以下の実施の形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
(第1の実施の形態)
プリント基板を硫化水素に暴露した場合に発生する典型的な不具合として、次の(1)及び(2)が知られている。
(1)硫化銅がプリント基板のパターン(配線、ランド等)からその周囲に進展(腐食進展)し、隣のパターンまで至り、短絡する。
(2)プリント基板のパターン内部の断面全体が硫化し、その部分の抵抗値が上昇する。
過去の不具合を調査した結果、大部分のケースで不具合(2)よりも不具合(1)が先に発生することが確認された。したがって、不具合(1)が発生する前に、その予兆を検出できれば好ましい。本実施の形態においては、硫化水素が発生し得る環境に設置された電気機器等に含まれるプリント基板等が硫化水素により腐食されることにより、配線が短絡する等の不具合(1)が発生するリスク(以下、硫化水素による不具合リスクという)を検出することを目的とする。
図1に、硫化水素環境におけるプリント基板の腐食の程度を示す。具体的には、模擬プリント基板を濃度が異なる複数の硫化水素環境に暴露し、暴露開始からの経過時間に応じて、腐食進展距離を測定した。縦軸は、腐食進展距離(μm)であり、横軸は、腐食進展距離の測定時の硫化水素濃度と、暴露開始から測定時までの経過日数との積(濃度・日数積(ppb・日))である。
通常、プリント配線のパターン間距離は100μm以上あるので、腐食進展距離が20μ程度までであれば、絶縁劣化(短絡等)に至ることはない。即ち、図1において、下向きの矢印で示したように、腐食進展距離が20μm以下であれば、不具合が発生するリスクはない(リスクが小さい場合をも含む)と考えられる。一方、上向きの矢印で示したように、腐食進展距離が50μm以上になると、不具合が発生するリスクは高くなる。図1に示した測定結果から、濃度・日数積が約15000ppb・日以下であれば、腐食進展距離が20μm以下であることが分かる(斜線領域参照)。したがって、安全を見込んで、濃度・日数積が約10000ppb・日になる時期を検出できれば好ましい。濃度・日数積が約10000ppb・日になる時期を、できるだけ早期に予測できればより好ましい。本発明の第1の実施の形態に係る不具合リスク検出装置は、濃度・日数積が約10000ppb・日になる時期を予測する。
(不具合リスク検出装置の構成)
図2を参照して、第1の実施の形態に係る不具合リスク検出装置100は、光を放射する発光部102と、発光部102に電力を供給する電源部104と、光を検知する光検知部106と、制御部108と、記憶部110と、タイマ112と、光反射部114とを含む。不具合リスク検出装置100は、各部を作動させるための電源(図示せず)、及び、制御部108に対する指示を入力するための操作装置(図示せず)をも含む。操作装置として、例えば、コンピュータ用キーボード、マウス及びタッチパネル等を採用できる。図2には、硫化水素による腐食の発生対象の一例として、プリント基板900を示す。
発光部102は、例えば発光ダイオード(以下、LED(Light Emitting Diode)という)により実現される。発光部102は、LEDに限らず、所定時間(例えば0.1~数秒程度)、所定方向に、所定強度の光を安定して出力できる発光素子であればよい。発光部102は、赤色光(例えば、光の中心波長630nm)を放射する。電源部104は、制御部108による制御を受けて、発光部102に、発光部102を点灯させるための電力を供給する。
光検知部106は、例えばフォトトランジスタにより実現される。光検知部106は、フォトトランジスタに限らず、発光部102の放射光を検知し、その強度(光量)に応じた大きさの電気信号(例えば電圧、電流)を出力できる素子であればよい。光検知部106は、発光部102の放射光の中心波長630nmを、検出感度の中心付近に有することが好ましい。
光反射部114は、L字形部材116及び銀Agを含む。L字形部材116の、発光部102側の直交する2つの表面120及び122には銀Agが配置されている。表面120及び122の全面に銀Agが配置されていても、表面120及び122の一部に銀Agが配置されていてもよい。例えば、表面120及び122は銀メッキされている。これにより、図2において点線の矢印で示したように、発光部102から照射される光は銀Agにより反射されて光検知部106に入射される。L字形部材116は断面L字形に形成されており、発光部102から光検知部106への光路を比較的狭い空間に収めることができる。L字形部材116は、2つの表面120及び122が約90°を成すように配置されていればよく、L字形とはそのような形状も含む意味である。L字形部材116は、例えば、金属板の折り曲げ加工により形成できる。L字形部材116は、2つの平面部材を略直交するように接合したものであってもよい。
発光部102及び光検知部106は、例えば、LED及びフォトトランジスタを1つのパッケージに収容した素子であるフォトリフレクタにより実現できる。これにより、部品点数を低減でき、光検知系をコンパクトに形成できる。
発光部102、光検知部106及び光反射部114は、光検知系を構成する。不具合リスク検出装置100の光検知系は、例えば、硫化水素が発生し得る環境に設置された電気機器内のプリント基板900の近くに配置される。なお、電気機器内に限定されず、発光部102から放射された光が光検知部106により検出される状態であればよく、発光部102、光検知部106及び光反射部114は、環境光を遮蔽できる環境に配置されていればよい。電源部104、制御部108、記憶部110及びタイマ112の配置場所は任意であり、監視対象である電気機器内に配置されても、電気機器外に配置されてもよい。
制御部108は、CPU(Central Processing Unit)であり、電源部104の出力を制御して、発光部102を点灯又は消灯させる。例えば、制御部108が電源部104に対してハイレベル(例えば5V)の信号を出力すると、電源部104は発光部102に電力を供給する。これにより、発光部102が点灯する。制御部108が電源部104に対してローレベル(例えば0V)の信号を出力すると、電源部104は発光部102への電力供給を停止する。これにより、点灯していた発光部102は消灯する。
また、制御部108は、所定のタイミングで、光検知部106の出力信号を取得する。例えば、光検知部106がA/D変換機能を有していれば、制御部108は、光検知部106から出力されるデジタルデータを取得する。光検知部106がアナログ信号を出力すれば、制御部108は、入力されるアナログ信号を所定の時間間隔でサンプリングして、デジタルデータを生成する。
記憶部110は、制御部108から入力されるデータを記憶する揮発性又は不揮発性のメモリである。タイマ112は、制御部108からの要求を受けて、現在時刻を出力する。タイマ112は、制御部108からのリセット要求を受けた場合、現在時刻を一旦0にした後、経過時間をカウントして現在時刻とする。
上記したように、発光部102から放射される光は、表面120上の銀Agにより反射され、再度表面122上の銀Agにより反射されて発光部102の光軸と略平行に戻り、光検知部106により検知される。光検知部106により測定される光量は、光反射部114の銀Agの状態に応じて変化する。銀Agが硫化水素により腐食されると光の反射率が低下するので、測定値はより小さくなる。光反射部114の銀Agの腐食の程度は、周囲環境の硫化水素濃度、及び、電気機器内に光反射部114が設置されてからの時間経過に応じて増大する。したがって、定期的に、制御部108により電源部104を制御して発光部102を点灯させた状態で、光検知部106により検出される光量を測定すれば、銀Agの腐食状態の変化を観測できる。
発光部102にLEDを用い、光検知部106にフォトトランジスタを用いた光検知系の回路の例を図3に示す。図3を参照して、発光部102は、端子140及び142の間に直列接続されたLED130及び抵抗R1を含む。図3において、光反射部114に配置又は形成(銀メッキ)された銀Agを便宜上平板で示す。光検知部106は、端子144及び146の間に直列接続されたフォトトランジスタ132、抵抗R2及び抵抗R3を含む。
