JPH0239631B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、スクロール圧縮機のスラスト軸受
部から圧縮室の吸入部へ流入する油の処理装置に
関するものである。

この発明に入る前に、スクロール圧縮機の原理
について簡単に述べる。

スクロール圧縮機の基本要素は第１図に示す通
りで、同図において、１は固定スクロール、２は
揺動スクロール、５は固定スクロール１と揺動ス
クロール２との間〓よりなる圧縮室である。また
０は固定スクロール１の中心である。固定スクロ
ール１および揺動スクロール２は同一形状で、巻
き方向が反対渦巻を有し、この渦巻の形体はイン
ボリユートあるいは円弧等を組合せたものであ
り、また、この渦巻同志を組合わせることにより
両渦巻間に圧縮室５が形成される。

次に動作について説明する。第１図において固
定スクロール１は空間に対して静止しており、揺
動スクロール２は固定スクロール１と図の如く組
合わされて、その姿勢を空間に対して変化させな
いで、すなわち、自転運動をせずに固定スクロー
ル１の中心０の回りを回転運動、すなわち、揺動
運動を行い、第１図ａ，ｂ，ｃ，ｄ，ｅのように
運動する。このような揺動スクロール２の運動に
伴い、圧縮室５は順次その容積を減じ、外周部よ
り圧縮室５に取り込まれた気体は固定スクロール
１の中央部付近まで圧縮され吐出される。

次に、従来のスクロール圧縮機の具体的な実施
例を第２図により説明する。

第２図は、スクロール圧縮機を例えば冷凍、ま
たは空調あるいは空気圧縮機に応用しようとする
場合の具体的な実施例であつて、フロン等のガス
体の圧縮機として構成したものである。同図にお
いて、１は固定スクロール、１ａは固定スクロー
ル１の台板で、後述のシエルの一部を兼ねてい
る。２は揺動スクロール、３は揺動スクロール２
の台板で、背面に径方向の溝３ａを有する。４は
揺動スクロール軸、５は圧縮室、６は圧縮室５の
吸入部、７は吸入孔、８は吐出孔、９は揺動スク
ロール２の台板３背面を支承するスラスト軸受、
１０は固定スクロール１とボルト等で固定された
軸受支え、１１は揺動スクロール２の自転を防止
し、揺動させるリング状のオルダム継手で、上下
面に互いに十字状に配設された突起１１ａ，１１
ｂを有する。１２は揺動スクロール２の台板３と
軸受支え１０の間に形成されるオルダム室、１３
は軸受支え１０にあけられたオルダム室１２と後
述のモータ室を連絡する返油孔、１４は揺動スク
ロール２を駆動させるクランク軸、１５はクラン
ク軸１４内に偏心してあけられた油孔、１６はク
ランク軸１４に偏心して設けられ揺動スクロール
軸４と嵌合する揺動軸受、１７はクランク軸１４
上部と嵌合する主軸受、１８はクランク軸１４下
部と嵌合するモータ側軸受、１９はモータ・ステ
ータ、２０はモータ・ロータ、２１はモータ・ロ
ータ２０上部のクランク軸１４に固定された第１
バランス、２２はモータ・ロータ２０下端に固定
された第２バランス、２３は固定スクロール１、
軸受支え１０、モータ・ステータ１９、およびモ
ータ側軸受１８を固定し、圧縮機全体を密封する
シエル、２４はシエル２３底部の油溜に貯溜され
た油、２５はモータ・ステータ１９およびモー
タ・ロータ２０等を収容したモータ室である。

このように構成されたスクロール圧縮機の動作
を説明する。モータ・ステータ１９に通電される
と、モータ・ロータ２０はトルクを発生してクラ
ンク軸１４とともに回転する。クランク軸１４が
回転を始めると、クランク軸１４に偏心して設け
た揺動軸受１６に嵌合されている揺動スクロール
軸４に回転力が伝えられ、揺動スクロール２はオ
ルダム継手１１にガイドされて揺動運動を行な
い、第１図に示したような圧縮作用を行なう。気
体は吸入孔７から揺動スクロール２外周部の吸入
部６に吸入されて圧縮室５内に取りこまれ、クラ
ンク軸１４の回転とともに順次内側に送り込まれ
て固定スクロール１中央部に設けた吐出管８より
吐出される。

