JPH0128141B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、薄くてドレープ性及び保温力に優れ
た繊維シート状物からなる衣料用保温材に関する
ものである。

従来衣料用保温材として天然の羽毛、或は天然
繊維ないし合成繊維からなる、いわゆる中入れ綿
や中入れ綿を布帛とともに縫製したキルテング材
が知られている。しかしながら、これらの中入れ
保温材は、保温効果を高めるためには保温材の厚
さを大きくするか、密度を大きくする必要があ
り、その結果衣料として用いた場合、嵩ばつてぶ
かぶかになり、ドレープ性を失つたり或は身体の
活動しやすさが低下するなどの欠点があつた。こ
の様な欠点を改良するものとして、例えば極細デ
ニールの繊維を不織積層したシート状保温材が提
案されているが、着用時の嵩高性に劣り保温性が
充分でなく、また圧縮回復性が低いため長期間の
着用によりへたつて嵩減りし、保温性及びドレー
プ性をともに失なうなどの欠点があり、充分なも
のであるとは言い難かつた。

本発明の目的は、このような従来の問題点を解
決し、側地の有する風合、外観を保持し、着用時
のシルエツト効果及び身体の活動しやすさに優れ
た薄くて保温力の高い繊維シートを提供すること
にある。又、本発明の他の目的はへたりによる嵩
の減少によつて保温性及びドレープ性の低下を起
すことのない、良好な圧縮回復性をそなえる繊維
シートを提供することにある。

すなわち本発明の要旨とするところは、互いに
接着性の乏しい２種の熱可塑性重合体成分にて構
成され、繊維横断面において一方の成分が他方の
成分により繊維長手方向に連続する複数の層に分
離されている分割型複合繊維のステープルフアイ
バーからなるウエブ状シートであつて、少なくと
も一部が分割フイブリル化された前記ステープル
フアイバーと、未分割の前記ステープルフアイバ
ーとが混在していることを特徴とする衣料用保温
材にある。

本発明を更に具体的に説明すると、本発明に於
ける互いに接着性の乏しい２種類の熱可塑性重合
体成分の組合せとは、例えばサイドバイサイド関
係に複合紡糸延伸したとき容易に２成分間に剥離
を生じるもの、或は緊張、圧縮、又は加熱による
収縮などの物理的力により容易に剥離するような
ものを言う。このような組合せの例としてはポリ
エステルとポリオレフイン、ポリエステルとポリ
アミド等がよく知られているが、へたりによる嵩
の減少を防ぎ良好な圧縮回復性を有する繊維シー
トを得るためには２種類の熱可塑性重合体成分の
うちの一方の成分はエチレンテレフタレート単位
を80モル％以上含むポリエステルであること、及
び複合繊維に占める該ポリエステルの比率が50〜
90重量％であることが好ましい。又、本発明にお
ける分割型複合繊維の横断面の具体例は第１図〜
第５図に示す通りである。

かかる分割型複合繊維を複合紡糸法によつて製
造する方法は、特公昭39−29636号公報、特開昭
50−5650号公報等で公知であり、この方法によれ
ば分割によつて細デニールのフイブリル状繊維が
容易に形成され得ることが示唆されている。

本発明に於ける分割前の単繊維のデニールの範
囲及び分割フイブリル化によつて形成されるフイ
ブリル状繊維のデニールの範囲は、優れた保温性
と良好な嵩高性、圧縮回復性、ドレープ性を付与
するために極めて重要である。未分割の単繊維デ
ニールは３〜10デニール、分割フイブリル化によ
つて形成されるフイブリル状繊維のデニールは
0.1〜２デニールであることが好ましく、かつ少
なくとも10重量％以上の単繊維が完全に、或は一
部分割されていることが必要である。単繊維の分
割フイブリル化が中途でとどまり、完全にばらば
らにならない場合には未分割の太デニール単繊維
と完全な分割フイブリル化によつて形成される細
デニールフイブリル状繊維の中間に数種の異なつ
たデニールの繊維が存在することになるが、本発
明の目的を達成するのに何らさしつかえるもので
なく、むしろ好ましいものである。上記のデニー
ル範囲について更に詳しく説明すると完全な分割
フイブリル化の場合に形成される細デニールフイ
ブリル状繊維が0.1デニール未満ではカーデイン
グでネツプを形成し、均一なウエブ状シートを作
るのが難しく、また極細繊維の脱落など取扱いが
困難になる。更に嵩高性、圧縮回復性も低下し、
ひいては保温性も低下する。

