JPH0116298B2

JPH0116298B2 -

Info

Publication number: JPH0116298B2
Application number: JP22657682A
Authority: JP
Inventors: Michio Ibuki; Masafumi Nakazawa; Koichi Inotsume
Original assignee: Teikoku Piston Ring Co Ltd
Current assignee: TPR Co Ltd
Priority date: 1982-12-27
Filing date: 1982-12-27
Publication date: 1989-03-23
Also published as: JPS59118859A

Description

【発明の詳細な説明】

この発明は、すぐれた耐摩耗性を有する鉄系焼
結合金で製造された、例えば内燃機関ロツカー・
アーム用チツプの如き摺動部材に関するものであ
る。従来、ロツカー・アームの如き摺動部材はクロ
ム鋼、クロムモリブデン鋼、合金鋳鉄を焼入又は
浸炭焼入、および高周波焼入等によつて摺動面を
硬化させた後、表面処理としてクロムメツキ、リ
ン酸マンガン処理、軟窒化処理等を行い、相手材
との摺動面に耐摩耗性、耐スカツフ性等を附与し
たものを用いていた。また、合金鋳鉄をチル等に
よつて硬化し、所定の表面処理をしたものも上記
摺動部材として使用されていた。上記クロム鋼、
クロムモリブデン鋼、合金鋳鉄等は相手材である
カム材との組合わせに於いて、耐摩耗性、耐スカ
ツフ性、及び耐ピツチング性が不足し、ロツカ
ー・アームに選択する際、適切な組成を選択しに
くいという欠点があつた。さらに、クロムメツキ
を施したものは使用中に摩耗剥離の危険性がある
ので異常摩耗の原因となつていた。現在、内燃機関の軽量化が重要視され、エンジ
ンの軽量化に伴い、ロツカー・アームは鋼や鋳鋼
の代わりに、アルミニウム製ロツカー・アームが
出現し相手カムとの摺動部分のみに耐摩耗性のあ
るチツプ材を鋳ぐるみ固着させる複合ロツカー・
アームが製作されている。更にこのチツプ材を液
相焼結法を利用して製作することも既に公知であ
る。しかしながら単に液相焼結のみによつては耐摩
耗性に優れたロツカー・アーム用チツプ等の摺動
部材を提供することができない。本発明は、重量比で炭素：0.6〜4.0％、クロ
ム：1.0〜5.0％、ニツケル：0.2〜4.0％、モリブ
デン：0.2〜4.0％、及びリン：0.2〜3.0％、を含
有し、残部が鉄及び不可避の不純物からなる焼結
合金マトリツクスに、WC：0.2〜5.0％、NbC：
0.2〜5.0％、の分散相が分散した組織を有する鉄
基焼結合金摺動部材であつて、焼結合金のマトリ
ツクス中にWC，NbCの硬い炭化物粒子が均一に
分散しているため耐摩耗性にすぐれていると同時
にＰ添加により焼結中に液相が発生するため焼結
合金の微細な球形空孔が摺動部材の油だまりとな
り、潤滑能力が向上し、スカツフイングが発生し
難いという特色を兼備する摺動部材である。さら
に焼結合金中のCr及び／又はMoの複合炭化物も
耐摩耗性向上に寄与している。本発明において組成を上記の通りに限定した理
由を以下説明する。 (イ) 炭素炭素成分はFe中に固溶し焼結合金マトリツク
スの硬さを高めると同時に、固溶しない炭素がＰ
と共に低融点化合物を形成して液相を発生させ、
焼結体を緻密化させる作用がある。この焼結合金
マトリツクス中の含有量が0.6％未満ではＣによ
るCr及び／又はMoの複合炭化物の生成が困難で
あると同時に液相量の発生が少なく、焼結体の緻
密化が困難であるので0.6％以上含有させなけれ
ばならない。又、4.0％を超えると液相発生がす
すみ、焼結体の形状がくずれるのでこれを超えて
はならない。炭素の含有量は1.0〜3.5％が好まし
い。 (ロ) クロムクロム成分は、焼結合金マトリツクスに固溶
し、強度を高め、又Ｃ及びMoと反応してCr―
Ｃ，Cr―Ｃ―Mo系複合炭化物を形成し耐摩耗性
を向上させる。その焼結合金マトリツクス中の含
有量が1.0％未満では所望する耐摩耗性を得るこ
とができず、5.0％を超えると炭化物が粗大化し
靭性を低下させる傾向があるので、これを超えて
はならない。クロムの含有量は2.0〜5.0％が好ま
しい。 (ハ) ニツケルニツケルは、焼結合金マトリツクスの強化とと
もに、鉄系圧粉体の焼結を促進し又、焼結体の収
縮に作用して焼結合金中の気孔を減少する効果が
ある。その焼結合金中のニツケル含有量が0.2％
未満では上記の効果が認められず、又4.0％を超
えて含有させてもより一層の向上効果は見られず
経済的でない。ニツケルの含有量は0.5〜3.0％が
好ましい。 (ニ) モリブデンモリブデンは、上述の複合炭化物形成による耐
摩耗性の向上の他に、焼結中に液相を発生しやす
くする作用がある。その焼結合金マトリツクス中
の含有量が0.2％未満では複合炭化物の生成に充
分でなく4.0％を超えると液相発生作用が過大と
なり、焼結体の形状変化を発生しやすくなるため
4.0％を超えて含有させてはならない。モリブデ
ンの含有量は0.5〜3.0％が好ましい。 (ホ) リンリンは、Fe中に固溶し、焼結合金マトリツク
スを強化するとともに固溶しないリンがFe―Ｐ
―Ｃ相析出による耐摩耗性を向上させる効果があ
るが、Fe，Ｃと反応して焼結中に液相を発生さ
せ焼結体の緻密化に寄与する作用が特に顕著であ
る。しかし、その焼結合金中のリン含有量が0.2
％未満では、液相を発生させるのに充分でなく、
3.0％を超えると液相の発生量が多く、焼結体の
形状が変化してしまう。リンの含有量は0.4〜2.5
％が好ましい。 (ヘ) WCおよびNbC WCおよびNbCは、ピツカース硬さでいずれも
約2400と非常に高く、これらの炭化物を焼結合金
マトリツクス中に分散相として含有させることが
本発明の大きな特徴であり、これによりWCおよ
びNbCを極めて均一に分散せしめ、耐摩耗性が
向上する。WCおよびNbCのいずれも焼結合金摺
動部材中、すなわち全体の含有量が0.2％未満で
は所望する耐摩耗性を付与できず、5.0％を超え
ると相手材のカムの摩耗を促進する傾向にあるの
で、それぞれの含有量を0.2〜5.0％と定めた。
WCおよびNbCの含有量は0.2〜4.0％が好ましい。次に焼結合金摺動部材の気孔率は15％を超える
と耐摩耗性、特にピツチング摩耗に対する抵抗性
が劣るため、15％以下が好ましいが、２％未満の
気孔率になると油だまりとなる微細な空孔が少な
くなるため潤滑能力の低下となり特に初期摩耗が
多くなるので気孔率は２〜15％が望ましい。以下、本発明の実施例を説明する。実施例カーボンフエロクロム、フエロフオスフオル、
金属ニツケル、金属モリブデンの各粉末とWC粉
末及びNbC粉末を原料として、WC及びNbCの分
散相が生成するように混合粉末を調製し7t／cm²の
圧力で圧縮成形した。次に1140℃で１時間焼結し
た後、西原式摩耗試験片に加工した。このように
得られた焼結合金の組成及び比較材の組成を第１
表又物理的性質を第２表に示す。

