JP7846838B2 - 接合構造体の製造方法及び被接合体の接合方法 - Google Patents

接合構造体の製造方法及び被接合体の接合方法

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Description

本発明は、二つの被接合体を接合してなる接合構造体の製造方法及び被接合体の接合方法に関する。
近年、インバータなど電力変換・制御装置としてパワーデバイスと呼ばれる半導体素子が盛んに用いられるようになってきている。パワーデバイスは、メモリやマイクロプロセッサといった集積回路と異なり、高電流を制御するためのものなので、動作時の発熱量が非常に大きくなる。したがって、パワーデバイスの実装に用いられるはんだには耐熱性が要求される。しかし、現在主として使用されている鉛フリーはんだは、通常の鉛含有はんだに比べて耐熱性が低いという欠点を有する。
そこで、はんだを用いることに代えて、有害な化学物質の使用を制限した金属微粒子を含むペーストを用い、これを各種の塗工手段によって対象物に塗布し、焼成する技術が種々提案されている。例えば特許文献1には、銀ナノ粒子を有機溶剤に分散させてなる焼結性金属接合材を絶縁基板上に塗布し、該接合材を乾燥させた後にパワー半導体素子を載せて仮固定し、然る後に該接合材を焼結させてパワーモジュールを製造する方法が提案されている。
特開2019-186457号公報
特許文献1に記載の技術では、乾燥条件、仮固定条件及び焼結条件等によっては接合材がパワー半導体素子の周縁から外方へはみ出してしまい十分な接合強度が得られなかったり、パワー半導体素子の位置ずれが生じたりする可能性がある。したがって本発明の課題は、被接合体に位置ずれや脱落を生じさせることなく、被接合体どうしを首尾よく接合し得る接合構造体の製造方法を提供することにある。
本発明は、第1被接合体と第2被接合体とが接合層を介して接合されてなる接合構造体の製造方法であって、
銅粉及び25℃で液体である有機物を含む接合用組成物を前記第1被接合体に塗布して湿潤塗膜を形成する工程と、
前記湿潤塗膜から前記有機物を除去して乾燥塗膜を得る工程と、
加圧によって前記第2被接合体を前記乾燥塗膜に仮固定して、前記第1被接合体、前記乾燥塗膜及び前記第2被接合体がこの順で積層されてなる積層体を得る工程と、
前記積層体を加圧下で加熱して前記乾燥塗膜中の前記銅粉を焼結させ、焼結によって生じた前記接合層によって前記第1被接合体と前記第2被接合体とを接合する工程と、を備え、
前記有機物は第1の有機物を含み、
前記第1の有機物は、230℃以上300℃未満の沸点を有し、且つ25℃、せん断速度10s-1の条件における粘度が100mPa・s以上である、接合構造体の製造方法を提供するものである。
また本発明は、第1被接合体と第2被接合体とを接合層を介して接合する方法であって、
銅粉及び25℃で液体である有機物を含む接合用組成物を前記第1被接合体に塗布して湿潤塗膜を形成する工程と、
前記湿潤塗膜から前記有機物を除去して乾燥塗膜を得る工程と、
加圧によって前記第2被接合体を前記乾燥塗膜に仮固定して、前記第1被接合体、前記乾燥塗膜及び前記第2被接合体がこの順で積層されてなる積層体を得る工程と、
前記積層体を加圧及び加熱して前記乾燥塗膜中の前記銅粉を焼結させ、焼結によって生じた前記接合層によって前記第1被接合体と前記第2被接合体とを接合する工程と、を備え、
前記有機物は第1の有機物を含み、
前記第1の有機物は、230℃以上300℃未満の沸点を有し、且つ25℃、せん断速度10s-1の条件における粘度が100mPa・s以上である、接合方法を提供するものである。
図1は、本発明の接合構造体の製造方法の一実施形態を示す工程図(積層体が製造されるまでの工程図)である。 図2は、第2被接合体の載置前後における乾燥塗膜の外縁の一部を示す平面図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明は、二つの被接合体、すなわち第1被接合体と第2被接合体とが、接合層を介して接合されてなる接合構造体の製造方法に係るものである。本製造方法は、以下の工程に大別される。
(1)銅粉及び25℃で液体である有機物(以下、「液体有機物」ともいう。)を含む接合用組成物を前記第1被接合体に塗布して湿潤塗膜を形成する工程(湿潤塗膜形成工程)。
(2)湿潤塗膜から液体有機物を除去して乾燥塗膜を得る工程(乾燥塗膜形成工程)。
(3)加圧によって第2被接合体を乾燥塗膜に仮固定して、第1被接合体、乾燥塗膜及び第2被接合体がこの順で積層されてなる積層体を得る工程(積層体形成工程)。
(4)積層体を加圧下で加熱して乾燥塗膜中の前記銅粉を焼結させ、焼結によって生じた接合層によって第1被接合体と第2被接合体とを接合する工程(接合工程)。
以下、それぞれの工程について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の接合構造体の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
(1)湿潤塗膜形成工程
まず図1(a)に示すとおり、第1被接合体11を準備し、この第1被接合体11の一面11a上に接合用組成物を塗布して湿潤塗膜13aを形成する。接合用組成物は、銅粉及び液体有機物を含んでいる。
接合用組成物の塗布方法は特に限定されない。例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、ディスペンス印刷法、リバースコート法及びドクターブレード法などによって湿潤塗膜13aを形成することができる。
湿潤塗膜13aの平均厚さは、十分な接合強度を確保できるようにする観点から、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることが更に好ましく、35μm以上であることが一層好ましい。
また湿潤塗膜13aの平均厚さは、塗膜を平滑にさせやすくし、且つ、乾燥後の塗膜の割れを防止する観点から、500μm以下であることが好ましく、450μm以下であることが更に好ましく、400μm以下であることが一層好ましい。
接合用組成物の塗布面積は、塗布によって形成された湿潤塗膜13aが、後述する第2被接合体12の周縁から延出するような面積であってもよく、また、両者が同一の面積であってもよく、塗布によって形成された湿潤塗膜13aが、後述する第2被接合体12の周縁よりも小さい面積であってもよい。
図1に示す実施形態においては、接合用組成物の塗布面積は、塗布によって形成された湿潤塗膜13aが、第2被接合体12の周縁から延出するような面積である。このような塗布面積とすることによって、第1被接合体11と第2被接合体12とをより確実に接合させることができる。
(2)乾燥塗膜形成工程
次に、図1(b)に示すとおり、該湿潤塗膜13aから液体有機物を除去して乾燥塗膜13bを得る。湿潤塗膜13aから液体有機物を除去することで乾燥塗膜13bの保形性が高まる。
