JPH0213682Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、複数の気筒が配設された多気筒エン
ジンの各気筒あたりに対して吸気弁および排気弁
の少なくとも一方を複数配設し、上記複数配設さ
れる弁を単一のカムシヤフトにそれぞれ設けた複
数のカムによつて開閉してなる多弁式内燃機関に
おいて、上記カムシヤフトをシリンダヘツドに保
持するカムシヤフト保持装置に関する。

（従来の技術） 内燃機関においては、コンパクト化と機能の向
上をはかるために、吸気弁と排気弁との間で形成
される挟角をなるべく小さく設定することが望ま
れている。

つまり、この挟角を小さく設定すると、燃焼室
内の容積がコンパクト化できて、圧縮比を高める
ことができるとともに、燃焼効率を向上させるこ
とができるからである。

そこで、このような挟角を小さく設定するため
には、吸気弁を開閉制御する吸気用カムシヤフト
と排気弁を開閉制御する排気用カムシヤフトとの
対向間隔を狭めてやることが必要となるが、この
場合、その対向間隔を単に狭めると、それらのカ
ムシヤフトをシリンダヘツドに保持するカムキヤ
ツプがシリンダヘツド取付けボルトに近接して干
渉してしまうことになる。

かかることから、このような不都合を招かない
ように、先行技術として、例えば実公昭53−643
号公報のものがある。

このものは、第１図に示すように、吸気用カム
シヤフトａおよび吸気用カムシヤフトｂをそれぞ
れシリンダヘツド取付けボルトｃ…の上面よりも
上方に配し、かつこれら吸気用カムシヤフトａの
カムa₁，a₂間と吸気用カムシヤフトｂのカムb₁，
b₂間にそれぞれカムキヤツプｄ…を配設して、こ
のカムキヤツプｄ…で上記吸気用カムシヤフトａ
および吸気用カムシヤフトｂをそれぞれ保持する
というものである。

しかるに、このようなものでは、確かに吸気用
および吸気用カムシヤフトａ，ｂをそれぞれシリ
ンダヘツドに保持するカムキヤツプｄ…とシリン
ダヘツド取付けボルトｃ…との干渉は避けられる
が、反面、カムキヤツプｄ…を隣接したごく狭い
吸気用カムa₁，a₂間との排気用カムb₁，b₂間にそ
れぞれ配設するものであるから、そのカムキヤツ
プｄ…ではどうしても上記吸気用および排気用カ
ムシヤフトａ，ｂの上下方向の摺動に対する保持
力が不足ぎみになつてしまう不都合がある。すな
わち、隣接した狭い吸気用カムa₁，a₂と狭い排気
用カムb₁，b₂間にカムキヤツプｄ…を配設するも
のだと、そのカムキヤツプｄ…は、吸気用および
排気用カムシヤフトａ，ｂの軸線方向と直交する
片側に１点とその反対側に１点の締付け部d₁，d₂
を有するものしか実質的に使用できないこととな
り、この場合、吸気用および排気用カムシヤフト
ａ，ｂには、その吸気用カムa₁，a₂および排気用
カムb₁，b₂がそれぞれバルブリフタを介してバル
ブスプリングを押圧した場合にはその反発力が上
記吸気用および排気用カムシヤフトａ，ｂに強く
作用することになるから、単なる片側１点と反対
側１点の締付け部d₁，d₂を有するカムキヤツプ
ｄ，ｄではかなり上記吸気用および排気用カムシ
ヤフトの上下方向の揺動に対する締付け剛性が不
足してしまうのである。

しかも、このように狭い吸気用カムa₁，a₂間と
狭い排気用カムb₁，b₂間にカムキヤツプｄを配設
するものだと、このカムキヤツプｄは幅狭なもの
しか使用できないことになるから、そのカムキヤ
ツプｄのジヤーナル部も幅狭なものとなり、それ
故エンジンの性能面、すらわち上記ジヤ−ナル部
の摩耗等においても著しい悪影響をもたらすこと
になる。

