JP7785239B2 - 固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料、固体高分子型燃料電池用触媒層、及び燃料電池 - Google Patents

固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料、固体高分子型燃料電池用触媒層、及び燃料電池

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Description

本開示は、固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料、固体高分子型燃料電池用触媒層、及び燃料電池に関する。
燃料電池の一種である固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に配置される一対の触媒層と、各触媒層の外側に配置されるガス拡散層と、各ガス拡散層の外側に配置されるセパレータとを備える。一対の触媒層のうち、一方の触媒層は固体高分子型燃料電池のアノードとなり、他方の触媒層は固体高分子型燃料電池のカソードとなる。なお、通常の固体高分子型燃料電池では、所望の出力を得るために、上記構成要素を有する単位セルが複数個スタックされている。
アノード側のセパレータには、水素等の還元性ガスが導入される。アノ7ード側のガス拡散層は、還元性ガスを拡散させた後、アノードに導入する。アノードは、触媒成分と、触媒成分を担持する触媒担体と、プロトン伝導性を有する電解質材料(アイオノマー)とを含む。触媒担体は、炭素材料で構成されることが多い。触媒成分上では、還元性ガスの酸化反応が起こり、プロトンと電子が生成される。例えば、還元性ガスが水素ガスとなる場合、以下の酸化反応が起こる。
→2H+2e (E=0V)
この酸化反応で生じたプロトンは、アノード内の電解質材料、及び固体高分子電解質膜を通ってカソードに導入される。また、電子は、触媒担体、ガス拡散層、及びセパレータを通って外部回路に導入される。この電子は、外部回路で仕事(発電)をした後、カソード側のセパレータに導入される。そして、この電子は、カソード側のセパレータ、カソード側のガス拡散層を通ってカソードに導入される。
固体高分子型電解質膜は、プロトン伝導性を有する電解質材料で構成されている。固体高分子電解質膜は、上記酸化反応で生成したプロトンをカソードに導入する。
カソード側のセパレータには、酸素ガスあるいは空気等の酸化性ガスが導入される。カソード側のガス拡散層は、酸化性ガスを拡散させた後、カソードに導入する。カソードは、触媒成分と、触媒成分を担持する触媒担体と、プロトン伝導性を有する電解質材料(アイオノマー)とを含む。触媒担体は、炭素材料で構成されることが多い。触媒成分上では、酸化性ガスの還元反応が起こり、水が生成される。例えば、酸化性ガスが酸素ガスあるいは空気となる場合、以下の還元反応が起こる。
+4H+4e→2HO (E=1.23V)
還元反応で生じた水は、未反応の酸化性ガスとともに燃料電池の外部に排出される。このように、固体高分子型燃料電池では、酸化反応と還元反応とのエネルギー差(電位差)を利用して発電する。言い換えれば、酸化反応で生じた電子が外部回路で仕事を行う。
ところで、従来から燃料電池の発電性能の観点では、触媒担体に多孔質カーボンブラックを用いることが提案されていた。
非特許文献1では、多孔質カーボンブラックの内部に形成した細孔内に担持された触媒金属は共存するアイオノマーの被覆による反応阻害(被毒)を受けないので高活性であることが報告されている。
特許文献1では、平均粒子径が20~100nmであり、多孔質カーボンブラックの空孔直径4~20nmの空孔容積が0.23~0.78cm/gの多孔質カーボンブラックが提案されている。
特許文献2では、カーボンブラックを多孔質化し、表面積を増加する方法として、流動床にてカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させる方法が提案されている。具体的には、特許文献2には、「高表面積黒鉛化カーボンの製造方法であって、出発カーボン材料の表面積より少なくとも100m/g大きい表面積を有する高表面積黒鉛化カーボンを生成するために、該出発カーボン材料を酸化する工程及び黒鉛化する工程を含み、該黒鉛化をする前に該酸化が行われ、該酸化することにより高表面積カーボンが生成され、前記高表面積黒鉛化カーボンの平均空孔体積が少なくとも1.32cc/gである、製造方法」が提案されている。
また、従来から燃料電池の耐久性能の観点では、多孔質カーボンブラックを焼成し高結晶化することが提案されていた。
特許文献3では耐久性を付与するために300~700m/gのBET比表面積を有し、かつ結晶子サイズLcが2.0nm以上である高結晶性カーボンブラックが提案されている。
特許文献4では、Lc(002)が2.0nm以上、ラマン分光法によるカーボン表面のスペクトルにおけるG-band(1590cm-1)のピーク面積に対するD1-band(1350cm-1)のピーク面積の比D/Gが0.5~2.5、メソ孔を含む細孔を有し、メソ孔容積が0.35~1.3cm/gの多孔質カーボンが提案されている。
また、従来から、原料カーボンブラックを賦活して、多孔質カーボンブラックを得る技術も提案されていた。
特許文献5には、カーボンブラックを熱処理後に空気賦活して多孔質化する方法が提案されている。
特許文献6には、カーボンブラックを触媒金属担持後にCO賦活する方法が提案されている。
特許文献7には、カーボンブラックを空気賦活し5nm~40nmの細孔容量を変化させることでアイオノマーの被覆部位を制御する方法が提案されている。
特許文献1:特開2013-109856号公報
特許文献2:特許5650542公報
特許文献3:特許6478677号公報
特許文献4:国際公開第17/208742号
特許文献5:特許6563945号公報
特許文献6:特許5326585号公報
特許文献7:特許6772952号公報
Kongkanand et al., ACS Energy Lett. 2018, 3, 618-621
ところで、固体高分子型燃料電池では、触媒担体用炭素材料として多孔質カーボンブラックには、耐久性と共に、発電性能として低負荷特性(低電流での発電時の特性)が求められる。