図1(b)に示す工程では、後述する第2被接合体12の乾燥塗膜13bへの仮固定を首尾よく行う観点から、乾燥塗膜13bの平均厚みが20μm以上となるように液体有機物の除去を行うことが好ましく、更に好ましい平均厚みは25μm以上であり、一層好ましくは30μm以上である。
一方、平滑な塗膜を得やすくし、乾燥後の塗膜の割れを防止する観点から、乾燥工程においては、乾燥塗膜13bの平均厚みが400μm以下となるように液体有機物の除去を行うことが好ましく、更に好ましい平均厚みは350μm以下であり、一層好ましくは300μm以下である。
乾燥塗膜13bに過剰量の液体有機物が残存していると、乾燥塗膜13bが柔らかくなり、第2被接合体12の乾燥塗膜13bへの仮固定強度が低下したり、及び焼結後の第1被接合体11及び第2被接合体12の接合強度が低下したりするおそれがある。また、第1被接合体11と第2被接合体12とを接合する際に乾燥塗膜13bが平面視において第1被接合体11及び第2被接合体12の外側にはみ出すおそれがある。これらの不都合を効果的に抑制する観点から、図1(b)に示す工程では、湿潤塗膜13aに含まれる液体有機物の揮発量を十分に高めて、乾燥塗膜13bに残存する液体有機物の量を低減することが好ましい。本工程においては、乾燥塗膜13bが流動性を有さないものになる程度に、湿潤塗膜13aから液体有機物を除去することが好ましい。乾燥塗膜13bの流動性の有無は、以下のとおりに判断する。例えば乾燥塗膜13bが平面視でx[mm]×y[mm](x及びyはx≧yを満たす数とする。)の矩形形状又は略矩形形状であるときは、25℃において、該乾燥塗膜13b上に平面視で5x/6[mm]×5y/6[mm]のサイズの第2被接合体12を載置する。乾燥塗膜13bに過剰量の液体有機物が残存しており乾燥塗膜13bが流動性を有する場合、上記条件で第2被接合体12を載置すると、乾燥塗膜13bが変形し、乾燥塗膜13bの元の位置(第2被接合体12を載置する前の位置)からずれが生じる。したがって、第2被接合体12を載置後、乾燥塗膜13bが乾燥塗膜13bの元の位置からx/5[mm]以上ずれている場合を流動性有り、x/5[mm]未満ずれている場合を流動性無しと判断する。
第2被接合体12載置後の乾燥塗膜13bのずれは、以下のとおりに定義する。すなわち、図2に示すとおり、第2被接合体12を載置する前の乾燥塗膜13bの外縁をC1とし、C1上の任意の点PにおけるC1の法線をLとする。法線Lと、第2被接合体12を載置した後の乾燥塗膜13bの外縁C2との交点をQとする。ただし、法線Lと外縁C2との交点が複数存在する場合は、該交点のうち、点Pとの距離が最小である交点をQと定める。そして、点Pと点Qの距離PQが最大になるようにC1上の点Pを選択したときの当該距離PQを乾燥塗膜13bのずれと定義する。
尤も、第2被接合体12の乾燥塗膜13bへの仮固定強度を高める観点、並びに目的とする接合構造体における第1被接合体11及び第2被接合体12の接合強度を高める観点から、乾燥塗膜13bには微量の液体有機物が残存していることが好ましい。
湿潤塗膜13aに含まれる液体有機物を十分に除去する観点から、図1(b)に示す工程においては、湿潤塗膜13aの質量が15質量%以上減少するように湿潤塗膜13aを乾燥させることが好ましく、より好ましくは16質量%以上、更に好ましくは17質量%以上、特に好ましくは18質量%以上減少するように該湿潤塗膜13aを乾燥させる。
一方、第2被接合体12の乾燥塗膜13bへの仮固定強度を高める観点、並びに目的とする接合構造体における第1被接合体11及び第2被接合体12の接合強度を高める観点から、乾燥塗膜形成工程においては、湿潤塗膜13aの質量が30質量%以下減少するように湿潤膜を乾燥させることが好ましく、より好ましくは29質量%以下、更に好ましくは28質量%以下減少するように湿潤塗膜を乾燥して、液体有機物を湿潤塗膜13aから除去する。
湿潤塗膜13aの質量減少の割合を測定する方法は、後述する実施例において説明する。
第2被接合体12の乾燥塗膜13bへの仮固定強度を高める観点、及び焼結後の第1被接合体11と第2被接合体12との接合強度を高める観点から、湿潤塗膜13a中の液体有機物の含有量を100質量部としたとき、乾燥塗膜13b中の液体有機物の含有量が25質量部以下となるように液体有機物を湿潤塗膜13aから除去することが好ましく、より好ましくは24質量部以下、更に好ましくは23質量部以下となるように液体有機物を湿潤塗膜13aから除去する。
また、上述のとおり、乾燥塗膜13b中には微量の液体有機物が残存していることが好ましい。したがって、湿潤塗膜13a中の液体有機物の含有量を100質量部としたとき、乾燥塗膜13b中の液体有機物の含有量が5質量部以上となるように液体有機物を湿潤塗膜13aから除去することが好ましく、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは7質量部以上となるように液体有機物を湿潤塗膜13aから除去する。
乾燥塗膜13bに残存する液体有機物を十分に低減する観点から、本工程においては、湿潤塗膜13aを100℃以上に加熱することが好ましく、105℃以上に加熱することがより好ましく、110℃以上に加熱することが更に好ましい。
また、乾燥塗膜13b中の液体有機物の残存量を上述の範囲内とする観点から、本工程においては、湿潤塗膜13aを200℃以下に加熱することが好ましく、190℃以下に加熱することがより好ましく、180℃以下に加熱することが更に好ましく、160℃以下に加熱することが特に好ましい。
同様の観点から、湿潤塗膜13aの加熱時間は、大気圧下で乾燥工程を行う場合には、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、更に好ましくは20分以上、そして、好ましくは60分以下、より好ましくは50分以下、更に好ましくは40分以下である。
湿潤塗膜13aの加熱による乾燥塗膜13bの形成は、窒素ガス及びアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気又は大気雰囲気下で行うことができる。加熱は減圧下で行ってもよい。
加熱手段に特に制限はない。例えば熱風の吹き付け、赤外線の照射、加熱炉内での加熱などの加熱手段を採用することができる。
(3)積層体形成工程
乾燥塗膜13bが形成されたら、次に図1(c)に示すとおり、乾燥塗膜13b上に第2被接合体12を載置する。第2被接合体12は、該第2被接合体12の周縁から乾燥塗膜13bが延出するように、乾燥塗膜13b上に載置されることが好ましい。尤も、第2被接合体12の周縁と乾燥塗膜13bの周縁が一致するように第2被接合体12を載置してもよいし、乾燥塗膜13bの周縁から第2被接合体12が延出するように、第2被接合体12を載置してもよい。