端子142及び146を接地した状態で、発光部102の端子140及び142間に電源部104から直流電圧を印加することにより、LED130が光(赤色光)を放射する。光検知部106は、端子144及び146の間に所定の直流電圧が印加された状態で、フォトトランジスタ132に光(銀Agにより反射された発光部102の放射光(赤色光))が入射すると、フォトトランジスタ132はオンして電流が流れる(端子144及び146の間に電流が流れる)。制御部108は、それに伴う電圧降下により測定端子134に生じる電圧(以下、発生電圧という)を測定する。フォトトランジスタ132を流れる電流値はフォトトランジスタ132に入射する光量に依存するので、測定端子134で測定される発生電圧はフォトトランジスタ132に入射する光量を表す。なお、抵抗R1、R2及びR3は、LED130及びフォトトランジスタ132に応じた適切な抵抗値を有していればよい。抵抗R1、R2及びR3は、可変抵抗器であってもよい。
発生電圧を相対値として評価できれば、効率的である。測定開始時には、光反射部114の銀Agは腐食されていない状態(以下、初期状態ともいう)である。したがって、例えば、光反射部114の銀Agの初期状態において測定された発生電圧の値が所定値(例えば“130”)になるように、図3の回路を調整すれば、発生電圧を相対値として評価できる。図3の回路の調整は、抵抗R1~R3のいずれかの値を調整することにより行われる。
(不具合リスクの検出処理)
以下に、図4を参照して、図2の不具合リスク検出装置100により実行される、電気機器のプリント基板における、硫化水素による不具合リスクを検出する処理に関して説明する。上記したように、濃度・日数積が約10000ppb・日になる時期を検出することにより、硫化水素による不具合リスクを検出する。
図4に示した処理は、制御部108が、予め記憶部110に記憶されている所定のプログラムを読出して実行することにより行われる。発光部102及び光検知部106は、図3に示した回路を構成しており、不具合リスク検出装置100の光検知系は、電気機器(配電盤等)の内部(外部の光が入らない暗所)に配置されているとする。
不具合リスク検出装置100の記憶部110には、測定を実行する時刻を特定するための情報(以下、測定時刻情報という)、第1しきい値K1、第2しきい値K2、定数N、並びに、メッセージが記憶されているとする。測定時刻情報は、どのようなタイミングで測定を行うかに応じて指定されていればよく、任意である。例えば、一定の時間間隔で測定を行う場合、測定時刻情報は、開始時刻及び時間間隔Δtであればよい。予め指定された時刻に測定を行う場合、測定時刻情報は、時刻を直接表す情報であればよい。ここでは、1時間毎に測定を行うとする(Δt=1(時間))。なお、以下に示す処理において、時刻は、測定開始時(最初の測定時)からの経過時間により表される。例えば、制御部108が、一連の測定を開始するときにタイマ112をリセットすることにより、タイマ112が出力する現在時刻は、最初の測定からの経過時間を表す。
第1しきい値K1及び第2しきい値K2は実数であり、光反射部114の銀Agの初期状態において測定された発生電圧が“130”になるように、図3の回路が予め調整されている場合、例えば、5≦K1≦15、3≦K2≦10である。定数Nは1より大きい実数であり、例えば、4≦N≦6である。メッセージは、硫化水素による腐食が進行していることを知らせるメッセージ(以下、腐食進行警報という)と、硫化水素による不具合リスクを知らせるメッセージ(以下、不具合リスク警報という)とを含む。
ステップ300において、制御部108は、タイマ112から現在時刻を取得し、記憶部110に記憶されている測定時刻情報を参照して、測定時刻になったか否かを判定する。測定時刻になったと判定された場合、制御はステップ302に移行する。そうでなければ、制御はステップ322に移行する。
ステップ302において、制御部108は、発光部102を点灯させ、測定端子134の発生電圧を測定する。測定された発生電圧は、測定開始からの経過時間Tと対応させて記憶部110に記憶される。その後、制御部108は発光部102を消灯し、制御はステップ304に移行する。ステップ302は繰返し実行されるので、一連の時系列データが記憶部110に記憶される。
ステップ304において、制御部108は、特異点を除去できるか否かを判定する。除去可能と判定された場合、制御はステップ306に移行する。そうでなければ、制御はステップ322に移行する。電気機器の点検時等に扉が開けられると、機器内部に外部からの光が入り、光検知系にも光が照射された状態になることがある。そのような状態で、発生電圧の測定タイミングになり測定が実行されると、測定値は本来の値よりも大きくなる。また、結露等により、測定値が本来の値よりも小さくなることもある。硫化水素による銀の腐食の程度を適切に評価するためには、これらの測定異常値を特異点として除去することが好ましい。特異点を除去するには、例えば、移動中央値を代表値とすることができる。具体的には、時系列データにおいて、連続する所定数(例えば、25個(24時間の測定回数))のデータを大きさの順に並べた場合に中央に位置する値(中央値)を、代表値とする。即ち、移動中央値を算出するには、所定数の測定データが必要であるので、所定数の測定データが得られるまでは、特異点を除去するとは判定されない。
ステップ306において、制御部108は、ステップ302で測定された一連の時系列データから特異点を除去する。具体的には、制御部108は、最新の測定データ(最後にステップ302が実行されて測定されたデータ)から連続する所定数の過去の測定データを対象として移動中央値を求め、その移動中央値を、最新の測定データの測定時刻と対応させて、記憶部110に記憶する。その後、制御はステップ308に移行する。上記したように、移動中央値を求める処理が一度可能になれば、その後は、新たに測定データが取得される度に、ステップ306が実行される。したがって、ステップ302により測定された時系列データから、特異点が除去された時系列データが記憶部110に記憶される。特異点が除去されたデータ(発生電圧)をYで表す。なお、上記したように、ステップ302により、測定された発生電圧と経過時間Tとを対応させて記憶部110に記憶するので、ステップ306により決定されたデータ(特異点が除去されたデータ)は、そのデータが決定される前に最後に実行されたステップ302により記憶された経過時間Tに対応する。
ステップ308において、制御部108は、記憶部110に記憶されている時系列データYを読出し、それらの最小値Yminを決定する。制御部108は、決定した最小値Yminを記憶部110に記憶する。その後、制御はステップ310に移行する。
ステップ310において、制御部108は、後述する推定Aが決定されているか否かを判定する。具体的には、制御部108は、記憶部110に推定Aが記憶されているか否かを判定する。記憶されていれば、推定Aは決定済と判定され、制御はステップ316に移行する。そうでなければ、制御はステップ312に移行する。
ステップ312において、制御部108は、記憶部110から第1しきい値K1及び最小値Yminを読出し、最後に実行されたステップ306により決定されたデータY(Ylstとする)から最小値Yminを減算して差分ΔYを算出し(ΔY=Ylst-Ymin)、差分ΔYが第1しきい値K1よりも大きいか否かを判定する。ΔY>K1であると判定された場合、制御はステップ314に移行する。そうでなければ(ΔY≦K1)、制御はステップ316に移行する。