しかしながら、上記いずれの文献の含め、従来技術では、多孔質カーボンブラックは、高い耐久性と低負荷特性との両立については未だ十分ではない。
例えば、特許文献5では、熱処理後に賦活処理を実施している。熱処理された高結晶性の炭素壁を賦活するため、賦活の効果が低く、細孔容積の向上が不十分である。それとともに、賦活ガスとして空気を用いているため、カーボンブラック表面では燃焼反応が生じる結果、細孔径の大きな孔が形成されることから、粒子内部へアイオノマーが侵入しやすい構造となっていた。その結果として低負荷特性の向上が十分ではない。
また、特許文献6では、担持された触媒金属が賦活触媒としても作用することから触媒担持部位が選択的に賦活される。その結果として触媒粒子は炭素表面に存在することになり、アイオノマーによる触媒の被毒を防ぐという意味では十分ではない。
また、特許文献7では、5nm~40nmの細孔容量を変化させることでアイオノマーの被覆部位を制御すると記載されているが、吸着側の窒素吸脱着等温線を解析して得られた細孔容積だけでは粒子内外の連通の状況を表現するには十分ではなく、アイオノマーの侵入可否の指標とするには最適とは言えない。
ここで、特許文献2では、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有するカーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて該第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させることにより、流動床で酸化剤とカーボンブラックを反応させ多孔化している。しかし、粒度に分布のあるカーボンブラックを流動床で用いる場合、その流動状態には分布が生じ結果として賦活進行度に分布が生じる。
そこで、本開示の課題は、高い耐久性と低負荷特性とが両立された固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料、それを利用した固体高分子型燃料電池用触媒層、及び燃料電池を提供することである。
課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1>
下記要件(A)、(B)、及び(C)を満たす多孔質賦活カーボンブラックからなる固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料。
(A)BET比表面積が350m/g以上800m/g以下である。
(B)窒素脱離等温線をDH(Dollimore-Heal)法を用いた解析により求められる細孔径5nm以上20nm以下の細孔が示す細孔容積VD5-20を、窒素吸着等温線をDH(Dollimore-Heal)法を用いた解析により求められる細孔径20nm以下の細孔が示す細孔容積VA20で除した値(VD5-20/VA20)が0.35以下である。
(C)熱重量示差熱分析(TG-DTA)において、空気雰囲気で10℃/minで昇温したときに10%重量減少する温度Td10%が620~680℃である。
<2>
前記細孔容積VA20が0.36~0.90mL/gである<1>に記載の固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料。
<3>
<1>又は<2>に記載の固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料を含む固体高分子型燃料電池用触媒層。
<4>
<3>に記載の固体高分子型燃料電池用触媒層を含む燃料電池。
<5>
前記固体高分子型燃料電池用触媒層は、カソード側の触媒層である<4>に記載の燃料電池。
本開示によれば、高い耐久性と低負荷特性とが両立された固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料、それを利用した固体高分子型燃料電池用触媒層、及び燃料電池が提供される。
図1は、本開示の燃料電池の概略構成の一例を示す模式図である。
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値又は上限値として含まない範囲を意味する。
本開示において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されるのであれば、本用語に含まれる。
本開示において、燃料電池の触媒層に用いられる「プロトン伝導性を有する電解質材料」は「アイオノマー」とも称する。
<固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料>
本開示の固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料は、後述する要件(A)、(B)、及び(C)を満たす多孔質賦活カーボンブラックからなる。
ここで、多孔質賦活カーボンブラックとは、賦活により多孔質化したカーボンブラックである。なお、多孔質賦活カーボンブラックを「多孔質カーボンブラック」とも称する。
本開示の触媒担体用炭素材料は、高い耐久性と低負荷特性とが両立された炭素材料である。本開示の炭素材料は、次の知見により見出された。
近年、カーボンニュートラルへの関心の高まりから、CO排出量の大きな大型商用モビリティ(以下「HDV」とも称する)の分野で燃料電池化の要求が高まっている。HDVには乗用車と比較し高い耐久性が要求されることから、触媒担体には更なる発電時の高耐久化が要求されると同時に商用車用途が主のHDVでは材料が安価であることも求められる。
触媒担体用炭素材料として、銀アセチリドを自己分解反応させて得られる樹状炭素材料、ケッチェンブラック、クノーベルといった内部メソ孔を有する多孔質炭素材料を用いると、内部メソ孔に担持された触媒はアイオノマーによる被毒が防がれることから活性が向上し低負荷特性が向上することが判っている。しかしながら、これらの多孔質炭素材料は高価なことから、安価な原料であるカーボンブラックを賦活により多孔質化した多孔質カーボンブラックを採用することが低コスト化に有効である。
しかし、現状、多孔質カーボンブラックは、高い耐久性と低負荷特性との両立については未だ十分ではない。
