JPH0220434Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、二つの気筒の水平対向とし、この両
気筒に対する共通のクランクケース内の容積の変
化を利用して両気筒に過給を行うようにした過給
式の水平対向型内燃機関に関するものである。

〔従来の技術と考案が解決しようとする課題〕

二つの気筒の水平対向とし、この両筒に対する
共通のクランクケース内の容積の変化を利用して
両気筒に過給を行うようにした過給式の水平対向
型内燃機関は、先行技術文献としての実公昭35−
23105号公報に記載されており、この先行技術文
献における過給式水平対向型内燃機関は、クラン
クケース内のクランク軸に連通するカム軸をクラ
ンクケースの下部に設け、該カム軸と両気筒頭部
の吸・排気弁に対する各ロツカアームとの間を、
各気筒の下部に配設したプツシユロツドを介して
連動してカム軸の回転により、両気筒における吸
気弁及び排気弁を開閉する一方、前記クランクケ
ースの下面に、前記カム軸を収容した潤滑油室を
一体形に設け、該潤滑油室内の潤滑油をポンプに
て前記両気筒における頭上部におけるロツカアー
ムに送つて潤滑したのち、前記プツシユロツドに
対するカバー管内を通つて前記潤滑油室に戻す循
環を行つて、カム軸、プツシユロツド及びロツカ
アーム等の動弁機構を強制潤滑するようにしてい
る。

ところがこのように、水平対向型の両気筒に対
する共通のクランクケースの下面にカム軸を収容
した潤滑油室を設け、該潤滑油室内の潤滑油にて
両気筒の動弁機構を強制潤滑することは、動弁機
構に対する潤滑油に、両気筒での燃焼によるカー
ボン等が混入しないので好ましい潤滑状態が得ら
れる反面、動弁機構に対する強制潤滑のために、
クランク軸及びピストンに対する潤滑油ポンプと
は別の潤滑油ポンプを必要とし、構造が著しく複
雑になるのであり、また、クランクケースの下面
にカム軸を収容した潤滑油室を設けることは、内
燃機関の高さが前記潤滑油室の高さだけ高くなる
のである。

しかも、前記先行技術文献における過給式水平
対向型内燃機関は、気化器からの吸気通路を二股
に分岐して、その両方を、両気筒におけるシリン
ダボアの中程部に、当該シリンダボア内における
ピストンの往復動にて開閉するように接続し、両
気筒におけるピストンが互いに離れるように移動
するとき、クランクケース内に両吸気通路から混
合気を吸入し、次いで、両気筒におけるピストン
が互いに接近動するとき、前記クランクケース内
において混合気を圧縮して、この圧縮した混合気
を、吸気導管を介して一方の気筒に送るように構
成することにより、過給を行うようにしているか
ら、両気筒の上部には、クランクケースと両気筒
における排気ポートとの間を接続する吸気導管に
加えて、気化器からの混合気を、両気筒における
シリンダボアの中程部に導くための二股状の吸気
通路を配設しなければならず、両気筒の上部に、
気化器からの二股状の吸気通路を配設する分だけ
内燃機関の高さが高くなるのである。

すなわち、前記先行技術文献における過給式水
平対向型内燃機関は、当該内燃機関の高さが、前
記のように、クランクケースの下部にカム軸を収
容した潤滑油室を設けること、及び両気筒の上部
に気化器からの二股状の吸気通路を配設すること
によつて、可成り高くなるから、最近の自動車の
ように、その前記形状を走行空気抵抗の見地から
側面視においてくさび状にノーズダウンしたエン
ジンルームの場合には、これに搭載することが著
しく困難になるのである。

しかも、クランクケースの下面に潤滑油室を一
体形成することは、シリンダボア及びクランクケ
ースを含むシリンダブロツクの形状が複雑化して
鋳造による生産性が低下するのであつた。

本考案は、先行技術文献における過給式水平対
向型内燃機関が有する前記の問題を解消した過給
式水平対向型内燃機関を提供することを目的とす
るものである。

〔課題を解決するための手段〕

この目的を達成するため本考案は、クランクケ
ース内の一本のクランク軸に対して左右一対の気
筒を水平対向型に配設し、該両気筒の頭上部に、
排気ポートに対する吸気弁及び排気ポートに対す
る排気弁を各々設けて成る水平対向型内燃機関に
おいて、前記クランクケースに、気化器からの吸
気通路を、クランクケースへの方向にのみ開くよ
うにした逆止弁を介して接続し、クランクケース
と、前記両気筒における吸気ポートとを吸気導管
を介して各々接続する一方、前記両気筒の頭上部
に、動弁機構室を各々形成し、該両動弁機構室内
に前記吸気弁及び排気弁に対するカム軸を配設し
て、該両カム軸と、前記クランク軸との間に動力
伝達用のタイミングベルトを巻掛けし、更に、前
記両動弁機構室の底部に、前記カム軸及びロツカ
アーム等の動弁機構に対して潤滑油をはねかけ潤
滑するための潤滑油溜室を設ける構成にした。