次に給油系について説明する。モータ室２５の
底部に溜められた油２４は、クランク軸１４に偏
心してあけられた油孔１５のポンプ作用により図
中、実線矢印で示すようにクランク軸１４下端よ
り吸い上げられ、油孔１５を通つて主軸受１７お
よび揺動軸受１６に供給され、ここを通過した後
スラスト軸受９に供給されてスラスト軸受面を潤
滑し、さらにその後、オルダム室１２内に排出さ
れ、オルダム室１２に溜つた油は順次返油孔１
３、モータ室２５を通つてシエル２３底部の油溜
に返される。

なお、クランク軸１４の回転に伴なう揺動スク
ロール２の揺動運動は圧縮機全体に不釣合力によ
る揺動を引きおこそうとするが、第１バランス２
１および第２バランス２２により静的および動的
にクランク軸１４回りの釣合をとることができ、
異常な振動なく圧縮機は運転できる。

以上のように構成された従来のスクロール圧縮
機においては、第２図に示すように揺動スクロー
ル２が揺動するため揺動スクロール２と軸受支え
１０との間に必然的に〓間１２ａが形成され、オ
ルダム室１２と吸入室６とは連通状態になる。従
つて、スラスト軸受９の軸受面より排出され、オ
ルダム室１２に溜つた油は、一部は返油孔１３を
通つてモータ室２５に返されるが、残りは吸入ガ
スにより吸入部６に吸い上げられそのまま圧縮室
５に取り込まれて吐出孔８より吐出されていた。
通常、スクロール圧縮機においては、吸入ガスの
中に一部油を混入させ、その油により両渦巻間を
密封して、圧縮室５の密封を行なうが、圧縮室５
の密封に必要な量以上の油を混入すると、冷凍あ
るいは空調等に使用している場合は冷媒中に多量
の油を混入することになり、冷却能力不足という
問題を発生しやすい。また、冷媒中の油を取除こ
うとするなら、圧縮室５の吐出側に油分離器等の
余分な補器を取付ける必要があり、コスト的に不
利である。さらに、吸入ガス中に油が多量に混入
するとモータ室２５への返油が充分でなくなるた
めシエル２３底部の油溜内の油量が減じ、ついに
は各軸受部の給油ができなくなり安定した運転が
できなくなる。

この発明は以上のような欠点に鑑みなされたも
ので、揺動スクロールとシエルとの間に必然的に
形成される〓間を閉鎖するように仕切部材を設
け、スラスト軸受の潤滑作用後の油が圧縮室の吸
入部内に必要以上吸入されないように制限するこ
とにより、構造簡単で、安定した運転ができるよ
うにしたスクロール圧縮機を提供しようとするも
のである。

