JPH024279Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は往復動型の内燃機関のピストンとコネ
クテイングロツドの接続構造に係る。

従来の技術 往復動型の内燃機関のピストンとコネクテイン
グロツドとは、一般に、ピストンピンによりその
軸線周りに互いに枢動可能に連結されている。ピ
ストンは機関燃焼室に於ける混合気の燃焼による
熱により加熱されて拡径膨張するから、これを受
入れるシリンダブロツクのシリンダボアより少し
小さく作られており、このためピストンがまだ拡
径膨張しない低温時にはピストンとシリンダボア
との間の間隙が大きく、この時にはピストンスラ
ツプの如くピストンのシリンダボア壁に対する衝
突によるピストン打音が発生する。このピストン
打音の発生は、静粛性を阻害するばかりでなく、
ピストン及びシリンダボア壁に傷を付ける原因に
なり、それらの耐久性を低下させる虞れがある。

考案が解決しようとする問題点 ピストンがシリンダボア壁に繰返し衝突するこ
とを回避する為には、ピストンのコネクテイング
ロツドに対するピストンピン軸線方向及びピスト
ンピン軸線周りの移動、特に首振り運動によるピ
ストンスラップ音の発生の原因になるピストンの
コネクテイングロツドに対するピストンピン軸線
周りの移動が阻止或いは抑制されれば良く、この
為にはコネクテイングロツドの小径端の両端面と
ピストンのピンボス端面とが常に接触するよう、
即ちコンスタントタツチ方式にピストンとコネク
テイングロツドとの接続構造が構成されていれば
よい。しかし、コンスタントタツチ方式にてピス
トンとコネクテイングロツドとの接続が行われて
いると、ピストン打音が問題にならない高温時に
もコネクテイングロツドの小径端の両端面とピス
トンのピンボス端面とが接触していることにより
摩擦損失が大きく、内燃機関の燃料経済性を悪化
する原因になる。

本考案は、上述の如き不具合に鑑み、低温時に
はピストンがコネクテイングロツドに対してピス
トンピン軸線方向及びピストンピン軸線周りに移
動することを抑制してピストンがシリンダボア壁
に繰返し衝突することを回避し、しかも高温時に
は摩擦損失を増大することがない内燃機関のピス
トンとコネクテイングロツドの接続構造を提供す
ることを目的としている。

問題点を解決するための手段 上述の如き目的は、本考案によれば、ピストン
とコネクテイングロツドの小径端との間にピスト
ンピンの軸線方向に感熱変形する感熱変形部材が
前記ピストンと前記コネクテイングロツドの何れ
か一方に係止して設けられ、前記感熱変形部材は
低温時には前記ピストンと前記コネクテイングロ
ツドの前記小径端の何れか他方に押圧接触して該
両者の相対的移動を阻止し高温時には前記ピスト
ンと前記コネクテイングロツドの小径端の何れか
他方との接触より離れることを特徴とする内燃機
関のピストンとコネクテイングロツドの接続構造
によつて達成される。

考案の作用及び効果 上述の如き構成によれば、ピストンとシリンダ
ボア壁との間の間隙が大きい低温時にはピストン
とコネクテイングロツドとが所謂コンスタントタ
ツチとなり、ピストンのコネクテイングロツドに
対するピストンピン軸線方向及びピストンピン軸
線周りの移動が阻され、これによりピストンがシ
リンダボア壁に繰返し衝突することが回避され、
ピストン打音の発生が回避される。ピストン自身
の拡径膨張によつてピストンとシリンダボア壁と
の間の間隙が小さくなり、大きいピストン打音を
発生することがない高温時、即ち暖機完了後に於
ては感熱変形部材が感熱変形によつて相手側部材
との接触より離れることにより、この時には所謂
フリータツチ状態になり、摩擦損失の増大が抑制
される。

また本考案による接続構造によれば、感熱変形
部材がコネクテイングロツドのスラスト受け部材
として作用し、これによりコネクテイングロツド
のスラスト受けがクランク軸との接続端である大
径端にて行われなくてもよくなり、この場合には
コネクテイングロツドの大径端の軸受幅を減少す
ることが可能になり、コネクテイングロツドの軽
量化が図られるようになる。

実施例 以下に添付の図を参照して本考案を実施例につ
いて詳細に説明する。

第１図乃至第３図は本考案による内燃機関のピ
ストンとコネクテイングロツドの接続構造の一つ
の実施例を示している。これらの図に於て、１は
ピストンを示しており、該ピストンはシリンダブ
ロツク２のシリンダボア３内に図にて上下方向に
往復動可能に設けられている。ピストン１は一対
のピストンピン孔４を有しており、該ピストンピ
ン孔には一本のピストンピン５が嵌挿されてい
る。ピストンピン５は、コネクテイングロツド６
の小径端７に設けられたピストンピン孔８を貫通
し、両端部にて各々ピストン１のピストンピン孔
４に嵌挿され、これによつてピストン１とコネク
テイングロツド６とを軸線周りに互いに枢動可能
に連結している。一対のピストンピン孔４の各々
を郭定する一対のピンボス部９の先端面とコネク
テイングロツド６の小径端７の両端面との間には
各々充分な間隙１０が設けられている。

