JPH0220403Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、ロータリピストンエンジンのアペツ
クスシールやサイドシール等のシール装置に関す
るものである。

（従来技術） 第１図に示すように、ロータ１がケーシング２
の内部を偏心軸３の廻りで遊星回転運動して、順
次に吸入、圧縮、爆発、膨張、排気の行程を繰返
すロータリピストンエンジンにおいては、圧力が
異なる各作動室４，４…を相互にシールするた
め、ロータ１の頂辺部にはアペツクスシール５，
５，…がコーナシール６，６，…とともに装着さ
れ、また、ロータ１の側面には、ロータフランク
に沿つたサイドシール７，７，…が装着されてい
る（例えば実開昭51−23604号公報参照）。

上記アペツクスシール５やサイドシール７はよ
く知られているように、シール溝の底部に板バネ
を装着し、この板バネによつてシール部材をバツ
クアツプして、常時シール部材をケーシング内面
に摺接させる基本構造を有している。

かかるシール装置の構造では、シール溝の側壁
とシール部材側面との間の間隙を通つてシール溝
底部に未燃焼のガスが侵入すると、このガスは未
燃焼のままシール溝底部に閉じ込められた状態で
排気行程に持込まれ、排気行程に至つて外側の圧
力が低下するとシール溝底部から流出し、排気ガ
スとして排気通路に排気され、排気ガス中の未燃
焼成分を増大させるといつた問題がある。

（考案の目的） 本考案は、したがつて、シール性を損なうこと
なしに、未燃焼ガスが侵入して溜まるシール溝底
部の隙間容積を可能な限り減少することができる
ロータリピストンエンジンのシール装置を提供せ
んとするものである。

（考案の構成） 本考案は、このため、シール部材をバツクアツ
プする板バネの機能を損うことなく、板バネと協
同する弾性体を用いてシール溝底部の空間を塞ぐ
ようにしたものである。

即ち、板バネと協同する弾性体は、プレート状
であつて所定の間隔をおいてその巾方向にスリツ
トが形成されており、このスリツトに湾曲した板
バネを嵌合した状態でシール溝底部に嵌装され
る。この嵌装状態で、板バネの一側面はシール溝
の一側壁に当接し、板バネの一側面とは反対側の
弾性体の一側面はシール溝の他側壁に当接するよ
うになつており、シール溝底部の大部分は弾性体
で占められることとなる。

一方、シール溝内に嵌合されるシール部材と弾
性体との間には、板バネによつて所定のクリアラ
ンスを確保するようにし、このクリアランスにガ
ス圧を導入して、このガス圧でシール部材をケー
シング内面に圧接させる。

（考案の効果） 本考案によれば、シール溝底部の隙間容積が大
幅に低減され、未燃焼ガスがシール溝底部に持込
まれないので、それだけ排気ガス中の未燃焼成分
を減少させることができ、排気ガス中のHCやCO
を低減させることができる。

また、シール部材と弾性体との間にはクリアラ
ンスが確保されているので、ガス圧をこのクリア
ランスに導入することができ、シール部材はガス
圧によつてケーシング内面に圧接されるのでシー
ル性が損なわれることはない。

（実施例） 以下、本考案の実施例をより具体的に説明す
る。

第２図および第３図に示すように、ロータ１の
頂辺部に設けられたアペツクスシール溝１０の底
部には、アペツクスシール本体１１をバツクアツ
プする円弧状の板バネ１２とともにプレート状の
シールラバー１３が嵌合され、アペツクスシール
本体１１は、板バネ１２の両端１２ａ，１２ａに
当接した状態にバツクアツプされ、ケーシング２
のトロコイド内周面２ａに摺接されている。な
お、アペツクスシール本体１１の底面とシールラ
バー１３の上面との間に板バネ１２によつて確保
されるクリアランスｃは、これにガス圧を導入し
てアペツクスシール本体１１をトロコイド内周面
２ａに圧接させるためのものである。