ステップ314において、制御部108は、最後に実行されたステップ302により測定端子134の発生電圧が測定されたときの時間(経過時間)T1(以下、基準時間という)と定数Nとを記憶部110から読出し、基準時間T1及び定数Nを乗算して得られた値を推定Aとする(推定A=T1×N)。推定Aは、実施例として後述するように、濃度・日数積が約10000ppb・日になる時期を推定したものである。推定Aを、リスク予兆時間ともいう。制御部108は、推定Aを記憶部110に記憶する。その後、制御はステップ315に移行する。
ステップ315において、制御部108は、記憶部110から腐食進行警報を読出し、提示する。上記したように、腐食進行警報は、硫化水素による腐食が進行していることを知らせるメッセージである。不具合リスク検出装置100が音響出力装置又は画像表示装置を備えていれば、メッセージを音響又は画像として提示できる。不具合リスク検出装置100から外部の音響出力装置又は画像表示装置に、提示するメッセージを表すデータを、有線通信又は無線通信により伝送してもよい。これにより、管理室等に配置された音響出力装置又は画像表示装置により、メッセージが提示される。後述するように、基準時間T1は不具合リスクが高くなるかなり前の時間であるが、硫化水素による腐食は進行しており、当該環境で電気機器を使用し続けると、概ね基準時間T1の3~5倍の時間が経過すると不具合リスクが高くなる。したがって、ステップ312によりΔY>K1と判定され、ステップ314により基準時間T1が特定されたタイミングで、腐食進行警報を提示することが好ましい。その後、制御はステップ316に移行する。
ステップ316において、制御部108は、ステップ314により決定された推定A(リスク予兆時間)を経過したか否かを判定する。具体的には、制御部108は、タイマ112から現在時刻(測定を開始してからの経過時間)を取得し、取得した現在時刻と推定Aとを比較する。推定Aを経過したと判定された場合、制御はステップ320に移行する。そうでなければ、制御はステップ318に移行する。
ステップ318において、制御部108は、記憶部110から第2しきい値K2及び最小値Yminを読出し、最後に実行されたステップ306により決定されたデータYlstから最小値Yminを減算して差分ΔYを算出し(ΔY=Ylst-Ymin)、差分ΔYが第2しきい値K2未満であるか否かを判定する。ΔY<K2であると判定された場合、制御はステップ319に移行する。そうでなければ(ΔY≧K2)、制御はステップ322に移行する。
ステップ319において、制御部108は、最後に実行されたステップ302により測定端子134の発生電圧が測定されたときの経過時間を記憶部110から読出し、推定Bとする。制御部108は、推定Bを記憶部110に記憶する。その後、制御はステップ320に移行する。
ステップ320において、制御部108は、記憶部110から不具合リスク警報を読出し、提示する。上記したように、不具合リスク警報は、硫化水素による不具合リスクを知らせるものである。例えば、電気機器内のプリント基板に不具合が発生する可能性が高くなっている旨を提示する。
不具合リスク警報に加えて、推定A又は推定Bをリスク時期として提示してもよい。その場合、記憶部110に推定Bが記憶されていれば、推定Bを提示する。記憶部110に推定Bが記憶されていなければ(推定Bが決定される前に推定Aが経過した)、推定Aを提示する。なお、硫化水素による不具合リスクを知らせるメッセージが提示できればよいので、リスク時期を提示しない場合には、ステップ319はなくてもよい。即ち、ステップ318においてYESと判定されても、推定Bを決定する処理(ステップ319)を行わずに、ステップ320に移行してもよい。
ステップ320は、リスク予兆時間(推定A)の経過(ステップ316の判定結果がYES)、及び、ΔY<K2(ステップ318の判定結果がYES)のうちのいずれかが実現されると、実行される。リスク予兆時間が経過した場合、上記したように、濃度・日数積が約10000ppb・日になる時期になったことを意味し、硫化水素による不具合が発生する可能性が高くなる。また、実施例として後述するように、リスク予兆時間が経過する前に、ΔY<K2が実現された場合にも、濃度・日数積は10000ppb・日に近い値になる。したがって、リスク予兆時間が経過する前に、ΔY<K2が実現された場合には、その時点で、硫化水素による不具合が発生する可能性が高くなっている旨を知らせる。
ステップ322において、制御部108は、終了の指示を受けたか否かを判定する。終了の指示を受けた場合、本プログラムは終了する。そうでなければ、制御はステップ300に戻り、上記の処理を繰返す。終了の指示は、例えば、不具合リスク検出装置100の電源をオフする操作により行われる。
以上により、電気機器が配置された周囲環境の硫化水素濃度を算出することなく、電気機器内のプリント基板における硫化水素による不具合リスクを自動的に検出できる。即ち、硫化水素の濃度・日数積が約10000ppb・日になる頃、即ち不具合リスクの予兆を自動的に常時監視でき、硫化水素濃度が変化しても、不具合リスクの予兆を精度よく検出できる。不具合リスク予兆を検出することにより、電気機器の性能低下、故障等が生じる前に、対策を取ることができ、電気機器を適切に管理できる。
上記では、ステップ315において腐食進行警報を提示する場合を説明したが、これに限定されない。上記したように、基準時間T1は不具合リスクが高くなるかなり前であり、腐食進行警報を提示しなくてもよい。ステップ320において不具合リスク警報が提示さえすれば、上記したように、腐食の対策を取ることができ、電気機器を適切に管理できる。
基準時間T1、推定A及び推定Bは、上記したように測定開始からの経過時間で表される。経過時間は、日、時、分及び秒の何れの単位で表されても、それらの単位を組合せて表されてもよい。例えば、日を単位として経過時間を表す場合、小数点以下を含む実数で表しても、所定の桁で丸めて表してもよい。硫化水素による不具合リスクの提示は、時、分及び秒の単位で表されなければならない程緊急性が高いものではないので、基準時間T1、推定A及び推定Bは、1日単位に丸められたものであってもよい。
不具合リスク検出装置100は比較的簡単な機器構成であり、安価な装置として実現できる。L字形部材116を銀メッキすることにより、光反射部114を容易且つ安価に実現できる。
光反射部114をL字形に形成することにより、光検知系をコンパクトに形成できる。さらに、発光部102からの光が光反射部114の反射面に斜めに入射するので、光が反射する部分の面積を大きくできる。より広い面積における銀Agの変色による影響を発生電圧に反映させることができるので、測定データが安定する。
銀Agの腐食を光の反射率の変化(発生電圧の変化)として観測することにより、硫化水素による不具合リスクの予兆を精度よく検出できる。測定結果(発生電圧)が電気信号であるので、容易に遠隔監視が可能になる。また、不具合リスク検出装置100は、光反射部114を交換するだけで、容易に観測を継続できる。例えば、ステップ320において提示するメッセージ(不具合リスク警報)に、光反射部114の交換が必要である旨を含めておけば、光反射部114が交換されることにより、硫化水素による不具合リスクの検出精度を高い状態に維持できる。
上記した第1しきい値K1、第2しきい値K2及び定数Nの値は、一例であり、上記の値に限定されない。例えば、測定結果から、推定A又は推定Bにより、リスク時期(濃度・日数積=約10000(ppb・日))を推定するのに妥当な定数Nを決定できる。N=5であることが好ましい。
また、測定時間間隔及び移動中央値の算出に用いるデータ数は、上記の値に限定されない。測定時間間隔は、1分以上1時間以下の値であり、移動中央値の算出に用いるデータ数は半日以上2日以下の間に測定されたデータを用いてもよい。
上記では、測定データから特異点を除去するために、移動中央値を用いる場合を説明したが、これに限定されない。例えば、移動中央値に代えて、移動平均値を用いてもよい。さらに、単純な移動平均値ではなく、連続する複数の測定データを大きい順に並べて、その中央付近の平均値を用いてもよい。例えば、連続する25個の測定データを対象とする場合、11番目~15番目の測定データの平均値を用いることができる。
(第1変形例)