本実施形態においては、乾燥塗膜13b上に第2被接合体12を配置するのに先立ち、乾燥塗膜13bと第2被接合体12との間に仮固定剤を施しても良く、施さなくても良い。後述するとおり、乾燥塗膜13bの製造に用いられる接合用組成物は微量に高粘度の第1の有機物を含んでいるので、仮固定剤によらずとも、第2被接合体12を乾燥塗膜13b上に仮固定することができる。このように、本実施形態の製造方法によれば、仮固定剤を施す工程を省くことが可能であり、それによって製造工程の簡略化及び製造時間の短縮化を図ることができる。なお、本発明においては仮固定剤を用いなくて良いが、仮固定剤を用いることは妨げられない。仮固定剤としては、例えばモノアルコール、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、多価アルコールアリールエーテル、エステル類、複素環化合物、アミド類、アミン類、飽和炭化水素、環式テルペンアルコール類及びその誘導体、ケトン類、カルボン酸類などを挙げることができる。
乾燥塗膜13bには、接合用組成物に含まれる高粘度の第1の有機物(詳細は後述する。)の少なくとも一部が残存している。したがって、乾燥塗膜13b上に載置した第2被接合体12を加圧すること(すなわち、第2被接合体12を乾燥塗膜13b中に押し込むこと)で、第2被接合体12を乾燥塗膜13bに仮固定することができる。これによって、第1被接合体11、乾燥塗膜13b及び第2被接合体12から順に構成されてなる積層体14が得られる。第2被接合体12の載置の際に用いる治具(図示せず)によって、第2被接合体12を乾燥塗膜13b中に直接押し込むことができる。
本明細書において「仮固定」とは、第1被接合体11と第2被接合体12とが一時的に固定されている状態であって、大きな外力が加わったときに固定状態が変化するものの、小さな外力(例えば第1被接合体11と第2被接合体12との積層体を、両被接合体11,12の接合面が鉛直方向を向くように載置したときに、第1被接合体11又は第2被接合体12のいずれか一方が自重により落下する程度の力)によっては固定状態に変化がない態様をいう。
第2被接合体12を乾燥塗膜13b中に押し込むときの圧力は、乾燥塗膜13bによる第2被接合体12の仮固定を適切に行う観点、及び次工程となる接合工程において第1被接合体11と第2被接合体12との接合強度を十分に高める観点から、0.1MPa以上とすることが好ましく、0.2MPa以上とすることが更に好ましく、0.3MPa以上とすることが一層好ましい。また、第2被接合体12を乾燥塗膜13b中に押し込むときの圧力は、5MPa以下とすることが好ましく、4.5MPa以下とすることが更に好ましく、4.0MPa以下とすることが一層好ましい。
目標圧力に達してからの当該圧力の維持時間は、乾燥塗膜13bによる第2被接合体12の仮固定を適切に行う観点、及び次工程となる接合工程において第1被接合体11と第2被接合体12との接合強度を十分に高める観点から0.01秒以上とすることが好ましく、0.1秒以上とすることが一層好ましい。
また、目標圧力に達してからの当該圧力の維持時間は、生産性を著しく低下させる時間でなければ特に限定されるものではなく、例えば5秒以下とすることができる。
仮固定時、第2被接合体12及び/又は乾燥塗膜13bは常温であっても、加熱されていてもよい。乾燥塗膜13bによる第2被接合体12の仮固定を適切に行う観点から、第2被接合体12を乾燥塗膜13b中に押し込む際には、第2被接合体12及び/又は乾燥塗膜13bを加熱することが好ましい。換言すれば、加圧及び加熱によって第2被接合体12を乾燥塗膜13bに仮固定することが好ましい。
具体的には、第2被接合体12の加熱温度は、好ましくは15℃以上、より好ましくは18℃以上、更に好ましくは20℃以上、そして、好ましくは300℃以下、より好ましくは270℃以下、更に好ましくは250℃以下である。
また、乾燥塗膜13bの加熱温度は好ましくは15℃以上、より好ましくは18℃以上、更に好ましくは20℃以上、そして、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは210℃以下である。
加熱温度を上述の範囲内とすることによって、乾燥塗膜13b中に残存する液体有機物量の過度な低下を抑制しつつ、第2被接合体12の仮固定を適切に行うことができる。
第2被接合体12及び/又は乾燥塗膜13bを加熱しながら圧力を加えることによって第2被接合体12の仮固定を行う場合において、この加熱加圧処理によって湿潤塗膜13a中の銅粉を焼結させる必要はない。この理由は、後述するとおり、乾燥塗膜13bに高粘度の第1の有機物(詳細は後述する。)が微量に含まれているため、銅粉を焼結させずとも第2被接合体12の仮固定強度を十分に高めることができるからである。このように、湿潤塗膜13a中の銅粉を焼結しない条件で、積層体形成工程を実施することによって、次工程である接合工程において銅粉の焼結を十分に進行させることができるようになるので、得られる接合構造体の接合強度及び接合信頼性をより高めることができる。
銅粉が焼結しない条件としては、例えば第2被接合体12及び乾燥塗膜13bの加熱温度を250℃以下とし、且つ加熱時間を50秒未満とする条件を挙げることができる。
第2被接合体12の仮固定が行われると、積層体14に外力が加わっても第1被接合体11に対する第2被接合体12の位置がずれにくくなる。したがって積層体14を次工程、例えば以下に述べる接合工程のために焼成炉に搬送するときに、第1被接合体11と第2被接合体12との位置関係を安定的に保つことが可能になる。
(4)接合工程
第2被接合体12が乾燥塗膜13bによって仮固定されてなる積層体14は次に接合工程に付される。接合工程においては、積層体14を加圧下で加熱して乾燥塗膜13b中の銅粉を焼結させ、焼結によって生じた接合層によって第1被接合体11と第2被接合体12とを接合する。
接合工程は上述の積層体形成工程とは異なる場所で行われることから、当該積層体14を加熱する装置へと移動させる。移動中に積層体14に振動等の外力が加わることがあるが、上述した積層体形成工程によって第2被接合体12が乾燥塗膜13bに適切に仮固定されているので、第2被接合体12の位置ずれ及び脱落が抑制される。なお、上述の加熱する装置が第2被接合体12を載置する装置を兼ねている場合、積層体14を移動させずにその場で加熱するようにしても良い。
接合工程における加熱温度は、乾燥塗膜13b中の銅粒子の焼結を確実に行い、第1被接合体11と第2被接合体12との間の接合強度を確実に高める観点から、好ましくは180℃以上、更に好ましくは200℃以上、そして、好ましくは450℃以下、更に好ましくは400℃以下とする。
同様の観点から、接合工程における加熱時間は好ましくは1分以上、更に好ましくは2分以上、そして、好ましくは30分以下、更に好ましくは25分以下とする。
