JP7846511B2 - クランクシャフトの穴あけ加工方法 - Google Patents

クランクシャフトの穴あけ加工方法

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Description

本発明は、クランクシャフトの穴あけ加工方法、特に、ジャーナル軸部とピン軸部との間を貫通するオイル循環用の貫通穴を形成するためのクランクシャフトの穴あけ加工方法に関する。
自動車のクランクシャフトにはジャーナル軸部とピン軸部とが、クランクシャフトの長手方向に交互に配置されている。ジャーナル軸部は軸受けによってクランクケースに支承され、ピン軸部にはコネクティングロッドの端部が連接される。したがって、ジャーナル軸部やピン軸部の外周は摺動部となり、これらの摺動部の潤滑を良くするために、ジャーナル軸部とピン軸部との間を貫通する貫通穴を設けて、この貫通穴によりジャーナル軸部及びピン軸部に潤滑油の供給を行っている(例えば、特許文献1参照)。
図4は、特許文献1に開示されているクランクシャフトへの穴あけ加工方法の説明図である。まず、ジャーナル軸部12及びピン軸部14に軸部の外表面間を貫通する貫通穴32、34を形成する。これらの貫通穴32、34は、ジャーナル軸部12及びピン軸部14のほぼ軸芯を通り軸部外表面に対してほぼ垂直に貫通するように形成されている。そして、クランクアーム部36から、斜行穴形成用穴部40を介して斜行穴20を、上記貫通穴32、34とジャーナル軸部12及びピン軸部14のほぼ軸芯で連通するように形成している。これらの貫通穴32、34及び斜行穴20を加工形成した後に、高周波焼入れ装置を用いて、クランクシャフト10の表面に高周波焼き入れを施して硬化層を形成している。
近年、エンジンの小型・高性能化等の理由から、クランクシャフトの全長を短縮したものが求められている。クランクシャフトの全長を短縮していくと、図5に示す様に、ジャーナル軸部12とピン軸部14との間のウェブ16が薄くなり、斜行穴20とジャーナル軸部12及びピン軸部14の表面R部18が近くなる。
ジャーナル軸部12の貫通穴32、ピン軸部14の貫通穴34を形成した後に、ウェブ16に貫通穴形成用穴部40を形成して貫通穴20の形成加工を施し、その後に、強度を確保する上で高周波焼き入れを施すと、表面R部18と貫通穴20が近いため、表面R部18の焼き入れによる過加熱で貫通穴20内に焼き割れを誘発する。そのために、貫通穴20は高周波焼き入れ後に実施している。
特開2001-271825号公報
上述のように、クランクシャフト10の全長が短縮されたものでは、ジャーナル軸部12とピン軸部14のそれぞれに貫通穴32、34を形成した後に、ジャーナル軸部12とピン軸部14を貫通する貫通穴20を加工し、その後に高周波焼き入れを施した場合には、貫通穴20に焼き割れが発生する恐れがある。したがって、これまでは、ジャーナル軸部12とピン軸部14にそれぞれ貫通穴32、34を形成した後に、高周波焼き入れを施し、その後に貫通穴20を加工する方法を採用していた。
しかし、この方法では、貫通穴20とジャーナル軸部12及びピン軸部14に形成したそれぞれの貫通穴32、34との交差する箇所には、加工バリが発生することでバリ除去の作業が必要となる。また、貫通穴20を形成するためにウェブ16に開けた貫通穴形成用穴部40を塞ぐために、別部材をこの貫通穴形成用穴部40に挿入する作業が必要となる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、貫通穴の形成の困難化を伴うことなく、焼入れ工程時の焼き割れを防止することのできるクランクシャフトの穴あけ加工方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態のクランクシャフトの穴あけ加工方法は、
ジャーナル軸部の表面からピン軸部の表面まで貫通するオイル循環用の貫通穴を形成するクランクシャフトの穴あけ加工方法において、
前記貫通穴の形成前に前記ジャーナル軸部及び前記ピン軸部の両方の外表面の前記貫通穴形成位置に凹部を形成する凹部形成工程と、
該凹部形成工程の後、前記クランクシャフトの表面に高周波焼き入れを施す焼入れ工程と、
該焼入れ工程の後、前記凹部の形成された箇所から前記貫通穴を形成する貫通穴形成工程と、を有し、
前記凹部の深さは、前記高周波焼入れによる硬化層の深さよりも深く、前記焼入れ工程の際に前記凹部を塞いでいない状態で前記凹部の底部表面が未焼きまたは不完全焼入れ状態となる深さであることを特徴とする。
この方法によれば、オイル循環用の貫通穴の形成前に、まず、ジャーナル軸部又はピン軸部の外表面の貫通穴の形成箇所に予め凹部を形成している。そして、貫通穴の形成工程前に焼入れ工程を行い、高周波による焼入れ工程後に貫通穴形成工程が行われる。さらに、凹部の深さは焼入れ工程中においても焼き入れが及ばない程度の深さとされており、焼入れ工程後において凹部の底部は硬化していない状態が保たれている。したがって、例えば、ドリルなどによる凹部を起点とする貫通穴形成工程における作業は通常の焼入れ前の状態と同様に行うことができる。このように、高周波焼入れ時には貫通穴が形成されていないので、貫通穴の存在による焼き割れの発生も回避される。
この方法により、ジャーナル軸部及びピン軸部の両方に凹部が形成されることで、貫通穴の形成される始点部と終点部がともに高周波焼入れによる硬化状態が生じていないので、硬化層の加工の必要性がなく、貫通穴の加工がより容易なものとなる。
本発明の一実施形態は、前記クランクシャフトの穴あけ加工方法において、
前記凹部は、該凹部の壁面と前記ピン軸部及び/又は前記ジャーナル軸部の外表面との為す角度が垂直または鈍角であることを特徴とする。
この方法により、凹部を形成した後、高周波焼き入れを行うが、凹部の壁面とピン軸部及び/又はジャーナル軸部の外表面との為す角度が垂直または鈍角となっており、鋭角部が無いので、高周波焼き入れによって焼き割れを生じる恐れはない。
本発明の一実施形態は、前記クランクシャフトの穴あけ加工方法において、
前記貫通穴は、前記ピン軸部の外表面から前記ジャーナル軸部の外表面まで直線状に伸長することを特徴とする。
本発明の一実施形態のクランクシャフトの穴あけ加工方法では、ピン軸部及び/又はジャーナル軸部の表面の凹部から容易に直線状の貫通穴を形成することができる。そして、この直線状に伸長する貫通穴が形成されることにより、従来、ピン軸部及びジャーナル軸部にそれぞれ形成していたほぼ軸芯を通り軸部外表面に対してほぼ垂直に貫通するように形成した貫通穴の部分の存在がなくなり、したがって、オイルの循環がより良好なものとなり、従来の貫通穴形成用穴部を塞ぐ作業やバリ除去の作業も不要となる。