そこで、多孔質カーボンブラックの高い耐久性と低負荷特性との両立に関わる特性について、発明者らは検討したところ、次の知見を得た。
(1)「比表面積」、「20nmまでの吸着容積」、「5~20nmの脱着細孔容積」がそれぞれ好適な範囲に同時になるように「賦活を制御すること」が重要であること。
(2)賦活の制御は、賦活度の均一性が高くなる賦活(具体的には、例えば、原料カーボンブラックに流通する賦活ガスの流通方向を反転する賦活)が有効であること。
(3)賦活度の均一性が高くなる賦活により、過度に賦活され、内部と外部を繋ぐ細孔が広がった多孔質カーボンブラックを生成することなく、平均細孔容量を大きくできること。
(4)それにより、多孔質カーボンブラック内部に触媒金属が担持される空間を十分に有し、かつ内部と外部を繋ぐ細孔が狭く、アイオノマーによる触媒金属の被毒を防ぐことができるため、触媒活性の低下が抑制され、低負荷特性の低下も抑制されること。
(5)耐久性については、「TG-DTA測定による10%重量減少温度」が適切な範囲となるように「加熱処理を制御すること」が重要であること。
以上の知見から、本開示の触媒担体用炭素材料は、高い耐久性と低負荷特性とが両立された炭素材料となることが見出された。
以下、要件(A)、(B)、及び(C)について説明する。
(要件(A))
(A)BET比表面積が350m/g以上800m/g以下である。
多孔質カーボンブラックのBET比表面積が350m/g以上800m/g以下であれば、担持される触媒金属を実用的な範囲で狙いの担持率と粒子径で分散性良く担持でき、多孔質カーボンブラックが燃料電池に求められる耐久性を得るために必要な結晶子構造をとることができるので好ましい。
多孔質カーボンブラックのBET比表面積が350m/g未満であると、触媒金属の担持率を大きくすると触媒金属粒子径が大きくなったり、触媒金属粒子同士が凝集して、高い電池性能が得づらくなる。
多孔質カーボンブラックのBET比表面積が800m/g以上であると高い発電性能は得られるものの、多孔質カーボンブラックが耐久性を保つために必要な結晶子構造が得られなくなる傾向にあり、高い耐久性と低負荷特性との両立が難しくなる。
多孔質カーボンブラックのBET比表面積は、好ましくは350m/g以上600m/g以下である。
なお、BET比表面積は、後述の実施例に記載されている方法によって測定される値である。
(要件(B))
(B)窒素脱離等温線をDH(Dollimore-Heal)法を用いた解析により求められる細孔径5nm以上20nm以下の細孔が示す細孔容積VD5-20を、窒素吸着等温線をDH(Dollimore-Heal)法を用いた解析により求められる細孔径20nm以下の細孔が示す細孔容積VA20で除した値(VD5-20/VA20)が0.35以下である。
多孔質カーボンブラックの値(VD5-20/VA20)は、多孔質カーボンブラックの賦活度の均一性の程度を示している。
多孔質カーボンブラックの値(VD5-20/VA20)が0.35超えであると、賦活度の均一性が悪く、多孔質カーボンブラックの内部及び外部を繋ぐ細孔が過度に多くなった多孔質カーボンブラックが増加する。それにより、多孔質カーボンブラックの内部にアイオノマーが侵入し、低負荷特性が低下する。
つまり、BET比表面積を350m/g以上800m/g以下で、かつ多孔質カー
ボンブラックの値(VD5-20/VA20)が0.35以下でることで、多孔質カーボンブラック内部に触媒金属が担持される空間を十分に有し、かつ内部と外部を繋ぐ細孔が狭くなる。それにより、アイオノマーによる触媒金属の被毒を防ぐことができるため、触媒活性の低下が抑制される。その結果、低負荷特性の低下が抑制される。
多孔質カーボンブラックの値(VD5-20/VA20)は、好ましくは0.30以下である。
一方、内部メソ孔への酸素ガス供給と生成水の排出の観点から、多孔質カーボンブラックの値(VD5-20/VA20)の下限は、例えば0.10以上である。
ここで、多孔質カーボンブラックの細孔容積VD5-20は、多孔質カーボンブラックの内部と外部を繋ぐ細孔の量を表しており、アイオノマーの、多孔質カーボンブラック内部への侵入しやすさを表す。
多孔質カーボンブラックの細孔容積VD5-20は、0.4mL/g以下が好ましく、0.3mL/gがより好ましい。
多孔質カーボンブラックの細孔容積VD5-20が0.4mL/g以下であると、賦活度の均一性が向上し、多孔質カーボンブラックの内部及び外部を繋ぐ細孔が過度に多くなることが抑制される。それにより、多孔質カーボンブラックの内部にアイオノマーが侵入し難く、低負荷特性が向上する。
ただし、多孔質カーボンブラック内部のメソ孔への酸素ガス供給と生成水の排出の観点からの観点から、多孔質カーボンブラックの細孔容積VD5-20の下限は、例えば0.05mL/g以上である。
一方、多孔質カーボンブラックの細孔容積VA20は、多孔質カーボンブラック内部の細孔容積を表す。
多孔質カーボンブラックの細孔容積VA20は、0.36~0.90mL/gが好ましく、0.39~0.61mL/gがより好ましい。
多孔質カーボンブラックの細孔容積VA20が0.36mL/g以上であると、多孔質カーボンブラックの内部容積が十分に確保され、多孔質カーボンブラックの内部に担持される触媒金属の量が増加する。それにより、アイオノマーに被毒される触媒金属が少なく、低負荷特性が向上する。
多孔質カーボンブラックの細孔容積VA20が0.9mL/g以下であると、多孔質カーボンブラック内部の細孔容積が大きく、かつ賦活度の均一性が確保されつつも、多孔質カーボンブラックが十分な強度を有するため、崩壊が抑制される。それにより、耐久性が向上する。
なお、細孔容積VD5-20、及び細孔容積VA20は、後述の実施例に記載されている方法によって測定される値である。
(要件(C))
(C)熱重量示差熱分析(TG-DTA)において、空気雰囲気で10℃/minで昇温したときに10%重量減少する温度Td10%が620~680℃である。
多孔質カーボンブラックの10%重量減温度Td10%が620℃未満であると、多孔質カーボンブラックの酸化消耗性が高く、十分な耐久性を確保できない。
