JPH0112608B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はワイヤカツト放電加工装置に関するも
のである。

ワイヤ電極を使用して、放電加工により被加工
体を切断または切断孔明け加工するワイヤカツト
放電加工装置は広く利用されている。

然しながら、従来のワイヤカツト放電加工装置
は放電加工の際、切断が進行するに従つて切断部
分が自重により未切断部分に支持されて下向きに
屈曲し、切断中の部分の加工精度が劣化すると云
う問題点があつた。

而して、この問題を解決するために種々の提案
がなされ、例えば、特開昭50―128296において
は、ワイヤ電極による切断が進行した部分の切断
片と被加工体の両部分を挾持して橋絡する２枚の
平板状永久磁石を設け、切断片の自重による屈曲
を抑制しようとするものであり、また他のものと
しては特開昭48―60379があげられ、これは切り
放されるか或いは抜け落ちる側の素材を加工中任
意の時期または任意の位置で別に設けた素材支持
台に押圧し、切断片の自重による屈曲を抑制する
と共に、ワイヤ電極の曲がりや断線を防止して加
工の失敗を軽減しようとするものであつた。

然しながら、これらの方法または装置は総て人
手によつて行なわなければならず、作業の能率が
悪いという問題点があつた。而して、本願出願人
はこれらの問題点を解決するために特開昭56―
035191においてワイヤカツト放電加工装置の加工
ヘツドの先頭部分に複数の永久磁石を着脱自在に
取り付け得る基板を設け、上記基板に設けられた
複数のコイルへの通電電流を制御することによつ
て上記永久磁石を離脱せしめ、人手によることな
く被加工体の切断部分と未切断部分の両部分を挾
持して橋絡する装置を開示した。然しながら、上
記装置は人手によつて行なう必要がないので作業
の能率は向上したが、吸着保持能力の高い永久磁
石を使用した場合には、上記永久磁石を離脱せし
める際にコイルに多くの電流を供給しなければな
らず、非効率的であつた。

本発明は叙上の観点に立つてなされたものであ
つて、その目的とするところは、人手によること
なく自動的に且つ効率的に被加工体の切断部分と
未切断部分の両部分を挾持して橋絡するように複
数の永久磁石を配置するワイヤカツト放電加工装
置を提供しようとするものである。

而して、その要旨とするところは、加工ヘツド
の被加工体に対向した位置に磁性材料から成る複
数の永久磁石取付座を具備した基板を設け、上記
複数の取付座にそれぞれ着脱自在に永久磁石を保
持せしめ、更に上記取付座に吸着された永久磁石
を取付座から引き離すため上記永久磁石に機械力
を作用せしめ得る離脱機構を上記それぞれの取付
座に設け、上記複数の取付座に吸着した上記永久
磁石のうち所望のものを随時、又は予めプログラ
ム等された制御指令に従つて上記離脱機構を制御
することによつて離脱せしめ、被加工体の切断部
分と未切断部分の両部分を橋絡、保持せしめるよ
うにすることにある。

以下、図面により本発明の詳細を具体的に説明
する。

第１図は本発明にかかるワイヤカツト放電加工
装置の一実施例を示す説明図、第２図は第１図中
Ａ―Ａ方向から見た加工済被加工体脱落防止装置
の底面図（但し、鉄心およびソレノイドコイルの
部分は省略してある。）、第３図は本発明にかかる
ワイヤカツト放電加工装置を使用して被加工体に
加工を施した場合の加工終了時の被加工体の状態
を示す説明図、第４図は本発明にかかるワイヤカ
ツト放電加工装置の他の実施例を示す説明図、第
５図Ａ，Ｂは使用永久磁石の変更構成例を示す断
面図と正面図、第６図は第５図の永久磁石を用い
て本発明を実施する際の部分の構成説明図であ
る。