すなわち、このカムキヤツプｄのジヤ−ナル部
にはかなりの面圧等が作用することになるから、
該ジヤ−ナル部が損傷されないように、バルブス
プリングにおいてそのばね定数、その部材自体の
径寸法およびその巻き径を適宜設定してやること
が必要となるが、この場合、上記ジヤ−ナル部が
幅狭だと、上記バルブスプリングもそれだけ小さ
なばね定数，径寸法および巻き径を有するものし
か使用できなくなるから、結局このようなバルブ
スプリングでは高回転域において追従できなくな
り、そればかりかそのバルブスプリングの径寸法
や巻き径が小さいために、そのバルブスプリング
自体の部材応力が過大となつて早期のうち交換し
なければならないということになつてしまうから
である。

（考案の日的） 本考案は、このような事情に鑑みてなされたも
ので、その目的とするところは、カムシヤフトの
上下方向の揺動に対する保持力（締付け剛性）を
向上させることができ、しかも上記カムシヤフト
を保持するカムキヤツプはジヤ−ナル部の幅寸法
を何ら制限されることなく十分な幅寸法を確保し
て摩耗等において悪影響のおよばない多弁式内燃
機関のカムシヤフト保持装置を堤供することにあ
る。

（考案の構成） 本考案はかかる目的を達成するために、カムシ
ヤフトを各気筒の配列方向に沿つて各気筒外側の
シリンダヘツド上に配設し、上記カムシヤフトと
各気筒との間で、隣接する気筒間に対応させた位
置に、シリンダヘツドをシリンダブロツクに取付
ける締付部材を設け、隣接する気筒間に対応させ
た位置に、上記カムシヤフトをシリンダヘツドに
回転自在に保持するカムキヤツプを設け、上記カ
ムキヤツプは、カムシヤフトの軸線方向と直交す
る気筒間側に、各気筒の配列方向における締付部
材の両側部まで伸び該締付部材の周囲を囲んで略
Ｕ字状に形成された２点の締付け部を有すると共
に、その反対側に少なくとも１点の締付け部を有
し、上記各締付け部は締付部材でシリンダヘツド
に取付けられたものである。

（考案の効果） したがつて、本考案の多弁式内燃機関のカムシ
ヤフト保持装置であれば、シリンダヘツドをシリ
ンダブロツクに取付ける締付部材を、カムシヤフ
トと各気筒との間で隣接する気筒間に設けること
により、締付部材の取付け位置を各気筒に近づけ
て設けることができるので、シリンダヘツドとシ
リンダブロツクとの合せ部のシ−ル面圧を高め
て、シ−ル性を向上できる。

またカムキヤツプを隣接する気筒間に対応させ
た位置に設けることにより、カムキヤツプのジヤ
−ナル部の幅寸法の制限をうけることなく、十分
な幅寸法を確保したジヤ−ナル部を有するカムキ
ヤツプを使用して、カムシヤフトを保持できる。

さらに、カムキヤツプは、カムシヤフトの軸線
方向と直交する気筒間側に、各気筒の配列方向に
おける締付部材の両側まで伸び該締付部材の周囲
を囲んで略Ｕ字状に形成された２点の締付部を有
するとともに、その反対側に少なくとも１点の締
付部を有し、各締付部を締付部材でシリンダヘツ
ドに取付けているから、カムキヤツプと締付部材
との干渉を防止しつつ、カムキヤツプの締付剛性
を大幅に増大させることができる。

（実施例） 以下、本考案に係る一実施例を第２図および第
３図を参照して説明する。

図中１，１はシリンダブロツク（図示せず）に
複数配置された気筒、２は上記シリンダブロツク
の上面に締付部材３，３によつて取付けられたシ
リンダヘツドであつて、その上面両サイドの上記
気筒１，１間における中央部には、それぞれ半円
形のジヤ−ナル部４ａを有した左，右台座４，５
が一体的に突設されている。

６は上記左台座４のジヤ−ナル部４ａに載置し
た排気用カムシヤフト、７は上記右台座５のジヤ
−ナル部に載置した吸気用カムシヤフトであつ
て、これら排気用および吸気用カムシヤフト６，
７には、それぞれ１気筒あたりに対して２個づづ
の排気用カム８，８および吸気用カム９，９が一
体に形成されている。つまり、カムシヤフト６，
７を各気筒１，１の配列方向に沿つて各気筒１，
１の外側のシリンダヘツド２上に配設し、また締
付部材３，３をカムシヤフト６，７と各気筒１，
１との間で隣接する気筒１，１間に対応させた位
置に設けた構成としている。