上記では、L字形部材116の表面120及び122に銀Agを配置して、発光部102の放射光を反射する場合を説明したが、これに限定されない。図5に示すように、表面120及び122の一方の面にのみ銀Agが配置されていてもよい。例えば、図5の(a)は、水平の表面120上に銀Agが配置(例えば銀メッキ)された構成を示す。表面120の全面に銀Agが配置されていても、一部に銀Agが配置されていてもよい。図5の(b)は、鉛直の表面122上に銀Agが配置(例えば銀メッキ)された構成を示す。表面122の全面に銀Agが配置されていても、一部に銀Agが配置されていてもよい。図5の(a)及び(b)のいずれの場合にも、銀Agが配置されていない面は、硫化水素により腐食されない部材で形成され、光を反射するように鏡面仕上げされていることが好ましい。
(第2変形例)
上記では、L字形部材116の表面に直接銀Agを配置する場合を説明したが、これに限定されない。銀メッキされた平板を用いた構成であってもよい。例えば、図6に示すように、L字形部材116の上に銀メッキ板124が配置された構成とすることができる。銀Agが配置されていない表面122は、硫化水素により腐食されない部材で形成され、光を反射するように鏡面仕上げされていることが好ましい。このような構成により、上記したように不具合リスク警報が提示された後にも、腐食した銀メッキ板124を新しいものに交換するだけで容易に測定を再開できる。
(第3変形例)
上記では、断面L字形のL字形部材116及び銀Agを含む光反射部114を用いる場合を説明したが、これに限定されない。光反射部114に代えて、図7に示したように、平板126及び銀Agを含む光反射部118を用いてもよい。平板126の一方の平面には銀Agが配置(例えば銀メッキ)され、発光部102から放射された光は銀Agにより1回反射され、光検知部106により検出される。
第1変形例~第3変形例のように、発光部102の放射光を銀Agにより1回だけ反射させることにより、銀Agが腐食され変色した場合に、反射光の減衰量が小さくなり過ぎることを抑制できる。図2に示したように、発光部102の放射光が、腐食され変色した銀Ag(硫化銀)によって2回反射されると、光検知部106に入射する光量は小さくなり過ぎる。したがって、測定される発生電圧も小さくなり過ぎ、測定精度が低下する。第1変形例~第3変形例のように構成することにより、測定精度の低下を抑制でき、硫化水素による腐食によるリスクの検出精度の低下を抑制できる。
(第4変形例)
図2、図5及び図6においては、発光部102の上方に光検知部106を配置する場合を説明したが、これに限定されない。図2、図5及び図6において、発光部102及び光検知部106の位置を入替え、発光部102を光検知部106の上方に配置してもよい。
(第2の実施の形態)
硫化水素が存在する環境に設置され、硫化水素による腐食への対策が施されていない電気機器に関しては、上記した第1の実施の形態が有効である。一方、硫化水素が検出されない環境(硫化水素が発生する可能性はある)に設置された電気機器、又は、硫化水素濃度を低減する対策が施された電気機器においても、硫化水素を常時監視する必要があるが、より簡便な方法で硫化水素を監視できれば好ましい。本発明の第2の実施の形態に係る硫化水素監視装置は、第1の実施の形態の不具合リスク検出装置よりも簡便な方法で硫化水素を監視する。
電気機器の設置前に行われる硫化水素の検出は、例えば、金属(銀)サンプルによる腐食度測定により行われる。具体的には、ユーロフィンFQL株式会社製のエコチェッカIIを用いて行われる。即ち、5種類(銀、銅、鉄ニッケル合金、アルミニウム、鉄)の試験金属片を含むエコチェッカIIを一定期間(1か月)測定環境に暴露した後、回収し、試験金属片の変色を製品付属の色見本と比較することにより、腐食性ガスの有無、及び、その目安濃度を判定する。目安濃度とは、放置期間中の大気の金属に対する腐食性の度合いを腐食成分濃度(硫化水素濃度)に換算したものである。
硫化水素は、銀の試験金属片の変色により検出される。銀の試験金属片の変色を、対応する色見本と比較することにより決定された目安濃度が、例えば3ppb未満であれば、硫化水素が存在しないと判定し、硫化水素の対策を施さずに電気機器を設置する。そうでなければ(目安濃度が3ppb以上)、電気機器に硫化水素濃度を低減する対策を施した後に設置する。電気機器に施す硫化水素濃度を低減する対策としては、後述するように、電気機器を気密構造にし、電気機器内に硫化水素の吸着剤及び通気ファンを配置する。なお、暴露後の金属片を、ユーロフィンFQL株式会社に送付して分析を依頼し、銀の腐食量を蛍光X線分析等により定量的に分析した結果を取得し、それを用いて、電気機器への硫化水素対策の要否を判定してもよい。
(硫化水素監視装置の構成)
図8を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る硫化水素監視装置200は、光を放射する発光部202と、発光部202に電力を供給する電源部104と、光を検知する光検知部206と、制御部208と、記憶部110と、タイマ112と、光反射部114とを含む。硫化水素監視装置200は、例えば、配電盤等の電気機器910内に配置される。硫化水素監視装置200は、図2に示した不具合リスク検出装置100において、発光部102、光検知部106及び制御部108がそれぞれ発光部202、光検知部206及び制御部208で代替されたものである。発光部202、光検知部206及び制御部208以外の構成は不具合リスク検出装置100と同じである。したがって、以下においては、重複説明を繰返さず、主として異なる点に関して説明する。
発光部202は、例えばLEDにより実現される。発光部202は、LEDに限らず、所定時間(例えば0.1~数秒程度)、所定方向に、所定強度の光を安定して出力できる発光素子であればよい。発光部202の放射光の波長は、光検知部206により検知され得る波長であればよく、任意である。発光部202の放射光は、例えば、可視光線、赤外線又は紫外線等である。電源部104は、制御部208による制御を受けて、発光部202に、発光部202を点灯させるための電力を供給する。なお、発光部202の放射光を赤色光とすれば、硫化水素監視装置200を、第1の実施の形態の不具合リスク検出装置100と共通化できるので望ましい。
光検知部206は、例えばフォトトランジスタにより実現される。光検知部206は、フォトトランジスタに限らず、発光部202の放射光を検知し、その強度(光量)に応じた大きさの電気信号(例えば電圧、電流)を出力できる素子であればよい。光検知部206は、発光部202の放射光の中心波長を、検出感度の中心付近に有することが好ましい。
発光部202、光検知部206及び光反射部114は、電気機器910内に配置される。なお、電気機器内に限定されず、発光部202から放射された光が光検知部206により検出される状態であればよく、発光部202、光検知部206及び光反射部114は、環境光を遮蔽できる環境に配置されていればよい。図8においては、硫化水素監視装置200全体が電気機器910内に配置される場合を示しているが、電源部104、制御部208、記憶部110及びタイマ112の配置場所は任意であり、監視対象である電気機器910内に配置されても、電気機器910外に配置されてもよい。
発光部202、光検知部206及び光反射部114は、光検知系を構成する。硫化水素監視装置200の検知系は、不具合リスク検出装置100の検知系と同様の回路により実現される。発光部202にLEDを用い、光検知部206にフォトトランジスタを用いた光検知系の回路の例を図9に示す。図9は、図3と同様の回路である。図9は図3と異なり、LED230の放射光は赤色光に限定されない。フォトトランジスタ232はLED230から放射される光を検知する。
制御部208は、不具合リスク検出装置100の制御部108と同様に、CPUであり、電源部104の出力を制御して、発光部202の点灯を制御し、光検知部206により光を検出する。制御部208が制御部108と異なる点は、制御部108が硫化水素による不具合リスク(プリント基板パターンの腐食による短絡等)を検出したのに対して、制御部208は、硫化水素の存在を検出することである。
