を4カ月以上反復・継続して
も、ゲル組織の強度に変化はなく、ゲル組織の亀
裂・破壊は全く認められない。 本発明のポリビニルアルコールゲルに、ポリビ
ニルアルコール繊維またはポリビニルアルコー
ル・フイルムに対する硬化処理を施すことによ
り、更に若干、ゲルの機械的強度が高まる。この
公知の硬化(架橋)処理としては、例えば、アル
デヒド、ジアルデヒド、ジイソシアナート、フエ
ノール類、あるいは、チタニウム、クロム、ジル
コニウム等の金属化合物、さらにはホウ砂、アク
リロニトリル、トリメチロールメラミン、エピク
ロロヒドリン、ビス−(β−ヒドロキシエチル)
スルホン、ポリアクリル酸、ジメチロール尿素、
無水マレイン酸等による方法を挙げることができ
る。 しかし本発明のゲルは、既に述べたとおりの強
度(耐荷重性)を有し、また上記の補助的硬化処
理により、固定化微生物生菌体がしばしば損傷を
受けることや、ゲルの製造費がいたずらにかさむ
ことを考慮するならば、天然多糖類にしばしば用
いられるこれらの硬化処理を、本発明において
は、用いない方が望ましいといえる。 次に実施例により本発明を説明する。 実施例 1 市販ポリビニルアルコール(けん化度97モル
%、粘度平均重合度2200、4%水溶液の粘度(20
℃)54cP)の粉末85g(含水率6wt%)を、水
915gに溶解し、80wt%水溶液(PH6.9)を得た。 この水溶液378gに120℃×20minの加圧水蒸気
滅菌処理を施し、無菌室において放冷後、ここ
へ、サツカロマイセス・セレビシエ
(Saccharomyces cerevisiae)0.2gを含む懸濁
水(リン酸緩衝液PH7)、(培養液濃縮液)20mlを
添加し、7min間かきまぜた。この懸濁水溶液の
ポリビニルアルコール濃度は7.6wt%である。 この懸濁水溶液200gを、無菌室において、ラ
シヒリング(8mm×8mm)成型用鋳型(665個分)
へ注入し、−45℃×0.5hの冷却(凍結・成型)を
施した後、鋳型の上面カバーを除き、成型体を支
持する下面カバーに0.1mmHgで6hの真空脱水処理
を施した。解凍後、132g(含水率88wt%、脱水
率35wt%)のゲルを得た。このゲルを、あらか
じめ滅菌した0.9%食塩水150mlに6h浸漬した結
果、成型ゲルは吸水して138g(含水率89wt%)
に達した。この浸漬液に前記酵母は認められず、
酵母の全量がラシヒリング内に包括されたことを
確かめた。 直径3cm、高さ60cmのアクリル樹脂製カラム
へ、上記ラシヒリング138gを不規則充てんし、
あらかじめ120℃×15minの滅菌処理を施した培
地(グルコース1%、ペプトン0.5%、酵母エキ
ス0.3%、麦芽エキス0.3%、塩化カリウム1%、
PH5.5、25℃)を120ml/hの流速で塔底から送入
した。この培地送入操作の前後において、ラシヒ
リングの極微量を採取し、走査型電子顕微鏡によ
り観察した結果、培地送入開始前には、ゲル中に
少数の酵母が個別分散・包括されているにすぎな
かつたが、24h後には多数の酵母集落(直径70μ
m)を容易に認めることができた。38h後には、
集落の直径が200μmに達し、各集落が膨張して
互いに接近してきたことを知り、直ちに、培地の
送入を停止して、エチルアルコール合成用基質溶
液(グルコース10wt%、硫酸マグネシウム七水
和物60ppm、PH5.5、32℃)を80ml/hの流速で
塔底から送入した結果、12h後の流出液のエチル
アルコール濃度は4wt%(理論収率の77%)に達
した。この操作を1カ月間継続したことにより、