本発明のクランクシャフトの穴あけ加工方法によれば、オイル循環用の貫通穴の形成前に焼入れが行われることから焼入れ時の焼き割れの問題が解消される。そして、焼入れ工程の後に、焼き入れによる硬化が生じていない凹部から貫通穴が形成されるので、加工の困難性も生じることがない。また、直線状の貫通穴が形成されることで、加工作業が容易化する。
本発明のクランクシャフトの穴あけ加工方法が施されたクランクシャフトの説明図である。 図1の凹部についての説明図である。 図1の凹部についての説明図である。 従来の穴あけ加工方法の説明図である。 従来の穴あけ加工方法の説明図である。
以下、本発明のクランクシャフトの穴あけ加工方法及びこの方法により穴あけ加工が施されたクランクシャフトの一実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態のクランクシャフトは、全長が短く、ジャーナル部とピン軸部との間のウェブが薄いものである。
図1は、本実施の形態におけるクランクシャフトの穴あけ加工が施されたクランクシャフトの説明図である。クランクシャフト10の一部を、一部断面で示しており、ピン軸部14の外表面からジャーナル軸部12の外表面まで貫通穴20が形成されている。また、ピン軸部14とジャーナル軸部12の高周波焼き入れにより硬化した層を符号28(ドットを付した領域)で示している。
穴あけ加工の手順を以下、説明する。先ず、ジャーナル軸部12とピン軸部14の外表面の貫通穴形成位置に凹部24を形成する(凹部形成工程)。
図2は、外表面に形成した凹部の説明図である。凹部24はラウンド型であり、直径が約5mm、外表面22から凹部24の底部までは約2.5mmである。これらの数値は一実施例であり、これらの数値に限定されない。深さを約2.5mmとしたのは、後述するように、クランクシャフト10に高周波焼き入れを施したときに、凹部24の底部30は未焼き入れ部(未硬化部)または不完全焼入れ部となるようにするためである。
また、凹部24の壁面26と外表面22の為す角度は、垂直または鈍角になる様に形成している。このようにすることで、凹部24を形成した後、高周波焼き入れを行うが、凹部24の壁面26とピン軸部14及びジャーナル軸部12の外表面22との為す角度が垂直または鈍角となっており、鋭角部が無いので、高周波焼き入れによって焼き割れを生じる恐れはない。
ジャーナル軸部12とピン軸部14にそれぞれ形成される凹部24は、本実施の形態では同じ直径、深さ、形状を有している。
ジャーナル軸部12及びピン軸部14の表面全てに凹部24を形成した後、高周波焼き入れを施す(焼入れ工程)。高周波焼き入れは周知の方法であり、焼き入れの深さを設定するために、クランクシャフト10を構成する材質の抵抗値、透磁率などを考慮して周波数、電流等が適宜調整される。本実施の形態においては、前述のように凹部24の底部30は未焼入れ部となるように周波数、電流等を調整している。
図3は、ジャーナル軸部12とピン軸部14の外表面に形成した凹部24における焼き入れの様子を示した図である。図3(a)は、凹部24を形成した場合、図2(b)は凹部24を形成しない場合について示す。
凹部24を形成した場合、前述のように凹部24の底部30は、焼き入れされないように高周波焼き入れの条件が設定されており、本実施の形態では設定どおり、図3(a)に示す様に凹部24の底部30が未焼入れ状態となっている。焼き入れが施された箇所(硬化された箇所)は、符号28で(ドットを付して)示している。
凹部24を形成しない場合は、図3(b)に示すように焼入れ部28が外表面22から略一様の深さで形成されている。本実施の形態では、焼き入れを施した場合、焼き入れの深さは約2.0mmである。
クランクシャフト10の表面の焼入れ工程を実施した後、凹部24の底部30から貫通穴20の形成を行う(貫通穴形成工程)。本実施の形態では、ジャーナル軸部12及びピン軸部14の両方に凹部24が形成されることで、貫通穴20の形成される始点部と終点部がともに高周波焼入れによる硬化状態が生じていない。したがって、硬化層の加工の必要性がなく、貫通穴20の加工がより容易なものとなる。なお、貫通穴20の形成は通常のドリルを用いて行っている。
他の実施の形態では、凹部24は貫通穴20の形成を始める外表面22だけに形成している。この他の実施の形態では、ドリルが貫通穴20の形成の最終時に外表面22から出て来る際に、外表面22が焼き入れにより硬度が高くなっているが、ドリルの歯先がそれまで加工されてきた貫通穴20によりぶれることが無いので、貫通穴20は問題なく形成することができる。
このような貫通穴20の形成をクランクシャフト10の全ての所定箇所において実施することでクランクシャフト10の穴あけ加工が終了する。
本実施の形態のクランクシャフト10の穴あけ加工方法及びこの方法により穴あけ加工が施されたクランクシャフトによれば、ジャーナル軸部12からピン軸部14への貫通穴20は、ジャーナル軸部12及びピン軸部14のそれぞれの外表面22に形成された凹部24間に形成される。凹部24の底部30は焼き入れが為されていないので、貫通穴20の加工は容易に行うことが可能である。
また、本穴あけ加工が施されたクランクシャフト10には、ピン軸部14とジャーナル軸部12を貫通する貫通穴20だけが直線状に伸長している。これにより、従来、ピン軸部14及びジャーナル軸部12にそれぞれ形成していたほぼ軸芯を通り軸部外表面22に対してほぼ垂直に貫通するように形成した貫通穴の部分の存在がなくなる。したがって、オイルの循環がより良好なものとなり、従来の貫通穴形成用穴部40を塞ぐ作業やバリ除去の作業も不要となる。したがって、高性能なクランクシャフトを提供することができる。
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、貫通穴20の直径は約1.6mm、凹部24の直径は約5mm、凹部24の深さは約2.5mmとしたがこの数値に限定されない。また、凹部24の形状はラウンド形状としたが逆台形状、逆三角形状、U字形状であっても良い。
10 クランクシャフト
12 ジャーナル軸部
14 ピン軸部
16 ウェブ
18 R部
20 貫通穴
22 外表面
24 凹部
26 壁面
28 焼入れ部
30 底部
32 ジャーナル軸部貫通穴
34 ピン軸部貫通穴
36 クランクアーム部
40 貫通穴(斜行穴)形成用穴部