(硫化水素の監視処理)
以下に、図10を参照して、図8の硫化水素監視装置200により、電気機器の設置環境における硫化水素を検出する処理に関して説明する。ここでは、硫化水素監視装置200は、硫化水素による腐食への対策が施されていない電気機器910の内部に配置されているとする。なお、少なくとも光検知系(発光部202、光検知部206及び光反射部114)が、電気機器(配電盤等)の内部(外部の光が入らない暗所)に配置されていればよい。
図10に示した処理は、制御部208が、予め記憶部110に記憶されている所定のプログラムを読出して実行することにより行われる。発光部202及び光検知部206は、図9に示した回路を構成しており、光反射部114の銀Agの初期状態において測定された発生電圧が“130”になるように、図9の回路(抵抗R1、R2及びR3)が予め調整されているとする。
硫化水素監視装置200の記憶部110には、測定時刻情報、所定のしきい値Th及び警告メッセージが記憶されているとする。測定時刻情報は、どのようなタイミングで測定を行うかに応じて指定されていればよく、任意である。例えば、一定の時間間隔で測定を行う場合、測定時刻情報は、開始時刻及び時間間隔Δtであればよい。予め指定された時刻に測定を行う場合、測定時刻情報は、時刻を直接表す情報であればよい。ここでは、1時間毎に測定を行うとする(Δt=1(時間))。なお、以下に示す処理において、時刻は、測定開始時(最初の測定時)からの経過時間により表される。例えば、制御部208が、一連の測定を開始するときにタイマ112をリセットすることにより、タイマ112が出力する現在時刻は、最初の測定からの経過時間を表す。
しきい値Thは正の実数であり、光反射部114の銀Agの初期状態において測定された発生電圧が“130”になるように、図9の回路が予め調整されている場合、例えば、Th=70である。しきい値Thは、この値に限定されず、銀Agの初期状態において測定された発生電圧の0.8~0.5倍程度の値であればよい。警告メッセージは、硫化水素濃度の低減(硫化水素による腐食の対策)が必要になったことを知らせるものである。
ステップ400において、制御部208は、タイマ112から現在時刻を取得し、記憶部110に記憶されている測定時刻情報を参照して、測定時刻になったか否かを判定する。測定時刻になったと判定された場合、制御はステップ402に移行する。そうでなければ、制御はステップ412に移行する。
ステップ402において、制御部208は、発光部202を点灯させ、測定端子134の発生電圧を測定する。測定された発生電圧は記憶部110に記憶される。その後、制御部208は発光部202を消灯し、制御はステップ404に移行する。ステップ402は繰返し実行されるので、測定した発生電圧を測定した順に記憶することにより、一連の時系列データが記憶部110に記憶される。なお、測定開始から全てのデータを記憶する必要はなく、少なくとも特異点を除去するために必要な期間のデータを記憶部110に記憶しておけばよい。
ステップ404において、制御部208は、ステップ304(図4参照)と同様に、特異点を除去できるか否かを判定する。除去可能と判定された場合、制御はステップ406に移行する。そうでなければ、制御はステップ412に移行する。
ステップ406において、制御部208は、ステップ306(図4参照)と同様に、ステップ402で測定された一連の時系列データから特異点を除去する。その後、制御はステップ408に移行する。これにより、ステップ402により測定された時系列データから、特異点が除去された時系列データが記憶部110に記憶される。特異点が除去されたデータ(発生電圧)をYで表す。
ステップ408において、制御部208は、記憶部110に記憶されているしきい値Thを読出し、最後に実行されたステップ406により決定されたデータYがしきい値Th以上であるか否かを判定する。Y≧Thであると判定された場合、制御はステップ412に移行する。Y≧Thであれば、発生電圧の減少が比較的小さく、光反射部114の銀Agの腐食は発生していない、又は、進行していないと言える。そうでなければ(Y<Th)、制御はステップ410に移行する。Y<Thであれば、発生電圧は比較的小さくなっているので、光反射部114の銀Agの腐食が進み、硫化水素濃度が増大していると言える。
ステップ410において、制御部208は、記憶部110から警告メッセージを読出し、提示する。上記したように、Y≧Thでなければ(Y<Th)、硫化水素濃度が増大しているので、例えば、硫化水素濃度の低減が必要である旨の警告メッセージが提示される。硫化水素監視装置200が音響出力装置又は画像表示装置を備えていれば、警告メッセージを音響又は画像として提示できる。硫化水素監視装置200から外部の音響出力装置又は画像表示装置に、提示する警告メッセージを表すデータを、有線又は無線通信により伝送してもよい。これにより、管理室等に配置された音響出力装置又は画像表示装置により、警告メッセージが提示される。
ステップ412において、制御部208は、終了の指示を受けたか否かを判定する。終了の指示を受けた場合、本プログラムは終了する。そうでなければ、制御はステップ400に戻り、上記の処理を繰返す。終了の指示は、例えば、硫化水素監視装置200の電源をオフする操作により行われる。
以上により、硫化水素の対策を施していない電気機器が設置された環境において、硫化水素が発生したこと、又は、硫化水素濃度が増大したことを自動的に検出できる。したがって、管理者は、設置している電気機器に硫化水素の対策を施す必要があることを知ることができ、電気機器の性能低下、故障等が生じる前に対策を取ることができ、電気機器を適切に管理できる。
(硫化水素濃度の低減)
硫化水素の対策を施していない電気機器に対策を施す場合、電気機器の隙間を充填する部材等を用いて気密構造にし、電気機器内部に硫化水素濃度を低減するための装置を配置する。図11を参照して、硫化水素濃度低減装置250は、図8に示した硫化水素監視装置200と、硫化水素吸着装置252とを含み、電気機器912内に配置される。電気機器912は、例えば、電気機器910(図8参照)に硫化水素の対策が施されて、気密構造に形成されたものである。
硫化水素吸着装置252は、通気ファン254、吸着剤256及び筐体258を含む。吸着剤256は、硫化水素を吸着する部材で形成されている。吸着剤256は、筐体258に収容されている。筐体258は、通気孔260及び262を有する。通気ファン254は、筐体258の通気孔260に接続されている。通気ファン254は例えばロータリ式のファンであり、羽根の回転により通気ファン254の上方に気流を形成する。これにより、通気孔262から筐体258内部に空気が吸入され、吸入された空気は通気孔260及び通気ファン254を介して排出され、点線の矢印で示すように下方から上方に向かう気流が形成される。通気孔262から筐体258の内部に吸入された空気が吸着剤256を通過するとき、含まれている硫化水素は吸着剤256に吸着される。硫化水素濃度が低下した空気は、通気孔260及び通気ファン254を介して排出される。硫化水素吸着装置252から排出された空気は、再度通気孔262から吸入され、吸着剤256により硫化水素が吸着され、硫化水素濃度が減少された空気として排出される。このように、気密構造の電気機器912内部の空気を循環させて、筐体258内の吸着剤256を通過させることにより、電気機器912内部の硫化水素濃度を徐々に低減できる。