塔頂流出液のエチルアルコール濃度は3.5wt%に
低下し、ゲル中の生菌体集落の直径は140μmに
縮小したことを知つた。しかし、前記培地を120
ml/hの流速で再び塔底から送入することによ
り、12h後には元の集落直径(200μm)に復し
た。しかる後、ここへ、前記エチルアルコール合
成用基質溶液を80ml/hの流速で送入し、5h後
には流出液のエチルアルコール濃度は、再び4wt
%に復した。 実施例 2 市販ポリビニルアルコール(けん化度97モル
%、粘度平均重合度1700、4%水溶液の粘度(20
℃)26cP)の粉末88g(含水率7wt%)を水917
gに溶解し、8wt%水溶液とした。 この水溶液44gに、120℃×15minの加圧水蒸
気滅菌処理を施し、次に無菌室において放冷後、
ここにクルイフエロマイセス・マルキシアヌス
(Kluyveromyces marxianus)0.008gを含む懸
濁液(培養液)4gを注ぎ、7min間かきまぜた。
この懸濁水溶液のポリビニルアルコール濃度は
7.3wt%であつた。この懸濁水41gを、無菌室に
おいて、ラシヒリング(8mm×8mm)成型用鋳型
(130個分)へ注入し、−38℃、×0.5hの冷却(凍
結・成型)を施した後、成型体を鋳型から取り出
し、6hの真空脱水を施した。解凍後23g(含水
率85wt%、脱水率43wt%)の成型ゲルを得た。
このゲルを、あらかじめ滅菌した0.9%食塩水40
mlに6h浸漬した結果、成型ゲルは吸水して27g
(含水率87wt%)に達した。 直径3cm、高さ10cmのガラス製カラムに、上記
ラシヒリング27gを不規則充てんし、あらかじめ
120℃×20minの滅菌処理を施した培地(イヌリ
ン1%、麦芽エキス0.3%、酵母エキス0.3%、PH
6.5、25℃)を12ml/hの流速で塔底から送入し
た。40h後のゲルを、走査型電子顕微鏡を用い観
察した結果、ゲル内に直径450μmの集落を認め
たが、ゲル組織に裂目はなかつた。培地を更に
10h後送入後、同様の観察を行つた結果、集落の
直径が550μmを超えた段階で塔頂流出液に濁り
が目立ち、酵母が若干流失し始めたことを知つ
た。したがつて、集落直径550μm以下に制御す
る必要を認めた。 実施例 3 市販ポリビニルアルコール(けん化度98.4モル
%、粘度平均重合度1800、4%水溶液の粘度(20
℃)29.5cP)の粉末83g(含水率5wt%)を、水
913gに溶解し、8wt%水溶液(PH7)とした。 この水溶液18gに、120℃×20minの加圧水蒸
気滅菌処理を施し、次に無菌室において放冷後、
ここへバシルス・サブチリス(Bacillus
subtilis)0.002gを含む懸濁水(培養液、PH7)
2gを注ぎ、7min間かきまぜた。この懸濁水溶
液のポリビニルアルコール濃度は7wt%である。 この懸濁水溶液18gを、無菌室において、ポリ
エチレン製容器(底面6×6cm)に注ぎ、−48℃
×0.6hの冷却(凍結・成型)を施した後、5hの真
空脱水を施した。解凍後、10.4g(含水率86wt
%、脱水率42wt%)の白色不透明ゲルを得た。
これを、あらかじめ滅菌した0.9%食塩水30mlに
8h浸漬した結果、ゲルは吸水し12g(含水率
88wt%)に達した。このゲルを、多数の細片
(8mm×8mm×4mm)に裁断後、滅菌した培地
(可溶性殿粉5%、ペプトン1%、肉エキス1%、
酵母エキス0.1%、食塩0.5%、塩化カルシウム
0.02%、硫酸マグネシウム七水和物0.01%、PH
7、30℃)40ml中へ投入し、30〜33℃の恒温室に