多孔質カーボンブラックの10%重量減温度Td10%が680℃超えであると、多孔質カーボンブラックの表面積が低下し、低負荷特性が低下する。
多孔質カーボンブラックの10%重量減温度Td10%は、好ましくは640~680℃である。
なお、10%重量減温度Td10%は、後述の実施例に記載されている方法によって測
定される値である。
<固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料の製造方法>
以下、本開示の固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料の製造方法(以下、「炭素材料の製造方法」とも称する)の一例について説明する。
本開示の炭素材料の製造方法は、原料カーボンブラックを、「第一の賦活工程」、「加熱処理工程」、「第二の賦活工程」の順で処理し、「第一の賦活工程」において、原料カーボンブラックに流通する賦活ガスの流通方向を反転する賦活する方法である。
本開示の炭素材料の製造方法により、要件(A)~要件(C)を満たす炭素材料(つまり多孔質賦活カーボンブラック)が得られる。
(第一の賦活工程)
第一の賦活工程では、原料カーボンブラックに流通する賦活ガスの流通方向を反転して賦活する。賦活ガスの流通方向の反転は、1回でも、2回以上繰り替えしてもよい。
賦活ガスの流通方向を反転することにより、賦活ガス流路上流側の原料カーボンブラックと賦活ガス流路下流側の原料カーボンブラックの間に発生する賦活度の差を抑制することができる。つまり、多孔質カーボンブラックの賦活度の均一性を高くすることができる。
ここで、原料カーボンブラックとしては、例えば、気体又は液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解して製造するファーネスブラック;原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあてて急冷し、析出させて製造するチャンネルブラック:ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより製造するサーマルブラック:アセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどが挙げられる。賦活による粒子内部細孔の生成し易さ、および固体高分子型燃料電池の触媒担体として適した一次粒子径の観点から、原料カーボンブラックとしては、ファーネスブラックが好ましい。
これらのカーボンブラックは単独、又は2種以上併せて使用することができるが、賦活を均一に進行させる観点から、単独で用いることが好ましい。
(加熱処理工程)
第一の賦活工程の後に行う加熱処理工程では、不活性雰囲気下で熱処理を行うことにより、第一の賦活工程を経た原料カーボンブラックを構成する結晶子を成長させ、燃料電池に求められる耐久性を付与する。加熱処理工程を行うことで多孔質カーボンブラックの10%重量減温度Td10%を高く保たれ、耐酸化性(つまり耐久性)が向上できる。
加熱処理工程では、第一の賦活工程を経た原料カーボンブラックを真空中又は不活性ガス(窒素、アルゴン等)雰囲気中、1500℃以上1900℃以下(好ましくは1600~1800℃)の温度で加熱処理する。
1500℃以上で加熱処理することで、多孔質カーボンブラックの骨格を形成することとなる芳香族性の高い炭素の結晶が発達し、かつ細孔壁が十分厚い状態となり、要件(C)を満たす多孔質カーボンブラックが得られる。
1900℃以下で加熱処理することで、炭素の過度な結晶化の進行によるメソ孔の細孔容積の低下が抑制される。
(第二の賦活工程)
第二の賦活工程では、加熱処理工程によって閉塞した加熱処理賦活カーボンブラック中間体の細孔を再度開孔させる賦活を行う。それにより、加熱処理工程によって低下した比表面積及び細孔容量を増大させる。第二の賦活工程を行わないと十分な比表面積及び細孔容量が得られ難い。
なお、第二の賦活工程でも、原料カーボンブラックに流通する賦活ガスの流通方向を反転させて賦活を行うことが好ましい。
そして、第一の賦活工程と第二の賦活工程を経ることで、多孔質カーボンブラック内部に触媒金属が担持される空間を十分に有し、かつ内部と外部を繋ぐ細孔が狭い、要件(A)~要件(B)を満たす多孔質カーボンブラックが得られる。
(第一の賦活工程と第二の賦活工程の賦活の態様)
第一の賦活工程と第二の賦活工程の賦活ガスの種類は、原料カーボンブラックを構成する炭素を反応によって酸化消耗できる気体を含有していれば特に限定しない。原料カーボンブラックを構成する炭素を反応によって酸化消耗できる気体としては、空気、酸素、オゾン、水蒸気、二酸化炭素、二酸化窒素、一酸化窒素、一酸化二窒素などが例示できる。これらのガスを混合して賦活ガスとしても構わない。または窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスで希釈したガスであっても構わない。さらにはこれらの気体を含んだ排気ガスや工業ガスであっても構わない。好ましくは、水蒸気、または二酸化炭素、もしくはこれらを含んだ賦活ガスである。第一の賦活工程と第二の賦活工程のガスの種類を変えても構わない。
第一の賦活工程と第二の賦活工程の賦活装置としては、ロータリーキルン、流動層炉、固定層炉、移動層炉、などの各種形式が適用でき、原料の投入、製品の取り出しを連続的に行う連続炉、間欠的に行うバッチ炉のいずれも使用できる。賦活装置としては、ロータリーキルンおよび固定層炉がガス導入方向の切り替えを容易にできることから好ましい。また、賦活度の均一性の観点から、原料投入を連続的に行う連続炉では賦活度に分布が生じることから、バッチ炉が好ましい。
第一の賦活工程と第二の賦活工程(特に第一の賦活工程)の原料カーボンブラックの賦活を行う賦活装置において、賦活ガスの導入方向を変更することが好ましい。ガス導入方向を変更するにあたって、ガスの流路の入りと出を入れ替えてもよいし、賦活装置として管状炉などを用いている場合は炉心管の向きを反転させて接続してもよい。