吸着剤256には、公知の種々の硫化水素吸着剤を用いることができる。例えば、岡本電気株式会社製の脱硫フィルターであるコルライン(登録商標)を用いることができる。この脱硫フィルターは、コルゲートハニカム構造の基材に酸化鉄を主成分とする吸着材を含浸させて形成されている。基材を複数積層させて形成した柱状(円柱、角柱)構造の内部に、空気を通過させることにより、より広い表面積で空気を吸着剤に接触させることができ、効率的に硫化水素を吸着し(酸化鉄及び硫化水素から硫化鉄を生成)、空気中の硫化水素濃度を低減できる。また、吸着剤256には、ヨウ素酸添着炭を用いることができる。例えば、株式会社サンテックス製のヨウ素酸添着活性炭であるサンプリフ(登録商標)Y-SC・O及びスターコール(登録商標)Y-AC・Iを用いてもよい。硫化水素は酸化され空気中の水分と反応し、硫酸として活性炭に吸着される。
電気機器912内部の硫化水素濃度を低減させた後、上記したように硫化水素監視装置200により硫化水素を監視する。即ち、図10に示したフローチャートと同様の処理を実行することにより、電気機器912内部における硫化水素濃度の増大を検出できる。この場合、既に硫化水素の対策(吸着剤256による硫化水素の吸着)が施されているので、ステップ408においてNO(Y<Th)と判定されることは、吸着剤256の吸着性能が低下していることを意味する。したがって、吸着剤256及び光反射部114の交換を勧める旨の警告メッセージを記憶部110に記憶しておき、ステップ410においては、当該警告メッセージを記憶部110から読出し、提示すればよい。吸着剤256を新たなものに交換することにより、電気機器912内部の硫化水素濃度を低減し、光反射部114を新たなものに交換することにより、電気機器912内において、硫化水素監視装置200による硫化水素の監視を再開できる。
硫化水素監視装置200は比較的簡単な機器構成であり、安価な装置として実現できる。L字形部材116を銀メッキすることにより、光反射部114を容易且つ安価に実現できる。
光反射部114をL字形に形成することにより、光検知系をコンパクトに形成できる。さらに、発光部202からの光が光反射部114の反射面に斜めに入射するので、光が反射する部分の面積を大きくできる。より広い面積における銀Agの変色による影響を発生電圧に反映させることができるので、測定データが安定する。
銀Agの腐食を光の反射率の変化(発生電圧の変化)として観測することにより、硫化水素の発生、又は、硫化水素濃度の増大を精度よく推定できる。測定結果(発生電圧)が電気信号であるので、容易に遠隔監視が可能になる。また、硫化水素監視装置200は、光反射部114を交換するだけで、容易に観測を継続できる。ステップ410において提示する警告メッセージに、光反射部114の交換が必要である旨が含まれるので、光反射部114が交換されることにより、硫化水素の監視精度を高い状態に維持できる。
上記では、電気機器を設置する前に、エコチェッカIIを用いて設置場所の硫化水素濃度を評価する場合を説明したが、これに限定されない。硫化水素濃度を評価する方法は任意である。例えば、不具合リスク検出装置100又は硫化水素監視装置200と同様の装置を用いて、硫化水素の有無を検出してもよい。図3又は図9に示した回路を、電気機器を設置する予定の場所に配置し、所定の期間、所定のタイミングで発生電圧を測定し、時系列データを取得する。例えば、実施例として後述する図13に示すようなデータを取得する。測定開始時には、光反射部114の銀Agは腐食されていない初期状態である。測定開始からの経過時間T(単位は日)に測定された発生電圧をY(T)とし、次式により硫化水素濃度の推定値C(単位はppb)を算出できる。
C=-(ΔY/ΔT)/L ・・・(式1)
式1において、ΔY(日)は、経過時間T及びT-ΔTにおける発生電圧Yの差、即ちΔY=Y(T)-Y(T-ΔT)であり、Lは定数である。濃度・日数積に対する発生電圧のグラフは、濃度・日数積が比較的小さい範囲においては直線で近似でき、その傾き(係数Lに対応)は一定値である。式1は、この知見に基づいている。例えば、実施例として後述する図13の(a)~(f)の各々のグラフは、比較的短期間ではあるが、測定開始から直線的に減少している。発生電圧Yは相対値として評価すればよく、例えば、光反射部114の銀Agの初期状態において測定された発生電圧Yの値が“130”になるように、図3又は図9の回路が調整された場合、L=0.075である。
式1により算出された硫化水素濃度が所定値(例えば3ppb)未満であれば、硫化水素が存在しないと判定し、硫化水素の対策を施さずに電気機器を設置する。そうでなければ(硫化水素濃度が3ppb以上)、上記したように、電気機器に硫化水素濃度を低減する対策を施した後に設置する。
第1の実施の形態に関して上記した第1~第4の変形例は、第2の実施の形態においても可能である。第2変形例(図6参照)の構成を採用する場合、図10のステップ410において提示する警告メッセージには、銀メッキ板124の交換が必要である旨を含めておけばよい。銀メッキ板124が交換されることにより、硫化水素の監視精度を高い状態に維持できる。
(第5変形例)
上記では、1つのしきい値Thを用いて、硫化水素濃度を監視する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、2つのしきい値を用い、図10に示したフローチャートを、例えば図12に示すように変更してもよい。図12のフローチャートは、図10のフローチャートにおいて、ステップ408及び410をそれぞれステップ502及び506で代替し、ステップ500及び504を追加したものである。したがって、以下においては、重複説明を繰返さず、主として、図10と異なるステップ500~506に関して説明する。
ここでは、硫化水素監視装置200は、硫化水素による腐食への対策が施されていない電気機器の内部に配置されているとする。硫化水素監視装置200の記憶部110には、測定時刻情報、上位しきい値Th1、下位しきい値Th2、第1メッセージ及び第2メッセージが記憶されている。上位しきい値Th1及び下位しきい値Th2は正の実数であり、Th1>Th2である。下位しきい値Th2は、上記のしきい値Thに対応する。光反射部114の銀Agの初期状態において測定された発生電圧が“130”になるように、図9の回路が予め調整されている場合、例えば、Th1=80、Th2=70と設定される。なお、上位しきい値Th1及び下位しきい値Th2は、これらの値に限定されず、銀Agの初期状態において測定された発生電圧の0.8~0.5倍程度の値であり、Th1>Th2を満たせばよい。
第2メッセージは、図10に関して上記した警告メッセージに対応する。即ち、第2メッセージは、硫化水素濃度の低減(硫化水素による腐食の対策)が必要になったことを知らせるメッセージである。第1メッセージは、近日中に硫化水素濃度の低減(硫化水素による腐食の対策)が必要になることを知らせる注意メッセージである。
ステップ400~404により、制御部208は、発光部202を点灯させ、測定端子134の発生電圧を測定し、測定データを記憶部110に記憶する。特異点の除去が可能になれば、ステップ406により、制御部208は、特異点を除去したデータYを記憶部110に記憶する。ステップ400~406が繰返されることにより、特異点が除去された一連の時系列データYが記憶部110に記憶される。
ステップ500において、制御部208は、記憶部110に記憶されている上位しきい値Th1(例えばTh1=80)を読出し、最後に実行されたステップ406により決定されたデータYが上位しきい値Th1以上であるか否かを判定する。Y≧Th1であると判定された場合、制御はステップ412に移行する。Y≧Th1であれば、発生電圧は比較的大きく、光反射部114の銀Agの腐食が発生していない、又は、ほとんど進行していないと言える。そうでなければ(Y<Th1)、制御はステップ502に移行する。
ステップ502において、制御部208は、記憶部110に記憶されている下位しきい値Th2(例えばTh2=70)を読出し、最後に実行されたステップ406により決定されたデータYが下位しきい値Th2以上であるか否かを判定する。即ち、ステップ406により決定されたデータYは、上位しきい値Th1よりも小さいと既に判定された(ステップ500)ので、より小さい下位しきい値Th2と比較される。Y≧Th2であると判定された場合、制御はステップ504に移行する。そうでなければ(Y<Th2)、制御はステップ506に移行する。