おいて48h振とうした時点で、ゲルの極微量を採
取し、走査型電子顕微鏡を用いて観察した結果、
直径370μmの細菌集落を多数認めたが、ゲル組
織に亀裂は認められなかつた。しかる後、更に
12h振とうしつつ、同様に観察した結果、細菌の
集落直径550μmを超えた後、培地の濁度が目立
ち始め、細菌がかなり流失したことを知つた。従
つて、細菌集落直径550μmの段階で、増殖用培
地をゲルから分離するのが適切であることを確認
した。 実施例 4 市販ポリビニルアルコール(けん化度97モル
%、粘度平均重合度1700、4%水溶液の粘度(20
℃)26cP)の粉末85g(含水率7wt%)を、水
912gに溶解し、8wt%水溶液(PH6.9)を得た。
この水溶液171gに120℃×20minの加圧水蒸気滅
菌処理を施し、次に無菌室において放冷後、ここ
へ、アルトロバクター・シンプレツクス
(Arthrobacter simplex)(別名コリネバクテリ
ウム・シンプレツクス、Corynebacterium
simplex)15mgを含む懸濁液(トリス(ヒドロキ
シメチル)アミノメタン・塩酸緩衝液PH7.5)20
gを注ぎ、7min間かきまぜた。この懸濁水溶液
のポリビニルアルコール濃度は7wt%である。 この懸濁水溶液190gを、無菌室において、ラ
シヒリング(8mm×8mm)成型用鋳型(630個分)
へ注入し、−48℃×0.5hの冷却(凍結・成型)を
施した後、成型体を取り出し、6hの真空脱水を
施した。解凍後、132g(含水率89wt%、脱水率
30wt%)のゲルを得た。このゲルを、あらかじ
め滅菌した0.2%グルコース水溶液(リン酸緩衝
液、PH7)100mlに7h浸漬した結果、成型ゲルは
吸水して139g(含水率90wt%)に達した。 直径3cm、高さ60cmのガラス製円筒(カラム)
へ、上記ラシヒリング139gを不規則充てんし、
あらかじめ120℃×15minの滅菌処理を施したプ
レドニゾロン(prednisolone、11β、17α、21−
トリヒドロキシ−1,4−プレグナジエン−3,
20−ジオン)合成用基質溶液(コルチゾル
cortisol≡11β、17α、21−トリヒドロキシ−4−
プレグネン−3,20−ジオン 0.1M、メチルア
ルコール4%、PH7、34℃)を120ml/hの流速
で塔底から送入すると共に、無菌フイルターを通
じ、空気を塔底へ200ml/hの流速で送入したが、
塔頂流出液は、2〜20hにわたり、プレドニゾロ
ン濃度0.3wt%以下にすぎなかつた。 次に、このカラムの塔底へ、培地(ペプトン
0.5%、コルチゾル1mM、メチルアルコール4
%、30℃)を28ml/hの流速で40h送入後、ゲル
の極微量を採取し、走査型電子顕微鏡を用い観察
した結果、直径190μmの細菌集落を認めた。次
に、プレドニゾロン合成用基質溶液を120ml/h
の流速で塔底から送入すると共に、無菌フイルタ
ーを通じ、空気を塔底へ200ml/hの流速で送入
し、柴外線吸収スペクトル分析(285nm吸光
度)、薄層クロマト分析(シリカ・ゲル−プロピ
レングリコール−クロロホルム)、高速液体クロ
マト分析(クロロホルム抽出)により流出液を分
析した結果、20日間にわたり、プレドニゾロン濃
度は1.8〜2.0wt%(収率55〜61モル%)であつ
た。しかし、31日後には、この濃度が1.3wt%へ
低下したため、ゲルの極微量につき、光学顕微鏡
により観察した結果、細菌集落が直径約70μmに
収縮していることを知つた。次に、上記カラムの
塔底へ、培養液(ペプトン0.5%、グリコース0.2