以下、この発明の一実施例を第３図および第４
図により説明する。これらの図において、２６は
軸受支え１０の内周に設けられた溝、２７は溝２
６に嵌合されたリングで、〓間１２ａを下方から
閉鎖する仕切り部材をなす。２８はリング２７の
切断部、２９は切断部２８の両端部にそれぞれ設
けられた孔である。なお、これらの図において第
２図と同一または相当部分には第２図と同一符号
を付しているのでその説明は省略する。このよう
な構成において、リング２７を装着する場合、装
着用工具（図示せず）を両孔２９に挿入してリン
グ２７を押し縮めるようにしてリング２７の外周
部を溝２６内に挿入し、装着用工具（図示せず）
を両孔２９より外せばリング２７の弾性でもつて
溝２６内に装着される。そして、軸受支え１０の
溝１０ａに挿入された突起１１ａによりオルダム
室１２内に固定されたオルダム継手１１の別の突
起１１ｂに揺動スクロール２の台板３背面の溝３
ａが挿入されオルダム継手１１と揺動スクロール
２が組立てられる。この状態においては揺動スク
ロール２の背面はスラスト軸受９によつて支承さ
れ、また、リング２７との間には微小〓間が形成
される。そして、リング２７のリング幅は揺動ス
クロール２が揺動したとき揺動スクロール２と軸
受支え１０との間に形成される最大〓間よりも幅
広に形成されているので、〓間１２ａは閉鎖され
た状態となる。従つて、クランク軸１４の油孔１
５より吸い上げられた油は、第３図に実線矢印で
示すように主軸受１７および揺動軸受１６に供給
された後、スラスト軸受９に供給され、その後オ
ルダム室１２に排出される点は従来と同じであ
る。しかし、オルダム室１２内に溜つた油は、オ
ルダム室１２と吸入部６の間はリング２６により
仕切りができたため、吸入部６への油の流入を非
常に少なく制限することができ、大部分はリング
２７によりシエル２３底部の油溜に流下する。そ
して、リング２７と揺動スクロール２の台板３背
面間の微小〓間を通つて吸入部６へ流入した僅か
の油は、圧縮室５の密封に必要な量であり、この
〓間を適当に選定することにより吸入部６への油
の流入量を調整することができる。

第５図、第６図はこの発明の他の実施例を示
し、２６′は軸受支え１０の内周に設けた段付部、
２７′は段付部２６′に上部より嵌合固着させたリ
ングであり、仕切り部材をなし、このような形態
でも上述した実施例と同様の効果がある。また、
リング２７，２７′はシエル２３に直接固着して
もよく、要するに揺動スクロールとシエルとの間
に必然的に形成される〓間を閉鎖するようにリン
グ２７，２７′等の仕切部材を設ければよい。

以上のようにこの発明によれば、スラスト軸受
の潤滑作用後、圧縮室の吸入部に流入し、冷却中
に混入する油を必要量に制限することができ、残
りの油はすべてシエル底部の油溜内に返される。
従つて、冷却能力不足という問題を生じることも
なく、また吐出側に油分離器等の余分な補器を取
付ける必要もなく、さらに圧縮機内部の油量も短
時間に減じることもなくなるため、信頼性の高い
スクロール圧縮機を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はスクロール圧縮機の作動原理図、第２
図は従来のスクロール圧縮機の断面図、第３図は
この発明の一実施例を示す部分断面図、第４図は
この発明の要部を示す部分分解斜視図、第５図は
この発明の他の実施例を示す部分断面図、第６図
はその部分分解斜視図である。なお、図中、同一
符号は同一または相当部分を示す。 図中、１は固定スクロール、２は揺動スクロー
ル、５は圧縮室、６は吸入部、９はスラスト軸
受、１０は軸受支え、１１はオルダム継手、１２
はオルダム室、１３は返油孔、１４はクランク
軸、２３はシエル、２４は油、２７，２７′は仕
切り部材（リング）である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ それぞれ渦巻を有し、この渦巻同士が互いに
   組合わさせることにより、両渦巻間に圧縮室を形
   成する固定スクロールと揺動スクロール、上記揺
   動スクロールを揺動運動させ、上記圧縮室に流体
   を吸入してその流体を圧縮させるオルダム継手と
   クランク軸、上記揺動スクロールの背面を支承す
   るスラスト軸受、上記固定スクロールを固定する
   と共に上記オルダム継手とクランク軸、およびス
   ラスト軸受を収納するシエル、このシエル底部に
   貯溜された油を上記スラスト軸受面へ供給する給
   油手段、上記揺動スクロールとシエルとの間に形
   成される〓間を下方から閉鎖するように設けら
   れ、上記揺動スクロールの背面とは小さい〓間に
   設定されており、上記スラスト軸受面を潤滑し排
   出された油の上記圧縮室の吸入部へ吸入される油
   量を制限させる仕切部材を備えたスクロール圧縮
   機。