ステップ504において、制御部208は、記憶部110から第1メッセージを読出して提示する。これにより、第1メッセージとして、近日中に硫化水素濃度の低減が必要になることを知らせる注意メッセージが提示される。その後、制御はステップ412に移行する。ステップ502での判定結果がYES(Y≧Th2)であるので、発生電圧は比較的大きく、光反射部114の銀Agの腐食が発生していない、又は、進行していないと言える。しかし、ステップ500での判定結果がNO(Y<Th1)であり、発生電圧は下位しきい値Th2に近付いているので、上記の注意メッセージが表示される。
ステップ506において、制御部208は、記憶部110から第2メッセージを読出して提示する。これにより、第2メッセージとして、硫化水素濃度の低減が必要になったことを知らせる警告メッセージが提示される。その後、制御はステップ412に移行する。ステップ502での判定結果がNO(Y<Th2)であれば、発生電圧は比較的小さく、光反射部114の銀Agの腐食が進み、硫化水素濃度が増大していると言える。
ステップ412において終了の指示を受けたと判定されるまで、ステップ400~406及びステップ500~506の処理が繰返される。
以上により、硫化水素の対策を施していない電気機器が設置された環境において、硫化水素が発生したこと、又は、硫化水素濃度が増大したことを自動的に検出できる。硫化水素による腐食の対策が必要になった旨を知らせる警告メッセージが提示される前に、近日中に硫化水素濃度の低減が必要になる旨の注意メッセージが提示されるので、管理者等は、電気機器に硫化水素の対策を施すための準備(気密構造にするための部材及び硫化水素吸着装置の手配等)を行うことができる。したがって、警告メッセージが提示されると、速やかに、電気機器に硫化水素の対策を施すことができ、電気機器の性能低下、故障等を回避でき、電気機器を適切に管理できる。
第5変形例において、硫化水素濃度の低減が必要になった旨を知らせる警告メッセージが提示され、硫化水素の対策が施された後の電気機器(図11参照)に関しても、上記したように、硫化水素を監視できる。その場合、第2メッセージは、吸着剤及び光反射部の交換を勧める旨の警告メッセージとし、第1メッセージは、近日中に吸着剤及び光反射部の交換が必要になる旨の注意メッセージとする。
ステップ502においてNO(Y<Th2)と判定されることは、吸着剤256の吸着性能が低下していることを意味する。したがって、ステップ506において、制御部208は、第2メッセージを記憶部110から読出し、吸着剤及び光反射部の交換を勧める旨の警告メッセージを提示する。
ステップ500においてNO(Y<Th1)であるが、ステップ502においてYES(Y≧Th2)である場合、吸着剤256の吸着性能は低下しているが、直ちに吸着剤256の交換が必要なほどは低下していない。したがって、ステップ504において、制御部208は、第1メッセージを記憶部110から読出し、近日中に吸着剤及び光反射部の交換が必要になる旨の注意メッセージを提示する。管理者等は、交換するための新たな吸着剤及び光反射部を事前に手配でき、警告メッセージが提示されると、速やかに吸着剤を交換して硫化水素を低減し、光反射部を交換して硫化水素の監視を再開できる。
以下に、第1の実施の形態に関する実験結果を示し、本発明の有効性を示す。図3に示した回路構成の光検知系を採用した不具合リスク検出装置(図2参照)を用いて、硫化水素濃度が異なる3つの環境において測定を行った。
光検知系には、図6(第2変形例)に示した構成を採用した。L字形部材に載置する銀メッキされた平板を複数作製した。銀メッキは、硬質・光沢銀メッキとし、厚さ3μmに形成した。銀の純度は約99%である。硬質の銀メッキとしたので、銀以外に微量の添加物が含まれている。光源には、中心波長630nmの赤色LEDを用いた。光検知系の回路において抵抗R1として可変抵抗器を用いた。各環境において、実験を開始する前に、上記したように、初期状態(無腐食状態)の銀メッキ板を用いて、発生電圧の測定値(AD変換後の値)が約“130”(誤差±3)になるように抵抗R1の値を調整した。
数カ月以上の期間に亘って、1時間毎に測定を行った結果を図13の(a)~(f)に示す。いずれのグラフも、縦軸は発生電圧(相対値)であり、横軸は、測定日(年を省略した月日表示)であり、経過時間(日)に対応する。横軸の1目盛は約3カ月である。示されている測定データは、上記したように、実測値の時系列データから、連続する25個のデータの移動中央値を用いて特異点を除去したものである。(a)~(d)は、ある年の11月19日から翌々年の5月20日までの測定結果であり、(e)及び(f)は、翌年9月14日から翌々年の5月20日までの測定結果である。
不具合リスク検出装置のセンサとしてのばらつきを評価するために、各環境において2台の不具合リスク検出装置を相互に近傍に配置して測定した。図13の(a)及び(b)の各々は、硫化水素濃度が10~15ppbの環境に配置した不具合リスク検出装置の測定結果である。(c)及び(d)の各々は、硫化水素濃度が50~200ppbの環境に配置した不具合リスク検出装置の測定結果である。(e)及び(f)の各々は、硫化水素濃度が10~50ppbの環境に配置した不具合リスク検出装置の測定結果である。各環境の硫化水素濃度は、エコチェッカIIを用いて測定した。図13のグラフから、同じ環境に配置した2台の不具合リスク検出装置の測定結果は類似しており、異なる環境に配置した不具合リスク検出装置の測定結果は大きく異なっていることが分かる。このように、不具合リスク検出装置により、硫化水素による不具合リスクを精度よく検出できる。
各環境の測定データ(発生電圧(相対値))に関して、上記したように濃度・日数積Sを求め、濃度・日数積S(ppb・日)を横軸として測定データをプロットし、図14に示すグラフを生成した。図14の(a)~(f)のグラフは、それぞれ図13の(a)~(f)に示した測定データから生成された。濃度・日数積Sの算出に用いた日数は、測定開始からの経過日数である。濃度・日数積Sの算出に用いた硫化水素濃度は、上記したように、エコチェッカIIを用いて測定した。具体的には、各環境にエコチェッカIIを設置して約1か月毎に交換し、回収したエコチェッカIIから硫化水素濃度(目安濃度)を得た。得られた硫化水素濃度は、エコチェッカIIが設置された期間における硫化水素の平均濃度と言える。したがって、濃度・日数積Sにおいて、各エコチェッカIIから得られた硫化水素濃度(目安濃度)を、そのエコチェッカIIを設置した期間における硫化水素濃度とした。
各環境に設置した不具合リスク検出装置の測定データ(図13)に関して、第1しきい値K1=8、第2しきい値K2=5、定数N=5として、図4に示した不具合リスクの検出処理により求められた基準時間T1、推定A(リスク予兆時間)及び推定Bを図15に示す。日時及び経過時間は、1時間毎の算出結果を丸めて1日単位で表示している。測定環境として示した(a)~(f)は、それぞれ図13の(a)~(f)に対応する。図15において太枠で囲った領域の情報は、図4に示した不具合リスクの検出処理のステップ320が実行され、メッセージが提示されるタイミングを示す。なお、「外挿推定値」と付記した値は、硫化水素濃度が測定されていない期間の値であり、硫化水素濃度を最後に測定した月(5月)の濃度がその後も持続すると仮定して算出した結果である。
図16及び図17は、それぞれ図13及び図14に、図15に示した基準時間T1、推定A及び推定Bを付記したものである。基準時間T1、推定A及び推定Bは白丸で示されており、矢印を付して対応する表記を示している。
図16の(a)及び(b)に関しては、基準時間T1から決定された推定Aに至る前に推定Bが決定されており、推定Bが決定された時点で、硫化水素による不具合リスクを知らせるメッセージが提示される。図16の(a)及び(b)にそれぞれ対応する図17の(a)及び(b)から分かるように、推定Bにおける濃度・日数積は、10000ppb・日に近い値になっている。推定Bの具体的な値は、図15の(a)及び(b)を参照して、それぞれ9450ppb・日及び9318ppb・日である。なお、図16の(a)及び(b)に関しては、推定Aに至る前に測定は終了されたので、推定Aは示されていない。