一方２デニールを超えるとドレープ性が失なわ
れ、かつ太デニール単繊維の間隙を充填する効果
が低下して繊維間隙の空気移動（通気性）が大き
くなり、保温性の低下を生じる。

分割前の太デニール単繊維が３デニール未満で
は嵩高性や圧縮回復性が低下し、10デニールを超
える場合はドレープ性が失われ通気度が大きいこ
とによる保温性の低下を招いて好ましくない。

本発明に於ける分割型複合繊維の分割セグメン
ト数は上述のデニール範囲を満足するように決め
ればよく、単繊維中の一方の成分のセグメント数
が多いほどフイブリル化の利点が大きいが、実際
にセグメント数をそれほど多くすることは困難で
あり、通常４〜８の場合が繊維の製造が容易であ
る。また個々のセグメントのデニールは同一であ
る必要はなく、本発明の効果を更に上げるため、
例えば第３図の如く、不均等に分割してもよい。

一方の成分Ａを複数個のセグメントに隔てる他
方の成分Ｂの横断面形状についてはＡ，Ｂ両成分
が互いに同じ数の複数個のセグメントに分割しあ
う第１図の如き形状、あるいはＡ成分のみ複数個
のセグメントに分割され、Ｂ成分は１個のセグメ
ントとして残る第２図の如き形状のいずれであつ
ても、本発明の目的は達成される。

分割型複合繊維のステープルフアイバーは常法
に従い、複合紡糸した未延伸糸を集束して延伸
後、機械捲縮を付与し、有限繊維長に切断して得
ることができる。

本発明の衣料用保温材では洗濯、アイロンがけ
等による側地のしわの発生を避けるために、あら
かじめステープルフアイバーを湿熱又は乾熱など
適当な方法で熱処理して沸水面積収縮率を20％以
下にしておくのが好ましいが、この熱処理はまた
２種の成分の接触面に熱収縮差によるバイメテタ
ル的ひずみをもたらし、開繊による該分割型複合
繊維の分割フイブリル化も促進する効果を奏す
る。

このステープルフアイバーは繊維長が15〜80
mm、捲縮数が2.5〜15ケ／inchの範囲が好ましい。
繊維長が15mm未満ではカーデイングによる分割フ
イブリル化が充分でなく、また得られるウエブが
綿切れして取扱いが著しく不良となる。逆に繊維
長が80mmを超えると、カーデイングで分割フイブ
リル状繊維が切断されたり、或はネツプを生じる
等、工程上のトラブルを招来し、均一なウエブを
得ることが難しい。捲縮数は2.5ケ／inch未満で
は繊維間のからみが弱くなり、圧縮回復性も低下
する。これに反し、15ケ／inchを超えると捲縮が
細かすぎて綿ちぢみし、ドレープ性が低下すると
ともにウエーブにしたときの嵩も小さくなる。

繊維シートの形成はカードウエブ、ランダムウ
エブ、吹込み開繊法など、いずれの方法でもよい
が効果的な分割フイブリル化を行ない、分割前の
太デニール単繊維と分割後の細デニールフイブリ
ル状繊維とを均一に混合し、更に得られるウエブ
の厚みが均一である点などからカーデイングによ
る方法が好ましい。

本発明の目的は高い保温性と嵩高性、圧縮回復
性及びドレープ性の向上にあるが、保温性につい
たは次に示す繊維シート厚さ（cm）当りの熱抵抗
値CLO／cmを意味する。

〔熱抵抗値〕

1CLOの衣服とは気温21℃、湿度50％、気流10
cm／Secの環境で安静椅坐している被検者が快適
でかつ平均皮膚温33℃を維持できるような衣服で
ある。ここで被検者は上記環境条件で50kcal／
m²・hrの熱放散をして、そのうち75％が衣服を通
して放出されているとする。