賦活終了時において初期のガス導入方向から流れているガスの供給量割合をGasR(「初期のガス導入方向からの供給量/(初期のガス導入方向からの供給量+初期と反転させたガス導入方向からの供給量)」×100で示すことができる。GasRの値は30~70%が好ましい。GasRの値が70%以上になると初期のガス導入側に存在する原料カーボンブラックの賦活度が過度に進行するため賦活均一性が損なわれる。一方、GasRの値が30%以下になると初期のガス排出側に存在する原料カーボンブラックの賦活度が過度に進行するため賦活度の均一性が損なわれる。
<固体高分子型燃料電池用触媒層及び固体高分子型燃料電池>
本開示の固体高分子型燃料電池用触媒層とともに、固体高分子型燃料電池について説明する。
本開示の炭素材料は、例えば、図1に示す固体高分子型燃料電池100に設けられる触媒層150及び160に適用可能である。図1は、本開示の燃料電池の概略構成の一例を示す模式図である。
図1に示す固体高分子型燃料電池100は、セパレータ110及び120、ガス拡散層130及び140、触媒層150及び160、並びに電解質膜170を備える。
セパレータ110は、アノード側のセパレータであり、水素等の還元性ガスをガス拡散層130に導入する。セパレータ120は、カソード側のセパレータであり、酸素ガス、空気等の酸化性ガスをガス拡散凝集相に導入する。セパレータ110及び120の種類は特に限定されず、従来の燃料電池(例えば固体高分子型燃料電池)で使用されるセパレータであればよい。
ガス拡散層130は、アノード側のガス拡散層であり、セパレータ110から供給された還元性ガスを拡散させた後、触媒層150に供給する。ガス拡散層140は、カソード側のガス拡散層であり、セパレータ120から供給された酸化性ガスを拡散させた後、触媒層160に供給する。ガス拡散層130及び140の種類は特に限定されず、従来の燃料電池(例えば固体高分子型燃料電池)に使用されるガス拡散層であればよい。ガス拡散層130及び140の例としては、多孔質炭素材料(カーボンクロス、カーボンペーパー等)、多孔質金属材料(金属メッシュ、金属ウール等)などが挙げられる。なお、ガス拡散層130及び140の好ましい例としては、2層構造のガス拡散層が挙げられる。具体的には、ガス拡散層130及び140において、セパレータ110及び120側の層が繊維状炭素材料を主成分とするガス拡散繊維層となり、触媒層150及び160側の層がカーボンブラックを主成分とするマイクロポア層となる2層構造のガス拡散層が挙げられる。
触媒層150は、いわゆるアノードである。触媒層150内では、還元性ガスの酸化反応が起こり、プロトンと電子が生成される。例えば、還元性ガスが水素ガスとなる場合、以下の酸化反応が起こる。
→2H+2e (E=0V)
酸化反応によって生じたプロトンは、触媒層150、及び電解質膜170を通って触媒層160に到達する。酸化反応によって生じた電子は、触媒層150、ガス拡散層130、及びセパレータ110を通って外部回路に到達する。電子は、外部回路内で仕事(発電)をした後、セパレータ120に導入される。その後、電子は、セパレータ120、ガス拡散層140を通って触媒層160に到達する。
アノードとなる触媒層150の構成は特に制限されない。触媒層150の構成は、従来のアノードと同様の構成であってもよいし、触媒層160と同様の構成であってもよいし、触媒層160よりもさらに親水性が高い構成であってもよい。
触媒層160は、いわゆるカソードである。触媒層160内では、酸化性ガスの還元反応が起こり、水が生成される。例えば、酸化性ガスが酸素ガス又は空気となる場合、以下の還元反応が起こる。酸化反応で発生した水は、未反応の酸化性ガスとともに、固体高分子型燃料電池100の外部に排出される。
+4H+4e→2HO (E=1.23V)
このように、固体高分子型燃料電池100では、酸化反応と還元反応とのエネルギー差(電位差)を利用して発電する。言い換えれば、酸化反応で生じた電子が外部回路で仕事を行う。
触媒層160には、本開示の触媒担体用炭素材料が含まれる。すなわち、触媒層160は、本開示の触媒担体用炭素材料と、電解質材料(アイオノマー)と、触媒成分(白金等)とを含む。これにより、触媒層160内の耐久性と低負荷特性を高めることができる。そして、固体高分子型高分子型燃料電池100の耐久性と低負荷特性を高めることができる。
なお、触媒層160における触媒担持率は特に制限されず、30質量%以上80質量%未満であることが好ましい。触媒担持率がこの範囲であると、耐久性と低負荷特性がさらに高くなる。ここで、触媒担持率は、触媒担持粒子(触媒担体用炭素材料に触媒成分を担持させた粒子)の総質量に対する触媒成分の質量%で表される。触媒担持率が30質量%未満となる場合、固体高分子型燃料電池100を実用に耐えるようにするために、触媒層160を厚くする必要が生じうる。一方、触媒担持率が80質量%以上となる場合、触媒凝集が起こりやすくなる。また、触媒層160が薄くなりすぎて、フラッディングが起こる可能性が生じる。
触媒層160における電解質材料の質量Iと触媒担体用炭素材料の質量Cとの質量比I/Cは特に制限されず、0.5超5.0未満であることが好ましい。この場合、細孔ネットワークと電解質材料ネットワークとが両立でき、耐久性と低負荷特性が高くなる。一方、質量比I/Cが0.5以下となる場合、電解質材料ネットワークが貧弱になり、プロトン伝導抵抗が高くなる傾向にある。質量比I/Cが5.0以上となる場合、電解質材料によって細孔ネットワークが分断される可能性がある。いずれの場合にも、耐久性と低負荷特性が低下する可能性がある。
また、触媒層160の厚さは特に制限されず、5μm超20μm未満であることが好ましい。この場合、触媒層160内に酸化性ガスが拡散しやすく、かつ、フラッディングが生じにくくなる。触媒層160の厚さが5μm以下となる場合、フラッディングが生じやすくなる。触媒層160の厚さが20μm以上となる場合、触媒層160内で酸化性ガスが拡散しにくくなり、電解質膜170近傍の触媒成分が働きにくくなる。すなわち、触媒利用率が低下する可能性がある。