第１図，第２図および第３図中１は図示されて
いない側方端のカラムからベツド上の被加工体の
載物台の上方部分へ向け伸長して形成された上部
支持アーム、２は加工ヘツド、３は基板、４，５
はガイドローラ、６は通電ローラ、７，８はキヤ
プスタン、９，１０はピンチローラ、１１，１２
はダイス形、または舟形ガイド等の電極ガイド、
１３はワイヤ電極、１４はその中央部に加工液ノ
ズル１４ａが設けられている保持板、１５ａおよ
び１５ｂは上部支持アーム１へ加工ヘツド２を取
り付けるボルト、１６は加工ヘツド２に取り付け
られ、ギヤを介して基板３を回動させるモータ、
１７はモータ１６に取り付けられていてモータ１
６の回動に伴ない回動するギヤ、１８はギヤ１７
と噛み合うように基板３に取り付けられているギ
ヤ、１９ａおよび１９ｂは保持板１４を介して基
板３を加工ヘツド２の先頭部に回動可能に取り付
けるボルト、２０，２０はそれぞれ内部に非磁性
体で製作されたトルグ２１，２１が納められてい
るケーシング、２２，２２は鉄芯、２３，２３は
ソレノイドコイル、２４，２４は永久磁石、２５
は被加工体、２５ａ，２５ａは切断部、２６は被
加工体２５を固定するクランプ、２７は載物台で
ある。

而して、放電加工中、ワイヤ電極１３は図示さ
れていない電極供給ドラムからキヤプスタン７お
よび８とピンチローラ９および１０によつて一定
速度で引き出され、ガイドローラ４および５ない
し通電ローラ６を経て、被加工体２５が置かれた
加工部分に供給される。加工部分においてワイヤ
電極１３はガイド１１および１２の間に一定の張
力で直線状に張架され、通電ローラ６と被加工体
２５間に印加された放電電圧によつて被加工体２
５との間で放電を行なう。

被加工体２５は数値制御装置を用いて図示され
ていないクロススライドテーブルを駆動させるこ
とにより、ワイヤ電極１３の張架方向と垂直方向
に載物台２７を介して移動せしめられ、所望の加
工輪郭線に従つて加工が施される。なお、放電加
工時、被加工体２５の加工部分に発生した加工屑
等を除去し放電加工を円滑ならしめるために加工
液ノズル１４ａからは加工液が供給される。

上記装置において永久磁石２４，２４を被加工
体２５の切断部分と未切断部分の両部分を挾持し
て橋絡するように配置する加工済被加工体脱落防
止装置の構造は下記のような特別の構造を有して
いる。

即ち、基板３の一端にはギヤ１８が取り付けら
れていて、加工ヘツド２に取り付けられたモータ
１６のギヤ１７と噛み合つている。而して、加工
ヘツド２の先頭部に保持板１４を介して取り付け
ボルト１９ａおよび１９ｂによつて回動可能に取
り付けられた基板３は、モータ１６の回動に伴な
つて回動する。

また、基板３には金属等の磁性体で製作された
ケーシング２０，２０が複数個被加工体２５と対
向するように加工液ノズル１４ａを中心に配置さ
れている。そして、それぞれのケーシング２０，
２０内にはトグル２１，２１が納められ、また上
記各ケーシング２０，２０の側壁には鉄芯２２，
２２およびソレノイドコイル２３，２３からなる
トグル押圧スイツチが取り付けられている。

而して、載物台２７をのせている図示されてい
ないクロススライドテーブルのワイヤ電極１３の
張架方向と垂直方向の移動と、モータ１６による
基板３の回動およびトグル押圧スイツチのソレノ
イドコイル２３，２３の制御は、図示されていな
い数値制御装置によりあらかじめ定められたプロ
グラムに従つて行なわれる。

而して、加工開始後任意の位置もしくは任意の
時間経過するまでは、図示されていない数値制御
装置からそれぞれのケーシング２０，２０の側壁
に設けられているトグル押圧スイツチのソレノイ
ドコイル２３，２３には電流が加えられないの
で、各ケーシング２０，２０にはそれぞれ永久磁
石２４，２４が吸着している。然しながら、任意
の位置もしくは任意の時間経過し、図示されてい
ない数値制御装置からトグル押圧スイツチのうち
の選択されたソレノイドコイル２３，２３に電流
が加わると、鉄芯２２，２２はソレノイドコイル
２３，２３の磁気力によつてトグル２１，２１を
押圧する方向へ吸引され、これによつてトグル２
１，２１はケーシング２０，２０に吸着している
永久磁石２４，２４を機械力により下方へ押圧
し、ケーシング２０，２０から離脱せしめ、被加
工体２５のワイヤ電極１３による切断が進行した
部分の切断片と被加工体２５の両部分を挾持して
橋絡するように配置される。従つて、所望の加工
が終了した後も切断部２５ａによる屈曲または脱
落等を防止することが可能となる。