乾燥塗膜13bによる第2被接合体12の固定を適切に行う観点から、接合工程において加える圧力は、好ましくは1MPa以上、更に好ましくは2MPa以上、一層好ましくは3MPa、そして、好ましくは35MPa以下、更に好ましくは32MPa以下、一層好ましくは30MPa以下である。
接合工程での雰囲気は、例えば大気雰囲気、不活性ガス雰囲気又は還元性雰囲気などを採用することができる。なかでも、不活性ガス雰囲気又は還元性雰囲気を採用することが好ましい。
接合工程においては、銅粉を焼結させるときの温度、時間及び圧力等の焼成条件を適切に選択することによって、第1被接合体11と第2被接合体12との接合強度が32MPa以上となるように銅粉を焼結させることが好ましい。また、第1被接合体11と第2被接合体12との接合強度は、より好ましくは35MPa以上、更に好ましくは40MPa以上である。
第1被接合体11と第2被接合体12との接合強度の測定方法は、後述する実施例にて説明する。
焼結工程によって得られる接合構造体においては、第1被接合体11と第2被接合体12とを接合する接合層のボイド率が低いことが好ましい。詳細には、接合層のボイド率は30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることが更に好ましい。接合層のボイド率とは、接合層の見かけの体積に対する、接合層中のボイド(接合層の構成材料によって占有されていない空間)の体積の比である。ボイド率の測定においては、便宜上、前記体積の比に代えて、接合層の一面におけるボイドの占有面積率を算出し、これをボイド率とみなしてもよい。
接合層のボイド率は、例えば次のようにして測定することができる。まず、超音波映像装置(日立ハイテク製 FineSAT FS300 III)にて周波数50MHzのプローブを使用し、水平方向に縦横30μmピッチで反射法にて第2被接合体と銅粉の焼結体との接合界面を分析し、超音波探傷像(SAT像)を得る。接合層の剥離状態を観察する際、ゲインの値を25~35dBの値にした後、Sゲートのピーク位置が第1被接合体の表面となるようSゲートのディレイと幅を調節する。接合層の観察範囲を指定するためFゲートのディレイを調整し、幅を適切なピーク幅に設定する。観察ピークの振幅が最大となるようプローブのZ軸座標を調整し、観察を行う。観察像のコントラストはオート機能を用いて調節する。得られたSAT像のうち、第2被接合体接合領域部分について画像処理ソフトウエア(Image J)を用いて二値化し、観察した面積中における黒色の面積割合(接合率;%)を算出する。すなわち、Image-Jを起動した後、Analyze-Set measurementを選択し、Area、Area fraction、Limit to Thresholdにチェックを入れる。その後、File-Openを選択し、接合率を算出する画像データを開いた後に、画像中の第2被接合体の範囲(A)を指定する。次いで、Edit-Copy to systemを選択し、指定した範囲(A)をコピーした後、File-New-System clipboardを選択して指定した範囲(A)の画像を貼り付ける。その後、接合部を明確にするために、Image- Type-8bitを選択し、画像を変換した後、Image-Adjust-Thresholdを選択して画像の閾値を100に調整する。そして、調整後の画像における第2被接合体搭載部の範囲(A)内に存在する黒色範囲(B)を指定する。前記黒色範囲(B)は閾値が100以下の範囲であり、第2被接合体の接合部とみなすことができる。接合率(%)は(B)の面積/(A)の面積×100で算出される。ボイド率(%)は、100-接合率(%)で算出することができる。
接合工程において銅粉を焼結させるときの温度、圧力及び時間のいずれか二つが、積層体形成工程において第2被接合体12を乾燥塗膜13bに仮固定するときの温度、圧力及び時間のいずれか二つよりも高いか又は長いことがより好ましい。また、接合工程において銅粉を焼結させるときの温度、圧力及び時間のいずれもが、積層体形成工程において第2被接合体12を乾燥塗膜13bに仮固定するときの温度、圧力及び時間よりも高く且つ長いことが更に好ましい。
かかる条件にて積層体形成工程及び接合工程を実施することによって、仮固定時に必要な熱エネルギーを抑制し、また加熱加圧接合時に良好な接合強度を得ることができる。
このような固定方法を採用することで、目的とする接合構造体(図示せず)が得られる。この接合構造体においては、第1被接合体11と第2被接合体12とが、銅粒子の焼結体からなる接合層を介して接合された状態になっている。
次に、上述した仮固定による接合方法に用いられる接合用組成物並びに第1被接合体11及び第2被接合体12について説明する。
本発明で用いる接合用組成物は、上述のとおり銅粉及び液体有機物を含んで構成される。接合用組成物は更に各種の調整剤を含んでいてもよい。
接合用組成物に含まれる銅粉を構成する銅粒子は、その形状に特に制限はなく、球状及び非球状のいずれのものも用いられる。
銅粒子が球状であるとは、円形度係数が0.85以上であることをいう。円形度係数は、銅粒子の走査型電子顕微鏡像を撮影し、一次粒子の二次元投影像の面積をSとし、周囲長をLとしたときに、4πS/Lの式から算出する。
銅粒子が非球状であるとは、上述の円形度係数が0.85未満であることをいう。
非球状の具体例としては、扁平状、六面体や八面体等の多面体状、紡錘状、異形状等の形状が挙げられる。扁平状とは、粒子の主面を形成している一対の板面と、これらの板面に交差する側面とを有する形状のことである。板面及び側面はそれぞれ独立して、平面、曲面又は凹凸面であり得る。
銅粉は、異なる二種類以上の形状を有する銅粒子を含んでいてもよい。特に銅粉は、扁平状銅粒子及び球状銅粒子を含むことが、接合強度の高い接合構造体を得る観点から好ましい。また、形状は同様であるが粒径の異なる銅粒子や、形状及び粒径の異なる銅粒子を複数含んでいても良い。
銅粒子が球状である場合の粒径は以下の方法により定めるものとする。すなわち、10,000倍以上150,000倍以下の範囲で走査型電子顕微鏡による観察像を用いて輪郭のはっきりした一次粒子の銅粒子を50個以上選んだ各粒子のヘイウッド径を測定する。次いで、得られたヘイウッド径から、粒子が真球であると仮定したときの体積を算出し、該体積の累積体積50容量%における体積累積粒径を銅粒子の粒径とする。
銅粉を構成する銅粒子が球状である場合、その粒径は0.10μmを超えることが好ましく、0.11μm以上であることが更に好ましく、0.12μm以上であることが一層好ましい。一方、銅粒子の粒径は0.55μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。銅粒子の粒径が0.1μm超であることによって、乾燥塗膜13bを焼成して焼結体(接合層)としたときに収縮割れが生じにくくなる。一方、銅粒子の粒径を0.55μm以下に設定することによって、乾燥塗膜13b中に存在する銅粒子の焼結を十分なものとすることができる。