電解質膜170は、プロトン伝導性を有する電解質材料で構成されている。電解質膜170は、上記酸化反応で生成したプロトンを触媒層160(カソード)に導入する。ここで、電解質材料の種類は特に限定されず、従来の燃料電池、例えば固体高分子型燃料電池で使用される電解質材料であればよい。好適な電解質材料の例としては、電解質樹脂が挙げられる。電解質樹脂としては、例えば、リン酸基、スルホン酸基等を導入した高分子が挙げられる。具体的には、例えば、パーフルオロスルホン酸ポリマー、ベンゼンスルホン酸等が導入されたポリマー等が挙げられる。もちろん、電解質材料は、他の種類の電解質材料であってもよい。このような電解質材料としては、例えば、無機系、無機-有機ハイブリッド系等の電解質材料等が挙げられる。なお、固体高分子型燃料電池100は、常温(25℃)~150℃の範囲内で作動する燃料電池であってもよい。
<固体高分子型燃料電池の製造方法>
固体高分子型燃料電池100の製造方法は特に制限されず、従来と同様の製造方法であればよい。ただし、触媒担体には本開示の触媒担体用炭素材料を用いる。触媒層150及び160のうち、少なくとも、カソードとなる触媒層160における触媒担体には、本開示の触媒担体用炭素材料を用いることが好ましい。もちろん、アノードとなる触媒層150及びカソードとなる触媒層160における両触媒層の触媒担体に、本開示の触媒担体用炭素材料を用いてもよい。
本開示の触媒担体用炭素材料の実験例について説明する。まず、各パラメータの測定方法について説明する。
<各パラメータの測定方法>
(窒素吸脱着等温線(VA20、VD5-20、BET比表面積)の測定)
触媒担体用炭素材料の試料を約30mg測り採り、200℃で2時間真空乾燥した後に、自動比表面積測定装置(アントンパール・ジャパン社製 AUTOSORB iQ)を用い、窒素ガスを吸着質に用いて窒素吸着・脱離等温線を測定した。
細孔径20nm以下の細孔容積VA20、及び細孔径5~20nmの細孔容積VD5-20については、窒素吸着・脱離等温線を装置付属のソフトを用いたDH法により解析し
て算出した。
BET比表面積については、相対圧P/Pが0.30以下の範囲で窒素吸着等温線をBET解析することによりを算出した。
(熱重量示差熱分析(TG-DTA)における10%重量減少温度Td10%の測定)
触媒担体用炭素材料を試料とし、これを約6mg量り採った。その後、試料を熱重量・示唆熱測定装置(日立ハイテクノロジーズ社製、EXSTAR TG/DTA7200)にセットし、昇温速度10℃/分、乾燥空気200mL/minの流通の下で900℃までの重量減少を測定した。得られた重量減少曲線の測定開始時点の重量を100%、測定終了時点の重量を0%とした際の10%重量減少時点の温度を10%重量減少温度Td10%とした。
<実施例:触媒担体用炭素材料の作製>
(実施例1)
(1)第一の賦活工程
原料とカーボンブラックして日鉄カーボン製ニテロン#10:7gを直径1インチの管型反応器に充填し、管型反応器上流に設定したマスフローコントローラーで400Nml/min.のCOガスを流通させた。この状態で管型反応器を840℃に20℃/min.で昇温し、36時間840℃で保持した後、管型反応器の上流および下流に設置されたバルブをそれぞれ操作し、管型反応器へ導入されるガスの方向を反転させ、更に36時間840℃で保持し、第一の賦活工程を行った。保持後、流通ガスをNに切り替え、降温し、第一賦活サンプルを回収した。
(2)加熱処理工程
回収した第一賦活サンプル全量を加熱坩堝に充填して、加熱炉にてAr流通下、15℃/min.で昇温し、1600℃1時間で加熱処理工程を行い、加熱処理サンプルを回収した。
(3)第二の賦活工程
加熱処理サンプル全量を再び直径1インチの管型反応器に充填し、管型反応器上流に設定したマスフローコントローラーで400Nml/min.のCOガスを流通させた。この状態で管型反応器を850℃に20℃/min.で昇温し、15分間850℃で保持した。その後、管型反応器の上流および下流に設置されたバルブをそれぞれ操作し、管型反応器へ導入されるガスの方向を反転させ、更に15分間850℃で保持し、第二の賦活を行った。保持後、流通ガスをNに切り替え、降温した。
これら操作で得られた第二賦活サンプルを実施例1の触媒担体用炭素材料(つまり多孔質賦活カーボンブラック)として回収した。
(実施例2)
加熱処理工程の保持温度を1800℃とした以外は、実施例1と同様にして、触媒担体用炭素材料(つまり多孔質賦活カーボンブラック)を得た。
(実施例3)
第一の賦活工程において、管型反応器を昇温後24時間840℃で保持した後、管型反応器の上流および下流に設置されたバルブをそれぞれ操作し、管型反応器へ導入されるガスの方向を反転させ、更に48時間840℃で保持した以外は、実施例1と同様にして、触媒担体用炭素材料(つまり多孔質賦活カーボンブラック)を得た。
(実施例4)
第一の賦活工程において、管型反応器を820℃に20℃/min.で昇温し、36時間820℃で保持した後、管型反応器の上流および下流に設置されたバルブをそれぞれ操作し、管型反応器へ導入されるガスの方向を反転させ、更に36時間820℃で保持した以外は、実施例1と同様にして、触媒担体用炭素材料(つまり多孔質賦活カーボンブラック)を得た。
(実施例5)
第一の賦活工程において、管型反応器を820℃に20℃/min.で昇温し、36時間820℃で保持した後、管型反応器の上流および下流に設置されたバルブをそれぞれ操作し、管型反応器へ導入されるガスの方向を反転させ、更に36時間820℃で保持したこと、
第二の賦活工程の保持時間を2時間(ガス方向反転の反転前後の各保持時間1時間で計2時間)とした以外は、実施例1と同様にして、触媒担体用炭素材料(つまり多孔質賦活カーボンブラック)を得た。
(実施例6)
第一の賦活工程で原料カーボンブラックに日鉄カーボン製ニテロン#3350を用い、管型反応器を1000℃に20℃/min.で昇温し、3時間1000℃で保持した後、管型反応器の上流および下流に設置されたバルブをそれぞれ操作し、管型反応器へ導入されるガスの方向を反転させ、更に3時間1000℃で保持したこと、
加熱処理工程の保持温度を1700℃に変更したこと、
第二の賦活工程の保持温度を950℃、保持時間を4時間(ガス方向反転の反転前後の各保持時間2時間で計4時間)とした以外は、実施例1と同様にして、触媒担体用炭素材料(つまり多孔質賦活カーボンブラック)を得た。
(実施例7)
第一の賦活工程で原料カーボンブラックに日鉄カーボン製ニテロン#3350を用い、管型反応器を1000℃に20℃/min.で昇温し、3時間1000℃で保持した後、管型反応器の上流および下流に設置されたバルブをそれぞれ操作し、管型反応器へ導入されるガスの方向を反転させ、更に3時間1000℃で保持したこと、
