JPH0239429B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、停車時又は走行時のいずれを問わず
車体重心が自動的に調整されて転倒することのな
い自動二輪車に関する。

従来の二輪車にあつては、停車時や急旋回時の
転倒を防止するために足の挙げ降ろしをしたり体
位を変えるなどの勘によるバランス動作を必要と
したが、これらの動作そのものが煩わしいことは
もとより、低速運転や急停車、急旋回時などの脱
バランススによる転倒事故を誘発して交通安全上
の由々しい問題を惹起している現状である。

本発明はかかる実情に鑑みてなされたもので、
従来二輪車のこれれら欠陥を克服して冒頭に述べ
た効果を発揮すると共にさらに快適なる乗り心地
をもたらし得る自動二輪車を提供するものであ
る。

以下実施例の図面を基に本発明の構成を説明す
ると、本発明二輪車全体の斜視図及び平面図を示
して第１図及び第２図にある通り、まず、前車輪
２及び後車輪６が車体フレームを支持しつつ前後
一対に配され且つその車体フレーム上には動力装
置４及びその動力伝達機構５が装備されると共に
前車輪２にはかじ取り装置が連結されることは大
略従来自動二輪車と同様である。

そして本発明においては、前記かじ取り装置と
前車輪２との間に、そのかじ取り装置の操向ハン
ドル１の旋回に連動して前車輪の転向を促すと共
に車体横軸に沿つて旋回方向に対し外側方向へ前
車輪２を移動できる前車輪相対変位機構３を設す
る。この前車輪相対変位機構３は幾つかの実施態
様が考えらるが、例えばその一態様を示した第３
図を基に説明すると、まず操向ハンドル１のステ
アリングシヤフト３１の基端に駆動ギヤ３２を固
着し、その駆動ギヤ３２を頂点とする三角形の底
辺角位置に従動ギヤ３３，３３を配設してこれら
のギヤ３３，３３間ににチエーンベルト３４を掛
ける。そして、この三角形の底辺に相当するチエ
ーンベルト３４に沿つて車体フレームに連結した
両面ラツクギヤ３５を設けると共に、その両面に
噛合させた変位ギヤ３６，３６を前記チエーンベ
ルト３４と係止爪３７を介して連結させる。こ
の、係止爪３７は、変位ギヤ３６，３６の軸間に
掛架した連結杆の中心位置に垂下した突起状の爪
で、その先端をチエーンベルト３４のチエーン間
隙に挿入させて、チエーンベルト３４と変位ギヤ
３６，３６とをつなぐ、爪作用を果たすものであ
る。即ち、該係止爪３７は、チエーンベルト３４
の回動に従つて移動し、この移動力によつて変位
ギヤ３６，３６を両面ラツクギヤ３５に沿つて回
転させる役割を果たす。さらに、この変位ギヤ３
６の下方には中継ギヤ３８を介して前車輪２と一
体に固着した車輪の転向を促す切り角ギヤ３９を
係合させて成るものである。

次に、本発明の次なる特徴は、後車輪６に存す
るが、その前提として後車輪６が動力装置４及び
その動力伝達機構５５と連結して駆動力を得ると
共に変速調整等を受け得ることは従来自動二輪車
と変りがない。そして、本発明において後車輪６
は、その形状が略楕円球形（酒樽形）で、車体側
重心Ｗと中央接地点Ｔ間の距離をＲとしたとき、
そのＲより大きな曲率半径を有する曲線で外郭曲
面が形成される円柱体で構成されることを特徴と
する。その実施化にあつては、全体をゴムチユー
ブを挿添した中空体で一まとまりとするもの、又
は前記形状を保ちながら分割されたタイヤを継ぐ
もの等の態様が挙げられるが、いずれも接地点の
移動により車体側重心を押し上げる作用を果すも
のとする。