【表】

【表】第１図は、西原式摩耗試験機の概略図で第２図
は西原式摩耗試験の結果である。なお試験方法
は、1590rpm、荷重30KgでSAE10番のエンジンオ
イルを滴下管３から流しながら上試験片１を固定
し、下試験片２である硬さ（HRC52）のチル鋳
鉄材を8000回転させたものである。第２図は、上
試験片１の摩耗（摩耗深さ）を測定した結果を示
したものである。第３図は100倍の倍率で本発明の材料の組織を
示し、マルテンサイト及び残留オーステナイトマ
トリツクスにWC及びNbCが分散し且つ微細なＣ
―Mo―Cr複合炭化物が認められる。相手材はカム材として使用されているＣ：3.3
％、Si：2.42％、Mn：0.82％、Ｐ：0.07％、Ｓ：
0.02％、Cr：0.53％、Ni：0.62％、Mo：0.54％の
成分で表面をチルさせた鋳鉄でありチル部の硬さ
はHRC52であつた。第２図のグラフより明らか
であるように本発明材である摩耗深さは従来の材
料と比較して数分の１となり、耐摩耗性に非常に
優れていることがわかる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、西原式摩耗試験機の概略図である。
第２図は、西原式摩耗試験の結果を示すグラフで
ある。第３図は、本発明鉄基焼結合金材の金属顕
微鏡写真である。１…上試験片（固定側）、２…下試験片（回転
側）、３…潤滑油供給口。

Claims

【特許請求の範囲】１重量比で、炭素：0.6〜4.0％、クロム：1.0〜
5.0％、ニツケル：0.2〜4.0％、モリブデン：0.2
〜4.0％、及びリン：0.2〜3.0％、を含有し、
WC：0.2〜5.0％、NbC：0.2〜5.0％、の分散相が
分散し、残部が鉄及び不可避の不純物からなるこ
とを特徴とした鉄基焼結合金摺動部材。２気孔率が２〜15％であることを特徴とする特
許請求の範囲第１項記載の鉄基焼結合金摺動部
材。３ロツカーアームチツプとして用いる特許請求
の範囲第１項または第２項記載の鉄基焼結合金摺
動部材。