加熱処理工程の保持温度を1700℃に変更したこと、
第二の賦活工程の保持温度を950℃、保持時間を2時間(ガス方向反転の反転前後の各保持時間1時間で計2時間)としたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒担体用炭素材料(つまり多孔質賦活カーボンブラック)を得た。
(実施例8)
第一の賦活工程で、原料カーボンブラックとして日鉄カーボン製ニテロン#10:230gを4枚のリフターを備えた内径120mm、長さ500mmの円筒形のレトルト容器内に均一な厚みとなるように充填し、ロータリーキルンの内部にレトルト容器を設置し、3000Nml/min.の流量でCOガスを流通させ、ロータリーキルンを秒間1回転の速度で回転させた。この状態でロータリーキルンを850℃まで20℃/min.で昇温し、35時間850℃で保持した。保持後、流通ガスをNに切り替え降温し、ロータリーキルン内からレトルト容器を取り出し前後を反転させてロータリーキルンに再設置した。その後、3000Nml/min.の流量でCOガスを流通させ、ロータリーキルンを秒間1回転の速度で回転させた。この状態でロータリーキルンを850℃まで20℃/min.で昇温し、更に35時間850℃で保持した。保持後、流通ガスをNに切り替え、降温し、第一賦活サンプルを回収した。
また、第二の賦活工程の保持温度を950℃、保持時間を0.5時間(ガス方向反転の反転前後の各保持時間15分で計0.5時間)とした。
これらの操作を実施した以外は実施例1と同様に行った。
(比較例1)
第一の賦活工程で、管型反応器へ導入されるガスの方向を反転させなかった以外は、実施例1と同様にして、触媒担体用炭素材料を得た。
(比較例2))
第一の賦活工程で、ロータリーキルン内からレトルト容器を取り出し前後を反転させなかった以外は、実施例8と同様にして、触媒担体用炭素材料を得た。
(比較例3)
第一の賦活工程で、レトルト容器を反転させる前の保持時間を56時間、レトルト容器を反転させた後の保持時間を14時間時間とした以外は、実施例8と同様にして、触媒担体用炭素材料を得た。
(比較例4)
第一の賦活工程で、レトルト容器を反転させる前の保持時間を14時間、レトルト容器を反転させた後の保持時間を56時間時間とした以外は、実施例8と同様にして、触媒担体用炭素材料を得た。
(比較例5)
第二の賦活工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、触媒担体用炭素材料を得た。
(比較例6)
加熱処理工程の保持温度を1400℃とした以外は、実施例1と同様にして、触媒担体用炭素材料を得た。
(比較例7)
加熱処理工程の保持温度を1200℃とした以外は、実施例1と同様にして、触媒担体用炭素材料を得た。
(比較例8)
加熱処理工程の保持温度を2000℃とした以外は、実施例1と同様にして、触媒担体用炭素材料を得た。
(比較例9)
追加の処理を実施しない、ライオンスペシャリティケミカルズ株式会社のケッチェンブラックEC300Jを、比較例9の触媒担体用炭素材料とした。
(比較例10)
追加の処理を実施しない、ライオンスペシャリティケミカルズ株式会社のケッチェンブラックEC600JDを、比較例10の触媒担体用炭素材料とした。
(比較例11)
原料カーボンブラックとしてライオンスペシャリティケミカルズ株式会社のケッチェンブラックEC300J:2gを、加熱処理炉で、Ar流通下1600℃で1時間の加熱処理工程を実施し、比較例11の触媒担体用炭素材料を得た。
(比較例12)
原料カーボンブラックとしてライオンスペシャリティケミカルズ株式会社のケッチェンブラックEC600JD:2gを、加熱処理炉で、Ar流通下、1600℃で1時間の加熱処理工程を実施し、比較例12の触媒担体用炭素材料を得た。
<触媒の調製、触媒層の調製、MEAの作製、燃料電池の組立、及び電池性能(発電性能、耐久性)の評価>
次に、以上のようにして準備した各多孔質カーボンブラックを用い、以下のようにして触媒金属が担持された固体高分子型燃料電池用触媒を調製し、また、得られた触媒を用いて触媒層インク液を調製し、次いでこの触媒層インク液を用いて触媒層を形成し、更に形成された触媒層を用いて膜電極接合体(MEA: Membrane Electrode Assembly)を作製し、この作製されたMEAを燃料電池セルに組み込み、燃料電池測定装置を用いて発電試験を行った。以下、各部材の調製及び発電試験によるセル評価について詳細に説明する。
(1)固体高分子型燃料電池用触媒(白金担持炭素材料)の調製
各例の触媒担体用炭素材料を、蒸留水中に分散させ、この分散液にホルムアルデヒドを加え、40℃に設定したウォーターバスにセットし、分散液の温度がバスと同じ40℃になってから、撹拌下のこの分散液中にジニトロジアミンPt錯体硝酸水溶液をゆっくりと注ぎ入れた。その後、約2時間撹拌を続けた後、濾過し、得られた固形物の洗浄を行った。このようにして得られた固形物を90℃で真空乾燥した後、乳鉢で粉砕し、次いで水素を5体積%含むアルゴン雰囲気中200℃で1時間熱処理をして白金担持炭素材料を作製した。なお、この白金担持炭素材料の白金担持量については、触媒担体用炭素材料と白金粒子の合計質量に対して35質量%となるように調整し、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES: Inductively Coupled Plasma - Atomic Emission Spectrometry)により測定して確認した。
(2)触媒層の調製
以上のようにして調製された白金担持炭素材料(Pt触媒)を用い、また、電解質樹脂として5質量%ナフィオン溶液(デュポン製DE2020CS、登録商標:Nafion)を用い、Ar雰囲気下でこれらPt触媒とナフィオンとを多孔質カーボンブラック分の質量(Pt触媒のうちPt分を除いた多孔質カーボンブラックのみの質量)に対してナフィオン固形分の質量が1.0倍の割合で配合し、軽く撹拌した後、超音波でPt触媒を解砕し、更にエタノールを加えてPt触媒と電解質樹脂とを合わせた合計の固形分濃度が0.5質量%となるように調整し、Pt触媒と電解質樹脂とが混合した触媒層インク液を調製した。