さらに、車体略中間に背凭れシートを配した運
転席７を設けると共に望ましくは運転席７をフー
ド８で覆つて居室とすることが好ましい。

次に、上記構成に基く本発明自動二輪車の作用
及び効果を、停車時と走行時とに分けて詳述す
る。

(A) 停車時の場合 停車時には主に乗降者及び運転者の体の動き
又は風等によつて車体に傾きが起り転倒の危険
が生ずるが、この場合後車輪による平衡調整機
能が発揮される。即ち、第４図に示す通り、前
記乗降者等の動きの力を外力Ｆとしたときその
外力Ｆの作用に伴つて中央接地点Ｔが外側の傾
斜接地点T′へと移動し、これに呼応して重心
位置（運転者を含む車体重心位置）は図上Ｗか
らW′へと移り、この結果重心は後輪外郭曲線
がＲより大なる曲率半径で形成されているため
W′T′sinα−WT＝Δh分だけ位置の上昇が惹起
され、かつ外力Ｆが継続的に作用すれば、これ
による左回りのモーメントMFと、重心Ｗの′
の重力による右回りのモーメントMGがつり合
つて（MF＝Ｍ ＧすなわちW′T′・Fsinα＝
W′T′mgcosα）接地点T′で安定となつている
が、外力Ｆが一過性であればT′を中心とした
重心W′の重力による右回りモーメント
（W′T′mgcosα）が作用し、このため接地点は
Ｔに復帰して再び安定となり、転倒の危惧を解
消する。つまり、平衡調整機能が自動的に発揮
されることになる。この調整機能の作用範囲
は、外力Ｆの大きさに呼応して伸びる接地点移
動がその最大点となる車輪左右端部の極限値
（Δhも最大となる）まで及ぶ。

(B) 走行時の場合 走行時にあつては、前車輪の旋回動に伴つて
円柱体として困難の伴う後車輪の追走を如何に
円滑に行うか又前記運転者の動きや風等の外に
旋回に伴う遠心力が新たに転倒の起因力として
加わる等の問題が惹起されるが、夫々前車輪相
対変位機構３及び後車輪６が前記問題に対応し
て機能する。

即ち、前輪相対変位機構３を表した第３図の
通り、走行中の旋回に当つて、まず操向ハンド
ル１を回転操作θすると、ステアリングシヤフ
ト３１を伝つて駆動ギヤ３２及びその従動ギヤ
３３，３３に掛架されたチエーンベルト３４が
同方向に回動する。すると、このチエーンベル
ト３４の回動に伴つて該ベルト３４に連係した
係止爪３７を介して変位ギヤ３６，３６が両面
ラツクギヤに沿つて連動し、同時にその力が下
方に固着された前車輪２に中継ギヤ３８及び切
り角ギヤ３９を介して伝達される。その結果前
車輪２は、切り角θ′を生じて転向すると共に元
の位置から旋回外側へｄだけ変位する。さて、
こうして前記前車輪２が相対的に変位すると車
体重心が旋回内側方向へ傾こうとするためにこ
れを矯正せんとして後車輪の接地点が第５図ロ
の如く旋回内側へ移動せしめられ、この結果後
車輪６の地面と接地する平面形状は、この接地
状態を模式的に表した第５図ハに示す通り内側
短尺の略台形となり、よつてこの台形の描く内
側への軌道に従つて旋回が極めて円滑に行われ
る。つまり前輪相対変位機構３の作用によつて
後車輪６の接地点が旋回に適した内側へと移動
し、旋回時に後車輪６が軌道をはみ出して走る
危険がない。

次に、前記旋回時にあつて高速走行していると
遠心力が外側方向に働いて転倒を惹起する問題を
孚むが、このとき第５図ニの様に前記旋回での後
車輪６の接地点はＴからT′へと移動して遠心力
を受けると接地点は、T′からT″へ移動するが、
これより重心点Ｗは、前輪接地点と後輪接地点を
結ぶ線分OT″より旋回の内側に向つてΔDだけを
変位しているために重力によるモーメント
（WT″mgcosβ）を発生させる。