CLO値は上記の環境と人体の条件から工学単
位に換算され、1CLO＝0.18℃hr・m²／kcalと定
義される。測定はASTM Ｄ−1518−57Tに準じ
て測定した。

本発明の衣料用保温材はシート厚さ（cm）当り
の保温力が従来の天然羽毛、天然繊維或は合成繊
維からなるいわゆる中入れ綿の厚さ（cm）当りの
保温力に比べて約２倍以上高く、少なくとも、
1.8CLO／cmの熱抵抗値を有しており、厚み0.5〜
10mmの薄い繊維シートであつても、充分な保温性
を示すものである。

またドレープ性についてはカンチレバー類似の
方法、即ち、板のはしから布帛とともに縫製した
繊維シートを空間中に突出させたときのたれさが
りの状態を観察して評価することができる。ドレ
ープ性が大きいと衣料用保温材などに用いた場合
に肌そぐい性が向上し、あたたかいという感じを
一層強くさせるとともに身体に密着してすぐれた
シルエツト効果と身体の活動しやすさとを発揮す
る。本発明の繊維シートのドレープ性は従来の中
入れ綿を布帛とともに縫製したキルテイング材に
比べて著しく向上しているが、かかる効果は分割
型複合繊維から形成される細デニールフイブリル
状繊維の混在及び保温性の向上によりもたらされ
たシートの厚さの薄層化に負うところが大きい。

圧縮回復性は下式により示されるが、回復率が
70％未満では繰返し着用により嵩の経時的な減
少、いわゆるへたりが起こり風合も硬くなつて保
温性及びドレープ性をともに失い易い。この圧縮
回復性は繊維集合体を構成する繊維のデニール及
び捲縮に依存しており、70％以上の回復率を付与
するためには少くとも３デニール以上の繊度で
2.5ケ／inch以上の捲縮数を有する繊維の存在が
必要である。

圧縮回復率＝H₀−H₁／H₁×100％ 但し、 H₀：初荷重0.5ｇ／cm²を上にのせたときの試料
の厚さ（cm） H₁：25ｇ／cm²の荷重を24時間かけ除重して10
分後に初荷重0.5ｇ／cm²をのせた時の試料
の厚さ（cm） 又、嵩高性は比容積が20〜200cm³／ｇの範囲に
なるようにするのがよい。この比容積は保温性と
密接な関係があり、この範囲のときに保温性は最
大値をとり、これ以上でも以下でも保温性は低下
する。一定重量目付（ｇ／m²）の場合、保温力が
最大となるのは嵩高性（含気量）と繊維間のすき
まの空気移動（通気性）の関係によるものであ
り、従来の天然繊維、或は合成繊維の中入れ綿の
如く含気量が多すぎると通気性が高く熱の放散が
起り、反対に極細デニールの繊維を不織積層した
シート状保温材の如く含気量が少ないと熱伝導率
の低い空気の絶対量が不足して、いずれも保温力
が低下する。本発明の衣料用保温材は分割型複合
繊維であるステープルフアイバーの少なくとも一
部が分割フイブリル化して形成される細デニール
フイブリル状ステープルフアイバーと未分割の太
デニールステープルフアイバーとが適当に混在す
ることを特徴とするものであるが、かかる構造の
繊維集合体に於いては太デニールステープルフア
イバーが嵩高性（含気量）を確保し、細デニール
フイブリル状ステープルフアイバーが太デニール
ステープルフアイバー間の空隙をうめて、空気移
動（通気性）を抑えるために、太デニールステー
プルフアイバー単独の綿を用いた比容積の大きい
繊維集合体、或は細デニールフイブリル状ステー
プルフアイバー単独を不織積層した比容積の小さ
い繊維集合体に比較して保温性が著しく向上す
る。