一対のピンボス部９には各々仝感熱変形部材１
１が係止されている。感熱変形部材１１は、円環
状基部１２と、該円環状基部の先端縁部より延設
された複数個の舌片状ばね片部１３と、該舌片状
ばね片部の一方の面に接合装着され舌片状ばね片
部１３とは熱膨張係数が異つた材料よりなる舌片
部材１５とを有し、所謂ダイヤフラムスプリング
の如く構成され、円環状基部１２にてピンボス部
９の外周部に設けられた円環状の取付溝１５に嵌
合してこれにより支持されている。一対のピンボ
ス部９の各々に取付けられた感熱変形部材１１
は、低温時には第１図及び第３図に示されている
如く、複数個の舌片状ばね片部１３の各々にてコ
ネクテイングロツド６の小径端７の端面に押圧接
触してピストン１とコネクテイングロツド６との
ピストンピン５の軸線方向の移動及びその軸線周
りの回動を阻止し、これに対し高温時には舌片状
ばね片部１３と舌片状部材１４との互いの熱膨張
係数の違いからバイメタル式に、第３図に於て仮
想線で示されている如く、感熱変形し、舌片状ば
ね片部１３の各々がコネクテイングロツド６の小
径端７の端面との接触より離れるようになつてい
る。

従つて、低温時にはピストン１のコネクテイン
グロツド６に対するピストンピン軸線方向及びピ
ストンピン軸線周りの移動が感熱変形部材１１に
よつて阻止され、ピストン１がシリンダボア３の
壁面に繰返し激しく衝突することが回避され、こ
れに伴いピストン打音の発生が回避される。

第４図及び第５図は各々本考案によるピストン
とコネクテイングロツドの接続構造の他の実施例
を示している。尚、第４図及び第５図に於て、第
１図に対応する部分は第１図に付した符号と同一
の符号により示されている。第４図に示された実
施例に於ては、第１図に示された実施例に於ける
感熱変形部材１１と実質的に同一の感熱変形部材
１１がコネクテイングロツド６の小径端７に係止
されており、該感熱変形部材は低温時には舌片状
ばね片部１３の各々にてピストン１のピンボス部
９の先端面に押圧接触するようになつている。

第４図に示された実施例は第１図に示された実
施例に対し感熱変形部材１１の取付部材が異なつ
ているだけであり、その他のことについては第１
図に示されたそれと実質的に同一であり、従つ
て、第４図に示された実施例に於ても第１図に示
された実施例と同様の作用効果が得られる。

第５図に示された実施例に於ては、感熱変形部
材１１が形状記憶合金により構成されており、該
感熱変形部材は、低温時には舌片状ばね片部１３
にてコネクテイングロツド６の小径端７の端面に
押圧接触し、高温時には感熱変形して舌片状ばね
片部１３がコネクテイングロツド６の小径端７の
端面との接触より離れるようになつている。

従つて、第５図に示された実施例に於ても上述
した実施例と同様の作用及び効果が得られる。

以上に於ては、本考案を特定の実施例について
詳細に説明したが、本考案は、これらに限定され
るものではなく、本考案の範囲内にて種々の実施
例が可能であることは当業者にとつて明らかであ
ろう。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案による内燃機関のピストンとコ
ネクテイングロツドの接続構造の一つの実施例を
示す縦断面図、第２図は本考案による接続構造に
用いられる感熱変形部材の正面図、第３図は第１
図に示された本考案による接続構造の要部を取出
して示す断片的な拡大縦断面図、第４図及び第５
図は各々本考案による内燃機関のピストンとコネ
クテイングロツドとの接続構造の他の実施例を示
す縦断面図である。 １……ピストン、２……シリンダブロツク、３
……シリンダボア、４……ピストンピン孔、５…
…ピストンピン、６……コネクテイングロツド、
７……小径端、８……ピストンピン孔、９……ピ
ンボス部、１０……間隙、１１……感熱変形部
材、１２……円環状基部、１３……舌片状ばね片
部、１４……舌片状部材、１５……取付溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ピストンとコネクテイングロツドの小径端との
   間にピストンピンの軸線方向に感熱変形する感熱
   変形部材が前記ピストンと前記コネクテイングロ
   ツドの何れか一方に係止されて設けられ、前記感
   熱変形部材は低温時には前記ピストンと前記コネ
   クテイングロツドの前記小径端の何れか他方に押
   圧接触して該両者の相対的移動を阻止し高温時に
   は前記ピストンと前記コネクテイングロツドの前
   記小径端の何れか他方との接触より離れるよう構
   成されていることを特徴とする内燃機関のピスト
   ンとコネクテイングロツドの接続構造。