〔考案の作用・効果〕

このように、前記クランクケースに、気化器か
らの吸気通路を、クランクケースへの方向にのみ
開くようにした逆止弁を介して接続し、クランク
ケースと、前記両気筒における吸気ポートとを吸
気導管を介して各々接続すると、両気筒における
ピストンが互いに離れる方向に移動するとき、ク
ランクケース内には、気化器からの混合気が逆止
弁付き吸気通路を介して吸入され、次に両気筒に
おけるピストンが互いに接近動するときにおい
て、前記クランクケース内における混合気が、前
記逆止弁の閉により圧縮されて、両気筒における
吸気ポートに吸気導路を介して交互に送られるか
ら、気化器からの吸気通路を、前記先行技術のよ
うに二股に分岐して両気筒におけるシリンダボア
の中程部に各ピストンによつて開閉するように接
続することなく、両気筒に対する過給を行うこと
ができ、換言すると、両気筒の上部に、前記先行
技術のように二股状の吸気通路を配設することを
省略できるのである。

また、両気筒の頭上部に、動弁機構室を各々形
成し、該両動弁機構室内に前記吸気弁及び排気弁
に対するカム軸を配設して、該両カム軸と、前記
クランク軸との間に動弁伝達用のタイミングベル
トを巻掛けする一方、前記両動弁機構室の底部
に、前記カム軸及びロツカアーム等の動弁機構に
対して潤滑油をはねかけ潤滑するための潤滑油溜
室を設ける構成にしたことにより、クランクケー
スの下部に、前記先行技術のように、カム軸と、
潤滑油室とを設けることを回避することができる
のである。

従つて本考案によると、両気筒に対して過給を
行うことができると共に、両気筒における動弁機
構を確実に潤滑できるものでありながら、内燃機
関における高さ寸法を、前記先行技術のものより
も遥かに低くすることができるから、前部の形状
を側面視においてくさび状にノーズダウンしたエ
ンジンルームに対して搭載することが容易にでき
るのであり、しかも、クランクケースの構造が簡
単になり、その鋳造性を向上できる一方、両気筒
に動弁機構に対する潤滑手段も可成り簡単になる
から、内燃機関の製造コストも大幅に低減できる
効果を有する。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図面について説明する
と、図において符号１，２は、一本の水平のクラ
ンク軸３に対して水平対向型に配設した気筒を示
し、該両気筒１，２におけるシリンダブロツク
４，５は、前記クランク軸３を収容したクランク
ケース６において一体的に接合され、両シリンダ
ブロツク４，５の外端部には、各々吸気弁１１，
１２付き吸気ポート９，１０と排気弁付き排気ポ
ート（図示せず）を有するシリンダヘツド７，８
が各々接合されており、両気筒１，２におけるピ
ストン１３，１４を、前記クランク軸３において
180゜位相をずらせて設けたクランクピン１５，１
６に各々コネクチングロツド１７，１８を介して
連結して、両気筒１，２におけるピストン１３，
１４が互いに接近したのち互いに離れるように往
復動するように構成する。

前記クランクケース６に気化器１９から吸気通
路２０を、クランクケース６への方向にのみ開く
ようにした逆止弁２１を介して接続し、クランク
ケース６内と前記両気筒１，２の吸気ポート９，
１０とを吸気導管２２，２３を介して各々接続す
る。

前記両気筒１，２におけるシリンダヘツド７，
８には、その頭上部に動弁機構室２４，２５を
各々形成し、該両動弁機構室２４，２５内にカム
軸２６，２７及びロツカアーム２８，２９等の動
弁機構を設け、両カム軸２６，２７を、その軸端
に嵌着のプーリ３０，３１と、前記クランク軸３
の軸端に嵌着のプーリ３２，３３との間に巻掛け
したタイミングベルト３４，３５にてクランク軸
３にて連動して回転することにより、両気筒１，
２における吸気弁１１，１２及び排気弁を開閉す
るように構成する。このとき、左側の気筒１が爆
発行程のとき、右側の気筒２が吸気行程となるよ
うに行程位相を360゜ずらせる。