%、塩化マグネシウム1mM、塩化カルシウム1
mM、コルチゾル1、メチルアルコール4%、リ
ン酸緩衝液PH7、30℃)を30ml/hの流速で24h
送入後、ゲルの極微量を採取し、走査型電子顕微
鏡により観察の結果、直径220μmの細菌集落を
認めた。しかる後、再び前記の基質溶液を送入し
たところ、前回同様、流出後の紫外線吸収スペク
トル分析により、プレドニゾロン収率61モル%が
達成されたことを知つた。 このような基質溶液の送入および断続的培養液
の送入を8回反復実施したが、ゲル内の細菌集落
包括空洞には、全く亀裂は発生しなかつた。 実施例 5 市販ポリビニルアルコール(けん化度98.4モル
%、粘度平均重合度1800、4%水溶液の粘度(20
℃)29.5cP)の粉末84g(含水率5wt%)を、水
916gに溶解し、8wt%水溶液(PH7)を得た。 この水溶液18gに、120℃×20minの加圧水蒸
気滅菌処理を施し、次に無菌室において放冷後、
ここへ、サツカロマイセス・セレビシエ
(Saccharomyces cerevisiae)20mgを含む懸濁水
(リン酸緩衝液、PH7)2gを注ぎ、7min間かき
まぜた。この懸濁水溶液のポリビニルアルコール
濃度は7.2wt%である。 この懸濁水溶液18gを、無菌室において、ラシ
ヒリング(8mm×8mm)成型用鋳型(59個分)へ
注入し、−38℃×0.5hの冷却(凍結・成型)を施
した後、成型体を取り出し、6hの真空脱水を施
した。解凍後、10.4g(含水率86wt%、脱水率
42wt%)の成型ゲルを得た。これをあらかじめ
滅菌した0.9%食塩水30mlに6h浸漬した結果、ゲ
ルは吸水し12g(含水率88wt%)に達した。 直径3cm、高さ10cmのガラス製円筒に上記ラシ
ヒング12gを不規則充てんし、あらかじめ120℃
×20minの滅菌処理を施したエチルアルコール合
成用基質水溶液(グルコース10wt%、硫酸マグ
ネシウム七水和物100ppm、PH5.5、32℃)を、10
ml/hの流速で塔底から送入したが、流出液のエ
チルアルコール濃度は0.1wt%(理論収率の2%)
にすぎなかつた。 次に、この成型ゲルの微量を採り、走査型電子
顕微鏡により観察したが、酵母が個別に分散包括
されてはいるものの、酵母集落は全く認められな
かつた。 続いて、上記カラムの塔底へ、培地(グルコー
ス4%、酵母エキス1%、塩化アンモニウム0.2
%、硫酸マグネシウム七水和物0.01%、塩化カル
シウム0.006%、PH5.5、28℃)を、5ml/hの流
速で35h送入後、ゲルの微量を採り、同様に観察
したところ、直径320μmの酵母集落を多数認め
たが、包括空洞の亀裂は見られなかつた。 次に、塔底へ、前記エチルアルコール合成用基
質水溶液を20ml/hの流速で送入し、流出液につ
きエチルアルコール(ガスクロマト分析法)とグ
ルコース(ジニトロサリチル酸法)を分析した結
果、グルコースの残存率は0.5%にすぎず、エチ
ルアルコール濃度4.7wt%(理論収率の92%)に
達したことを知つた。 1カ月後に、上記エチルアルコール濃度は
3.5wt%に低下したため、このゲルの微量を採取
し、走査型電子顕微鏡により観察した結果、多数
の酵母集落がいずれも直径250μmに収縮したこ
とを知つた。 上記カラムの塔底へ再び前記培地を5ml/hの
流速で17h供給後、同様に観察した結果、多数の
集落は、いずれも直径300μmに復したことを知
つた。その後、塔底へ前記エチルアルコール合成
用基質水溶液を20ml/hの流速で供給し、4h後、