次に、第４図について説明する。

第４図中、第１図と同一の番号を付したものは
同一の構成要素を示し、２８はモータ、２９はモ
ータ２８に取り付けられたカムである。

而して、第１図の装置においてはケーシング２
０，２０から永久磁石２４，２４を離脱せしめる
のにソレノイドコイル２３，２３に通電して鉄芯
２２，２２をトグル２１，２１が押圧される方向
に吸引せしめて行なつたが、第４図の装置におい
てはトグル２１，２１をカムによつて押圧せしめ
るものである。

即ち、加工開始後任意の位置もしくは任意の時
間経過するまでは、図示されていない数値制御装
置からそれぞれのケーシング２０，２０の側壁に
設けられているモータ２８，２８には電圧が加え
られないので、各ケーシング２０，２０にはそれ
ぞれ永久磁石２４，２４が吸着している。然しな
がら、任意の位置もしくは任意の時間経過し、図
示されていない数値制御装置からモータ２８，２
８のうちの選択されたモータ２８，２８に電圧が
加えられると、そのモータ２８，２８がカム２
９，２９を回動させる。このカム２９，２９の回
動によつてトグル２１，２１が押圧されると、ト
グル２１，２１はケーシング２０，２０に吸着し
ている永久磁石２４，２４を機械力により下方へ
押圧し、ケーシング２０，２０から離脱せしめ、
被加工体２５のワイヤ電極１３による切断が進行
した部分の切断線の部分を挾持して橋絡するよう
に配置される。

なお、斯種ワイヤカツト放電加工装置のアーム
１と加工ヘツド２の構成組み合わせおよびワイヤ
電極１３の懸架案内方式には種々のものがある。
その代表的なものは、１つのカラムから伸長した
アーム、もしくは両側に立てた一対のカラム間に
掛け渡してアームを設け、上記アーム前面の面に
懸架案内ローラやキヤプスタンおよびピンチロー
ラによるワイヤ電極１３の懸架案内経路を形成さ
せるようにしたもの、または上記加工ヘツド２を
上記アーム１の先端近く、もしくは中央位置付近
で上記アーム１に対して上下移動位置調節および
固定可能に構成配置されるように構成したもので
あるが、本発明はかかる構成のワイヤカツト放電
加工装置にも同様に適用できるものである。

なお、上記永久磁石としては、従来より慣用の
アルニコ系磁石、もしくはフエライト系磁石の外
に、鉄―クローム―コバルト合金系磁石やサマリ
ウム―コバルト合金系の如き所謂希土類合金系磁
石を利用することが可能であり、特に前記希土類
合金系磁石を利用すれば、最大エネルギー積が極
めて大きく、また、パーミアンス系数を適宜選択
することによつて、例えば20〜30mmφのもので数
10Kgまたはそれ以上の重量を吸着保持することが
でき、被加工体およびその切断部分が格別大きな
ものでない以上、磁石数個で充分に保持すること
ができる。

なお、上述実施例に於ては永久磁石２４とし
て、N.S極端面以外の側面等に於ても磁気吸着の
可能性がある短い円柱状の磁石片をそのまま用い
たためケーシング２０を磁性体で構成して之に磁
石２４を吸着保持させ、トグル２１を非磁性体で
構成して、ケーシング２０から剥離落下させるよ
うに構成したが、前記永久磁石２４としてその形
状やヨーク鉄芯との組合せ構成、或いはさらに非
磁性体による包皮等組合せ構成によつては、一部
又は一方の端面等しか磁気吸着がないように構成
することができるから、そのような場合には上記
ケーシング２０及びトグル２１は磁性体又は非磁
性体の何れであつても良い。