銅粒子が扁平状である場合の粒径は以下の方法により定めるものとする。すなわち、500倍以上50,000倍以下の範囲で走査型電子顕微鏡による観察像を用いて輪郭のはっきりした銅粒子の撮影像を取得し、該撮影像を画像解析する。具体的には、扁平状銅粒子の板面に水平な方向において360度回転させながら、各二次元投影像における仮想的な外接長方形を考えたときに、その中で外接長方形の一辺が最大となるものについて、その長辺を長軸とする。当該粒子を無作為に50個以上選んで長軸をそれぞれ測定し、これらの算術平均値を求め、これを粒径とする。画像解析には、例えば画像解析式粒度分布ソフトウェアのマウンテック社製Mac-viewを用いる。
銅粒子が扁平状である場合の粒径は好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、そして、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは20μm以下である。粒径がかかる範囲にあることによって、球状の銅粒子と組み合わせた際に、乾燥塗膜13bの過度な体積収縮に伴う焼結体の割れを防止しつつ、乾燥塗膜13bの焼結性に優れたものとなる。
接合用組成物に占める銅粉の含有量は、銅粉の充填性を高めて十分な接合強度を発現させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
銅粒子は、表面処理されていても、表面処理されていなくてもよい。銅粒子が表面処理されているものを用いることで、銅粒子どうしの過度の凝集を抑制することができる。
接合用組成物は液体有機物を含む。接合用組成物中の液体有機物の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは11質量%以上、更に好ましくは12質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは29質量%以下、更に好ましくは28質量%以下である。
接合用組成物が液体有機物を10質量%以上含んでいることによって、良好な分散性と印刷性とを両立させることが可能となる。
また、接合用組成物が液体有機物を30質量%以下含んでいることによって、接合工程後に得られる接合体の接合強度をより高めることができる。
接合用組成物が含有する液体有機物は、230℃以上300℃未満の沸点を有し、且つ25℃、せん断速度10s-1の条件における粘度が100mPa・s以上である有機物(以下、「第1の有機物」ともいう。)を含む。第1の有機物は上述の沸点及び粘度を有しているので、乾燥塗膜形成工程を得た後も安定して微量に残存することが可能であり、結果、第2被接合体12の乾燥塗膜13bへの仮固定を行うことが可能となる。この観点から、第1の有機物の沸点は230℃以上であることが好ましく、235℃以上であることがより好ましい。また、接合用組成物の接合後の信頼性を向上させる観点から、290℃以下であることが好ましく、280℃以下であることが更に好ましい。
第2被接合体12の乾燥塗膜13bへの仮固定を首尾よく行う観点から、25℃、せん断速度10s-1の条件における第1の有機物の粘度は100mPa・s以上であり、好ましくは110mPa・s以上、更に好ましくは120mPa・s以上であり、特に好ましくは140mPa・s以上である。また、ペースト作製時のハンドリングのし易さの観点から、25℃、せん断速度10s-1の条件における第1の有機物の粘度は5000mPa・s以下であることが好ましく、4000mPa・s以下であることが更に好ましく、3000mPa・s以下であることが一層好ましく、2000mP・s以下であることがより一層好ましく、1000mPa・s以下であることが更に一層好ましく、500mPa・s以下であることが特に好ましい。
第1の有機物の粘度は、レオメーター(例えば、Thermo Scientific社製のレオメーターMARS III)を用いて測定することができる。第1の有機物の粘度の測定条件は以下のとおりである。
測定モード : せん断速度依存性測定
センサー : パラレル型(Φ60mm)
測定温度 : 25℃
ギャップ : 0.300mm
せん断速度 : 0.05~120.01s-1
測定時間 : 2分
接合工程における銅粉の焼結を促進する観点から、第1の有機物は複数の水酸基を有する化合物であることが好ましい。
第1の有機物の例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(以下、「オクチレングリコール」ともいう。)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、及び1,5-ペンタンジオール等を挙げることができる。
接合用組成物は、第1の有機物以外の有機物(以下、「第2の有機物」ともいう。)を含んでもよい。第2の有機物の種類に制限はない。第2の有機物は、230℃未満又は300℃以上の沸点を有していてもよく、230℃以上300℃未満の融点を有していてもよい。また第2の有機物は、25℃、せん断速度10s-1の条件における粘度が100mPa・s未満であってもよく、100mPa・s以上であってもよい。
乾燥塗膜13bによる第2被接合体12の仮固定を適切に行う観点、接合工程において第1被接合体11と第2被接合体12との接合強度を十分に高める観点から、接合用組成物中の第1の有機物の含有量は好ましくは10質量%以上、より好ましくは11質量%以上、更に好ましくは12質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは29質量%以下、更に好ましくは28質量%以下である。
同様の観点から、接合用組成物は、銅粉100質量部に対して第1の有機物を15質量部以上含むことが好ましく、16質量部以上含むことがより好ましく、17質量部以上含むことが更に好ましい。また、接合用組成物は、銅粉100質量部に対して第1の有機物を45質量部以下含むことが好ましく、40質量部以下含むことがより好ましく、35質量部以下含むことが更に好ましい。
接合用組成物の印刷・分散性・仮固定性の観点から、接合用組成物中の第2の有機物の含有量は好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは17質量%以下である。
接合用組成物の塗布性又は印刷性を高める観点及び仮固定を首尾よく行う観点から、接合用組成物中の有機物の含有量は、9質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、11質量%以上であることが一層好ましい。また、接合用組成物中の有機物の含有量は、35質量%以下であることが好ましく、33質量%以下であることが更に好ましく、30質量%以下であることが一層好ましい。
接合工程における銅粉の焼結を促進する観点から、接合用組成物は還元性を有する少なくとも1種の物質を含むことが好ましい。還元性を有する物質は第1の有機物であってもよく、第2の有機物であってもよく、無機物であってもよい。