流出液のエチルアルコール濃度4.7wt%が再現さ
れた。上記諸操作を通じ、流出液には、酵母は極
微量検出されるにすぎず、固定化当初の酵母はも
ちろん、カラム内で増殖した酵母も、ゲル内にほ
ぼすべて捕捉されていることを確かめた。 比較例 1 実施例5のポリビニルアルコール水溶液60g
に、120℃×20minの加圧水蒸気滅菌処理を施し、
無菌室において放冷後、この水溶液へ、実施例5
と同様のサツカロマイセス・セレビシエ0.02gを
含む懸濁水(リン酸緩衝液)7gを注ぎ、7min
間かきまぜた。次に、この懸濁水溶液60gを、底
面10cm×10cmの容器に注ぎ、2日間放置すること
により、湿潤セロハン紙に似た、全く剛直性に欠
ける粘着性フイルム14.6g(含水率62wt%)を得
た。このフイルム(厚さ約1.5mm)を、あらかじ
め滅菌した0.9%食塩水20mlに浸漬した結果、4h
後に、フイルムは17.3g(含水率67wt%)に達し
た。このフイルムを多数の細片(8mm×8mm×
1.5mm)に裁断後、滅菌処理を施した実施例5の
培溶液40mlへ投入し、焼綿栓を付し、30〜32℃の
恒温室において48h振とう後、このフイルムの微
量を採り、走査型電子顕微鏡によりフイルム内部
を観察したが、酵母の大集落は認められず、直径
25μm程度の小集落が点在するにすぎず、フイル
ム内の酵母菌数は107個/ml以下と推算された。 実施例5の基質水溶液40mlを坂口フラスコ
(500ml)に採り、120℃×15minの滅菌処理を施
した後、無菌室で放冷し、ここへ、上記フイルム
裁断片17gを投入後、焼綿栓を付し、30〜32℃の
恒温室において振とうしたが、24h後のエチルア
ルコール濃度は0.4wt%(理論収率の15%)にす
ぎず、また、ポリビニルアルコールが溶出したこ
とを知つた。 このようにポリビニルアルコールを用いる公知
の手法による場合、増殖効果に乏しいうえ、ポリ
ビニルアルコール・フイルムの耐水性にも問題が
あり、解糖(エチルアルコール生成)活性の高い
固定化酵母は得難い。 比較例 2 実施例5のポリビニルアルコールのかわりに、
けん化度93モル%、粘度平均重合度1700、4%水
溶液の粘度(20℃)30cPの市販ポリビニルアル
コールを用い、同様に操作した。凍結・成型・脱
水体10g(含水率83wt%、脱水率44wt%)が得
られたが、解凍後は、5℃においても軟弱化し、
少量のゲル層のほかに、多量のポリビニルアルコ
ール濃厚水溶液が層分離するのを認めた。したが
つて、これを、反応用カラムに充てんすることは
不可能であり、フラスコに移す操作によつても、
完全に形くずれした。 比較例 3 実施例5のポリビニルアルコールのかわりに、
けん化度99.2モル%、粘度平均重合度500、4℃
水溶液の粘度(20℃)5.6cPの市販ポリビニルア
ルコールを用い、その18wt%水溶液18gにつき、
同様に操作したが、寒天に似たもろい・・・ゲル10.5g
(含水率84wt%、脱水率42wt%)が得られたにす
ぎず、カラムへ充てんすることはできなかつた。 比較例 4 比較例3と同じ重合度500のポリビニルアルコ
ール水溶液の濃度を30wt%まで高め、その水溶
液18gにつき同様に操作し、10.4g(含水率84wt
%、脱水率42wt%)のゲルを得たが、このゲル
は、水中で著しく軟化し、形くずれした。 比較例 5 市販ポリビニルアルコール(けん化度99モル
%、粘度平均重合度2600、4%水溶液の粘度(20
℃)、66cP)の粉末65g(含水率8wt%)を、水