第５図Ａ，Ｂは、そのような永久磁石の一実施
例を示す断面図Ａと正面図Ｂとを示すもので、３
０は例えばSmCo₅系の短い円柱状磁石、３１は
一方の側に凹状で、その凹部中心に磁石３０を設
けた円柱状鉄芯、３２はその間に必要に応じて介
設された合成樹脂や合金系の環状の非磁性体で、
磁石３０と鉄芯３１は接着剤や機械的固定手段等
により固定されている。

上記磁石に於て、鉄芯３１の背面部３３、及び
外周面の特に上記背面側外周面部３４は、殆んど
それ自体が永久磁石としての磁気吸着能を有しな
いから、ケーシング２０を弱い永久磁石か電磁石
としたり、或いは例えば第６図に部分図として示
すように、前記第５図に示した永久磁石２４の背
面側外周面部３４等適宜の位置に環状突起（又は
凹部）２４ａを設けておき、他方ケーシング２０
の磁石嵌設開口内に前記突起２４ａを引掛けて保
持する環状等のゴムやスプリング２１ａを設けて
おき、トグル２１により、永久磁石２４をケーシ
ング２０の磁気吸着、又はスプリング２１ａ等に
よる機械的保持状態から離脱させて被加工体２５
上に落下させるようにして実施することができ
る。

本発明は叙上の如く構成されるので、本発明の
装置によれば、ワイヤカツト放電加工の際、放電
加工が進行するに従つて切断部分が自重により未
切断部分に支持されて下方に屈曲し、切断中の部
分の加工精度を劣化させるのを防止すると共に、
切断部分の脱落も人手によることなく自動的に、
しかも効力よく防止することができるのである。

なお、本発明は叙上の実施例に限定されるもの
ではない。即ち、例えば、本実施例においては基
板を回動させるのにモータからギヤを介して行な
つたが、他の公知のドライブ機構を使用すること
も可能であり、また、永久磁石を吸着させるケー
シングも全体を総て磁性体とする必要はなく、永
久磁石を吸着させる部分のみ磁性体とすればよい
ものであり、ケーシングの取り付け位置等も本発
明の目的の範囲内で自由に設計変更できるもので
あつて、本発明はそれらの総てを包摂するもので
ある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明にかかるワイヤカツト放電加工
装置の一実施例を示す説明図、第２図は第１図中
Ａ―Ａ方向から見た加工済被加工体脱落防止装置
の底面図（但し、鉄芯およびソレノイドコイルの
部分は省略してある。）、第３図は本発明にかかる
ワイヤカツト放電加工装置を使用して被加工体に
加工を施した場合の加工終了時の被加工体の状態
を示す説明図、第４図は本発明にかかるワイヤカ
ツト放電加工装置の他の実施例を示す説明図、第
５図Ａ，Ｂは使用永久磁石の変更構成例を示す断
面図と正面図、第６図は第５図の永久磁石を用い
て本発明を実施する際の部分の構成説明図であ
る。 １…支持アーム、２…加工ヘツド、３…基板、
４，５…ガイドローラ、６…通電ローラ、７，８
…キヤプスタン、９，１０…ピンチローラ、１
１，１２…電極ガイド、１３…ワイヤ電極、１４
…保持板、１４ａ…加工液ノズル、１５ａ，１５
ｂ，１９ａ，１９ｂ…ボルト、１６，２８…モー
タ、１７，１８…ギヤ、２０…ケーシング、２１
…トグル、２２…鉄芯、２３…ソレノイドコイ
ル、２４…永久磁石、２５…被加工体、２５ａ…
切断部、２６…クランプ、２７…載物台、２９…
カム。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 加工ヘツドの被加工体に対向した位置に磁性
   材料から成る複数の永久磁石取付座を具備した基
   板と、上記複数の取付座にそれぞれ着脱自在に保
   持される永久磁石と、上記取付座にそれぞれ設け
   られ、上記取付座に吸着された永久磁石を取付座
   から引き離すため上記永久磁石に機械力を作用せ
   しめ得る離脱機構と、上記複数の離脱機構を制御
   し随時所望の上記永久磁石を離脱せしめ得る制御
   装置とから成る加工済被加工体脱落防止装置を具
   備したことを特徴とするワイヤカツト放電加工装
   置。 ２ 上記離脱機構がトグル機構である特許請求の
   範囲第１項記載のワイヤカツト放電加工装置。