Claims (3)

  1. ジャーナル軸部の表面からピン軸部の表面まで貫通するオイル循環用の貫通穴を形成するクランクシャフトの穴あけ加工方法において、
    前記貫通穴の形成前に前記ジャーナル軸部及び前記ピン軸部の両方の外表面の前記貫通穴形成位置に凹部を形成する凹部形成工程と、
    該凹部形成工程の後、前記クランクシャフトの表面に高周波焼き入れを施す焼入れ工程と、
    該焼入れ工程の後、前記凹部の形成された箇所から前記貫通穴を形成する貫通穴形成工程と、を有し、
    前記凹部の深さは、前記高周波焼入れによる硬化層の深さよりも深く、前記焼入れ工程の際に前記凹部を塞いでいない状態で前記凹部の底部表面が未焼きまたは不完全焼入れ状態となる深さであることを特徴とするクランクシャフトの穴あけ加工方法。
  2. 前記凹部は、該凹部の壁面と前記ピン軸部及び/又は前記ジャーナル軸部の外表面との為す角度が垂直または鈍角であることを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの穴あけ加工方法。
  3. 前記貫通穴は、前記ピン軸部の外表面から前記ジャーナル軸部の外表面まで直線状に伸長することを特徴とする請求項1又は2に記載のクランクシャフトの穴あけ加工方法。
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