１０，１０は上記左，右台座４，５にそれぞれ
載置した排気用カムシヤフト６および吸気用カム
シヤフト７を該左，右台座４，５に、つまりシリ
ンダヘツド２に保持するカムキヤツプである。

このカムキヤツプ１０は、上記排気用カムシヤ
フト６の軸線方向に直交する片側つまり気筒側に
上記締付部材３の両側部まで伸び、該締付部材３
との干渉を避けるために、締付部材３の周囲を囲
んで、略Ｕ字状に開口した開口部１０ａと、その
開口部１０ａの両側に２点の締付け部１０ｂ，１
０ｂと、さらに上記片側とは反対側１点の締付け
部１０ｃとを有する平面視Ｙ字形のもので、その
内面には上記排気用カムシヤフト６の上半部外周
面を被嵌する半円形のジヤ−ナル部１０ｄが形成
されている。

このカムキヤツプ１０による上記左台座４に載
置された排気用カムシヤフト６の保持は、第１図
および第２図に示すように、そのカムキヤツプ１
０の内方側締付け部１０ｂ，１０ｂの２点をそれ
ぞれ左台座４の内方側端部に締付部材１１により
締付けるとともに、外方側締付け部１０ｃの１点
を左台座４の外方側端部に締付部材１２により締
付けることにより行なわれている。これにより、
上記カムキヤツプ１０のジヤ−ナル部１０ｄと上
記左台座４のジヤ−ナル部４ａとによつて上記排
気用カムシヤフト６を回転自在に保持している。

なお、吸気用カムシヤフト７においても、上記
排気用カムシヤフト６のカムキヤツプ１０と同じ
もので保持しているから、図面中に同一符号を付
して説明を省略することにする。

このように保持された排気用カムシヤフト６お
よび吸気用カムシヤフト７を有するシリンダヘツ
ド２は、上記カムキヤツプ１０，１０の開口部１
０ａ，１０ａ上方から各々挿入した締付部材３…
によつてシリンダブロツク上面に取付けられるこ
ととなる。

なお、１３，１４は隣接する２個の排気用カム
８，８と吸気用カム９，９に対してそれらの直下
に位置するようにシリンダヘツド２にそれぞれ穿
設した排気用開口部と吸気用開口部、１５は上記
吸気用開口部１４，１４の上部内で上下に摺動す
る吸気用バルブリフタ、１６は上記吸気用バルブ
リフタ１５，１５の上板内面に当接する吸気弁
（図示せず）のバルブステムである。

また、１８は上記吸気用カム９，９が回転して
吸気用バルブリフタ１５，１５を下方に押圧した
場合に該吸気用バルブリフタ１５，１５を上記吸
気用カム９，９方向へ押圧付勢する吸気用バルブ
スプリング、２０は上記吸気用バルブスプリング
１８，１８の上面を支持するリテ−ナ、２２は上
記吸気用リテ−ナ２０，２０と上記吸気用バルブ
ステム１６，１６とを固定するコツタである。

さらに、２３は点火プラグ、２４は吸気用カム
シヤフト６側を覆うヘツドカバ−、２５は吸気用
カムシヤフト７側を覆うヘツドカバ−である。

このような構成であれば、排気用カムシヤフト
６および吸気用カムシヤフト７は、それぞれこれ
らのカムシヤフト６，７の軸線方向に直交する片
側に２点とその反対側に１点の締付け部１０ｂ，
１０ｂ，１０ｃを有するカムキヤツプ１０でシリ
ンダヘツド２に保持されているから、従来の片側
に１点とその反対側に１点の締付け部d₁，d₂を有
するカムキヤツプｄの保持よりもカムシヤフトの
上下方向の揺動に対する締付け剛性が増大し、排
気用カムシヤフト６および吸気用カムシヤフト７
の上下方向に揺動に対する保持力と向上させるこ
とができる。

しかも、上記カムキヤツプ１０による排気用お
よび吸気用カムシヤフト６，７の保持は、気筒
１，１間における位置の上記カムシヤフト６，７
部らで行なつているので、従来の排気用カムb₁，
b₂間および吸気用カムa₁，a₂間で行なう場合のよ
うなスペ−ス的な制約をなく、十分な幅寸法のジ
ヤ−ナル部１０ｄをもつカムキヤツプ１０で上記
排気用および吸気用カムシヤフト６，７を保持す
ることができる。その結果、従来のような十分な
幅寸法のジヤ−ナル部をもたないカムキヤツプｄ
で上記排気用および吸気用カムシヤフトを保持し
た場合のエンジンの性能面等に与える悪影響も有
効に防止することができる。