上記シールラバー１３には、第４図に示すよう
に、板バネ１２の円弧形状とほぼ同一形状で板バ
ネ１２の厚みにほぼ等しいスリツト幅を有するス
リツト１４がシールラバー１３の一方の側面１３
ａから幅方向に切込まれており、スリツト１４の
シールラバー１３の長手方向の長さは、第５図に
示すように、板バネ１２をスリツト１４に嵌合し
た状態で、板バネ１２の両端部１２ａ，１２ａが
シールラバー１３の上方に適当に突出するように
設定されている。

また、第６図に示すように、板バネ１２とシ
ールラバー１３とをアペツクスシール溝１０内に
嵌合する以前の状態にあつては、板バネ１２の突
出側の側面１２ｂと、シールラバー１３の上記板
バネ１２の側面１２ｂとは反対側の側面１３ｂと
の間の幅W₂がアペツクスシール溝１０の溝幅W₁
に比して若干大きくなるようにスリツト１４の切
込み幅を設定している。そして、第６図に示す
ように、板バネ１２とシールラバー１３をアペツ
クスシール溝１０内に嵌装した状態では、板バネ
１２の上記突出側の側面１２ｂがアペツクスシー
ル溝１０の一方の側壁１０ａに当接し、シールラ
バー１３の上記反対側の側面１３ｂがアペツクス
シール溝１０の他方の側壁１０ｂに圧縮状態で当
接し、したがつて、アペツクスシール溝１０の底
部はシールラバー１３によつて間隙なしに補填さ
れるようになつている。

また、本考案をサイドシール（第１図７参照）
に適用する場合には、第７図に示すように、スリ
ツト１５，１５，…を幅方向に規則的に切込んだ
長尺のシールラバー１６を用意し、第８図に示す
ように、このシールラバー１６にサイドシール本
体１７をバツクアツプする波形状の板バネ１８を
嵌合したうえで、第９図に示すように、ロータ１
の側面に設けたサイドシール溝１９内に嵌装する
ようにすればよい。

なお、シールラバー１６に板バネ１８を単に嵌
合した状態での幅は、サイドシール溝１９の溝幅
より大きくなるように設定することはアペツクス
シールの場合と同様である。

以上の構成とすれば、アペツクスシール溝１
０、或いはサイドシール溝１９の底部は、板バネ
１２，１８とともに嵌装されるシールラバー１
３，１６によつて実質的に占有され、未燃焼ガス
が侵入する空間を大幅に減少することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はロータリピストンエンジンの縦断面方
向の説明図、第２図は本考案の実施例にかかるア
ペツクスシール装置の縦断面図、第３図は同じく
正面図、第４図、第５図は板バネとシールラバー
とを示す各斜視図で第４図は嵌合前の状態を第５
図は嵌合後の状態を夫々示し、第６図，は板
バネとシールラバーをアペツクスシール溝に嵌装
する前後の状態を夫々示す説明図、第７図は本考
案をサイドシール装置に適用した場合のシールラ
バーを示す斜視図、第８図は上記サイドシールの
組付状態を示す側面図、第９図はサイドシール溝
への組込状態を示す断面図である。 １……ロータ、２……ケーシング、１０……ア
ペツクスシール溝、１１……アペツクスシール本
体、１２……板バネ、１３……シールラバー、１
４……スリツト、１５……スリツト、１６……シ
ールラバー、１７……サイドシール本体、１８…
…板バネ、１９……サイドシール溝。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 ロータに形成されたシール溝内に装着されたシ
   ール部材をシール溝内に設けた弾性手段によりケ
   ーシング内面に摺動自在に圧接するようにしたロ
   ータリピストンエンジンのシール装置において、 プレート状の弾性体に所定間隔をおいてその幅
   方向にスリツトを形成し、このスリツトに湾曲し
   た板バネを嵌合し、板バネの一側面をシール溝の
   一側壁に当接させる一方、この板バネの一側面と
   反対側の弾性体の一側面をシール溝の他側壁に当
   接させるように、上記弾性体と板バネとをシール
   溝底部に嵌合する一方、シール溝に嵌合されるシ
   ール部材を上記板バネの両端で支持してシール部
   材と上記弾性体との間にクリアランスを確保し、
   該クリアランスにガス圧を導入してシール部材を
   付勢するようにしたことを特徴とするロータリピ
   ストンエンジンのシール装置。