935gに溶解し、6wt%とした。この水溶液34g
に加圧水蒸気滅菌を施し、放冷後、実施例5と同
様の酵母懸濁水3gを添加し、−70℃×0.5hの凍
結・成型処理後、常温で2h放置した結果、軟質
ゲル(37g、脱水率0%、含水率94wt%)を得
たが、弾性を示さず、水中に1晩浸漬することに
より形くずれし、水層に濁りを生じた。 すなわち、たとえ、ポリビニルアルコール水溶
液に凍結・成型を施しても、引続き、これに凍
結・乾燥を施さないかぎり、本発明のゲルに比
し、耐水性の乏しい軟弱なゲルが生成するにすぎ
ず、酵母を固定化して実用に供するに耐えないこ
とが明らかである。 比較例 6 比較例5の凍結・成型処理後、成型体34gを常
温で融解させ、真空乾燥器に移し、減圧脱水を試
みたが融解液の泡立ちが激しく、操作を停止しな
ければならなかつた。次に、泡立ち対策として、
上記成型体融解液の1/10(3.7g)を採取し、こ
れをポリエチレン製ビーカー(100ml)の底面に
塗布後、減圧乾燥を試みた。これにより、ビーカ
ーの底面に1gのゲル(含水率74wt%、脱水率
72wt%)が生成したが、その弾性は乏しく、ま
た600g/cm2の引張り応力により直ちに切断され
た。 このように、たとえ、ポリビニルアルコール水
溶液を凍結・成型しても、その後、これを融解さ
せることなく(凍結状態を維持しつつ)脱水しな
いかぎり、本発明の高含水性で、しかも弾力性に
富む機械的強度の優れたゲル(酵母含有ゲル)は
得られない。 実施例 6 市販ポリビニルアルコール(けん化度98.4モル
%、粘度平均重合度1800、4%水溶液の粘度(20
℃)29.5cP)の粉末84g(含水率5wt%)を水
916gに溶解し、8.0wt%水溶液(PH6.9)を得た。 この水溶液18gに、120℃×20minの加圧水蒸
気滅菌処理を施し、次に無菌室において放冷後、
ここへ、サツカロマイセス・セレビシエ
(Saccharomyces cerevisiae)0.4gを含む懸濁
水(リン酸緩衝液、PH7)2gを注ぎ、7min間
かきまぜた。この懸濁水溶液のポリビニルアルコ
ール濃度は、7.2wt%である。 この懸濁水溶液18gを、無菌室において、ポリ
エチレン製容器(底面6×6cm)に注ぎ、−53℃
×0.6の冷却(凍結・成型)を施した後、5hの真
空脱水を施した。解凍後、10.5g(含水率84wt
%、脱水率42wt%)の白色不透明ゲルを得た。
これをあらかじめ滅菌した0.9%食塩水40mlに6h
浸漬した結果、ゲルは吸水し12g(含水率86wt
%)に達した。この浸漬液には前記酵母は検出さ
れなかつた。次に、このゲルを多数の断片(2cm
×4cm×4mm)に裁断後、あらかじめ滅菌した
0.9%食塩水40mlで洗浄し、この洗浄液を光学顕
微鏡により観察した結果、前記酵母が少数認めら
れたが、洗浄液の濁度に基づき、これを定量し、
当初の酵母の少なくとも98%がゲル中に確実に包
括されたことを知つた。 次に、このゲル裁断片につき、機械的強度を測
定したところ、引張り強度6Kg/cm2、また圧縮強
度は4Kg/cm2以上であつた。また、指先につまん
で強烈に圧迫しても、全く形くずれせず、再び元
に復した。 実施例6のゲル強度を、比較例2〜6の場合と
比較測定した。
【表】 本発明の微生物生菌体固定化・増殖用ゲルが、
従来公知のポリビニルアルコール系ゲル(比較例
5、比較例6、ならびに本発明によらないポリビ
ニルアルコール系ゲル(比較例2〜4)に比し、
機械的強度において格段と優れていることがわか
る。 比較例 7 (1) アルギン酸ナトリウム3wt%を溶解した0.9%