また、上記カムキヤツプ１０では、締付部材３
との干渉を避ける開口部１０ａが形成されている
ので、排気用カムシヤフト６と吸気用カムシヤフ
ト７を上記締付部材３，３の取付け位置まで近接
させても、該カムシヤフト１０は締付部材３，３
に干渉するようなことがなく、そのために排気用
カムシヤフト６と吸気用カムシヤフト７との間で
形成される狭角θも小さく設定できて燃焼室内を
コンパクトにすることができる。さらにこのカム
キヤツプ１０では、排気用カムシヤフト６および
吸気用カムシヤフト７を保持した状態でも、その
カムキヤツプ１０の開口部１０ａから上記締付部
材３を挿入したり、外したりすることができるか
ら、シリンダヘツド２をシリンダブロツクにボル
ト止めする作業が非常に楽になるとともに、締付
部材３をカムシヤフト６，７と各気筒１，１との
間で隣接する気筒１，１間に対応させた位置に設
けているので、締付部材３の取付位置を各気筒
１，１に近づけて設けることができるから、シリ
ンダヘツド２とシリンダブロツクとの合せ部のシ
−ル面圧を高めて、シ−ル性を向上させることが
できる。また、あとから整備点検のために締付部
材３を外したり、増し締めしたりする場合などに
も非常に容易に行なうことができる。

なお、前記実施例では、カムキヤツプ１０を片
側に２点とその反対側に１点の締付部１０ｂ，１
０ｂ，１０ｃを有する平面視Ｙ字形のものとした
が、本考案は必ずしもこのようなものに限られな
いのは勿論であり、例えば片側に２点とその反対
側に２点の締付け部を有する平面視Ｘ字形、或い
は片側に２点の締付け部を有するように平面視Ｖ
字形に形成するとともにその反対側は複数の締付
け部を有するように幅広の矩形形状にしてなるカ
ムキヤツプであつてもよい。

また、本実施例では一気筒あたりに吸気弁およ
び排気弁をぞれぞれ複数配設したものを示した
が、本考案はこれに限定されるものではなく、吸
気弁および排気弁の一方を一気筒あたりに複数配
設したものにも適用し得る。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来例を示す平面図、第２図および第
３図は本考案に係る一実施例を示すもので、第２
図は平面図、第３図は第２図の−線に沿う縦
断側面図である。 １……気筒、２……シリンダヘツド、３……締
付部材、６……排気用カムシヤフト、７……吸気
用カムシヤフト、８……排気用カム、９……吸気
用カム、１０……カムキヤツプ、１０ｂ，１０ｂ
……カムキヤツプの片側の２点の締付け部、１０
ｃ……カムキヤツプの反対側１点の締付け部、１
１，１２……締付部材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 複数の気筒が配設された多気筒エンジンの各気
   筒あたりに対して吸気弁および排気弁の少なくと
   も一方を複数配設し、上記複数配設される弁を単
   一のカムシヤフトにそれぞれ設けた複数のカムに
   よつて開閉してなる多弁式内燃機関において、上
   記カムシヤフトを各気筒の配列方向に沿つて各気
   筒外側のシリンダヘツド上に配設し、上記カムシ
   ヤフトと各気筒との間で、隣接する気筒間に対応
   させた位置に、シリンダヘツドをシリンダブロツ
   クに取付ける締付部材を設け、隣接する気筒間に
   対応させた位置に、上記カムシヤフトをシリンダ
   ヘツドに回転自在に保持するカムキヤツプを設
   け、上記カムキヤツプは、カムシヤフトの軸線方
   向と直交する気筒間側に、各気筒の配列方向にお
   ける締付部材の両側部まで伸び該締付部材の周囲
   を囲んで略Ｕ字状に形成された２点の締付け部を
   有すると共に、その反対側に少なくとも１点の締
   付け部を有し、上記各締付け部は締付部材でシリ
   ンダヘツドに取付けられてなることを特徴とする
   多弁式内燃機関のカムシヤフト保持装置。