このようにして調製された触媒層インク液を用いて、白金の触媒層単位面積当たりの質量(以下、「白金目付量」という。)が0.2mg/cm2となるようにスプレー条件を調節し、上記触媒層インクをテフロン(登録商標)シート上にスプレーした後、アルゴン中120℃で60分間の乾燥処理を行い、触媒層を作製した。
(3)MEAの作製
以上のようにして作製した触媒層を用い、以下の方法でMEA(膜電極複合体)を作製した。
ナフィオン膜(Dupont社製NR211)から一辺6cmの正方形状の電解質膜を切り出した。また、テフロン(登録商標)シート上に塗布されたアノード及びカソードの各触媒層については、それぞれカッターナイフで一辺2.5cmの正方形状に切り出した。
このようにして切り出されたアノード及びカソードの各触媒層の間に、各触媒層が電解質膜の中心部を挟んでそれぞれ接すると共に互いにずれが無いように、この電解質膜を挟み込み、120℃、100kg/cm2で10分間プレスし、次いで室温まで冷却した後、アノード及びカソード共にテフロン(登録商標)シートのみを注意深く剥ぎ取り、アノ
ード及びカソードの各触媒層が電解質膜に定着した触媒層-電解質膜接合体を調製した。
次に、ガス拡散層として、カーボンペーパー(SGLカーボン社製39BC)から一辺2.5cmの大きさで一対の正方形状カーボンペーパーを切り出し、これらのカーボンペーパーの間に、アノード及びカソードの各触媒層が一致してずれが無いように、上記触媒層-電解質膜接合体を挟み、120℃、50kg/cmで10分間プレスしてMEAを作製した。
なお、作製された各MEAにおける触媒金属成分、炭素材料、電解質材料の各成分の目付量については、プレス前の触媒層付テフロン(登録商標)シートの質量とプレス後に剥がしたテフロン(登録商標)シートの質量との差からナフィオン膜(電解質膜)に定着させた触媒層の質量を求め、触媒層の組成の質量比より算出した。
(4)燃料電池の組立、初期発電性能評価
各実施例及び比較例に係る各多孔質炭素材料を用いて作製したMEAについて、それぞれセルに組み込み、燃料電池測定装置にセットして、次の手順で燃料電池の初期発電性能評価を行った。
カソード側には空気を、また、アノード側には純水素を、それぞれ利用率が40%と70%となるように、セル下流に設けられた背圧弁で圧力調整して背圧のゲージ圧がそれぞれ0.1MPaGになるように供給した。また、セル温度は80℃に設定し、燃料電池セルに供給する空気と純水素を加湿器中で80℃に保温された蒸留水にそれぞれ通す(すなわち、バブリングを行う)ことで、加湿した。これにより、アノード及びカソードの相対湿度を100%程度とした。
このような設定の下にセルに反応ガスを供給した条件下で、セル端子間電圧が0.3Vになるまで電流密度を徐々に増加させる操作を10回繰り返した。
その後、電流密度を0.2A/cmに固定して10分間保持したときのセル端子間電圧を記録し、下記の合格ランクA及びBと不合格ランクCの基準で低負荷性能評価を行った。結果を表1に示す。
〔合格ランク〕
A:電流密度0.2A/cmにおけるセル端子間電圧が0.83V以上であるもの。
B:電流密度0.2A/cmにおけるセル端子間電圧が0.81V以上であるもの。〔不合格ランク〕
C:合格ランクBに満たないもの。
(5)耐久性の評価
上記の初期発電性能評価後、次の条件で耐久試験を行った。まず、セル温度は80℃、相対湿度は100%、セル背圧を0.0MPaGにしてカソードのガスをアルゴンガスに切り替えた。次にセル電圧を0.6Vにして4秒間保持する操作を行った後にセル電圧を1.2Vにして4秒間保持する操作を1サイクルとし、この矩形波的電圧変動の繰返し操作を1000サイクル実施した。その後、アノードとカソードのガス利用率をそれぞれ40%と70%、セル背圧のゲージ圧がそれぞれ0.1MPaG、セル温度は80℃それぞれ相対湿度100%とし、セル電圧0.3Vにしたときの電流密度を記録し、下記の合格ランクA及びBと不合格ランクCの基準で耐久性評価を行った。結果を表1に示す。
〔合格ランク〕
A:1000サイクル実施後の電流密度が初期発電性能評価時の電流密度の80%以上であるもの。
B:1000サイクル実施後の電流密度が初期発電性能評価時の電流密度の70%以上であるもの。
〔不合格ランク〕
C:合格ランクBに満たないもの。
上記結果から、実施例の触媒担体用炭素材料(つまり多孔質賦活カーボンブラック)、高い耐久性と低負荷特性とが両立できることがわかる。
符号の説明は、次の通りである。
100 固体高分子型燃料電池
110、120 セパレータ
130、140 ガス拡散層
150、160 触媒層
170 電解質膜
なお、日本国特許出願第2023-108951号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (4)

  1. 下記要件(A)、(B)、及び(C)を満たす多孔質賦活カーボンブラックからなる固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料。
    (A)BET比表面積が350m/g以上800m/g以下である。
    (B)窒素脱離等温線をDH(Dollimore-Heal)法を用いた解析により求められる細孔径5nm以上20nm以下の細孔が示す細孔容積VD5-20を、窒素吸着等温線をDH(Dollimore-Heal)法を用いた解析により求められる細孔径20nm以下の細孔が示す細孔容積VA20で除した値(VD5-20/VA20)が0.35以下であり、かつ前記細孔容積VA 20 が0.36~0.90mL/gである。
    (C)熱重量示差熱分析(TG-DTA)において、空気雰囲気で10℃/minで昇温したときに10%重量減少する温度Td10%が620~680℃である。
  2. 請求項1に記載の固体高分子型燃料電池の触媒担体用炭素材料を含む固体高分子型燃料電池用触媒層。
  3. 請求項に記載の固体高分子型燃料電池用触媒層を含む燃料電池。
  4. 前記固体高分子型燃料電池用触媒層は、カソード側の触媒層である請求項に記載の燃料電池。
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