かかる構造を有し、上記本発明の要件を満足す
る繊維シートはその片面、又は両面に公知の薄い
不織布や編織物を積層一体化してもよく、このよ
うな他のシート状物の積層によつて繊維間隙の空
気移動が妨げられ、更に高い保温性を有する保温
シートとすることができ、寸法安定性の改良及び
縫製での取扱い性向上を図ることができる。更に
本発明の繊維シートには公知の樹脂コーテイング
による表面加工、或は低融点繊維混用による繊維
間融着接合加工を施して、細デニールフイブリル
状繊維がシートから脱落して、側地へ付着する、
或は側地から綿吹きするなどの性質を改良して取
扱い性を向上させることも可能である。

低融点繊維の混用に代えて、熱可塑性重合体の
うちの一方の成分に、他方の成分の融点より30℃
以上低い融点を有する重合体を用いても同一の効
果を得ることができる。

本発明に於ける繊維シートの取扱い性を向上さ
せる他の方法として開繊して得られたウエブ状シ
ートにパンチングを施こすことも可能である。

以上説明したように、本発明によればその構成
を分割型複合繊維であるステープルフアイバーの
少なくとも一部が分割フイブリル化して形成され
る細デニールフイブリル状ステープルフアイバー
と未分割の太デニールステープルフアイバーとが
適当に混在するように構成したことにより、次の
如き顕著な作用効果を奏するものである。

(イ) 薄くて保温力が高い。

(ロ) 適度な嵩高性があり、かつドレープ性が良好
であるので着用時のシルエツト効果及び身体の
活動しやすさに優れている。

(ハ) 圧縮回復性に優れ、へたりによる嵩の減少、
保温力の低下、ドレープ性の低下がない。

(ニ) 寸法安定性に優れる。

(ホ) シートの厚みが均一で品質的に優れる。

以下、本発明を実施例により更に具体的に説明
する。

実施例 １ 固有粘度0.63（オルソクロロフエノール中、30
℃）のポリエチレンテレフタレート（以下PET
と略称する）を第一成分とし、MI15（ASTM Ｄ
−1238 230℃）のポリプロピレン（以下PPと略
称する）を第二成分とし、２：１（容積比）の割
合で溶融複合紡糸し、1000ｍ／分で巻取つて第１
図と同様の断面を有する分割型複合未延伸糸を得
た。

該未延伸糸をひきそろえて延伸温度80℃で3.5
倍にローラー延伸し、単繊維繊度を４デニールと
したのち、引続き押込み捲縮機にて８ケ／inchの
機械捲縮を付与し、一旦コンテナにトウとして引
き取つた。

このトウをオートクレーブに供給し、130℃の
湿熱にて10分間弛緩熱処理した後、長さ32mmに切
断した。このステープルフアイバーを通常のロー
ラーカードにより開繊すると共に分割フイブリル
化し、この開繊ウエブにパンチングを施しシート
として巻取つた。この繊維シートの性能を以下に
示す。

(イ) 未分割単繊維のデニール 4.2デニール (ロ) 分割によつて形成されるフイブリル繊維のデ
ニール PET：0.8デニール PP：0.25デニール (ハ) 未分割太デニール繊維の割合 70重量％ (ニ) 繊維シートの比容積 50cm³／ｇ (ホ) 繊維シートの厚さ ５mm (ヘ) 圧縮回復性 80％ (ト) 保温性 2.5CLO／cm 実施例 ２ 実施例１で得た繊維シートの片面に目付20ｇ／
m²の短繊維ポリエステル不織布を積層してパンチ
ングした複合品を形成した。この複合品は縫製で
の取扱い性にすぐれ、4.0CLO／cmの熱抵抗値を
示した。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第５図は本発明で使用する分割型複合
繊維の各種例を示す横断面図で、第１図〜第５図
において、Ａ，Ｂは互いに接着性の乏しい２種の
熱可塑性重合体成分である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 互いに接着性の乏しい２種の熱可塑性重合体
   成分にて構成され、繊維横断面において一方の成
   分が他方の成分により繊維長手方向に連続する複
   数の層に分離されている分割型複合繊維のステー
   プルフアイバーからなるウエブ状シートであつ
   て、少なくとも一部が分割フイブリル化された前
   記ステープルフアイバーと、未分割の前記ステー
   プルフアイバーとが均一に混在していることを特
   徴とする衣料用保温材。