還元性を有する物質としては、モノアルコール、アミノアルコール、多価アルコール、クエン酸、シュウ酸、ギ酸、アスコルビン酸、アルデヒド、ヒドラジン及びその誘導体、ヒドロキシルアミン及びその誘導体、ジチオスレイトール、ホスファイト、ヒドロホスファイト、亜リン酸及びその誘導体等が挙げられる。なかでも接合用組成物は、還元性を有する物質としてアミノアルコール及び/又は多価アルコールを含むことが好ましい。
接合用組成物に含まれるアミノアルコールとしては、その還元力を高める観点から、水酸基を好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上、更に好ましくは4個以上、特に好ましくは5個以上有するものを用いることができる。
接合工程における銅粉の焼結を十分に促進する観点及びアミノアルコール以外の成分の含有量を十分に確保する観点から、接合用組成物がアミノアルコールを含む場合、該接合用組成物中のアミノアルコールの含有量は0.0001質量%以上であることが好ましく、00002質量%以上であることがより好ましく、0.0003質量%以上であることが更に好ましい。また、接合用組成物中のアミノアルコールの含有量は5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3.5質量%以下であることが更に好ましい。
接合用組成物に含まれる多価アルコールとしては、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。接合工程における銅粉の焼結を促進する観点から、接合用組成物に含まれる多価アルコールとしては、数平均分子量が20以上のものを好ましく用いることができ、より好ましくは数平均分子量が50以上、更に好ましくは数平均分子量が100以上、そして、好ましくは数平均分子量が10000以下、より好ましくは5000以下、更に好ましくは数平均分子量が4000以下である。接合用組成物が多価アルコールを含む場合、接合工程における銅粉の焼結を十分に促進する観点及び多価アルコール以外の成分の含有量を十分に確保する観点から、該接合用組成物中の多価アルコールの含有量は好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
第2被接合体12の乾燥塗膜13bへの仮固定をより確実に行う観点及び接合工程における銅粉の焼結を促進する観点から、接合用組成物は第1の有機物と、還元性を有し、且つ第1の有機物とは異なる1種又は2種以上の物質と、を含むことが好ましく、第1の有機物と、アミノアルコール又はポリエチレングリコールとを含むことがより好ましく、第1の有機物と、ポリエチレングリコールとを含むことが更に好ましく、第1の有機物と、ポリエチレングリコールと、アミノアルコールとを含むことが特に好ましい。
接合用組成物は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分として、例えば粘度調整剤及び表面張力調整剤を挙げることができる。
粘度調整剤としては、接合用組成物の粘度の高低を調整して、好ましくは後述の粘度範囲内に設定できるものがよく、例えばケトン類、エステル類、アルコール類、グリコール類、炭化水素、ポリマーなどが挙げられる。
表面張力調整剤としては、湿潤塗膜13aの表面張力を調整できるものがよく、例えばアクリル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アルキルポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸グリセロールエステルなどのポリマーやアルコール系、炭化水素系、エステル系、グリコール等のモノマーが挙げられる。
接合用組成物の塗布性又は印刷性を高める観点から、接合用組成物の粘度は、25℃、せん断速度10s-1の条件において、好ましくは5Pa・s以上、より好ましくは7Pa・s以上、そして、好ましくは100Pa・s以下、より好ましくは80Pa・s以下である。
接合用組成物の粘度は、先に説明した第1の有機物の粘度の測定方法と同様の方法によって測定することができる。
第1被接合体11及び第2被接合体12はその種類に特に制限はない。一般的には、第1被接合体11及び第2被接合体12はいずれも、それらの接合対象面に金属を含むことが好ましい。例えば第1被接合体11及び第2被接合体12の少なくとも一方として、金属からなる面を有する部材を用いることができる。「金属」とは、他の元素と化合物を形成していない金属そのもの、又は2種類以上の金属の合金のことである。このような金属としては、例えば銅、銀、金、アルミニウム、パラジウム若しくはニッケル又はそれらの2種以上の組み合わせからなる合金が挙げられる。
第1被接合体11及び第2被接合体12のうちの少なくとも一方が、金属からなる面を有する部材である場合、該金属からなる面は一般には平面であることが好ましいが、場合によっては曲面であってもよい。
第1被接合体11及び第2被接合体12の具体例としては、それぞれ独立して、例えば上述の金属からなるスペーサーや放熱板、半導体素子、並びに上述した金属の少なくとも1種を表面に有する基板等が挙げられる。
基板としては、例えば、セラミックス又は窒化アルミニウム板の表面に銅等の金属層を有する絶縁基板等を用いることができる。
第1被接合体11及び/又は第2被接合体12として半導体素子を用いる場合、半導体素子は、Si、Ga、Ge、C、N、As等の元素のうち1種以上を含む。
第1被接合体11は、好ましくは基板である。第2被接合体12は、スペーサー、放熱板、又は半導体素子のいずれかであることが好ましい。
第1被接合体11及び第2被接合体12の少なくとも一方として、金属微粒子及び有機物を含む接合用組成物の乾燥体を用いることもできる。具体的には、第1被接合体11として、金属からなる面を有する部材を用い、第2被接合体12として、金属微粒子及び有機物を含む接合用組成物の乾燥体を用いることができる。なお、接合用組成物の乾燥体を用いる場合には、銅等の金属からなる支持基材に接合用組成物を塗工し乾燥することで乾燥体とすることが好ましい。
本製造方法によって得られた接合構造体は、大電流を扱うデバイス、例えば車載用電子回路やパワーデバイスが実装された電子回路などに好適に用いられる。
以上、本発明の製造方法をその好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。
例えば、湿潤塗膜が25℃で固体である有機物を含む場合においては、乾燥塗膜形成工程において、液体有機物に加えて、25℃で固体である有機物の一部又は全部が湿潤塗膜から除去されてもよい。
本発明の上記の実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