食塩水50ml(33℃)に、サツカロマイセス・セ
レビシエ0.5gを含む0.9%食塩水40ml(33℃)
を混合後、これを0.02M塩化カルシウム水溶液
300mlへ、ピペツトから滴下し、球状ゲル(直
径3mm、計11000個)を得た。 (2) κ−カラゲナン4wt%を溶解した0.9%食塩水
(35℃)40mlへ、上記酵母懸濁液20ml(35℃)
を添加・混合し、底面5cm×5cmのポリスチレ
ン製容器へ注ぎ、20℃に冷却して、板状ゲル
(厚さ2.4cm)を得た。 (3) 上記ゲル2g(4.2×2.4×0.2cm)を、硬化剤
水溶液(3%塩化カリウム)20ml(30℃)に
2h浸漬した。 (4) 前記(2)のゲル2g(4.2×2.4×0.2cm)を、硬
化剤水溶液(ヘキサメレンジアミン0.05M、グ
ルタアルデヒド0.1M)20ml(30℃)に2h浸漬
後、水洗した。 (5) 寒天粉末2wt%を溶解した0.9%食塩水(36
℃)40mlへ、(1)の酵母懸濁液20ml(36℃)を添
加・混合し、底面5cm×5cmのポリスチレン製
容器で注ぎ、0℃に冷却して、板状ゲル(厚さ
2.4cm)を得た。 (6) ペクチン(レモン系)粉末4wt%を容解した
0.9%食塩水(36℃)40mlへ、(1)の酵母懸濁援
20ml(36℃)を添加・混合し、底面5cm×5cm
のポリスチレン製容器へ注ぎ、33℃に冷却して
板状ゲル(厚さ2.4cm)を得た。 上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)のゲルはいずれも
軟弱でもろく、指先でつまみ、軽く指圧を加える
ことにより、直ちに押しつぶされた。また、引張
り強度は、共に1.5Kg/cm2に耐えず、直ちに破断
された。 比較例 8 比較例7(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)のゲル細片
(球または3×3×3mm立方体)につき実施例5
に準じ、増殖用培地を送入した。44h後の観察結
果で、すべてのゲルに亀裂が見られ、いずれの場
合の流出液も著しく懸濁し、酵母の流失が確認さ
れた。 直ちに培地の供給を停止し、かわりに、エチル
アルコール合成用基質水溶液を送入したが、それ
ぞれのゲルの亀裂は消失することなく、むしろ亀
裂箇所数は増加し、酵母の流失が12h以上持続し
た。特に比較例7(2)、(3)、(4)、(5)、(6)のゲルで
は、成形体の表面が更に軟弱化し、徐々に脱落す
るのが認められた。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 1 けん化度95モル%以上で、しかも粘度平均重
    合度1500以上のポリビニルアルコールの水溶液と
    微生物生菌体より成る懸濁水溶液を、成型用鋳型
    へ注入し、これを−6℃より低い温度で凍結・成
    型し、しかる後、この凍結・成型体を融解させる
    ことなく脱水率5wt%以上に真空脱水し、必要に
    応じ水中に浸漬することにより、含水率20〜
    92wt%(湿潤体基準)に到達させ、微生物生菌
    体を包括(包埋)したゲルを得て後、このゲルに
    微生物増殖用培地を供給し、これにより形成され
    る増殖微生物菌体集落の直径を50μm〜550μmの
    範囲にまで拡大させることを特徴とする微生物生
    菌体の固定化・増殖法。
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