遠心力によるモーメントは旋回の外側向きに、
重心の重力によるモーメントは旋回の内側向きに
発生し、T″を接地点としてつり合い、安定な状
態となつて、転倒の危惧も回避されることとな
る。

本発明は以上のようで、次の如き効果をもたら
す。

(イ) 停車時及び走行時のいずれを問わず平衡が常
に保たれているので、低速運転時のフラ付きや
急停車及び急旋回に伴う脱バランスによる転倒
等が回避され、転倒事故の多発が問題とされて
いる二輪車の安全性を向上させることができ
る。又、停車時に逐一足を着地させてバランス
を取る面倒な動作が不要となり、運転操作が簡
素化された。従つて、従来運転操作に熟達する
為に相当期間の訓練が不可欠とされていたが、
この期間を著しく短縮でき、又利用者の対象も
若者ばかりでなく女性がや高令者にも広く利用
され得る。

(ロ) 旋回に伴つて前車輪及び後車輪が有機的に連
係動作するため走行が極めて滑らかである。従
つて、入り組んんだ街の路地裏等狭い道でも無
理なく走行でき二輪車としての秀れた機動性が
発揮できる。

(ハ) 運転席を背もたれ付きシートに座り込める状
態とし且つその周囲をフードで被い居室とする
ことができるので、従来の「またがる」「腰か
ける」という前かがみの不安定な状態を解消
し、且つ雨・風・日光等の直接の影響から逃れ
快適な乗り心地をもたらし得る。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を示すもので、第１図が
本発明二輪車の斜視図、第２図が同上平面図、第
３図イが要部のみの斜視図、ロが他の実施態様を
示す要部斜視図、第４図が後輪の動きを示す略図
的背面図で、イが通常時の状態図、ロ及びハが傾
斜時の状態で重心と接地点との関係を示す図、第
５図が旋回時における要部相互の動きを示す平面
図で、イが旋回開始状態の状態図、ロが旋回過程
における状態図、ハがロの時点での後車輪の接地
状態を示す平面からの模式図、ニがロのVIEW−
Ａから見た状態の重心と接地点との関係を示す
図。 １……操向ハンドル、２……前車輪、３……前
車輪相対変位機構、４……動力装置、５……動力
伝達機構、６……後車輪。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 前車輪及び後車輪がフレームを支持しつつ前
   後一体に配され且つそのフレーム上には動力装置
   及びその動力伝達機構が装備されると共に前車輪
   にはかじ取り装置が連結される二輪車において、
   かじ取り装置と前車輪との間に、そのかじ取り装
   置の操向ハンドル１の旋回に連動して前車輪の転
   向を促すと共に車体横軸に沿つて旋回方向に対し
   外側方向へ該前車輪を移動できる前車輪相対変位
   機構３を設け、さらに後車輪６は、その形状が略
   楕円球形で車体側重心Ｗと中央接地点Ｔ間の距離
   をＲとしたときそのＲより大きな曲率半径を有す
   る曲線で外郭曲面が形成される円柱体とし且つそ
   の長軸が車体の中心線と直交した線上に配設され
   たことを特徴とする平衡自動二輪車。 ２ 前車輪相対変位機構３は、操向ハンドル１ス
   テアリングシヤフト３１の基端に駆動ギヤ３２を
   固着し、その駆動ギヤ３２を頂点とする三角形の
   底辺角位置に従動ギヤ３３，３３を配設してこれ
   らギヤ３３，３３間にチエーンベルト３４を掛
   け、さらにその三角形の底辺に相当するチエーン
   ベルト３４に沿つて車体フレームと連結した両面
   ラツクギヤ３５を設け、その両面に噛合させた変
   位ギヤ３６，３６を前記チエーンベルト３４と係
   止爪３７を介して連結し、さらにその変位ギヤ３
   ６の下方には中継ギヤ３８を介して前車輪２と一
   体に固着した切り角ギヤ３９を係合させて成る特
   許請求の範囲第１項記載の平衡自動二輪車。