[1] 第1被接合体と第2被接合体とが接合層を介して接合されてなる接合構造体の製造方法であって、
銅粉及び25℃で液体である有機物を含む接合用組成物を前記第1被接合体に塗布して湿潤塗膜を形成する工程と、
前記湿潤塗膜から前記有機物を除去して乾燥塗膜を得る工程と、
加圧によって前記第2被接合体を前記乾燥塗膜に仮固定して、前記第1被接合体、前記乾燥塗膜及び前記第2被接合体がこの順で積層されてなる積層体を得る工程と、
前記積層体を加圧下で加熱して前記乾燥塗膜中の前記銅粉を焼結させ、焼結によって生じた前記接合層によって前記第1被接合体と前記第2被接合体とを接合する工程と、を備え、
前記有機物は第1の有機物を含み、
前記第1の有機物は、230℃以上300℃未満の沸点を有し、且つ25℃、せん断速度10s-1の条件における粘度が100mPa・s以上である、接合構造体の製造方法。
[2] 前記銅粉を焼結させるときの温度、圧力及び時間のいずれか二つが、前記第2被接合体を前記乾燥塗膜に仮固定するときの温度、圧力及び時間のいずれか二つよりも高いか又は長い、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記湿潤塗膜から前記有機物を除去し、流動性を有さない前記乾燥塗膜を得る、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記湿潤塗膜の質量が15質量%以上30質量%以下減少するように前記有機物を前記湿潤塗膜から除去する、[3]に記載の製造方法。
[5] 前記湿潤塗膜中の前記有機物の含有量を100質量部としたとき、
前記乾燥塗膜中の前記有機物の含有量が25質量部以下となるように前記有機物を前記湿潤塗膜から除去する、[1]ないし[4]のいずれか一項に記載の製造方法。
[6] 前記湿潤塗膜を、大気雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下に、100℃以上200℃以下で、10分以上加熱し、前記有機物を除去して前記乾燥塗膜を得る、[1]ないし[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[7] 前記接合用組成物が還元性を有する少なくとも1種の物質を含む、[1]ないし[6]のいずれか一項に記載の製造方法。
[8] 前記物質の少なくとも1つがアミノアルコール化合物である、[7]に記載の製造方法。
[9] 前記接合用組成物は、前記銅粉100質量部に対して前記第1の有機物を15質量部以上45質量部以下含む、[1]ないし[8]のいずれか一項に記載の製造方法。
[10] 加圧及び加熱によって前記第2被接合体を前記乾燥塗膜に仮固定する、[1]ないし[9]のいずれか一項に記載の製造方法。
[11] 前記第1の有機物のうち、少なくとも1種は、複数の水酸基を有する化合物である、[1]ないし[10]のいずれか一項に記載の製造方法。
[12] 前記湿潤塗膜中の前記銅粉が焼結しない条件で、前記第2被接合体を前記乾燥塗膜に仮固定して前記積層体を得る、[1]ないし[11]のいずれか一項に記載の製造方法。
[13] 前記接合構造体における前記第1被接合体と前記第2被接合体との接合強度が30MPa以上となるように前記銅粉を焼結させる、[1]ないし[12]のいずれか一項に記載の製造方法。
[14] 第1被接合体と第2被接合体とを接合層を介して接合する方法であって、
銅粉及び25℃で液体である有機物を含む接合用組成物を前記第1被接合体に塗布して湿潤塗膜を形成する工程と、
前記湿潤塗膜から前記有機物を除去して乾燥塗膜を得る工程と、
加圧によって前記第2被接合体を前記乾燥塗膜に仮固定して、前記第1被接合体、前記乾燥塗膜及び前記第2被接合体がこの順で積層されてなる積層体を得る工程と、
前記積層体を加圧及び加熱して前記乾燥塗膜中の前記銅粉を焼結させ、焼結によって生じた前記接合層によって前記第1被接合体と前記第2被接合体とを接合する工程と、を備え、
前記有機物は第1の有機物を含み、
前記第1の有機物は、230℃以上300℃未満の沸点を有し、且つ25℃、せん断速度10s-1の条件における粘度が100mPa・s以上である、接合方法。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1ないし4並びに比較例1及び2〕
(1)接合用組成物の調製
接合用組成物は、粒径0.1~0.2μmの球状銅粒子及び粒径4.5μmの扁平状銅粒子からなる銅粉及び有機物を表2に示す質量比で混合して調製した。なお、PEG-300は数平均分子量300のポリエチレングリコールを意味し、Bis-trisはビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(5つの水酸基を有するアミノアルコール)を意味する。PEG-300及びBis-trisはいずれも還元性を有する。表1には、各実施例及び比較例で用いた有機物のうち、25℃で液体状態である有機物の沸点及び25℃、せん断速度10s-1の条件における粘度を示す。なお、表1において「-」は不明を表す。
表1から明らかなとおり、オクチレングリコール及び3-メチル-1,5-ペンタンジオールは第1の有機物に該当し、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール及びPEG-300は第2の有機物に該当する。
なお、各実施例及び比較例で用いたBis-trisは25℃で固体である。
(2)接合用組成物の第1被接合体への塗布
銅とセラミックスとを厚み方向に積層させてなる基板(20mm×20mm、厚み2mm)を第1被接合体として用いた。この基板の銅の側の面上に、メタルマスク(6mm×6mm、厚み100μm)を用いて接合用組成物を印刷し、矩形の湿潤塗膜を形成した。
湿潤塗膜を表2に記載の雰囲気下、120℃にて30分乾燥させて液体有機物を除去し、乾燥塗膜を得た。液体有機物の除去による湿潤塗膜の質量減少割合を表2に示した。また、湿潤塗膜中の液体有機物の含有量を100質量部としたときの、乾燥膜中の液体有機物の含有量も同表に示されている。乾燥膜中の液体有機物の含有量は、湿潤塗膜から液体有機物を除去して乾燥塗膜を形成したときに、液体有機物以外の成分が湿潤塗膜から除去されなかったと仮定して算出した。いずれの実施例及び比較例においても、乾燥塗膜は流動性を有していなかった。
湿潤塗膜の質量減少割合は以下の方法で測定した。
銅とセラミックスを積層させてなる基板の質量を電子天秤で測定した後、接合用組成物を印刷後の湿潤塗膜を含む基板の質量を電子天秤で測定した。前記湿潤塗膜を含む基板の質量から、印刷前の基板の質量を引いた値を、印刷によって得られた湿潤塗膜の質量とした。その後、前記湿潤塗膜を含む基板を所定時間乾燥後、乾燥塗膜を含む基板の質量を電子天秤で測定した。湿潤塗膜を含む基板の質量から、乾燥塗膜を含む基板の質量を引いた値を、乾燥によって減少した湿潤塗膜の質量とした。前記乾燥によって減少した湿潤塗膜の質量を、印刷によって得られた湿潤塗膜の質量で割り、100を乗じることで、湿潤塗膜の質量減少割合(%)を算出した。