図16の(c)及び(d)に関しては、基準時間T1から決定された推定Aを経過した後に、推定Bが決定された。図16の(c)及び(d)に関しては、推定Aが決定された時点で、硫化水素による不具合リスクを知らせるメッセージが提示される。図16の(c)及び(d)にそれぞれ対応する図17の(c)及び(d)から分かるように、推定Aにおける濃度・日数積は、10000ppb・日に近い値になっている。推定Aの具体的な値は、図15の(c)及び(d)を参照して、それぞれ7080ppb・日及び8360ppb・日である。
図16の(e)に関しては、基準時間T1から決定された推定Aに至る前に、推定Bが決定されており、推定Bが決定された時点で、硫化水素による不具合リスクを知らせるメッセージが提示される。図16の(f)に関しては、測定を終了するまでに推定Bは決定されず、推定Aに至る前に測定を終了した。しかし、測定を継続した場合には推定Aに至り、その時点で、硫化水素による不具合リスクを知らせるメッセージが提示される。図16の(e)及び(f)にそれぞれ対応する図17の(e)及び(f)から分かるように、図16の(e)の推定B、及び、図16の(f)の推定Aにおける濃度・日数積は、10000ppb・日に近い値になっている。図15の(c)及び(d)を参照して、図16の(e)の推定Bの具体的な値は、9102ppb・日であり、図16の(f)の推定Aの具体的な値は、11152ppb・日である。
このように、推定A及び推定Bのうち、より早く達成された時点において、硫化水素の濃度・日数積は10000ppb・日に近い値(概ね7000~10000ppb・日)になっている。したがって、推定A及び推定Bのうち、より早く達成された時点は、硫化水素による不具合リスクを提示する適切なタイミングである。また、リスク検出から処置までに時間を要することを考慮すると、設備運用上は、10000ppb・日に達する前に硫化水素による不具合リスクを提示することが望ましい。上記した6ケースのうち(f)を除いて、10000ppb・日に達する前にメッセージを提示でき、不具合リスク検出装置は設備運用において有効である。
また、推定A及び推定Bのうち、より早く達成された時点を用いることにより、従来よりもリスク検出精度が向上する。図13及び図14を考慮すると、図13に示した測定データには極値(極大値、極小値)が存在するので、例えば、極大値となるとき(以下、極大点という)を検出して、リスク到達時点(図14の各グラフにおいて濃度・日数積が10000ppb・日となる時点)を推定することが考えられる。しかし、グラフに複数の山及び谷が存在する、変化が小さい等、極値の検出が難しい場合がある。例えば、図13の(c)~(f)では、2つの極大点が見られ、いずれの極大点で判断するかによってリスク到達時点の推定値が大きく異なる。また、図13の(c)及び(d)では、濃度変化(発生電圧変化)が緩やかであり、極大点を特定することが難しい。不具合リスクが実際に発生するかなり前に極大値が発生して、誤検知となる場合もある。また、一般に測定データの極大点を検出する処理は、測定装置にとって計算負荷が大きい。それに対して、本発明の不具合リスク検出装置は、計算負荷が軽い処理(図4参照)により、図13の(a)~(f)のいずれの場合にも、推定A及び推定Bのうち、より早く達成された時点として、リスク到達時点を検出できる。また、極値を用いないので、不具合リスクが発生するかなり前に極大値が発生するような場合にも、誤検知を回避できる。
以下に、第2の実施の形態に関する実験結果を示し、本発明の有効性を示す。図18は、図9に示した回路構成の光検知系を採用した硫化水素による硫化水素監視装置(図8参照)を用いて、硫化水素濃度が異なる3つの環境において測定を行った結果を示す。
光検知系には、図6(第2変形例)に示した構成を採用した。L字形部材に載置する銀メッキされた平板を、実施例1と同様に作製した。光源には、中心波長630nmの赤色LEDを用いた。光検知系の回路において抵抗R1として可変抵抗器を用いた。各環境において、実験を開始する前に、上記したように、初期状態(無腐食状態)の銀メッキ板を用いて、発生電圧の測定値(AD変換後の値)が約“130”(誤差±3)になるように抵抗R1の値を調整した。
数カ月以上の期間に亘って、1時間毎に測定を行った結果を図18の(a)~(d)に示す。いずれのグラフも、縦軸は発生電圧(相対値)であり、横軸は、測定日(年を省略した月日表示)であり、経過時間(日)に対応する。横軸の1目盛は約3カ月である。示されている測定データは、上記したように、実測値の時系列データから、連続する25個のデータの移動中央値を用いて特異点を除去したものである。環境の硫化水素濃度は、エコチェッカIIを用いて測定した。
図18の(a)は、硫化水素による腐食が問題とならない環境(硫化水素濃度が10ppb未満)に配置した硫化水素監視装置の測定結果である。(a)の測定期間は、ある年の11月19日から翌々年の5月24日までである。(b)及び(c)の各々は、上記したように硫化水素濃度を低減する対策が施され、異なる場所に設置された配電盤内に配置した硫化水素監視装置の測定結果である。(b)及び(c)の測定期間は、翌年7月9日から翌々年の5月20日までである。(d)は、硫化水素濃度が10~15ppbの環境に配置した硫化水素監視装置の測定結果である。(d)の測定期間は、ある年の11月19日から翌々年の5月20日までである。
図18の各グラフに示した、発生電圧=70を表す破線は、上記したステップ408(図10参照)の判定で用いられるしきい値Thに対応する。図18の(a)~(c)のグラフから次のことが分かる。即ち、硫化水素濃度が低い環境においては、測定初期(測定開始から3~8カ月以内)においては、発生電圧は緩やかに低下し、測定環境によりばらつきはあるが、初期値の約130に対して120~110程度まで低下する。発生電圧が120~110程度に低下した後、さらに低下する速度は鈍化する。鈍化した発生電圧の低下量は1年当たり5程度、最大でも10以下であり、発生電圧は長期間、破線よりも上に位置する。一方、図18の(d)のグラフから、硫化水素濃度が10~15ppbである環境においては、発生電圧低下の鈍化は観測されず、発生電圧は、測定初期において破線よりも下に位置するようになる。
したがって、硫化水素がほとんど存在しない環境においては、発生電圧の低下が鈍化する現象を利用し、第2の実施の形態として示したように、発生電圧を所定のしきい値Th(例えばTh=70)と比較することにより、硫化水素濃度の変化を検知できる。即ち、発生電圧がしきい値Th以上であれば、硫化水素がほとんど存在しない状態が維持されていることを確認できる。発生電圧がしきい値Th未満になれば、硫化水素濃度が増大し、腐食等のリスクが発生すると判断できる。
しきい値Thは、例えば70~100程度(Agの初期状態において測定された発生電圧の0.8~0.5倍程度)の値とすることができる。しかし、これに限定されない。しきい値Thを大きくすれば、硫化水素を監視できる期間は短くなる。しきい値Thを小さくすれば、硫化水素を監視できる期間は長くなるが、硫化水素濃度の増大を検知するのが遅くなってしまう。したがって、上記したように、発生電圧が初期値の約130から約110に低下した後、発生電圧の低下速度が鈍化することを考慮して、しきい値Thを決定すればよい。例えば、Th=70であれば、発生電圧が初期値の130から110に低下し、その後、発生電圧の低下速度が10/年であったとしても、4年以上硫化水素を監視できる。
以上、実施の形態を説明することにより本発明を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本発明は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。