そして、前記両気筒１，２における動弁機構室
２４，２５の底部を、潤滑油溜室３６，３７に形
成し、この潤滑油溜室３６，３７内に溜めた潤滑
油に、前記カム軸２６，２７の下面の一部を浸漬
するように構成して成るものである。

なお、図中符号３８，３９は、前記潤滑油溜室
３６，３７に潤滑油を供給するためのオイルフイ
ラー、４０は冷却水ポンプ、４１はオルタネータ
を各々示し、また、前記クランク軸６、クランク
ピン１５，１６及びピストン１３，１４は、前記
気化器９からの供給燃料に混合した潤滑油による
いわゆる混合潤滑方式で潤滑される。

この構成において、左側の気筒１が気筒行程の
とき右側の気筒２は、圧縮行程で両気筒のピスト
ン１３，１４は互いに離れるようにして、クラン
クケース６の内容積が増大するから、クランクケ
ース６内には、気化器１９からの混合気が逆止弁
２１を介して吸入され、次に左側の気筒１が吸気
行程で、右側の気筒２が爆発行程のとき、両気筒
１，２のピストン１３，１４が互いに接近するよ
うに連動してクランクケース６の内容積が縮小す
ることにより、先にクランクケース６内に吸い込
まれた混合気は逆止弁２１の閉にて気化器１９側
に逆流することなく圧縮され、吸気導管２２を介
して左側の気筒１に圧送される。また、左側の気
筒１が圧縮行程で右側の気筒２が排気行程のと
き、クランクケース６内に混合気を吸入し、次い
で左側の気筒１が爆発行程で右側の気筒２が吸気
行程のとき、クランクケース内において圧縮した
混合気を右側の気筒２に圧送する作用を繰り返す
のであり、この場合、クランクケース６の内容積
の増加量は、一つの気筒における行程容積の二倍
で、これと略同じ量の混合気を吸い込んだのち、
これを一つの気筒に圧送するから、両気筒に対し
て過給を行うことができるのである。

そして、両気筒１，２の頭上部に動弁機構室２
４，２５を形成し、該両動弁機構室２４，２５内
に吸気弁１１，１２及び排気弁を開閉するための
カム軸２６，２７及びロツカアーム２８，２９等
の動弁機構を設ける一方、両動弁機構室２４，２
５の底部に潤滑油溜室３６，３７を各々形成し、
この潤滑油溜室３６，３７内に溜めた潤滑油に前
記カム軸２６，２７の下面の一部を浸漬するよう
に構成したから、両気筒１，２における動弁機構
は、潤滑油溜３６，３７内の潤滑油にて、いわゆ
るはねかけ方式によつて、クランク軸３及び両ピ
ン１３，１４に対する潤滑とは無関係に潤滑され
ることになる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示し、第１図は縦断正
面図、第２図は第１図は一部切欠平面図である。 １，２……気筒、３……クランク軸、６……ク
ランクケース、９，１０……吸気ポート、１１，
１２……吸気弁、２４，２５……動弁機構室、２
６，２７……カム軸、２８，２９……ロツカアー
ム、３４，３５……タイミングベルト、３６，３
７……潤滑油溜室。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クランクケース内の一本のクランク軸に対して
   左右一対の気筒を水平対向型に配設し、該両気筒
   の頭上部に、吸気ポートに対する吸気弁及び排気
   ポートに対する排気弁を各々設けて成る水平対向
   型内燃機関において、前記クランクケースに、気
   化器からの吸気通路を、クランクケースへの方向
   にのみ開くようにした逆止弁を介して接続し、ク
   ランクケースと、前記両気筒における吸気ポート
   とを吸気導管を介して各々接続する一方、前記両
   気筒の頭上部に、動弁機構室を各々形成し、該両
   動弁機構室内に前記吸気弁及び排気弁に対するカ
   ム軸を配設して、該両カム軸と、前記クランク軸
   との間に動力伝達用のタイミングベルトを巻掛け
   し、更に、前記両動弁機構室の底部に、前記カム
   軸及びロツカアーム等の動弁機構に対して潤滑油
   をはねかけ潤滑するための潤滑油溜室を設けたこ
   とを特徴とする過給式水平対向型内燃機関。