(3)乾燥塗膜上への第2被接合体の載置
第2被接合体として半導体パワーデバイスのモデル部材を想定して、AgめっきしたSiCチップを用意した(5mm×5mm×1.92mm、重量:0.016g)。SiCチップのAgめっき面を乾燥塗膜上の中央部にチップマウンタを用いて載置した。
(4)積層体の形成
SiCチップを170℃に加熱後、SiCチップのAgめっき面とは反対面から2.4MPaの圧力を0.4秒間加えることでSiCチップを乾燥塗膜中に押し込んでSiCチップを仮止めし、積層体を形成した。
(5)積層体の焼成
積層体を焼成炉に移動させ、窒素雰囲気下で積層体を25MPaに加圧した後、300℃まで加熱し、5分保持することで塗膜を焼成して接合層とし、接合構造体を得た。
〔評価1〕
実施例及び比較例において「(4)積層体の形成」で得られた積層体を1秒かけて上下反転させて、前記SiCチップの脱落の有無を目視観察した。結果を表2に示す。
〔評価2〕
「評価1」でSiCチップの脱落が観察されなかった実施例1及び2において「(5)積層体の焼成」で得られた接合構造体の接合強度を確認するため、シェア強度を以下の方法で測定した。シェア強度は、「破断荷重/SiCチップの底面積」で定義される値である。結果を表2に示す。表2中、「-」は未測定を示す。・測定装置名:Condor Sigma(XYZTEC社製)・ロードセル:200kgf・シェアツール:幅6.0mm、厚み2.0mm、シャフト1/4インチ(型番:T0S663060)・シェア速度:50μm/s・シェア高さ:0.02mm(ゼロ点は6mm角で印刷した塗膜上部とした)
表2から明らかなとおり、適度な粘度を有するオクチレングリコール又は3-メチル-1,5-ペンタンジオールを用いた実施例1ないし4においては、仮固定剤を用いていないにもかかわらず、第2被接合体の脱落を生じさせることなく、第1被接合体及び第2被接合体どうしを首尾よく接合することができた。また、これらの実施例で製造した接合構造体の接合強度は十分に高いものであった。
本発明によれば、被接合体に位置ずれや脱落を生じさせることなく、接合材料によって被接合体どうしの接合が可能な接合構造体の製造方法及び接合方法が提供される。

Claims (14)

  1. 第1被接合体と第2被接合体とが接合層を介して接合されてなる接合構造体の製造方法であって、
    銅粉及び25℃で液体である有機物を含む接合用組成物を前記第1被接合体に塗布して湿潤塗膜を形成する工程と、
    前記湿潤塗膜から前記有機物を除去して乾燥塗膜を得る工程と、
    加圧によって前記第2被接合体を前記乾燥塗膜に仮固定して、前記第1被接合体、前記乾燥塗膜及び前記第2被接合体がこの順で積層されてなる積層体を得る工程と、
    前記積層体を加圧下で加熱して前記乾燥塗膜中の前記銅粉を焼結させ、焼結によって生じた前記接合層によって前記第1被接合体と前記第2被接合体とを接合する工程と、を備え、
    前記有機物は第1の有機物を含み、
    前記第1の有機物は、230℃以上300℃未満の沸点を有し、且つ25℃、せん断速度10s-1の条件における粘度が100mPa・s以上1000mPa・s以下である、接合構造体の製造方法。
  2. 前記銅粉を焼結させるときの温度、圧力及び時間のいずれか二つが、前記第2被接合体を前記乾燥塗膜に仮固定するときの温度、圧力及び時間のいずれか二つよりも高いか又は長い、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記湿潤塗膜から前記有機物を除去し、流動性を有さない前記乾燥塗膜を得る、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記湿潤塗膜の質量が15質量%以上30質量%以下減少するように前記有機物を前記湿潤塗膜から除去する、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記湿潤塗膜中の前記有機物の含有量を100質量部としたとき、
    前記乾燥塗膜中の前記有機物の含有量が25質量部以下となるように前記有機物を前記湿潤塗膜から除去する、請求項1又は2に記載の製造方法。
  6. 前記湿潤塗膜を、大気雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下に、100℃以上200℃以下で、10分以上加熱し、前記有機物を除去して前記乾燥塗膜を得る、請求項1又は2に記載の製造方法。
  7. 前記接合用組成物が還元性を有する少なくとも1種の物質を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
  8. 前記物質の少なくとも1つがアミノアルコール化合物である、請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記接合用組成物は、前記銅粉100質量部に対して前記第1の有機物を15質量部以上45質量部以下含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
  10. 加圧及び加熱によって前記第2被接合体を前記乾燥塗膜に仮固定する、請求項1又は2に記載の製造方法。
  11. 前記第1の有機物は、複数の水酸基を有する化合物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  12. 前記湿潤塗膜中の前記銅粉が焼結しない条件で、前記第2被接合体を前記乾燥塗膜に仮固定して前記積層体を得る、請求項1又は2に記載の製造方法。
  13. 前記接合構造体における前記第1被接合体と前記第2被接合体との接合強度が30MPa以上となるように前記銅粉を焼結させる、請求項1又は2に記載の製造方法。
  14. 第1被接合体と第2被接合体とを接合層を介して接合する方法であって、
    銅粉及び25℃で液体である有機物を含む接合用組成物を前記第1被接合体に塗布して湿潤塗膜を形成する工程と、
    前記湿潤塗膜から前記有機物を除去して乾燥塗膜を得る工程と、
    加圧によって前記第2被接合体を前記乾燥塗膜に仮固定して、前記第1被接合体、前記乾燥塗膜及び前記第2被接合体がこの順で積層されてなる積層体を得る工程と、
    前記積層体を加圧及び加熱して前記乾燥塗膜中の前記銅粉を焼結させ、焼結によって生じた前記接合層によって前記第1被接合体と前記第2被接合体とを接合する工程と、を備え、
    前記有機物は第1の有機物を含み、
    前記第1の有機物は、230℃以上300℃未満の沸点を有し、且つ25℃、せん断速度10s-1の条件における粘度が100mPa・s以上1000mPa・s以下である、接合方法。
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